説明

排ガス浄化装置

【課題】直噴式ガソリンエンジンから排気される排ガス中の粒子状物質を良好に除去でき、上記粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することが可能な排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】流入端面2から流出端面3まで貫通し流体の流路となる複数のセル4を区画形成する隔壁5を有しており、目封止セル4a及び貫通セル4bを有し、貫通セル4bに隔壁5を挟んで隣接するセル4のうち、目封止セル4aは、2つ以下である複数のハニカム構造体100と、流入口22及び流出口23が形成され、流入端面2が流入口22側を向くとともに流出端面3が流出口23側を向く状態の複数のハニカム構造体100を収納する缶体20と、を備え、隣り合うハニカム構造体100,100が、1〜50mmの間隔を空けて配置され、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たす排ガス浄化装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関し、更に詳しくは、直噴式ガソリンエンジンから排気される排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去(捕集)することができ、排ガス中の粒子状物質の除去に際して圧力損失の増加が少なく、かつ、上記粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することが可能な排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護、資源節約の観点から自動車の燃費低減が求められている。乗用車において主として用いられるガソリンエンジンについては、燃費改善のために燃料直噴化が進められている。
【0003】
従来、ガソリンエンジンは、吸気ポート燃料噴射の方式を採用していたため、煤(粒子状物質:PM)の発生が少なく、ほとんど問題にはならなかった。しかし、燃料直噴式のガソリンエンジンの場合は、吸気ポート燃料噴射の場合と比較してPMの発生量が多く、発生したPMを大気に放出しないための対策が必要であった。
【0004】
一方、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を除去するための捕集フィルタとして、ハニカム構造体が用いられている。粒子状物質捕集フィルタとして用いるハニカム構造体としては、両端面の所定の位置に目封止部を備えた目封止ハニカム構造体が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。ここで、目封止ハニカム構造体とは、流体(排ガス、浄化ガス)の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造部と、所定のセルの流体(排ガス)の入口側の端部及び残余のセルの流体(浄化ガス)の出口側の端部に配設された目封止部とを備え、所定のセルと残余のセルとが交互に、いわゆる市松模様をなすように配置されているものである。このような目封止ハニカム構造体によれば、排ガスの入口側の端面からセル内に排ガスが流入し、セル内に流入した排ガスが隔壁を通過し、隔壁を通過した排ガス(浄化ガス)が排ガスの出口側の端面から排出される。そして、排ガスが隔壁を通過するときに、排ガス中に含有されるPMが隔壁により捕集され、排ガスが浄化ガスとなる。
【0005】
そこで、上記のようなディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を除去するために使用される目封止ハニカム構造体を、ガソリンエンジンから排出される粒子状物質を除去するために使用する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−254034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来、ガソリンエンジンから排出される排ガスを処理するために、三元触媒コンバーター、NO吸蔵還元触媒等が使用されている。そのため、更に、上記のような目封止ハニカム構造体を排気系(排気路)に搭載すると、排気系の圧力損失が大きくなり、エンジン出力の低下等の問題が生じると考えられる。
【0008】
また、目封止ハニカム構造体の隔壁に三元触媒を担持させたものを、上記三元触媒コンバーター、NO吸蔵還元触媒等と置き換えることが考えられる。しかし、目封止ハニカム構造体においては、流入した排ガスの全てが隔壁を通過し、排ガス中の灰(灰分)などの粒子状物質のほとんどが、隔壁で捕集されるため、圧力損失が増大し易いものであった。特に、エンジンオイル中に、灰分となる物質が多く含有される場合や、燃料中に不純物が多く含まれる場合には、エンジンから排出される排ガス中に粒子状物質が多量に含有されることになるため、圧力損失が増大するという問題があった。
【0009】
更に、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとでは、使用燃料が異なるため、上記のように排ガス中のPMの量が異なる他、排ガス中のPMの、粒子径、形状、成分も異なる。そのため、排ガス中のPMを捕集するためのハニカム構造体の最適な構成(特徴)も、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとでは異なる。そのため、ディーゼルエンジン用の目封止ハニカム構造体(フィルタ)をそのままガソリンエンジン用のフィルタとして用いることは困難であるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、直噴式ガソリンエンジンから排気される排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去することができ、排ガス中の粒子状物質の除去において圧力損失の増加が少なく、かつ、排ガス中に含有される粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することができる排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す、排ガス浄化装置が提供される。
【0012】
[1] 流体が流入する側の端面である流入端面から流体が流出する側の端面である流出端面まで貫通し流体の流路となり、前記流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形である複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有しており、前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルは、2つ以下である複数のハニカム構造体と、流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口が形成されており、前記流入端面が前記流入口側を向くとともに前記流出端面が前記流出口側を向く状態の前記複数のハニカム構造体を収納する缶体と、を備え、前記複数のハニカム構造体の隣り合うハニカム構造体が、1〜50mmの間隔を空けて配置されており、前記ハニカム構造体の最大径K0と、前記缶体の、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間に位置する部分の開口最小径K1とが、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たす排ガス浄化装置。
【0013】
[2] 前記複数のハニカム構造体には、前記隔壁を挟んで隣接する複数のセルを一単位セルとしたときに、前記目封止部が、前記目封止部が、隣接する前記単位セルに交互に配設されている前記[1]に記載の排ガス浄化装置。
【0014】
[3] 前記単位セルが、互いに隣接する2列2行の4つのセルからなる前記[2]に記載の排ガス浄化装置。
【0015】
[4] 前記単位セルが、前記隔壁を挟んで隣接する1列全てのセルからなる前記[2]に記載の排ガス浄化装置。
【0016】
[5] 前記単位セルが、隣り合う複数列全てのセルからなる前記[2]に記載の排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排ガス浄化装置は、「流体が流入する側の端面である流入端面から流体が流出する側の端面である流出端面まで貫通し流体の流路となり、前記流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形である複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有しており、前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルは、2つ以下である複数のハニカム構造体」を備えるため、排ガスがハニカム構造体内を通過する際に(具体的には、貫通セルから目封止セルへ排ガスが流れる際に)隔壁がフィルタとなって排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去(捕集)する。また、上記のように、排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去可能であるとともに、複数のハニカム構造体には、貫通セルが形成されているため、圧力損失の増加が少ない。更に、複数のハニカム構造体は「前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルは、2つ以下である」ため、流入端面に堆積した粒子状物質によって貫通セルが塞がれ難くなっており、排ガス中の粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の排ガス浄化装置の一実施形態を示し、流体が流れる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図2】図1に示す排ガス浄化装置が備える複数のハニカム構造体のうち、缶体の流入口側に配置されたハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
【図3】隣接するセルに交互に目封止部が配設されているハニカム構造体を模式的に示す平面図である。
【図4】排ガス浄化装置に排ガスを流したときのハニカム構造体の状態を示す模式図である。
【図5】排ガス浄化装置に排ガスを流したときのハニカム構造体の状態を示す模式図である。
【図6】本発明の排ガス浄化装置が備えるハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の排ガス浄化装置が備えるハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
【図8】本発明の排ガス浄化装置が備えるハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]排ガス浄化装置:
本発明の排ガス浄化装置の一実施形態は、図1、図2に示すように、流体(排ガスG)が流入する側の端面である流入端面2から流体が流出する側の端面である流出端面3まで貫通し流体の流路となり、流入端面2における開口部の外周縁の形状が四角形である複数のセル4を区画形成する多孔質の隔壁5を有しており、流入端面2側の端部に目封止部8が配設されたセル4である目封止セル4a及び目封止部8が配設されないセル4である貫通セル4bを有し、貫通セル4bに隔壁5を挟んで隣接するセル4のうち、目封止セル4aは、2つ以下である複数のハニカム構造体100と、流体が流入する流入口22及び流体が流出する流出口23が形成されており、流入端面2が流入口22側を向くとともに流出端面3が流出口23側を向く状態の複数のハニカム構造体100を収納する缶体20と、を備え、複数のハニカム構造体100の隣り合うハニカム構造体100,100が、1〜50mmの間隔を空けて配置されており、ハニカム構造体100の最大径K0と、缶体20の、隣り合うハニカム構造体100,100の対向する端面の間に位置する部分Mの開口最小径K1とが、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たすものである。
【0021】
このような排ガス浄化装置は、「流体が流入する側の端面である流入端面から流体が流出する側の端面である流出端面まで貫通し流体の流路となり、前記流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形である複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有しており、前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルは、2つ以下である複数のハニカム構造体」を備えるため、排ガスがハニカム構造体内を通過する際に(具体的には、貫通セルから目封止セルへ排ガスが流れる際に)隔壁がフィルタとなって排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去(捕集)する。また、上記のように、排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去可能であるとともに、複数のハニカム構造体には、貫通セルが形成されているため、圧力損失の増加が少ない。更に、複数のハニカム構造体は「前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルは、2つ以下である」ため、流入端面に堆積した粒子状物質によって貫通セルが塞がれ難くなっており、排ガス中の粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することが可能である。
【0022】
図1に示す排ガス浄化装置1は、ハニカム構造体100の外周に耐熱無機絶縁マット等からなるクッション材31が巻き付けられている。このクッション材31が巻き付けられることにより、ハニカム構造体100が缶体20内で移動することを防止することがで、ハニカム構造体100が破損することを防止できる。また、図1に示す排ガス浄化装置1は、ハニカム構造体100が、留め具32により両端面を固定された状態で、缶体20内に収納されている。留め具32は、平板の中央部が取り除かれた形状であるリング状であってもよいし、ハニカム構造体100の端面の外縁の一部を留める板状であってもよい。留め具32の材質は、セラミックであってもよいし、ステンレス鋼、鉄鋼等の金属であってもよい。
【0023】
図1は、本発明の排ガス浄化装置の一実施形態を示し、流体が流れる方向に平行な断面を示す模式図である。図2は、図1に示す排ガス浄化装置が備える複数のハニカム構造体のうち、缶体の流入口側に配置されたハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
【0024】
図3は、隣接するセルに交互に目封止部が配設されているハニカム構造体を模式的に示す平面図である。例えば、図1、図2に示すハニカム構造体100に代えて、図3に示すハニカム構造体200を排ガス浄化装置に用いた場合、排ガス中の微粒子状物質40は、ハニカム構造体200の流入端面12の表面に蓄積し、一定以上溜まると排ガスの勢いにより貫通セル4bを通って排出され得る。しかしながら、長時間使用するなどの使用状況により、図4に示すように、ハニカム構造体200の流入端面12の表面に蓄積した微粒子状物質40が排出されることなく、貫通セル4bの入口を塞いでしまうことがある。このように、図3に示すハニカム構造体200は、長期間の使用などにより、蓄積した微粒子状物質40によって貫通セル4bの入口が塞がれて目詰まりが生じる。一方、本発明の排ガス浄化装置のハニカム構造体は、図2に示すように、貫通セル4bに隔壁5を挟んで隣接するセル4のうち、目封止セル4aが2つ以下であるため、長時間使用などの使用状況に関わらず、蓄積した微粒子状物質40によって貫通セル4bの入口が塞がれ難いものである。なお、本発明の排ガス浄化装置は、図5に示すように、貫通セル4bから、この貫通セル4bに隣接する目封止セル4aに排ガスの一部が流入し、このとき、排ガス中の微粒子状物質40がハニカム構造体100(ハニカム構造体100の隔壁5表面)に捕捉される。その後、微粒子状物質40のうち煤などの可燃微粒子は燃焼し、灰などの非可燃微粒子は除去(排出)されることになる。
【0025】
[1−1]ハニカム構造体:
本発明の排ガス浄化装置において、缶体内に収納されるハニカム構造体の個数は、粒子状物質の捕集効率、圧力損失等が所望の値になるように、また、排ガス中の粒子状物質の排出規制の程度によって、適宜決定することができるが、2個又は3個が好ましい。
【0026】
また、缶体内に収納される複数のハニカム構造体は、全て「流入端面2が缶体20の流入口22側を向くとともに流出端面3が缶体20の流出口23側を向く」ように配置される。そして、各ハニカム構造体の「セルの延びる方向に直交する断面」における直径は、同じであることが好ましいが、ハニカム構造体ごとに「セルの延びる方向に直交する断面」における直径が異なってもよい。
【0027】
複数のハニカム構造体は、隣り合うハニカム構造体が、1〜50mmの間隔を空けて配置されていることが必要であり、10〜50mmの間隔を空けて配置されていることが好ましく、10〜30mmの間隔を空けて配置されていることが更に好ましく、10〜20mmの間隔を空けて配置されていることが特に好ましい。隣り合うハニカム構造体の間隔が上記範囲であることにより、隣り合うハニカム構造体の間における排ガスの温度の低下を防止することができる。そのため、下流側に位置するハニカム構造体に堆積した微粒子状物質の燃焼を促進でき、この堆積した粒子状物質に起因する圧力損失の増大を防止できる。従って、圧力損失の評価結果が良好になる。ここで、上記間隔が1mm未満であると、振動等によりハニカム同士が接触するため破損してしまうことがある。一方、50mm超であると、隣り合うハニカム構造体の間における排ガスの温度の低下が過剰となり下流側に位置するハニカム構造体に流入する排ガスの温度が低下する。そのため、堆積したススなどの粒子状物質の燃焼が妨げられ(十分に行われず)、堆積した微粒子状物質に起因して圧力損失が増加する。
【0028】
本発明の排ガス浄化装置は、ハニカム構造体の最大径K0と、缶体の、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間に位置する部分の開口最小径K1とが、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たすものである。そして、式:85≦(開口最小径K1/最大径K0)×100≦110を満たすことが好ましく、式:90≦(開口最小径K1/最大径K0)×100≦110を満たすことが更に好ましく、式:95≦(開口最小径K1/最大径K0)×100≦110を満たすことが特に好ましい。開口最小径K1と最大径K0とが上記式を満たすことにより、縮流による排ガスの乱れが減少するため、圧力損失の評価結果が良好になる。ここで、上記式を満たさない場合には、排ガスの乱流が過大となり、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間での圧力損失が増加するため、排ガス浄化装置全体の圧力損失が増加する。
【0029】
ハニカム構造体100は、図1に示すように、排ガスGが流入する側の端面である流入端面2から排ガスGが流出する側の端面である流出端面3まで貫通し流体の流路となる複数のセル4を区画形成する多孔質の隔壁5を有し、図2に示すように、外周に配設された外周壁7を更に有するものである。なお、ハニカム構造体は、必ずしも外周壁7を有する必要はない。
【0030】
隔壁5の気孔率は、35〜70%であることが好ましく、40〜70%であることが更に好ましく、50〜65%であることが特に好ましい。隔壁の気孔率が上記範囲であると、ハニカム構造体の強度を適度に維持しつつ、圧力損失の増大を良好に防止することができる。隔壁5の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0031】
隔壁5の厚さは、0.05〜0.175mmであることが好ましく、0.075〜0.175mmであることが更に好ましく、0.075〜0.100mmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが上記範囲であることにより、特に直噴式ガソリンエンジン用のフィルタとして用いたときに圧力損失の増大を良好に防止することができる。隔壁5の厚さは、中心軸に平行な断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
【0032】
ハニカム構造体100のセル密度(セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数)は、62〜92個/cmであることが好ましく、62〜85個/cmであることが更に好ましく、62〜80個/cmであることが特に好ましい。上記セル密度が上記範囲であると、圧力損失の増大を良好に防止することができる。
【0033】
隔壁5の平均細孔径は、5〜50μmであることが好ましく、7〜30μmであることが更に好ましく、10〜25μmであることが特に好ましい。上記平均細孔径が上記範囲であると、圧力損失の低下を良好に防止しつつ、粒子状物質を良好に捕捉することができる。隔壁5の平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0034】
式:(ハニカム構造体の中心軸方向の長さL/ハニカム構造体の流入端面の直径D)により算出される値(L/D)は、0.3〜2.0であることが好ましく、0.3〜1.5であることが更に好ましく、0.3〜1.0であることが特に好ましい。上記値(L/D)が上記範囲であると、圧力損失の増大を良好に防止することができる。
【0035】
セル4は、流体の流路となるものであり、流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形、即ち、セルの延びる方向に直交する断面において四角形のセルである。なお、流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形であれば、流出端面における開口部の外周縁の形状は特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。
【0036】
外周壁7の厚さは、特に限定されないが、0.2〜2.0mmが好ましい。外周壁7の厚さを上記範囲とすることにより、ハニカム構造体の強度を適度に維持しつつ、圧力損失の増大を防止することができる。
【0037】
ハニカム構造体100の形状は、特に限定されないが、円筒形状、底面が楕円形の筒形状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の筒形状等が好ましく、円筒形状であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体100の大きさは、特に限定されないが、セルの延びる方向における長さが30〜200mmであることが好ましい。また、例えば、ハニカム構造体100の外形が円筒形の場合、その底面の直径は、80〜180mmであることが好ましい。
【0038】
隔壁5及び外周壁7は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁5及び外周壁7の材質としては、具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライトが好ましい。隔壁5と外周壁7の材質は、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することをいう。
【0039】
[1−1−1]目封止部:
ハニカム構造体100においては、上述したように、目封止セル4a及び貫通セル4bを有し、貫通セル4bに隔壁5を挟んで隣接するセル4のうち、目封止セル4aは、2つ以下である。別言すると、隔壁を挟んで貫通セル4bに目封止セル4aが隣接する場合、隣接する目封止セル4aの数は、2つ以下である。このように目封止セル4aと貫通セル4bとを配置すると、排ガス浄化装置を長期間使用した場合であっても、ハニカム構造体100の流入端面2の表面に蓄積した微粒子状物質40が貫通セル4bの入口を塞いでしまうことにより、圧力損失が増大することを防止できる。即ち、例えば排ガス浄化装置を長期間使用した場合、ハニカム構造体100の流入端面2の表面に排ガス中の微粒子状物質40が蓄積し、貫通セル4bの開口部分にせり出すことがある(図5参照)。具体的には、貫通セル4bの開口部分にせり出す微粒子状物質40は、貫通セル4bを区画形成する隔壁5のうち2つ以下の隔壁からせり出すことになる。従って、ハニカム構造体100は、微粒子状物質40の蓄積により貫通セル4bの開口面積が小さくなる場合があるが、その割合は図3、図4に示すハニカム構造体200よりも小さい。そのため、圧力損失の増大を防止することができる。なお、図1に示すハニカム構造体100の目封止セル4aは、流入端面2側の端部にのみ目封止部8が配設されており、流出端面3側の端部には目封止部8が配設されていないものである。
【0040】
図6は、本発明の排ガス浄化装置が備えるハニカム構造体の他の実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図6に示すハニカム構造体101は、目封止セル4a及び貫通セル4bを有し、貫通セル4bに隔壁5を挟んで隣接するセル4のうち、目封止セル4aが2つ以下である例である。具体的には、ハニカム構造体101は、隔壁5を挟んで隣接する複数の貫通セル4bを一単位セル14としたとき、この単位セル14に隣接するセル4が目封止セル4aである例である。このようなハニカム構造体を備えると、圧力損失の増大を良好に防止することができる。また、貫通セル4bに対する目封止セル4aの比率が多くなるため、圧力バランスによって目封止セル4aへの排ガス流量が増加する。即ち、隔壁5を通過する排ガスの量が増加する。そのため、微粒子状物質の捕集効率が向上する。
【0041】
また、上述した目封止セル4aと貫通セル4bとを配置する限り目封止セル4aと貫通セル4bとの配置状態は特に制限はないが、図2に示すハニカム構造体100のように、隔壁5を挟んで隣接する複数のセル4を一単位セル24としたときに、目封止部8が、単位セル24に交互に配設されている(即ち、隣接する単位セル24ごとに交互に封止セル4aと貫通セル4bとが配設されている)ことが好ましい。図2は、隔壁5を挟んで隣接する複数の目封止セル4aを一単位セル24aとし、隔壁5を挟んで隣接する複数の貫通セル4bを一単位セル24bとしたときに、複数の目封止セル4aからなる単位セル24aと複数の貫通セル4bからなる単位セル24bとが交互にいわゆる市松模様を形成するように配設されている例である。ここで、単位セル24は、互いに隣接する2列2行の4つのセルからなるものであることが好ましい。「単位セル24が互いに隣接する2列2行の4つのセルからなる」とは、単位セル24が、隔壁5を挟んで隣接する2つのセル4と、これらの2つのセル4の両方に隣接しかつ互いに隔壁5を挟んで隣接する2つのセル4との4つのセルからなることを意味する。図2に示すハニカム構造体100は、互いに隣接する2列2行の4つのセル4を一単位セル24としたときに、目封止部8が、隣接する単位セル24に交互に配設されている例である。このようなハニカム構造体100を複数備える排ガス浄化装置は、ハニカム構造体の、排ガスの流入端面にアッシュ(灰)が堆積した際、堆積したアッシュが貫通セル側にあふれ出してセルの開口を塞いでしまうことになり難く、圧力損失の増加を防ぐことができる。なお、本明細書においては、図2に示すように、ハニカム構造体100の外周部に、外周壁7により切り取られた欠落セル4cがある場合には、外周壁7によって切り取られたセルと上記欠落セル4cを合わせて形成されるセル群を単位セル24とする。そのため、各単位セル24を構成するセル4の数は一定のセル数(図2に示すハニカム構造体100においては4つ)でなくてもよい。なお、最外周に位置するセル4は、外周壁7に沿った形状となっている。
【0042】
図7に示すハニカム構造体102は、隔壁5を挟んで隣接する複数のセル4を一単位セル34としたときに、目封止部8が、隣接する単位セル34に交互に配設されており(即ち、隣接する単位セル34ごとに交互に封止セル4aと貫通セル4bとが配設されており)、単位セル34が1列全てのセル4からなる例である。「単位セル34が隔壁を挟んで隣接する1列全てのセル4からなる」とは、単位セル34が、単位セル34の両端部に位置するセル4が、ハニカム構造体102の最外周に位置し(外周壁7を含む壁によって区画形成され)、一方の端部に位置するセル4から他方の端部に位置するセル4まで1列に並ぶように隔壁5を挟んで隣接する複数のセルからなることを意味する。このようなハニカム構造体102を複数備える排ガス浄化装置は、ハニカム構造体の、排ガスの流入端面にアッシュ(灰)が堆積した際、堆積したアッシュが貫通セル側にあふれ出してセルの開口を塞いでしまうことになり難く、圧力損失の増加を防ぐことができる。
【0043】
図8に示すハニカム構造体103は、隔壁5を挟んで隣接する複数のセル4を一単位セル44としたときに、目封止部8が、隣接する単位セル44に交互に配設されており(即ち、隣接する単位セル44ごとに交互に封止セル4aと貫通セル4bとが配設されており)、単位セル44が隣り合う複数列(2列)全てのセルからなる例である。「単位セル44が隣り合う複数列全てのセルからなる」とは、単位セル44が、単位セル44の両端部に位置するセル4が、ハニカム構造体103の最外周に位置し(外周壁7を含む壁によって区画形成され)、一方の端部に位置するセル4から他方の端部に位置するセル4まで1列に並ぶように隔壁5を挟んで隣接する複数のセルをセル群としたとき、このセル群を複数有し、かつ、これらの複数のセル群が隔壁5を挟んで隣り合うことによって構成される複数のセルからなることを意味する。このようなハニカム構造体103を複数備える排ガス浄化装置は、単位セル44の表面領域(ハニカム構造体の端面の一部)内に凹凸ができているため、単位セル44の表面領域から外へあふれ出るアッシュの量が減少する。具体的には、単純に単一の目封止材で形成されていないため(即ち、単位セル44を構成する各セル4に充填される目封止材の量には多少の誤差があるので、微視的には各目封止部8の表面高さは一定ではないため)、単位セル44の表面領域内に凹凸ができ、アッシュが上記表面領域に堆積し易くなる。更に、上記表面領域の中央部には隔壁が存在するため、上記表面領域は中央部に向かって凹状となり、アッシュが表面領域(特に中央部)に堆積し易くなる。従って、単位セル44の表面領域から外へあふれ出るアッシュの量が減少する。また、目封止セル4aがまっすぐに列をなして並んでいるため、図3に示すハニカム構造体のように、隣接するセルに交互に目封止部が配設されている場合に比べて、目封止部の配設が容易であるため製造時に目封止工程が簡略化でき、製造コスト低減が可能である。
【0044】
なお、複数のハニカム構造体は、各ハニカム構造体の構造(特に、目封止部の配設パターン)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。即ち、例えば、2つのハニカム構造体を用いる場合、両方のハニカム構造体が図2に示すようなハニカム構造体100であってもよいし、一方のハニカム構造体が図2に示すハニカム構造体100であり、他方のハニカム構造体が図7に示すようなハニカム構造体102であってもよい。これらの中でも、製造コストを低減することができるという観点から、各ハニカム構造体の構造(特に、目封止部の配設パターン)が同じであることが好ましい。
【0045】
目封止部8の深さは、1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることが更に好ましい。ここで、目封止部8の深さとは、目封止部8の、セル4の延びる方向における長さを意味する。目封止部8の材質は、隔壁5の材質と同じであることが好ましい。
【0046】
[1−1−2]触媒:
ハニカム構造体100の隔壁5には、触媒が担持されていることが好ましい。担持される触媒は、目的に応じて適宜決定することができる。例えば、三元触媒、酸化触媒、NO選択還元触媒、NO吸蔵還元触媒などを挙げることができる。触媒の単位体積当りの担持量は、5〜100g/リットルであることが好ましく、10〜40g/リットルであることが更に好ましい。
【0047】
三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。この三元触媒により、炭化水素は水と二酸化炭素に、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素に、それぞれ酸化或いは還元によって浄化される。
【0048】
隔壁5に担持される三元触媒の単位体積当りの担持量は、60g/リットル以下であることが好ましく、10〜60g/リットルであることが更に好ましい。
【0049】
酸化触媒としては貴金属を含有するものを挙げることができ、具体的には、Pt、Rh及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。貴金属の合計量は、ハニカム構造体100の単位体積当り、0.1〜3g/リットルであることが好ましい。
【0050】
NO選択還元触媒としては、金属置換ゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。
【0051】
NO吸蔵還元触媒としては、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、K、Na、Li等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、Caなどを挙げることができる。K、Na、Li、及びCaの合計量は、ハニカム構造体100の単位体積当り、0.1〜3g/リットルであることが好ましい。
【0052】
[1−1−3]ハニカム構造体の製造方法:
まず、成形原料を混練して坏土とする。次に、得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。得られたハニカム成形体の一方の端面(流入端面)における一部のセルの開口部を目封止した後、焼成する。このようにしてハニカム構造体を作製することができる。触媒が担持されたハニカム構造体を作製する場合には、上記焼成の後に、触媒を担持することが好ましい。
【0053】
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましく、添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0054】
セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
【0055】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.3〜1質量部であることが好ましい。
【0056】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。
【0057】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であることが好ましい。
【0058】
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、20〜30質量部であることが好ましい。
【0059】
使用するセラミック原料(骨材粒子)の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質基材を得ることができる。
【0060】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0061】
セルの開口部を目封止する方法としては、セルの開口部に目封止材を充填する方法を挙げることができる。目封止材を充填する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0062】
例えば、以下のようにしてハニカム成形体のセルの開口部に目封止材を充填することができる。まず、ハニカム成形体の一方の端面(流入端面となる端面)にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、所定のセルを塞いでいる部分に孔を開ける(例えば、図2に示すように、2列2行の4つのセルを単位セルとして、単位セルに交互に孔を形成することができる)。次に、ハニカム成形体の、マスクを貼り付けた側の端部を、コージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、所定のセルの一方の端部に上記目封止スラリーを充填する。なお、コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合したものであり、具体的には、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等を配合しているものである。
【0063】
焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
【0064】
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0065】
なお、ハニカム成形体のセルの開口部に目封止材を充填する前に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得、得られたハニカム焼成体の所定のセルの一方の端面(流入端面となる端面)側の端部に目封止材を充填した後、更に焼成することによってハニカム構造体を得ることもできる。
【0066】
ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持する方法は、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーを塗工して、乾燥、焼付けを行う方法を挙げることができる。触媒スラリーを塗工する方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、以下のように行うことができる。まず、触媒を含有する触媒スラリーを調製する。その後、調製した触媒スラリーを、ディッピングや吸引によりセル内に流入させる。この触媒スラリーは、セル内の隔壁の表面全体に塗工することが好ましい。そして、触媒スラリーをセル内に流入させた後に、余剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばす。その後、触媒スラリーを乾燥、焼付けすることにより、セル内の隔壁表面に触媒が担持されたハニカム構造体を得ることができる。乾燥条件は、80〜150℃、1〜6時間とすることが好ましい。また、焼付け条件は450〜700℃、0.5〜6時間とすることが好ましい。なお、触媒スラリーに含有される触媒以外の成分としては、アルミナ等が挙げられる。
【0067】
[1−2]缶体:
缶体20は、排ガスが流入する流入口22及び浄化された排ガスが流出する流出口23を有する筒状の構造体である。このような缶体20は、上記構造体である限り特に限定されるものではなく、自動車排ガス等の排ガス浄化用のハニカムフィルタを収納するために通常用いられるものを用いることができる。本発明の排ガス浄化装置は、上述したように、ハニカム構造体の最大径K0と、缶体の、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間に位置する部分の開口最小径K1とが、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たすものである。従って、本発明の排ガス浄化装置の缶体は、流体の流れる方向の中央部がくびれていたり、膨らんでいたりすることがあるものである。このような缶体を用いることで、縮流による排ガスの乱れが減少するため、圧力損失の評価結果が良好になる。
【0068】
缶体20の材質としては、ステンレス鋼等の金属を挙げることができる。缶体20の大きさは、ハニカム構造体100にクッション材31を巻きつけた状態で圧入できる大きさであることが好ましい。缶体20は、図1に示すように、筒形状の両端部がテーパー状に細くなり、流入口22及び流出口23の「排ガスが流れる方向に直交する断面」における直径が、中央部のハニカム構造体が収納される部分の「排ガスが流れる方向に直交する断面」における直径より小さいことが好ましい。具体的には、缶体の中央部の上記直径は、80〜110mmが好ましい。また、缶体の流入口及び流出口の上記直径は、30〜80mmが好ましい。
【0069】
缶体20は、従来公知の方法で作製することができる。例えば、フェライト系ステンレスからなる板材料を、プレス加工して、溶接することによって作製することができる。缶体の形状、大きさ等は、ハニカム構造体の大きさや排ガス浄化装置の用途に応じて適宜設定することができる。
【0070】
[2]排ガス浄化装置の製造方法:
本発明の排ガス浄化装置の製造方法について、図1に示す排ガス浄化装置1を製造する方法により具体的に説明する。
【0071】
まず、流体が流入する流入口22及び流体が流出する流出口23が形成され、内周面に固定されてハニカム構造体100の移動を規制するための留め具32を備える缶体20を用意する。次に、2つのハニカム構造体100の外周にクッション材31を巻きつけ、クッション材31が巻付けられたハニカム構造体100を、所定の位置に配置し、留め具32によりハニカム構造体100を缶体20内に固定する。このとき、ハニカム構造体100を缶体20内に圧入する。このようにして、排ガス浄化装置1を得ることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
[ハニカム構造体(A)の作製]
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用し、コージェライト化原料100質量部に、造孔材を10質量部、分散媒を20質量部、有機バインダを1質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒として水を使用し、造孔材としては平均粒子径5〜30μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0074】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形(セルの延びる方向に直交する断面において四角形のセル)で、全体形状が円柱形(円筒形)のハニカム成形体を得た。そして、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、ハニカム成形体の一方の端面(流入端面となる端面)にマスクを貼り付けた。このとき、セルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーにより、マスクの、所定のセルを塞いでいる部分に孔を開けた(具体的には、図2に示すように、2列2行の4つのセルを単位セルとして、単位セルに交互に孔を形成した)。マスクを貼り付けた側の端部を、上記コージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、所定のセルの一方の端部に上記目封止スラリーを充填した。
【0075】
その後、所定のセルの一方の端部に上記目封止スラリーを充填したハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥し、更に、1410〜1440℃で、5時間、焼成することによってハニカム焼成体を得た。
【0076】
次に、平均粒子径が100μmであるγAlと平均粒子径が100μmであるCeOとの混合物粒子(比表面積50m/g)をボールミルにて湿式解砕し、細孔を有する平均粒子径5μmの解砕粒子を得た。得られた解砕粒子を、Pt及びRhを含む溶液に浸漬して解砕粒子の細孔内にPt及びRhを担持させた。その後、Pt及びRhを担持させた解砕粒子に、酢酸及び水を加えてコート用スラリーを得た。そして、このコート用スラリーに作製したハニカム焼成体を浸漬させた。このようにして、ハニカム焼成体の隔壁表面及び隔壁の細孔表面に触媒をコートして触媒層を形成した。その後、乾燥させ、更に600℃で3時間焼成させることによってハニカム構造体(A)を得た。
【0077】
得られたハニカム構造体(A)は、直径が110mmであり、中心軸方向の長さが60mmであり、ハニカム構造体における流入端面の直径Dに対する中心軸方向の長さLの比の値(L/D)が0.55であり、セル密度が62.0個/cmであり、隔壁の厚さが0.076mmであり、隔壁の気孔率が40.0%であり、隔壁の平均細孔径が10μmであった。本実施例のハニカム構造体(A)は、その目封止セルにおいて、図1に示すハニカム構造体100のように、流入端面2側の端部にのみ目封止部8が配設されており、流出端面3側の端部には目封止部8が配設されていないものである。また、隣接する2列2行の4つのセルを一単位セルとしたときに、図2に示すハニカム構造体100のように、隣接する単位セルに交互に目封止部が配設されている。なお、ハニカム構造体に担持させた触媒(酸化物(γAlとCeO))の担持量(触媒コート量)は20g/Lであった。貴金属のハニカム構造体の単位体積当たり担持量は0.25g/Lであった(具体的には、Ptのハニカム構造体の単位体積当たり担持量は0.2g/Lであり、Rhのハニカム構造体の単位体積当たり担持量は0.05g/Lであった)。また、触媒層の平均細孔径は、解砕粒子の平均粒子径と同じ5μmであった。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
[ハニカム構造体(B)の作製]
次に、表2に示す、直径、中心軸方向の長さ、L/D、セル密度、隔壁の厚さ、隔壁の気孔率、隔壁の平均細孔径、触媒の担持量、及び貴金属の担持量を満たすようにしたこと以外は、ハニカム構造ハニカム構造体(A)と同様にして、ハニカム構造体を作製し、これをハニカム構造体(B)とした。
【0080】
【表2】

【0081】
[排ガス浄化装置の作製]
次に、流入口及び流出口を有する金属製(具体的には、ステンレス製)の缶体内に、作製したハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)を、それぞれ、流入端面が流入口側を向くとともに流出端面が流出口側を向く状態で収納した。収納に際しては、セラミックス繊維を主成分とするマットでハニカム構造体の外周を覆い、その状態で缶体内に圧入して固定した。このようにして、排ガス浄化装置を作製した。
【0082】
缶体としては、図1に示すように筒形状の両端部がテーパー状に細くなっている缶体を用いた。具体的には、本実施例で用いた缶体は、流入口の開口径が50mmであり、流出口の開口径が50mmであり、開口最小径K1が99.0mmであり、流体が流れる方向の長さが150mmである。
【0083】
本実施例の排ガス浄化装置は、ハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)の間隔Iを20mmに保持し、開口最小径K1(d)が99.0mm、最大径K0(D)が110mmであり、d/Dが90%のものである。
【0084】
作製した排ガス浄化装置について、[長時間運転時のアッシュ詰まり]、[PM排出]、[圧力損失]及び[総合判断]の各評価を行った。各評価の評価方法を以下に示す。
【0085】
[長時間運転時のアッシュ詰まりの評価方法]
排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンの排気路に、缶体の流入口から排ガスが流入するように排ガス浄化装置を装着した。その後、エンジン台上試験により、欧州規制運転モードを模した運転条件で500時間運転を繰り返した。このとき、初期圧力損失を測定しておいた。そして、500時間運転後における圧力損失を測定して、初期圧力損失との関係から評価を行った。評価基準は、500時間運転後における圧力損失が初期圧力損失の2倍以下である場合を合格「A」とし、2倍超である場合を不合格「B」とした。なお、表3中、本評価を「アッシュ詰まり」と示す。
【0086】
[PM排出の評価方法]
排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンを搭載した乗用車の排気路に、缶体の流入口から排ガスが流入するように排ガス浄化装置を装着した。その後、シャシダイナモによる車両試験として、欧州規制運転モードの運転条件にて運転した際における排ガス中のPMの排出個数を、欧州Euro6規制案に沿った方法で測定し評価を行った。上記PMの排出個数が6×1011個/km以下の場合は、欧州Euro6規制案の条件を満たしているため、合格「A」とし、上記PMの排出個数が6×1011個/km超の場合は、不合格「B」とした。なお、表3中、本評価を「PM排出(個/km)」と示す。
【0087】
[圧力損失の評価方法]
圧力損失は、排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンの台上試験にて評価を行った。具体的には、まず、上記エンジンの排気路に、セル密度93セル/cm、隔壁の厚さ0.076mm、直径105.7mm、長手方向の長さ114mmのフロースルー型のハニカム構造体(目封止部が配設されていないハニカム構造体)を装着した。そして、このハニカム構造体におけるエンジンフルロード運転時の圧力損失を測定し、これを基準値とした。次に、上記排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンの排気路に、上記ハニカム構造体に代えて、缶体の流入口から排ガスが流入するように本実施例の排ガス浄化装置を装着した後、上記エンジンフルロード条件での圧力損失を測定して試験値とした。そして、圧力損失増加量(試験値−基準値)を算出して、圧力損失増加量が10kPa未満である場合を合格「A」とし、圧力損失増加量が10kPa以上である場合を不合格「B」とした。
【0088】
[総合判断の評価方法]
上記[長時間運転時のアッシュ詰まり]、[PM排出]、及び[圧力損失]の各評価のうち、全ての評価が合格「A」であるときには「A」とし、1つでも不合格「B」の評価があるとき、不合格「B」とした。
【0089】
本実施例における各評価([長時間運転時のアッシュ詰まり]、[PM排出]、[圧力損失]、及び[総合判断])の結果を表3に示す。
【0090】
表3中、「目封止部の位置」は、目封止部を形成した端部を示し、「上流片側」は、流入端面側の端部にのみ目封止部を形成したことを意味し、「両端」は、流入端面側の端部及び流出端面側の端部の両方に目封止部を形成したことを意味する。「目封止部の形態」は、目封止部の形成パターンを示し、「4セル毎千鳥」は、2列2行の4つのセルを単位セルとして、単位セルに交互にセルの開口を塞ぐように目封止部を形成していること(図2参照)を意味する。「9セル毎千鳥」は、3列3行の9つのセルを単位セルとして、単位セルに交互にセルの開口を塞ぐように目封止部を形成していることを意味する。「1列おき」は、隔壁を挟んで隣接する複数のセルを一単位セルとしたときに、目封止部が、隣接する単位セルに交互に配設されており、単位セルが1列全てのセルからなるように、目封止部を形成していること(図7参照)を意味する。「2列おき」は、隔壁を挟んで隣接する複数のセルを一単位セルとしたときに、目封止部が、隣接する単位セルに交互に配設されており、単位セルが隣り合う2列全てのセルからなるように、目封止部を形成していること(図8参照)を意味する。「千鳥」は、隣接するセルに交互に目封止部が配設されるように、目封止部を形成していること(図3参照)を意味する。「I(mm)」は、隣り合うハニカム構造体の間隔を示し、「d/D(%)」は、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100により算出される値(ただし、「最大径K0」は、ハニカム構造体の最大径K0であり、「開口最小径K1」は、前記缶体の、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間に位置する部分の開口最小径K1である)を示す。
【0091】
【表3】

【0092】
(実施例2〜24、比較例1〜7)
表1及び表2に示す、直径、中心軸方向の長さ、L/D、セル密度、隔壁の厚さ、隔壁の気孔率、隔壁の平均細孔径、触媒の担持量、及び貴金属の担持量を満たすハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)を作製し、表3に示す、目封止部の位置及び目封止部の形態を満たすハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜24、比較例1〜7の各ハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)を作製した。その後、作製した各ハニカム構造体(A)及びハニカム構造体(B)を、それぞれ、実施例1で使用した缶体と同様の缶体内に収納して排ガス浄化装置を作製した。その後、実施例1と同様にして、[長時間運転時のアッシュ詰まり]、[PM排出]、[圧力損失]、及び[総合判断]の各評価を行った。結果を表3に示す。
【0093】
表3から明らかなように、実施例1〜24の排ガス浄化装置は、比較例1〜7の排ガス浄化装置に比べて、直噴式ガソリンエンジンから排気される排ガス中に含有される粒子状物質を良好に除去することができ、排ガス中の粒子状物質の除去において圧力損失の増加が少なく、かつ、排ガス中に含有される粒子状物質の良好な捕集効率を長時間維持することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の排ガス浄化装置は、直噴ガソリンエンジンから排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
1:排ガス浄化装置、2,12:流入端面、3:流出端面、4:セル、4a:目封止セル、4b:貫通セル、4c:欠落セル、5:隔壁、7:外周壁、8:目封止部、14,24,24a,24b,34,44:単位セル、20:缶体、22:流入口、23:流出口、31:クッション材、32:留め具、40:微粒子状物質、100,101,102,103,200:ハニカム構造体、G:排ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する側の端面である流入端面から流体が流出する側の端面である流出端面まで貫通し流体の流路となり、前記流入端面における開口部の外周縁の形状が四角形である複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有しており、前記流入端面側の端部に目封止部が配設されたセルである目封止セル及び前記目封止部が配設されないセルである貫通セルを有し、前記貫通セルに前記隔壁を挟んで隣接するセルのうち、前記目封止セルとなるのは、2つ以下である複数のハニカム構造体と、
流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口が形成されており、前記流入端面が前記流入口側を向くとともに前記流出端面が前記流出口側を向く状態の前記複数のハニカム構造体を収納する缶体と、を備え、
前記複数のハニカム構造体の隣り合うハニカム構造体が、1〜50mmの間隔を空けて配置されており、
前記ハニカム構造体の最大径K0と、前記缶体の、隣り合うハニカム構造体の対向する端面の間に位置する部分の開口最小径K1とが、式:(開口最小径K1/最大径K0)×100≧80を満たす排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記複数のハニカム構造体には、前記隔壁を挟んで隣接する複数のセルを一単位セルとしたときに、前記目封止部が、隣接する前記単位セルに交互に配設されている請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記単位セルが、互いに隣接する2列2行の4つのセルからなる請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記単位セルが、前記隔壁を挟んで隣接する1列全てのセルからなる請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記単位セルが、隣り合う複数列全てのセルからなる請求項2に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184658(P2012−184658A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46351(P2011−46351)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】