説明

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法

【課題】ディーゼル排ガス中のパティキュレートに対する高い触媒活性と耐熱性を有する排ガス浄化触媒の提供、高いパティキュレート捕集効率を有する排ガス浄化フィルタの提供、これら排ガス浄化触媒や排ガス浄化フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の排ガス浄化触媒は、金属酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とシリカとを含み、金属酸化物とアルカリ金属の硫酸塩に対するシリカのモル比が0.1〜6の範囲とすることを特徴とする。この排ガス浄化触媒を多孔質材料からなる三次元構造体の隔壁に均一担持し、隔壁の細孔の平均細孔径が5〜15μm、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%以下で、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%以下になるように製造することによって、高い触媒活性、耐熱性、捕集効率を有する排ガス浄化フィルタを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中に含まれるパティキュレート(固体状炭素微粒子、液体あるいは固体状の高分子量炭化水素微粒子)を燃焼して排ガスを浄化する排ガス浄化触媒、排ガス浄化フィルタ、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排ガスに含まれるパティキュレートは、その粒子径がほぼ1μm以下で大気中に浮遊しやすく、呼吸時に人体に取り込まれやすい。
【0003】
また、このパティキュレートは発ガン性物質も含んでいることから、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートに対する規制が強化されつつある。
【0004】
排ガスからのパティキュレートを除去する排ガス浄化フィルタとして、排ガス流にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)がある。DPFとは、セラミックスなどの多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体であり、セル両端のうち一方を交互にプラグで栓詰めされているハニカムフィルタである。ディーゼルエンジンから排出される排ガスがDPFの多数のセル内に流入し、多孔質材料の隔壁を排ガスが通過する際に隔壁表面及び隔壁に存在する細孔内の壁面に排ガス中に含まれるパティキュレートが捕集される仕組みになっている。
【0005】
パティキュレートを捕集するだけではDPFの圧損が上昇しエンジンに悪影響を及ぼすため、一般的にはDPFに金属酸化物などを含む排ガス浄化触媒を担持し、触媒によってDPFに捕集されたパティキュレートを酸化燃焼させることでガスへと分解している。これによってエンジンから排出されるパティキュレートを連続的に捕集・分解することが可能になる。また、排ガス程度の温度でパティキュレートを酸化燃焼できる高活性な排ガス浄化触媒が求められており様々な触媒が考案されている。
【0006】
特許文献1には酸化物担体に担持された貴金属の上に、遷移金属を担持した排ガス浄化触媒が開示されている。また、特許文献2には一種類以上の金属を含有したセリウム−ジルコニウム複合酸化物の排ガス浄化触媒が開示されている。また、特許文献3には表層に銀を担持した複合貴金属コロイドの排ガス浄化触媒が開示されている。また、特許文献4にはDPFの隔壁にアルミナ等から成るコート層を形成し、コート層に白金等の触媒金属を担持した排ガス浄化フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−251186号公報
【特許文献2】特開2003−334443号公報
【特許文献3】特開2004−57949号公報
【特許文献4】特開平9−220423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の排ガス浄化触媒には、以下の課題があった。
【0009】
特許文献1および特許文献2に記載の排ガス浄化触媒は、比較的低温の排ガスにおいてもパティキュレートを燃焼開始させることができるが、完全燃焼させるにはさらに高い温
度を必要とし、十分な触媒活性ではなかった。このような排ガス浄化触媒は、多孔質担体の細孔内に触媒が担持されているため、細孔よりも大きな粒子のパティキュレートと接触することができないため十分な触媒活性が得られないものと考えられる。
【0010】
また、特許文献3は、特許文献1や特許文献2のように触媒を多孔質担体の細孔内に担持するのではなく、粒子径を数nm以上に大きくした複合貴金属コロイドを担体表面に担持しているのでパティキュレートとの接触性は向上するため触媒活性は改善するが、粒子径の大きな貴金属コロイドは表面積が小さいため担体との接触面積が少なく、かつ、450℃という低温焼成で貴金属コロイドを担体に担持しているため熱に対する耐久性は十分なものではなかった。
【0011】
さらに、特許文献4に記載の貴金属系の排ガス浄化触媒をDPFに担持した排ガス浄化フィルタはパティキュレートを完全燃焼させるには高い排ガス温度を必要とし、パティキュレートに対する触媒活性は十分とはいえず、また、高温に対する耐久性が十分とはいえず、また、DPFの隔壁に存在する細孔の平均細孔径が約20μm程度と大きいためパティキュレートを捕集する効率は基本的に低く、DPFの隔壁にパティキュレートを捕集させ、パティキュレートの堆積層を形成させることによって捕集効率を高く維持しているが、DPFの隔壁に常にパティキュレートの堆積層を形成させなければならないため、エンジンの運転条件が急激に変化した場合、一気にパティキュレートの堆積層が燃焼し、DPF自体が溶損したり、パティキュレートの捕集効率が低下したりするという課題があった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、より低い排ガス温度でパティキュレートを完全燃焼することができる高い触媒活性を有し、かつ優れた耐熱性を有する排ガス浄化触媒の提供し、また、より低い排ガス温度でパティキュレートを完全燃焼することができる高い触媒活性や高温に対する耐久性が高く、パティキュレートの堆積層が触媒燃焼によって消失してもパティキュレートの捕集効率を高く維持する排ガス浄化フィルタを提供し、また、そのような排ガス浄化触媒や排ガス浄化フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の排ガス浄化フィルタは、上記目的を達成するために、多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体と、隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に担持された金属酸化物と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩と、シリカとを含む排ガス浄化触媒とを備えた排ガス浄化フィルタにおいて、排ガス浄化フィルタが有する細孔の内、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%以下で、かつ、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、排ガス浄化フィルタが有する細孔は、平均細孔径が5〜15μmの範囲であることを特徴とするものである。
【0015】
また、排ガス浄化フィルタの隔壁の厚みが450μm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
また、排ガス浄化フィルタのセル数が1平方インチ当たり100セル以上であることを特徴とするものである。
【0017】
また、多孔質材料がコージェライト、炭化珪素、ステンレスの内のいずれか一つ以上の材料であることを特徴とするものである。
【0018】
また、平均粒子径が1μm以下のシリカを分散させた水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面にシリカを添着させることを特徴とするものである。
【0019】
また、シリカを三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とするものである。
【0020】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とするものである。
【0021】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とするものである。
【0022】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とするものである。
【0023】
また、凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とするものである。
【0024】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを、溶解させた触媒水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に触媒を添着させることを特徴とするものである。
【0025】
また、触媒を三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とするものである。
【0026】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とするものである。
【0027】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とするものである。
【0028】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とするものである。
【0029】
また、凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の排ガス浄化触媒によれば、より低い排ガス温度でパティキュレートを完全燃焼することができる高い触媒活性を有し、かつ優れた耐熱性を有する排ガス浄化触媒を提供し、また、より低い排ガス温度でパティキュレートを完全燃焼することができる高い触媒活性や高温に対する耐久性が高く、パティキュレートの堆積層が触媒燃焼によって消失してもパティキュレートの捕集効率を高く維持する排ガス浄化フィルタを提供し、また、そのような排ガス浄化触媒や排ガス浄化フィルタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例の性能評価試験におけるカーボン残存率を示すグラフ
【図2】本発明の実施例1〜5、比較例1の性能評価試験(T10)の結果を示すグラフ
【図3】本発明の実施例1〜5、比較例1の性能評価試験(T90)の結果を示すグラフ
【図4】本発明の実施例1〜5、比較例1の細孔分布の結果を示すグラフ
【図5】評価例3の排ガス試験を表す図
【図6】評価例4の排ガス試験を表す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の請求項1に記載の発明は、多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体と、隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に担持された金属酸化物と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩と、シリカとを含む排ガス浄化触媒とを備えた排ガス浄化フィルタにおいて、排ガス浄化フィルタが有する細孔の内、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%以下で、かつ、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
【0033】
この構成によって、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩を含むことにより、金属酸化物の触媒活性を高めることができ、DPFに捕集されたパティキュレートを排ガス温度程度で燃焼分解させることできるようになる。
【0034】
また、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩を選択することによって、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等に比べて熱的に最も安定で高い耐熱性を有し、かつ硫黄酸化物による耐被毒性に優れた硫酸塩を使用することで、パティキュレートの燃焼に対して高い触媒活性を維持することができるようになる。
【0035】
また、シリカを含むことにより、表面積の大きいシリカの表面上に金属酸化物、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩を担持することができるようになるため、排ガス浄化触媒の表面積が大きくなり、パティキュレートとの接触確率が増えることによって触媒活性を向上させることができるようになる。
【0036】
また、金属酸化物、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩がシリカ表面との境界層で適度に固溶して複合化することによって触媒が安定化し、長期間に渡って暴露される高温の排ガスに対する耐久性が向上する。
【0037】
また、排ガス浄化触媒をDPFなどのフィルタ表面に担持する場合、シリカが触媒とフィルタ材料の中間層となり、触媒とフィルタ材料が反応することによって生じる触媒活性低下を抑制することが可能になる。
【0038】
また、銅を含むことで、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0039】
銅は2価と1価の価数をとり、銅の酸化物としては、CuO(2価)とCuO(1価)が存在し、2価から1価へ変化する際に原子間の酸素をパティキュレートに与えて酸化させることができる。1価へと還元された酸化銅は排ガス中の酸素によって容易に酸化され2価の状態に戻るため、この繰り返しによってパティキュレートを連続的に酸化燃焼することができるようになる。
【0040】
また、金属酸化物がバナジウム、モリブデンのいずれか一つ以上を含むことによって、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0041】
バナジウムは1価、2価、3価、4価、5価と多くの価数をとり、バナジウムの酸化物としては、VO(1価)、V(2価)、V(3価)、V(4価)、V(5価)が存在し、低価数へ変化する際に原子間の酸素をパティキュレートに与えて酸化させることができる。低価数へと還元された酸化バナジウムは排ガス中の酸素によって容易に酸化されるため、この繰り返しによってパティキュレートを連続的に酸化燃焼することができるようになる。
【0042】
モリブデンは2価、3価、4価、5価、6価と多くの価数をとり、モリブデンの酸化物としては、MoO(2価)、Mo(3価)、MoO(4価)、Mo(5価)、MoO(6価)が存在し、低価数へ変化する際に原子間の酸素をパティキュレートに与えて酸化させることができる。低価数へと還元された酸化モリブデンは排ガス中の酸素によって容易に酸化されるため、この繰り返しによってパティキュレートを連続的に酸化燃焼することができるようになる。
【0043】
また、銅およびバナジウムを含むことで、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になると共に、耐久性に優れた排ガス浄化触媒となる。
【0044】
銅およびバナジウムの複合酸化物は種々存在するが、特にCuVの結晶構造は非常に安定化するため、原子間の酸素を安定的にパティキュレートに与えて酸化させることができるようになる。
【0045】
また、CuVの結晶構造をとることで、熱的に非常に安定となり耐久性に優れた排ガス浄化触媒となる。
【0046】
また、銅およびモリブデンを含むことでパティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になると共に、耐久性に優れた排ガス浄化触媒となる。
【0047】
また、銅およびバナジウムを含んだ金属酸化物において、銅の一部をリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、セシウム、バリウム、モリブデン、タングステンのいずれか一つ以上と置換したことによって、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0048】
銅の一部を銅の大きさと異なる他の金属に置換することによって、銅とバナジウムの複合酸化物の一部の結晶構造が崩れ、原子間の酸素の出入りが促進され、効率的にパティキュレートに酸素を与えて酸化させることができるようになる。
【0049】
また、銅およびバナジウムを含んだ金属酸化物において、バナジウムの一部をリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、セシウム、バリウム、モリブデン、タングステンのいずれか一つ以上と置換したことでパティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0050】
バナジウムの一部をバナジウムの大きさと異なる他の金属に置換することによって、銅とバナジウムの複合酸化物の一部の結晶構造が崩れ、原子間の酸素の出入りが促進され、効率的にパティキュレートに酸素を与えて酸化させることができるようになる。
【0051】
また、銅およびモリブデンを含んだ金属酸化物において、モリブデンの一部をリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、セシウム、バリウム、タングステンのいずれか一つ
以上と置換したことでパティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0052】
モリブデンの一部をモリブデンの大きさと異なる他の金属に置換することによって、銅とモリブデンの複合酸化物の一部の結晶構造が崩れ、原子間の酸素の出入りが促進され、効率的にパティキュレートに酸素を与えて酸化させることができるようになる。
【0053】
また、アルカリ金属の硫酸塩がリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムのいずれか一つ以上を含むことによって、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0054】
アルカリ金属の硫酸塩はそれ自体、化学的に安定なためパティキュレートに対する燃焼活性は低いが、金属酸化物が共存することによって容易にアルカリ金属の硫酸塩から硫黄酸化物を離脱させ、パティキュレートに対して活性の高いアルカリ金属の酸化物や水酸化物や炭酸塩へと変化し、直ちにパティキュレートを酸化させることができる。アルカリ金属は排ガス中の硫黄酸化物と速やかに反応して安定なアルカリ金属の硫酸塩となる。この繰り返しによってパティキュレートを連続的に酸化燃焼することができるようになる。
【0055】
また、アルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムを選択することで高価なルビジウムと比べて安価な材料であるため、安価な排ガス浄化触媒となる。
【0056】
また、アルカリ金属としてセシウムとすることで、パティキュレートの燃焼効率を最大化することが可能になる。
【0057】
セシウムはアルカリ金属の中で最も強い還元性を示し、最外殻電子を与えやすいため、活性酸素が生成しパティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。また、融点の低いセシウム化合物へと変化することで、パティキュレートとの密着性が向上し、結果として触媒燃焼活性が向上すると考えられる。
【0058】
また、アルカリ土類金属の硫酸塩がカルシウム、ストロンチウム、バリウムのいずれか一つ以上を含むことによって、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になる。
【0059】
金属酸化物にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの硫酸塩のいずれか一つ以上を加えることによって、金属酸化物単独の触媒活性よりも向上させることができる。
【0060】
アルカリ土類金属の硫酸塩と金属酸化物が共存することによって、融点の低いアルカリ土類金属化合物へと変化することで、パティキュレートとの密着性が向上し、結果として触媒燃焼活性が向上すると考えられる。
【0061】
また、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金のいずれか一つ以上を含むことによって、パティキュレートを効率良く酸化燃焼することが可能になると共に、排ガス中のガス成分をも酸化させることができるようになる。
【0062】
貴金属はその表面に吸着した酸素分子を解離させる作用を有し、パティキュレートのみならず排ガス中のガス成分を強く酸化させる活性酸素原子を生成させることができる。しかしながら、貴金属は生成した活性酸素原子との親和性が高いため、反応性の高い活性酸素原子を生成しても貴金属表面に貯めてしまう欠点があるが、活性酸素原子との親和性の低い金属酸化物が貴金属近傍に共存することによって貴金属で生成した活性酸素原子を効率良くパティキュレートへ与えて酸化させることができるようになる。
【0063】
またロジウム、パラジウム、イリジウム、白金は、高価なルテニウムやオスミウムと比較して、安価な材料であり、結果として安価な排ガス浄化触媒となる。
【0064】
また、金属酸化物とアルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩に対してシリカのモル比が0.1〜6の範囲であることによって、シリカを適切な範囲で加えることで、排ガス浄化触媒の熱に対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0065】
金属酸化物とアルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩に対してシリカのモル比が0.1より少なくなると、耐久性を向上させる効果が低下するので好ましくなく、また、6より大きくなると、触媒のパティキュレートに対する活性を低下させることに繋がり好ましくない。従って、0.1〜6の範囲にすることで、触媒の活性を維持しながら耐久性を向上させることが可能になる。
【0066】
また、平均粒子径が1μm以下のシリカを原料とすることでシリカの表面積を大きくすることができ、シリカ表面上に金属酸化物、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩を担持することができるようになるため、排ガス浄化触媒の表面積が大きくなり、パティキュレートとの接触確率が増えることによって触媒活性を向上させることができるようになる。
【0067】
また、金属酸化物、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩がシリカ表面との境界層で適度に固溶して複合化することによって触媒が安定化し、長期間に渡って暴露される高温の排ガスに対する耐久性が向上する。
【0068】
また、排ガス浄化触媒をDPFなどの多孔質材料からなるフィルタに担持する場合において、平均粒子径が1μm以下のシリカであれば、フィルタの細孔内(平均細孔径が約20μm程度)にもシリカを分散させて均一に担持することができるようになり、確実にシリカが触媒とフィルタ材料との中間層となるので、触媒とフィルタ材料が反応することによって生じる触媒活性の低下を抑制することが可能になる。
【0069】
また、金属酸化物の原料となる金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた溶液にシリカを含浸し、凍結乾燥後、酸化雰囲気下で加熱処理して製造する製造方法によって、パティキュレートに対して活性の高い排ガス浄化触媒を得ることができる。
【0070】
金属酸化物の原料となる金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた溶液を用いることで、シリカ表面に高分散した状態で触媒成分を添着させることができる。
【0071】
金属酸化物粒子やアルカリ金属硫酸塩粒子および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩粒子をシリカに添着させても良いが、触媒活性を向上させるために触媒粒子を微粉砕しなければならないし、また、微粉化した種々の粒子同士を均一混合しなければならないのに対して、種々の金属の塩を水溶液として溶解することができれば非常に均一な水溶液となり、結果としてシリカ表面に均一に添着することが可能になる。
【0072】
さらにシリカ表面に触媒成分を均一に添着させた後、凍結乾燥をすることによってシリカ表面に触媒成分を均一に添着した状態を保持することができる。
【0073】
凍結乾燥においては、触媒成分を分散させた溶液を一旦凍結固化し、固体状態から気体状態へと昇華しながら乾燥するため、部分的な乾燥を防止し、シリカ表面における乾燥時の触媒成分の移動を抑制することができ、より均一に触媒成分をシリカ表面に担持するこ
とができるようになり、得られた排ガス浄化触媒とパティキュレートとの接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができるようになる。
【0074】
こうしてシリカ表面に触媒を均一に添着した状態を保持した状態で乾燥されたものを酸化雰囲気下で加熱処理することで、シリカ表面に種々の触媒成分を均一に担持することができるようになる。
【0075】
本発明の排ガス浄化触媒の活性や耐熱性は、製造時の加熱処理温度に強く依存しており、高い触媒活性と耐熱性を発揮させるためには、700〜900℃で処理することが好ましい。
【0076】
また、ディーゼル排ガス浄化触媒は、実際の使用条件ではその近傍温度がまれに600℃程度に達することがあり、700℃以下の加熱処理では、使用中に触媒組成などが変化し、活性が低下する虞があるので好ましくない。逆に、900℃以上の高温で処理する場合、触媒自体の活性が低下したり、触媒を担持するセラミックスなどに損傷を与えたりする虞があるので好ましくない。
【0077】
そして、隔壁の表面及び/または隔壁に存在する細孔内の壁面に担持された酸化触媒によってより低い排ガス温度で堆積したパティキュレートを燃焼除去することができるため排ガス浄化フィルタの圧力損失の上昇を低く抑え、また、排ガス浄化フィルタが有する細孔の細孔径を制御することによって隔壁表面にパティキュレートが衝突する確率が上昇し、堆積したパティキュレートが燃焼除去されてもパティキュレートの捕集効率を高く維持できる排ガス浄化フィルタが得られる。
【0078】
また、ディーゼルエンジンを高負荷運転した際に発生する比較的高温の排ガスによって、排ガス浄化フィルタに担持された酸化触媒が活性化し、排ガス浄化フィルタに堆積したパティキュレートが燃焼除去してしまった場合にも、高い捕集効率を維持することが可能になる。
【0079】
また、排ガス浄化フィルタが有する細孔の内、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%を超える範囲の場合、パティキュレートの捕集効率を高く維持することができるが、排ガス浄化フィルタの隔壁を排ガスが通過する際に生じる圧力損失が増大する。
【0080】
また、排ガス浄化フィルタが有する細孔の内、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%を超える範囲の場合、パティキュレートの捕集効率を高く維持することができない。
【0081】
また、排ガス浄化フィルタが有する細孔は、平均細孔径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
【0082】
この構成によって、排ガス浄化フィルタの高い捕集効率を維持したまま、排ガス浄化フィルタの圧力損失を低く保つことが可能になる。
【0083】
また、平均細孔径が5μm未満の場合には、ディーゼルエンジンから排出される排ガスが排ガス浄化フィルタの隔壁を通過する際の圧力損失が増大し、エンジンの出力低下や燃費の悪化に繋がる虞がある。
【0084】
また、平均細孔径が15μmを超える場合には、ディーゼルエンジンから排出される排ガスに含まれるパティキュレートが排ガス浄化フィルタの隔壁を通過する際に、パティキュレートが隔壁に捕集される捕集効率が低下する虞がある。従来技術のように、排ガス浄
化フィルタが有する隔壁に形成されたパティキュレートの堆積層によって捕集効率を高く維持する場合は15μmを超えた場合でも捕集効率を高く維持することは可能であるが、エンジンの運転条件が急激に変化した場合、一気にパティキュレートの堆積層が燃焼し、排ガス浄化フィルタ自体が溶損したり、パティキュレートの捕集効率が低下したりする虞がある。これに対して、本発明の排ガス浄化フィルタは、パティキュレートの堆積層に依存することなく捕集効率を高く維持できるという特徴を有しており、常にパティキュレートを触媒燃焼によって除去しながら捕集効率を高く維持するための制約条件が、平均細孔径が15μm以下となる。
【0085】
また、排ガス浄化フィルタの隔壁の厚みが450μm以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
【0086】
この構成によって、排ガス浄化フィルタの高い捕集効率を維持したまま、排ガス浄化フィルタの圧力損失を低く保つことができるようになる。
【0087】
隔壁の厚みが450μmを超える場合には、排ガスが隔壁を通過する際の圧力損失が増大してエンジンの出力低下や燃費の悪化に繋がる虞がある。
【0088】
また、排ガス浄化フィルタのセル数が1平方インチ当たり100セル以上であることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
【0089】
この構成によって、排ガス浄化フィルタの高い捕集効率を維持したまま、排ガス浄化フィルタの圧力損失を低く保つことが可能になる。
【0090】
排ガス浄化フィルタのセル数は、排ガスがセル内を通過する際の圧力損失に影響を及ぼす。パティキュレートが存在しない常温の大気を通過させるような場合には、セル数が少ないほど大気と接触するセル内の面積が低下するため、圧力損失を下げることが可能になる。しかしながら、パティキュレートを含んだ排ガスを通過させる場合には、前記状態とは異なり、セル数を多くしてセル内面積を増やすほど、パティキュレートの濾過面積が増加するため、パティキュレートが堆積することによって排ガス流路を閉塞する確率が下がり、エンジンの出力低下や燃費の悪化を防止することが可能になる。従って、排ガス浄化フィルタのセル数は、多いほど圧力損失を下げることができ、少なくともセル数が1平方インチ当たり100セル以上にする必要が有り、100セル未満の場合には、圧力損失を下げる効果が低くなる虞がある。
【0091】
また、多孔質材料がコージェライト、炭化珪素、ステンレスの内のいずれか一つ以上の材料であることを特徴とする排ガス浄化フィルタである。
【0092】
この構成によって、長期に渡って排ガスに暴露されることになる排ガス浄化フィルタの排ガス温度に対する熱耐久性が確保できると共に、機械的振動に対する耐振動性が確保でき、排ガス中に含まれる腐食性ガスに対する耐腐食性を確保することができるようになる。また、酸化触媒と多孔質材料との密着性が向上するため排ガス浄化フィルタから酸化触媒が剥離することを防止することができる。また、比較的安価に入手することができるため製品コストを低減することできるし、機械的強度が高いことによって排ガス浄化フィルタの製造プロセスにおけるハンドリング性が向上する。
【0093】
また、ステンレス材料の場合は、連通した気孔を有する発泡金属構造や金属繊維構造を有するものを採用することができる。
【0094】
また、平均粒子径が1μm以下のシリカを分散させた水溶液を用いて三次元構造体の隔
壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面にシリカを添着させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0095】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内の壁面に均一にシリカを担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと、シリカ上に担持された酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0096】
また、シリカを分散させた水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に添着させる方法として、三次元構造体を水溶液中に浸漬することで添着させても良いし、三次元構造体は固定したまま水溶液を上昇および/または下降や、平行移送させることで添着させても良いし、三次元構造体は固定したまま水溶液を吹き付けや滴下によって添着させても良い。
【0097】
また、シリカを三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0098】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内の気体や水溶液に含まれる気体を減圧することによって除去し、シリカを分散させた水溶液を効率良く三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透させることによって均一にシリカを担持することができるようになり、堆積したパティキュレートとシリカ上に担持された酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0099】
三次元構造体の隔壁には非常に多くの細孔が存在するためそのまま水溶液と接触させても細孔内の気体が押出されないまま留まってしまい、気体が留まってしまった空間には水溶液が充填されず、言い換えれば充填されない隔壁の表面は水溶液で濡れないことになりシリカを均一に担持することは実現できない。このような理由から減圧操作することは非常に重要な製造プロセスとなる。
【0100】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0101】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透したシリカを分散させた水溶液を均一に除去することによって均一にシリカが担持され、シリカ上に担持される酸化触媒をも均一に担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0102】
一般的に余剰液の除去方法としてエアブローなどが挙げられるが、エアブローで余剰な水溶液を除去すると、三次元構造体に保持されている水溶液の一部がエアへと蒸発し、三次元構造体の部分的な乾燥が進行する。部分的な乾燥が進行すると乾燥した部分に水溶液が移動するためそれに伴って水溶液中のシリカも移動し、結局、三次元構造体へのシリカの担持ムラが生じる。排ガスが均等に排ガス浄化フィルタ内に流入したとしても、排ガス浄化フィルタ内のシリカの担持にムラが存在する場合、シリカ上に担持される酸化触媒の担持にもムラが存在し、それによって酸化触媒とパティキュレートとの接触性が低下してパティキュレートの燃焼が不均一になり、燃焼不十分な箇所においてはパティキュレートが目詰まりし、排ガス浄化フィルタの圧力損失が上昇したり、最悪は溶損したりする虞がある。
【0103】
こういったパティキュレートの不均一な燃焼を防止するために三次元構造体には均一にシリカを担持する必要が有る。シリカを含む水溶液が浸透した三次元構造体を吸湿性材料と接触させることにより、部分的な乾燥を防止しながら余剰の水溶液を三次元構造体から吸湿性材料へと移動させることができる。吸湿性材料としては、不織布などを用いることができる。
【0104】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0105】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透したシリカを分散させた水溶液を均一に除去することによって均一にシリカを担持することができるようになり、堆積したパティキュレートとシリカ上に担持される酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0106】
三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透した水溶液に直接遠心力が加えることによって水溶液がバルクとして三次元構造体の外に押出されるため、蒸発を防止し部分的な乾燥をさせることなく三次元構造体から余剰の水溶液を除去することが可能になる。なお、三次元構造体から余剰の水溶液を遠心力によって除去し、さらに三次元構造体を吸湿性材料と接触させることで余剰液を完全に除去しても良い。
【0107】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0108】
この構成によって、三次元構造体に保持された水溶液を凍結させた後、三次元構造体の周囲を減圧することによって凍結した水溶液が、固体状態から気体状態へと昇華しながら乾燥するため、三次元構造体の部分的な乾燥を防止し、乾燥時のシリカの移動を抑制することができ、より均一にシリカを担持することができるようになり、堆積したパティキュレートとシリカ上に担持される酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0109】
フィルタを凍結させる手段としては、真空凍結乾燥装置などを用い、減圧して溶媒を気化させることでその際に奪われる気化熱によりよって三次元構造体及び保持された水溶液を凍結させることができる。
【0110】
また、凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0111】
この構成によって、瞬間的に三次元構造体を凍結させることができ、三次元構造体に保持される水溶液の蒸発を防止し、それによって乾燥時のシリカの移動を抑制することができるようになり、堆積したパティキュレートとシリカ上に担持される酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0112】
液体窒素はその温度が77K(−196℃)と非常に低温であるため、三次元構造体に保持されたシリカの分散液を瞬間的に凍結させるには十分な低温域である。
【0113】
また、液体窒素は比較的容易かつ安価に入手できるため、製造コストを抑え安価な排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0114】
また、三次元構造体内に液体窒素を注ぎ込んだり、液体窒素内に三次元構造体を投入したりと、比較的容易な方法で三次元構造体に保持されたシリカの分散液を瞬間的に凍結させることができる。
【0115】
なお、低温な液体や気体であればどんなものでも適用可能で、液体窒素(温度は77K)、液体酸素(温度は90K)、液体アルゴン(温度は87K)、液体水素(温度は20K)、ドライアイスとエチルアルコールやドライアイスとエチルエーテルなどから得られる低温液体やドライアイスなどの冷温固体で冷却した空気や冷凍サイクルで得た冷却空気やペルチェ素子で得た冷却空気やボルテック効果を利用した冷却空気を用いても良い。ここでいう低温とは−20℃(253K)程度以下のことを言い、これより高いと瞬間的に凍結させることが難しく、また凍結してもすぐに溶けてしまうので好ましくない。
【0116】
また、シリカを三次元構造体に添着させた後、金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを、溶解させた触媒水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に触媒を添着させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0117】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内の壁面に均一に酸化触媒を担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。種々の金属を酸化触媒として利用する際に、種々の金属を含む粒子を水に分散させたスラリーを用いて三次元構造体に添着することもできるが、粒子をナノオーダーレベルの非常に細かい粒子径にまで微粉砕しなければならないし、また、微粉化できたとしてもスラリー中で種々の金属を含む粒子を1次粒子として分散させなければ均一に担持させることは実現できない。これに対して、種々の金属の塩を水溶液として溶解することができれば粒子の分散スラリーと比べて非常に均一な水溶液となり、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内の壁面に均一に添着することが可能になる。
【0118】
また、金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを、溶解させた水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に添着させる方法として、三次元構造体を水溶液中に浸漬することで添着させても良いし、三次元構造体は固定したまま水溶液を上昇および/または下降や、平行移送させることで添着させても良いし、三次元構造体は固定したまま水溶液を吹き付けや滴下によって添着させても良い。
【0119】
また、触媒を三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0120】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内の気体や水溶液に含まれる気体を減圧することによって除去し、金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを、溶解させた水溶液を効率良く三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透させることによって均一に酸化触媒を担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0121】
三次元構造体の隔壁には非常に多くの細孔が存在するためそのまま水溶液と接触させても細孔内の気体が押出されないまま留まってしまい、気体が留まってしまった空間には水
溶液が充填されず、言い換えれば充填されない隔壁の表面は水溶液で濡れないことになり酸化触媒を均一に担持することは実現できない。このような理由から減圧操作することは非常に重要な製造プロセスとなる。
【0122】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0123】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透した金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた水溶液を均一に除去することによって均一に酸化触媒を担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0124】
一般的に余剰液の除去方法としてエアブローなどが挙げられるが、エアブローで余剰な水溶液を除去すると、三次元構造体に保持されている水溶液の一部がエアへと蒸発し、三次元構造体の部分的な乾燥が進行する。部分的な乾燥が進行すると乾燥した部分に水溶液が移動するためそれに伴って水溶液中の金属塩も移動し、結局、三次元構造体への金属の担持ムラが生じる。排ガスが均等に排ガス浄化フィルタ内に流入したとしても、排ガス浄化フィルタ内の触媒の担持にムラが存在する場合、パティキュレートの燃焼が不均一になり、燃焼不十分な箇所においてはパティキュレートが目詰まりし、排ガス浄化フィルタの圧力損失が上昇したり、最悪は溶損したりする恐れがある。
【0125】
こういったパティキュレートの不均一な燃焼を防止するために三次元構造体には均一に触媒成分の金属を担持する必要が有る。金属塩を含む水溶液が浸透した三次元構造体を吸湿性材料と接触させることにより、部分的な乾燥を防止しながら余剰の水溶液を三次元構造体から吸湿性材料へと移動させることができる。吸湿性材料としては、不織布などを用いることができる。
【0126】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0127】
この構成によって、三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透した金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた水溶液を均一に除去することによって均一に酸化触媒を担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0128】
三次元構造体の隔壁の表面や隔壁に存在する細孔内に浸透した水溶液に直接遠心力が加えることによって水溶液がバルクとして三次元構造体の外に押出されるため、蒸発を防止し部分的な乾燥をさせることなく三次元構造体から余剰の水溶液を除去することが可能になる。なお、三次元構造体から余剰の水溶液を遠心力によって除去し、さらに三次元構造体を吸湿性材料と接触させることで余剰液を完全に除去しても良い。
【0129】
また、触媒を三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0130】
この構成によって、三次元構造体に保持された水溶液を凍結させた後、三次元構造体の周囲を減圧することによって凍結した水溶液が、固体状態から気体状態へと昇華しながら
乾燥するため、三次元構造体の部分的な乾燥を防止し、乾燥時の触媒成分の移動を抑制することができ、より均一に触媒を担持することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0131】
フィルタを凍結させる手段としては、真空凍結乾燥装置などを用い、減圧して溶媒を気化させることでその際に奪われる気化熱によりよって三次元構造体及び保持された水溶液を凍結させることができる。
【0132】
また、凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法である。
【0133】
この構成によって、瞬間的に三次元構造体を凍結させることができ、三次元構造体に保持される水溶液の蒸発を防止し、それによって乾燥時の触媒成分の移動を抑制することができるようになり、堆積したパティキュレートと酸化触媒との接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができる排ガスフィルタを製造することができるようになる。
【0134】
液体窒素はその温度が77K(−196℃)と非常に低温であるため、三次元構造体に保持された金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩の分散液を瞬間的に凍結させるには十分な低温域である。
【0135】
また、液体窒素は比較的容易かつ安価に入手できるため、製造コストを抑え安価な排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0136】
また、三次元構造体内に液体窒素を注ぎ込んだり、液体窒素内に三次元構造体を投入したりと、比較的容易な方法で三次元構造体に保持された金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩の分散液を瞬間的に凍結させることができる。
【0137】
なお、低温な液体や気体であればどんなものでも適用可能で、液体窒素(温度は77K)、液体酸素(温度は90K)、液体アルゴン(温度は87K)、液体水素(温度は20K)、ドライアイスとエチルアルコールやドライアイスとエチルエーテルなどから得られる低温液体やドライアイスなどの冷温固体で冷却した空気や冷凍サイクルで得た冷却空気やペルチェ素子で得た冷却空気やボルテック効果を利用した冷却空気を用いても良い。ここでいう低温とは−20℃(253K)程度以下のことを言い、これより高いと瞬間的に凍結させることが難しく、また凍結してもすぐに溶けてしまうので好ましくない。
【0138】
また、排ガス流路の上流側に酸化触媒ハニカムを備え、下流側に上記排ガス浄化フィルタを備えた構成によって、酸化触媒ハニカムに担持された酸化触媒の効果によってパティキュレートに含まれる揮発成分が燃焼除去され、上記排ガス浄化フィルタと組み合せることによって、非常に高いパティキュレート浄化能力を発揮できる。ここで、パティキュレートは、未燃の燃料や潤滑油由来の揮発成分と、固体成分であるスートで構成されており、揮発成分はスートに吸着や凝集した形で存在したり、そのままの状態で排ガス中に存在したりしており、酸化触媒ハニカムと排ガス浄化フィルタとを組み合せて使用することで様々な状態のパティキュレートを燃焼除去することが可能になる。
【0139】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0140】
(実施の形態)
本発明の排ガス浄化触媒は、金属酸化物と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類
金属の硫酸塩と、シリカで構成した排ガス浄化触媒である。
【0141】
金属酸化物としては、銅を含んだもの、バナジウムあるいはモリブデンを含んだもの、銅とバナジウムの両方を含んだもの、銅とモリブデンの両方を含んだものが挙げられる。
【0142】
銅とバナジウムの両方を含んだものの場合、銅の一部を、あるいはバナジウムの一部をリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、セシウム、バリウム、モリブデン、タングステンのいずれか一つ以上と置換しても同様の触媒活性が得られる。置換する割合としては、銅に対して0.001〜0.3%であり、0.001%より小さくなると、一部の結晶構造を崩して、原子間の酸素の出入りが促進される効果が無くなるため、効率的にパティキュレートに酸素を与えて酸化させることができなくなる。また、0.3%より大きくすると、触媒の結晶構造が完全に崩れてしまうため触媒活性が低下してしまう。
【0143】
銅とモリブデンの両方を含んだものの場合についても、銅の一部を、あるいはモリブデンの一部をリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ストロンチウム、セシウム、バリウム、タングステンのいずれか一つ以上と置換しても同様の触媒活性が得られる。置換する割合としては、銅に対して0.001〜0.3%であり、0.001%より小さくなると、一部の結晶構造を崩して、原子間の酸素の出入りが促進される効果が無くなるため、効率的にパティキュレートに酸素を与えて酸化させることができなくなる。また、0.3%より大きくすると、触媒の結晶構造が完全に崩れてしまうため触媒活性が低下してしまう。
【0144】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。その中でも、セシウムを選択するとパティキュレートの触媒燃焼活性が最も高くなる。リチウム、ナトリウム、カリウムに関してはほぼ同等の触媒燃焼活性が得られる。また、アルカリ金属の硫酸塩を選択することによって、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等に比べて熱的に最も安定で高い耐熱性を有し、かつ硫黄酸化物による耐被毒性に優れた硫酸塩を使用することで、パティキュレートの燃焼に対して高い触媒活性を維持することができるようになる。
【0145】
アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。これらのいずれを用いてもほぼ同等の触媒燃焼活性が得られる。また、アルカリ土類金属の硫酸塩を選択することによって、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等に比べて熱的に最も安定で高い耐熱性を有し、かつ硫黄酸化物による耐被毒性に優れた硫酸塩を使用することで、パティキュレートの燃焼に対して高い触媒活性を維持することができるようになる。
【0146】
シリカとしては、シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、シリケート化合物の加水分解物などが挙げられる。シリケート化合物としては、テトラエトキシシランおよびその重合体であるメトキシポリシロキサン、エトキシポリシロキサン、ブトキシポリシロキサン、リチウムシリケートなどが挙げられる。
【0147】
シリカの粒子径としては、平均粒子径で1μm以下のシリカであれば、例えばDPFの細孔内(平均細孔径が約20μm程度)にもシリカを分散させて均一に担持することができるようになり、確実にシリカが触媒とフィルタ材料との中間層となるので、触媒とフィルタ材料が反応することによって生じる触媒活性の低下を抑制することが可能になる。
【0148】
また、シリカの含有量としては、排ガス浄化触媒に対しての0.1〜6mol%の範囲となるように調製することが好ましく、少なすぎると触媒活性および耐熱性を向上させる効果が得られず、また触媒担体としても機能しない。逆に多すぎると、金属酸化物、複合
金属酸化物、硫酸塩による触媒作用を阻害したり、フィルタに担持する場合はフィルタの圧損を必要以上に上昇させたりしまうので好ましくない。
【0149】
さらに、金属酸化物と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩と、シリカで構成した排ガス浄化触媒に貴金属を加えても良い。
【0150】
貴金属はその表面に吸着した酸素分子を解離させる作用を有し、パティキュレートのみならず排ガス中のガス成分を強く酸化させる活性酸素原子を生成させることができる。しかしながら、貴金属は生成した活性酸素原子との親和性が高いため、反応性の高い活性酸素原子を生成しても貴金属表面に貯めてしまう欠点があるが、活性酸素原子との親和性の低い金属酸化物が貴金属近傍に共存することによって貴金属で生成した活性酸素原子を効率良くパティキュレートへ与えて酸化させることができるようになる。
【0151】
貴金属としては、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金が挙げられる。これらのいずれを用いても同様の触媒活性向上が期待できる。なお、ルテニウムやオスミウムを用いても同様の触媒活性が得られるが、高価なため現実的には使用しにくい。
【0152】
また、貴金属の添加量としては、金属酸化物:貴金属のモル比で30:1〜10:1が好ましい。30:1より少なくなると、貴金属の添加による触媒活性向上の効果が無くなり、10:1よりも多くなると、金属酸化物の触媒活性が阻害されるので好ましくない。
【0153】
排ガス浄化触媒の製造方法としては、金属酸化物の原料となる金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた溶液にシリカを含浸し、凍結乾燥後、酸化雰囲気下で加熱処理すると、パティキュレートに対して最も活性の高い排ガス浄化触媒を得ることができる。
【0154】
金属酸化物の原料となる金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを溶解させた溶液を用いることで、シリカ表面に高分散した状態で触媒成分を添着させることができる。
【0155】
金属酸化物粒子やアルカリ金属硫酸塩粒子および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩粒子をシリカに添着させても良いが、触媒活性を向上させるために触媒粒子を微粉砕しなければならないし、また、微粉化した種々の粒子同士を均一混合しなければならないのに対して、種々の金属の塩を水溶液として溶解することができれば非常に均一な水溶液となり、結果としてシリカ表面に均一に添着することが可能になる。
【0156】
さらにシリカ表面に触媒成分を均一に添着させた後、凍結乾燥をすることによってシリカ表面に触媒成分を均一に添着した状態を保持することができる。
【0157】
凍結乾燥においては、触媒成分を分散させた溶液を一旦固化し、固体状態から気体状態へと昇華しながら乾燥するため、部分的な乾燥を防止し、シリカ表面における乾燥時の触媒成分の移動を抑制することができ、より均一に触媒成分をシリカ表面に担持することができるようになり、得られた排ガス浄化触媒とパティキュレートとの接触性が向上し、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼除去することができるようになる。
【0158】
こうしてシリカ表面に触媒を均一に添着した状態を保持した状態で乾燥されたものを酸化雰囲気下で加熱処理することで、シリカ表面に種々の触媒成分を均一に担持することができるようになる。
【0159】
また、加熱処理温度としては、700〜900℃が最も高い触媒活性と耐熱性を発揮さ
せることができる。ディーゼル排ガス浄化触媒は、実際の使用条件ではその近傍温度がまれに600℃程度に達することがあり、700℃以下の加熱処理では、使用中に触媒組成などが変化し、活性が低下する虞があるので好ましくない。逆に、900℃以上の高温で処理する場合、触媒自体の活性が低下したり、触媒を担持するセラミックスなどに損傷を与えたりする虞があるので好ましくない。
【0160】
排ガス浄化フィルタとして使用する多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体の材料としては、コージェライト、炭化珪素、ステンレスの内のいずれか一つ以上であれば特に本発明の効果に差は生じない。また、多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体の気孔構造としては、コージェライト製DPFや、炭化珪素製DPFでも良いし、連通した気孔を有する発泡金属製DPFや金属繊維製DPFなどでも良い。
【0161】
また、排ガス浄化フィルタの隔壁が有する細孔を制御する方法としては、排ガス浄化触媒の担持量や担持密度を調整することによって細孔を制御しても良いし、DPF製造の原料である骨材や造孔材の種類、粒子径、配合割合を調整することによって細孔制御したものでも良く、重要なことは三次元構造体の隔壁及び/または隔壁に存在する細孔内の壁面に排ガス浄化触媒を担持した際に形成される排ガス浄化フィルタが有する細孔が制御されているかどうかである。
【0162】
なお、排ガス浄化フィルタの隔壁が有する細孔径は、水銀圧入式細孔分布測定装置により測定することができる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0164】
(実施例1)
コージェライト片をシリカゾル(シリカの濃度2wt%、粒子径10〜20nm)に含浸し、コージェライト片が有する細孔に保持された気泡及び含浸液に保持された気泡を除去するために減圧装置内で10kPaまで減圧し、5分間保持した。次に、含浸液からコージェライト片を引き上げ、余剰なシリカゾルを吸水シートに押し当てて除去した。これを液体窒素に浸して凍結させ、真空乾燥機で減圧しながら24時間乾燥させた。次に電気炉で、大気雰囲気下、700℃、5時間の加熱処理を行い、シリカ被覆コージェライト片を作製した。被覆されたシリカはコージェライト片に対して0.9wt%だった。
【0165】
一方で、硫酸銅と、酸化硫酸バナジウムと、硫酸セシウムとをイオン交換水に溶解させ、触媒水溶液を調製した。このとき各成分の重量濃度は、硫酸銅が7.0wt%、酸化硫酸バナジウムが11.7wt%、硫酸セシウムが20.5wt%である。
【0166】
上記で作製したシリカ被覆コージェライト片を、触媒水溶液に含浸し、コージェライト片が有する細孔に保持された気泡及び含浸液に保持された気泡を除去するために減圧装置内で10kPaまで減圧し、5分間保持した。次に、含浸液からコージェライト片を引き上げ、余剰な水溶液を吸水シートに押し当てて除去した。これを液体窒素に浸して凍結させ、真空乾燥機で減圧しながら24時間乾燥させた。次に電気炉で、大気雰囲気下、700℃、5時間の加熱処理を行い、触媒担持シリカ被覆コージェライト片を作製した。担持された触媒はコージェライト片に対して19.8wt%だった。
【0167】
(実施例2)
シリカゾル(シリカの濃度4wt%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒担持シリカ被覆コージェライト片を作製した。被覆されたシリカと担持された触媒は
、コージェライト片の重量に対してそれぞれ1.8wt%と19.7wt%だった。
【0168】
(実施例3)
シリカゾル(シリカの濃度12wt%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒担持シリカ被覆コージェライト片を作製した。被覆されたシリカと担持された触媒は、コージェライト片に対してそれぞれ5.8wt%と18.2wt%だった。
【0169】
(実施例4)
シリカゾル(シリカの濃度28wt%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒担持シリカ被覆コージェライト片を作製した。被覆されたシリカと担持された触媒は、コージェライト片に対してそれぞれ13.6wt%と17.3%だった。
【0170】
(実施例5)
シリカゾル(シリカの濃度40wt%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒担持シリカ被覆コージェライト片を作製した。被覆されたシリカと担持された触媒は、コージェライト片に対してそれぞれ23.9wt%と15.0wt%だった。
【0171】
(比較例1)
実施例1と同様のコージェライト片に白金系触媒(コージェライト単位容積当り1g/L以上)を担持した市販の他社製DPFから切り出したものを比較例1とした。
【0172】
(評価例1)
実施例1〜5、比較例1に関して、熱重量分析装置を用いて、次のような性能評価試験を行った。
【0173】
実施例1〜5、比較例1をそれぞれメノウ乳鉢で粉砕した。得られた粉砕粉末と、模擬パティキュレートとして市販のカーボン粉末とを、重量比で4:1となるよう混合し、さらにメノウ乳鉢で粉砕、混合して、評価試料とした。この試料約10mgを白金製の試料容器に入れ、加熱時の重量変化を観察した。試験条件としては、試料室内に大気を流量100ml/分で流通させ、昇温速度5℃/分で室温から700℃まで昇温した。200℃における重量を初期重量とし、600℃における重量をカーボンが完全燃焼したときの重量として、カーボン残存率を定義した。例として、性能評価試験結果の模式を図1に示す。横軸を温度、縦軸をカーボン残存率として、プロットしている。図1のように、ある温度以上になると急激にカーボンが燃焼し始め、完全燃焼にまで至るという重量と温度の関係を表すプロファイルとなる。図1に示すように、カーボンの10%が燃焼した温度(カーボン残存率が90%のときの温度)をT10と定義し、比較の基準とした。T10の温度が低いほどより低い排ガス温度からカーボンを燃焼させることができるため、触媒の性能が良いことを示している。
【0174】
また、カーボンの90%が燃焼した温度(カーボン残存率が10%のときの温度)をT90と定義し、比較の基準とした。T90の温度が低いほどより低い排ガス温度でカーボンを完全燃焼させることができるため、触媒の性能が良いことを示している。
【0175】
図2には、実施例1〜5、比較例1における初期のT10(初期とは製造直後の状態のことで加熱処理を与えていないもののこと)、および、600℃、100時間の加熱処理を与えた熱負荷後のT10の結果を比較したものを示す。
【0176】
コージェライト片に白金系触媒を担持した比較例1の初期のT10と比べて、本発明により実施した実施例1〜5の初期のT10は非常に低いものとなり、低温からカーボンを燃焼することができる活性の高い触媒であることが分かった。
【0177】
また、熱負荷後のT10においても、比較例1と比べて実施例1〜5の触媒は低い結果となり熱負荷による劣化後の触媒性能も高いことが分かった。
【0178】
さらに、実施例1〜5において、シリカの担持量が増えるほど初期のT10と熱負荷後のT10との差が小さくなったことからシリカを添加することによって熱負荷による触媒劣化を抑制できることが分かった。
【0179】
ディーゼル車などに備えられるディーゼル排ガス浄化触媒は、長期間にわたってその性能が維持されることが期待されており、初期および加熱負荷後のいずれにおいても高性能である実施例3〜5の触媒は、特に優秀だと言える。
【0180】
図3には、実施例1〜5、比較例1における初期のT90(初期とは製造直後の状態のことで加熱処理を与えていないもののこと)、および、600℃、100時間の加熱処理を与えた熱負荷後のT90の結果を比較したものを示す。
【0181】
コージェライト片に白金系触媒を担持した比較例1の初期のT90と比べて、本発明により実施した実施例1〜5の初期のT90は非常に低いものとなり、より低い排ガス温度でカーボンを完全燃焼させることができる活性の高い触媒であることが分かった。
【0182】
また、熱負荷後のT90においても、比較例1と比べて実施例1〜5の触媒は低い結果となり熱負荷による劣化後の触媒性能も高いことが分かった。
【0183】
さらに、実施例1〜5において、シリカの担持量が増えるほど初期のT90と熱負荷後のT90との差が小さくなったことからシリカを添加することによって熱負荷による触媒劣化を抑制できることが分かった。
【0184】
ディーゼル車などに備えられる排ガス浄化触媒を担持した排ガス浄化フィルタは、ディーゼルエンジンから連続的に排出されるパティキュレートを連続的に捕集・酸化燃焼しなければならないため、比較例1のようにT90の値の高い排ガス浄化触媒は、燃焼しきれずに燃え残るパティキュレートが増え続け、結果として排ガス浄化フィルタの圧損を上昇させエンジンに悪影響を及ぼす虞がある。また、パティキュレートを燃焼しきれない場合に、燃料を追加して排ガス温度を強制的に上昇させる排ガス浄化システムにおいても、比較例1のようにT90の値の高い排ガス浄化触媒は多くの燃料を追加しなければならないのに対し、本発明の実施例1〜5に示す排ガス浄化触媒であれば追加する燃料も少なくて済むため、結果として燃費の悪化を最小限に留めることが可能になるので実施例1〜5の触媒は、非常に優れた排ガス浄化触媒だと言える。
【0185】
(評価例2)
次に、実施例1〜5、比較例1に関して、これらのコージェライト片が有する細孔特性(平均細孔径、細孔容積)に関して水銀圧入法により評価した。
【0186】
図4には実施例1〜5、比較例1のコージェライト片の隔壁が有する細孔の細孔径に対する相対細孔容積を示したグラフである。ここで相対細孔容積とは、各例におけるコージェライト片が有する細孔の細孔容積を比較例1の全細孔容積で除した値である。実施例1〜5の細孔分布は比較例1の細孔分布と比較して、小さい細孔径が多く、また、比較例1の細孔分布は非常に幅広いものであるのに対して、実施例1〜5の細孔分布は狭く制御できていることが分かる。
【0187】
次に、実施例6として実施例1と同様の手順で、触媒担持シリカ被覆コージェライト片
を作製し、被覆されたシリカと担持された触媒は、コージェライト片に対してそれぞれ12.9wt%と16.0wt%のものを実施例6とした。
【0188】
表1には実施例1〜6、比較例1のコージェライト片の平均細孔径、各例のコージェライト片が有する細孔の細孔容積の全細孔容積に対する割合を表し整理した。
【0189】
【表1】

【0190】
また、実施例1〜6、比較例1と同等内容の排ガス浄化フィルタを用意し、実際にディーゼルエンジンから排出される排ガスを流した時の排ガス浄化フィルタにおけるパティキュレートの捕集効率も表1にまとめて整理した。なお、各排ガス浄化フィルタのパティキュレートの捕集効率を求めるために、排気量4.3Lのディーゼルエンジンの排ガスラインに各排ガス浄化フィルタを設置し、エンジン回転数を1,500rpm一定、排ガス温度を450℃一定とした時の、排ガス浄化フィルタの上流と下流の位置におけるパティキュレート濃度をスモークメータを用いて測定した。また、実施例1〜6で使用したDPFは、直径が7.5インチ、高さが8インチ、セル数が1平方インチ当り200セル、壁厚みが305μmのコージェライト製DPFである。また、比較例1で使用したDPFは、直径が7.5インチ、高さが10インチ、セル数が1平方インチ当り300セル、壁厚みが254μmのコージェライト製DPFで、DPFの隔壁表面には酸化触媒である白金をDPF容積1L当り約2gの割合で担持したものである。
【0191】
排ガス浄化フィルタの隔壁が有する細孔の平均細孔径と排ガス温度が450℃一定の時のパティキュレート捕集効率について着目すると、実施例1〜6に関しては、平均細孔径が小さくなるに従ってパティキュレート捕集効率が上昇していることが分かる。隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内で、排ガス浄化触媒やシリカによって形成された微細構造によって排ガス中のパティキュレートが微細構造へと捕集される確率が向上し、パティキュレート捕集効率が上昇したものと考えられる。排ガス温度が450℃と高い場合には、低い温度の時よりも触媒活性が上がるため、パティキュレート燃焼が促進され、排ガス浄化フィルタにはパティキュレート堆積層が形成されにくい状況にある。実施例1〜6によって、排ガス浄化フィルタにパティキュレート堆積層が形成されない状況においても、排ガス浄化フィルタの隔壁が有する細孔の平均細孔径を適切に制御すればパティキュレート捕集効率を高く維持できることが分かった。また、実施例1のパティキュレート捕集効率が75%であるのに対して、実施例2は83%と高く、平均細孔径が約15μmを境に捕集効率が改善し、さらに実施例3は93%と非常に高い捕集効率になることから、平均細孔径が約10μmを境に最も捕集効率は改善されることが分かった。一方、平均細孔径が5μmの実施例6と、平均細孔径が4μmの実施例4及び5の捕集効率は全て100%となっており、平均細孔径が5μmより小さくする必要は無く、5μm付近まで細孔径を低減すれば捕集効率が最大になることが分かった。
【0192】
従って、排ガス浄化フィルタの隔壁が有する細孔の平均細孔径は、5〜15μmの範囲が最も適切な範囲であり、この範囲に細孔径を制御すれば、排ガス浄化フィルタにパティキュレート堆積層が形成されない状況においても、パティキュレート捕集効率を高く維持することが可能になる。
【0193】
また、排ガス浄化フィルタにおいて、細孔が有する細孔容積の全細孔容積に対する割合とパティキュレート捕集効率について着目すると、実施例2、3、4のように排ガス浄化フィルタにパティキュレート堆積層が形成されない状況においてもパティキュレート捕集効率を高く維持するためには、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%以下で、かつ、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%以下である必要があることが分かった。5μm未満の細孔が増えて、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%を超えてもパティキュレート捕集効率はそれ以上改善しないのでその必要は無い。また、15μmを超える細孔が増えて、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%を超えるとパティキュレート捕集効率が低下するため好ましくない。
【0194】
比較例1は、実施例1〜6と比較して、平均細孔径が20μmであるにもかかわらず、パティキュレート捕集効率は96%と高い値になった。比較例1で使用されている白金系触媒は、本発明の排ガス浄化触媒とは異なり、排ガス中の窒素酸化物の酸化力を利用してパティキュレートを燃焼しているが、排ガス温度が450℃と高い場合には窒素酸化物の酸化力を利用しにくくなるためパティキュレートを十分に燃焼することができず、パティキュレート堆積層が形成され、それによって捕集効率が高い値になったものと考えられる。ここで、窒素酸化物の酸化力とは、排ガス中の一酸化窒素が白金系触媒によって二酸化窒素になり、生成した二酸化窒素のパティキュレートを酸化する能力のことで、高温になると、熱力学的平衡関係から生成した二酸化窒素が一酸化窒素へと戻ってしまうためパティキュレートを酸化する酸化力は低下傾向を示す。
【0195】
また、データとしては示さないが、排ガス浄化フィルタの隔壁の厚みが小さくなるほど、排ガス浄化フィルタ自体の圧力損失は下げられるため450μmの壁厚みより小さくなるほど良い。また、データには示さないが、排ガス浄化フィルタの単位断面積当りのセル数が大きいほど排ガスの通気抵抗は大きくなるが、パティキュレートの濾過面積が増大するためパティキュレートと酸化触媒との接触確率が向上し、燃焼除去性能が高まるため、1平方インチ当り100セルよりセル数は大きいほど良い。
【0196】
(評価例3)
次に、実施例3及び比較例1で得た排ガス浄化フィルタを用いて、以下のような排ガス試験を行った。行った排ガス試験を、図5を参照しながら説明する。
【0197】
排気量4.3Lのディーゼルエンジン1を使用し、ディーゼルエンジン1からの排気ラインには切替え弁2を設けてバイパスライン3と本ライン4の二ラインを設置し、本ライン4側には排ガス浄化フィルタ6を後段に設置した。バイパスライン3側に排気しながらディーゼルエンジン1を1,500rpm、トルク21kgmの条件で1時間作動させて排気を安定させた後、切替え弁2によって排ガス浄化フィルタ6を設置した本ライン4側に排ガスを導入した。
【0198】
エンジン回転数は1,500rpm一定の状態で、排ガス温度は、排ガス浄化フィルタ6に流入する直前の排ガス温度を熱電対で測定し、280℃から400℃の範囲で5段階と400℃から500℃の範囲で3段階の合計8段階の設定温度を設け、ディーゼルエンジン1への負荷をダイナモで変えていくことで各設定温度を、280℃から400℃の範囲では30℃刻みで、400℃から500℃の範囲では50℃刻みで昇温して排ガス試験を行った。各設定温度の保持時間は、30分間とした。ここで、設定温度の280℃から
500℃は、ディーゼルエンジン1を通常作動させる際に発生する排ガス温度レベルである。排ガス試験中は、圧力センサー7を用いて排ガス浄化フィルタ6上流と下流の位置における静圧を測定し、排ガス浄化フィルタ6の前後の差圧を算出すると共に、排ガス浄化フィルタ6上流と下流の位置におけるパティキュレート濃度をスモークメータ8を用いて測定した。
【0199】
排ガスに含まれるパティキュレートが排ガス浄化フィルタ6に捕集されるにつれて、排ガス浄化フィルタ6の前後の差圧が上昇していくが、排ガス温度が上昇するに従って触媒活性が上がるため、捕集されたパティキュレートが燃焼除去されることで差圧が下がる。
【0200】
このような差圧のプロファイルから各温度における単位時間当りの差圧変化率を算出し差圧変化率がゼロとなった時の温度をBPT(Balance Point of Temperature)と定義し、このBPTが低いほど排ガス浄化フィルタ6の触媒活性が高いものとして評価した。また、排ガス浄化フィルタ6の上流と下流の位置で測定したパティキュレート濃度から280℃から500℃全域における平均パティキュレート捕集効率を算出した。また、排ガス試験前後の排ガス浄化フィルタ6の重量を120℃一定の条件で測定し、排ガス浄化フィルタ6に残存しているパティキュレート残存量を算出した。さらに、排ガス浄化フィルタの高温に対する耐久性を確認するために、製造直後の初期状態だけでなく、600℃で100時間熱負荷を電気炉で与えた後の状態におけるBPT及び平均パティキュレート捕集効率も測定した。
【0201】
実施例6、比較例2の初期と耐久後のBPT、平均パティキュレート捕集効率と試験後のパティキュレートの残存量を整理し、表2に示す。
【0202】
【表2】

【0203】
パティキュレートに対する触媒活性の指標となるBPTは、製造直後の初期の状態で、実施例3が347℃、比較例1が386℃となり、実施例3は比較例1と比べて39℃も低い値となったことから、より低い排ガス温度からパティキュレートを燃焼除去することができる排ガス浄化フィルタであることが分かった。また、280℃から500℃全域におけるパティキュレートの平均捕集効率の結果は、実施例3が94%、比較例1が92%となり、実施例3のように細孔径を制御することによって高い捕集効率が得られることが分かった。
【0204】
また、600℃で100時間熱負荷を与えた後の耐久後の状態におけるBPTは、実施例3が349℃、比較例1が393℃となり、実施例3では初期の状態のBPTと比べて変化していないこと、及び、比較例1と比べて44℃も低い値となったことから、熱に対する耐久性が高い排ガス浄化フィルタであることが分かった。
【0205】
さらに、耐久後のパティキュレートの平均捕集効率の結果は、実施例3が95%、比較例1が95%となり、各例共に高い捕集効率であることが分かった。しかしながら、排ガス試験後のパティキュレートの残存量は、実施例3が0.0gであるのに対して、比較例1が3.3gとなっており、比較例1はパティキュレートの堆積層によって捕集効率が高
く維持されていることが明らかになった。
【0206】
なお、本発明を開示するに当たっては、排ガス浄化触媒をDPFに担持することによってDPFの隔壁が有する細孔を制御したが、DPF製造の原料である骨材や造孔材の種類、粒子径、配合割合を調整することによって細孔制御したものでも良く、重要なことは三次元構造体の隔壁及び/または隔壁に存在する細孔内の壁面に排ガス浄化触媒を担持した際に形成される排ガス浄化フィルタが有する細孔が制御されているかどうかである。
【0207】
(評価例4)
次に、実施例3及び比較例1で排ガス試験を実施した排ガス浄化フィルタ6の前段に酸化触媒ハニカム5を配置し、評価例3と同様の排ガス試験(図6参照)を行った。
【0208】
なお、本排ガス試験で使用した酸化触媒ハニカム5は、直径が7.5インチ、高さが3インチ、セル数が1平方インチ当り300セル、壁厚みが200μmのコージェライト製ハニカムで、ハニカムの表面には酸化触媒である白金をハニカム容積1L当り約5gの割合で担持したものである。
【0209】
実施例3、比較例1の初期のBPT、280℃から500℃全域における平均パティキュレート捕集効率と試験後のパティキュレートの残存量を整理し、表3に示す。
【0210】
【表3】

【0211】
パティキュレートに対する触媒活性の指標となるBPTは、製造直後の初期の状態で、実施例3が347℃、比較例1が386℃となり、実施例3は比較例1と比べて39℃も低い値となったことから、より低い排ガス温度からパティキュレートを燃焼除去することができる排ガス浄化フィルタであることが分かった。また、280℃から500℃全域におけるパティキュレートの平均捕集効率の結果は、実施例3が94%、比較例1が92%となり、実施例3のように細孔径を制御することによって高い捕集効率が得られることが分かった。
【0212】
また、600℃で100時間熱負荷を与えた後の耐久後の状態におけるBPTは、実施例3が349℃、比較例1が393℃となり、実施例3では初期の状態のBPTと比べて変化していないこと、及び、比較例1と比べて44℃も低い値となったことから、熱に対する耐久性が高い排ガス浄化フィルタであることが分かった。
【0213】
さらに、耐久後のパティキュレートの平均捕集効率の結果は、実施例3が95%、比較例1が95%となり、各例共に高い捕集効率であることが分かった。しかしながら、排ガス試験後のパティキュレートの残存量は、実施例3が0.0gであるのに対して、比較例1が3.3gとなっており、比較例1はパティキュレートの堆積層によって捕集効率が高く維持されていることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明の排ガス浄化触媒は、より低い排ガス温度でパティキュレートを完全燃焼することができる高い触媒活性を有し、かつ優れた耐熱性を有し、また、排ガス浄化フィルタは
、より低い排ガス温度でパティキュレートを燃焼することができる高い触媒活性や高温の優れた耐久性を有し、パティキュレートの堆積層が消失してもパティキュレートの高い捕集効率を維持するので、非常に有用であり、自動車だけでなく、建設機械、発電機、フォークリフト、耕運機、船舶などの排ガス浄化などにも適用できる。
【符号の説明】
【0215】
1 ディーゼルエンジン
2 切替え弁
3 バイパスライン
4 本ライン
5 酸化触媒ハニカム
6 排ガス浄化フィルタ
7 圧力センサー
8 スモークメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料からなる隔壁によって区画された排ガス流路となる複数のセルを有する三次元構造体と、隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に担持された金属酸化物と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩と、シリカとを含む排ガス浄化触媒とを備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
排ガス浄化フィルタが有する細孔の内、5μm未満の細孔の細孔容積が、全細孔容積の50%以下で、かつ、15μmを超える細孔の細孔容積が、全細孔容積の10%以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
排ガス浄化フィルタが有する細孔は、平均細孔径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
排ガス浄化フィルタの隔壁の厚みが450μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
排ガス浄化フィルタのセル数が1平方インチ当たり100セル以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
多孔質材料がコージェライト、炭化珪素、ステンレスの内のいずれか一つ以上の材料であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
平均粒子径が1μm以下のシリカを分散させた水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面にシリカを添着させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項7】
シリカを三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とする、請求項6または7に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
シリカを三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とする請求項6または7に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
シリカを三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とする請求項6または7に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とする請求項10に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項12】
シリカを三次元構造体に添着させた後、金属塩と、アルカリ金属の硫酸塩および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩とを、溶解させた触媒水溶液を用いて三次元構造体の隔壁の表面および/または隔壁に存在する細孔内の壁面に触媒を添着させることを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項13】
触媒を三次元構造体に添着させる際、三次元構造体及び水溶液の周囲の雰囲気を減圧することを特徴とする請求項12に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項14】
触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体を吸湿性材料と接触させて、余剰な水溶液を除去することを特徴とする請求項12または13に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項15】
触媒を三次元構造体に添着させた後、三次元構造体に遠心力を加えることによって、余剰な水溶液を除去することを特徴とする請求項12または13に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項16】
触媒を三次元構造体に添着させた後、余剰な水溶液を除去し、凍結乾燥することを特徴とする請求項12または13に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項17】
凍結乾燥する際、乾燥前に液体窒素に浸漬させ、予め三次元構造体を凍結させ、減圧乾燥することを特徴とする請求項16に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213774(P2012−213774A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153273(P2012−153273)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2007−318149(P2007−318149)の分割
【原出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】