説明

排ガス浄化触媒の劣化検出方法及び排ガス浄化装置

【課題】貴金属排ガス浄化触媒を用いても排ガス浄化触媒の劣化を正確に検出できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る劣化検出方法は、強制リッチ制御と、該強制リッチ制御における酸素放出量の検知と、強制リーン制御と、該強制リーン制御における酸素吸収量の検知と、排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能の算出を包含している。そして、この劣化検出方法は、排ガス浄化触媒中の貴金属触媒の含有量を、排ガス浄化触媒の容量1Lあたり2g以下に設定することと、OSC材を含む担体への添加物としてバリウム化合物を用いること、強制リッチ制御における混合ガスの空燃比をA/F<14.7に制御し、強制リーン制御における混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御すること、算出した酸素吸蔵能に基づいて排ガス浄化触媒の劣化判定を行うこと、をさらに包含することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒の劣化検出方法および該劣化検出方法を実施する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)などの有害成分が含まれている。一般的に、これらの有害成分を排ガスから除去するための排ガス浄化触媒が内燃機関の排気通路に配置されている。この排ガス浄化触媒は、上記CO、HCの酸化とNOの還元とを同時に行う三元触媒が好ましく用いられる。かかる三元触媒としては、一般的にアルミナ(Al)等の金属酸化物からなる多孔質担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属触媒を担持させたものが広く知られている。かかる三元触媒は、内燃機関に供給される混合ガスの空燃比(A/F)が理論空燃比(ストイキ:A/F=14.7)近傍に設定されている際に、特に高い触媒機能を発揮できる。
【0003】
しかしながら、実際に内燃機関に供給される混合ガスの空燃比をストイキ近傍に維持し続けることは難しく、自動車の走行条件などによって混合ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ:A/F<14.7)になったり、酸素過剰(リーン:A/F>14.7)になったりする。そこで、近年では、上記混合ガスがリーンになった際に酸素を吸蔵し、該吸蔵した酸素をリッチになった際に放出する、いわゆる酸素吸蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有するOSC材を担体に含ませ、該OSC材を含む担体に上記三元触媒に担持させた排ガス浄化触媒が用いられている。担体としてOSC材を含む排ガス浄化触媒に混合ガスがリーンの場合の排ガスが供給されると、排ガス中の酸素がOSC材に吸収され、排ガス中のNOが還元される。一方、混合ガスがリッチの場合の排ガスが供給されると、上記OSC材に吸蔵されていた酸素が放出され、排ガス中のCOおよびHCが酸化される。
【0004】
上述のように、OSC材は排ガス浄化触媒による有害成分の浄化に貢献しており、OSC材の酸素吸蔵能の低下は排ガス浄化触媒による排ガス浄化能力に大きな影響を与える。したがって、かかるOSC材を含む排ガス浄化触媒を用いた排ガス浄化装置では、上記OSC材の酸素吸蔵能を検出する劣化検出方法が実施されており、かかる方法に基づいて得られたOSC材の酸素吸蔵能を排ガス浄化触媒の交換時期の目安にしている。
【0005】
例えば、特許文献1には、排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を演算し、触媒の劣化をより高い精度で検出することを目的とする触媒劣化検出装置が開示されている。かかる触媒劣化検出装置では、内燃機関に供給される混合ガスの空燃比を強制的にリーンに制御し(以下、「強制リーン制御」という)、排ガス浄化触媒に吸収された酸素量を検出するとともに、内燃機関に供給される混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御し(以下、「強制リッチ制御」という)、排ガス浄化触媒から放出された酸素量を検出する。そして、上記酸素放出量及び上記酸素吸収量に基づいて排ガス浄化触媒の酸素吸蔵量を演算し、かかる酸素吸蔵量に基づいて排ガス浄化触媒が劣化しているか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−8158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、製造コストの軽減や材料の安定的な供給を目的として、貴金属触媒の使用量を低減した低貴金属排ガス浄化触媒の開発が進められている。本発明者は、上記低貴金属排ガス浄化触媒に関する種々の検討を行った結果、低貴金属排ガス浄化触媒を用いた場合に、排ガス浄化触媒の劣化検出方法が正確に実施され難くなるという問題が生じることを見出した。この理由について以下で説明する。
【0008】
貴金属触媒を通常の割合で含んだ排ガス浄化触媒に空燃比がリーンの場合の排ガスを供給すると、該排ガスに含まれる酸素の大部分が排ガス浄化触媒で吸収される。これは、OSC材が酸素を吸収する際の仲介として貴金属触媒が機能するためである。したがって、通常の排ガス浄化触媒では、空燃比がリーンの場合の排ガスを排ガス浄化触媒に供給しても、該排ガス浄化触媒の下流で酸素がほとんど検出されない。すなわち、通常の排ガス浄化触媒に対して強制リーン制御を実行すると、OSC材が飽和状態になるまで排ガス浄化触媒の下流で酸素が検出されず、OSC材が飽和状態になった際に排ガス浄化触媒下流における酸素濃度が一気に上がる(急激にリーン側に傾く)(図7の(A)参照)。従来の劣化検出方法では、かかる排ガス浄化触媒下流における酸素濃度の急激な変化が生じた際に強制リーン制御を終了させ、該強制リーン制御が実行されていた間に排ガス浄化触媒へ吸収された酸素を酸素吸収量として検出し、検出した酸素吸収量に基づいてOSC材の酸素吸蔵能を算出していた。
【0009】
しかしながら、低貴金属排ガス浄化触媒では、酸素吸収の仲介を担う貴金属触媒の含有量が少ないため、OSC材への酸素吸収効率が低下する。この場合、排ガス浄化触媒への酸素供給量が酸素吸収効率を上回り、OSC材が飽和状態に達していないのに下流側へ酸素が流出し、排ガス浄化触媒の下流側の酸素濃度が緩やかに上昇する(リーン側からリッチ側への変化が緩やかになる)(図7の(B)参照)。上述のように、従来の劣化検出方法では、触媒下流の空燃比が急激にリーンに傾いたタイミングで強制リーン制御を終了させていたため、触媒下流の空燃比が緩やかに変化すると、強制リーン制御を正確なタイミングで終了させることができず、強制リーン制御が実行中の酸素吸収量を正確に検知できなくなる。
【0010】
上述の問題に対する解決策としては、例えば、酸素濃度の変化量に対する閾値を低い値に設定するといった方法などが挙げられる。しかしながら、酸素濃度を検知する際に含まれるノイズの影響を受けやすくなるため、低貴金属排ガス浄化触媒を用いた時に生じる問題を十分に解決できるとは言い難い。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決すべく創出されたものであり、低貴金属排ガス浄化触媒を用いても、適切なタイミングで強制リーン制御を終了させることができ、それによって排ガス浄化触媒の劣化を正確に検出できる方法、及び該劣化検出方法を好適に実施できる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を実現するべく、本発明によって以下の構成の排ガス浄化触媒の劣化検出方法が提供される。即ち、本発明に係る劣化検出方法は、貴金属触媒と、酸素吸蔵能を有するOSC材を含む担体とを備えた触媒層が基材上に形成されることによって構成されており、混合ガスが内燃機関で燃焼されることによって生じる排ガスを浄化する排ガス浄化触媒の劣化を検出する方法である。ここで開示される劣化検出方法は、
上記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リーン又はストイキの排ガスであるとき、上記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リッチの排ガスになるまでの間、上記混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御すること;
上記強制リッチ制御における上記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素放出量を検知すること;
上記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リッチの排ガスであるとき、上記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リーンの排ガス又は空燃比ストイキの排ガスになるまでの間、上記内燃機関に供給される混合ガスの空燃比を強制的にリーン又はストイキに制御すること;
上記強制リーン制御における上記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検知すること;
上記酸素放出量及び/又は上記酸素吸収量に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出すること;
を包含する。さらに、ここで開示される劣化検出方法は、
上記貴金属触媒の含有量を、排ガス浄化触媒の容量1Lあたり2g以下に設定すること;
上記OSC材を含む担体への添加物としてバリウム化合物を用いること;
上記強制リッチ制御における上記混合ガスの空燃比をA/F<14.7に制御し、上記強制リーン制御における上記混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御すること;及び
上記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能と所定の閾値とを対比し、該酸素吸蔵能が上記所定の閾値を下回った場合に上記排ガス浄化触媒が劣化していると判定すること;
をさらに包含することを特徴とする。
【0013】
なお、上記「空燃比リッチの排ガス」とは、空燃比がリッチ(A/F<14.7)の混合ガスを内燃機関にて燃焼させた際に、該内燃機関から排出される排ガスの空燃比と同等の空燃比を有する排ガスを指すものである。同様に、「空燃比ストイキの排ガス」とは空燃比がストイキの混合ガスを燃焼させた際に該内燃機関から排出される排ガスの空燃比と同様の空燃比を有する排ガスを指すものであり、「空燃比リーンの排ガス」とは空燃比がリーンの混合ガスを燃焼させた際に該内燃機関から排出される排ガスの空燃比と同様の空燃比を有する排ガスを指すものである。また、「排ガス空燃比」として規定する数値(A/F=x)は、その数値の空燃比の混合ガスを燃焼させた際に排出される排ガスの空燃比を指すものである。このことは、当業者であれば明確且つ容易に理解できる技術的事項である。なお、説明の便宜上、本明細書における以下の説明では、上記「空燃比リッチの排ガス」を「リッチ排ガス」、「空燃比ストイキの排ガス」を「ストイキ排ガス」、「空燃比リーンの排ガス」を「リーン排ガス」と適宜略称する。
【0014】
上記構成の劣化検出方法では、OSC材を含む担体への添加物としてバリウム化合物を用いており、且つ、強制リーン制御における混合ガスの空燃比を14.7±0.05の範囲内の値に制御することを特徴としている。上記バリウム化合物は、弱リーン排ガス(A/F=14.7±0.05)が供給された際に高い酸素吸収能を発揮するという特性を有している。このため、貴金属使用量2g/L以下という低貴金属排ガス浄化触媒を用いることにより低下した酸素吸収速度を、上記バリウム化合物の特性によって補うことができる。したがって、上記構成の劣化検出方法によれば、低貴金属排ガス浄化触媒を用いた場合でも、強制リーン制御中に排ガス浄化触媒下流へ酸素が流出することを防止し、適切なタイミングで強制リーン制御を終了させることができる。このため、正確な酸素急流量に基づいて排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出でき、該算出された酸素吸蔵能に基づいて排ガス浄化触媒の劣化を検出できる。
【0015】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、上記酸素吸蔵能の算出において、上記酸素吸収量のみに基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出することを特徴とする。
上述のように、OSC材を含む担体にバリウム化合物を添加した排ガス浄化触媒(以下、適宜「Ba添加排ガス浄化触媒」と称する。)に弱リーン排ガスを供給すると、排ガス浄化触媒の酸素吸収量が向上する。しかし、弱リーン排ガス供給時にBa添加排ガス浄化触媒の酸素吸収量が向上するのは、バリウム化合物へ酸素が吸収されているためであり、OSC材への酸素吸蔵量が向上しているわけではない。このため、酸素濃度の低い弱リーン排ガスが供給されることにより、OSC材に吸収される酸素量が少なくなり酸素放出量が低下する可能性がある。したがって、Ba添加排ガス浄化触媒に弱リーン排ガスを供給する場合には、酸素吸収量のみに基づいて酸素吸蔵能を算出する方がより正確に排ガス浄化触媒の劣化を検知できる。
【0016】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、上記バリウム化合物として酢酸バリウムを用いることを特徴とする。
酢酸バリウムを添加した排ガス浄化触媒は、他のバリウム化合物を添加した排ガス浄化触媒よりも、弱リーン排ガスが供給された際の酸素吸収量が多い。このため、バリウム化合物として酢酸バリウムを用いることによって、より正確に排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出することができる。
【0017】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、貴金属触媒として、少なくともパラジウムとロジウムとを用いることを特徴とする。
上記パラジウムとロジウムを貴金属触媒として含む三元触媒は、高い酸素吸蔵能を有する排ガス浄化触媒において高い触媒効果を発揮することができる。
【0018】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、OSC材として、セリア−ジルコニア複合酸化物を用いることを特徴とする。
セリア−ジルコニア複合酸化物は、高い酸素吸蔵能を有しており、OSC材として好適である。
【0019】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、バリウム化合物の添加量を、OSC材100質量部に対して5質量部〜10質量部に設定することを特徴とする。
バリウム化合物の添加量が5質量部以下である場合、弱リーン排ガスが供給されても、好適な酸素吸収量が得られない虞がある。一方、バリウム化合物の添加量が10質量部以上である場合、担体や貴金属触媒の表面がバリウム化合物で覆われ、排ガス浄化触媒の触媒機能が低下する虞がある。したがって、バリウム化合物の添加量を上述の数値範囲内に設定することよって、弱リーン排ガス供給時に好適な酸素吸収量が得ることができ、且つ、排ガス浄化触媒の触媒機能を高い状態で維持することができる。
【0020】
ここで開示される劣化検出方法の好ましい一態様では、上記触媒層は、上記OSC材を含む担体からなるOSC領域と、上記OSC材以外の担体材料で構成された担体からなる非OSC領域とを備えていることを特徴とする。
上記構成の劣化検出方法によれば、OSC材以外の担体材料を含む担体からなる非OSC領域を備えている。かかる非OSC領域に使用する担体材料は、酸素吸蔵能を考慮する必要がなく、比表面積の大きな担体材料を選択することができる。これによって、より高い触媒機能を有する排ガス浄化触媒を得ることができる。かかる比表面積の大きな担体材料としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化ケイ素(シリカ)を主成分とする複合酸化物のうちの少なくとも一種を好ましく用いることができる。
【0021】
また、上記触媒層が上記OSC領域と上記非OSC領域とを備える態様において、上記OSC領域への上記バリウム化合物の添加量を、上記OSC材100質量部に対して5質量部〜10質量部に設定し、上記非OSC領域への上記バリウム化合物の添加量を、上記OSC材以外の担体材料100質量部に対して10質量部〜15質量部に設定するとより好ましい。
上記構成の劣化検出方法では、非OSC領域にもバリウム化合物を添加しているため、強制リーン制御(弱リーン排ガス供給)における酸素吸収量をさらに向上させることができる。また、このときのバリウム化合物は、上記OSC領域へのバリウム化合物の添加量を設定する場合と同じ理由により、10質量部〜15質量部に設定するとよい。
【0022】
また、本発明は、他の側面として、上記内燃機関の排気系に設けられ、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置を提供する。この排ガス浄化装置は、
上記排気系に配置されており、貴金属触媒と、酸素吸蔵能を有するOSC材を含む担体とを備えた触媒層が基材上に形成されることによって構成されている排ガス浄化触媒と、
上記排気系における上記排ガス浄化触媒の下流に配置されており、上記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比を検出する触媒下流センサと、
上記触媒下流センサで検出された上記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比が送信されており、該送信された排ガス空燃比に基づいて上記内燃機関に供給する混合ガスの空燃比を調整する制御部と、
を備えている。さらに、ここで開示される排ガス浄化装置の制御部は、
上記触媒下流センサにおいて空燃比リーン又はストイキの排ガスが検出されているとき、上記触媒下流センサにおいて空燃比リッチの排ガスが検出されるまでの間、上記混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御すること;
上記強制リッチ制御において、上記触媒下流センサで検出された排ガス空燃比に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素放出量を検知すること;
上記触媒下流センサにおいて空燃比リッチの排ガスが検出されているとき、上記触媒下流センサにおいて空燃比リーン又はストイキの排ガスが検出されるまでの間、上記混合ガスの空燃比を強制的にリーン又はストイキに制御すること;
上記強制リーン制御において、上記触媒下流センサで検出された排ガス空燃比に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検知すること;
上記酸素放出量及び/又は上記酸素吸収量に基づいて上記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出すること;
が実行できるように構成されている。そして、ここで開示される排ガス浄化装置は、
上記排ガス浄化触媒の容量1Lあたりに、上記貴金属触媒が2g以下の割合で含まれていること;
上記OSC材を含む担体にバリウム化合物が添加されていること;
上記制御部が、上記強制リッチ制御における上記混合ガスの空燃比をA/F<14.7に制御し、上記強制リーン制御における上記混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御すること;及び
上記制御部が、上記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能と所定の閾値とを対比し、該酸素吸蔵能が上記所定の閾値を下回った場合に上記排ガス浄化触媒が劣化していると判定すること;
をさらに包含することを特徴としている。
【0023】
上記構成の排ガス浄化装置は、上述した劣化検出方法を好適に実施することができる。すなわち、上記構成の排ガス浄化装置は、排ガス浄化触媒の劣化を正確に検出できるため、走行中に排ガス浄化触媒が継続して使用されるような車両(例えば自動車)に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置を模式的に示した図。
【図2】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス浄化触媒を模式的に示した図。
【図3】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス浄化触媒の断面構成を拡大し、模式的に示した図。
【図4】本発明に係る劣化検出方法の一例を示したフローチャート。
【図5】実施例にて作製した各サンプルの酸素吸収量を示したグラフ。
【図6】実施例にて作製した各サンプルの酸素放出量を示したグラフ。
【図7】低貴金属排ガス浄化触媒(A)と通常の排ガス浄化触媒(B)の下流における空燃比を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0026】
<排ガス浄化装置>
ここでは、先ず、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。ここで開示される排ガス浄化装置は、内燃機関の排気系に設けられている。以下、図1を参照しながら内燃機関および排ガス浄化装置を説明する。図1は、内燃機関1と、該内燃機関1の排気系に設けられた排ガス浄化装置100を模式的に示す図である。
【0027】
A.内燃機関
内燃機関には、酸素と燃料ガスとを含む混合ガスが供給される。内燃機関は、この混合ガスを燃焼させ、燃焼エネルギーを力学的エネルギーに変換する。このとき、燃焼後の混合ガスが排ガスとなって後述の排気系に排出される。図1に示す構成の内燃機関1は、複数の燃焼室2と、燃焼室2のそれぞれに燃料を噴射する燃料噴射弁3とを備えている。各々の燃料噴射弁3は、燃料供給管21を介してコモンレール22に接続されている。コモンレール22は、燃料ポンプ23を介して燃料タンク24に接続されている。燃料ポンプ23は、上記コモンレール22、燃料供給管21、燃料噴射弁3を介して、燃料タンク24内の燃料を燃焼室2へ供給する。燃料ポンプ23の構成は、本発明を特に限定するものではなく、例えば、吐出量可変な電子制御式の燃料ポンプを用いることができる。
【0028】
また、上記燃焼室2には、それぞれ吸気マニホルド4及び排気マニホルド5が連通している。以下の説明では、吸気マニホルド4よりも上流側に設けられ、内燃機関1に空気(酸素)を供給する系を「吸気系」と称し、排気マニホルド5よりも下流側に設けられ、内燃機関1で生じた排ガスを外部に排出する系を「排気系」と称する。なお、上記吸気系と上記排気系とは、排ガス再循環通路18を介して互いに連結されており、排気系に排出された排ガスを再び燃焼室2内に供給することもできる。排ガス再循環通路18には、電子制御式の制御弁19が配置されており、かかる制御弁19の開閉により再循環させる排ガスを調整できる。また、排ガス再循環通路18の周りには、排ガス再循環通路18内を流れるガスを冷却するための冷却装置20が配置されている。
【0029】
A−1.吸気系
上記内燃機関1の吸気系について説明する。上記内燃機関1を吸気系に連通させる吸気マニホルド5には吸気ダクト6が接続されている。当該吸気ダクト6は、排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aに接続されており、コンプレッサ7aにはエアクリーナ9が接続されている。エアクリーナ9には、内燃機関の外部から吸入する空気の温度(吸気温)を検出する吸気温センサ9aが取り付けられている。また、エアクリーナ9の下流側(内燃機関1側)には、エアフロメータ8が配置されている。エアフロメータ8は、吸気ダクト6へ供給される吸入空気量Gaを検出するセンサである。吸気ダクト6におけるエアフロメータ8のさらに下流側には、スロットル弁10が設けられている。このスロットル弁10を開閉することで内燃機関1に供給される空気の量を調整できる。また、スロットル弁10の近傍には、スロットル弁10の開度を検出するスロットルセンサ(図示省略)が配置されているとよい。また、吸気ダクト6の周りには、吸気ダクト6内を流れる空気を冷却するための冷却装置11が配置されていると好ましい。
【0030】
A−2.排気系
次に、内燃機関1の排気系について説明する。上記内燃機関1を排気系に連通させる排気マニホルド5は、排気ターボチャージャ7の排気タービン7bに接続されている。該排気タービン7bには、排ガスが流通する排気通路12が接続されている。なお、排気系(例えば、排気マニホルド5)には、排ガス中に燃料Fを噴射する排気系燃料噴射弁13が設けられていてもよい。この排気系燃料噴射弁13は、排ガス中に燃料Fを噴射することで、後述の排ガス浄化触媒40に供給される排ガスの空燃比(A/F)を調整することができる。
【0031】
B.排ガス浄化装置
ここで開示される排ガス浄化装置は、上記内燃機関の排気系に設けられている。排ガス浄化装置は、排ガス浄化触媒と、触媒下流センサと、制御部とを備え、内燃機関から排出される排ガスに含まれる有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO))を浄化する。また、図1に示す構成の排ガス浄化装置100は、触媒上流センサ14も備えている。
【0032】
C.排ガス浄化触媒
排ガス浄化触媒は、内燃機関の排気系に配置されている。図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、排ガス浄化触媒40は、上記排気系の排気通路12に配置されている。
この排ガス浄化触媒は、基材上に触媒層が形成されることによって構成されており、該触媒層の有する触媒機能によって排ガスに含まれる有害成分を除去する。かかる排ガス浄化触媒の詳細について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は排ガス浄化触媒40を模式的に示した斜視図であり、図3は排ガス浄化触媒40の断面構成の一例を模式的に示した拡大図である。
【0033】
C−1.基材
ここで開示される排ガス浄化触媒の基材には、従来公知の排ガス浄化触媒の基材と同じものを用いることができる。例えば、基材は、多孔質構造を有した耐熱性素材で構成されていると好ましい。かかる耐熱性素材としては、コージェライト、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素、ステンレス鋼などの耐熱性金属やその合金などが挙げられる。また、基材は、ハニカム構造、フォーム形状、ペレット形状などを有していると好ましい。なお、基材全体の外形は、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状などを採用することができる。図2に示す構成の排ガス浄化触媒40では、基材42としてハニカム構造を有した筒状部材が採用されている。このハニカム構造の基材42は、排ガスが流れる方向である筒軸方向(図2における矢印の方向)に沿って複数の流路48を有している。また、基材42の容量(基材42内の流路48の体積)は、0.1L以上(好ましくは0.5L以上)であり、5L以下(好ましくは3L以下、より好ましくは2L以下)であるとよい。
【0034】
C−2.触媒層
ここで開示される排ガス浄化触媒では、上記基材上に触媒層が形成されている。この触媒層は、貴金属触媒と担体とを備えている。図3に示す構成の排ガス浄化触媒40では、触媒層43が基材42の表面に形成されている。排ガス浄化触媒40に供給された排ガスは、上記基材42の流路48内を流動し、触媒層43に接触することによって有害成分を浄化される。例えば、排ガスに含まれるCOやHCは触媒層43によって酸化され水(HO)や二酸化炭素(CO)などに変換(浄化)され、NOは触媒層43によって還元され窒素(N)に変換(浄化)される。
触媒層には、貴金属触媒と、該貴金属触媒を担持する担体が含まれている。また、ここで開示される排ガス浄化触媒では、上記担体にOSC材が含まれており、該OSC材を含む担体(以下、「OSC担体」という。)にバリウム化合物が添加されている。以下、上記触媒層に含まれる材料について説明する。
【0035】
C−2−1.貴金属触媒
上記触媒層に含まれる貴金属触媒は、排ガスに含まれる有害成分に対する触媒機能を有していればよく、種々の貴金属元素からなる貴金属粒子を用いることができる。貴金属触媒に用いられ得る金属としては、例えば、白金族に含まれる何れかの金属、或いは該白金族に含まれる何れかの金属を主体とする合金などを好ましく用いることができる。上記白金族に含まれる金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)が挙げられる。
また、貴金属触媒として、少なくともパラジウムとロジウムとを含む三元触媒が用いられているとより好ましい。三元触媒は、ストイキ排ガスが供給された際に、排ガス中のCO、HC、NOを同時に浄化することができる。さらに、このような三元触媒は、高い酸素吸蔵能を有する排ガス浄化触媒において高い触媒効果を発揮することができる。なお、上記三元触媒は、パラジウムとロジウムの他の触媒金属(例えば白金)を含んでいてもよい。
【0036】
また、ここで開示される排ガス浄化装置の排ガス浄化触媒は、従来の排ガス浄化触媒に比べて貴金属触媒の含有割合が少ない低貴金属排ガス浄化触媒である。具体的には、ここで開示される排ガス浄化触媒は、排ガス浄化触媒の容量(上記基材の容量)1Lあたりに上記貴金属触媒が2g以下(例えば、0.5g〜2.0g、好ましくは0.5g〜1.0g)の割合で含まれている。一般的な排ガス浄化触媒における貴金属触媒の含有量は、排ガス浄化触媒の容量1Lあたりに2.0gよりも大きく、且つ、10gよりも少なくなるように設定されており、ここで開示される排ガス浄化触媒は、従来の排ガス浄化触媒に比べて貴金属触媒の含有量が大幅に低減されている。従って、ここで開示される排ガス浄化装置では、貴金属触媒の含有量を低減することによって製造コストの削減や材料の安定的供給に貢献している。
【0037】
C−2−2.担体
上記触媒層は、貴金属触媒を担体に担持させることによって形成されている。ここで開示される排ガス浄化触媒の触媒層は、酸素吸蔵能を有するOSC材を含む担体(OSC担体)を備えている。OSC担体は、OSC材のみから構成されていてもよいし、他の担体材料(非OSC材)を含んでいてもよい。
【0038】
C−2−2−1.OSC材料
上記OSC担体に含まれるOSC材は、リーン排ガスが供給された際に酸素を吸収し、該吸収した酸素をリッチ排ガスが供給された際に放出する酸素吸蔵能を有している。かかるOSC材としては、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア−ジルコニア複合酸化物(CeO−ZrO複合酸化物))などが挙げられる。上述したOSC材の中でも、セリア−ジルコニア複合酸化物は、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ、比較的安価であるため特に好ましく用いることができる。このセリア−ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、CeO/ZrO=0.25〜0.75(好ましくは0.3〜0.6、より好ましくは0.5程度)であるとよい。
【0039】
OSC材の形状(外形)は特に制限されないが、比表面積が大きなOSC担体を構成できるような形状を有しているとより好ましい。例えば、OSC担体の比表面積(BET法により測定される比表面積。以下同じ。)は、20m/g以上80m/g以下が好ましく、40m/g以上60m/g以下がより好ましい。このような比表面積のOSC担体を実現するために好適なOSC材の具体的な形状としては、粉末状(粒子状)が挙げられる。より好適な比表面積を有するOSC担体を実現するために、粉末状のOSC材の平均粒径は、5nm以上20nm以下、好ましくは7nm以上12nm以下に設定するとよい。上記OSC材の粒子の平均粒径が大きすぎる(または比表面積が小さすぎる)場合は、OSC担体に貴金属触媒を担持させる際に貴金属の分散性が低下する傾向があり、触媒の浄化性能が低下するため好ましくない。また、上記OSC担体を構成する粒子の粒径が小さすぎる(または比表面積が大きすぎる)場合は、上記OSC担体自体の耐熱性が低下し、触媒の耐熱特性が低下するため好ましくない。
【0040】
C−2−2−2.その他の担体材料(非OSC材)
また、ここで開示される排ガス浄化触媒では、上記OSC担体にOSC材以外の担体材料(非OSC材)が含まれていてもよい。かかる非OSC材としては、多孔質であり、且つ、耐熱性に優れた金属酸化物が好ましく用いられる。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO)、酸化ケイ素(シリカ:SiO)、或いはこれらのうちの2種又は3種の金属酸化物を主成分とした複合酸化物などが好ましい。これらの中でも、アルミナ、ジルコニアは、上述の担体材料として好ましい条件を満たしており、且つ、安価であるため特に好ましく用いることができる。これらの非OSC材を含んだOSC担体は、比表面積が広く、且つ、安価に作製できるため好ましい。
【0041】
C−2−3.バリウム化合物
上述したように、ここで開示される排ガス浄化装置では、OSC担体にバリウム(Ba)化合物が添加されていることを特徴の一つとしている。このバリウム化合物としては、A/F=14.7近傍(例えば、A/F=14.7±0.05)という弱リーン排ガスに曝された際に高い酸素吸収能を発揮し、排ガス浄化触媒全体の酸素吸収量を向上できるものが用いられる。かかるバリウム化合物としては、例えば、酢酸バリウム((CHCOO)Ba)、硫酸バリウム(BaSO)、硝酸バリウム((BaNO)、シュウ酸バリウム(BaC・2HO)などが挙げられる。これらの中でも、酢酸バリウムは、弱リーン排ガスに曝された際、特に高い酸素吸収能を発揮できるため好ましい。
また、上記バリウム化合物の含有量は、OSC担体に含まれるOSC材100質量部に対して5質量部〜10質量部(好ましくは6質量部〜8質量部)に設定されていると好ましい。バリウム化合物の添加量が5質量部以下である場合、弱リーン排ガスが供給されても、好適な酸素吸収量が得られない虞がある。一方、バリウム化合物の添加量が10質量部以上である場合、担体や貴金属触媒の表面がバリウム化合物で覆われることにより、排ガス浄化触媒の触媒機能が低下する虞がある。したがって、バリウム化合物の添加量を上述の数値範囲内に設定することよって、弱リーン排ガス供給時に好適な酸素吸収量が得ることができ、且つ、触媒機能が高い状態で維持された排ガス浄化触媒を作製することができる。また、後に詳しく説明するが、バリウム化合物は溶液状態でOSC担体に添加されるとより好ましい。
【0042】
また、上記バリウム化合物は、貴金属触媒であるPdのHC被毒を抑制するという効果も有している。したがって、貴金属触媒としてPdを用いている場合、バリウム化合物がOSC担体に添加されているため、HC被毒によるPdの劣化を防止し、ガス浄化触媒の触媒機能を高い状態で維持できる。
【0043】
本発明を限定するものではないが、バリウム化合物をOSC担体に添加する方法は例えば、以下のような手順で行うことができる。まず、バリウム化合物(例えば酢酸バリウム)を溶媒(例えば水)に溶かしたバリウム溶液を調製する。このバリウム水溶液を、OSC材を分散させたスラリーに添加して攪拌した後に乾燥する。得られた粉末を高温(例えば400℃〜600℃程度)条件下にて所定時間保つことにより、バリウム化合物が添加されたOSC担体が得られる。このように、バリウム化合物を水に溶かして溶液状で添加することにより、粒状で添加する場合に比べて、OSC担体全体にバリウム化合物を均一に分散させることができる。また、上述したような、バリウム化合物の添加は、OSC担体に貴金属触媒を担持させる前に行ってもよく、OSC担体に貴金属触媒を担持させた後に行ってもよい。好ましくは、貴金属触媒を担持させた後にバリウム化合物の添加を行うとよい。これによって、各々の材料が均一に分散されて、排ガス浄化触媒の排ガス浄化能力をより好適に発揮できるようになる。
【0044】
C−2−4.その他添加物
また、OSC担体には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。OSC担体に添加し得る物質としては、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが用いられ得る。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。また、これら副成分の含有割合は、OSC材100質量部に対して10質量部〜20質量部(例えば、ランタンおよびイットリウムをそれぞれ5質量部ずつ)に設定するとより好ましい。
【0045】
C−2−5.非OSC領域
また、排ガス浄化触媒の触媒層は、複数の領域に分割され、各々の領域において異なった材料で構成されていてもよい。この場合、分割された領域の少なくとも一つがOSC担体で構成されていればよい。
上記触媒層が複数の領域に分割された態様の一例として、触媒層が、上記OSC担体からなるOSC領域と、非OSC材で構成された担体(非OSC担体)からなる非OSC領域とを備えた態様が挙げられる。このような態様を採用した場合、非OSC領域に使用する担体材料は、酸素吸蔵能を考慮する必要がなく、比表面積の大きな担体材料を選択することができる。これによって、より高い触媒機能を有する排ガス浄化触媒を得ることができる。具体的には、非OSC担体の構成材料は、上記「C−2−2−2.その他の担体材料(非OSC材)」の項に記載したような材料を好ましく用いることができる。これらの中でも、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化ケイ素(シリカ)などが好適である。また、上記OSC担体と同様に、非OSC担体にも安定化剤(ランタン、イットリウム等の希土類元素)が含まれていると好ましい。
【0046】
また、上記非OSC領域を構成する非OSC担体にも、バリウム化合物が添加されていてもよい。この場合、強制リーン制御(弱リーン排ガス供給)における酸素吸収量をさらに向上させることができる。また、このときのバリウム化合物は、上記OSC領域へのバリウム化合物の添加量を設定する場合と同じ理由により、10質量部〜15質量部に設定するとよい。
【0047】
触媒層がOSC領域と非OSC領域とを備えた排ガス浄化触媒の一例を図3に模式的に示す。図3に示す構成の排ガス浄化触媒40では、基材42上に、OSC領域44と非OSC領域45とからなる触媒層43が形成されている。OSC領域44の触媒層43は、OSC担体で構成されており、該OSC担体にバリウム化合物が添加されている。一方、非OSC領域45の触媒層43は、非OSC担体で構成されている。
また、OSC領域と非OSC領域とを設ける場合、排ガスが非OSC領域よりも先にOSC領域に接触するように、OSC領域と非OSC領域の位置を調整するとよい。これによって、排ガス中の酸素をOSC領域において優先的に吸収することができるため、排ガス浄化触媒全体として高い酸素吸収能を発揮することができる。図3に示す構成の排ガス浄化触媒40では、排ガス浄化触媒40の流路48における上流側(排ガスの流れる方向における上流側)にOSC領域44が形成されており、流路48における下流側に非OSC領域45が形成されている。これによって、排ガス浄化触媒40に供給された排ガスが、非OSC領域45よりも先にOSC領域44に接触する。
【0048】
以上、ここで開示される排ガス浄化装置の排ガス浄化触媒について説明した。次に、ここで開示される排ガス浄化装置が備える他の構成について説明する。
【0049】
D.触媒下流センサ
ここで開示される排ガス浄化装置では、排気系における排ガス浄化触媒の下流に触媒下流センサが配置されている。図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、排気通路12における排ガス浄化触媒40の下流に触媒下流センサ15が配置されている。
触媒下流センサは、排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比を検出できればよく、その具体的な構成は本発明を特に限定するものではない。例えば、触媒下流センサとしては、排ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサを用いることができる。かかる酸素センサの一例として、リッチ排ガスに接触した際に1Vの電位を生じ、リーン排ガスに接触した際に0Vの電位を生じる0V−1V酸素センサが挙げられる。かかる0V−1V酸素センサを用いた場合、検出される電位の変動によって排ガス浄化触媒下流の排ガスの空燃比の変動を検出することができる。また、触媒下流センサの他の例としては、A/Fセンサ(空燃比センサ)が挙げられる。A/Fセンサは、排ガス中の酸素濃度を検知し、該酸素濃度に基づいて排ガス空燃比を検出する。
【0050】
E.触媒上流センサ
ここで開示される排ガス浄化装置は、排気系における排ガス浄化触媒の上流に触媒上流センサを備えていてもよい。図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、排気通路12における排ガス浄化触媒40の上流に触媒上流センサ14が配置されている。
この触媒上流センサは、排ガス浄化触媒の上流の排ガス空燃比を検出できる。かかる触媒上流センサによって検出された排ガス浄化触媒上流の排ガス空燃比を、所定の計算式に導入することによって内燃機関1に供給された混合ガスの空燃比を推定することができる。例えば、後述の制御部は、触媒上流センサにおいて検出された排ガス浄化触媒上流の排ガス空燃比は、後述の制御部に送信させ、該制御部が触媒上流の排ガス空燃比に基づいて内燃機関に供給された混合ガスの空燃比を算出する。
【0051】
F.制御部(ECU)
次に、ここで開示される排ガス浄化装置の制御部(ECU)について説明する。制御部は、主としてデジタルコンピュータから構成されており、内燃機関及び排ガス浄化装置の稼働における制御装置として機能する。制御部は、例えば、読み込み専用の記憶装置であるROM、読み書き可能な記憶装置であるRAM、任意の演算や判別を行うCPUを有している。
図1に示す構成の制御部30には入力ポートが設けられており、内燃機関1や排ガス浄化触媒40の各部位に設置されているセンサと電気的に接続されている。これによって、各々のセンサで検知した情報が、上記入力ポートを経て電気信号としてROM、RAM、CPUに伝達される。また、制御部30には出力ポートも設けられている。制御部30は、該出力ポートを介して、内燃機関1の各部位に接続されており、制御信号を送信することによって各部材の稼働を制御している。
【0052】
制御部は、触媒上流センサで検知された排ガス浄化触媒上流の排ガスの酸素濃度に基づいて内燃機関1で燃焼された混合ガスの空燃比(A/F)を推定できる。また、制御部30は、触媒下流センサ15で検知された排ガス浄化触媒40下流の排ガスの酸素濃度に基づいて、排ガス浄化触媒40を通過した排ガスがリッチ排ガスであるか、リーン排ガスであるかを検知できる。
【0053】
また、上述したように、制御部は、上記触媒下流センサ及び/又は触媒上流センサの検出結果に基づいて、内燃機関に供給される混合ガスの空燃比を調整できる。
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、制御部30は、触媒下流センサ15及び/又は触媒上流センサ14で検知された排ガス空燃比に基づいて、内燃機関1に供給されている混合ガスの空燃比を算出する。そして、該算出した空燃比と、目的とする空燃比とに基づいて制御信号を作成し、該制御信号を内燃機関1の各部材に送信する。例えば、上記制御部30は、燃料ポンプ23や燃料噴射弁3に電気的に接続されており、燃料ポンプ23の稼働や燃料噴射弁3の開閉のタイミングを制御することによって、内燃機関1に供給される燃料を調整することができる。一方、制御部30は、吸気系における吸気ダクト6内に設けられたスロットル弁10にも接続されており、スロットル弁10の開閉タイミングを制御することによって内燃機関1に供給される空気の量を調整することができる。制御部30は、上記燃料ポンプ23や燃料噴射弁3の制御による燃料供給量と、スロットル弁10の制御による空気供給量とを調整することによって、内燃機関1に供給される混合ガスの空燃比を調整する。
なお、内燃機関1が通常運転している場合には、制御部30は、内燃機関1に供給される混合ガスの空燃比をストイキ(A/F=14.7)近傍に調整している。混合ガスの空燃比がストイキ近傍に調整されている場合、内燃機関1における燃料燃焼効率が最も良く、排ガス浄化触媒40における排ガス浄化機能も最も好適に発揮される。
【0054】
<触媒劣化検知方法>
上述のように、内燃機関が通常運転している場合、制御部は、混合ガスの空燃比をストイキ近傍に調整する。一方、ここで開示される排ガス浄化装置の制御部は、排ガス浄化触媒の劣化を検知するために、混合ガスの空燃比を強制的にリッチ側に調整する強制リッチ制御と、混合ガスの空燃比を強制的にリーン側に調整する強制リーン制御とが実行できるように構成されている。以下、上記強制リッチ制御及び上記強制リーン制御を含む劣化検知方法について説明する。
【0055】
ここで開示される劣化検出方法は、「a.強制リッチ制御」、「b.酸素放出量検知」、「c.強制リーン制御」、「d.酸素吸収量検知」、「e.酸素吸蔵能算出」、「f.劣化判定」を実施することによって排ガス浄化触媒の劣化を検知する。また、ここで開示される排ガス浄化装置の制御部は、上述の各制御が実施できるように構成されている。以下、上述した各制御の詳細について説明する。
【0056】
a.強制リッチ制御
強制リッチ制御では、混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御し、リッチ排ガスを排ガス浄化触媒に供給する。図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リッチ制御が実行されると、制御部30において強制リッチ制御信号が作成され、該強制リッチ制御信号が燃料ポンプ23、燃料噴射弁3、スロットル弁10に送信される。強制リッチ制御信号を受信した燃料ポンプ23は、燃料タンク24から燃料噴射弁3へ供給する燃料を増加させる。そして、燃料噴射弁3の開度が大きくなり、燃料室2内へ供給される燃料が増加する。一方、強制リッチ制御信号を受信することによって、スロットル弁10の開度が小さくなり、燃料室2内へ供給される空気の量が少なくなる。これによって、内燃機関1に供給される混合ガスの空燃比がリッチ(燃料過多)になる。
また、この強制リッチ制御における混合ガスの空燃比は、A/F<14.7(例えば13.0<A/F<14.7、好ましくは13.5<A/F<14.7)の範囲内の値(例えば、A/F=14.0)に設定するとよい。かかる数値範囲内の空燃比で強制リッチ制御を実施することによって、排ガス浄化触媒の酸素放出量を好適に検出できる。
【0057】
上記強制リッチ制御は、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリーン排ガス又はストイキ排ガスであるとき、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリッチ排ガスになるまでの間実行される。具体的には、強制リッチ制御の開始条件は、排ガス浄化触媒の下流でリーン排ガス(若しくはストイキ排ガス)が検出されていること(例えば、後述の強制リーン制御終了後)である。この場合、酸素を含むリーン排ガス(若しくはストイキ排ガス)が排ガス浄化触媒に供給されており、且つ、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリーン排ガス又はストイキ排ガスである。すなわち、排ガス浄化触媒に酸素を含むリーン排ガスが供給されているが、その酸素が排ガス浄化触媒に吸収されず、下流へ流出している状態(最大酸素吸蔵状態)のときに、強制リッチ制御が開始される。
強制リッチ制御が開始すると、排ガス浄化触媒に吸蔵された酸素が放出され、排ガス浄化触媒の下流に酸素が流出する(触媒下流センサでリーン排ガスやストイキ排ガスが検出される)。その後、強制リッチ制御が継続すると、排ガス浄化触媒に吸蔵された酸素のほぼ全てが放出される(排ガス浄化触媒が最小酸素吸蔵状態になる)。このとき、排ガス浄化触媒の下流で酸素が検出されなくなる(リッチ排ガスが検出される)。制御部は、この場合に強制リッチ制御を終了させる。
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リッチ制御実行中、触媒下流センサ15において検出される排ガスの酸素濃度が制御部30に送られる。例えば、上記触媒下流センサ15として0V−1V酸素センサを用いた場合、強制リッチ制御中の触媒下流センサ15では、0V付近の電位が検出される(リーン排ガスが検出される)。そして、排ガス浄化触媒40が最小酸素吸蔵状態になると、該センサにおいて1V付近の電位が検出される(リッチ排ガスが検出される)。制御部30は、このときに触媒下流センサ15において生じた電位差が所定の閾値を上回った場合(即ち、排ガス浄化触媒40下流の排ガスが急激にリッチ側に傾いた場合)に、排ガス浄化触媒40が最小酸素吸蔵状態になったと判断し、強制リッチ制御を終了させる。
【0058】
b.酸素放出量検知
ここで開示される排ガス浄化装置では、強制リッチ制御における排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素放出量を検知する。具体的には、制御部は、強制リッチ制御の開始から終了迄の間に排ガス浄化触媒から放出された酸素の量を酸素放出量として検知する。上述のとおり、排ガス浄化触媒が最大酸素吸蔵状態になった際に強制リッチ制御が開始し、最小酸素吸蔵状態になった際に強制リッチ制御が終了するため、このプロセスでは最大酸素吸蔵状態から最小酸素吸蔵状態までの間に放出された酸素が酸素放出量として検知される。
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リッチ制御が開始した時から、排ガス浄化触媒40下流の排ガスが急激にリッチ側に傾いた時までの時間(強制リッチ制御の継続時間)に基づいて酸素放出量を算出できる。具体的には、上記強制リッチ制御の継続時間を制御部30に予め設定されている計算式に代入することによって、強制リッチ制御の継続時間に放出された酸素の積算値(酸素放出量)が計算できる。なお、上記強制リッチ制御の継続時間(排ガス浄化触媒が酸素を放出した時間)そのものを酸素放出量を示すパラメータとして用いることもできる。
【0059】
c.強制リーン制御
一方、ここで開示される劣化検出方法では、強制リーン制御を実施することによって排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検出する。
強制リーン制御では、混合ガスの空燃比を強制的にリーンに制御し、リーン排ガスを排ガス浄化触媒に供給する。図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リーン制御が実行されると、制御部30において強制リーン制御信号が作成され、該強制リーン制御信号が燃料ポンプ23、燃料噴射弁3、スロットル弁10に送信される。強制リーン制御信号を受信した燃料ポンプ23は、燃料タンク24から燃料噴射弁3へ供給する燃料を減少させる。そして、燃料噴射弁3の開度が小さくなり、燃料室2内へ供給される燃料が減少する。一方、強制リーン制御信号を受信することによって、スロットル弁10の開度が大きくなり、燃料室2内へ供給される空気の量が増加する。これによって、内燃機関1に供給される混合ガスの空燃比がリーン(酸素過多)になる。
【0060】
また、ここで開示される劣化検出方法では、強制リーン制御における前記混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05(典型的にはA/F=14.7)の範囲内の値に制御することを特徴とする。上述したように、上記排ガス浄化触媒にはOSC担体にバリウム化合物が含まれており、該バリウム化合物はA/F=14.7±0.05という弱リーン排ガスが供給された際に高い酸素吸収能を発揮する。すなわち、貴金属触媒の含有量が排ガス浄化触媒1Lあたり2g以下という低貴金属排ガス浄化触媒であっても、排ガス浄化触媒全体として好適な酸素吸収速度を発揮することができる。
【0061】
上記強制リーン制御は、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリッチ排ガスであるとき、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリーン排ガス又はストイキ排ガスになるまでの間実行される。具体的には、強制リーン制御制御の開始条件は、排ガス浄化触媒の下流でリッチ排ガスが検出されていること(例えば、上記強制リッチ制御終了後)である。この場合、酸素割合が少ない(若しくは酸素が含まれていない)リッチ排ガスが排ガス浄化触媒に供給されており、且つ、排ガス浄化触媒の下流の排ガスがリッチ排ガスである。すなわち、排ガス浄化触媒に酸素が放出するような条件になっているのに、排ガス浄化触媒から酸素が放出されていない状態(最小酸素吸蔵状態)のときに、強制リーン制御が開始される。
強制リーン制御が開始すると、排ガス浄化触媒に酸素が吸収される。上述のように、ここで開示される劣化検出方法では、A/F=14.7±0.05の混合ガスから生じる排ガスを排ガス浄化触媒に供給し、且つ、排ガス浄化触媒にバリウム化合物が含まれているため、好適な酸素吸収速度でリーン排ガス中の酸素が排ガス浄化触媒に吸収される。このため、排ガス浄化触媒の下流に酸素が流出せず、触媒下流センサでリッチ排ガスが検出される。その後、強制リーン制御が継続すると、排ガス浄化触媒が酸素を吸収できなくなる(排ガス浄化触媒が最大酸素吸蔵状態になる)。このとき、排ガス浄化触媒の下流に酸素が流出し、リーン排ガスが検出される。制御部は、排ガス浄化触媒の下流でリーン排ガスが検出されると、強制リーン制御を終了させる。
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リーン制御が実施されている間、触媒下流センサ15において検出される排ガスの酸素濃度が制御部30に送られる。例えば、上記触媒下流センサ15として0V−1V酸素センサを用いた場合、強制リッチ制御が実行されている間、該センサにおいて1V付近の電位が検出される(リッチ排ガスが検出される)。そして、排ガス浄化触媒40が最大酸素吸蔵状態になると、該センサにおいて0V付近の電位が検出される(リーン排ガスが検出される)。制御部30は、このときに触媒下流センサ15において生じた電位差が所定の閾値を上回った場合(即ち、排ガス浄化触媒40下流の排ガスが急激にリーン側に傾いた場合)に、排ガス浄化触媒40が最大酸素吸蔵状態になったと判断し、強制リーン制御を終了させる。
【0062】
d.酸素吸収量検知
ここで開示される排ガス浄化装置では、強制リーン制御における排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検知する。具体的には、制御部は、強制リーン制御の開始から終了迄の間に排ガス浄化触媒に吸収された酸素の量を酸素吸収量として検知する。上述のとおり、排ガス浄化触媒が最小酸素吸蔵状態になった際に強制リーン制御が開始し、最大酸素吸蔵状態になった際に強制リーン制御が終了するため、このプロセスでは最小酸素吸蔵状態から最大酸素吸蔵状態までの間に吸収された酸素が酸素吸収量として検知される。
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、強制リーン制御が開始した時から、排ガス浄化触媒40下流の排ガスが急激にリーン側に傾いた時までの時間(強制リーン制御の継続時間)に基づいて酸素吸収量を算出できる。具体的には、上記強制リーン制御の継続時間を制御部30に予め設定されている計算式に代入することによって、強制リーン制御の継続時間に吸収された酸素の積算値(酸素放出量)が計算できる。なお、上記強制リーン制御の継続時間(排ガス浄化触媒が酸素を放出した時間)そのものを、酸素吸収量を示すパラメータとして用いることもできる。
【0063】
e.酸素吸蔵能算出
酸素吸蔵能算出では、上記酸素放出量及び/又は上記酸素吸収量に基づいて排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出する。すなわち、排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能は、上記強制リッチ制御を実施することで検出した酸素放出量と、上記強制リーン制御を実施することで検出した酸素吸収量の両方に基づいて算出されてもよいし、何れか一方のみに基づいて算出されてもよい。例えば、酸素放出量と酸素吸収量の両方から酸素吸蔵能を算出する場合には、各々の絶対値の平均値を求めるとよい。一方、酸素放出量と酸素吸収量の何れかから酸素吸蔵能を算出する場合には、検出した酸素放出量(若しくは酸素吸収量)そのものを酸素吸蔵能とみなしてもよいし、強制リーン制御と強制リッチ制御を複数繰り返すことで得られた複数の酸素放出量(若しくは酸素吸収量)の平均値を酸素吸蔵能とみなしてもよい。
【0064】
また、酸素吸蔵能算出では、酸素吸収量のみに基づいて酸素吸蔵能を算出するとより好ましい。上述のように、Ba添加排ガス浄化触媒に弱リーン排ガスを供給すると、排ガス浄化触媒の酸素吸収量(酸素吸収速度)が向上する。しかし、この酸素吸収量の向上は、バリウム化合物へ酸素が吸収されているためであり、OSC担体の酸素吸蔵量が向上しているものではない。ここで開示される劣化検出方法では、酸素濃度の低い弱リーン排ガスが供給されているため、OSC担体への酸素吸蔵量自体は少なくなっており、吸蔵された酸素を放出した量である酸素放出量が低下する傾向にある。したがって、酸素吸収量のみに基づいて酸素吸蔵能を算出する方がより正確に排ガス浄化触媒の劣化を検知できる。
【0065】
f.劣化判定
また、ここで開示される劣化検出方法では、上記「e.酸素吸蔵能算出」を実施した後に「劣化判定」を実施し、排ガス浄化触媒が劣化しているか否かを判定する。具体的には、制御部は、上記算出した酸素吸蔵能と所定の閾値とを対比する。かかる酸素吸蔵能に対する閾値には、排ガス浄化触媒や内燃機関の機能、使用する国の規制などを考慮した上で任意の値を設定することができる。さらに、上記閾値は、種々の予備試験の結果に基づいて適宜変更するとより好ましい。制御部は、上記酸素吸蔵能が所定の閾値を下回った場合に排ガス浄化触媒が劣化し、上回った場合に排ガス浄化触媒が劣化していないと判定する。
【0066】
以上、ここで開示される劣化検出方法について説明した。この劣化検出方法は、OSC担体への添加物としてバリウム化合物を用いるとともに、強制リーン制御における混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御している。上記バリウム化合物が添加された排ガス浄化触媒は、A/F=14.7近傍(例えば、A/F=14.7±0.05)という弱リーン(換言すればストイキ近傍)の排ガスが供給された際に高い酸素吸収能を発揮する。これによって、貴金属触媒の含有量が排ガス浄化触媒1Lあたりに2.0g以下という所謂低貴金属排ガス浄化触媒であっても、強制リーン制御中に供給される排ガス中の酸素を十分に吸収でき、排ガス浄化触媒が最大酸素吸蔵状態になっていない段階で下流側へ酸素が流出することを防止できる。このため、排ガス浄化触媒が最大酸素吸蔵状態になった際に、排ガス浄化触媒下流の排ガスが急激にリーン側に傾くようになり適切なタイミングで強制リーン制御を終了させることが容易になる。これによって、正確な酸素吸収量が検出できるため、該正確な酸素吸収量から算出される酸素吸蔵能に基づいて排ガス浄化触媒の劣化判定を実行できる。
【0067】
ここで、Ba添加排ガス浄化触媒に弱リーン排ガスを供給すると酸素吸収能が向上する理由は、現在のところ詳細に判明していない。しかし、本発明者による調査の結果、強制リッチ制御実施中の排ガス浄化触媒下流において、通常の排ガス浄化触媒を用いた場合よりも高濃度のNOが検出されることが分かった。このことから、Ba添加排ガス浄化触媒に弱リーン排ガスを供給することによる酸素吸収能の向上は、バリウム化合物によるNO吸着効果に起因するものであると推定される。
【0068】
以上、ここで開示される排ガス制御装置及び劣化検知方法について説明した。次に、ここで開示される劣化検知方法の具体的な一例について図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。図4に示す構成の劣化検知方法は、「1.各制御開始判定(S10)」、「2.強制リーン制御(S20〜S24)」、「3.酸素吸収量検知(S30)」、「4.各制御終了判定(S40)」、「5.強制リッチ制御(S50〜S54)」、「6.酸素放出量検知(S60)」、「7.酸素吸蔵量(OSC)算出(S70)」、「8.劣化判定(S80〜S84)」のプロセスを含む。以下、各プロセスについて説明する。
【0069】
1.各制御開始判定
図4で示される劣化検知方法では、強制リーン制御若しくは強制リッチ制御を開始する前に、開始する制御プロセスを選択するための判定処理(S10)が行われる。具体的には、この判定処理では、触媒下流センサ15で検知された排ガスがリッチ排ガス(A/F<14.7)であるか否かを判定する。このとき、触媒下流センサ15においてリッチ排ガスが検出されている(S10がYESである)場合、制御部30は、制御プロセスをステップS20に進め、強制リーン制御を開始する。一方、触媒下流センサ15においてリーン排ガスが検出されている(S10がNOである)場合、制御部30は、制御プロセスをステップS50に進め、強制リッチ制御を開始する。
なお、このステップS10では、触媒下流センサ15で検知された排ガスがリーン排ガス(A/F>14.7)であるか否かを判定してもよい。この場合でも、排ガスがリーン排ガスかリッチ排ガスかを判定し、その判定結果に基づいて何れかの制御プロセスを選択することができる。
なお、説明の便宜上、以下ではステップS10がYESとなり強制リーン制御(S20〜S24)を先に開始させた場合を説明するが、強制リーン制御(S20〜S24)と強制リッチ制御(S50〜S54)のどちらを先に実施するかについては、本発明を限定するものではない。
【0070】
2.強制リーン制御(S20〜S24)
上記制御開始判定S10がYESとなり強制リーン制御が開始する場合、先ず、制御部30内において強制リーン制御のフラグがONになる(S20)。そして、制御部30は、燃料ポンプ23、燃料噴射弁3、スロットル弁10を制御して、空燃比がリーンに調整された混合ガスを内燃機関1に供給する(S22)。なお、ここで開示される劣化検出方法では、強制リーン制御において上記内燃機関1に供給する混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の値に調整する。
【0071】
強制リーン制御が実行されている間、制御部30は、触媒下流センサ15においてリーン排ガス(A/F>14.7)が検出されるか否かの判定を繰り返す(S24)。すなわち、排ガス浄化触媒40の下流に酸素が流出せず、触媒下流センサ15においてリッチ排ガスが検出されている間、制御部30はステップS24における判定結果をNOとし、触媒下流センサ15においてリーン排ガスが検出されるまで同じ判定処理を繰り返す。そして、排ガス浄化触媒40の下流に酸素が流出して、触媒下流センサ15においてリーン排ガスが検出されると、制御部30はステップS24における判定結果をYESとし、強制リーン制御を終了させるとともに酸素吸収量の検知(S30)を開始する。
【0072】
3.酸素吸収量検知(S30)
ステップS30では、上記強制リーン制御(S20〜S24)が実行されている間に、触媒下流センサ15で検出された酸素濃度に基づいて、排ガス浄化触媒40に吸収された酸素の量を検知する。上述したように、この酸素吸収量は、上記強制リーン制御の継続時間(触媒下流センサ15で酸素が検出されない時間)に基づいて算出することができる。ここで算出された酸素吸収量は、制御部30内に記憶される。
【0073】
4.各制御の終了判定(S40)
上記酸素吸収量の検知が終了すると、制御プロセスが各制御終了判定(S40)に進む。このステップS40では、制御部30において強制リーン制御のフラグと強制リッチ制御フラグの両方がONになっているか否かを判定する。ここでの説明では、制御プロセスがステップS20を経ているため強制リーン制御のフラグがONになっているが、強制リッチ制御のフラグがONになっていない。この場合、制御部30は、ステップS40における判定をNOとして、制御プロセスを「1.制御プロセスの開始判定S10」に戻す。
上記ステップS24で説明したように、上記強制リーン制御の終了条件は、触媒下流センサ15においてリーン排ガス(A/F>14.7)が検出されることであるため、この状態で制御プロセスがステップS10に戻ると、判定結果が必ずNOになる。すなわち、1回目の制御プロセスで強制リーン制御が実行された場合には、次の制御プロセスで強制リッチ制御が実行されるようになっており、その逆も同様である。
【0074】
5.強制リッチ制御(S50〜S54)
上記制御開始判定S10がNOとなり強制リッチ制御が開始する場合、先ず、制御部30内において強制リッチ制御のフラグがONになる(S50)。そして、制御部30は、燃料ポンプ23、燃料噴射弁3、スロットル弁10を制御して、空燃比がリッチ(A/F<14.7)に調整された混合ガスを内燃機関1に供給する(S52)。
【0075】
強制リッチ制御が実行されている間、制御部30は、触媒下流センサ15においてリッチ排ガス(A/F<14.7)が検出されるか否かの判定を繰り返す(S54)。すなわち、排ガス浄化触媒40の下流に酸素が流出し、触媒下流センサ15においてリーン排ガスが検出されている間、制御部30はステップS54における判定結果をNOとし、触媒下流センサ15においてリッチ排ガスが検出されるまで同じ判定処理を繰り返す。そして、排ガス浄化触媒40の下流に酸素が流出しなくなり、触媒下流センサ15においてリッチ排ガスが検出されると、制御部30はステップS54における判定結果をYESとし、強制リッチ制御を終了させるとともに酸素放出量の検知(S60)を開始する。
を終了させ、酸素放出量検知のステップ(S60)に進む。
【0076】
6.酸素放出量検知(S60)
ステップS60では、上記強制リッチ制御(S50〜S54)が実行されている間に、触媒下流センサ15で検出された酸素濃度に基づいて、排ガス浄化触媒40から放出された酸素の量を検知する。上述したように、この酸素放出量は、上記強制リッチ制御の継続時間(触媒下流センサ15において酸素が検出されていた時間)に基づいて算出することができる。ステップS60が終了すると、制御部30は算出された酸素放出量を記憶し、制御プロセスを再び「4.各制御の終了判定(S40)」に進める。
【0077】
制御プロセスがステップS20とS50とを経て、強制リーン制御のフラグと強制リッチ制御のフラグの両方がONになっている状態で制御の終了判定(S40)に進むと、制御部30は、強制リーン制御と強制リッチ制御の両方が終了したと判定し、制御プロセスを酸素吸蔵能の算出(S70)へ進める。
なお、ここでは、強制リーン制御と強制リッチ制御の両方のフラグがONになっていること(強制リーン制御と強制リッチ制御とを1回ずつ実行したこと)を終了条件として設定しているが、強制リーン制御と強制リッチ制御の両方(若しくは何れか)を複数回実行したことを終了条件として設定してもよい。この場合、複数の酸素吸収量(及び又は酸素放出量)が得られ、該複数のデータに基づいて酸素吸蔵能を算出できるため、より正確な劣化検出が可能になる。
また、このステップS40では、少なくとも強制リーン制御のフラグがONになっていることを終了条件として設定していればよく、強制リッチ制御が行われていなくても、酸素吸蔵能の算出(S70)に進めるような条件を設定することもできる。
【0078】
7.酸素吸蔵量(OSC)算出(S70)
このステップS70では、制御部30に記憶された酸素吸収量及び/又は酸素放出量に基づいて、排ガス浄化触媒40の酸素吸蔵量(OSC)を算出する。例えば、酸素吸収量と酸素放出量とに基づいてOSCを算出する場合にはこれらのパラメータの絶対値の平均値を求める。また、何れか一方のパラメータを採用する場合には、検出したパラメータをそのままOSCとしてみなすことができる。また、強制リーン制御及び強制リッチ制御の制御プロセスを複数回実行した場合には、各々の制御プロセスで得られたパラメータの絶対値の平均をOSCとして求めることもできる。制御部30は、上述のようにOSCを算出した後、「8.劣化判定(S80)」に制御プロセスを進める。
【0079】
8.劣化判定(S80〜S84)
ここでは、上記「7.酸素吸蔵量(OSC)算出」で算出されたOSCと所定の閾値(TOSC)とを対比する。そして、制御部30は、OSCが閾値(TOSC)を下回った(OSC<TOSC)場合、排ガス浄化触媒40が劣化していると判定し(S80のYES)、制御プロセスをステップS82に進め、排ガス浄化触媒40が劣化している旨を通知する。一方、制御部30は、OSCが閾値(TOSC)上回った(OSC>TOSC)場合、排ガス浄化触媒40が正常であると判定し(S80のNO)、制御プロセスをステップS84に進め、排ガス浄化触媒40が正常である旨を通知する。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。なお、上述の劣化検出方法における強制リーン制御と強制リッチ制御との切り替えは、排ガス浄化触媒の劣化を検出する方法だけでなく、その他の強制リーン制御と強制リッチ制御との切り替えを要する各種内燃機関の運転方法に応用することもできる。
【0081】
次に、本発明に関する実施例を説明するが、以下で説明する実施例は本発明を限定することを意図したものではない。
【0082】
<実施例1:サンプルの作製>
この実施例では、構成材料の異なる3種類の金属排ガス浄化触媒(サンプル1〜3)を作製した。以下各サンプルの詳細を説明する。
【0083】
(サンプル1)
ここでは、サンプル1として、OSC担体で構成されたOSC領域と、非OSC担体で構成された非OSC領域とを有し、バリウム化合物である酢酸バリウムが上記OSC領域に添加された排ガス浄化触媒を作製した。なお、ここで作製した排ガス浄化触媒は、基材容量1Lあたりの貴金属触媒含有量が2.0g以下の低貴金属排ガス浄化触媒である。また、ここで用いた排ガス浄化触媒の基材は、基材長105mm、容量0.9Lの筒状ハニカム基材である。以下の材料組成の説明において(g/L)と記載しているものについては、基材容量1Lに含まれる量を示すものである。
先ず、1.0g/Lのパラジウム(Pd)を含む硝酸系Pd薬液に、85g/Lのアルミナ(Al)粉末を懸濁させて分散液を調製した。そして、該分散液に、OSC材であるセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO/ZrO=0.49)を65g/L、バリウム化合物である酢酸バリウム((CHCOO)Ba)を5g/L、バインダであるアルミナを5g/L分散させて、OSC領域用スラリーを得た。このOSC領域用スラリーを120℃の温度条件下で30分乾燥させ、更に500℃の温度条件下で2時間焼成することによってOSC領域用の触媒材料を得た。
一方、0.2g/Lのロジウム(Rh)を含む硝酸系Rh薬液に、65g/Lのジルコニア(ZrO)粉末を懸濁させて分散液を調製した。そして、該分散液に、非OSC担体用の材料であるランタン(La)添加アルミナを25g/L、バインダであるアルミナを5g/L分散させて、非OSC領域用スラリーを得た。この非OSC領域用スラリーを120℃の温度条件下で30分乾燥させ、更に500℃の温度条件下で2時間焼成することによって非OSC領域用の触媒材料を得た。
【0084】
次に、上記OSC領域用の触媒材料を酸性水溶液に分散させ、スラリー状に調製した。そして、上記筒状ハニカム基材の一端から基材全長の20%(すなわち、21mm程度)の領域を、OSC領域用の触媒材料を分散させたスラリーに浸漬させた。そして、基材をスラリーから引き上げ、20℃の温度条件下で30分乾燥させ、更に500℃の温度条件下で2時間焼成することによって、筒状ハニカム基材の一端から基材全長の20%の部位までOSC領域を形成した。
その後、非OSC領域用の触媒材料を酸性水溶液に分散させ、スラリー状に調製した。そして、筒状ハニカム基材の他端(上記OSC領域を形成した方の端部とは逆の端部)から基材全長の80%(すなわち、84mm程度)の領域を、非OSC領域用の触媒材料を分散させたスラリーに浸漬させた。そして、基材をスラリーから引き上げ、20℃の温度条件下で30分乾燥させ、更に500℃の温度条件下で2時間焼成することによって、筒状ハニカム基材の他端から基材全長の80%の部位まで非OSC領域を形成した。
以上のようにして得られた排ガス浄化触媒を以下サンプル1と称する。
【0085】
(サンプル2)
バリウム化合物として硫酸バリウム(BaSO)を用いたことを除いて、上記サンプル1と同様の手順でサンプル2を作製した。
【0086】
(サンプル3)
上記OSC領域にバリウム化合物を添加しなかったことを除いて、上記サンプル1と同様の手順でサンプル3を作製した。
【0087】
<実施例2:耐久試験>
この実施例では、上記実施例1で作製したサンプル1〜3を、内燃機関であるV8エンジンの排気系に取り付け、サンプル1〜3に対する耐久試験を実施した。このとき、排ガスが流動する方向に対する上流側にOSC領域を配置し、下流側に非OSC領域を配置した。そして、V8エンジンを稼働させ、1000℃の排ガスをサンプル1〜3に50時間供給させ続けた。
【0088】
<実施例3:OSC評価>
上記耐久試験後に各サンプルをV8エンジンから取り外し、L4エンジンの排気系に取り付けた。また、各々のサンプルの下流に触媒下流センサ(0V−1V酸素センサ)を取り付けた。このときも、OSC領域を上流側に、非OSC領域を下流側に配置した。そして、L4エンジンに供給する混合ガスの空燃比を下記表1に記載の条件1〜5のように変動させた。詳しくは、条件1では、A/F=15.1の強制リーン制御を行った後に、A/F=14.1の強制リッチ制御を行った。条件2では、強制リーン制御の空燃比をA/F=15.0に変えた。また、条件3では、強制リーン制御の空燃比をA/F=14.9に変えた。条件4では、強制リーン制御の空燃比をA/F=14.8に変えた。条件5では、強制リーン制御の空燃比をA/F=14.7に変えた。なお、条件2〜条件5における強制リッチ制御の空燃比は、全てA/F=14.1に設定した。
そして、上記条件1〜条件5の強制リーン制御中に各サンプルの酸素吸収量を検出し、強制リッチ制御に各サンプルの酸素放出量を検出した。これによって得られた各サンプルの酸素吸収量を図5に、酸素放出量を図6に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
図5に示すように、OSC担体にバリウム化合物を添加したサンプル1及び2では、混合ガスの空燃比(A/F)が14.8以下の条件4及び条件5の強制リーン制御を実施した場合に酸素吸収量が向上していた。すなわち、OSC担体にバリウム化合物を添加した排ガス浄化触媒に、空燃比を弱リーン(A/F<14.8、特にA/F=14.7)に調整した混合ガスを供給すると、高い酸素吸収能が発揮されることが分かった。このことから、OSC担体にバリウム化合物を添加した排ガス浄化触媒を用い、強制リーン制御中の混合ガスの空燃比を弱リーンに調整することによって、低貴金属排ガス浄化触媒を用いた場合でも、強制リーン制御を適切なタイミングで終了させることができると解される。
また、サンプル1及び2の中でも、バリウム化合物として酢酸バリウムを用いたサンプル1は、より高い酸素吸収能を発揮していた。このことから、OSC担体に添加するバリウム化合物としては、酢酸バリウムが好適であることが分かった。
【0091】
一方、図6に示すように、何れのサンプルにおいても、強制リッチ制御中の酸素放出量は、強制リーン制御中の混合ガスを弱リーン側に調整するに従って低下していた。このことから、強制リーン制御中の混合ガスを弱リーンに調整した場合、強制リッチ制御実行中の酸素放出量が低下するので、強制リーン制御中に得られる酸素吸収量にのみ基づいて酸素吸蔵能を算出した方がより正確な値が得られると解される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
ここで開示される劣化検出方法及び排ガス浄化装置によれば、低貴金属排ガス浄化触媒を用いた場合でも、強制リーン制御中に排ガス浄化触媒下流へ酸素が流出することを防止し、強制リーン制御から強制リッチ制御への切り替えを適切なタイミングで実行できる。これによって、排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を正確に算出でき、該算出された酸素吸蔵能に基づいて排ガス浄化触媒の劣化を正確に検出できる。すなわち、本発明は、コスト削減と材料の安定的供給を目標とした低貴金属排ガス浄化触媒が有する問題を解決し、低貴金属排ガス浄化触媒を実用化するために重要な技術であり、産業の発達に大きく寄与するものである。
【符号の説明】
【0093】
1 内燃機関(エンジン)
2 燃焼室
3 燃料噴射弁
4 吸気マニホルド
5 排気マニホルド
6 吸気ダクト
7 排気ターボチャージャ
7a コンプレッサ
8 エアフロメータ
9 エアクリーナ
9a 吸気温センサ
10 スロットル弁
11 冷却装置
12 排気通路
13 排気系燃料噴射弁
14 触媒上流センサ
15 触媒下流センサ
18 排ガス再循環通路
20 EGR冷却装置
21 燃料供給管
22 コモンレール
23 燃料ポンプ
24 燃料タンク
30 制御部(ECU:Engine Control Unit)
40 排ガス浄化触媒
42 基材
43 触媒層
44 OSC領域
45 非OSC領域
48 流路
100 排ガス浄化装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属触媒と、酸素吸蔵能を有するOSC材を含む担体とを備えた触媒層が基材上に形成されることによって構成されており、混合ガスが内燃機関で燃焼されることによって生じる排ガスを浄化する排ガス浄化触媒の劣化を検出する方法であって、
前記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リーン又はストイキの排ガスであるとき、前記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リッチの排ガスになるまでの間、前記混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御すること;
前記強制リッチ制御における前記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素放出量を検知すること;
前記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リッチの排ガスであるとき、前記排ガス浄化触媒の下流の排ガスが空燃比リーン又はストイキの排ガスになるまでの間、前記内燃機関に供給される混合ガスの空燃比を強制的にリーン又はストイキに制御すること;
前記強制リーン制御における前記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検知すること;
前記酸素放出量及び/又は前記酸素吸収量に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出すること;
を包含し、
ここで、
前記貴金属触媒の含有量を、排ガス浄化触媒の容量1Lあたり2g以下に設定すること;
前記OSC材を含む担体への添加物としてバリウム化合物を用いること;
前記強制リッチ制御における前記混合ガスの空燃比をA/F<14.7に制御し、前記強制リーン制御における前記混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御すること;及び
前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能と所定の閾値とを対比し、該酸素吸蔵能が前記所定の閾値を下回った場合に前記排ガス浄化触媒が劣化していると判定すること;
をさらに包含することを特徴とする、排ガス浄化触媒の劣化検出方法。
【請求項2】
前記酸素吸蔵能の算出において、前記酸素吸収量のみに基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出することを特徴とする、請求項1に記載の劣化検出方法。
【請求項3】
前記バリウム化合物として酢酸バリウムを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の劣化検出方法。
【請求項4】
前記貴金属触媒として、少なくともパラジウムとロジウムとを用いることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の劣化検出方法。
【請求項5】
前記OSC材として、セリア−ジルコニア複合酸化物を用いることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の劣化検出方法。
【請求項6】
前記バリウム化合物の添加量を、前記OSC材100質量部に対して5質量部〜10質量部に設定することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の劣化検出方法。
【請求項7】
前記触媒層は、前記OSC材を含む担体からなるOSC領域と、前記OSC材以外の担体材料で構成された担体からなる非OSC領域とを備えていることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の劣化検出方法。
【請求項8】
前記OSC材以外の担体材料として、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主成分とした複合酸化物のうちの少なくとも1種を用いることを特徴とする、請求項7に記載の劣化検出方法。
【請求項9】
前記OSC領域への前記バリウム化合物の添加量を、前記OSC材100質量部に対して5質量部〜10質量部に設定し、
前記非OSC領域への前記バリウム化合物の添加量を、前記OSC材以外の担体材料100質量部に対して10質量部〜15質量部に設定することを特徴とする、請求項7又は8に記載の劣化検出方法。
【請求項10】
酸素と燃料ガスとを含む混合ガスが供給され、該混合ガスを燃焼することによって排気系へ排ガスを排出する内燃機関の排気系に設けられており、前記排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、
前記排気系に配置されており、貴金属触媒と、酸素吸蔵能を有するOSC材を含む担体とを備えた触媒層が基材上に形成されることによって構成されている排ガス浄化触媒と、
前記排気系における前記排ガス浄化触媒の下流に配置されており、前記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比を検出する触媒下流センサと、
前記触媒下流センサで検出された前記排ガス浄化触媒の下流の排ガス空燃比が送信されており、該送信された排ガス空燃比に基づいて前記内燃機関に供給する混合ガスの空燃比を調整する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記触媒下流センサにおいて空燃比リーン又はストイキの排ガスが検出されているとき、前記触媒下流センサにおいて空燃比リッチの排ガスが検出されるまでの間、前記混合ガスの空燃比を強制的にリッチに制御すること;
前記強制リッチ制御において、前記触媒下流センサで検出された排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素放出量を検知すること;
前記触媒下流センサにおいて空燃比リッチの排ガスが検出されているとき、前記触媒下流センサにおいて空燃比リーン又はストイキの排ガスが検出されるまでの間、前記混合ガスの空燃比を強制的にリーン又はストイキに制御すること;
前記強制リーン制御において、前記触媒下流センサで検出された排ガス空燃比に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸収量を検知すること;
前記酸素放出量及び/又は前記酸素吸収量に基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出すること;
が実行できるように構成されており、
ここで、前記排ガス浄化触媒の容量1Lあたりに、前記貴金属触媒が2g以下の割合で含まれていること;
前記OSC材を含む担体にバリウム化合物が添加されていること;
前記制御部が、前記強制リッチ制御における前記混合ガスの空燃比をA/F<14.7に制御し、前記強制リーン制御における前記混合ガスの空燃比をA/F=14.7±0.05の範囲内の値に制御すること;及び
前記制御部が、前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能と所定の閾値とを対比し、該酸素吸蔵能が前記所定の閾値を下回った場合に前記排ガス浄化触媒が劣化していると判定すること;
をさらに包含することを特徴とする、排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記制御部が、前記酸素吸収量のみに基づいて前記排ガス浄化触媒の酸素吸蔵能を算出できるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の排ガス浄化装置。
【請求項12】
前記OSC材を含む担体には、前記バリウム化合物として酢酸バリウムが添加されていることを特徴とする、請求項10又は11に記載の排ガス浄化装置。
【請求項13】
前記貴金属触媒には、少なくともパラジウム,ロジウムが含まれていることを特徴とする、請求項10〜12の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項14】
前記OSC材が、セリア−ジルコニア複合酸化物であることを特徴とする、請求項10〜13の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項15】
前記OSC材を含む担体には、前記OSC材100質量部に対して、前記バリウム化合物が5質量部〜10質量部の割合で添加されていることを特徴とする、請求項10〜14の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項16】
前記触媒層は、前記OSC材を含む担体からなるOSC領域と、前記OSC材以外の担体材料で構成される担体からなる非OSC領域とを備えている、請求項10〜15の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項17】
前記OSC材以外の担体材料が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主成分とする複合酸化物のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項16に記載の排ガス浄化装置。
【請求項18】
前記OSC領域には、前記OSC材100質量部に対して前記バリウム化合物が5質量部〜10質量部の割合で含まれており、
前記非OSC領域には、前記OSC材以外の担体材料100質量部に対して前記バリウム化合物が10質量部〜15質量部の割合で含まれていることを特徴とする、請求項16又は17に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104312(P2013−104312A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246662(P2011−246662)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】