説明

排ガス測定装置及び排ガス測定装置用プログラム

【課題】調圧弁による調圧が不可能になり、排ガス測定が継続不能となる前に、ユーザがその時期を予期することができ、完全に測定が不能になる前にフィルタやポンプ等のメンテナンスを行えるようにして、測定時における測定の中断を防ぐことができる排ガス測定装置及び排ガス測定装置用プログラムを提供する。
【解決手段】センサ流路32又はバイパス流路33における前記サンプルガスの圧力を設定圧力値に保つ調圧弁331と、前記バイパス流路33に設けられ、当該バイパス流路を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサ332と、前記流量センサ332で測定される流量測定値が前記調圧弁331により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部41と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジン等から排出される排ガスに含まれる成分分析を行う排ガス測定装置及び当該排ガス測定装置に用いられる排ガス測定装置用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の排ガス測定装置としては、例えば自動車のエンジンから排出されるエンジン排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、全炭化水素(THC)、窒素酸化物(NO)、二酸化炭素(CO)等の測定を行うものがある(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に上記の排ガス測定装置について説明すると、図4に示すように、この排ガス測定装置3は、排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路31から2つの流路が分岐しており、一方の流路をセンサ流路32として各種成分を測定するための複数のガス分析計322が設けられているとともに、もう一方の流路をバイパス流路33として測定に必要のない過剰分のサンプルガスをバイパスさせるように構成されている。
【0004】
このような排ガス測定装置3において各ガス分析計322において正確な測定を行うためには、サンプルガスを規定の設定圧力値で各ガス分析計322に導入する必要がある。このため、前記バイパス流路33上に設けられた調圧弁331により、バイパス流路33をサンプルガスが所定量以上流れるようにした状態で、その圧力を前記設定圧力値に保つように構成されている。さらに、前記排ガス測定装置3は、前記調圧弁331で制御されるサンプルガスの圧力を測定するとともに、測定される測定圧力値が設定圧力値から大きく離れた値になった場合には、サンプルガス中の各種成分の測定が正確に行えておらず、これ以上の測定が不可能であることを表示する測定継続不能表示部42を備えている。
【0005】
そして、前記測定継続不能表示部42により測定継続が不可能であるとの表示されているのを見たユーザは例えば、調圧弁331による調圧が不可能となった原因として考えられる導入流路31上に設けられたフィルタ311の詰まりや、サンプルガスを吸引するためのポンプのチェック等を行い、それらの原因を取り除いたうえで再び排ガスを測定するようにしている。
【0006】
しかしながら、このような排ガス測定装置では排ガス測定が完全に継続できないほどフィルタが詰まった場合や、ポンプの能力が低下した場合にしかユーザに対して排ガス測定装置の異常を通知することができない。言い換えると、排ガス測定を継続できないような大きな問題が生じた後にしか、ユーザに対して装置の異常が通知されないために、予め測定が不能となる時期をユーザが予期することができず、排ガスの測定途中で中断せざるを得ない場合がある。すると、排ガス測定の途中で中断された測定データは、測定条件の連続性の問題などから破棄せざるを得ず、行っていた排ガス測定が無駄になってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−149099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、調圧弁による調圧が不可能になり、排ガス測定が継続不能となる前に、ユーザがその時期を予期することができ、完全に測定が不能になる前にフィルタやポンプ等のメンテナンスを行えるようにして、測定時における測定の中断を防ぐことができる排ガス測定装置及び排ガス測定装置用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の排ガス測定装置は、排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスに含まれる成分を測定するガス分析計が1又は複数設けられたセンサ流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスの一部をバイパスさせるバイパス流路と、前記センサ流路又は前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を設定圧力値に保つ調圧弁と、前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサと、前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧弁により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の排ガス分析装置用プログラムは、排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスに含まれる成分を測定するガス分析計が1又は複数設けられたセンサ流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスの一部をバイパスさせるバイパス流路と、前記センサ流路又は前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を設定圧力値に保つ調圧弁と、前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサと、を備えた排ガス測定装置に用いられるプログラムであって、前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧弁により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、前記調圧弁により制御されている前記サンプルガスの圧力そのものをモニタリングして排ガス測定が継続不能となるような異常の検出をするのではなく、前記注意喚起部が前記バイパス流路に設けられた流量センサで測定される測定流量値に基づいて、異常を検出するように構成されているので、排ガス測定が継続不能となる異常が生じていないか、あるいは、生じてしまったかといった二値的な検出結果ではなく、排ガス測定が継続不能となる前に、予め近いうちに測定が継続不能となることをユーザに知らせることができる。
【0012】
より具体的には、前記注意喚起部が、前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧弁により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示するように構成されているので、排ガス測定が可能な間に排ガス測定が不能となる時期をユーザが予期する事が可能となり、例えば、前記注意喚起部からの表示が出た時点で次回の排ガス測定の前にフィルタやポンプ等のメンテナンスを実施することができるようになる。従って、排ガス測定の途中で、調圧弁による調圧が不可能となり、排ガス測定の途中で中断せざるを得ないといった事態を無くし、測定を無駄にすることも無くせる。
【0013】
ここで、サンプルガスの圧力ではなく、前記バイパス流路のサンプルガスの流量をモニタリングすることにより、排ガス測定が継続不能となる時期を予め通知できるようになる理由について説明する。圧力をモニタリングしている場合、前記調圧弁により常に設定圧力値で一定になるように制御されているため、完全にフィルタが詰まる等しないと圧力に変化が生じず、事前に排ガス測定が不可能になる時期を通知する事が難しい。一方、流量をモニタリングしている場合、フィルタの詰まりの程度に応じて少しずつ測定流量値が減少していくので、調圧ができなくなる前記調圧限界流量値となる前に、ユーザに対して排ガス測定が不可能となる時期を注意喚起することができる。なお、この測定流量値に関するモニタリングに関する特性については、本願発明者らが鋭意検討の末、発見したものであって決して容易に見出されるようなものではない。
【0014】
ユーザが前記注意喚起部による表示を無視して排ガス測定を継続する等して、実際に各ガス分析計の測定値が信頼できない値となっていることを知らせて、これ以上の排ガス測定を行わせないようにするには、前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧限界流量値以下となった場合に、前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示する警告部を更に備えたものであればよい。
【0015】
前記警告部により、前記調圧弁により調圧が不可能となっていることを表示するための他の具体的な構成としては、前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を測定する圧力センサを更に備え、前記設定圧力値と、当該圧力センサで測定される測定圧力値との差が所定値以上となった場合に、前記警告部が前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示するように構成されたものが挙げられる。
【0016】
前記バイパス流路におけるサンプルガスの流量が注意喚起流量値以下となった状態では、まだ排ガス測定を正確に行える範囲であることを明示し、ユーザが誤って排ガス測定を中断することがないようにするには、前記注意喚起部が、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示するとともに、前記ガス分析計による測定は可能であることを表示するように構成されたものであればよい。
【0017】
ユーザが注意喚起部による表示を無視して排ガス測定を継続し、これ以上は正確な値で排ガス測定を行うことができないのを明示し、不毛な測定を継続させないようにするには、前記警告部が、前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示するとともに、前記ガス分析計による測定も不能であることを表示するように構成されたものであればよい。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の排ガス分析装置及び排ガス分析用プログラムによれば、前記注意喚起部が、前記バイパス流路を流れるサンプルガスの流量が前記調圧限界流量値とよりも大きい前記注意喚起流量値まで低下した時点で、流量の低下を表示するので、ユーザは完全に排ガス測定が不能となってしまう前に予め排ガス測定が継続不能となる時期を予期することができる。従って、予めフィルタやポンプ等のメンテナンスを行うことができ、排ガス測定の途中で中断しなければならないといった事態をなくすことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス分析システムの全体を示す模式図。
【図2】同実施形態における排ガス分析装置の詳細を示す模式図。
【図3】同実施形態における注意喚起部、警告部の動作タイミングを示す模式的グラフ。
【図4】従来の排ガス分析装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る排ガス測定装置3を備えた排ガス分析システム100について図面を参照して説明する。
【0021】
<全体の構成についての説明>
本実施形態の排ガス分析システム100は、テストセルと称される室内で自動車Vの排ガス測定を行うためもので、図1にその全体構成を示すように、供試体である自動車Vが載置されるシャシダイナモ装置1と、前記自動車Vのエンジンから出る排ガスに含まれる各種成分を分析する第1の排ガス測定装置2及び第2の排ガス測定装置3と、前記エンジンから出る排ガスを第1の排ガス測定装置2及び第2の排ガス測定装置3に導く排ガスフローラインLと、前記シャシダイナモ装置1を制御するダイナモ制御装置(不図示)及び各排ガス測定装置2、3との間でデータの授受を行う中央情報処理装置4とを有する。また、この排ガス分析システム100は、自動車Vの運転席に設置されて、アクセル、ブレーキ、シフトレバー、ハンドル等を機械的に駆動する駆動アームを備えた自動運転機構及びこれを制御する自動運転機構制御装置(いずれも不図示)を有し、外部からの制御信号に基づいて前記駆動アームを動作させることにより、当該自動車Vをシャシダイナモ装置1上で自動走行させるものである。
【0022】
排ガスフローラインLは、エンジンから出たエンジン排ガスを希釈することなく第1の排ガス測定装置2に導くための第1の排ガスフローラインL1と、エンジンから出たエンジン排ガスであって触媒(CAT)を通過して排気管(テールパイプ)から排出されるエンジン排ガスを希釈トンネルL21により希釈して第2の排ガス測定装置3に導くための第2の排ガスフローラインL2とを備える。
【0023】
第1の排ガスフローラインL1は、一端が排気筒に設けられてエンジンから出たエンジン排ガスを導入するための導入ポートP1を有し、他端が第1の排ガス測定装置2の接続ポート(不図示)に接続されるものであり、エンジン排ガスを直接サンプリングする直接サンプリングラインである。
【0024】
また、第2の排ガスフローラインL2は、自動車Vの排気管に接続されてエンジン排ガスを大気により希釈する希釈トンネルL21と、当該希釈トンネルL21に一端が設けられて希釈排ガスを導入するための導入ポートP2を有し、他端が第2の排ガス測定装置3の接続ポート(不図示)に接続される希釈サンプリングラインL22とを有する。
【0025】
第1の排ガス測定装置2は、測定原理の異なる複数のガス分析計を搭載しており、エンジン排ガス中に含まれるCO、CO、O、HC、THC、CH、NO、NO等の各成分を各別に連続測定することが可能な測定機器である。例えば、この第1の排ガス測定装置2は、CO、CO、HC、NOの濃度を測定する非分散型赤外線吸収方式(NDIR)を用いた赤外線ガス分析計と、NOの濃度を測定する化学発光方式(CLD)を用いたNO計と、Oの濃度を測定する磁気圧力式(PMD)を用いたO計と、THCの濃度を測定する加熱型水素炎イオン化検出法(HFID)を用いたTHC計と、CHの濃度を測定するガスクロマトグラフ/水素イオン化検出器(GC−FID)を用いたCH計とを有する。なお、本実施形態では、THCが排ガスフローラインLに吸着する汚染成分である。
【0026】
なお、この第1の排ガス測定装置2は、CPU、メモリ等を利用して構成したコンピュータシステムを備え、外部との間で制御信号やデータ等を相互に通信できる機能を有する。
【0027】
第2の排ガス測定装置3は、測定原理の異なる複数のガス分析計を搭載しており、希釈排ガス中に含まれるTHC、CH、NO等の各成分を各別に連続測定することが可能な測定機器である。例えば、この第2の排ガス測定装置3は、NOの濃度を測定する非分散型赤外線吸収方式(NDIR)を用いた赤外線ガス分析計と、THCの濃度を測定する加熱型水素炎イオン化検出法(HFID)を用いたTHC計と、CHの濃度を測定するガスクロマトグラフ/水素イオン化検出器(GC−FID)を用いたCH計とを有する。
【0028】
なお、この第2の排ガス測定装置3は、CPU、メモリ等を利用して構成したコンピュータシステムを備え、外部との間で制御信号やデータ等を相互に通信できる機能を有する。
【0029】
中央情報処理装置4は、例えばCPU、メモリ、通信インターフェイス、ディスプレイ、入力手段等を備えたコンピュータシステムであり、サーバ機能を有する。そして、前記各制御装置及び第1及び第2の排ガス測定装置2、3との間で、LAN等のネットワークNTを介してデータの授受を行い、それら各制御装置や第1及び第2の排ガス測定装置2、3の統括的な制御やデータ管理を行うことができるようにしてある。
【0030】
そして、例えばこの中央情報処理装置4に、車両情報、走行モード等の必要なパラメータを与えることによって、シャシダイナモ装置1、自動運転機構がそれらの制御装置を介して統括的に制御され、自動車V(車両)が所望の態様で走行するとともに、第1及び第2の排ガス測定装置2、3が作動して排ガスデータの自動測定が行われ、さらに、その排ガスデータや走行データが、この中央情報処理装置4において一元的に管理されるようにしている。
【0031】
なお、これら中央情報処理装置4、各制御装置及び第1、第2排ガス測定装置2、3を、図1のように物理的に独立分散させる必要は必ずしもなく、これらの一部又は全部が一体化するといった態様でも構わないのはもちろんである。
【0032】
<第2の排ガス測定装置3の詳細>
次に、前述した第2の排ガス測定装置3の詳細について図2を参照しながら説明する。
【0033】
前記第2の排ガス測定装置3は、排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路31と、前記導入流路31から分岐し、前記サンプルガスに含まれる成分を測定するガス分析計322が1又は複数設けられたセンサ流路32と、前記導入流路31から分岐し、前記サンプルガスの一部をバイパスさせるバイパス流路33と、を備えたものである。前記センサ流路32と前記バイパス流路33は下流において合流し、その合流点より下流には、各流路にサンプルガスを流通させるための吸引力を作用する吸引ポンプ34が設けてある。そして、前記バイパス流路33上には、前記サンプルガスの圧力を制御するための調圧弁331と、当該バイパス流路33を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサ332が設けてある。さらに、この排ガス測定装置3は、前記流量センサ332で測定される測定流量値に基づいて、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部41と、前記測定流量値に基づいて前記調圧弁331による調圧が不可能であることを表示する警告部42と、を備えている。
【0034】
各部について詳述する。
【0035】
前記導入流路31は、前記希釈トンネル21により希釈された排ガスが導入される流路であり、その途中に排ガス中に含まれるパーティクル等を除去するためのフィルタ311が設けてある。
【0036】
前記センサ流路32は、前述した3つのガス分析計322であるNOの濃度を測定するための赤外線ガス分析計と、THCの濃度を測定するためのTHC計と、CHの濃度を測定するためのCH計と、が並列に設けてあり、各ガス分析計322の上流側には、各ガス測定に必要な流量が流入するための流量制御弁321が設けてある。より具体的には、各ガス分析計322に流入するサンプルガスは、前記導入流路31に流入したサンプルガスの一部が所定割合ずつ分配されるように構成してある。
【0037】
前記バイパス流路33は、前記導入流路31に流入したサンプルガスの流量から、前記赤外線ガス分析計、THC計、CH4計に流入するサンプルガスの流量を引いた残りの分をバイパスし最終的に前記センサ流路32と合流して外へ排出するためのものである。すなわち、前記導入流路31に導入されたサンプルガスのうち、前記各ガス分析計322の測定に必要が無い過剰分をバイパスするものである。例えば、このバイパス流路33を流れるサンプルガスの流量は、正常時において2.0L/minに保たれるようにしてある。
【0038】
前記調圧弁331は、前記センサ流路32及び前記バイパス流路33を流れるサンプルガスの圧力を予め定められた設定圧力値で一定に保つものである。前記設定圧力値は、前記各ガス分析計322において正確な値で測定を行うために必要な圧力値に設定してある。
【0039】
前記流量センサ332は、前記バイパス流路33を流れるサンプルガスの流量を圧力式又は熱式の測定原理により測定するものであり、測定された測定流量値に応じた電圧値を出力するものである。この出力された電圧値は、前記中央情報処理装置4において所定サンプリングタイム毎に取得され、時系列データとして逐次表示される。
【0040】
前記注意喚起部41及び前記警告部42は、前記中央情報処理装置4の演算機能及び表示装置を利用してその機能を実現するものである。
【0041】
前記注意喚起部41は、前記流量センサ332で測定される流量測定値が前記調圧弁331により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示するように構成してある。
【0042】
前記警告部42は、前記流量センサ332で測定される流量測定値が前記調圧限界流量値以下となった場合に、前記調圧弁331による調圧が不可能であることを表示するように構成してある。
【0043】
<注意喚起部41、警告部42の動作の説明>
このように構成された第2の排ガス測定装置33の前記注意喚起部41、前記警告部42の動作について図3のグラフを参照しながら説明する。
【0044】
図3に示すように前記フィルタ311に詰まりが生じておらず、前記吸引ポンプ34にも問題が生じていない測定初期の状態である、正常測定状態においては、前記調圧弁331により制御されるサンプルガスの圧力は設定圧力値で一定に保たれていとともに、前記流量センサ332で測定される測定流量値も設定流量値で一定に保たれている。
【0045】
時間経過とともに、前記フィルタ311に詰まりが生じてくる、あるいは、前記吸引ポンプ34の能力が排ガス成分の付着等で低下してくると、サンプルガスの圧力は前記調圧弁331により設定圧力値で一定に保たれる一方、前記流量センサ332で測定される測定流量値は徐々に低下してくる状態である、測定許容状態となる。このような状態が生じるのは、前記フィルタ311の詰まり等により前記導入流路31に導入されるサンプルガスの量が少なくなっても前記調圧限界流量値となるまでであれば、前記調圧弁331による圧力制御は可能であるからである。すなわち、測定許容状態とは前記フィルタ311の詰まりなどが致命的な程度で生じていないため、詰まり等の異常は生じ始めているが、所定の精度で各ガス分析計322での測定が行える状態とも言える。この測定許容状態において、前記注意喚起部41は、前記調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい前記注意喚起流量値となった時点で、サンプルガスの流量が低下していることを表示する。
【0046】
さらに時間が経過すると、前記流量センサ332で測定される測定流量値が前記調圧限界流量値以下となってしまい、その時点からサンプルガスの圧力は設定圧力とは異なる値に変動する測定不能状態となる。この状態においては、前記調圧弁331によりサンプルガスの圧力を設定圧力値で一定に保つことができないので、前記各ガス分析計322において出力される測定値は測定条件を満たすものではなく、不正確な値が出力されることになる。前記警告部42は、前記流量センサ332の測定流量値が前記調圧限界流量値以下となったことをもって、測定不能状態であることを検出し、前記調圧弁331による調圧が不可能であることを表示する。
【0047】
例えば、前記バイパス流路33に正常測定状態において流れているサンプルガスの流量が2.0min/Lであるとすると、調圧限界流量値は、0.7min/L程度となる。従って、前記注意喚起流量値は、2.0〜0.7min/Lの間の値に設定してある。前記注意喚起流量値は、排ガス測定が終了するまでにかかる時間等を考慮して、注意喚起が始まってからすぐに測定不能状態となるのを防げるように設定してある。
【0048】
<本実施形態の効果>
このように構成された排ガス分析システム及び排ガス分析装置によれば、前記バイパス流路33を流れるサンプルガスの流量をモニタリングし、その測定流量値が前記調圧限界流量値よりも大きい前記注意喚起流量値となった時点で、排ガス測定を停止せずにサンプルガスの流量が低下していることを表示するように構成してあるので、圧力が一定に保たれなくなり、各ガス分析計322により正確な測定ができなくなる前の時点で、測定不能となる時期をユーザが予期する事が可能となる。従って、ユーザは排ガス測定装置3がフィルタ311の詰まりや吸引ポンプ34の能力低下により完全に測定不能となる前に、予めメンテナンス等を行うことができ、排ガス測定の途中で測定を中断しなくてはならないといった事態を防ぐことができる。つまり、従来のようにサンプルガスの圧力に基づいてモニタリングを行っていた場合、完全に排ガス測定が不可能となった時点でしかユーザに通知できず、排ガス測定の途中で中断して、測定データが無駄になってしまっていたという問題を生じないようにすることができる。
【0049】
その他の実施形態について説明する。
【0050】
前記実施形態では、前記注意喚起部はサンプルガスの流量の低下を表示するものであったが、さらに、前記ガス分析計による測定は可能であることも表示するようにしても構わない。また、前記警告部は調圧弁による調圧が不可能であることを示すものであったが、さらに、前記ガス分析計による測定も不能であることを表示するものであってもよい。加えて、前記警告部は、測定流量値に基づいて調圧弁による中圧が不可能であるかどうかを判断するように構成していたが、サンプルガスの圧力そのものをモニタリングして設定圧力値から所定値以上離れた値となった場合に調圧不可であることを表示するようにしてもよい。
【0051】
前記実施形態では、第2の排ガス測定装置に本発明を適用した例を示しているが、第1の排ガス測定装置に同様の構成を適用しても構わない。また、前記実施形態では、中央情報処理装置により前記注意喚起部、前記警告部の機能を実現していたが、例えば、前記第1の排ガス測定装置又は前記第2の排ガス測定装置の演算機能及び表示装置を用いてその機能を実現しても構わない。また、前記流量センサはバイパス流路以外の流路である導入流路、センサ流路に設けても構わない。ただし、バイパス流路に設けた方が、各ガス分析計の測定精度に前記流量センサが悪影響を与えにくいので、より好ましい。
【0052】
さらに、既存の排ガス分析装置を構成するコンピュータに対して、前記注意喚起部の機能を実現する排ガス測定装置用プログラムを記録媒体等によりインストールしても構わない。
【0053】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0054】
3 ・・・排ガス測定装置
31 ・・・導入流路
32 ・・・センサ流路
322・・・ガス分析計
33 ・・・バイパス流路
331・・・調圧弁
332・・・流量センサ
41 ・・・注意喚起部
42 ・・・警告部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路と、
前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスに含まれる成分を測定するガス分析計が1又は複数設けられたセンサ流路と、
前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスの一部をバイパスさせるバイパス流路と、
前記センサ流路又は前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を設定圧力値に保つ調圧弁と、
前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサと、
前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧弁により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部と、を備えたことを特徴とする排ガス測定装置。
【請求項2】
前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧限界流量値以下となった場合に、前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示する警告部を更に備えた請求項1記載の排ガス測定装置。
【請求項3】
前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を測定する圧力センサを更に備え、
前記設定圧力値と、当該圧力センサで測定される測定圧力値との差が所定値以上となった場合に、前記警告部が前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示するように構成された請求項2記載の排ガス測定装置。
【請求項4】
前記注意喚起部が、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示するとともに、前記ガス分析計による測定は可能であることを表示するように構成された請求項1、2又は3記載の排ガス測定装置。
【請求項5】
前記警告部が、前記調圧弁による調圧が不可能であることを表示するとともに、前記ガス分析計による測定も不能であることを表示するように構成された請求項2、3又は4記載の排ガス測定装置。
【請求項6】
排ガスを含むサンプルガスが導入される導入流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスに含まれる成分を測定するガス分析計が1又は複数設けられたセンサ流路と、前記導入流路から分岐し、前記サンプルガスの一部をバイパスさせるバイパス流路と、前記センサ流路又は前記バイパス流路における前記サンプルガスの圧力を設定圧力値に保つ調圧弁と、前記バイパス流路に設けられ、当該バイパス流路を流れる前記サンプルガスの流量を測定する流量センサと、を備えた排ガス測定装置に用いられるプログラムであって、
前記流量センサで測定される流量測定値が前記調圧弁により調圧が可能な下限の流量値である調圧限界流量値よりも所定値だけ大きい流量値である注意喚起流量値以下となった場合に、前記サンプルガスの流量が低下していることを表示する注意喚起部、を備えたことを特徴とする排ガス測定装置用プログラム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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