説明

排ガス浄化用触媒および排ガス浄化用触媒の製造方法

【課題】高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、パラジウムの粒成長による触媒活性低下を防ぎ、優れた触媒活性を長期にわたって実現することのできる、排ガス浄化用触媒およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】Pdが固溶され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物と、Pdが担持され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物とを、1/9〜9/1の重量混合比で混合することにより、排ガス浄化用触媒を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、および一酸化炭素(CO)などが含まれており、これらを浄化するための排ガス浄化用触媒が知られている。
このような排気ガス浄化触媒として、活性成分である貴金属元素が、セリウム系複合酸化物、ジルコニウム系複合酸化物またはペロプスカイト系複合酸化物などの複合酸化物に、担持または固溶しているものが種々知られている。
【0003】
例えば、一般式:Ce0.5Zr0.3750.125xideで表わされるセリウム系複合酸化物にパラジウムが担持されたセリウム系複合酸化物の粒子と、活性アルミナと、硫酸バリウムと、アルミナゾルとをボールミルで混合・粉砕して得られたスラリーを、モノリス担体に付着させ、乾燥および焼成することにより製造される排気ガス浄化用触媒が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−207183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載される排気ガス浄化用触媒では、高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、パラジウム粒子が複合酸化物の表面を移動して、合体することにより粒成長を生じ、パラジウム粒子の有効表面積が減少して、その結果、触媒活性が低下するという不具合がある。
本発明の目的は、高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、パラジウムの粒成長による触媒活性低下を防ぎ、優れた触媒活性を長期にわたって実現することのできる、排ガス浄化用触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、Pdが固溶され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物と、Pdが担持され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物とを含んでいることを特徴としている。
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記第1耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.2〜0.8であることが好適である。
【0006】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記第2耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.1〜0.6であることが好適である。
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記第1耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.2〜0.8であり、前記第2耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.1〜0.6であることが好適である。
【0007】
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、アルカリ土類金属が前記第1耐熱性酸化物に担持されていることが好適である。
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、Pdを有し、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物を製造する工程と、Pdを有し、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物を製造する工程と、前記第1耐熱性酸化物と前記第2耐熱性酸化物とを、1/9〜9/1の重量混合比で混合する工程とを備え、前記第1耐熱性酸化物を製造する工程は、セリウムの塩、ジルコニウムの塩および希土類元素の塩を混合して混合塩水溶液を調製する工程と、前記混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈物を得る工程と、前記共沈物を、400〜1000℃で1次焼成して前駆体酸化物を得る工程と、前記前駆体酸化物とPd塩とを混合し、300〜800℃で2次焼成する工程と、2次焼成された前記前駆体酸化物とアルカリ土類金属塩とを混合し、600℃を超える温度で最終焼成することにより、前記第1耐熱性酸化物を得る工程とを備え、前記第2耐熱性酸化物を製造する工程は、セリウムの塩、ジルコニウムの塩および希土類元素の塩を混合して混合塩水溶液を調製する工程と、前記混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈物を得る工程と、前記共沈物を、400〜1000℃で1次焼成して前駆体酸化物を得る工程と、前記前駆体酸化物とPd塩とを混合し、600℃以下で最終焼成することにより、前記第2耐熱性酸化物を得る工程と
を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法によれば、Pdが固溶され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物と、Pdが担持され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物とが混合されることにより、本発明の排ガス浄化用触媒を製造することができる。
そして、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、長期にわたって、パラジウムの粒成長による触媒活性低下を防止することができ、高い触媒活性を保持することができる。
【0009】
その結果、本発明の排ガス浄化用触媒を使用すれば、高温下または酸化還元変動下、長期にわたって優れた排ガス浄化性能を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Pd(パラジウム)が固溶され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物と、Pd(パラジウム)が担持され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物をとを含んでおり、例えば、第1耐熱性酸化物からなる一方の粒子(第1粒子)と、第2耐熱性酸化物からなる他方の粒子(第2粒子)とを含む粒子の集合体として形成されている。
【0011】
第1耐熱性酸化物において、希土類元素(セリウムを除く。)としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)などが挙げられる。希土類元素として、好ましくは、Y、La、Pr、Ndが挙げられる。これら希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0012】
また、第1耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合は、好ましくは、0.2〜0.8であり、さらに好ましくは、0.3〜0.7である。セリウムの原子割合が上記した範囲であれば、排ガス浄化用触媒のガス浄化性能を一層向上させることができる。
また、本発明の排ガス浄化用触媒において、第1耐熱性酸化物には、アルカリ土類金属が担持されていることが好ましい。
【0013】
アルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。アルカリ土類金属として、好ましくは、Ba、Sr、Ca、Mgが挙げられ、さらに好ましくは、Baが挙げられる。これらアルカリ土類金属は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0014】
また、第1耐熱性酸化物において、アルカリ土類金属は、好ましくは、アルカリ土類金属の原子割合とセリウム、ジルコニウムおよび希土類元素の原子割合の総和との比が、2:95〜30:70となる量、さらに好ましくは、5:95〜20:80となる量で担持される。アルカリ土類金属が上記した範囲で担持されていれば、Pdの粒成長を効果的に抑制することができる。
【0015】
アルカリ土類金属は、アルカリ土類金属の塩として第1耐熱性酸化物に担持されていてもよく、また、第1耐熱性酸化物の構成元素、すなわち、セリウム、ジルコニウムおよび/または希土類元素、さらには、後述するPdと複合酸化物を形成し、その複合酸化物として第1耐熱性酸化物に担持されていてもよい。
そして、第1耐熱性酸化物には、Pdが固溶されている。第1耐熱性酸化物にPdが固溶されているとは、Pdが第1耐熱性酸化物の結晶格子中に配位することにより、第1耐熱性酸化物とPdとが固溶体を形成していることである。なお、Pdは、その全部が第1耐熱性酸化物と固溶体を形成していなくてもよく、例えば、Pdの一部が第1耐熱性酸化物に担持されていてもよい。
【0016】
例えば、第1耐熱性酸化物が、一般式:(Ce,Zr,R)O3(Rは、上記した希土類元素)で表わされる場合、Pdが固溶されると第1耐熱性酸化物は、一般式:(Ce,Zr,R,Pd)O3(Rは、上記した希土類元素)で表わされる。また、例えば、第1耐熱性酸化物が、上記したアルカリ土類金属を含む複合酸化物を担持している場合、そのアルカリ土類金属を含む複合酸化物は、一般式:Ba(Ce,Pd)O3、Ba(Ce,Zr,Pd)O3、Ba(Zr,Y,Pd)O3、Ba(Ce,Zr,Y,Pd)O3などで表わされる。
【0017】
第1耐熱性酸化物およびアルカリ土類金属を含む複合酸化物に対する、Pdの固溶率は、例えば、20〜100%であり、好ましくは、60〜100である。
なお、Pdの固溶率(単位:%)は、例えば、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定することができる。具体的には、第1耐熱性酸化物からなる粒子を、例えば、Pdが不溶、かつ、第1耐熱性酸化物が可溶である溶液に浸漬し、この溶液を濾過し、濾液をICP発光分光分析法により測定する。これにより、濾液に含有されるPdの含有量を算出し、得られた算出値から、Pdの固溶率を算出する。
【0018】
そして、第1耐熱性酸化物は、特に制限されることなく、酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
共沈法では、例えば、上記した各元素の塩(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)を上記した化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
【0019】
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、上記した化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなどの無機塩基が挙げられる。中和剤として、好ましくは、水酸化アンモニウム塩が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化アンモニウム水溶液が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加える。
【0020】
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、400〜1000℃で熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
次いで、得られた前駆体酸化物を、パラジウム塩水溶液に分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、300〜800℃、好ましくは、400〜600℃で熱処理(2次焼成)することにより、前駆体酸化物にPdを担持させる(担持量:0.05〜5重量%)。
【0021】
パラジウム塩は、上記と同様の塩が挙げられ、上記と同様に調製することができる。また、実用的には、硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸溶液、塩化物水溶液などが挙げられる。具体的には、硝酸パラジウム水溶液、ジニトロジアンミンパラジウム硝酸溶液、4価パラジウムアンミン硝酸溶液などが挙げられる。
次いで、Pdが担持された前駆体酸化物にアルカリ土類金属を担持させる。
【0022】
アルカリ土類金属は、特に制限されることなく、アルカリ土類金属を酸化物に担持するための適宜の方法、例えば、吸着担持法、含浸法、共沈法、アルコキシド法などによって、前駆体酸化物に担持させることができる。
吸着担持法では、例えば、Pd担持前駆体酸化物を、アルカリ土類金属塩水溶液に添加してスラリーを調製し、このスラリーを濾過する。
【0023】
アルカリ土類金属塩は、上記と同様の塩が挙げられ、上記と同様に調製することができる。また、実用的には、酢酸塩水溶液、硝酸塩水溶液、などが挙げられる。具体的には、バリウム塩水溶液として、例えば、酢酸バリウム水溶液、硝酸バリウム水溶液などが挙げられる。
そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、アルカリ土類金属の担持量にもよるが、例えば、400℃以上、好ましくは、600℃を超える温度、さらに好ましくは、600℃を超えて1100℃以下で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが担持された前駆体酸化物にアルカリ土類金属を担持させる。こうして、Pdが固溶され、さらにアルカリ土類金属が担持された第1耐熱性酸化物からなる第1粒子を得る。
【0024】
なお、上記の方法においては、Pd担持前駆体酸化物の調製後、Pd担持前駆体酸化物にアルカリ土類金属を担持させたが、例えば、第1耐熱性酸化物にアルカリ土類金属を担持させない場合には、Pd担持前駆体酸化物の調製後、最終焼成することもできる。
また、上記の方法においては、構成する元素全て(パラジウムおよびアルカリ土類金属を含む。)の水溶液を調製して、これに中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理(最終焼成)することもできる。
【0025】
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)とを、上記した各元素(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)に対し化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えてクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
【0026】
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去する。これによって、上記した各元素(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)のクエン酸錯体を形成させることができる。その後、形成されたクエン酸錯体を仮焼成する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において、250〜350℃で加熱する。
【0027】
そして、例えば、400〜1000℃で熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
次いで、得られた前駆体酸化物を、共沈法と同様に、パラジウム塩水溶液に分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、300〜800℃、好ましくは、400〜600℃で熱処理(2次焼成)することにより、前駆体酸化物にPdを担持させる(担持量:0.05〜5重量%)。
【0028】
そして、Pdが担持された前駆体酸化物に、共沈法と同様に、アルカリ土類金属を担持させ、その後、アルカリ土類金属の担持量にもよるが、例えば、400℃以上、好ましくは、600℃を超える温度、さらに好ましくは、600℃を超えて1100℃以下で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが固溶され、さらにアルカリ土類金属が担持された第1耐熱性酸化物からなる第1粒子を得る。
【0029】
なお、クエン酸錯体法において、第1耐熱性酸化物にアルカリ土類金属を担持させない場合には、共沈法と同様に、前駆体酸化物にPdを担持させた後、Pd担持前駆体酸化物を最終焼成すればよい。
また、アルコキシド法では、例えば、上記した各元素(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、水を加えて加水分解することにより、沈殿物を得る。
【0030】
各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成される(モノ、ジ、トリ)アルコラートや、下記一般式(1)で示される各元素の(モノ、ジ、トリ)アルコキシアルコラートなどが挙げられる。
E[OCH(R1)−(CH2i−OR2j (1)
(式中、Eは、各元素を示し、R1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、iは、1〜3の整数、jは、2〜4の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトキシプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0031】
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0032】
そして、得られた沈殿物を、蒸発乾固し、その後、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、400〜1000℃で熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
次いで、得られた前駆体酸化物を、共沈法と同様に、パラジウム塩水溶液分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、400〜800℃、好ましくは、400〜600℃で熱処理(2次焼成)することにより、前駆体酸化物にPdを担持させる。
【0033】
そして、Pdが担持された前駆体酸化物に、共沈法と同様に、アルカリ土類金属を担持させ、その後、アルカリ土類金属の担持量にもよるが、例えば、400℃以上、好ましくは、600℃を超える温度、さらに好ましくは、600℃を超えて1100℃以下で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが固溶され、さらにアルカリ土類金属が担持された第1耐熱性酸化物からなる第1粒子を得る。
【0034】
なお、アルコキシド法において、第1耐熱性酸化物にアルカリ土類金属を担持させない場合には、共沈法と同様に、前駆体酸化物にPdを担持させた後、Pd担持前駆体酸化物を最終焼成すればよい。
また、アルコキシド法において、例えば、混合アルコキシド溶液と、パラジウムの有機金属塩とを、上記した化学量論比となるように含む均一混合溶液を調製し、これに水を加えて沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥させて、熱処理(上記した2次焼成)することにより、Pdが担持された前駆体酸化物を得ることもできる。
【0035】
パラジウムの有機金属塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などから形成されるパラジウムのカルボン酸塩、例えば、下記一般式(2)で示されるβ−ジケトン化合物またはβ−ケトエステル化合物、および/または、下記一般式(3)で示されるβ−ジカルボン酸エステル化合物から形成されるパラジウムの金属キレート錯体などが挙げられる。
【0036】
3COCHR5COR4 (2)
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基またはアリール基を示し、R4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリール基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R5は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
7CH(COR62 (3)
(式中、R6は、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R7は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
上記一般式(2)および上記一般式(3)中、R3、R4およびR6の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、t−アミル、t−ヘキシルなどが挙げられる。また、R5およびR7の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。
【0037】
上記一般式(2)中、R3およびR4の炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチルなどが挙げられる。また、R3およびR4のアリール基としては、例えば、フェニルが挙げられる。また、R3の炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0038】
β−ジケトン化合物は、より具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−トリフルオロメチル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、ジピバロイルメタンなどが挙げられる。
【0039】
また、β−ケトエステル化合物は、より具体的には、例えば、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどが挙げられる。
また、β−ジカルボン酸エステル化合物は、より具体的には、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。
第2耐熱性酸化物において、希土類元素(セリウムを除く。)としては、上記した希土類元素が挙げられ、好ましくは、Y、La、Pr、Ndが挙げられる。上記した希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0040】
また、第2耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合は、好ましくは、0.1〜0.6であり、さらに好ましくは、0.2〜0.5である。
また、第2耐熱性酸化物には、Pdが担持されている。第2耐熱性酸化物にPdが担持されているとは、Pdが第2耐熱性酸化物に固溶することなく、その表面に保持されていることである。
【0041】
また、第2耐熱性酸化物において、Pdの担持量は、好ましくは、0.05〜5重量%である。
そして、第2耐熱性酸化物は、第1耐熱性酸化物と同様に、特に制限されることなく、酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
【0042】
共沈法では、例えば、上記した各元素の塩(パラジウム塩を除く)を上記した化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
各元素の塩としては、例えば、上記した有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、上記した化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0043】
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、上記した中和剤が挙げられ、好ましくは、アンモニア水溶液が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加える。
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、400〜1000℃熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
【0044】
次いで、得られた前駆体酸化物を、パラジウム塩水溶液に分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、600℃以下、好ましくは、300〜600℃で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが担持された第2耐熱性酸化物からなる第2粒子を得る。
なお、上記の方法においては、構成する元素全て(パラジウムを含む。)の水溶液を調製して、これに中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理(最終焼成)することもできる。
【0045】
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩(パラジウム塩を除く)とを、上記した各元素(パラジウム塩を除く)に対し化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えてクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素(パラジウム塩を除く)のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
【0046】
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去する。これによって、上記した各元素(パラジウム塩およびアルカリ土類金属塩を除く)のクエン酸錯体を形成させることができる。その後、形成されたクエン酸錯体を仮焼成する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において、250〜350℃で加熱する。
【0047】
そして、例えば、400〜1000℃で熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
次いで、得られた前駆体酸化物を、共沈法と同様に、パラジウム塩水溶液に分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、600℃以下、好ましくは、300〜600℃で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが担持された第2耐熱性酸化物からなる第2粒子を得る。
【0048】
また、アルコキシド法では、例えば、上記した各元素(パラジウム塩を除く)のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、水を加えて加水分解することにより、沈殿物を得る。
各元素のアルコキシドとしては、例えば、上記したアルコキシドが挙げられる。
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0049】
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、上記した有機溶媒が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
そして、得られた沈殿物を、蒸発乾固し、その後、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、400〜1000℃で熱処理(1次焼成)することにより、前駆体酸化物を得る。
【0050】
次いで、得られた前駆体酸化物を、共沈法と同様に、パラジウム塩水溶液分散させ、この分散液を濾過する。そして、得られた濾過ケーキを、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、600℃以下、好ましくは、300〜600℃で熱処理(最終焼成)することにより、Pdが担持された第2耐熱性酸化物からなる第2粒子を得る。
【0051】
なお、アルコキシド法において、例えば、混合アルコキシド溶液と、パラジウムの有機金属塩とを、上記した化学量論比となるように含む均一混合溶液を調製し、これに水を加えて沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥させて、熱処理(上記した最終焼成)することにより、Pdが担持された前駆体酸化物を得ることもできる。
パラジウムの有機金属塩としては、例えば、上記した有機金属塩が挙げられる。
【0052】
そして、本発明の排ガス浄化用触媒は、第1耐熱性酸化物からなる第1粒子と、第2耐熱性酸化物からなる第2粒子とを、粒子(粉末)を混合するための適宜の方法、例えば、乾式混合、湿式混合などの混合方法で混合することによって、製造することができる。好ましくは、乾式混合によって製造することができる。
排ガス浄化用触媒において、第1耐熱性酸化物からなる第1粒子と第2耐熱性酸化物からなる第2粒子との重量混合比は、例えば、1/9〜9/1であり、好ましくは、3/7〜8/2である。これらの重量混合比が上記した範囲であれば、パラジウムの粒成長を効果的に抑制することができる。
【0053】
このようにして得られる第1耐熱性酸化物からなる第1粒子と第2耐熱性酸化物からなる第2粒子との混合粒子(混合粉末)は、そのまま、排ガス浄化用触媒として用いることもできるが、通常、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、排ガス浄化用触媒として調製される。
触媒担体としては、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が挙げられる。触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、上記により得られた混合粒子(混合粉末)に、水を加えてスラリーとした後、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、300〜800℃、好ましくは、300〜600℃で熱処理する。
【0054】
そして、このようにして得られる本発明の排ガス浄化用触媒は、長期使用においても、パラジウムの粒成長が効果的に抑制され、パラジウムの複合酸化物に対する分散状態が、良好に保持される。
その結果、本発明の排ガス浄化用触媒を使用すれば、高温下または酸化還元変動下、長期にわたって優れた排ガス浄化性能を発現することができる。
【0055】
本発明の排ガス浄化用触媒は、優れた排ガス浄化性能を長期にわたって実現することができるので、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関やボイラなどから排出される排気ガスを浄化するための排気ガス浄化用触媒として、有効に使用することができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
(Pd固溶・Ba担持複合酸化物からなる粒子の製造)
製造例1(Pd固溶・Ba/Ce0.50Zr0.450.053粒子Aの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.050モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.045モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記の成分を、丸底フラスコに加え、脱イオン水500mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。次いで、この混合塩水溶液に、10重量%の水酸化アンモニウム水溶液を、室温で徐々に滴下して、混合塩水溶液中に共沈物を生じさせた。
【0057】
次いで、共沈物が生じた混合塩水溶液を60分間攪拌し、その後、この水溶液を濾過することにより共沈物を得た。続いて、この共沈物を脱イオン水で十分洗浄し、110℃で真空乾燥させ、さらに、大気雰囲気、500℃で3時間仮焼成した。そして、共沈物を粉砕して粒子とし、この粒子を、大気雰囲気、800℃で5時間焼成(1次焼成)することにより、セリウム、ジルコニウムおよびイットリウムからなる複合酸化物の粒子(前駆体酸化物)を得た。
【0058】
次に、この粒子50gを、丸底フラスコに加え、脱イオン水500mLを加えて10分間攪拌することにより、脱イオン水中に分散させてスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを、硝酸パラジウム水溶液に、上記した粒子(前駆体酸化物)に対するパラジウムの担持量が0.8重量%となる量で添加して分散させた。次いで、この分散液を吸引濾過した後、110℃で12時間真空乾燥させた。続いて、大気雰囲気、500℃で1時間焼成することにより(2次焼成)、前駆体酸化物の粒子にパラジウムを担持させた。
【0059】
なお、分散液を吸引濾過したときの濾液に含有されている元素を、ICP発光分光分析法により測定すると、濾液中にパラジウムが含有されていなかった。これにより、パラジウムの大部分が、分散液を吸引濾過したときの濾過ケーキ中に含有されていることがわかった。
その後、酢酸バリウムを、丸底フラスコに加え、脱イオン水100mLを加えて溶解させた。次いで、パラジウムが担持された前駆体酸化物の粒子50gを、酢酸バリウム水溶液中に添加してスラリーを調製した。なお、酢酸バリウム水溶液の濃度は、後述する粒子Aにおいて、セリウム、ジルコニウムおよびイットリウムの原子割合の総和とバリウムの原子割合との比が100:10となるように調節した。
【0060】
次いで、このスラリーを、真空乾燥させて、水分を除去することにより、パラジウムが担持された前駆体酸化物に、さらにバリウムを担持させた。
そして、大気雰囲気中、1000℃で3時間焼成(最終焼成)することにより、Pdが固溶され、Baが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce0.50Zr0.450.053)からなる粒子Aを得た。
【0061】
なお、粒子Aを、X線回折解析に供したところ、粒子Aは、一般式:(Ce,Zr,Y、Pd)O3で表わされる複合酸化物を主成分として含み、副成分として、一般式:Ba(Ce,Pd)O3で表わされる複合酸化物を含んでいることが確認された。その結果、粒子Aでは、(Ce,Zr,Y、Pd)O3に、Ba(Ce,Pd)O3が担持されていることが確認された。
【0062】
また、粒子Aを、室温に維持したフッ化水素水溶液(HF/H2O=1/10)中に12時間浸漬させ、この液を濾過し、濾液をICP発光分光分析法により測定した。その結果、パラジウムの固溶率が80%であることが確認された。
製造例2(Pd固溶・Ba/Ce0.55Zr0.400.053粒子Bの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.055モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.040モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例1と同様の方法により、Pdが固溶され、Baが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce0.55Zr0.400.053)からなる粒子Bを得た。
【0063】
製造例3(Pd固溶・Ba/Ce1.003粒子Cの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.100モル
上記成分を用いる以外は、製造例1と同様の方法により、Pdが固溶され、Baが担持された、Ceを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce1.003)からなる粒子Cを得た。
【0064】
製造例4(Pd固溶・Ba/Ce0.80Zr0.150.053粒子Dの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.080モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.015モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例1と同様の方法により、Pdが固溶され、Baが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce0.80Zr0.150.053)からなる粒子Dを得た。
【0065】
製造例5(Pd固溶・Ba/Ce0.40Zr0.500.05La0.053粒子Eの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.040モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.050モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
硝酸ランタン La換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例1と同様の方法により、Pdが固溶され、Baが担持された、Ce、Zr、YおよびLaを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce0.40Zr0.500.05La0.053)からなる粒子Eを得た。
【0066】
製造例6(Pd固溶・Ba/Ce0.22Zr0.680.03La0.02Nd0.053粒子Fの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.022モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.068モル
硝酸イットリウム Y換算で0.003モル
硝酸ランタン La換算で0.002モル
硝酸ネオジム Nd換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例1と同様の方法により、Pdが固溶され、Baが担持された、Ce、Zr、Y、LaおよびNdを含む複合酸化物(Pd固溶・Ba/Ce0.22Zr0.680.03La0.02Nd0.053)からなる粒子Fを得た。
(Pd担持複合酸化物からなる粒子の製造)
製造例7(Pd/Ce0.50Zr0.450.052粒子Gの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.050モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.045モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記の成分を、丸底フラスコに加え、脱イオン水500mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。次いで、この混合塩水溶液に、51gのアンモニアを1Lの脱イオン水に溶解させて調製したアンモニア水溶液を、室温で徐々に滴下して、混合塩水溶液中に共沈物を生じさせた。
【0067】
次いで、共沈物が生じた混合塩水溶液を60分間攪拌し、その後、この水溶液をろ過することにより共沈物を得た。続いて、この共沈物を脱イオン水で十分洗浄し、110℃で真空乾燥させ、さらに、大気雰囲気、500℃で3時間仮焼成した。そして、共沈物を粉砕して粒子とし、この粒子を、大気雰囲気、800℃で5時間焼成(1次焼成)することにより、セリウム、ジルコニウムおよびイットリウムを含む複合酸化物の粒子(前駆体酸化物)を得た。
【0068】
次に、この粒子50gを、丸底フラスコに加え、脱イオン水500mLを加えて10分間攪拌することにより、脱イオン水中に分散させてスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを、硝酸パラジウム水溶液に、上記した粒子(前駆体酸化物)に対するパラジウムの担持量が0.8重量%となる量で添加して分散させた。次いで、この分散液を吸引濾過した後、110℃で12時間真空乾燥させた。続いて、大気雰囲気、500℃で1時間焼成することにより、Pdが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd/Ce0.50Zr0.450.052)からなる粒子Gを得た。
【0069】
また、粒子Gを、室温に維持したフッ化水素水溶液(HF/H2O=1/10)中に12時間浸漬させ、この液を濾過し、濾液をICP発光分光分析法により測定した。その結果、パラジウムが固溶体を形成していないことが確認された。これにより、PdがCe、ZrおよびYを含む複合酸化物に担持されていることが確認された。
製造例8(Pd/Ce0.80Zr0.150.052粒子Hの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.080モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.015モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd/Ce0.80Zr0.150.052)からなる粒子Hを得た。
【0070】
製造例9(Pd/Ce0.55Zr0.400.052粒子Iの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.055モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.040モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Ce、ZrおよびYを含む複合酸化物(Pd/Ce0.55Zr0.400.052)からなる粒子Iを得た。
【0071】
製造例10(Pd/Ce0.30Zr0.600.05La0.052粒子Jの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.030モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.060モル
硝酸イットリウム Y換算で0.005モル
硝酸ランタン La換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Ce、Zr、YおよびLaを含む複合酸化物(Pd/Ce0.30Zr0.600.05La0.052)からなる粒子Jを得た。
【0072】
製造例11(Pd/Ce0.22Zr0.680.03La0.02Nd0.052粒子Kの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.022モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.068モル
硝酸イットリウム Y換算で0.003モル
硝酸ランタン La換算で0.002モル
硝酸ネオジム Nd換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Ce、Zr、Y、LaおよびNdを含む複合酸化物(Pd/Ce0.22Zr0.680.03La0.02Nd0.052)からなる粒子Kを得た。
【0073】
製造例12(Pd/Ce0.11Zr0.670.15La0.02Nd0.052粒子Lの製造)
硝酸セリウム Ce換算で0.011モル
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.067モル
硝酸イットリウム Y換算で0.015モル
硝酸ランタン La換算で0.002モル
硝酸ネオジム Nd換算で0.005モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Ce、Zr、Y、LaおよびNdを含む複合酸化物(Pd/Ce0.11Zr0.670.15La0.02Nd0.052)からなる粒子Lを得た。
【0074】
製造例13(Pd/Zr0.83La0.08Nd0.092粒子Mの製造)
オキシ硝酸ジルコニウム Zr換算で0.083モル
硝酸ランタン La換算で0.008モル
硝酸ネオジム Nd換算で0.009モル
上記成分を用いる以外は、製造例7と同様の方法により、Pdが担持された、Zr、LaおよびNdを含む複合酸化物(Pd/Zr0.83La0.08Nd0.092)からなる粒子Mを得た。
【0075】
実施例1〜3および比較例1〜2
製造例1で得られた粒子(Pd固溶・Ba/Ce0.50Zr0.450.053)と製造例7で得られた粒子(Pd/Ce0.50Zr0.450.052)とを、表1に示す重量混合比に従い、乳鉢で混合することにより混合粒子(混合粉末)を調製した。すなわち、各複合酸化物におけるCeの原子割合を一定とし、重量混合比の異なる混合粒子(混合粉末)を調製した。
【0076】
【表1】

実施例4〜8および比較例3
製造例2で得られた粒子(Pd固溶・Ba/Ce0.55Zr0.400.053)に対して、表2に従ってPd担持複合酸化物を、50:50の重量混合比で、乳鉢で混合することにより混合粒子(混合粉末)を調製した。すなわち、Pd固溶・Ba担持複合酸化物におけるCeの原子割合を一定とし、この複合酸化物に対して、Ceの原子割合がそれぞれ異なる、Pd担持複合酸化物を混合して混合粒子(混合粉末)を調製した。
【0077】
【表2】

実施例9〜12および比較例4
製造例9で得られた粒子(Pd/Ce0.55Zr0.400.052)に対して、表3に従ってPd固溶・Ba担持複合酸化物を、50:50の重量混合比で、乳鉢で混合することにより混合粒子(混合粉末)を調製した。すなわち、Pd担持複合酸化物におけるCeの原子割合を一定とし、この複合酸化物に対して、Ceの原子割合がそれぞれ異なる、Pd固溶・Ba担持複合酸化物を混合して混合粒子(混合粉末)を調製した。
【0078】
【表3】

試験例1(活性評価)
1)耐久試験
不活性雰囲気3分、酸化雰囲気3分、不活性雰囲気3分および還元雰囲気3分の計12分を1サイクルとし、このサイクルを250サイクル、合計50時間繰り返して、各実施例および各比較例で得られた混合粒子(混合粉末)を、酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に暴露した後、還元雰囲気のまま室温まで冷却した。
【0079】
不活性雰囲気、酸化雰囲気および還元雰囲気は、ストイキ状態、リーン状態およびリッチ状態の混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガス雰囲気に、それぞれ相当する。
なお、各雰囲気は、高温水蒸気を含む表4に示した組成のガスを、300×10-33/hrの流量で供給することによって調製した。また、雰囲気温度は、約1050℃に維持した。
2)50%浄化温度(実施例1〜3および比較例1〜2)
耐久後の実施例1〜3および比較例1〜2の粒子(粉末)を、0.5mm〜1.0mmのサイズのペレットに成型して試験片を調製した。表5に示すモデルガス組成を用いて、このモデルガスの燃焼によって排出される排気ガスの温度を、室温から450℃まで、20℃/分の割合で上昇させつつ、モデルガスを各試験片に供給し、排ガス中のHC、NOxおよびCOが、50%浄化されるときの温度(50%浄化温度:℃)を測定した。結果を図1に示す。すなわち、図1に示すグラフは、Pd固溶・Ba担持複合酸化物とPd担持複合酸化物との重量混合比を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの50%浄化温度の変化を表わしている。
3)450℃浄化率(実施例4〜8および比較例3)
耐久後の実施例4〜8および比較例3の粒子(粉末)を、0.5mm〜1.0mmのサイズのペレットに成型して試験片を調製した。表5に示すモデルガス組成を用いて、このモデルガスの燃焼によって排出される排気ガスの温度を、室温から450℃まで、20℃/分の割合で上昇させつつ、モデルガスを各試験片に供給し、450℃におけるHC、NOxおよびCOのそれぞれの浄化率を測定した。なお、測定において、サンプル重量を0.5gとした。また、流速は2.5L/minとした。結果を図2に示す。すなわち、図2に示すグラフは、Pd担持複合酸化物のCeの原子割合を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの450℃における浄化率の変化を表わしている。
4)450℃浄化率(実施例9〜12および比較例4)
3)と同様の方法により、450℃におけるHC、NOxおよびCOのそれぞれの浄化率を測定した。結果を図3に示す。すなわち、図3に示すグラフは、Pd固溶・Ba担持複合酸化物のCeの原子割合を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの450℃における浄化率の変化を表わしている。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】Pd固溶・Ba担持複合酸化物とPd担持複合酸化物との重量混合比を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの50%浄化温度の変化を示すグラフである。
【図2】Pd担持複合酸化物のCeの原子割合を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの450℃における浄化率の変化を示すグラフである。
【図3】Pd固溶・Ba担持複合酸化物のCeの原子割合を変化させたときの、HC、NOxおよびCOそれぞれの450℃における浄化率の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pdが固溶され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物と、
Pdが担持され、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物と
を含んでいることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第1耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.2〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記第2耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.1〜0.6であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第1耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.2〜0.8であり、前記第2耐熱性酸化物において、セリウムの原子割合が0.1〜0.6であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
アルカリ土類金属が前記第1耐熱性酸化物に担持されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
Pdを有し、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第1耐熱性酸化物を製造する工程と、
Pdを有し、セリウム、ジルコニウムおよび希土類元素(セリウムを除く。)を含む第2耐熱性酸化物を製造する工程と、
前記第1耐熱性酸化物と前記第2耐熱性酸化物とを、1/9〜9/1の重量混合比で混合する工程とを備え、
前記第1耐熱性酸化物を製造する工程は、
セリウムの塩、ジルコニウムの塩および希土類元素の塩を混合して混合塩水溶液を調製する工程と、
前記混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈物を得る工程と、
前記共沈物を、400〜1000℃で1次焼成して前駆体酸化物を得る工程と、
前記前駆体酸化物とPd塩とを混合し、300〜800℃で2次焼成する工程と、
2次焼成された前記前駆体酸化物とアルカリ土類金属塩とを混合し、600℃を超える温度で最終焼成することにより、前記第1耐熱性酸化物を得る工程とを備え、
前記第2耐熱性酸化物を製造する工程は、
セリウムの塩、ジルコニウムの塩および希土類元素の塩を混合して混合塩水溶液を調製する工程と、
前記混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈物を得る工程と、
前記共沈物を、400〜1000℃で1次焼成して前駆体酸化物を得る工程と、
前記前駆体酸化物とPd塩とを混合し、600℃以下で最終焼成することにより、前記第2耐熱性酸化物を得る工程と
を備えていることを特徴とする、排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160556(P2009−160556A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2606(P2008−2606)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】