説明

排ガス浄化用触媒及びその再生方法

【課題】高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長を十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することができ、しかも使用に際して貴金属が粒成長した場合においても貴金属を再分散させて触媒活性を容易に再生させ、担持させた貴金属の単位量あたりの触媒活性が十分に高く、優れた触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供すること。
【解決手段】ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物を含む蛍石型構造の担体と、前記担体に担持された貴金属とを含み、前記担体中に含有される前記金属元素の量が前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲にあり、前記金属元素中に含有されるセリウムの量が前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲であることを特徴とする排ガス浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒並びにその再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンから排出される排ガス中のHC、CO、NOx等の有害成分を除去するために、従来から排ガス浄化用触媒が用いられている。このような排ガス浄化用触媒としては、理論空燃比で燃焼された排ガス中のHC、CO及びNOxを同時に浄化する三元触媒が知られており、一般に、コーディエライト、金属箔等からなりハニカム形状に形成された基材(担体基材)と、基材表面に形成された活性アルミナ粉末、シリカ粉末等からなる担体(触媒担持層)と、この担体に担持された白金等の貴金属からなる触媒成分とから構成されている。
【0003】
例えば、特開2005−270882号公報(特許文献1)においては、1種又は2種以上のセリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−イットリア、セリア−ランタン−ジルコニアのいずれかである酸化物からなる多孔質担体に、1種又は2種以上の原子数10〜50000の1種又は2種以上の遷移金属又は遷移金属酸化物からなる触媒金属粒子を担持してなる触媒が開示されている。
【0004】
また、特開2002−79053号公報(特許文献2)においては、少なくとも1種の貴金属、耐火性無機酸化物、セリウム及びランタンを含有し且つ結晶構造が正方晶型の酸化ジルコニウムの単一構造であるジルコニウム酸化物を含有する触媒活性成分を、耐火性三次元構造体に被覆した排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0005】
さらに、特開2004−141833号公報(特許文献3)においては、セリア及びジルコニアを含む金属酸化物粒子に貴金属が担持されており、前記金属酸化物粒子が、セリアよりジルコニアを多く含有する中心部、及びジルコニアよりセリアを多く含有する表面層を有する排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0006】
また、特開2004−243177号公報(特許文献4)においては、一つの粒子中に少なくともCeOとZrOとを含む複合酸化物粉末に貴金属が担持されてなり、前記複合酸化物粉末のCeOの重量%をCCeとしZrOの重量%をCZrとしたときに0.5≦CZr/CCe≦1.5の関係を満たし、前記貴金属は、前記複合酸化物粉末を純水に懸濁したときの水浸pH値より低いpH値を示す貴金属塩水溶液を用いて前記複合酸化物粉末に担持されている排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0007】
一方、貴金属粒子に粒成長が発生した排ガス浄化用触媒を再生する方法が種々開発されてきている。例えば、特開平7−75737号公報(特許文献5)には、無機多孔質の母材に活性種として貴金属が担持されてなる排ガス浄化用触媒の再生方法であって、前記触媒にハロゲンを作用させて前記母材上で貴金属のハロゲン化物を生成させた後にそのハロゲン化物からハロゲンを脱離させる方法が開示されている。また、特開2000−202309号公報(特許文献6)には、アルカリ土類金属酸化物及び希土類酸化物から選ばれる少なくとも一種を含む担体と該担体に担持された白金とよりなる排ガス浄化用触媒に対して、酸化処理を行い、次いで還元処理を行う方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−270882号公報
【特許文献2】特開2002−79053号公報
【特許文献3】特開2004−141833号公報
【特許文献4】特開2004−243177号公報
【特許文献5】特開平7−75737号公報
【特許文献6】特開2000−202309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のような触媒においては、貴金属をクラスターとして担持することで貴金属粒子の熱安定化を図るものであるため、より高温に耐えるものとすると貴金属の単位量あたりの触媒活性が低下するという問題があった。また、特許文献2に記載のような排ガス浄化用触媒においては、貴金属保持サイトが不足しているため、貴金属が粒成長して触媒活性が低下するという問題があった。更に、特許文献3〜4に記載のような排ガス浄化用触媒は、担体粒子中のセリウムとジルコニウムの組成が均一でないために耐熱性が劣り、貴金属の粒成長の抑制という点では必ずしも十分ではなかった。また、特許文献1〜4に記載のような排ガス浄化用触媒においては、長時間使用後における貴金属の単位量あたりの触媒活性が必ずしも十分なものではなく且つ再生処理によって十分な触媒活性の再生を示すものではかった。
【0009】
また、特許文献5に記載の方法のようにハロゲンを作用させて排ガス浄化用触媒を再生する方法においては、触媒を内燃機関の排気系に装着した状態で再生することは非常に困難であり、また、粒成長した貴金属を再分散させて触媒活性を再生させる再生処理に要する時間の短縮に限界があった。更に、特許文献6に記載の方法であっても、粒成長した貴金属を再分散させて触媒活性を再生させる再生処理に要する時間の短縮と温度の低減という点で必ずしも十分なものではなかった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長を十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することができ、しかも使用に際して貴金属が粒成長した場合においても貴金属を再分散させて触媒活性を容易に再生させ、担持させた貴金属の単位量あたりの触媒活性が十分に高く、優れた触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素とを含む蛍石型構造の担体と、前記担体に担持された貴金属とを含み、前記担体中に含有される前記金属元素の量が前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲にあり、前記金属元素中に含有されるセリウムの量が前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲にあり、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が特定の式によって算出される基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8gの範囲にある排ガス浄化用触媒によって、驚くべきことに、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長を十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することができ、しかも使用に際して貴金属が粒成長した場合においても貴金属を再分散させて触媒活性を容易に再生させ、担持させた貴金属の単位量あたりの触媒活性が十分に高く、優れた触媒活性を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物を含む蛍石型構造の担体と、前記担体に担持された貴金属とを含み、
前記担体中に含有される前記金属元素の量が前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲にあり、前記金属元素中に含有されるセリウムの量が前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲にあり、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が式(1):
X=(σ/100)×S/s÷N×Mnm×100 (1)
[式(1)中、Xは前記担体100gあたりの前記貴金属の量の基準値(単位:g)を示し、σは式(2):
σ=M−50 (2)
(式(2)中、Mは前記担体中に含有される前記金属元素の割合(単位:mol%)を示す。)
により算出される前記金属元素が前記金属元素に囲まれる確率(前記金属元素が貴金属の高温安定性に有効に寄与する確率(単位:%))を示し、Sは前記担体の比表面積(単位:m/g)を示し、sは式(3):
【0013】
【数1】

【0014】
(式(3)中、aは格子定数(単位:Å)を示す)
により算出される陽イオン1個あたりの単位面積(単位:Å/個)を示し、Nはアボガドロ数(6.02×1023(単位:個))を示し、Mnmは前記担体に担持された前記貴金属の原子量を示す。]
により算出される基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8gの範囲にあることを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が基準値Xの2倍以下且つ0.02〜0.5gの範囲にあることが好ましく、基準値Xの2倍以下且つ0.05〜0.3gの範囲にあるとより好ましい。
【0016】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする方法である。
【0017】
上記本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記酸化処理における温度が500〜1000℃であることが好ましい。
【0018】
また、上記本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記酸化雰囲気における酸素濃度が1体積%以上であることが好ましい。
【0019】
さらに、上記本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法においては、前記排ガス浄化用触媒を内燃機関の排気系に装着した状態で、前記酸化処理及び前記還元処理を施すことが好ましい。
【0020】
なお、本発明の排ガス浄化用触媒及び本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒においては、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物が、貴金属に対して極めて強い相互作用を示す。これは、酸化雰囲気下において貴金属が酸素を介してセリウム(Ce)や希土類元素及びアルカリ土類金属元素と結合することに起因する。そのため、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒活性の低下を十分に抑制することができる。
【0021】
また、本発明においては、前記担体が蛍石型構造を備え且つ金属元素中のセリウムの割合が前述のような範囲にあるため、セリウムが担体中に固溶した状態で存在することから、高温雰囲気下においても比表面積の低下が十分に抑制され、且つ前記担体の単位量あたりの貴金属を保持できるサイト数が十分なものとなり、貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒活性の低下を十分に抑制することが可能となる。また、貴金属の量が前述の条件を満たす範囲にあることから、余剰な貴金属に起因した粒成長が抑制される。
【0022】
また、本発明の排ガス浄化用触媒を長期間使用して粒成長した場合には、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱(好ましくは500〜1000℃で加熱)することによって、貴金属は担体と複合酸化物及び金属酸化物を形成し、次第に担体表面上に拡がった状態で分散される。その結果、担体上の貴金属は酸化物の状態で高分散担持された状態となり(再分散)、次いで還元処理を施すことによって酸化物状態の貴金属を金属状態に還元されることとなり、触媒活性が再生するものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長を十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することができ、しかも使用に際して貴金属が粒成長した場合においても貴金属を再分散させて触媒活性を容易に再生させ、担持させた貴金属の単位量あたりの触媒活性が十分に高く、優れた触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物を含む蛍石型構造の担体と、前記担体に担持された貴金属とを含み、
前記担体中に含有される前記金属元素の量が前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲にあり、前記金属元素中に含有されるセリウムの量が前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲にあり、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が式(1):
X=(σ/100)×S/s÷N×Mnm×100 (1)
[式(1)中、Xは前記担体100gあたりの前記貴金属の量の基準値(単位:g)を示し、σは式(2):
σ=M−50 (2)
(式(2)中、Mは前記担体中に含有される前記金属元素の割合(単位:mol%)を示す。)
により算出される前記金属元素が前記金属元素に囲まれる確率(単位:%)を示し、Sは前記担体の比表面積(単位:m/g)を示し、sは式(3):
【0026】
【数2】

【0027】
(式(3)中、aは格子定数(単位:Å)を示す)
により算出される陽イオン1個あたりの単位面積(単位:Å/個)を示し、Nはアボガドロ数(6.02×1023(単位:個))を示し、Mnmは前記担体に担持された前記貴金属の原子量を示す。]
により算出される基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8gの範囲にあることを特徴とするものである。
【0028】
本発明にかかる担体は、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物を含み、且つ蛍石型構造を備えるものである。ここで、蛍石型構造とは、AX型化合物(Aは金属元素、Xは酸素)の結晶構造の一つで蛍石により代表される構造であり、面心立方格子で単位格子中に4個の化学式数が含まれる構造である。
【0029】
このような希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く親和性が大きい傾向にあるという観点からLa、Ce、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Ce、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属及びその酸化物との相互作用が強く親和性が大きい傾向にあるという観点からMg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低い希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる。
【0030】
このような担体においては、上述のジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素とが複合酸化物を形成する必要がある。すなわち、ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素とが単に共存している状態(例えば、ジルコニア粒子と、アルカリ土類金属酸化物粒子及び希土類酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも一つの酸化物粒子とが均一分散している状態)では、担体の耐熱性が十分に確保されないばかりか再生処理を施した場合に担体上の貴金属を十分に再分散できず、触媒活性は十分に再生しない。
【0031】
また、本発明にかかる担体において、担体中に含有される前記金属元素の量は、前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲である。また、このような金属元素の量としては、前記担体に対して金属換算で51.5〜70mol%の範囲にあることが好ましく、52〜65mol%の範囲にあることがより好ましく、52.5〜60mol%の範囲にあることが特に好ましい。このような金属元素の量が51mol%未満では、前記担体の貴金属を保持できるサイト数が減少し、効率的に貴金属を保持することができず、また、後述する本発明の再生方法を採用して再生処理を施しても担体上の貴金属の粒子は十分に小さくならない。他方、このような金属元素の量が75mol%を超えると、前記複合酸化物中のジルコニウムの比率が少なくなって比表面積の維持が困難となり、耐熱性に劣る傾向にある。
【0032】
また、このような金属元素中に含有されるセリウムの量は、前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲である。このようなセリウムの量が前記90mol%未満では、セリウム以外の金属元素が担体中に固溶しきれなくなり、比表面積の低下を招く。
【0033】
さらに、前記担体においては、ジルコニウムと前記金属元素とが固溶して粒子内において均一な組成となる。一般に、担体中のCeOは高温還元時に著しく比表面積を低下するため、担体中においてジルコニウムとセリウムとの間に組成分布があると耐熱性が低下する傾向にある。しかしながら、本発明においては、前述のように前記担体中の組成が均一なものとなるため比表面積の低下を抑制できる。そのため、本発明にかかる担体は耐熱性に優れたものとなる。
【0034】
また、このような担体の比表面積は、5m/g以上(より好ましくは10m/g以上、更に好ましくは15m/g以上)であることが好ましい。比表面積が前記下限未満では、十分な触媒活性を発揮させるために妥当な量の貴金属を担持することが困難となる。また、担体の耐熱性を確保できる限りにおいては、担体の比表面積はより大きいなことが好ましいため、前記比表面積の上限は特に制限されない。なお、担体は耐久雰囲気(高温雰囲気)中で比表面積の低下を起こさないことが触媒活性の維持に対して重要な要素の一つであることから、このような触媒に用いる担体としては、予め熱履歴を加えることによって比表面積を落としたものを利用することもできる。そのため、本発明にかかる担体としては、予め熱履歴を加えて比表面積を80m/g未満、更には60m/g未満としたものを利用してもよい。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0035】
また、前記複合酸化物は、酸素1s軌道の結合エネルギーの値が531eV以下の値を示すものであることが好ましく、531〜529eVの値を示すものであることが特に好ましい。前記結合エネルギーの値が531eVを超えている複合酸化物を用いた場合は、貴金属と担体との相互作用が十分に強くならず、再生処理のうちの酸化処理を施しても担体上の貴金属が十分に再分散しない傾向にある。他方、前記結合エネルギーの値が529eV未満の複合酸化物を用いた場合は、貴金属と担体との相互作用が強くなり過ぎて、再生処理のうちの還元処理を施しても担体上の貴金属が活性な状態に戻りにくくなる傾向にある。
【0036】
このような条件を満たす前記複合酸化物としては、例えば以下のもの:
CeO−ZrO−Y:530.04eV
CeO−ZrO:530eV
CeO−ZrO−La−Pr:529.79eV
が挙げられる。
【0037】
また、前記担体は、上述の複合酸化物を含むものであればよく、他の成分としてアルミナ、ゼオライト、ジルコニア等が更に含まれていてもよい。その場合、本発明にかかる担体における前記複合酸化物の比率が50質量%以上であることが好ましい。
【0038】
さらに、このような担体の形状としては特に制限されないが、比表面積を向上させることでより高い触媒活性が得られることから、粉体状であることが好ましい。また、担体が粉体状のものである場合においては、前記担体の粒度(二次粒子径)は特に制限されず、5〜200μmであることが好ましい。前記粒度が前記下限未満では、担体の微細化にコストがかかるとともに、その扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると後述するような基材上に本発明の排ガス浄化用触媒のコート層を安定に形成させることが困難となる傾向にある。
【0039】
なお、本発明にかかる前記担体の製造方法は、特に制限されず、例えば以下のような方法によって得ることができる。すなわち、上述の複合酸化物の原料となる諸金属の塩(例えば、硝酸塩)と、更に必要に応じて界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)とを含有する水溶液から、アンモニアの存在下で上記複合酸化物の共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成することによって前記複合酸化物からなる担体を得ることができる。
【0040】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体に貴金属が担持されている。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられるが、得られる排ガス浄化用触媒がより高い触媒活性を示すという観点からは、白金、ロジウム、パラジウムが好ましく、再生の観点から白金、パラジウムが好ましい。
【0041】
また、本発明においては、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量は、基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8g(より好ましくは0.02〜0.5g、更に好ましくは0.05〜0.3g、)である。このような貴金属の担持量が前記下限未満では、貴金属により得られる触媒活性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コストが高騰するとともに粒成長が起こり易くなり、貴金属の単位量あたりの触媒活性が低下する傾向にある。
【0042】
また、本発明における基準値Xの算出方法は、式(1):
X=(σ/100)×S/s÷N×Mnm×100 (1)
[式(1)中、Xは前記担体100gあたりの前記貴金属の量の基準値(単位:g)を示し、σは式(2):
σ=M−50 (2)
(式(2)中、Mは前記担体中に含有される前記金属元素の割合(単位:mol%)を示す。)
により算出される前記金属元素が前記金属元素に囲まれる確率(単位:%)を示し、Sは前記担体の比表面積(単位:m/g)を示し、sは式(3):
【0043】
【数3】

【0044】
(式(3)中、aは格子定数(単位:Å)を示す)
により算出される陽イオン1個あたりの単位面積(単位:Å/個)を示し、Nはアボガドロ数(6.02×1023(単位:個))を示し、Mnmは前記担体に担持された前記貴金属の原子量を示す。]
により示される。本発明においては、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量は、0.01〜0.8g且つ基準値Xの2倍(より好ましくは1.5倍、更に好ましくは1倍)以下である。なお、本発明においては、貴金属が2種以上担持されている場合には、前記貴金属の原子量Mnmは、それぞれの貴金属の原子量にそれぞれの貴金属の全貴金属量に対する割合を掛け合わせて算出された値を全て足し合せて算出される値とする。
【0045】
このような式(1)は、担体上の貴金属を安定に保持させるためのサイトの量、つまり、前記貴金属の基準値Xと担体の組成及び比表面積との関係を示すものである。本発明において、貴金属の担持量が上記式(1)により算出される基準値Xの2倍を超えると、貴金属を担持させるためのサイトの量に対して担持される貴金属の量が多くなるため余剰な貴金属が存在することとなり、粒成長が起こり易くなり、貴金属の単位量あたりの触媒活性が低下する。しかしながら、貴金属の担持量が前記基準値Xの2倍以下である場合には後述する本発明の再生処理を施せば、貴金属を容易に再分散させることができ、貴金属の単位量あたりの触媒活性を再生することができる。貴金属の担持量が前記基準値Xに近くなると、担体の貴金属を担持させるためのサイトの量に対して妥当な貴金属の量に近づき、より粒成長を抑制し再生性が向上する。さらに、貴金属の担持量が前記基準値X以下になると、担体の貴金属を担持させるためのサイトの量より少ない貴金属量を担持せしめることができており、貴金属は酸素を介して担体表面の陽イオンと十分に結合できるため、担体の表面において貴金属が安定して存在するとともに高分散の状態で保持され、貴金属の粒成長がさらに抑制され、貴金属の単位量あたりの触媒活性がより十分なものとなる。
【0046】
図1に、上記式(1)における貴金属の量の基準値Xと担体の比表面積Sとの関係を示すグラフを示す。なお、この図1は、例としてCe0.6Zr0.4担体(M=60mol%、格子定数a=5.304915Å)及びPt(原子量Mnm:195.09)を用いた場合に計算されて得られるグラフである。
【0047】
また、本発明においては、特に長期間使用後においても前記担体100gあたり貴金属の担持量が上記式(1)により算出される前記基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8gの範囲にあるという条件を満たすことが好ましく、例えば、触媒1.5gに対して333cc/分となるようにしてリッチガス(CO(3.75容量%)/H(1.25容量%)/HO(3容量%)/N(balance))と、リーンガス(O(5容量%)/HO(3容量%)/N(balance))とを5分ごとに交互に流入させたモデルガス雰囲気下で1000℃の温度条件で5時間保持する耐久試験を行った後においても、前記担体100gあたり貴金属の担持量が上記条件を満たすことが好ましい。
【0048】
また、本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属はより細粒化された粒子の状態で担体に担持されることが好ましい。このような貴金属の粒子の粒径としては3nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。前記貴金属の粒子径が前記上限を超えると高度な触媒活性が得ることが困難になる傾向にある。
【0049】
なお、前記担体に前記貴金属を担持させる方法としては、貴金属の担持量が前述の各条件を満たすように調整する以外は特に制限されず、例えば、貴金属の担持量が前述の各条件を満たすようにして調製した貴金属の塩(例えば、ジニトロジアミン塩)や錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液を前記担体に接触させた後に乾燥し、焼成する方法を採用することができる。
【0050】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体に、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び3A族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含有する添加成分が更に担持されていることが好ましい。このような担持成分を前記担体に担持せしめることにより、担体の塩基性をより向上させ、担体とその担体に担持された貴金属との間により強い相互作用を付与することができ、これによって貴金属の粒成長をより十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することが可能となる。また、このような担持成分を前記担体に担持せしめることにより、上述のように担体と貴金属との間に極めて強い相互作用が働くことから、使用に際して粒成長した場合に後述の本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法を採用して再生処理を施すことで、より効率よく貴金属を再分散させて触媒活性を再生できる傾向にある。
【0051】
また、このような添加成分に含有される元素としては、担体の塩基性をより向上させて貴金属の粒成長をより十分に抑制できるとともに、貴金属が粒成長した場合においても触媒活性をより容易に再生させることができるという観点から、マグネシウム、カルシウム、ネオジウム、プラセオジウム、バリウム、ランタン、セリウム、イットリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも一種の元素が好ましく、ネオジウム、バリウム、イットリウム及びスカンジウムが更に好ましい。
【0052】
また、このような添加成分の担持量は、金属換算で前記貴金属の量に対するモル比(添加成分の量/貴金属の量)が0.5〜20(より好ましくは1〜10)の範囲となる量である。このようなモル比が前記下限未満では、添加成分の担持量が十分でないため担体の塩基性を向上させることが困難となり、貴金属の粒成長をより十分に抑制する効果が低減する傾向にあり、他方、前記上限を超えると担体の比表面積が低下し、貴金属の分散性が低下する傾向にある。
【0053】
また、このような添加成分は、担持量を少量にして前記担体の外表面に担持させる量を確実に制御することが好ましく、更にコスト面でも担持量が少ないことが好ましいという観点から、前記担体の外表面近傍に高い密度で担持されていることが好ましい。このような状態としては、前記担体が粉体状のものである場合には、前記添加成分の80%以上が前記担体の外表面から前記担体の中心までの間において前記担体の外表面から30%の領域に担持されていることが好ましい。
【0054】
また、前記担体に添加成分を担持させる方法としては特に制限されず、例えば、上記元素の塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硫酸塩)や錯体を含有する水溶液を前記担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。また、必要に応じて前記担体を予め熱処理して安定化させた後に、前記添加物を担持させてもよい。なお、このような添加成分を担持させる場合には、前記担体に前記添加成分と前記貴金属とを担持させる順序は特に制限されない。
【0055】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記担体に鉄が更に担持されていることが好ましい。このようにしてFeを担持させることで、還元雰囲気下においてはFeが貴金属と合金化し、他方、酸化雰囲気下においてはFeが酸化物として貴金属の表面及び周辺に析出することから、貴金属の粒成長をより十分に抑制することができ、触媒活性の低下をより十分に抑制できる傾向にあり、更には、後述する本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法を採用した再生処理を施した際に、活性点である貴金属をより微細化し、触媒活性を再生させることが可能となる傾向にある。
【0056】
このような鉄の担持量としては、金属換算で前記貴金属の量に対するモル比(鉄の量/貴金属の量)が0.8〜12(より好ましくは1〜10)の範囲となる量であることが好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、鉄の担持量が少なく貴金属の粒成長を抑制する効果が十分に得られなくなる傾向にあり、前記上限を超えると、過剰に担持された鉄が担体の比表面積を低下させ、更には貴金属の表面を覆ってしまったりするため触媒活性が低下する傾向にある。
【0057】
また、本発明の排ガス浄化用触媒において、前記担体に担持されている前記鉄の担持状態は特に制限されないが、前記鉄が前記貴金属のより近傍に担持されていることが好ましい。前記鉄を前記貴金属のより近傍に担持させることで、貴金属の粒成長を抑制する効果がより向上する傾向にあり、後述する本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法を採用した再生処理を施した際に、活性点である貴金属をより微細化し、触媒活性を再生させることができる傾向にある。
【0058】
また、このような鉄を担持させる方法としては特に制限されず、例えば、鉄の塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硫酸塩)や錯体を含有する水溶液を前記担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。なお、このような鉄の担持は前記貴金属と同時に行ってもよく、例えば、貴金属の塩の水溶液と鉄の塩の水溶液の混合液を前記担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。
【0059】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の形態は特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。さらに、このような触媒を製造する方法も特に制限されず、例えば、モノリス触媒を製造する場合は、コーディエライトや金属箔から形成されたハニカム形状の基材に、上述の担体の粉末からなるコート層を形成し、それに貴金属を担持せしめる方法がある。好ましくは、上述の担体の粉末に予め貴金属を担持せしめた後、その貴金属担持粉末を用いて前記基材にコート層を形成する方法で製造するのがよい。
【0060】
さらに、このような本発明の排ガス浄化用触媒は長期間使用して担体に担持されている貴金属が粒成長した場合には、後述の本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法を施すことで貴金属を再分散させ、触媒活性を十分に再生させることが可能である。そして、このような再生処理を施した後の担体に担持されている貴金属の粒子径としては、高い触媒活性を得るという観点から、3nm以下(より好ましくは2nm以下)であることが好ましい。
【0061】
以上、本発明の排ガス浄化用触媒について説明したが、以下において、本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法について説明する。
【0062】
本発明の排ガス浄化用触媒の再生方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする方法である。
【0063】
本発明にかかる酸化処理が行われる酸化雰囲気としては、酸素が少しでも含まれていればそれに相当するモル数の貴金属を酸化することができるが、酸素の濃度が1体積%以上であることが好ましく、1〜20体積%であることがより好ましい。酸素の濃度が前記下限未満では、担体上の貴金属の再分散が十分に進行しない傾向にあり、他方、酸素の濃度は高ければ高いほど酸化という観点からは良いが、空気中の酸素濃度を超える20体積%超とするためには酸素ボンベ等の特別な装置が必要となりコストが高騰する傾向にある。また、本発明にかかる酸化雰囲気中の酸素以外のガスとしては、還元性ガスを含まないことが好ましく、窒素ガス又は不活性ガスを用いることが好ましい。
【0064】
本発明にかかる酸化処理における加熱温度は、担持されている貴金属が酸化される温度であればよいが、500〜1000℃の範囲の温度とすることが好ましい。酸化処理温度が500℃未満では、担体上の貴金属が再分散する速度が極端に遅くなって十分に進行しない傾向にあり、他方、1000℃を超えると担体自体の熱収縮が起こり易くなり、触媒活性が低下する傾向にある。
【0065】
また、本発明にかかる酸化処理に要する時間は、酸化処理温度等に応じて適宜選択され、温度が低ければ長時間必要となり、温度が高ければ短時間でよい傾向にある。酸化処理温度が500〜1000℃であれば、酸化処理一工程あたりの時間は2秒〜1時間程度であることが好ましい。酸化処理時間が2秒未満では担体上の貴金属の再分散が十分に進行しない傾向にあり、他方、1時間を超えると貴金属の再分散作用が飽和する傾向にある。
【0066】
本発明にかかる酸化処理は、排ガス浄化用触媒を排気系から取り出して所定の処理装置内で行ってもよいが、内燃機関の排気系に装着した状態で実施することが好ましい。それによって酸化処理工数を大きく低減することができ、しかも酸化処理後に排ガスを流通させることによって貴金属の酸化物を還元させることが可能となる。このように排気系に排ガス浄化用触媒を装着した状態で酸化処理する場合、例えば触媒の上流側に設けられた空気弁から空気を多量に導入したり、混合気の空燃比(A/F)を高くしたり、その逆に燃料の供給量を大幅に減らしたりして、混合気の空燃比(A/F)を高くすることによって実施することができる。また、加熱手段としては、特定の加熱装置によって触媒を加熱してもよいし、触媒上における反応熱を利用して加熱してもよい。
【0067】
上記のように排気系に装着した状態で酸化処理を実行すれば、触媒性能の劣化の程度に対応してリアルタイムで酸化処理を施すことも可能となる。例えば、自動車の運転時間や走行距離に応じて定期的に酸化処理を行ってもよいし、触媒の下流にNOxセンサーやCOセンサーを設けて触媒性能を検出し、その値が基準値を超えた場合に酸化処理を行うようにしてもよい。
【0068】
本発明にかかる還元処理は、水素、一酸化炭素等の還元性ガスが存在する雰囲気下で前記触媒を加熱することによって実施することができる。よって、エンジン排気は全体としてストイキ雰囲気であっても還元性ガスを含むことから、貴金属を十分に還元処理できる。さらに、還元処理においては、還元性ガスが少しでも含まれていればよいが、還元性ガスの濃度が0.1体積%以上であることが好ましい。還元性ガスの濃度が前記下限未満では、担体上の貴金属が活性な状態に戻りにくくなる傾向にある。また、本発明にかかる還元性雰囲気中の還元性ガス以外のガスとしては、酸化性ガスを含まないことが好ましく、窒素ガス又は不活性ガスを用いることが好ましい。
【0069】
本発明にかかる還元処理における加熱温度は、前記酸化処理により酸化された貴金属の酸化物が還元される温度であればよいが、200℃以上であることが好ましく、400〜1000℃の範囲の温度とすることが好ましい。還元処理温度が200℃未満では、担体上の貴金属の酸化物が十分に還元されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると担体自体の熱収縮が起こり易くなり、触媒活性が低下する傾向にある。
【0070】
また、本発明にかかる還元処理に要する時間は、還元処理温度等に応じて適宜選択され、温度が低ければ長時間必要となり、温度が高ければ短時間でよい傾向にある。還元処理温度が200℃以上であれば、還元処理一工程あたりの時間は2秒〜5分程度であることが好ましい。還元処理時間が前記下限未満では担体上の貴金属の酸化物が十分に還元されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属の酸化物の還元作用が飽和してしまう傾向にある。
【0071】
本発明にかかる還元処理も、排ガス浄化用触媒を排気系から取り出して所定の処理装置内で行ってもよいが、内燃機関の排気系に装着した状態で実施することが好ましい。それによって還元処理工数を大きく低減することができ、しかも前記酸化処理後に単に排ガスを流通させることによって貴金属の酸化物を還元させることが可能となる。このように排気系に排ガス浄化用触媒を装着した状態で還元処理する場合、例えば、自動車の排ガス浄化用触媒の場合には、化学量論的に等量比にあるストイキ雰囲気或いは酸素が不足するリッチ雰囲気の排ガスを排ガス浄化用触媒に接触させることによって実施することが好ましい。これにより排ガス浄化用触媒を排気系に装着したまま酸化処理と還元処理を施すことができ、空燃比制御の一環として本発明の再生処理を実施することが可能となる。また、加熱手段としては、特定の加熱装置によって触媒を加熱してもよいし、排ガスの熱を利用して加熱してもよい。
【0072】
なお、前記酸化処理と前記還元処理とがそれぞれ一工程の場合は酸化処理の後に還元処理が施されるが、本発明の再生方法においては前記酸化処理と前記還元処理とを交互に繰り返してもよく、その場合は酸化処理が先であっても還元処理が先であってもよい。また、前記酸化処理と前記還元処理とを交互に繰り返す場合、前者の処理の合計時間と後者の処理の合計時間はいずれも特に制限されない。
【0073】
そして、このような本発明の再生処理を施すことで、粒成長した貴金属の粒子径を3nm以下(より好ましくは2nm以下)に微細化させることが可能となる。このような再生処理を施して前記担体に担持されている前記粒径に貴金属粒子を微細化させることで、触媒活性をより十分に再生させることが可能となる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
先ず、担体としてセリウム−ジルコニウム−プラセオジム−ランタン複合酸化物(CeO−ZrO−Pr−La)を製造した。すなわち、先ず、28wt%の硝酸セリウム水溶液217.3g、18wt%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液205.4g、硝酸プラセオジウム2.18g、硝酸ランタン2.89g、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gをイオン交換水2Lに溶解し、25wt%のアンモニア水を陽イオンに対して1.2倍当量添加し、得られた共沈殿物を濾過、洗浄して担体前駆体を得た。次に、得られた担体前駆体を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウム−ジルコニウム−プラセオジム−ランタン複合酸化物からなる蛍石型構造の担体(組成比:53mol%CeO、45mol%ZrO、0.5mol%Pr、0.5mol%La、担体に対する金属元素の量M(金属換算):55mol%)を得た。なお、得られた担体の格子定数は5.304Åであった。
【0076】
次に、前記担体に貴金属を担持せしめて本発明の排ガス浄化触媒を製造した。すなわち、イオン交換水200mlにジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)0.625gを混合した混合液に、前述のようにして得られた担体25gを加えて含浸担持せしめた後、大気中において500℃で3時間焼成して本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.1g)/CeO−ZrO−Pr−La(100g))を得た。
【0077】
(実施例2)
先ず、担体としてセリウム−ジルコニウム−プラセオジム−イットリウム複合酸化物(CeO−ZrO−Pr−Y)を製造した。すなわち、先ず、28wt%の硝酸セリウム水溶液218.1g、18wt%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液201.7g、硝酸プラセオジウム2.19g、硝酸イットリウム5.13g、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gをイオン交換水2Lに溶解し、25wt%のアンモニア水を陽イオンに対して1.2倍当量添加し、得られた共沈殿物を濾過、洗浄して担体前駆体を得た。次に、得られた担体前駆体を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウム−ジルコニウム−プラセオジム−イットリウム複合酸化物からなる蛍石型構造の担体(組成比:53mol%CeO、44mol%ZrO、0.5mol%Pr、1mol%Y、担体に対する金属元素の量M(金属換算):56mol%)を得た。なお、得られた担体の格子定数は5.304Åであった。
【0078】
次に、前記担体に貴金属を担持せしめて本発明の排ガス浄化触媒を製造した。すなわち、イオン交換水200mlにジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)1.563gを混合した混合液に、前述のようにして得られた担体25gを加えて含浸担持せしめた後、大気中において500℃で3時間焼成して本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.25g)/CeO−ZrO−Pr−Y(100g))を得た。
【0079】
(実施例3)
先ず、担体としてセリウム−ジルコニウム複合酸化物(CeO−ZrO)を製造した。すなわち、先ず、28wt%の硝酸セリウム水溶液273.3g、18wt%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液130.4g、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gをイオン交換水2Lに溶解し、25wt%のアンモニア水を陽イオンに対して1.2倍当量添加し、得られた共沈殿物を濾過、洗浄して担体前駆体を得た。次に、得られた担体前駆体を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウム−ジルコニウム複合酸化物からなる蛍石型構造の担体(組成比:70mol%CeO、30mol%ZrO、担体に対する金属元素の量M(金属換算):70mol%)を得た。なお、得られた担体の格子定数は5.334Åであった。
【0080】
次に、前記担体に貴金属を担持せしめて本発明の排ガス浄化触媒を製造した。すなわち、イオン交換水200mlにジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)1.563gを混合した混合液に、前述のようにして得られた担体25gを加えて含浸担持せしめた後、大気中において500℃で3時間焼成して本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.25g)/CeO−ZrO(100g))を得た。
【0081】
(実施例4)
先ず、担体としてセリウム−ジルコニウム−イットリウム複合酸化物(CeO−ZrO−Y)を製造した。すなわち、先ず、28wt%の硝酸セリウム水溶液242.6g、18wt%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液157.6g、硝酸イットリウム12.6g、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gをイオン交換水2Lに溶解し、25wt%のアンモニア水を陽イオンに対して1.2倍当量添加し、得られた共沈殿物を濾過、洗浄して担体前駆体を得た。次に、得られた担体前駆体を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウム−ジルコニウム−イットリウム複合酸化物からなる蛍石型構造の担体(組成比:60mol%CeO、35mol%ZrO、2.5mol%Y、担体に対する金属元素の量M(金属換算):65mol%)を得た。なお、得られた担体の格子定数は5.305Åであった。
【0082】
次に、前記担体に貴金属を担持せしめて本発明の排ガス浄化触媒を製造した。すなわち、先ず、イオン交換水200mlに硝酸バリウム0.169gを混合した混合液に、前述のようにして得られた担体25gを加えて含浸担持せしめた後、大気中において500℃で5時間焼成して触媒前駆体を得た。次に、イオン交換水200mlにジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)1.563gを混合した混合液に前記触媒前駆体25gを加えて含浸担持せしめた後、大気中において500℃で3時間焼成して本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.5g)/CeO−ZrO−Y−BaO(100g))を得た。
【0083】
(実施例5)
前記混合液に混合する硝酸バリウムの量を0.338gに代えた以外は実施例4と同様にして本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.5g)/CeO−ZrO−Y−BaO(100g))を得た。
【0084】
(実施例6)
前記混合液に混合するジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)の量を3.125gに変更した以外は実施例1と同様の方法で本発明の排ガス浄化用触媒(Pt(0.5g)/CeO−ZrO−Pr−La(100g))を得た。
【0085】
(比較例1)
前記混合液に混合するジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4重量%)の量を6.25gに変更した以外は実施例1と同様の方法で比較のための排ガス浄化用触媒(Pt(1g)/CeO−ZrO−Pr−La(100g))を得た。
【0086】
(比較例2)
ノニオン系界面活性剤を混合しなかった以外は実施例3と同様の方法で比較のための排ガス浄化用触媒(Pt(0.25g)/CeO−ZrO(100g))を得た。
【0087】
<耐久試験A(1000℃)>
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた排ガス浄化用触媒を用いて、三元触媒の耐久モードを模擬したリッチ/リーン耐久試験を実施した。すなわち、先ず、各触媒を、冷間等方圧加圧法(CIP法)を採用して1t/cmの圧力で直径0.5〜1mmの大きさに粉砕し、ペレット状の触媒とした。次に、得られたペレット状の触媒1.5gに対して333cc/分となるようにしてリッチガス(CO(3.75容量%)/H(1.25容量%)/HO(3容量%)/N(balance))と、リーンガス(O(5容量%)/HO(3容量%)/N(balance))とを5分ごとに交互に流入させ(モデルガス雰囲気下)、1000℃の温度条件で5時間保持した(耐久試験A)。このような耐久試験後の各触媒の比表面積、貴金属の平均粒子径を求め、得られた結果を表2に示す。なお、貴金属の平均粒子径は、特開2004−340637号公報に記載されているCO化学吸着法によって求めた。
【0088】
また、このような耐久試験後の比表面積値を用いて、各触媒に対して、下記式(4):
X=(σ/100)×S/s÷N×Mnm×100 (4)
(式中のσ、S、s、N及びMnmは前記式(1)と同様である。)
を計算して得られる基準値Xに対するPtの担持量Vの割合(V/X)を求めた。得られた結果を表2に示す。なお、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜2)の前記式(4)を計算して得られる基準値Xに対するPtの担持量Vの割合(V/X)は、それぞれ約0.59(実施例1)、約1.23(実施例2)、約0.51(実施例3)であった。他方、比較のための排ガス浄化用触媒においては、それぞれ約5.58(比較例1)、約7.50倍(比較例2)であった。
【0089】
<三元触媒活性の評価>
実施例1、3及び比較例1〜2で得られた排ガス浄化用触媒(初期)と、耐久試験A後の実施例1、3及び比較例1〜2の排ガス浄化用触媒とをそれぞれ用いて、表1に示すストイキモデルガスにCO(75容量%)/H(25容量%)またはO(100容量%)よってλ=1±0.02(2sec)とした変動雰囲気ガスを、触媒1gに対して3.5L/minの流量で流し、550℃で10分間処理した後、昇温速度12℃/minで100℃〜550℃まで昇温し、各成分の50%浄化温度を測定した。プロピレン(C)の50%浄化温度を表2に示す。なお、表2に示すプロピレンの50%浄化温度は三元触媒性能の目安であり、この温度が低いほど触媒が高活性であることを意味する。
【0090】
また、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒(初期)を基準として、耐久試験A後のPtの単位量あたりのCO吸着量を比較した(比活性の測定)。結果を表2に示す。なお、このようにして得られる比活性の値は、1よりも大きな値になるほど実施例1で得られた触媒(初期)よりも活性が高いことを示し、1に近いほど実施例1で得られた触媒(初期)とPtの単位量あたりの活性が近いことを示し、1よりも小さな値になるほどPtの単位量あたりの活性が実施例1で得られた触媒(初期)よりも低いことを示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
表2に示す実施例1及び比較例1で得られた各排ガス浄化用触媒の耐久試験後の三元触媒性能(プロピレンの50%浄化温度)の結果から、Pt担持量が実施例1で得られた触媒の10倍となっている比較例1で得られた触媒の方が、より高い活性を示していることが分かる。しかしながら、比較例1で得られた触媒が耐久試験後に比活性の値が0.04にまで低下しているのに対して、実施例1で得られた触媒は耐久試験後においても比活性の値が0.85という高い値を保持していた。このような結果から、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1)は、触媒性能の劣化を十分に抑制できることが確認された。これは、実施例1で得られた排ガス浄化用触媒においては、担体表面に貴金属量に対する十分な保持サイトがあるために、Ptの粒成長が抑制されて耐久試験前後での性能差が小さいのに対して、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒においては、耐久試験後に余剰なPtが粒成長して初期性能に対して著しく触媒活性が低下したことに起因すると推察される。このような観点から、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒は、反応に寄与しない余剰なPtが担持された非効率的な触媒であると言える。
【0094】
また、実施例3及び比較例2で得られた排ガス浄化用触媒の耐久試験後の三元触媒性能(プロピレンの50%浄化温度)を比較すると、同じPt量、同じ担体組成であるにも関わらず、プロピレンの50%浄化温度に100℃近い差があることが分かる。このような結果は、実施例2で得られた排ガス浄化用触媒と用いた担体の組成が同じであっても、比較例2で得られた排ガス浄化用触媒に用いられた担体は比表面積が十分でないために、担体表面に貴金属量に対して十分な保持サイトが無く、貴金属を高分散状態で保持できないことに起因するものと推察される。
【0095】
<耐久試験B(950℃)>
実施例1、2、4〜6及び比較例1で得られた排ガス浄化用触媒を用い、三元触媒の耐久モードを模擬したリッチ/リーン耐久試験を実施した。すなわち、先ず、各触媒を、冷間等方圧加圧法(CIP法)を採用して1t/cmの圧力で直径0.5〜1mmの大きさに粉砕し、ペレット状の触媒とした。次に、得られたペレット状の触媒3gに対して500cc/分となるようにしてリッチガス(CO(5容量%)/CO(10容量%)/HO(3容量%)/N(balance))と、リーンガス(O(5容量%)/CO(10容量%)/HO(3容量%)/N(balance))とを5分ごとに交互に流入させ(モデルガス雰囲気下)、950℃の温度条件で5時間保持した(耐久試験)。
このような耐久試験後の各触媒の比表面積、貴金属の平均粒子径を求め、得られた結果を表3に示す。なお、貴金属粒子の平均粒子径は、特開2004−340637号公報に記載されているCO化学吸着法によって求めた。
【0096】
<再生処理条件>
耐久試験B後の実施例1、2、4〜6及び比較例1の排ガス浄化用触媒をそれぞれ0.7g用い、触媒0.7gあたり150ml/分となるようにO(20容量%)/He(80容量%)からなるガスを流入させた酸化雰囲気中において800℃で15分間それぞれ酸化処理(再分散処理)を施し、貴金属の再分散を試みた。このような再分散処理後の各排ガス浄化用触媒の貴金属の平均粒子径を表3に示す。なお、貴金属の平均粒子径は、特開2004−340637号公報に記載されているCO化学吸着法によって求めた。このような再分散処理及びCO化学吸着法の還元前処理をもって、各排ガス浄化用触媒に対する酸化処理と還元処理を実現し、これを再生処理とした。
【0097】
【表3】

【0098】
表3に示す結果からも明らかなように、実施例1、2、4〜6で得られた排ガス浄化用触媒は耐久試験後のPtの粒成長が抑制されていることが確認された。また、実施例1、2、4〜6で得られた排ガス浄化用触媒においては、Ptの単位量あたりの活性(比活性)が耐久試験後においても0.17以上と高く、更には再生処理によってPt粒子径が微細化し、比活性が0.4近くまで再生することが確認された。これに対して、比較例1で得られた排ガス浄化用触媒においては、貴金属が粒成長し、比活性も0.1以下に減少していることが確認された。また、再生処理を施しても比活性があまり再生しないことが確認された。
【0099】
また、実施例4、5で得られた排ガス浄化用触媒は、アルカリ土類金属であるバリウムを担体表面に担持したのちに貴金属を担持して得られたものであり、Ptの粒成長がより抑制されることが確認された。このような結果は、バリウム添加による担体の塩基性向上によるものと推察する。また、表3の式(4)を計算して得られる基準値Xに対するPtの担持量Vの割合(V/X)は、担体に担持したバリウム量がバルク全体に均一として計算した値となるため実際よりも小さくなることに起因するものとも推察される。実施例6で得られた排ガス浄化用触媒においても、Ptの粒成長が抑制され、再生処理によってPtが微細化して比活性が再生していることが確認され、実施例4、5で得られた排ガス浄化用触媒においては、さらにそれらの効果が顕著であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、高温の排ガスに長時間晒されても貴金属の粒成長を十分に抑制して触媒活性の低下を十分に抑制することができ、しかも使用に際して貴金属が粒成長した場合においても貴金属を再分散させて触媒活性を容易に再生させ、担持させた貴金属の単位量あたりの触媒活性が十分に高く、優れた触媒活性を発揮することが可能な排ガス浄化用触媒、並びにその排ガス浄化用触媒の再生方法を提供することが可能となる。
【0101】
したがって、本発明は、自動車エンジンから排出される排ガス中のHC、CO、NOx等の有害成分を除去するための排ガス浄化用触媒を長時間にわたって触媒活性の劣化を抑制し再生させるための技術として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】担体としてCe0.6Zr0.4(M=60mol%、格子定数a=5.304915Å)及び貴金属としてPt(Mnm=195.09)を用いた場合において、担体の比表面積Sと、式(1)により算出される貴金属の量の基準値Xとの関係を示すグラフである。なお、図1の斜線部分は、基準値Xの2倍以下かつ0.01〜0.8gの範囲(請求項1)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムと、希土類元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択され且つセリウムを含む少なくとも一つの金属元素との複合酸化物を含む蛍石型構造の担体と、前記担体に担持された貴金属とを含み、
前記担体中に含有される前記金属元素の量が前記担体に対して金属換算で51〜75mol%の範囲にあり、前記金属元素中に含有されるセリウムの量が前記金属元素に対して金属換算で90mol%以上の範囲にあり、前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が式(1):
X=(σ/100)×S/s÷N×Mnm×100 (1)
[式(1)中、Xは前記担体100gあたりの前記貴金属の量の基準値(単位:g)を示し、σは式(2):
σ=M−50 (2)
(式(2)中、Mは前記担体中に含有される前記金属元素の割合(単位:mol%)を示す。)
により算出される前記金属元素が前記金属元素に囲まれる確率(単位:%)を示し、Sは前記担体の比表面積(単位:m/g)を示し、sは式(3):
【数1】

(式(3)中、aは格子定数(単位:Å)を示す)
により算出される陽イオン1個あたりの単位面積(単位:Å/個)を示し、Nはアボガドロ数(6.02×1023(単位:個))を示し、Mnmは前記担体に担持された前記貴金属の原子量を示す。]
により算出される基準値Xの2倍以下であり且つ0.01〜0.8gの範囲にあることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が0.02〜0.5gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記担体100gあたりの前記貴金属の担持量が0.05〜0.3gの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒に対して、酸素を含む酸化雰囲気中にて加熱する酸化処理、及び還元処理を施すことを特徴とする排ガス浄化用触媒の再生方法。
【請求項5】
前記酸化処理における温度が500〜1000℃であることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。
【請求項6】
前記酸化雰囲気における酸素濃度が1体積%以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。
【請求項7】
前記排ガス浄化用触媒を内燃機関の排気系に装着した状態で、前記酸化処理及び前記還元処理を施すことを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の再生方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−289921(P2007−289921A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351446(P2006−351446)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】