説明

排ガス測定装置および排ガス採取方法

【課題】間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる排ガス測定装置および排ガス採取方法を提供する。
【解決手段】排ガス測定装置1は、排ガス排出状態の検出結果からエンジンの運転または停止を判定し、運転が停止していると判定した場合に、サンプルバッグ26への希釈排ガスの貯留を停止し、かつ、エンジンの排気系と連結した排ガス導入管23の連通を遮断する。これにより、車両のエンジンが停止している間にサンプルバッグ26へ貯留された濃度測定用の排ガスが過剰に希釈されることを抑制しつつ、ブロワ29の吸引力による負圧によってエンジンの排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化することを抑制することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス測定装置および排ガス採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の内燃機関の排ガス中に含まれる成分を定量分析するために、排ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈した後に成分を測定するCVS(Constant Volume Sampling)を用いた連続マスエミッション測定が広く実行されている。このようなCVSによる連続マスエミッション測定の技術として、例えば特許文献1および2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−067239号公報
【特許文献2】特開2000−180315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CVSによる連続マスエミッション測定では、例えば、アイドルストップ車両やHEV(Hybrid Electric Vehicle)等の間欠運転機能を備えた車両のエミッション計測の場合、内燃機関の停止中、すなわち排ガスの排出量がゼロの時にも希釈トンネル内のガスをサンプルバッグへ貯留する。そのため、サンプルバッグ内の排ガスが過剰に希釈されてしまい、測定の感度が低下することから、連続マスエミッション測定の信頼性が大きく低下してしまうおそれがある。
【0005】
また、連続マスエミッション測定では、車両の排気系がCVS装置と常に連結されている。そのため、間欠運転機能を備えた車両のエミッション計測の場合、内燃機関が停止するとCVS装置のブロワ吸引力によって車両の排気系が負圧になるために、吸気側から大気が導入されて排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化してしまう。それによって、排気浄化触媒の浄化性能が変化することから、連続マスエミッション測定の信頼性が大きく低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる排ガス測定装置および排ガス採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス測定装置は、内燃機関から排出される排ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排ガスを採取して分析部に供給するように構成された排ガス測定装置であって、前記内燃機関の排気系と連通した連通部を通じて、前記内燃機関から排出される排ガスを前記分析部側に吸引する吸引手段と、前記内燃機関の運転または停止を判定する運転停止判定手段と、前記運転停止判定手段が前記内燃機関が運転していると判定する場合に前記希釈された排ガスを採取し、前記運転停止判定手段が前記内燃機関が停止していると判定する場合に前記希釈された排ガスの採取を停止する希釈排ガス採取手段と、前記運転停止判定手段が前記内燃機関が停止していると判定する場合に、前記吸引手段の吸引力が前記内燃機関に及ばないように前記連通部の連通を遮断する遮断手段と、を備える。
上記の構成により、内燃機関が停止していると判定する場合に、排ガスの採取を停止し、かつ、排ガス測定装置と内燃機関との連通を遮断することができることから、サンプルバッグ内の排ガスが過剰に希釈されること、および内燃機関の排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化することを抑制することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0008】
特に、本発明の排ガス測定装置は、前記内燃機関から排出される排ガスの排出状態を検出する排ガス排出状態検出手段を備え、前記運転停止判定手段が、前記排ガス排出状態検出手段が検出する排ガスの排出状態が設定値を超えない状態が所定の時間継続した場合に、前記内燃機関が停止していると判定する構成とすることができる。
上記の構成により、排ガス排出状態の検出結果に基づいて内燃機関が停止しているか否かをより精度よく判定することができ、判定結果に基づいて排ガスの採取を停止し、かつ、排ガス測定装置と内燃機関との連通を遮断することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0009】
また、本発明の排ガス測定装置は、前記排ガス排出状態検出手段が、前記連通部を通過する排ガスの圧力、温度、濃度の少なくとも1つを検出する構成とすることができる。
上記の構成により、前記連通部を通過する排ガスの圧力、温度、濃度の少なくとも1つの検出結果に基づいて内燃機関が停止しているか否かをより精度よく判定することができ、判定結果に基づいて排ガスの採取を停止し、かつ、排ガス測定装置と内燃機関との連通を遮断することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0010】
そして、本発明の排ガス採取方法は、内燃機関から排出される排ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排ガスを採取して分析部に供給する排ガス採取方法であって、前記内燃機関の運転または停止を判定する運転停止判定ステップと、前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が運転していると判定する場合に前記希釈された排ガスを採取し、前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が停止していると判定する場合に前記希釈された排ガスの採取を停止する希釈排ガス採取ステップと、前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が停止していると判定する場合に、前記内燃機関の排気系と連通した連通部を通じて、前記内燃機関から排出される排ガスを前記分析部側に吸引する吸引部の吸引力が前記内燃機関に及ばないように前記連通部の連通を遮断する遮断ステップと、を備える。
上記の排ガス採取方法により、内燃機関が停止していると判定する場合に、排ガスの採取を停止し、かつ、排ガス測定装置と内燃機関との連通を遮断することができることから、サンプルバッグ内の排ガスが過剰に希釈されること、および内燃機関の排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化することを抑制することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス測定装置および排ガス採取方法によれば、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の排ガス測定装置の概略構成を示した図である。
【図2】実施例のECUが行う制御のフローを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。図1は、実施例の排ガス測定装置1の概略構成を示した図である。
【0015】
図1に示す排ガス測定装置1は、ECU(Electronic Control Unit)10を備えており、電源ラインを通じて電力の供給を受けて稼動し、装置の運転動作を総括的に制御する。また、排ガス測定装置1は、希釈トンネル21を備えており、排ガス導入管23から導入する内燃機関の排ガスを所定の濃度に希釈する。そして、排ガス測定装置1は、CFV(Critical Flow Venturi)24を備えており、希釈された排ガスの希釈トンネル21の通過流量を一定に制御する。更に、排ガス測定装置1は、バックグラウンド(以下(B/G)と略記する)バッグ25およびサンプルバッグ26を備えており、それぞれ希釈用ガス採取通路61、希釈排ガス採取通路62を通じて希釈トンネル21内の希釈用ガス、および希釈された排ガスの一部を採取する。また、排ガス測定装置1は、希釈用ガス採取通路61および希釈排ガス採取通路62にそれぞれライン切替バルブ31および32を備えており、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26に取り込まれるガス流量を制御する。そして、排ガス測定装置1は、連続分析計27を備えており、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26に採取されたガスの成分濃度を分析することで、希釈された排ガスの定量分析を実行する。更に、排ガス測定装置1は、流量演算装置28を備えており、希釈トンネル21を通過する流量を演算し、演算結果をECU10へ送信する。また、排ガス測定装置1は、排ガス導入管23に圧力センサ51を備えており、排ガス導入管23を通過し希釈トンネル21に導入される排ガスの圧力を検出する。そして、排ガス測定装置1は、排ガス導入管23に開閉弁52を備えており、ECU10の指令に基づき排ガス導入管23を連通または遮断する。
【0016】
希釈トンネル21は、その上流側に、エンジンの排気系と連結した排ガス導入管23を備えており、車両のエンジンから排出される排ガスを希釈トンネル21内へと導入する。また、希釈トンネル21は、希釈用ガスの導入口に活性炭を備えたエアフィルタ22を設けている。実験室内の空気は、エアフィルタ22を通過して希釈トンネル21へ進入し、排ガス導入管23より導入した排ガスと混合することで、排ガスを所定の濃度へと希釈する。排ガスの希釈比率は、排ガス中に含まれる成分によって決定され、エアフィルタ22の開口面積を調整することによって結露が生じない比率にて希釈される。この場合、別途ガスボンベを設けて、排ガスの希釈に用いる希釈用ガスをガスボンベから供給することもできる。
なお、排ガス導入管23は、本発明の連通部の一構成例である。
【0017】
CFV24は、エアフィルタ22および排ガス導入管23の下流側に設けられており、その内部にガス通路を備えることで、希釈トンネル21内で希釈された排ガスを通過させることができる。そして、CFV24は、ガス通路の一部の断面積が他の部分の断面積よりも小さく絞られて構成されている。希釈トンネル21内で希釈された排ガスは、CFV24の下流に設けられたブロワ29の駆動によってCFV24へ向かう。そして、CFV24の内部を通過する際に流れを絞られることでガス流速が臨海流速(その温度における音速)に達することにより、ガスの通過流量が一定に制御される。この場合、CFV24に代えて連続流量可変可能なベンチュリフローメータ(VFM)を設けても良い。
なお、ブロワ29は、本発明の吸引手段の一構成例である。
【0018】
流量演算装置28は、エアフィルタ22および排ガス導入管23の下流側であってCFV24の上流側に設けられ、希釈トンネル21の内部を通過するガスの圧力および温度の検出結果に基づいて、希釈トンネル21の内部を通過するガス流量を演算する。そして、流量演算装置28は、ガス流量の演算結果をECU10へ送信する。この場合、流量演算装置28に代えて、CFV24がその内部を通過するガス体積を検出し、検出結果をECU10へ送信する構成であってもよい。
【0019】
B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26は、伸縮可能な構成により、その内部にガスを貯留する。B/Gバッグ25は、エアフィルタ22の下流側であって排ガス導入管23の上流側に設けられ、ポンプ41の駆動力により希釈トンネル21と連通した希釈用ガス採取通路61を通じて希釈用ガスの一部を採取する。希釈用ガス採取通路61には、ガラス繊維等から成るフィルタが設けられている。サンプルバッグ26は、エアフィルタ22および排ガス導入管23の下流側であってCFV24の上流側に設けられ、ポンプ42の駆動力により希釈トンネル21と連通した希釈排ガス採取通路62を通じて希釈トンネル21内で希釈された排ガスの一部を採取する。B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26は、ガスの採取が終了すると、採取したガスを後述する連続分析計27へと供給する。
なお、サンプルバッグ26、ポンプ42および希釈排ガス採取通路62は、本発明の希釈排ガス採取手段の一構成例である。
【0020】
ライン切替バルブ31は、一方が希釈トンネル21と、他の一方がB/Gバッグ25と連通し、他のもう一方が大気開放されたバイパス部と連通した三方弁である。ライン切替バルブ31は、ECU10の指令に従って希釈トンネル21とB/Gバッグ25、またはバイパス部との連通を切り替えることで、希釈用ガスの採取および停止を制御する。
【0021】
また、ライン切替バルブ32は、ライン切替バルブ31と同様に、一方が希釈トンネル21と、他の一方がサンプルバッグ26と連通し、他のもう一方が大気開放されたバイパス部と連通した三方弁である。ライン切替バルブ32は、ECU10の指令に従って希釈トンネル21とサンプルバッグ26、またはバイパス部との連通を切り替えることで、希釈された排ガスの採取および停止を制御する。
【0022】
この場合、ライン切替バルブ31および32としては、電磁弁やアクチュエータを適用することができる。また、ライン切替バルブ31および32は、上記の三方弁に代えて、希釈用ガス採取通路61および希釈排ガス採取通路62の連通、遮断を制御することでガスの採取および停止を制御する形式の制御弁を適用することもできる。
なお、ライン切替バルブ32は、本発明の希釈排ガス採取手段の一構成例である。
【0023】
連続分析計27は、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26が採取したガスを定量分析し、分析結果をECU10へ送信する。連続分析計27は、例えばCOおよびCOの定量分析として非分散赤外線吸収計(NDIR)を、HCの定量分析として水素炎イオン検出計(HFID)を、NOxの定量分析として化学発光検出計(CLD)を適用するが、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)や自動ガスクロマトグラフを適用することもできる。
【0024】
圧力センサ51は、排ガス導入管23のより車両側(エンジン側)に設けられ、車両のエンジンが排出する排ガスの圧力を検出し、検出結果をECU10へ送信する。ECU10は、圧力センサ51の検出結果に基づいて、車両のエンジンが排出する排ガス排出状態を認識する。ECU10は、予め台上試験等で求めた排ガス圧力と排ガス排出量との相関マップをROM等に記憶しておくことで、排ガス圧力から容易に排ガス排出量を認識することができる。ここで、ECU10が認識する排ガスの排出状態とは、例えば、排ガスの排出量とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
この場合、圧力センサ51に代えて、温度センサまたは排ガス濃度センサを設け、温度センサまたは排ガス濃度センサの検出結果に基づいて排ガス排出状態を認識する構成とすることもできる。また、これら種々のセンサを複数組み合わせることで、排ガス排出状態を認識する構成とすることもできる。
なお、圧力センサ51は、本発明の排ガス排出状態検出手段の一構成例である。
【0026】
開閉弁52は、排ガス導入管23のより希釈トンネル21側に設けられ、排ガス導入管23を開放または閉鎖可能な制御弁である。開閉弁52は、ECU10の指令に基づき排ガス導入管23を開放(連通)することで、ブロワ29の吸引力による負圧を車両のエンジンに到達させて排ガスを希釈トンネル21に導入する。また、開閉弁52は、ECU10の指令に基づき排ガス導入管23を閉鎖(遮断)することで、ブロワ29の吸引力による負圧が車両のエンジンに到達することを抑制する。開閉弁52としては、電磁弁やアクチュエータを適用することができる。
なお、開閉弁52は、本発明の遮断手段の一構成例である。
【0027】
ECU10は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)やNVRAM(Non Volatile RAM)と、を備えるコンピュータである。
【0028】
CPUは、ROMに格納したプログラムを読み込んで、このプログラムに従った演算を行う。すなわち、ROMに格納されたプログラムをCPUが読み込むことで、装置の運転動作を統合的に制御したり、排ガス濃度算出制御を実行したりする。また、RAMには、マスエミッション算出などの演算結果のデータが書き込まれ、NVRAMは、RAMに書き込まれていたデータで、装置の電源OFF時に保存の必要なデータが書き込まれる。入出力部は、流量演算装置28の流量演算信号、連続分析計27が測定するガス濃度信号、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26のガス貯留信号、エアフィルタ22を通過する希釈用ガス流量信号、圧力センサ51の圧力信号等の各種機器からの信号を入力または出力する。これによって、ECU10は、流量演算装置28の流量演算結果、および連続分析計27の分析結果等を読み込み、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26のガス供給動作、ライン切替バルブ31および32の切替動作、ポンプ41の動作、エアフィルタ22の開閉動作、装置内部のパージなど、排ガス測定装置1の運転動作を統合的に制御する。
【0029】
更に、ECU10は、圧力センサ51の検出結果に基づいて、車両のエンジンの運転または停止を判定し、判定結果に基づき排ガスの採取および排ガス導入管23の連通または遮断の制御を実行する。以下に、ECU10が実行する制御について説明する。
【0030】
まず、ECU10は、排ガス計測試験のスイッチがONされると、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26を空に(パージ)し、流量演算装置28の流量演算結果をリセットし、開閉弁52を閉鎖させて排ガス導入管23を遮断し、ブロワ29を駆動させる。そして、ECU10は、排ガス計測試験モード運転が開始されると、下記の制御を開始する。
【0031】
ECU10は、排ガス計測試験モード運転が開始されると、圧力センサ51が検出する排ガス圧力が所定の設定値を超えているか否かを判断する。ここで、排ガス圧力の設定値は、車両のエンジンが停止している可能性があると判定できる任意の排ガス圧力を適用することができるが、例えば20[Pa]とすることができる。
【0032】
ECU10は、圧力センサ51が検出する排ガス圧力が所定の設定値を超えていると判断すると、車両のエンジンが運転状態にあると判定する。そして、ECU10は、車両のエンジンが運転状態にあると判定した場合に、開閉弁52を開放させて排ガス導入管23を連通し、流量演算装置28にガス流量の演算を開始させる。
【0033】
また、ECU10は、車両のエンジンが運転状態にあると判定した場合に、ポンプ41をONさせて、かつライン切替バルブ31をサンプル採取ON、すなわち希釈トンネル21とB/Gバッグ25とを連通させるように切り替えるよう指令して、B/Gバッグ25へ希釈用ガスを貯留させる。つづいて、ECU10は、B/Gバッグ25に貯留させた希釈用ガスを連続分析計27へ供給させて希釈用ガス濃度、すなわちB/G濃度を測定する制御を実行する。この場合、B/G濃度の測定は、後述する希釈排ガス濃度の測定タイミングと重複しない任意のタイミングで実行することができる。
【0034】
更に、ECU10は、車両のエンジンが運転状態にあると判定した場合に、ポンプ42をONさせて、かつライン切替バルブ32をサンプル採取ON、すなわち希釈トンネル21とサンプルバッグ26とを連通するように切り替えるよう指令して、サンプルバッグ26へ希釈された排ガスを貯留させる。つづいて、ECU10は、サンプルバッグ26に貯留させた希釈された排ガスを連続分析計27へ供給させて希釈排ガス濃度を測定する制御を実行する。
【0035】
そして、ECU10は、B/G濃度および希釈排ガス濃度の測定結果、流量演算装置28のガス流量演算結果に基づいて、例えば、以下の(1)(2)式からマスエミッションMtを算出する排ガス濃度算出制御を実行する。
[マスエミッション算出式]
Ct=C´t−(1−1/DFt)×CBG ・・・(1)
Mt=Ct×Vt×成分密度 ・・・(2)
(C´t:希釈排ガス濃度,DFt:排ガス希釈率,CBG:B/G濃度,Vt:演算ガス体積)
【0036】
一方、ECU10は、圧力センサ51が検出する排ガス圧力が所定の設定値を超えていないと判断すると、つづいて、排ガス圧力が所定の設定値を超えない状態が所定の時間継続するか否かを判断する。ここで、所定時間は、車両のエンジンが停止していると判定できる任意の時間を適用することができるが、例えば5[秒]とすることができる。ECU10は、排ガス圧力が所定の設定値を超えない状態が所定の時間継続しなかったと判断する場合、車両のエンジンが停止していないと判定し、開閉弁52を開放させて希釈排ガスの採取を開始し、上記の排ガス濃度算出制御を実行する。
【0037】
ECU10は、排ガス圧力が所定の設定値を超えない状態が所定の時間継続したと判断する場合、車両のエンジンが停止していると判定する。そして、ECU10は、車両のエンジンが停止していると判定した場合に、開閉弁52を閉鎖させて排ガス導入管23を遮断し、流量演算装置28にガス流量の演算を停止させる。
【0038】
また、ECU10は、車両のエンジンが停止していると判定した場合に、ポンプ42をOFFさせて、かつライン切替バルブ32をサンプル採取OFF、すなわち希釈トンネル21とバイパス部とを連通するように切り替えるよう指令して、サンプルバッグ26への希釈排ガスの貯留を停止させる制御を実行する。この場合、ECU10は、ポンプ41およびライン切替バルブ31をOFFさせて、B/Gバッグ25への希釈用ガスの貯留を停止させる制御を併せて実行してもよい。
ECU10は、排ガス計測試験モード運転が継続される間、上記の制御を繰り返す。
【0039】
上記の制御を実行することにより、特にアイドルストップ車両やHEV等の間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時において、サンプルバッグ26へ貯留された濃度測定用の排ガスが過剰に希釈されることを抑制することができる。よって、前述した(1)式で用いる希釈排ガス濃度C´tの測定値の信頼性を大幅に向上させることができることから、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0040】
また、上記の制御を実行することにより、車両のエンジンの運転が停止している間に、ブロワの吸引力による負圧がエンジンに到達することを抑制することができる。そのため、エンジン運転の停止中に排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化することを抑制することができることから、マスエミッション測定中の排気浄化触媒の浄化性能を略一定に保持することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
なお、ECU10は、本発明の運転停止判定手段の一構成例である。
【0041】
つづいて、ECU10の制御の流れに沿って、排ガス測定装置1の動作を説明する。図2は、ECU10の処理の一例を示すフローチャートである。本実施例の排ガス測定装置1は、排ガス排出状態検出手段と、運転停止判定手段と、希釈排ガス採取手段と、遮断手段とを備えることで、排ガス排出状態の検出結果からエンジンの運転または停止を判定し、停止していると判定した場合に希釈排ガスの採取を停止し、かつ、エンジンから排出される排ガスを導入する排ガス導入管23を遮断する制御を実行する。
【0042】
ECU10の制御は、車両の排ガス計測試験モード運転が開始されると開始し、排ガス計測試験モード運転中に以下の制御の処理を繰り返す。また、ECU10は、その制御の処理中、圧力センサ51の検出結果を常に受信する。
【0043】
まず、ECU10はステップS1で、圧力センサ51が検出する排ガス圧力が所定の設定値を超えているか否かを判断する。ここで、排ガス圧力の設定値については前述したために、その詳細な説明は省略する。排ガス圧力が所定の設定値を超えていない場合(ステップS1/NO)、ECU10はステップS4へ進む。排ガス圧力が所定の設定値を超えている場合(ステップS1/YES)は、ECU10は、車両のエンジンが運転状態であると判定し、次のステップS2へ進む。
【0044】
ステップS2で、ECU10は、開閉弁52を開放させて排ガス導入管23を連通し、流量演算装置28にガス流量の演算を開始させる。更に、ECU10は、ポンプ41および42をONさせて、かつライン切替バルブ31および32をサンプル採取ONにし、希釈用ガスおよび希釈排ガスの採取を開始する。ECU10は、ステップS2の処理を終えると、次のステップS3へ進む。
【0045】
ステップS3で、ECU10は、ステップS2で採取を開始した希釈用ガスおよび希釈排ガスから、B/G濃度および希釈排ガス濃度を測定する。そして、ECU10は、B/G濃度および希釈排ガス濃度の測定結果と流量演算装置28のガス流量演算結果に基づいて、上記(1)(2)式から車両のマスエミッションMtを算出する排ガス濃度算出制御を実行する。ECU10は、ステップS3の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0046】
ステップS1の判断がNOの場合、ECU10はステップS4へ進む。ステップS4で、ECU10は、圧力センサ51が検出する排ガス圧力が所定の設定値を超えない状態が所定の時間継続するか否かを判断する。ここで、所定時間については前述したために、その詳細な説明は省略する。排ガス圧力が設定値を超えない状態が所定の時間継続しなかった場合(ステップS4/NO)、ECU10は、車両のエンジンが運転状態であると判定し、ステップS2へ戻り、以降の処理を実行する。排ガス圧力が設定値を超えない状態が所定の時間継続した場合(ステップS4/YES)は、ECU10は、車両のエンジンが停止していると判定し、次のステップS5へ進む。
【0047】
ステップS5で、ECU10は、開閉弁52を閉鎖させて排ガス導入管23を遮断し、流量演算装置28にガス流量の演算を停止させる。更に、ECU10は、ポンプ42をOFFさせて、かつライン切替バルブ32をサンプル採取OFF、すなわち希釈トンネル21とバイパス部とを連通するように切り替えるよう指令して、サンプルバッグ26への希釈排ガスの貯留を停止させる。
【0048】
この場合、ECU10は、ステップS5の処理と併せて、ポンプ41およびライン切替バルブ31をOFFさせて、B/Gバッグ25への希釈用ガスの貯留を停止させる制御の処理を実行してもよい。
ECU10は、ステップS5の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施例の排ガス測定装置は、排ガス排出状態の検出結果からエンジンの運転または停止を判定し、運転が停止していると判定した場合に、サンプルバッグへの希釈排ガスの貯留を停止し、かつ、エンジンの排気系と連結した排ガス導入管の連通を遮断する。これにより、車両のエンジンが停止している間にサンプルバッグへ貯留された濃度測定用の排ガスが過剰に希釈されることを抑制しつつ、ブロワの吸引力による負圧によってエンジンの排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変化することを抑制することができる。よって、間欠運転機能を備えた車両のエミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0050】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0051】
例えば、圧力センサ51や開閉弁52は、実施例の位置に限定されるわけではなく、その目的を適切に達成可能な任意の位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 排ガス測定装置
10 ECU(運転停止判定手段)
21 希釈トンネル
23 排ガス導入管(連通部)
25 B/Gバッグ
26 サンプルバッグ(希釈排ガス採取手段)
27 連続分析計
28 流量演算装置
29 ブロワ(吸引手段)
32 ライン切替バルブ(希釈排ガス採取手段)
42 ポンプ(希釈排ガス採取手段)
51 圧力センサ(排ガス排出状態検出手段)
52 開閉弁(遮断手段)
62 希釈排ガス採取通路(希釈排ガス採取手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排ガスを採取して分析部に供給するように構成された排ガス測定装置であって、
前記内燃機関の排気系と連通した連通部を通じて、前記内燃機関から排出される排ガスを前記分析部側に吸引する吸引手段と、
前記内燃機関の運転または停止を判定する運転停止判定手段と、
前記運転停止判定手段が前記内燃機関が運転していると判定する場合に前記希釈された排ガスを採取し、前記運転停止判定手段が前記内燃機関が停止していると判定する場合に前記希釈された排ガスの採取を停止する希釈排ガス採取手段と、
前記運転停止判定手段が前記内燃機関が停止していると判定する場合に、前記吸引手段の吸引力が前記内燃機関に及ばないように前記連通部の連通を遮断する遮断手段と、
を備えることを特徴とする排ガス測定装置。
【請求項2】
前記内燃機関から排出される排ガスの排出状態を検出する排ガス排出状態検出手段を備え、
前記運転停止判定手段は、前記排ガス排出状態検出手段が検出する排ガスの排出状態が設定値を超えない状態が所定の時間継続した場合に、前記内燃機関が停止していると判定することを特徴とする請求項1記載の排ガス測定装置。
【請求項3】
前記排ガス排出状態検出手段は、前記連通部を通過する排ガスの圧力、温度、濃度の少なくとも1つを検出することを特徴とする請求項1または2記載の排ガス測定装置。
【請求項4】
内燃機関から排出される排ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排ガスを採取して分析部に供給する排ガス採取方法であって、
前記内燃機関の運転または停止を判定する運転停止判定ステップと、
前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が運転していると判定する場合に前記希釈された排ガスを採取し、前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が停止していると判定する場合に前記希釈された排ガスの採取を停止する希釈排ガス採取ステップと、
前記運転停止判定ステップにおいて前記内燃機関が停止していると判定する場合に、前記内燃機関の排気系と連通した連通部を通じて、前記内燃機関から排出される排ガスを前記分析部側に吸引する吸引部の吸引力が前記内燃機関に及ばないように前記連通部の連通を遮断する遮断ステップと、
を備える排ガス採取方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242194(P2011−242194A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112914(P2010−112914)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】