説明

排ガス浄化用触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及びそれらの製造方法

【課題】 酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を得ることができる排ガス浄化用触媒担体を提供すること。
【解決手段】 Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、
800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%であること、
を特徴とする排ガス浄化用触媒担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
排ガス浄化用触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中の二酸化
炭素(CO)が問題にされている。そこで温室効果ガスであるCOを低減するために
、酸素過剰雰囲気下において希薄燃焼させる、いわゆる希薄燃焼方式が実用化されている
。そのため、このような酸素過剰雰囲気下においても一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の排ガスを高効率に浄化することが可能な排ガス浄化用触媒の開発が望まれている。
【0003】
従来、排ガス浄化用触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属をアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、セリア等からなる金属酸化物担体に担持した三元触媒が広く知られている。しかしながら、このような三元触媒は高温ガスに曝されると前記貴金属が凝集して触媒活性が低下するという問題を有していた。そこで、このような貴金属の凝集を抑制することを目的とした排ガス浄化用触媒として、例えば、特開2007−697号公報(特許文献1)には、アルミナ等の金属酸化物からなる担体の細孔内部に担持された貴金属粒子の表面をAl、Zr、Ce等を含む金属酸化物からなる凝集抑制材で包装した排ガス浄化用触媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の排ガス浄化用触媒においても貴金属の凝集抑制効果は未だ十分ではなく、特に、酸素過剰雰囲気下では貴金属の凝集による粒成長を抑制することが困難であり、十分な触媒活性が発揮されないことを本発明者らは見出した。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を得ることができる排ガス浄化用触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)に、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)を担持させ、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%という条件を満たすようにすることにより、得られる排ガス浄化用触媒担体を用いた排ガス浄化用触媒が酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を発揮するようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒担体は、
Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、
800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%であること、
を特徴とするものである。
【0009】
前記本発明の排ガス浄化用触媒担体としては、前記焼成後において、NH昇温脱離法及びCO昇温脱離法により測定される酸量と塩基量との差が170μmol/g以上であることが好ましい。さらに、前記Si系複合酸化物粒子(B)としては、非晶質であることが好ましく、前記Si系複合酸化物粒子(B)におけるSiの含有量が金属換算で30〜95mol%であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体と、前記排ガス浄化用触媒担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
前記本発明の排ガス浄化用触媒としては、前記活性金属粒子(C)のうちの2質量%以上が前記排ガス浄化用触媒担体の表面に露出していることが好ましい。
【0012】
本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法は、
Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%である排ガス浄化用触媒担体の製造方法であって、
前記多孔質体(A)を準備する工程、
Siを含有する第1の化合物と、前記添加元素を含有する第2の化合物と、多座配位子を有する第3の化合物とを含み、且つSiの含有量が金属換算で30〜95mol%であるSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備する工程、及び、
前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめた後に焼成する工程、
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法により得られた排ガス浄化用触媒担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)を担持させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、特許文献1に記載されているような従来の排ガス浄化用触媒においては、凝集抑制材としてAl、Zr、Ce等を用いると、その表面が塩基性となるため貴金属と金属酸化物との相互作用が強まり、貴金属が十分にメタル化されない傾向にある。そのため、このような排ガス浄化用触媒では、酸素過剰雰囲気下における触媒活性を長時間維持することが困難となると本発明者らは推察する。また、特許文献1に記載されている排ガス浄化用触媒は、単に前記担体と前記貴金属と包装材とを混合して焼成することにより得られるものであるが、このような製造方法では担体表面に十分に微細な細孔が形成されないため、貴金属の移動による粒成長を十分に抑制することができないと本発明者らは推察する。さらに、このような従来の排ガス浄化用触媒においては、特許文献1の図1に記載されているように、貴金属を前記凝集抑制材で被覆してしまうため、十分に高い触媒活性を得ることができないと本発明者らは推察する。
【0015】
他方、本発明の排ガス浄化用触媒においては、図1に示すように、多孔質体の細孔内表面にSi系複合酸化物粒子が担持されていることにより、排ガス浄化用触媒担体の細孔内表面に微細孔が形成され、Pt等の活性金属粒子の移動が抑制されて該活性金属粒子の粒成長が十分に抑制される。さらに、前記Si系複合酸化物粒子によって前記排ガス浄化用触媒担体の表面の酸性度が大きくなるため、前記活性金属粒子のメタル化が促進されて触媒活性がより向上すると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を得ることができる排ガス浄化用触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及びそれらの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の排ガス浄化用触媒の作用機構を説明するための模式図である。
【図2】実施例1及び比較例1〜3で得られた触媒担体の細孔半径分布を示すグラフである。
【図3】NH昇温脱離測定における供給モデルガス及び温度のパターンを示すグラフである。
【図4】CO昇温脱離測定における供給モデルガス及び温度のパターンを示すグラフである。
【図5】触媒活性評価における供給モデルガス及び温度のパターンを示すグラフである。
【図6】実施例1〜3と比較例1で得られた触媒のX線回折(XRD)パターンを示すグラフである。
【図7】実施例1で得られた触媒の表層の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図8】実施例1で得られた触媒の表層の拡大透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図9】比較例1で得られた触媒の表層の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図10】比較例1で得られた触媒の表層の拡大透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図11】実施例1で得られた触媒の表層のTEM−EDX測定領域を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図12】実施例1で得られた触媒の表層のTEM−EDX測定領域を示す拡大透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒担体について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒担体は、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、
800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%であること、
を特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る多孔質体(A)は、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる。前記酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの複合酸化物が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記酸化物としては、耐久試験後の比表面積の減少が抑制される傾向にあるという観点から、アルミナ、ジルコニアであることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る多孔質体(A)としては、その形状は特に制限されないが、触媒担体の比表面積がより増加し、より高い触媒活性が得られるという観点から、粒子状であることが好ましい。このような多孔質体(A)が粒子状のものである場合には、前記多孔質体(A)の平均粒子径は1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。前記平均粒子径が前記下限未満では、多孔質体の微細化にコストがかかるとともに、その扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、後述するような基材に多孔質体を安定に固定することが困難となる傾向にある。なお、本発明において、粒子の平均粒子径は任意の100個以上の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定して各粒子の粒子径を求め、その値を平均化することにより求めることができる。また、このような粒子径は、粒子の断面の最大直径を意味し、粒子の断面が円形ではない場合には、その粒子の断面の最大の外接円の直径とする。
【0022】
さらに、前記多孔質体(A)としては、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であることが好ましく、120〜300m/gであることがさらに好ましい。前記比表面積が前記下限未満である場合には、前記Si系複合酸化物粒子(B)及び活性金属粒子を十分に分散させて担持せしめることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、触媒担体において熱劣化による比表面積の減少量が大きくなる傾向にある。
【0023】
また、前記多孔質体(A)としては、800℃で空気中において5時間焼成後の細孔半径5〜25nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して50%以上であることが好ましく、60〜90%であることがより好ましい。前記細孔容積の割合が前記下限未満である場合には、ガスの拡散性が低下して触媒活性効率が低下する傾向にあり、他方、前期上限を超える場合には、細孔半径1〜5nmの微細孔の割合が低下し、得られる排ガス浄化用触媒において活性金属粒子の粒成長が十分に抑制されない傾向にある。
【0024】
なお、本発明において、比表面積は窒素吸着法で得られた窒素吸着等温線からBET等温吸着式により求めることができ、例えば、自動ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−18PLUS、日本ベル社製)を用いて測定することにより求めることができる。また、本発明において、細孔容積は前記窒素吸着等温線から相対圧が最高値となるときの窒素吸着量により求めることができる。さらに、前記窒素吸着等温線からBJH法により細孔半径分布曲線を求めることができ、上記細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対する特定の細孔半径を有する細孔の細孔容積の割合(%)を求めることができる。
【0025】
本発明に係る多孔質体(A)の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、前記複合酸化物からなる多孔質体(A)を製造する場合には、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される2種類以上の元素を含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で前記元素の共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、さらに焼成することによって複合酸化物からなる多孔質体を得る方法(共沈法)を採用することができる。また、このような多孔質体(A)としては、市販のものを適宜用いてもよい。
【0026】
また、本発明に係る多孔質体(A)の形態としては、特に制限されず、例えば、目的とする触媒の用途等に応じた基材に前記多孔質体(A)を固定せしめた形態を採用することができる。このような形態としては、ハニカム形態や、ペレット形態等が挙げられる。また、前記基材としては、特に制限されず、目的とする触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等をより好適に用いることができる。さらに、このような基材の材料も特に制限されないが、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材をより好適に用いることができる。また、このような基材を用いる場合において、前記多孔質体(A)を前記基材に固定する方法としては、例えば、前記モノリス状基材に前記多孔質体(A)の粉末をウォッシュコート法等の方法でコートして前記多孔質体(A)の粉末からなるコート層を前記モノリス状基材の表面に形成せしめる方法を採用することができる。
【0027】
また、前記多孔質体(A)を前記基材に固定せしめた形態とする場合、前記基材容量1Lあたりの前記多孔質体(A)の量としては、得られる排ガス浄化用触媒において十分な触媒活性が得られ、且つ圧損上昇やコート層剥離が抑制できるという観点から、金属酸化物換算で50〜300g/Lであることが好ましく、100〜250g/Lであることが好ましい。
【0028】
本発明の排ガス浄化用触媒担体においては、前記多孔質体(A)に、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)が担持されている。
【0029】
本発明に係るSi系複合酸化物粒子(B)は、Siと前記添加元素とを含む複合酸化物からなる粒子である。前記添加元素としては、Ti、Fe及びAlのうちのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、本発明の排ガス浄化用触媒担体において、前記Si系複合酸化物粒子(B)としては、Siと前記添加元素とを複合化させ、且つ、比表面積をより増加させることができる傾向にあるという観点から、非晶質であることが好ましい。本発明において、非晶質とは、X線回折(XRD)測定において、Ti、Fe、Al及びSiの化合物結晶に由来するピークが観察されないこと、又は、平均結晶格子径が1nm以下であることを指す。なお、このようなX線回折測定の方法としては、例えば、粉末X線回折装置(RINT−2200、リガク社製)を用いて、スキャンステップ0.01°、発散及び散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、CuKα線、40kV、20mA、スキャン速度1°/minの条件で測定する方法を採用することができる。
【0031】
また、本発明の排ガス浄化用触媒担体においては、前記Si系複合酸化物粒子(B)におけるSiの含有量が金属換算([(B)中のSiのモル数]/[(B)中の全金属元素(Si及び前記添加元素)のモル数]×100)で30〜95mol%であることが好ましく、40〜90mol%であることがより好ましい。前記Siの含有量が前記下限未満である場合には、比表面積が減少したり、微細孔の形成が不十分となる傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、触媒担体表面の酸性度が低下する傾向にある。
【0032】
さらに、前記Si系複合酸化物粒子(B)における前記添加元素の含有量としては、前記Siの含有量に対して金属換算([(B)中の全添加元素のモル数]/[(B)中のSiのモル数])で0.1〜2倍となるようにすることが好ましい。前記添加元素の含有量が前記下限未満である場合には、比表面積が減少したり、微細孔の形成が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、触媒担体表面の酸性度が低下する傾向にある。
【0033】
なお、前記Si及び前記添加元素の含有量がこのような範囲内にあることにより触媒担体表面の酸性度が十分に大きくなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは次のように推察する。すなわち、前記触媒担体表面の前記Si系複合酸化物粒子(B)においては、SiO骨格中に前記添加元素が固溶されることにより、異種金属間で配位数や価数の不均衡が生じ、単独の酸化物にはない強い酸性が発現されるため、前記Si及び前記添加元素の含有量が前記範囲内にあることでこの酸性度がより大きくなると本発明者らは推察する。
【0034】
このようなSi系複合酸化物粒子(B)は、後述の本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法において詳述するように、先ず、Siを含有する第1の化合物と、前記添加元素を含有する第2の化合物と、多座配位子を有する第3の化合物とを含むSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備し、次いで、前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめた後に焼成することにより、前記多孔質体(A)の表面に、十分に微細化された前記Si系複合酸化物粒子(B)が、十分に分散されて担持された状態で得られる。
【0035】
本発明の排ガス浄化用触媒担体において、前記Si系複合酸化物粒子(B)の担持量としては、前記多孔質体(A)に対して、前記Si系複合酸化物粒子(B)中の金属元素が金属換算([(B)中の全金属元素(Si及び前記添加元素)のモル数]/[(A)の質量])で0.0005〜0.01mol/gとなる量であることが好ましく、0.002〜0.005mol/gとなる量であることがより好ましい。前記Si系複合酸化物粒子(B)の担持量が前記下限未満である場合には、前記多孔質体(A)の表面に十分に微細な細孔が形成されず、得られる排ガス浄化用触媒において活性金属粒子の粒成長を抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には細孔閉塞等により触媒担体の比表面積が減少し、触媒活性が低下する傾向にある。
【0036】
また、本発明の排ガス浄化用触媒担体としては、その表面面積の80%以上が前記Si系複合酸化物粒子(B)により被覆されていることが好ましい。前記Si系複合酸化物粒子(B)の被覆面積が前記下限未満の場合には、触媒担体表面における微細孔の割合が低下して活性金属粒子の粒成長を抑制する効果が低下する傾向にある。
【0037】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒担体としては、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上である。前記比表面積が前記下限未満である場合には、活性金属粒子を十分に分散させて担持せしめることが困難となる。また、耐久試験後においても十分な比表面積が維持される傾向にあるという観点からは、前記比表面積としては120〜300m/gであることが特に好ましい。なお、このような比表面積は上述の方法により求めることができる。
【0038】
また、本発明の排ガス浄化用触媒担体としては、前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%である。前記細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が前記下限未満である場合には、活性金属粒子の移動が十分に抑制されず、触媒活性が低下する。他方、前記上限を超える場合には、ガスの拡散性が低下して触媒活性効率が低下する。また、活性金属粒子の移動がより抑制され、且つ、ガス拡散性がより向上する傾向にあるという観点から、前記細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合としては細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜20%であることが特に好ましい。なお、このような細孔容積の割合は上述の方法により求めることができる。
【0039】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒担体としては、前記焼成後において、NH昇温脱離法及びCO昇温脱離法により測定される酸量と塩基量との差([酸量]−[塩基量])が170μmol/g以上であることが好ましい。前記酸量と塩基量との差が前記下限未満である場合には、排ガス浄化用触媒担体の表面の酸性度が不足するために活性金属粒子が十分にメタル化されず、触媒活性が低下する傾向にある。なお、本発明において、前記酸量とはNH昇温脱離測定により触媒担体1gあたりのNHの脱離量として測定される値であり、前記塩基量とはCO昇温脱離測定により触媒担体1gあたりのCOの脱離量として測定される値である。
【0040】
前記酸量の測定方法としては、以下のNH昇温脱離測定を採用できる。すなわち、先ず、600℃において、OとNとからなるガスを触媒担体に対して供給し、次いで、温度を100℃まで下げ、NHとNとからなるガスを前記触媒担体に対して供給し、前記担体にNHを吸着させる。次いで、昇温速度を10℃/minとして600℃になるまで昇温しながら前記担体にNガスを供給し、前記担体からNHを脱離させ、その量を測定する。このようなガス濃度の測定には、市販の触媒評価装置(CATA−5000、ベスト測器製)等を用いることができる。そして、このようにして測定された触媒担体1gあたりのNHの脱離量を本発明における酸量とする。また、前記塩基量の測定方法としては、前記NH昇温脱離測定においてNHに代えてCOガスを用いたCO昇温脱離測定を採用することができ、測定された触媒担体1gあたりのCOの脱離量を本発明における塩基量とする。なお、本発明において、前記酸量と塩基量との差は、前記触媒担体と後述の活性金属元素(C)とを備える触媒を用いて上記と同様にNHの脱離量及びCOの脱離量を測定し、これを前記触媒に含まれる触媒担体1gあたりのNHの脱離量及びCOの脱離量に換算することにより求めてもよい。
【0041】
本発明の排ガス浄化用触媒担体の形態としては、特に制限されず、前記多孔質体(A)を固定する基材の形態を適宜選択することにより、目的とする触媒の用途等に応じた形態を採用することができる。前記多孔質体(A)の形態として前記基材に固定された形態を選択する場合には、例えば、前記モノリス状基材に形成した前記多孔質体(A)のコート層表面に、前記Si系複合酸化物粒子(B)を担持せしめることにより本発明の排ガス浄化用触媒担体を得ることができる。前記Si系複合酸化物粒子(B)を担持せしめる方法としては、後述の本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法において詳述するSi系複合酸化物前駆体水溶液を用いる方法等が挙げられる。なお、この場合において、前記基材容量1Lあたりの前記Si系複合酸化物粒子(B)の担持量としては、活性金属粒子の粒成長を十分に抑制することができ、且つ細孔閉塞等による比表面積の減少を抑制できるという観点から、金属換算([(B)中の全金属元素(Si及び前記添加元素)のモル数]/[基材の容量])で0.2〜1.0mol/Lであることが好ましい。
【0042】
次いで、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体と、前記排ガス浄化用触媒担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)とを備えることを特徴とする。
【0043】
前記活性金属粒子(C)としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb及びMoからなる粒子が挙げられ、前記Cu、Co、Ni、V、Nb、Moはこれらの酸化物;水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等の塩;炭化物;窒化物;硫化物等の化合物であってもよい。また、前記活性金属粒子(C)としては、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記活性金属粒子(C)としては、高活性なメタル状態をより維持しやすいという観点から、Pt、Pd、Rhが好ましい。
【0044】
前記活性金属粒子(C)としては、平均粒子径が1〜30nmであることが好ましく、1〜20nmであることが好ましい。前記平均粒子径が前記下限未満である場合には、表面エネルギーが大きくなって粒成長がひき起こされやすい傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、活性サイト数が減少して触媒としての性能が低下する傾向にある。なお、このような平均粒子径は上述の方法により求めることができる。
【0045】
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記活性金属粒子(C)の担持量としては特に制限されず、目的とする触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、前記排ガス浄化用触媒担体100質量部に対して0.2〜10質量部程度であることが好ましい。また、前記多孔質体(A)の形態として前記基材に固定された形態を選択する場合には、前記基材容量1Lあたりの前記活性金属粒子(C)の担持量([活性金属粒子(C)の質量]/[基材の容量])としては、活性サイト数の確保と原料コストとのバランスの観点から、0.2〜10g/Lであることが好ましい。
【0046】
また、本発明の排ガス浄化用触媒としては、大気中、750℃において5時間熱処理を施す耐久試験後において、前記活性金属粒子(C)のうちの2質量%以上(好ましくは3質量%以上)が前記排ガス浄化用触媒担体の表面に露出していることが好ましい。前記活性金属粒子(C)が前記排ガス浄化用触媒担体の表面に露出している割合が前記下限未満である場合には、前記活性金属粒子(C)による触媒活性が低下する傾向にある。なお、前記活性金属粒子(C)の露出割合は、COパルス吸着量測定により、活性金属粒子に吸着されるCO吸着量を測定することで求めることができる。
【0047】
このような本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記活性金属粒子(C)の粒成長が十分に抑制される。また、前記排ガス浄化用触媒担体の表面の酸性度が十分に大きいため、前記活性金属粒子(C)のメタル化が促進されて触媒活性がより向上する。従って、本発明の排ガス浄化用触媒は、酸素過剰雰囲気下においても十分に高い触媒活性を発揮することができ、ディーゼル排気ガス等におけるCOやHC等の酸化浄化に特に好適に用いることができる。
【0048】
次いで、本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法であって、
前記多孔質体(A)を準備する工程、
Siを含有する第1の化合物と、前記添加元素を含有する第2の化合物と、多座配位子を有する第3の化合物とを含み、且つSiの含有量が金属換算で30〜95mol%であるSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備する工程、及び、
前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめた後に焼成する工程、
を含むことを特徴とするものである。
【0049】
本発明に係る多孔質体(A)を準備する工程(第1の工程)としては、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体において述べた通りであり、例えば、Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される元素を含有する水溶液を用い、前述の共沈法等の方法により本発明に係る多孔質体(A)を得ることができる。また、前記多孔質体(A)としては、市販のものを適宜用いてもよく、目的とする触媒の用途等に応じた前記基材に前記多孔質体(A)を固定せしめた形態であってもよい。
【0050】
本発明に係るSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備する工程(第2の工程)においては、Siを含有する第1の化合物と、前記添加元素を含有する第2の化合物と、多座配位子を有する第3の化合物とを含むSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備する。
【0051】
前記第1の化合物としては、Si、及びSiのアルコキシド、酸化物、水酸化物、酢酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記第1の化合物としては、多座配位子を有する化合物と錯体を形成しやすい傾向にあるという観点から、Siのアルコキシドであることが好ましく、例えば、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシランが挙げられる。
【0052】
前記第2の化合物としては、Ti、Fe、Al、及びこれらの金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記第2の化合物としては、多座配位子を有する化合物と錯体を形成しやすい傾向にあるという観点から、チタンイソプロポキシド、酢酸アルミニウム、酢酸鉄が好ましい。
【0053】
前記第3の化合物は、多座配位子を有する化合物である。前記多座配位子とは、2個以上の配位基で配位し得るものをいう。このような第3の化合物としては、クエン酸、シュウ酸等の多価カルボン酸類;グリコール、ピナコール等のジオール類;エチレンジアミン等のジアミン類;アセト酢酸エチル等の2つのカルボニル基を有するエステル類等が挙げられる。このような第3の化合物としては、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、アコニット酸、グルタル酸、エチレンジアミン四酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、サリチル酸、メバロン酸、エチレンジアミン、アセト酢酸エチル、マロン酸エステル、グリコール及びピナコールが好ましく、中でも、ヒドロキシ基をあわせ持つカルボン酸であるという観点から、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸がより好ましく、嵩高く、より微細化されたSi系複合酸化物粒子(B)を得ることができるという観点から、クエン酸が特に好ましい。なお、このような第3の化合物としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記Si系複合酸化物前駆体水溶液において、前記第1の化合物と、前記第2の化合物と、前記第3の化合物とを含有させる溶媒は、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)である。また、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を製造するための方法としては、前記第1の化合物と、前記第2の化合物と、前記第3の化合物とを水に溶解させることが可能な方法であればよく、特に制限されず、例えば、先ず、前記第1の化合物と前記第3の化合物とを含む水溶液(水溶液1)及び前記第2の化合物と前記第3の化合物とを含む水溶液(水溶液2)をそれぞれ調製し、次いで、前記水溶液1と前記水溶液2とを混合して撹拌する方法が挙げられる。また、前記第2の化合物及び第3の化合物としては、例えば、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸チタン、クエン酸アルミニウムのように、Ti、Fe、Alのうちのいずれか1種を含有し、且つ多座配位子を有する化合物を用いてもよい。
【0055】
また、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液中におけるSiの含有量としては、金属換算([水溶液中のSiのモル数]/[水溶液中の全金属元素(Si及び前記添加元素)のモル数]×100)で30〜95mol%である。前記Siの含有量が前記下限未満である場合には、比表面積が減少したり、細孔半径1〜5nmの微細孔の割合が少なくなり、得られる排ガス浄化用触媒の活性が低下する。他方、前記上限を超える場合には、触媒担体表面の酸性度が低下する。さらに、前記Siの含有量としては、微細孔の形成と酸性度の増大により、得られる排ガス浄化用触媒の活性がより向上する傾向にあるという観点から、40〜90mol%であることが好ましい。
【0056】
また、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液中における前記添加元素の含有量としては、前記Siの含有量に対して金属換算([水溶液中の全添加元素のモル数]/[水溶液中のSiのモル数])で0.1〜2倍となるようにすることが好ましい。前記添加元素の含有量が前記下限未満である場合には、第1の化合物の単独相が多くなって得られるSi系複合酸化物粒子(B)の割合が低下し、得られる排ガス浄化用触媒の触媒活性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、第2の化合物の単独相が多くなり、前記と同様に得られるSi系複合酸化物粒子(B)の割合が低下する傾向にある。
【0057】
さらに、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液中における前記第3の化合物の含有量としては、0.2mol/L以上であることが好ましく、1〜3mol/Lであることがより好ましい。前記第3の化合物の含有量が前記下限未満である場合には、前記第1の化合物及び前記第2の化合物に対する多座配位子の含有量が少なくなるため、水溶液中において、前記第1の化合物におけるSiと前記第2の化合物における添加元素とを近接した状態で保持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、前記第1の化合物及び前記第2の化合物の濃度が低下することで前記多孔質体(A)に対する担持効率が低下する傾向にある。
【0058】
また、このような第3の化合物の含有量としては、前記第1の化合物及び前記第2の化合物中に含有される金属元素の含有量に対してモル換算で2倍以上(より好ましくは2.5〜10倍)であることが好ましい。前記第3の化合物の含有量が前記下限未満である場合には、水溶液中において前記第1の化合物及び前記第2の化合物の錯体の形成が困難となり、前記第1の化合物及び前記第2の化合物を近接した状態で保持することが困難となるため、前記多孔質体(A)の細孔内表面に前記第1の化合物と前記第2の化合物とを複合化させつつ、微細孔を形成せしめることが困難となる傾向にある。
【0059】
本発明に係る前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめた後に焼成する工程(第3の工程)において、前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液に前記多孔質体(A)を含浸せしめる方法等、前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を前記多孔質体(A)に吸着担持させることが可能な公知の方法を適宜採用できる。また、このように前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめる際においては、前記多孔質体(A)に対する前記Si系複合酸化物前駆体水溶液中の金属元素の担持量が金属換算([水溶液中の全金属元素(Si及び前記添加元素)のモル数]/[(A)の質量])で0.0005〜0.01mol/gとなることが好ましく、0.001〜0.005mol/gとなることがより好ましい。前記金属元素の担持量が前記下限未満である場合には、前記多孔質体(A)の細孔内表面に十分に微細な細孔が形成されず、得られる排ガス浄化用触媒において活性金属粒子の粒成長を抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には細孔閉塞等により触媒担体の比表面積が減少し、触媒活性が低下する傾向にある。
【0060】
前記焼成の条件としては、特に制限されないが、例えば、大気中において、500〜900℃の温度範囲で加熱することが好ましく、750〜850℃の温度範囲で加熱することがより好ましい。前記加熱温度が前記下限未満では、触媒担体において熱劣化による比表面積の減少量が大きくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には熱劣化が進行して前記Si系複合酸化物粒子(B)の分散性が低下する原因となる傾向にある。また、加熱時間としては、前記加熱温度によって異なるものであるため一概には言えないが、3〜20時間であることが好ましく、4〜15時間であることがより好ましい。
【0061】
このような製造方法により、本発明の排ガス浄化用触媒担体を製造することができる。前記Si系複合酸化物前駆体水溶液においては、前記第1の化合物と前記第2の化合物とが近接した状態で保持されているため、焼成して得られるSi系複合酸化物粒子(B)は十分に微細化され、十分に分散された状態で前記多孔質体(A)に担持されたものとなる。そのため、このようにして得られる排ガス浄化用触媒担体を用いた排ガス浄化用触媒においては、活性金属粒子の粒子の粒成長が十分に抑制され、酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を発揮することができる。
【0062】
次いで、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、前記本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法であって、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体に、前記活性金属粒子(C)を担持させる工程を含むことを特徴とする。前記本発明の排ガス浄化用触媒担体に前記活性金属粒子(C)を担持させる方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。本発明においては、前記活性金属粒子(C)が前記排ガス浄化用触媒担体の表面により露出することができるという観点から、先ず、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法における第3の工程の後に、得られた排ガス浄化用触媒担体をPt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物(第4の化合物)の溶液に接触せしめ、次いで、これを焼成する方法が好ましい。
【0063】
前記第4の化合物としては、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo、W、及びこれらの金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン錯体等の錯体等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
また、前記第4の化合物の溶液において、前記第4の化合物を含有させる溶媒としては、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等の前記第4の化合物をイオン状に溶解せしめることが可能な溶媒が挙げられる。また、前記排ガス浄化用触媒担体を前記第4の化合物の溶液に接触せしめる方法としては、前記本発明の排ガス浄化用触媒担体の製造方法において述べた方法と同様の方法が挙げられる。さらに、このように前記排ガス浄化用触媒担体に前記第4の化合物の溶液を接触せしめる際においては、目的とする触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、前記排ガス浄化用触媒担体100質量部に対する前記第4の化合物の溶液の不揮発分の担持量が0.2〜20質量部となることが好ましい。
【0065】
前記焼成の条件としては、特に制限されないが、例えば、大気中において、250〜650℃(より好ましくは300〜500℃)の温度範囲で1〜10時間(より好ましくは2〜6時間)加熱することが好ましい。前記加熱温度及び加熱時間が前記下限未満である場合には、第4の化合物の塩が分解されず、活性金属粒子(C)がメタル又は酸化物となりにくく、触媒活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には熱劣化が進行して前記Si系複合酸化物粒子(B)及び前記活性金属粒子(C)の分散性が低下する原因となる傾向にある。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<多孔質体準備工程>
(調製例1)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35mL、セル密度:400cell/inch)に、アルミナ粉末(MI307(WRグレース製)、比表面積:160m/g、平均粒子径:17μm)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量が150g/Lとなるようにしてウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質体1を調製した。
【0068】
(調製例2)
調製例1と同様の六角セルコージェライトモノリス基材に、アルミナ粉末(MI307、WRグレース製)、シリカ粉末(AEROSIL200(日本アエロジル製)、比表面積:200m/g、平均粒子径:0.012μm)及び酸化鉄粉末(NanoTek(Fe、シーアイ化成製)、比表面積:45m/g、平均粒子径:0.029μm)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量がアルミナ粉末150g/L、シリカ粉末24g/L、酸化鉄粉末8g/Lとなるようにしてウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質体2を調製した。
【0069】
(調製例3)
調製例1と同様の六角セルコージェライトモノリス基材に、アルミナ粉末(MI307、WRグレース製)、シリカ粉末(AEROSIL200、日本アエロジル製)及びチタニア粉末(TTO−51A(石原産業製)、比表面積:80m/g、平均粒子径:0.02μm)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量がアルミナ粉末150g/L、シリカ粉末24g/L、チタニア粉末8g/Lとなるようにしてウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質体3を調製した。
【0070】
(調製例4)
調製例1と同様の六角セルコージェライトモノリス基材に、アルミナ粉末(MI307、WRグレース製)及びシリカ粉末(AEROSIL200、日本アエロジル製)を、前記モノリス基材1Lあたりのコート量がアルミナ粉末155g/L、シリカ粉末24g/Lとなるようにしてウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質体4を調製した。
【0071】
<複合酸化物前駆体水溶液調製工程>
(調製例5)
テトラエトキシシラン200mLにプロピレングリコール200mLを加え、80℃において5時間攪拌後、6mol/LのHCl水溶液を1mL加え、2.3mol/LのSi水溶液を調製した。
【0072】
(調製例6)
3.4mol/Lクエン酸水溶液140mLにチタンイソプロポキシド56mLを加え、80℃において5時間攪拌し、0.79mol/LのTiクエン酸水溶液を調製した。
【0073】
(調製例7)
3.4mol/Lクエン酸水溶液320mLに酢酸アルミニウム水和物90gを加え、80℃において5時間攪拌し、1.5mol/LのAlクエン酸水溶液を調製した。
【0074】
(調製例8)
調製例5で得られたSi水溶液38mLに3.4mol/Lクエン酸水溶液50mLを加え、室温(25℃)において10分間攪拌後、クエン酸鉄アンモニウム6.7gを加えてさらに30分間攪拌し、FeとSiとのモル比(Fe:Si)が1:4となるFe−Si水溶液1を調製した。
【0075】
(調製例9)
調製例5で得られたSi水溶液18mLに3.4mol/Lクエン酸水溶液25mLを加え、室温(25℃)において10分間攪拌後、クエン酸鉄アンモニウム53gを加えてさらに30分間攪拌し、FeとSiとのモル比(Fe:Si)が4:1となるFe−Si水溶液2を調製した。
【0076】
(調製例10)
蒸留水113mLにクエン酸鉄アンモニウム67gを加えてさらに30分間攪拌し、1.25mol/LのFe水溶液を調製した。
【0077】
(調製例11)
調製例5で得られたSi水溶液37mLに3.4mol/Lクエン酸水溶液50mLを加え、室温(25℃)において10分間攪拌後、調製例6で得られたTiクエン酸水溶液27mLを加えてさらに30分間攪拌し、TiとSiとのモル比(Ti:Si)が1:4となるTi−Si水溶液1を調製した。
【0078】
(調製例12)
調製例5で得られたSi水溶液23mLに3.4mol/Lクエン酸水溶液32mlを加え、室温(25℃)において10分間攪拌後、調製例6で得られたTiクエン酸水溶液66mlを加えてさらに30分間攪拌し、TiとSiとのモル比(Ti:Si)が1:1となるTi−Si水溶液2を調製した。
【0079】
(調製例13)
調製例5で得られたSi水溶液37mlに3.4mol/Lクエン酸水溶液50mlを加え、室温(25℃)において10分間攪拌後、調製例7で得られたAlクエン酸水溶液14mlを加えてさらに30分間攪拌し、AlとSiとのモル比(Al:Si)が1:4となるAl−Si水溶液1を調製した。
【0080】
<触媒担体及び触媒の製造>
以下の方法により触媒担体及び触媒を製造した。下記実施例1〜4及び比較例1〜8で得られた触媒の組成を表1に示す。
【0081】
(実施例1)
先ず、調製例1で得られた多孔質体1に、調製例8で得られたFe−Si水溶液1を、前記モノリス基材1LあたりのFe及びSiの担持量がそれぞれ0.1mol/L及び0.4mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめ、大気中、550℃において5時間、続いて、800℃において5時間焼成することにより触媒担体1を得た。次いで、得られた触媒担体に、テトラアンミンPt水溶液を、前記モノリス基材1LあたりのPtの担持量が2.6g/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめ、大気中、300℃において3時間焼成することにより、Pt/FeSi/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:182g/L)を調製した。
【0082】
(実施例2)
調製例8で得られたFe−Si水溶液1に代えて調製例11で得られたTi−Si水溶液1を用い、前記モノリス基材1LあたりのTi及びSiの担持量がそれぞれ0.1mol/L及び0.4mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は実施例1と同様にして、触媒担体2及びそれを用いたPt/TiSi/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:182g/L)を調製した。
【0083】
(実施例3)
調製例8で得られたFe−Si水溶液1に代えて調製例12で得られたTi−Si水溶液1を用い、前記モノリス基材1LあたりのTi及びSiの担持量がいずれも0.25mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は実施例1と同様にして、触媒担体3及びそれを用いたPt/TiSi/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:185g/L)を調製した。
【0084】
(実施例4)
調製例8で得られたFe−Si水溶液1に代えて調製例13で得られたAl−Si水溶液1を用い、前記モノリス基材1LあたりのAl及びSiの担持量がそれぞれ0.1mol/L及び0.4mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は実施例1と同様にして、触媒担体4及びそれを用いたPt/AlSi/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:179g/L)を調製した。
【0085】
(比較例1)
調製例1で得られた多孔質体1をそのまま触媒担体として用いたこと以外は実施例1と同様にして、Pt/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:150g/L)を調製した。
【0086】
(比較例2)
調製例8で得られたFe−Si水溶液1に代えて調製例9で得られたFe−Si水溶液2を用い、前記モノリス基材1LあたりのFe及びSiの担持量がそれぞれ0.4mol/L及び0.1mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は実施例1と同様にして、触媒担体5及びそれを用いたPt/FeSi/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:188g/L)を調製した。
【0087】
(比較例3)
調製例8で得られたFe−Si水溶液1に代えて調製例10で得られたFe水溶液を用い、前記モノリス基材1LあたりのFeの担持量が0.5mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は実施例1と同様にして、触媒担体6及びそれを用いたPt/Fe/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:190g/L)を調製した。
【0088】
(比較例4)
比較例1で得られたPt/アルミナ触媒を担体として、これに、テトラエトキシシランエタノール溶液を、前記モノリス基材1LあたりのSiの担持量が0.5mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめ、大気中、550℃において5時間焼成することにより、Si/Pt/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:180g/L)を調製した。
【0089】
(比較例5)
テトラエトキシシランエタノール溶液に代えて硝酸アルミニウム水溶液を用い、前記モノリス基材1LあたりのAlの担持量が0.5mol/Lとなるように吸水含浸させて担持せしめたこと以外は比較例4と同様にして、Al/Pt/アルミナ・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:175.5g/L)を調製した。
【0090】
(比較例6)
調製例2で得られた多孔質体2をそのまま触媒担体として用いたこと以外は実施例1と同様にして、Pt/(アルミナ+シリカ+酸化鉄)・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:182g/L)を調製した。
【0091】
(比較例7)
調製例3で得られた多孔質体3をそのまま触媒担体として用いたこと以外は実施例1と同様にして、Pt/(アルミナ+シリカ+チタニア)・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:182g/L)を調製した。
【0092】
(比較例8)
調製例4で得られた多孔質体4をそのまま触媒担体として用いたこと以外は実施例1と同様にして、Pt/(アルミナ+シリカ)・モノリス触媒(モノリス基材1Lあたりの触媒担体量:179g/L)を調製した。
【0093】
【表1】

【0094】
<触媒担体の特性評価>
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られた触媒担体の各特性を以下の方法により測定し、評価した。
【0095】
(比表面積、細孔容積)
自動ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−18PLUS、日本ベル社製)を用い、液体窒素温度(−196℃)条件で定容量式ガス吸着法により触媒担体の窒素吸着等温線を求めた。なお、触媒担体には測定前に120℃で2時間の真空脱気処理を施した。得られた窒素吸着等温線からBJH法により触媒担体の細孔半径分布曲線を求め、細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対する細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合(%)を求めた。実施例1及び比較例1〜3で得られた触媒担体の細孔半径分布曲線を図2に示す。また、実施例1〜4及び比較例1〜5で得られた触媒担体の細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対する細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合(%)を表2に示す。次いで、前記窒素吸着等温線から触媒担体の細孔容量を算出し、BET法により触媒担体の比表面積(m/g)を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
表2に示した結果から明らかなように、本発明の触媒担体においては比表面積が十分に大きいことが確認された。また、本発明の触媒担体においては細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対する細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が多く、表面に微細孔が多く形成されていることが確認された。
【0098】
(酸塩基量)
触媒評価装置(CATA−5000、ベスト測器製)を用い、各モノリス触媒35mLに対して、表3に示すモデルガスを図3に示す温度パターンで供給し、脱離したNHの量を測定した(NH昇温脱離測定)。また、前記触媒評価装置を用い、各モノリス触媒35mLに対して、表4に示すモデルガスを図4に示す温度パターンで供給し、脱離したCOの量を測定した(CO昇温脱離測定)。それぞれの測定において測定されたモノリス触媒1Lあたりの脱離NH及び脱離COのモル数を、それぞれ酸量(mmol/L)及び塩基量(mmol/L)とした。次いで、前記酸量から前記塩基量を引いた差分を有効酸量(mmol/L)とした。さらに、前記有効酸量及びモノリス触媒1Lあたりの触媒担体の質量から、触媒担体1gあたりの酸量と塩基量との差(μmol/g)を算出した。各実施例及び比較例で得られたモノリス触媒における酸量、塩基量、有効酸量、並びに、各実施例及び比較例で得られた触媒担体1gあたりに換算した酸量と塩基量との差をそれぞれ表5に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
表5に示した結果から明らかなように、本発明の触媒担体においては酸量と塩基量との差が大きく、酸性度が十分に大きいことが確認された。
【0103】
<触媒の特性評価>
実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたそれぞれの触媒に対して、大気中、750℃において5時間熱処理(耐久試験)を施したものについて、各特性を以下の方法により測定し、評価した。
【0104】
(触媒活性評価)
各モノリス触媒35mLを常圧固定床流通型反応装置(CATA−5000、ベスト測器製)に設置し、表6に示すモデルガスを、図5に示す温度パターンで供給した。すなわち、前処理ガスを供給しつつ温度を40℃/minの昇温速度で500℃まで昇温し、10分間保持する前処理を行った。次いで、評価ガスを供給しつつ温度を50℃まで冷却した後、再度温度を10℃/minの昇温速度で400℃まで昇温しつつ、触媒からの排出ガスのCO濃度及びC濃度を測定し、評価ガス及び触媒からの排出ガスにおけるそれぞれの測定値の差からCO浄化率及びHC浄化率を算出した。そして、供給された評価ガス中のCO浄化率及びHC浄化率がそれぞれ50%に到達する温度(50%浄化温度(℃))を測定した。得られた結果を表7に示す。
【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
表7に示した結果から明らかなように、本発明の触媒においてはCO及びHCのいずれにおいても50%浄化温度が低下しており、触媒活性が十分に向上していることが確認された。
【0108】
(X線回折測定)
触媒の表層をかきとって測定試料とし、X線回折(XRD)パターンを、粉末X線回折装置(RINT−2200、リガク社製)を用いて、スキャンステップ0.01°、発散及び散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、CuKα線、40kV、20mA、スキャン速度1°/minの条件で測定した。実施例1〜3及び比較例1で得られた触媒のXRDパターンを図6に示す。また、実施例1〜4及び比較例1〜5で得られた触媒のXRDパターンからPt(111)面の回折線(2θ=40°付近)ピークの反値幅より、Scherrer式を用いることによりPtの平均粒子径を算出した。結果を表8に示す。
【0109】
【表8】

【0110】
図6に示した結果から明らかなように、本発明の触媒においては、アルミナ、Pt、及び不純物として混入された六角セルコージェライトモノリス基材に由来するピークのみが検出され、SiOやその他の結晶に由来するピークは観察されなかった。よって、本発明の触媒の触媒担体においては、Si系複合酸化物粒子が非晶質で存在していることが確認された。また、表8に示した結果から明らかなように、本発明の触媒においては、Pt粒子の平均粒子径が小さく、該粒子の粒成長が十分に抑制されていることが確認された。
【0111】
(TEM観察)
触媒の表層をかきとって測定試料とし、透過型電子顕微鏡(HF−2000、日立製作所製)を用いて、加速電圧200kVにおいて観察を行った。また、装置に付属するEDX検出器(Vatage EDX system、NCRAN社製)を用いてTEM−EDX測定を行い、試料から発生する特性X線によって元素分析を実施し、各元素の金属換算での含有量(at%)を測定した。実施例1及び比較例1で得られた触媒の表層の透過型電子顕微鏡(TEM)写真をそれぞれ図7〜図8及び図9〜図10に示す。また、実施例1のTEM−EDX測定領域を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真をそれぞれ図11〜図12に示す。さらに、図11〜図12に示した測定領域における実施例1で得られた触媒の表層の元素分析の結果を表9に示す。
【0112】
【表9】

【0113】
図7〜図10に示した結果から明らかなように、本発明の触媒においては、Pt粒子の粒径が小さく、該粒子の粒成長が十分に抑制されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したように、本発明によれば、酸素過剰雰囲気下であっても十分に高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を得ることができる排ガス浄化用触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及びそれらの製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0115】
1…活性金属粒子、2…Si系複合酸化物粒子、3…多孔質体、4…排ガス浄化用触媒担体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、
800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%であること、
を特徴とする排ガス浄化用触媒担体。
【請求項2】
前記焼成後において、NH昇温脱離法及びCO昇温脱離法により測定される酸量と塩基量との差が170μmol/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒担体。
【請求項3】
前記Si系複合酸化物粒子(B)が非晶質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒担体。
【請求項4】
前記Si系複合酸化物粒子(B)におけるSiの含有量が金属換算で30〜95mol%であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒担体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒担体と、前記排ガス浄化用触媒担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)とを備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記活性金属粒子(C)のうちの2質量%以上が前記排ガス浄化用触媒担体の表面に露出していることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
Al、Ti、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質体(A)と、前記多孔質体(A)に担持されている、Ti、Fe及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含むSi系複合酸化物粒子(B)とを備えており、800℃で空気中において5時間焼成後の比表面積が100m/g以上であり且つ前記焼成後の細孔半径1〜5nmの細孔の細孔容積の割合が細孔半径1〜100nmの細孔の細孔容積に対して8〜50%である排ガス浄化用触媒担体の製造方法であって、
前記多孔質体(A)を準備する工程、
Siを含有する第1の化合物と、前記添加元素を含有する第2の化合物と、多座配位子を有する第3の化合物とを含み、且つSiの含有量が金属換算で30〜95mol%であるSi系複合酸化物前駆体水溶液を準備する工程、及び、
前記多孔質体(A)に前記Si系複合酸化物前駆体水溶液を接触せしめた後に焼成する工程、
を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒担体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の排ガス浄化用触媒担体の製造方法により得られた排ガス浄化用触媒担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる活性金属粒子(C)を担持させる工程を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−107055(P2013−107055A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255373(P2011−255373)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】