説明

排ガス浄化用触媒

【課題】触媒成分としてカルシウムフェライトを含む排ガス浄化用触媒であって、その触媒活性がより改善された排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】カルシウムフェライトと、該カルシウムフェライトとは異なる金属酸化物とからなる排ガス浄化用触媒であって、前記カルシウムフェライトが、Ca2Fe25、CaFe24及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、前記金属酸化物の比表面積が10m2/g超250m2/g未満であり、かつ前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物の質量比(金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下であることを特徴とする排ガス浄化用触媒が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒、より詳しくは触媒成分としてカルシウムフェライトを含む排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排ガス浄化用触媒としては、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを同時に行う三元触媒が用いられている。このような触媒としては、アルミナ(Al23)等の多孔質酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の白金族元素を担持させたものが広く知られている。
【0003】
しかしながら、これらの白金族元素は、自動車の排ガス規制の強化とともに使用量が増加しており、それゆえ資源の枯渇が懸念されている。このため、白金族元素の使用量を減らすとともに、将来的には、当該白金族元素の役割を他の金属等で代替することが必要とされている。
【0004】
そこで、白金族元素の使用量を減らすための又はそれに代わる触媒成分について多くの研究が行われている。このような触媒成分の1つにカルシウムフェライトがあり、これを用いた排ガス浄化用触媒について幾つかの提案がなされている。
【0005】
特許文献1では、カルシア源とフェライト源とを所定の混合モル比Ca/Feで含む混合原料を得る混合原料準備工程と、該混合原料を酸素雰囲気で600℃以上に加熱する焼成工程とを備え、前記焼成工程では、前記混合モル比Ca/Feが、1.0≦Ca/Feであるときは1438℃以下の加熱温度で、0.5≦Ca/Fe<1であるときは1216℃以下の加熱温度で、0.25≦Ca/Fe<0.5であるときは1205℃以下の加熱温度で、0<Ca/Fe<0.25であるときは1226℃以下の加熱温度で、それぞれ加熱することにより、Ca2Fe25の組成式を有するカルシウムフェライト及びCaFe24の組成式を有するカルシウムフェライトのうちの少なくとも一種を含む酸化触媒を製造することを特徴とする酸化触媒の製造方法が記載されている。さらに、特許文献1では、特にCa2Fe25のみからなる酸化触媒がプロピレンの酸化に対して高い触媒活性を示すことが開示されている。
【0006】
特許文献2においても同様に、Ca2Fe25の組成式を有するカルシウムフェライト及びCaFe24の組成式を有するカルシウムフェライトのうちの少なくとも一種を含む酸化触媒の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−255677号公報
【特許文献2】特開2006−297324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2では、それらの実施例においてCa2Fe25及び/又はCaFe24等からなる酸化触媒のプロピレン酸化活性について具体的に評価がされている。しかしながら、これらの特許文献の実施例において開示されている触媒充填量やサンプルガス流量から算出した空間速度(SV)(すなわち処理ガス量(m3N/h)/触媒量(m3))は約1200h-1であり、これは実際のエンジン排ガスに関する数十万h-1程度のSV値と比較すると非常に低いものである。しかも、Ca2Fe25やCaFe24などのカルシウムフェライトは、排ガス浄化用触媒として一般的に用いられている三元触媒等と比べるとその比表面積が非常に低いことが知られている。したがって、これらの特許文献に記載の触媒では、実際の使用環境に近い高SV条件下では十分な触媒活性を示すことができないと考えられ、その触媒性能に関して依然として改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、触媒成分としてカルシウムフェライトを含む排ガス浄化用触媒であって、その触媒活性がより改善された排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)カルシウムフェライトと、該カルシウムフェライトとは異なる金属酸化物とからなる排ガス浄化用触媒であって、前記カルシウムフェライトが、Ca2Fe25、CaFe24及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、前記金属酸化物の比表面積が10m2/g超250m2/g未満であり、かつ前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物の質量比(金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
(2)前記カルシウムフェライトがCa2Fe25であることを特徴とする、上記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物とを物理混合してなるか又は前記カルシウムフェライトを前記金属酸化物に担持してなることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物とを物理混合してなることを特徴とする、上記(3)に記載の排ガス浄化用触媒。
(5)前記金属酸化物の比表面積が50m2/g以上200m2/g以下であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(6)前記金属酸化物の比表面積が100m2/g以上200m2/g以下であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(7)前記金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、触媒成分としてのカルシウムフェライトを10m2/g超250m2/g未満、特には50m2/g以上200m2/g以下の比表面積を有する金属酸化物と所定の質量比において組み合わせることにより、カルシウムフェライトのみから構成される触媒に比べて、得られる排ガス浄化用触媒の酸化活性、特にはCO酸化活性を顕著に改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の排ガス浄化用触媒は、カルシウムフェライトと、該カルシウムフェライトとは異なる金属酸化物とからなり、前記カルシウムフェライトが、Ca2Fe25、CaFe24及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、前記金属酸化物の比表面積が10m2/g超250m2/g未満であり、かつ前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物の質量比(金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下であることを特徴としている。
【0013】
Ca2Fe25、CaFe24等の組成を有するカルシウムフェライトは、周囲の雰囲気や、温度、圧力等の影響を受けてその構造中にスーパーオキサイドアニオン(O2-)等の活性酸素を生成しそしてそれを外部に放出する特性を持つと言われている。したがって、このような材料を自動車等の排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒として使用した場合には高い触媒活性、特には高い酸化活性を示すことが期待される。
【0014】
しかしながら、これらのカルシウムフェライトは、先に述べたとおり、三元触媒等の従来の排ガス浄化用触媒と比較してその比表面積が非常に低いことが知られており、具体的にはその値は数m2/g程度であるか又はそれよりもさらに小さい場合がある。したがって、このような低表面積の材料を実際の使用環境における高い空間速度(SV)条件下で使用すると、当該材料と排ガスとの間で十分な接触頻度を確保することができなくなり、結果として十分な排ガス浄化活性、特には酸化活性を達成できないという問題がある。
【0015】
本発明者は、触媒成分としてのカルシウムフェライトを10m2/g超250m2/g未満、特には50m2/g以上200m2/g以下の比表面積を有する金属酸化物と所定の質量比において組み合わせることにより、具体的にはカルシウムフェライトと当該金属酸化物をそれらの質量比(すなわち金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下の範囲になるよう組み合わせることにより、カルシウムフェライトのみから構成される触媒に比べて、得られる排ガス浄化用触媒の酸化活性、特にはCO酸化活性を顕著に改善することができることを見出した。
【0016】
本発明によれば、カルシウムフェライトとしては、Ca2Fe25、CaFe24及びそれらの組み合わせからなる群より選択される材料を使用することができ、好ましくはCa2Fe25を使用することができる。Ca2Fe25は、活性酸素を生成及び放出する能力がCaFe24に比べてより高いと考えられることから、例えば、カルシウムフェライトとしてCa2Fe25のみからなる材料を使用することで、得られる排ガス浄化用触媒の酸化活性、特にはCO酸化活性をさらに改善することが可能である。実際、本発明者による実験では、本発明におけるカルシウムフェライトとしてCa2Fe25を使用することで、カルシウムフェライトとしてCaFe24を使用した場合に比べてより高いCO酸化活性を達成できたることが確認された。
【0017】
なお、上記の各組成を有するカルシウムフェライトは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、Ca2Fe25の組成を有するカルシウムフェライトを調製する場合には、当該Ca2Fe25を構成するカルシウムと鉄の各化合物をCa/Fe比(原子比)が1.0となるような量において混合及び必要に応じて粉砕、解砕等し、得られた粉末を約1400℃以下の高温条件下でCa2Fe25を形成するのに十分な時間において熱処理すればよい。
【0018】
また、CaFe24の組成を有するカルシウムフェライトを調製する場合には、当該CaFe24を構成するカルシウムと鉄の各化合物をCa/Fe比(原子比)が0.5となるような量において混合及び必要に応じて粉砕、解砕等し、得られた粉末を約1200℃以下の高温条件下でCaFe24を形成するのに十分な時間において熱処理すればよい。さらに、カルシウム化合物と鉄化合物の混合比や上記熱処理の際の温度等を適切に選択することで、Ca2Fe25とCa2Fe25の両方の組成を有するカルシウムフェライトを調製することも可能である。なお、上記のカルシウム化合物及び鉄化合物としては、特に限定されないが、例えば、これらの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩等を使用することができる。
【0019】
本発明の排ガス浄化用触媒においてカルシウムフェライトと組み合わせて用いられる金属酸化物としては、当該カルシウムフェライトとは異なる金属酸化物であって、10m2/g超250m2/g未満の比表面積を有する材料を使用することができる。
【0020】
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、金属酸化物の比表面積が特に10m2/g以下の場合には、金属酸化物への排ガスの拡散が必ずしも十分なものでないために、当該金属酸化物上に又はそれに近接して存在するカルシウムフェライトと排ガスとの間で高い接触頻度を確保することができないと考えられる。本発明によれば、金属酸化物の比表面積を10m2/g超250m2/g未満、好ましくは50m2/g以上200m2/g以下、より好ましくは100m2/g以上200m2/g以下とすることで、金属酸化物への排ガスの拡散性を向上させて当該金属酸化物上に又はそれに近接して存在するカルシウムフェライトと排ガスとの間で十分な接触頻度を確保することができるので、その結果として、排ガス中に含まれる有害成分、特には一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)に対する酸化活性が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0021】
本発明において用いられる金属酸化物としては、所望の比表面積を有する金属酸化物を商業的に入手することも可能であるし、あるいはまた、ある特定の比表面積を有する金属酸化物を電気炉等を用いて所定の温度及び時間にわたり熱処理することにより、本発明の排ガス浄化用触媒において使用するのに適した比表面積を有する金属酸化物を調製することも可能である。
【0022】
なお、本発明において「比表面積」とは、特に断りのない限り、BET吸着等温式を利用して得られる比表面積(いわゆるBET比表面積)を言うものである。
【0023】
また、本発明における金属酸化物としては、比表面積の値が上記の範囲内にある任意の金属酸化物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、シリカ−アルミナ(SiO2−Al23)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物を使用することができる。
【0024】
本発明によれば、本発明の排ガス浄化用触媒は、上記のカルシウムフェライトと金属酸化物を、それらの質量比(金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下の範囲になるよう組み合わせることにより構成される。カルシウムフェライトと金属酸化物の質量比が1.0よりも小さい場合には、金属酸化物の量が少なすぎるために当該金属酸化物による上記の排ガスの拡散促進効果を十分には得ることができなくなり、結果として排ガス浄化用触媒の酸化活性が低下してしまう。
【0025】
一方で、カルシウムフェライトと金属酸化物の質量比が3.0よりも大きい場合には、金属酸化物による排ガスの拡散促進効果は得られるものの、活性点であるカルシウムフェライトの量が少なくなるために、結果として排ガス浄化用触媒の酸化活性が低下してしまう。本発明によれば、カルシウムフェライトと金属酸化物の質量比を1.0以上3.0以下の範囲、特には当該質量比を1.0に制御することで、カルシウムフェライトの活性点数を維持しつつ、金属酸化物による排ガスの拡散促進効果を十分に発揮させ、結果として、カルシウムフェライトのみから構成される触媒に比べて、排ガス中に含まれる有害成分、特には一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)に対する酸化活性が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0026】
なお、本発明においては、カルシウムフェライトと金属酸化物の質量比と、当該金属酸化物の比表面積とをそれぞれ上で規定した範囲内において組み合わせるということが極めて重要である。上記の質量比と比表面積のいずれか一方でも本発明において規定される範囲から外れた場合には、最終的に得られる排ガス浄化用触媒において十分な触媒活性を達成することができない。すなわち、たとえ金属酸化物の比表面積を10m2/g超250m2/g未満の範囲内に制御したとしても、カルシウムフェライトと当該金属酸化物の質量比が上記の範囲内にない場合には、得られる排ガス浄化用触媒において高い触媒活性を達成することができないし、また、たとえカルシウムフェライトと金属酸化物の質量比が上記の範囲内にあったとしても、当該金属酸化物の比表面積が例えば10m2/g以下である場合やさらには250m2/g以上である場合には、同様に得られる排ガス浄化用触媒において高い触媒活性を達成することができない。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒成分であるカルシウムフェライトと上記の金属酸化物とを粉末状態においてそれらが十分に均一になるまで単に物理的に混合することにより調製される。しかしながら、本発明の排ガス浄化用触媒は、このような実施態様に何ら限定されるものではなく、例えば、上記の金属酸化物を触媒担体として使用し、それに触媒成分であるカルシウムフェライトを担持することにより調製してもよい。なお、上記のようにして得られた本発明の排ガス浄化用触媒の粉末は、必要に応じて、例えば、高圧下でプレスしてペレット状に成形するか、又は所定のバインダ等を加えてスラリー化し、これをコージェライト製ハニカム基材等の触媒基材上に塗布することにより使用することができる。
【0028】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
本実施例では、カルシウムフェライトと金属酸化物とを物理混合してなる排ガス浄化用触媒を調製し、金属酸化物の種類、カルシウムフェライトと金属酸化物の質量比、及び金属酸化物の比表面積(SSA)を変化させた場合の影響について調べた。
【0030】
[実施例1]
[カルシウムフェライト(Ca2Fe25)の調製]
まず、炭酸カルシウム(CaCO3)(ナカライテスク製)と酸化鉄(α−Fe23)(ナカライテスク製)とをCa/Fe比(原子比)が1.0となるように秤量し、次いでこれらの化合物をアルミナ乳鉢で混合及び解砕した。次に、得られた粉末をアルミナ坩堝に移して蓋をし、それを電気炉において室温から1150℃まで20℃/分の速度で昇温して1150℃で3時間焼成した。焼成が完了した後、温度を500℃まで2℃/分で降温し、その後は成り行きで室温まで冷却した。次いで、得られた粉末をアルミナ坩堝から取り出し、それをアルミナ乳鉢で解砕してCa2Fe25の組成を有するカルシウムフェライトを得た。
【0031】
[排ガス浄化用触媒の調製]
上で調製したカルシウムフェライトと、当該カルシウムフェライトと同質量の金属酸化物としてのアルミナ(Al23)(シーアイ化成製、ナノテックアルミナ、比表面積50m2/g)とをアルミナ乳鉢にて混合し、次いで、得られた粉末を冷間静水等方圧プレス(CIP)により2トンの圧力で加圧成型して板状に固めた。次いで、成型した板状試料をふるいを用いて砕くことにより、Ca2Fe25とAl23(比表面積50m2/g)の混合物(質量比1.0)からなるペレット状(1.7mm以下)の排ガス浄化用触媒を得た。
【0032】
[実施例2]
金属酸化物として比表面積が100m2/gのアルミナ(サソール製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積100m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0033】
[実施例3]
金属酸化物としてAl23代わりにシリカ(シーアイ化成製、比表面積100m2/g)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とSiO2(比表面積100m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0034】
[実施例4]
金属酸化物として比表面積が200m2/gのγ−アルミナ(和光純薬製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積200m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0035】
[実施例5]
カルシウムフェライトの3倍質量のγ−アルミナ(和光純薬製、比表面積200m2/g)を使用したこと以外は実施例4と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積200m2/g)の混合物(質量比3.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0036】
[比較例1]
本比較例では、実施例1において調製したカルシウムフェライト(Ca2Fe25)をアルミナ等の金属酸化物と混合することなく排ガス浄化用触媒として使用した。
【0037】
[比較例2]
アルミナ(シーアイ化成製、ナノテックアルミナ)を電気炉において1600℃(昇温速度20℃/分)で3時間焼成することにより調製した比表面積が5m2/gのアルミナを金属酸化物として使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積5m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0038】
[比較例3]
アルミナ(シーアイ化成製、ナノテックアルミナ)を電気炉において1500℃(昇温速度20℃/分)で3時間焼成することにより調製した比表面積が10m2/gのアルミナを金属酸化物として使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積10m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0039】
[比較例4]
金属酸化物として比表面積が250m2/gのアルミナ(グレース製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積250m2/g)の混合物(質量比1.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0040】
[比較例5]
カルシウムフェライトの3倍質量のアルミナ(比表面積10m2/g)を使用したこと以外は比較例3と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積10m2/g)の混合物(質量比3.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0041】
[比較例6]
カルシウムフェライトの5倍質量のアルミナ(比表面積10m2/g)を使用したこと以外は比較例3と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積10m2/g)の混合物(質量比5.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0042】
[比較例7]
アルミナ(シーアイ化成製、ナノテックアルミナ)を電気炉において1000℃(昇温速度20℃/分)で3時間焼成することにより調製した比表面積が30m2/gのアルミナを金属酸化物として使用し、さらにそれをカルシウムフェライトの0.5倍質量において使用したこと以外は実施例1と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積30m2/g)の混合物(質量比0.5)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0043】
[比較例8]
カルシウムフェライトの5倍質量のアルミナ(比表面積30m2/g)を使用したこと以外は比較例7と同様にして、Ca2Fe25とAl23(比表面積30m2/g)の混合物(質量比5.0)からなる排ガス浄化用触媒を得た。
【0044】
[触媒の活性評価]
実施例1〜5及び比較例1〜8の各排ガス浄化用触媒について、それらのCO酸化活性を評価した。具体的には、上で調製したペレット状の各排ガス浄化用触媒3.0gについて、下表1に示す評価用モデルガスを15L/分の流量で触媒床に流しながら(空間速度(SV)=300,000h-1に相当)、当該触媒床の温度を室温から20℃/分の速度で昇温し、500℃で5分間保持した際の平均CO浄化率を測定した。その結果を下表2に示す。なお、参考として、Ca2Fe25とAl23等の金属酸化物との混合物からなる排ガス浄化用触媒自体のBET法による比表面積(SSA)値についてもそれぞれ下表2に示している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表2の特に比較例の結果を参照すると、金属酸化物の比表面積並びにカルシウムフェライトと当該金属酸化物の質量比のいずれか一方でも本発明において規定する範囲から外れた場合には、いずれの排ガス浄化用触媒についても、カルシウムフェライトのみからなる比較例1の排ガス浄化用触媒と同程度の約20%前後のCO浄化率しか得られていないことがわかる。これとは対照的に、金属酸化物の比表面積と質量比のそれぞれを本発明において規定する範囲内に制御した実施例1〜5の各排ガス浄化用触媒では、約50%又はそれ以上のCO浄化率を達成することができた。また、異なる種類の金属酸化物(すなわちアルミナとシリカ)を使用したこと以外は同じ条件において調製した実施例2及び3の排ガス浄化用触媒では、ほぼ同等(約60%)のCO浄化率を達成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムフェライトと、該カルシウムフェライトとは異なる金属酸化物とからなる排ガス浄化用触媒であって、前記カルシウムフェライトが、Ca2Fe25、CaFe24及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、前記金属酸化物の比表面積が10m2/g超250m2/g未満であり、かつ前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物の質量比(金属酸化物/カルシウムフェライト)が1.0以上3.0以下であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記カルシウムフェライトがCa2Fe25であることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物とを物理混合してなるか又は前記カルシウムフェライトを前記金属酸化物に担持してなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記カルシウムフェライトと前記金属酸化物とを物理混合してなることを特徴とする、請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記金属酸化物の比表面積が50m2/g以上200m2/g以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記金属酸化物の比表面積が100m2/g以上200m2/g以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記金属酸化物が、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。

【公開番号】特開2013−81920(P2013−81920A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224903(P2011−224903)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】