説明

排ガス分析装置及びプローブユニット

【課題】ガス導入口及びその近傍に堆積するダスト量を低減する。
【解決手段】煙道を流れる排ガスGを内部に導くガス導入口312Aが形成されたプローブ管31と、プローブ管31のガス導入口312Aよりも延出し、ガス導入口312Aの前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板32と、ガス導入口312Aの前方の空間を囲み板32の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板33と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジン、ボイラ、廃棄物燃焼炉、工業用炉等の燃焼装置の排気管に取り付けられて、当該排気管内の煙道を流れる排ガスに含まれる所定成分を分析する排ガス分析装置及びこれに用いられるプローブユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、煙道内の排ガスに含まれる酸素及び窒素酸化物等の所定成分を検出して分析する排ガス分析装置としては、特許文献1に示すように、煙道内にセンサユニットを直接挿入して取り付け、当該センサユニットにより排ガスをサンプリングすると共に、その排ガス中の例えば酸素又は窒素酸化物等の所定成分を検出するものがある。
【0003】
具体的にこのセンサユニットは、煙道内へ突出するように設けられた支持筒と、この支持筒内における先端に固定されて煙道内を流れる排ガスに含まれる所定成分を検出するガスセンサとを備え、さらに支持筒の先端には保護カバーが設けられている。そして保護カバーは、煙道の上流側に位置するように半円筒状の壁部材を有するものである。
【0004】
しかしながら、煙道を流れる排ガスは、壁部材によって遮られ、その結果、排ガスが壁部材の下流側に巻き込みながら流れてカルマン渦が発生してしまう。この場合、特に排ガス中にダストが多量に含まれるものである場合には、排ガス中に含まれるダストも壁部材の下流側面(裏面)に巻き込まれてしまい、ガス導入口及びその近傍(ガス導入口に防塵フィルタが設けられている場合には防塵フィルタ)に堆積してし、ガス導入口を閉塞してしまう。その結果、煙道中の排ガスをガスセンサに導くことができず、正確な測定結果を得ることができないという問題がある。また、ダストが堆積すると、当然ダストの除去が必要となり、ランニングコストが増大してしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−184266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、ガス導入口及びその近傍に堆積するダスト量を低減することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る排ガス分析装置は、煙道内に突出して設けられるプローブユニットを有し、当該プローブユニットにより前記煙道を流れる排ガスをサンプリングしてその排ガスを分析する排ガス分析装置であって、前記プローブユニットが、前記煙道を流れる排ガスを内部に導くガス導入口が形成されたプローブ管と、前記プローブ管のガス導入口よりも延出し、前記ガス導入口の前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板と、前記ガス導入口の前方の空間を前記囲み板の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板と、を具備することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、排ガスが囲み板に遮られて生じるカルマン渦が仕切り板によって分散されて小さくなり、カルマン渦として巻き込まれる排ガスの流速を小さくすることができる。その結果、ガス導入口に巻き込まれるダストの量を低減することができ、ガス導入口及びその近傍に堆積するダスト量を低減することができる。したがって、長期的に安定したサンプリングを可能にすることができ、安定した測定結果を得ることができるようになる。また、堆積するダスト量を低減することができることから、ダスト除去のメンテナンス周期を長くすることができ、ランニングコストを低減することもできる。
【0009】
プローブ管内にダストが入り込むことを防止するためには、前記ガス導入口に防塵フィルタが設けられていることが望ましい。この場合において、仕切り板によって防塵フィルタへ巻き込まれるダストの量を低減することができるので、フィルタ寿命を延ばすことができ、ランニングコストを低減することができる。
【0010】
囲み板によって生じるカルマン渦を可及的に抑制させるためには、前記囲み板が、前記ガス導入口の前方の空間を前記プローブ管の中心軸周りに全周を囲むように設けられていることが望ましい。つまり、囲み板が、内部にガス導入口の前方の空間を形成する筒形状をなすものであることが望ましい。囲み板がガス導入口の前方の空間を煙道上流側から一部分のみ囲むものであれば、囲み板の先端側端部及び左右側端部によりカルマン渦が発生してしまうところ、ガス導入口の前方の空間の全周を囲むものであれば、ガス導入口へのダストの巻き込みに作用するカルマン渦を囲み板の先端側端部により生じるもののみとすることができる。したがって、カルマン渦を抑制して、ガス導入口へのダストの流入量を低減することができる。
【0011】
また、本発明に係るプローブユニットは、煙道内に突出して設けられ、当該煙道を流れる排ガスをサンプリングするプローブユニットであって、前記煙道を流れる排ガスを内部に導くガス導入口が形成されたプローブ管と、前記プローブ管のガス導入口よりも延出し、前記ガス導入口の前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板と、前記ガス導入口の前方の空間を前記囲み板の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、ガス導入口及びその近傍に堆積するダスト量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス分析装置の全体構成図である。
【図2】同実施形態における主として囲み板及び仕切り板を示す縦断面斜視図である。
【図3】同実施形態における囲み板及び仕切り板を示す正面図である。
【図4】従来のプローブユニットにおいて生じるカルマン渦のシミュレーション結果である。
【図5】本実施形態のプローブユニットにおいて生じるカルマン渦のシミュレーション結果である。
【図6】変形実施形態における囲み板及び仕切り板を示す正面図である。
【図7】変形実施形態における囲み板及び仕切り板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る排ガス分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<装置構成>
本実施形態に係る排ガス分析装置100は、例えば石炭焚きボイラ又は重油焚きボイラ等のボイラ又は船舶用エンジン等に接続された排気管H内の煙道を流れる排ガスGに含まれる所定成分(例えばNO、SO、CO、CO等)を分析する直接挿入型の排ガス分析装置である。なお、この排ガス分析装置100により得られた分析結果(例えば所定成分の濃度)は、脱硝又は脱硫の制御等に用いられる。
【0016】
具体的にこのものは、図1に示すように、排気管Hに固定されることにより、その先端部が煙道内に突出して設けられ、内部に所定成分を検出するセンサ部2を有するプローブユニット3と、当該プローブユニット3からの検出信号を受信して、当該検出信号を受信して、排ガスGに含まれる所定成分を連続的かつ高速応答で分析する制御ユニット4と、を備える。なお、制御ユニット4は、演算処理部及び表示部等(不図示)を備えており、プローブユニット3と制御ユニット4とはケーブル接続されている。
【0017】
プローブユニット3は、図1に示すように、煙道を流れる排ガスGをサンプリングし、そのサンプリングした排ガスGに含まれる所定成分を検出するものであり、煙道を流れる排ガスGを内部に導くガス導入口312Aが先端部に形成されたプローブ管31と、プローブ管31の先端部から延出し、ガス導入口312Aの前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板32と、ガス導入口312Aの前方の空間を囲み板32の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板33と、を備える。
【0018】
プローブ管31は、概略円筒形状をなすものであり、少なくとも排気管H内に挿入される部分の外側周面の外径が一定となるように構成されている。また、プローブ管31の基端部には、排気管Hに設けられた取り付け部H1にねじ固定するためのフランジ部311が形成されている。また、プローブ管31の先端部の壁(先端壁312)には、プローブ管31内部に排ガスGを導入するためのガス導入口312Aが形成されている。また、当該ガス導入口312Aには、プローブ管31内にサンプリングされる排ガスG中のダストを除去するための防塵フィルタFが設けられている。
【0019】
また、プローブ管31内には、サンプリングされた排ガスG中の所定成分を検出するためのセンサ部2が設けられている。このセンサ部2は、プローブ管31内においてガス導入口312Aの近傍に設けられている。
【0020】
囲み板32は、プローブ管31の先端部から延出し、ガス導入口312Aから所定距離離間した前方の空間までを少なくとも煙道上流側から囲むように設けられている。本実施形態の囲み板32は、カルマン渦の発生を可及的に抑制する観点から、図2及び図3に示すように、ガス導入口312Aの煙道側前方の空間を、プローブ管31の中心軸方向に沿って、プローブ管31の中心軸周りに、その全周を囲む概略円筒形状をなすものである。
【0021】
より詳細には、囲み板32は、プローブ管31の先端壁312の周縁部に延設されており、プローブ管31の外側周面の外径と略同一又は小さい外径の外側周面を有するものが好ましい。このように、囲み板32の外側周面の外径をプローブ管31の外側周面の外径と略同一又は小さくしていることにより、排気管Hの取り付け部H1を囲み板32の形状に合わせて変更する必要がなく、従来の囲み板32を有さないプローブユニット3に対応した取り付け部H1にも何ら加工することなく取り付けることができる。
【0022】
仕切り板33は、図1〜図3に示すように、ガス導入口312Aの前方の空間を囲み板32の延出方向(プローブ管31の中心軸方向)に沿って複数に分割するものである。上述したように囲み板32が概略円筒形状をなすことから、仕切り板33は、囲み板32により形成される内部空間を複数に分割するように設けられている。
【0023】
具体的に仕切り板33は、複数(図3等では縦横2枚)の平板を組み合わせた正面視において格子状をなすものであり、ガス導入口312A(防塵フィルタF)から離間するように、囲み板32において先端開口側に設けられている。また、仕切り板33は、囲み板32に固定されており、囲み板32をプローブ管31に取り付けることにより、仕切り板33もプローブ管31に取り付けられる。
【0024】
さらに仕切り板33は、プローブ管31の中心軸方向先端側から見て(正面視において)、プローブ管31の外側周面よりも内側に位置するようにしている。これにより、囲み板32において説明したのと同様に、排気管Hの取り付け部H1を仕切り板33の形状に合わせて変更する必要がなく、従来の仕切り板33を有さないプローブユニット3に対応した取り付け部H1にも何ら加工することなく取り付けることができる。
【0025】
次にこのように構成したプローブユニット3において生じるカルマン渦の低減作用について図4及び図5を参照して説明する。なお図4は、従来の保護カバーを有するプローブユニットにおいて生じるカルマン渦のシミュレーション結果であり、図5は本実施形態のプローブユニット3において生じるカルマン渦のシミュレーション結果である。
【0026】
図4のシミュレーション結果及び図5のシミュレーション結果を比較すると、図5に示されるように、仕切り板33を設けた場合には、プローブユニット3において生じるカルマン渦が仕切り板33によって分散されて小さくなっていることが分かる。
【0027】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る排ガス分析装置100によれば、排ガスGが囲み板32に遮られて生じるカルマン渦が仕切り板33によって分散されて小さくなり、囲み板32により巻き込まれる排ガスGの流速を小さくすることができる。その結果、ガス導入口312Aに巻き込まれるダストの量を低減することができ、ガス導入口312A及び防塵フィルタFに堆積するダスト量を低減することができる。したがって、長期的に安定したサンプリングを可能にすることができ、安定した測定結果を得ることができる。また、堆積するダスト量を低減することができることから、ダスト除去及びフィルタ清掃等のメンテナンス頻度を少なくすることができ、ランニングコストを低減することもできる。
【0028】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0029】
例えば、前記実施形態では、プローブユニットがセンサ部を有するものであったが、その他、プローブユニットによりサンプリングされた排ガスをプローブユニットとは別に設けたセンサ部により排ガスに含まれる所定成分を検出するようにしても良い。
【0030】
また、前記実施形態の囲み板は、概略円筒形状をなすものであったが、その他、ガス導入口の前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲む形状であれば良く、半円筒形状、断面において下流側に行くに従って拡開する形状、断面概略門形状等をなすものであっても良い。
【0031】
さらに、前記実施形態の仕切り板33は、縦横2枚ずつの平板を組み合わせた正面視において格子状をなし、ガス導入口の前方の空間を9分割するものであったが、その他、ガス導入口の前方の空間を複数に分割するものであれば、これに限られない。例えば図6に示すように、3枚の仕切り板33を用いてガス導入口の前方の空間を3分割するものであっても良いし、図7に示すように、中心に円筒形状をなす仕切り板33aを設け、当該仕切り板33aをその他に仕切り板33bによって囲み板32に保持させる構造としても良い。
【0032】
なお、このとき、ガス導入口の前方の空間の分割数(仕切り板の枚数)及び仕切り板の態様は、応答速度及びダスト堆積の兼ね合いで決定することができる。例えば仕切り板の枚数を増やすと、ダストの堆積量を少なくすることができるが、時間応答速度が遅くなってしまう。一方で、仕切り板の枚数を減らすと、ダスト堆積量が多くなるが、時間応答速度を速くすることができる。このとき、ユーザの要求(メンテナンス性対応答速度)に合わせて仕切り板の枚数を変更する。
【0033】
加えて、前記実施形態のガス導入口は、プローブ管の先端壁に形成され、ガス導入口に防塵フィルタを設けて構成されているが、防塵フィルタを設けない構成でもよい。
【0034】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100 ・・・排ガス分析装置
3 ・・・プローブユニット
31 ・・・プローブ管
312A・・・ガス導入口
32 ・・・囲み板
33 ・・・仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道内に突出して設けられるプローブユニットを有し、当該プローブユニットにより前記煙道を流れる排ガスをサンプリングしてその排ガスを分析する排ガス分析装置であって、
前記プローブユニットが、
前記煙道を流れる排ガスを内部に導くガス導入口が形成されたプローブ管と、
前記プローブ管のガス導入口よりも延出し、前記ガス導入口の前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板と、
前記ガス導入口の前方の空間を前記囲み板の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板と、を具備する排ガス分析装置。
【請求項2】
前記囲み板が、前記ガス導入口の前方の空間を前記プローブ管の中心軸周りに全周を囲むように設けられている請求項1記載の排ガス分析装置。
【請求項3】
煙道内に突出して設けられ、当該煙道を流れる排ガスをサンプリングするプローブユニットであって、
前記煙道を流れる排ガスを内部に導くガス導入口が形成されたプローブ管と、
前記プローブ管のガス導入口よりも延出し、前記ガス導入口の前方の空間を少なくとも煙道上流側から囲むように設けられた囲み板と、
前記ガス導入口の前方の空間を前記囲み板の延出方向に沿って複数に分割する仕切り板と、を具備するプローブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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