説明

排ガス浄化装置

【課題】ターボ過給機のタービン回転翼の損傷を防止し、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒で燃料の一部を水素に効率良く改質する。
【解決手段】排気マニホルド17の集合管部17bに設けられた改質触媒22がエンジン11の燃料25を水素に改質し、燃料添加手段23が改質触媒に燃料を供給する。白金系触媒36が燃料リッチ状態の排ガス中のNOxと上記水素とからアンモニアを生成し、選択還元型触媒37がアンモニアを還元剤として排ガス中のNOxを還元する。ウェイストゲートバルブ39がバイパス管38の開度を調整してターボ過給機19のタービンハウジング19bに流す排ガスの流量を調整し、コントローラ54が、エンジンの運転条件に基づいて燃料添加手段を制御するとともに、タービンハウジングの入口温度を検出する温度センサ47の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を低減して排ガスを浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排気マニホルド内に燃料を噴射する燃料添加弁が設けられ、燃料添加弁より噴射された燃料が過給機の下流側の排気管に設けられたNOx吸蔵型のNOx触媒の還元剤となり、過給機の上流側に燃料添加弁によって噴射された燃料を改質させる燃料改質触媒が設けられた排気浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排気浄化装置では、燃料改質触媒が排気マニホルドの集合部から過給機までの排気通路内に配置され、その中心軸が排ガスの流れの方向と略平行になるように配置される。また燃料改質触媒は、コア部材が中心となるようにコア部材に基材を巻付けて形成された触媒担体と、触媒担体を収容する外筒とを有する。基材は2枚の金属製板材で金属製波板を挟んだ状態で接合することにより形成され、基材には例えば白金などが担持される。またコア部材は、その先端に、衝突した燃料を周囲に拡散させる衝突部を有する。この衝突部には、その断面がコア部材の長手方向に沿って拡大するようにテーパ面が形成され、このテーパ面は触媒担体から露出するように構成される。また触媒担体の端面は衝突部の近傍を突出させた円錐状の面に形成される。更に燃料改質触媒は噴射された燃料を酸化させる機能を有し、改質された燃料はNOx触媒の還元剤となる。
【0003】
このように構成された排気浄化装置では、燃料改質触媒の衝突部に燃料が吹付けられると、触媒担体の全体が使われるように燃料が霧化し拡散する。また触媒担体の端面が、衝突部の近傍を突出させた円錐状の面に形成されているので、噴射燃料が良好に触媒担体の全体に行き渡る。この結果、燃料改質触媒は、噴射された燃料を霧化する能力に優れ、燃料改質の効率がよい。この改質された燃料はNOx触媒に供給され、NOx触媒の還元剤として機能する。即ち、NOx触媒は、排ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し、排ガスの酸素濃度が低下したときに上記吸収したNOxを放出し、改質された燃料を還元剤としてN2に還元するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−76530号公報(段落[0017]、[0018][0022]、[0024]、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された排気浄化装置では、燃料添加弁より噴射された燃料が燃料改質触媒の衝突部に吹付けられて霧化し拡散した後に、燃料改質触媒は上記噴射された燃料を改質するけれども、このとき熱を発生して燃焼改質触媒とともに排ガスの温度が上昇し、この排ガス温度が上がり過ぎると、この排ガスが過給機のタービンハウジングに流入して、タービン回転翼が高速で回転したときに、タービン回転翼が上記熱と高速で回転することにより損傷するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、ターボ過給機のタービン回転翼の損傷を防止できるとともに、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒において燃料の一部を水素に効率良く改質できる、排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、図1に示すように、ターボ過給機19付エンジン11の排気ポートに接続された排気マニホルド17の集合管部17bに設けられエンジン11の燃料25を水素に改質する改質触媒22と、排気マニホルド17に燃料25を添加することにより改質触媒22に燃料25を供給する燃料添加手段23と、ターボ過給機19のタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18に設けられ燃料リッチ状態の排ガスに含まれるNOxと改質触媒22で生成された水素とからアンモニアを生成する白金系触媒36と、白金系触媒36より排ガス下流側の排気管18に設けられアンモニアを還元剤として排ガス中のNOxを還元する選択還元型触媒37と、タービンハウジング19bをバイパスするバイパス管38に設けられバイパス管38の開度を調整してタービンハウジング19bに流す排ガスの流量を調整するウェイストゲートバルブ39と、タービンハウジング19bの入口温度を検出する温度センサ47と、エンジン11の運転条件に基づいて燃料添加手段23を制御するとともに温度センサ47の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブ39を制御するコントローラ54とを備えた排ガス浄化装置である。
【0008】
本明細書において、排ガス中の酸素と燃料との混合割合を空燃比とし、エンジンにおいて混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応するときの酸素と燃料との混合割合を理論空燃比とするとき、空燃比と理論空燃比との比を空気過剰率λといい、上記「燃料リッチ状態の排ガス」は空気過剰率λが1未満の状態の排ガスをいう。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、燃料添加手段23が、改質触媒22より排ガス上流側の集合管部17bに設けられ改質触媒22より排ガス上流側の集合管部17bに燃料25を添加する燃料添加ノズル24と、この燃料添加ノズル24に燃料25を供給する燃料供給手段26とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に燃料添加手段が、エンジンの各気筒に燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズルと、これらの燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有し、複数の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、改質触媒22が、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点の排ガス浄化装置では、燃料添加手段から排気マニホルドに燃料を添加し、この燃料の一部が改質触媒を昇温させ、昇温した改質触媒で燃料の別の一部が水素に改質される。このとき排ガスがエンジンから排出された直後であり、比較的高温であるため、比較的少ない量の燃料で改質触媒を改質可能な温度に昇温させることができる。この結果、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒において燃料の一部を水素に効率良く改質できる。また改質触媒で水素に改質されずに改質触媒をそのまま通過した燃料の残部と、改質触媒で改質された水素とが、白金系触媒に流入すると、即ち燃料リッチ状態で水素が白金系触媒に流入すると、白金系触媒で排ガスに含まれるNOxと改質触媒で生成された水素とからアンモニアが生成される。このアンモニアを含む排ガスが選択還元型触媒に流入すると、この選択還元型触媒上でアンモニアとNOxが反応して、NOxの還元反応とアンモニアの酸化反応とが促進されるので、排ガス中のNOxが低減される。この結果、アンモニアの大気への放出を防止できるとともに、排ガス中のNOxを効率良く低減できる。更に排ガス温度が所定値以上になったことを温度センサが検出すると、コントローラはウェイストゲートバルブを開いて、排ガスの一部をバイパス管に流す。これにより、ターボ過給機のタービンハウジングに流入する排ガスの流量が少なくなって、タービン回転翼を駆動するためのエネルギが減少し、タービン回転翼の回転速度が過度に上昇することを抑制できるので、上記タービン回転翼の高速回転によるタービン回転翼の損傷を防止できる。
【0013】
本発明の第2の観点の排ガス浄化装置では、燃料添加ノズルから排気マニホルドに燃料を添加するので、燃料添加ノズルを新たに追加する必要があり、部品点数が増大するけれども、エンジンにおける燃料の燃焼に影響を与えずに、排気マニホルドに燃料を添加できる。
【0014】
本発明の第3の観点の排ガス浄化装置では、エンジンの各気筒に燃料噴射する複数の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するので、エンジンにおける燃料の燃焼に幾分影響を与えるけれども、燃料添加ノズルを新たに追加する必要がなく、部品点数の増大を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施形態の排ガス浄化装置を示す構成図である。
【図2】(a)は比較例1の排気管に設けた改質触媒に向けて燃料を添加したときの燃料流量の時間に対する変化を示す図であり、(b)は実施例1の排気マニホルドに設けた改質触媒に向けて燃料を添加したときの燃料流量の時間に対する変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド13を介して吸気管14が接続され、排気ポートには排気マニホルド17を介して排気管18が接続される。吸気マニホルド13と吸気管14により吸気通路12が構成され、排気マニホルド17と排気管18により排気通路16が構成される。また吸気通路12には、ターボ過給機19のコンプレッサハウジング19aと、ターボ過給機19により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ21とがそれぞれ設けられ、排気通路16にはターボ過給機19のタービンハウジング19bが設けられる。具体的には、コンプレッサハウジング19aは吸気管14の途中に設けられ、インタクーラ21はコンプレッサハウジング19aより吸気下流側の吸気管14の途中に設けられる。タービンハウジング19bは排気マニホルド17と排気管18との間に介装される。またコンプレッサハウジング19aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング19bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管14内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0017】
一方、排気マニホルド17は、一端が複数の排気ポートにそれぞれ接続された複数の枝管部17aと、これらの枝管部17aの他端が集合して形成された単一の集合管部17bとを有する。この集合管部17bの途中には、エンジン11の燃料(軽油)25を水素に改質する改質触媒22が設けられる。この改質触媒22は、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成される。具体的には、ロジウム等の金属を添加したゼオライトからなる改質触媒22は、ロジウム等の金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。またロジウム等の金属を添加したアルミナからなる改質触媒22は、ロジウム等の金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。
【0018】
一方、排気マニホルド17には燃料添加手段23が設けられる。この燃料添加手段23は、改質触媒22より排ガス上流側の集合管部17bに設けられた燃料添加ノズル24と、この燃料添加ノズル24に燃料25を供給する燃料供給手段26とを有する。燃料添加ノズル24は、改質触媒22より排ガス上流側の集合管部17bに燃料25を添加することにより改質触媒22に燃料25を供給するように構成される。また燃料供給手段26は、燃料添加ノズル24に先端が接続された燃料供給管27と、この燃料供給管27の基端に接続され燃料25が貯留された燃料タンク28と、この燃料タンク28内の燃料25を燃料添加ノズル24に圧送する燃料ポンプ29と、燃料添加ノズル24から噴射される燃料25の供給量(噴射量)を調整する燃料供給量調整弁31とを有する。上記燃料タンク28はエンジン11の燃料タンクと兼用できる。また上記燃料ポンプ29は燃料添加ノズル24と燃料タンク28との間の燃料供給管27に設けられ、燃料供給量調整弁31は燃料添加ノズル24と燃料ポンプ29との間の燃料供給管27に設けられる。更に燃料供給量調整弁31は、燃料供給管27に設けられ燃料添加ノズル24への燃料25の供給圧力を調整する燃料圧力調整弁32と、燃料添加ノズル24の基端に設けられ燃料添加ノズル24の基端を開閉する燃料用開閉弁33とからなる。
【0019】
燃料圧力調整弁32は第1〜第3ポート32a〜32cを有する三方弁であり、第1ポート32aは燃料ポンプ29の吐出口に接続され、第2ポート32bは燃料用開閉弁33に接続され、第3ポート32cは戻り管34を介して燃料タンク28に接続される。燃料圧力調整弁32を駆動すると、燃料ポンプ29により圧送された燃料25が第1ポート32aから燃料圧力調整弁32に流入し、この燃料圧力調整弁32で所定の圧力に調整された後、第2ポート32bから燃料用開閉弁33に圧送される。また燃料圧力調整弁32の駆動を停止すると、燃料ポンプ29により圧送された燃料25が第1ポート32aから燃料圧力調整弁32に流入した後、第3ポート32cから戻り管34を通って燃料タンク29に戻される。
【0020】
排気管18の途中、即ちターボ過給機19のタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18には、白金系触媒36が設けられる。この白金系触媒36は、排気管18より大径の第1ケース41に収容される。白金系触媒36はモノリス触媒であって、白金のみを添加するか、或いは白金と、パラジウム又はロジウムのいずれか一方又は双方からなる金属とを添加したゼオライト又はアルミナを、コージェライト製のハニカム担体又はメタル製のハニカム担体にコーティングして構成される。具体的には、白金等の金属を添加したゼオライトからなる白金系触媒36は、白金等の金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また白金等の金属を添加したアルミナからなる白金系触媒36は、白金等の金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。上記白金系触媒36は、燃料リッチ状態の排ガスに含まれるNOxと改質触媒22で生成された水素とからアンモニアを生成するように構成される。
【0021】
白金系触媒36より排ガス下流側の排気管18には選択還元型触媒37が設けられる。選択還元型触媒37は排気管18より大径の第2ケース42に収容される。選択還元型触媒37はモノリス触媒であって、鉄、バナジウム及び銅からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加したゼオライト又はアルミナを、コージェライト製のハニカム担体にコーティングして構成される。具体的には、鉄等の金属を添加したゼオライトからなる選択還元型触媒37は、鉄等の金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また鉄等の金属を添加したアルミナからなる選択還元型触媒37は、鉄等の金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。上記選択還元型触媒37はアンモニアを還元剤として排ガス中のNOxを還元するように構成される。
【0022】
一方、排気マニホルド17と排気管18とはバイパス管38によりターボ過給機19のタービンハウジング19bをバイパスして連通接続される。即ち、バイパス管38の一端は改質触媒22より排ガス下流側の排気マニホルド17の集合管部17bに接続され、バイパス管38の他端はタービンハウジング19bより排ガス下流側であって白金系触媒36より排ガス上流側の排気管18に接続される。このバイパス管38にはウェイストゲートバルブ39が設けられる。このバルブ39は、バイパス管38の開度を調整することにより、タービンハウジング19bに流す排ガスの流量を調整するように構成される。また排気マニホルド17と吸気管14とはEGR管43によりエンジン11をバイパスして連通接続される。即ち、このEGR管43は排気マニホルド17の枝管部17aから分岐し、インタクーラ21より吸気下流側の吸気管14に合流する。上記EGR管43にはこのEGR管43から吸気管14に還流される排ガス(EGRガス)の流量を調整するEGRバルブ44が設けられる。なお、図1の符号46はEGR管43を通る排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラである。
【0023】
一方、改質触媒22より排ガス下流側であってタービンハウジング19bより排ガス上流側の排気マニホルド17の集合管部17bには、タービンハウジング19bの入口温度を検出する温度センサ47が設けられる。またエンジン11にはこのエンジン11に吸入される空気量を検出するマスフローセンサ48が設けられ、改質触媒22より排ガス上流側の排気マニホルド17には排ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ49が設けられ、選択還元型触媒37より排ガス下流側の排気管18には排ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ51が設けられる。更にエンジン11の回転速度は回転センサ52により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ53により検出される。温度センサ47、マスフローセンサ48、O2センサ49、NOxセンサ51、回転センサ52及び負荷センサ53の各検出出力はコントローラ54の制御入力に接続され、コントローラ54の制御出力は、燃料ポンプ29、燃料圧力調整弁32、燃料用開閉弁33、ウェイストゲートバルブ39及びEGRバルブ44に接続される。またエンジン11にはメモリ56が接続される。このメモリ56には、タービンハウジング19bの入口温度や排ガス流量に応じたウェイストゲートバルブ39の開度が予め記憶される。またメモリ56には、吸入空気量、排ガス中の酸素濃度及びNOx濃度に応じた、燃料ポンプ29のオンオフ、燃料圧力調整弁32の開度及び燃料用開閉弁33の開閉間隔が予め記憶される。更にメモリ56には、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたEGR弁44の開度が予め記憶される。
【0024】
このように構成された排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の運転中に、排ガス中のNOx濃度が所定値以上になったことをNOxセンサ51等の検出出力に基づいてコントローラ54が判断する。具体的には、コントローラ54は、NOxセンサ51等の検出出力に基づいて燃料ポンプ29をオンし、マスフローセンサ48及びO2センサ49の各検出出力に基づいて燃料圧力調整弁32を所定の開度で開くとともに、燃料用開閉弁33の開閉間隔を所定の間隔に調整し、所定時間が経過した後に燃料圧力調整弁32を閉じ、燃料用開閉弁33の開閉を停止し、燃料ポンプ29をオフにする。これにより必要量の燃料25が燃料添加ノズル24から排気マニホルド17に添加される。この燃料添加ノズル24から添加された燃料25の一部が改質触媒22を昇温させ、所定温度(例えば、添加金属としてロジウム及びパラジウムを添加した改質触媒22の場合、600℃)に昇温した改質触媒22で燃料25の別の一部が水素に改質される。このとき排ガスがエンジン11から排出された直後であり、比較的高温であるため、比較的少ない量の燃料25で改質触媒22を改質可能な温度に昇温させることができる。この結果、燃料添加ノズル24から改質触媒22への比較的少ない量の燃料25の添加で、改質触媒22において燃料25の一部を水素に効率良く改質できる。
【0025】
改質触媒22で水素に改質されずに改質触媒22をそのまま通過した燃料25の残部と、改質触媒22で改質された水素とが、白金系触媒36に流入すると、即ち排ガスが燃料リッチ状態(排ガスの空気過剰率λが1未満の状態)で水素が白金系触媒36に流入すると、白金系触媒36において所定温度以上(例えば、300℃以上)で排ガスに含まれるNOxと改質触媒22で生成された水素とからアンモニアが生成される。そして、白金系触媒36で生成されたアンモニアを含む排ガスが選択還元型触媒37に流入すると、アンモニアが選択還元型触媒37に吸着される。この選択還元型触媒37に吸着されたアンモニアとNOxは所定温度以上(例えば、180℃以上)で反応して、NOxの還元反応とアンモニアの酸化反応とが促進されるので、排ガス中のNOxが低減される。この結果、アンモニアの大気への放出を防止できるとともに、排ガス中のNOxを効率良く低減できる。なお、選択還元型触媒37に吸着されたアンモニアがNOxの還元に全て消費されて無くなると、排ガス中のNOxが選択還元型触媒37を通過してしまう。このときNOxセンサ51がNOx濃度が所定値以上になったことを検出するので、コントローラ54は上記の動作と同様の動作を繰り返す。
【0026】
一方、排ガス温度が所定値以上になったことを温度センサ47が検出すると、コントローラ54は温度センサ47の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブ39を開き、排ガスの一部をバイパス管38に流す。これにより、ターボ過給機19のタービンハウジング19bに流入する排ガスの流量が少なくなって、タービン回転翼を駆動するためのエネルギが減少し、タービン回転翼の回転速度が過度に上昇することを抑制できるので、上記タービン回転翼の高速回転によるタービン回転翼の損傷を防止できる。
【0027】
なお、上記実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記実施の形態では、燃料添加手段が、改質触媒より排ガス上流側の集合管部に設けられ改質触媒より排ガス上流側の集合管部に燃料を添加する燃料添加ノズルと、この燃料添加ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有するように構成したが、燃料添加手段が、エンジンの各気筒に燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズルと、これらの燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有し、複数の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するように構成してもよい。この場合、複数の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するので、エンジンにおける燃料の燃焼に幾分影響を与えるけれども、燃料添加ノズルを新たに追加する必要がなく、部品点数の増大を回避できる。
【0028】
また、上記実施の形態では、NOxセンサ51を選択還元型触媒37より排ガス下流側の排気管18に設けたが、選択還元型触媒37より排ガス下流側の排気管18に設けられたNOxセンサ51に替えて或いはこのNOxセンサ51とともに、選択還元型触媒37より排ガス上流側であって白金系触媒36より排ガス下流側の排気管18に別のNOxセンサを設けてもよい。この場合、コントローラは、上記別のNOxセンサの検出出力に基づいて、燃料ポンプ29、燃料圧力調整弁32、燃料用開閉弁33、ウェイストゲートバルブ39及びEGRバルブ44を制御することにより、改質触媒22で生成された水素と排ガスに含まれるNOxとから白金系触媒36でアンモニアを生成し、白金系触媒36でアンモニアに改質されずに白金系触媒36をそのまま通過したNOxの残部を選択還元型触媒37で還元できる。換言すれば、上記別のNOxセンサで排ガス中のNOx濃度を検出することにより、白金系触媒36でアンモニアに改質されずに白金系触媒36をそのまま通過したNOxの濃度を選択還元型触媒37で還元可能な濃度に制限できる。この結果、NOxの大気中への排出を抑制できる。更に、白金系触媒36より排ガス上流側であってバイパス管38の他端の排気管18への接続部より排ガス下流側の排気管18に更に別のNOxセンサを設けてもよい。この場合、コントローラは、上記更に別のNOxセンサの検出出力に基づいて、燃料ポンプ29、燃料圧力調整弁32、燃料用開閉弁33、ウェイストゲートバルブ39及びEGRバルブ44を制御することにより、改質触媒22で生成された水素と排ガスに含まれるNOxとから白金系触媒36でアンモニアを生成し、白金系触媒36でアンモニアに改質されずに白金系触媒36をそのまま通過するNOxを無くすことができる。
【実施例】
【0029】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0030】
<実施例1>
図1に示すように、排気量が8000ccである直列6気筒のターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気マニホルド17の集合管部17bに改質触媒22を設けた。また改質触媒22より排ガス上流側の集合管部17bに、燃料(軽油)25を供給する燃料添加ノズル24を設け、この燃料添加ノズル24に燃料供給手段26が燃料25を供給するように構成した。ここで、改質触媒22は、ロジウムをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であった。一方、ターボ過給機19のコンプレッサハウジング19aを吸気管14の途中に設け、インタクーラ21をコンプレッサハウジング19aより吸気下流側の吸気管14の途中に設けた。またタービンハウジング19bを排気マニホルド17と排気管18との間に介装した。更に排気管18に排ガス上流側から順に白金系触媒36及び選択還元型触媒37を設けた。ここで、白金系触媒36は、白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であり、選択還元型触媒37は、鉄をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であった。この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0031】
<比較例1>
改質触媒を、ターボ過給機のタービンハウジングより排ガス下流側であって白金系触媒より排ガス上流側の排気管に設け、燃料添加ノズルを、ターボ過給機のタービンハウジングより排ガス下流側であって改質触媒より排ガス上流側の排気管に設けたこと以外は、実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0032】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置の燃料添加ノズルから燃料を添加して改質触媒に燃料を供給した。そして改質触媒で燃料が水素に改質された。このとき改質された水素が所定量になるように燃料添加ノズルからの燃料の添加量を制御した。具体的には、図2(a)及び(b)に示すように、改質触媒を昇温するための燃料の流量及び供給時間をそれぞれQ1及びT1とし、改質触媒で水素を生成(改質)するための燃料の流量及び供給時間をそれぞれQ2及びT2とした。そして、実施例1及び比較例1において、Q1、Q2及びT2をそれぞれ同一に保った状態で、T1を変えて、改質触媒で改質された水素が所定量になるように燃料添加ノズルからの燃料の添加量を制御した。その結果、排気マニホルドの集合管部における排ガス温度が500℃であり、白金系触媒より排ガス上流側の排ガス温度が300℃であったとき、比較例1の改質触媒を昇温するための燃料の供給時間T1を100%とすると、実施例1の改質触媒を昇温するための燃料の供給時間T1は35%と短くなった。この結果、比較例1の排ガス浄化装置より実施例1の排ガス浄化装置の方が、少ない燃料の添加で改質触媒において水素に改質できることが分かった。
【符号の説明】
【0033】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
17 排気マニホルド
17b 集合管部
18 排気管
19 ターボ過給機
19b タービンハウジング
22 改質触媒
23 燃料添加手段
24 燃料添加ノズル
25 燃料
26 燃料供給手段
36 白金系触媒
37 選択還元型触媒
38 バイパス管
39 ウェイストゲートバルブ
47 温度センサ
54 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機(19)付エンジン(11)の排気ポートに接続された排気マニホルド(17)の集合管部(17b)に設けられ前記エンジン(11)の燃料(25)を水素に改質する改質触媒(22)と、
前記排気マニホルド(17)に前記燃料(25)を添加することにより前記改質触媒(22)に前記燃料(25)を供給する燃料添加手段(23)と、
前記ターボ過給機(19)のタービンハウジング(19b)より排ガス下流側の排気管(18)に設けられ燃料リッチ状態の排ガスに含まれるNOxと前記改質触媒(22)で生成された水素とからアンモニアを生成する白金系触媒(36)と、
前記白金系触媒(36)より排ガス下流側の排気管(18)に設けられ前記アンモニアを還元剤として排ガス中のNOxを還元する選択還元型触媒(37)と、
前記タービンハウジング(19b)をバイパスするバイパス管(38)に設けられ前記バイパス管(38)の開度を調整して前記タービンハウジング(19b)に流す排ガスの流量を調整するウェイストゲートバルブ(39)と、
前記タービンハウジング(19b)の入口温度を検出する温度センサ(47)と、
前記エンジン(11)の運転条件に基づいて前記燃料添加手段(23)を制御するとともに前記温度センサ(47)の検出出力に基づいて前記ウェイストゲートバルブ(39)を制御するコントローラ(54)と
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記燃料添加手段(23)が、前記改質触媒(22)より排ガス上流側の集合管部(17b)に設けられ前記改質触媒(22)より排ガス上流側の集合管部(17b)に前記燃料(25)を添加する燃料添加ノズル(24)と、この燃料添加ノズル(24)に前記燃料(25)を供給する燃料供給手段(26)とを有する請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記燃料添加手段が、前記エンジンの各気筒に燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズルと、これらの燃料噴射ノズルに前記燃料を供給する燃料供給手段とを有し、前記複数の燃料噴射ノズルから前記エンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するように構成された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記改質触媒(22)が、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成された請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96346(P2013−96346A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241807(P2011−241807)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】