説明

排ガス脱硝装置

【課題】燃焼炉から発生する排ガス中の窒素酸化物を作業性よく、更には経済的に除去可能な排ガス脱硝装置を提供する。
【解決手段】燃焼炉11から発生する排ガスの排ガス路12に設けられた排ガス脱硝装置10であって、排ガス路12内に加熱処理した鉄含有粉体を添加する添加手段17と、添加手段17の下流側の排ガス路12に設けられ、開口25を有する多孔板で構成されて、排ガス路12内に添加された鉄含有粉体を集塵する複数の集塵電極21、及び各集塵電極21を槌打する槌打機35を備える脱硝用電気集塵機18と、脱硝用電気集塵機18の上流側の排ガス路12内にアンモニアを噴霧する噴霧手段19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉の排ガス路に設ける排ガス脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所は、燃焼炉として、例えば、コークス炉、乾燥炉、ボイラー等を有している。
この燃焼炉の操業時に発生する排ガス中には、窒素酸化物(NOx)が含まれているため、例えば、五酸化バナジウム触媒を用いる方法や、活性炭又はマンガン鉱石を触媒として用いる方法により、大気放散する前に排ガスから窒素酸化物を除去している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−272340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来用いられていた各触媒は、使用に際して、成型や粒度選別を行う必要があり、手間を要するため作業性が悪い。また、各触媒の脱硝能力が失われる前に交換する必要があり、触媒の回収に手間を要する。更に、各触媒の利用に際しては、ランニングコストがかかって不経済である。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、燃焼炉から発生する排ガス中の窒素酸化物を作業性よく、更には経済的に除去可能な排ガス脱硝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)燃焼炉から発生する排ガスの排ガス路に設けられた排ガス脱硝装置であって、
前記排ガス路内に加熱処理した鉄含有粉体を添加する添加手段と、
前記添加手段の下流側の前記排ガス路に設けられ、開口を有する多孔板で構成されて、前記排ガス路内に添加された前記鉄含有粉体を集塵する複数の集塵電極、及び該各集塵電極を槌打する槌打機を備える脱硝用電気集塵機と、
前記脱硝用電気集塵機の上流側の前記排ガス路内にアンモニアを噴霧する噴霧手段とを有することを特徴とする排ガス脱硝装置。
【0007】
(2)前記鉄含有粉体は、製鉄工程から発生する集塵ダストであることを特徴とする(1)記載の排ガス脱硝装置。
(3)前記排ガス路はバイパス路を有し、前記脱硝用電気集塵機を前記バイパス路に設け、前記添加手段と前記噴霧手段を前記バイパス路の前記脱硝用電気集塵機より上流側位置に設けたことを特徴とする(1)又は(2)記載の排ガス脱硝装置。
【0008】
(4)更に、前記脱硝用電気集塵機の下流側には、該脱硝用電気集塵機で回収されなかった残部の鉄含有粉体を回収する集塵機が設けられていることを特徴とする(1)〜(3)記載の排ガス脱硝装置。
(5)前記脱硝用電気集塵機の上流側に、排ガスを昇温するための昇温手段を設けたことを特徴とする(1)〜(4)記載の排ガス脱硝装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排ガス脱硝装置は、排ガス路内に鉄含有粉体を添加する添加手段と、排ガス路に添加した鉄含有粉体を集塵する脱硝用電気集塵機と、排ガスにアンモニアを噴霧する噴霧手段とを有し、これらが、排ガス路に設けられているので、鉄含有粉体を、例えば、成型や粒度選別等の事前処理を行うことなく、そのまま脱硝のための触媒として利用できる。また、触媒の比表面積を、成型品(成形触媒)よりも大きくできるので、脱硝能力の向上が図れる。
そして、脱硝用電気集塵機は、各集塵電極を槌打する槌打機を備えているので、鉄含有粉体の交換を行うに際しては、槌打機により各集塵電極を槌打して、この集塵電極に付着した鉄含有粉体を落下させればよく、この鉄含有粉体を落下させた後は、添加手段により添加された新たな鉄含有粉体が、各集塵電極に捕集される。これにより、鉄含有粉体による脱硝能力を維持できると共に、使用済みの鉄含有粉体の回収作業が容易になる。
更に、脱硝用電気集塵機の集塵電極が開口を有する多孔板で構成されているため、この脱硝用電気集塵機内を流れる排ガスの流れを更に大きく乱すことができる。これにより、各集塵電極に集塵された鉄含有粉体と排ガスとの接触効率が高められ、脱硝能力の更なる向上が図れる。
以上のことから、燃焼炉から発生する排ガス中の窒素酸化物を作業性よく除去できる。
【0010】
ここで、鉄含有粉体が製鉄工程から発生する集塵ダストである場合、ランニングコストの低減が図れ、排ガス中の脱硝を経済的に実施できる。
【0011】
また、排ガス路の排ガス量が多い場合、又は除去する窒素酸化物量が少なくてよい場合には、この排ガス路にバイパス路を設け、このバイパス路に排ガス脱硝装置、即ち鉄含有粉体の添加手段、アンモニアの噴霧手段、及び脱硝用電気集塵機を設けることが好ましく、この排ガス脱硝装置をバイパス路を介することなく排ガス路へ取付ける場合と比較して、脱硝用電気集塵機を小型化でき、更に鉄含有粉体の添加量やアンモニアの噴霧量を少なくすることが可能となり、コスト的に有利となる。
【0012】
そして、脱硝用電気集塵機の下流側に、脱硝用電気集塵機で回収されなかった残部の鉄含有粉体を回収する集塵機を設けることが好ましい。これにより、脱硝用電気集塵機で集塵されなかった残部の鉄含有粉体が大気へ放散されることを防止できる。
【0013】
また、脱硝用電気集塵機の上流側に、排ガスを昇温するための昇温手段を設けることが好ましく、例えば、燃焼炉からの排ガス温度が低くても、鉄含有粉体を含む排ガスの温度を、鉄含有粉体の脱硝能力の向上が図れる温度まで、容易に上昇できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る排ガス脱硝装置の説明図である。
【図2】排ガス温度が焼結ダストの脱硝率に及ぼす影響を示す説明図である。
【図3】同排ガス脱硝装置の脱硝用電気集塵機の説明図である。
【図4】(A)〜(D)はそれぞれ脱硝用電気集塵機に使用する集塵電極の説明図である。
【図5】(A)〜(E)はそれぞれ脱硝用電気集塵機に使用する放電電極の説明図である。
【図6】(A)は脱硝用電気集塵機の集塵電極を排ガスの流れに沿って配置した場合の脱硝用電気集塵機内部の排ガスの流れを模式的に示した説明図、(B)は(A)の部分拡大図である。
【図7】脱硝用電気集塵機の集塵電極を排ガスの流れに対して直交する方向に配置した場合の脱硝用電気集塵機内部の排ガスの流れを模式的に示した説明図である。
【図8】荷電時の脱硝用電気集塵機内の状況を模式的に示した説明図である。
【図9】脱硝用電気集塵機の荷電の有無が脱硝率に及ぼす影響を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る排ガス脱硝装置10は、コークス炉(燃焼炉の一例)11から発生する排ガスの排ガス路12に設けられた装置であり、コークス炉11から発生する排ガス中の窒素酸化物(NOx)を、鉄含有粉体を用いて除去する装置である。以下、詳しく説明する。
【0016】
コークス炉11には、コークス炉11から発生した排ガスを下流側へ流す排ガス路12が接続され、この排ガス路12内を流れる排ガスは、排ガス中の窒素酸化物が除去された後、煙突13により大気へ放散される。
排ガス路12は、主排ガス路14と、この主排ガス路14から排ガスの一部(例えば、10〜50%程度)を吸引するブロワー15を備えたバイパス路16とを有しており、このバイパス路16に、集塵機38を除く排ガス脱硝装置10が設けられている。なお、集塵機38を除く排ガス脱硝装置10は、主排ガス路(排ガス路)に直接設けてもよい。この場合、バイパス路の有無は問わない。
【0017】
排ガス脱硝装置10は、バイパス路16内に鉄含有粉体を添加する添加手段17と、バイパス路16に添加した鉄含有粉体を集塵する脱硝用電気集塵機18と、脱硝用電気集塵機18の上流側の排ガスにアンモニア(NH)を噴霧する噴霧手段19とを有している。
この鉄含有粉体は、酸化鉄(Fe)が主体(80質量%以上)の粉体である。この鉄含有粉体には、製鉄工程から発生する集塵ダストを使用することが好ましく、特に、焼結機の排ガス中から回収した焼結ダストが好ましいが、これに限定されるものではなく、FeOを多く含むダストの場合には、予め、300〜800℃程度に加熱処理しFeOを酸化してFeにする。
【0018】
ここで、鉄含有粉体の一例として、焼結機から発生した排ガス中から回収された焼結ダスト(酸化鉄(Fe):80質量%以上)を使用し、排ガスの温度が焼結ダストの脱硝率に及ぼす影響を、図2を参照しながら説明図する。なお、図2は、横軸に排ガス温度(焼結ダストの温度と同等)をとり、縦軸に脱硝率をとっている。
また、焼結ダストには、3mm×3〜8mmのペレット状としたものを使用し、これを、NH/NOのモル比を1.5(NO:300ppm、NH:450ppm)、SOを500ppm(ただし、200〜250℃では0ppm)に調整した空気中に曝して、脱硝能力を調査した。なお、使用した焼結ダストの化学成分を、表1に示す(なお、表1中の合計が100質量%にならないのは四捨五入による)。
【0019】
【表1】

【0020】
図2から、排ガス温度の上昇に伴い、脱硝率が上昇することを確認できた。特に、排ガス温度を300〜400℃程度の範囲内にした場合には、脱硝率を80%以上にできた。
従って、鉄含有粉体が、十分な脱硝能力を備えていることを確認できた。なお、この傾向は、鉄含有粉体の形状(例えば、粒径等)や化学成分によって多少の変動はあるが、略同等の傾向を示す。
【0021】
上記したことから、排ガス温度が300℃未満の場合は、バイパス路16の脱硝用電気集塵機18の上流側位置(例えば、添加手段17と脱硝用電気集塵機18との間)に、バイパス路16を流れる排ガスを加熱して排ガスを昇温(追い焚き)するための昇温手段を設けて、使用することが好ましい。なお、昇温手段には、例えばバーナ等を使用できるが、これに限定されるものではない。
これにより、鉄含有粉体の温度が、脱硝能力を発揮できる程度まで十分に高くならない場合には、鉄含有粉体を搬送する排ガスの温度を、鉄含有粉体の脱硝能力が顕著となる温度まで上昇させることができる。
【0022】
一方、排ガス温度が400℃を超える場合は、冷風(例えば、空気等)を、バイパス路16の脱硝用電気集塵機18の上流側位置(例えば、添加手段17と脱硝用電気集塵機18との間)に供給することが好ましい。
これにより、鉄含有粉体の温度が、脱硝能力を十分に発揮できる範囲を超えるほど高い場合には、鉄含有粉体を搬送する排ガスの温度を、鉄含有粉体の脱硝能力が顕著となる温度まで低下させることができる。
【0023】
添加手段17は、排ガス路12のバイパス路16に取付けられている。
この添加手段17は、バイパス路16に接続される供給用配管を有し、この供給用配管を介して、鉄含有粉体をバイパス路16内に供給している。なお、添加手段は、バイパス路16内に鉄含有粉体を添加できる構成であれば、この構成に限定されるものではない。
脱硝用電気集塵機18は、バイパス路16の添加手段17とブロワー15との間(添加手段17の下流側)に取付けられている。
なお、ここでは、脱硝用電気集塵機の設置台数を1台としたが、1台あたりの集塵機の規模や脱硝能力(煙突13から排出される排ガス中の窒素酸化物が環境基準を満足する能力)を考慮して、2台以上の複数台とすることもできる。このように、複数台の脱硝用電気集塵機を設ける場合は、これらを直列又は並列に配置することができる。
【0024】
脱硝用電気集塵機18は、図3に示すように、バイパス路16に接続されたケーシング20と、このケーシング20内に配置され、排ガス中の鉄含有粉体を集塵する複数の集塵電極21、及び外部の高電圧発生装置22に接続された複数の放電電極23とを有している。
ケーシング20は、上流側端部が、下流側へ向けて拡幅する逆テーパ状となって、下流側端部が、下流側へ向けて縮幅するテーパ状となった中膨らみ形状である。これにより、バイパス路16からケーシング20内に流れ込んだ排ガスの流速が低下して、所定の滞留時間(反応時間)を確保できる。
【0025】
また、ケーシング20内には、複数の集塵電極21が、排ガスの流れる方向に対して直交する方向(ここでは、上下方向)に、しかも予め設定した間隔(例えば、10〜40cm程度)を有して、支持部材21aを介して平行に取付けられ、各集塵電極21の前方(上流側)に集塵電極21に対向して、複数の放電電極23からなる放電電極群が取付けられている(最上流側位置の集塵電極21の前方には放電電極群がない。即ち、隣り合う集塵電極21の間に放電電極群が設けられていることになる)。なお、放電電極群は、予め設定した間隔(例えば、10〜40cm程度)で各放電電極23が平行に配置され、この各放電電極23は、絶縁碍子24を介してケーシング20に取付けられている。この各放電電極23は、絶縁碍子24内に形成された貫通孔24aを介して、ケーシング20内に挿入され、貫通孔24aと放電電極23との隙間が、シール材24bにより封止されている。また、高電圧発生装置22には、全ての放電電極23が接続されているわけではなく、一部の放電電極23は、高電圧発生装置22に接続された放電電極23と、ケーシング20内で接続されている。
このように、複数の集塵電極21は、ケーシング20に排ガスの流れる方向に対して直交する方向に取付けることが好ましいが、排ガスの流れる方向に沿って(左右方向に)取付けてもよく、また排ガスの流れる方向に傾斜させて取付けてもよい。
【0026】
この集塵電極21は、図3、図4(A)に示すように、金属製の平板に多数の開口25が形成されたパンチングプレート(多孔板の一例)で構成されている。この開口率は、平板の面積の50〜80%程度が好ましい。
なお、集塵電極21は、パンチングプレートに限定されるものではなく、平坦な形状であれば、例えば、図4(B)に示す金網26、又は図4(C)、(D)に示す金属製のパイプ27や棒28を一列に並べたものでもよい。なお、これらも、開口を有する多孔板に含まれる。
【0027】
また、放電電極23は、図3、図5(A)に示すように、パイプ29に多数の突起30を取付けた形状のものである。
なお、放電電極は、上記した形状に限定されるものではなく、放電し易い鋭利な形状であれば、例えば、図5(B)に示すように、断面角形の棒の角部を尖らせた星形状の放電電極31や、図5(C)、(D)に示す鋸刃状の放電電極32、33、図5(E)に示す極細(径が0.3〜2mm程度)のワイヤー34でもよい。
【0028】
ここで、脱硝用電気集塵機を作動させた場合のケーシング20内の状況について説明する。
図6(A)、(B)に示すように、集塵電極21を排ガスの流れに沿って配置した場合、全体的に排ガスは、図6(A)の左側から右側へ向けて流れるが、詳細にみると、イオン風(放電電極23から集塵電極21への排ガスの流れ:図中の湾曲した矢印)で旋回や攪拌がなされながら流れる。具体的には、集塵電極21に引き寄せられた排ガスは、そのままイオン風に押されて隣の開口25(ガス通路)に出て行き、今度は、逆向きのイオン風に押され、再度集塵電極21に引き寄せられ、元の開口25に戻る。
上記した状況を繰り返しながら、排ガスは、ケーシング20の左側から右側へと、全体として流れてゆく。
【0029】
また、図7に示すように、集塵電極21と排ガスの流れとを直交させた場合(図3に示す脱硝用電気集塵機18を平断面視した状態。なお、図3に示す最上流側位置の集塵電極21は省略している。)、基本的には、上記と同じ考え方で、排ガスは、集塵電極21を行ったり来たりしながら、ケーシング20の左側から右側へと、全体として流れてゆく。
以上の状況下では、放電電極23を荷電した場合、図8に示すように、排ガスも焼結ダスト(鉄含有粉体)も帯電する。このとき、排ガスは集塵電極21に引き寄せられ、これがイオン風となり、一方、焼結ダストは、上記したイオン風と電界(クーロン力)で、集塵電極21に運ばれ捕集される。
【0030】
上記した脱硝用電気集塵機内のガス撹拌性を利用することで、イオン化した排ガスと帯電した焼結ダストの反応が促進されると共に、イオン化した排ガスと帯電した焼結ダストが引き合うため、更に反応が促進される。詳細には、イオン化した排ガスが、焼結ダスト表層の層流層をブレイクスルーする効果があり、これにより、イオン化した排ガスが、アース面の焼結ダスト(Fe)と接触し易くなる。
また、集塵電極で集塵された焼結ダストの集塵電極への付着は、焼結ダストの粒子相互がソフト的(ふんわり)に接触した状態であり、排ガスとの接触面積が非常に大きいことからも、脱硝能力が高い。なお、焼結ダストの粒径は、100μm以下である。
【0031】
ここで、脱硝用電気集塵機の荷電の有無が、脱硝効率に及ぼす影響を、図9を参照しながら説明する。なお、図9は、横軸に排ガス温度(焼結ダストの温度と同等)をとり、縦軸に脱硝率をとっており、脱硝用電気集塵機の放電電極を荷電した場合を実線で、荷電しなかった場合を点線で、それぞれ示している。なお、使用した焼結ダストは、前記表1に記載の成分を有する酸化鉄(Fe)が主体(80質量%以上)の粉体である。
ここで、排ガス量を100Nm/時間、排ガス中のNOxを170ppm、排ガスへのNH添加量を200ppm、排ガス中の焼結ダスト添加量を単位排ガス量当たり0.5g/Nm、荷電電圧を2kV、電流を5mA、荷電時間を2秒とした。
図9から、荷電を行うことで、焼結ダストと排ガスが帯電して両者が引き合って凝集し、脱硝効率を向上できることを確認できた。特に、排ガス温度が低い場合は、荷電により脱硝効率が向上できることを確認できた。
【0032】
図3に示すように、各集塵電極21の下部には、その集塵電極21を槌打する槌打機35が、各々取付けられている。
槌打機35は、例えば、バイブレータやハンマで構成され、これにより集塵電極21に衝撃を付与し、その表面に付着した鉄含有粉体を、ケーシング20の下部に払い落とすものであり、予め設定した時間間隔で自動的に動作する。なお、ケーシング20の下部には、下方へ向けて縮幅するテーパ状の複数の貯留部36が設けられ、その下端部には、落下した鉄含有粉体の排出口37が取付けられている。
従って、各槌打機35により、集塵電極21の表面から払い落とされた鉄含有粉体は、ケーシング20の貯留部36を介して、排出口37から外部へ排出される。
【0033】
また、図1に示すように、バイパス路16の添加手段17の上流側位置には、噴霧手段19が設けられている。なお、噴霧手段19は脱硝用電気集塵機18の上流側に配置されていれば、バイパス路16の添加手段17の下流側位置に設けてもよい。
噴霧手段19は、排ガス路12内(ここでは、バイパス路16内)に、アンモニア(ガス又は液体)の噴出部が配置されたものである。なお、噴出部は、排ガスとアンモニアとの接触効率を高めるため、霧状に噴霧可能なノズルで構成されているが、これに限定されるものではない。
これにより、アンモニアを含有した排ガスは、脱硝用電気集塵機18内で鉄含有粉体に接触し、この排ガス中の窒素酸化物が、鉄含有粉体(特に、酸化鉄(Fe)成分)を触媒として、窒素と水に分解する作用を起こさせ、脱硝が行われる。
【0034】
上記したように、バイパス路16に添加手段17を設け、バイパス路16内に鉄含有粉体を添加する場合、その添加量によっては、脱硝用電気集塵機18のみで全ての鉄含有粉体を回収できない恐れがある。そこで、図1に示すように、脱硝用電気集塵機18の下流側(例えば、バイパス路16又は主排ガス路14)に、脱硝用電気集塵機18で回収されなかった残部の鉄含有粉体を回収する集塵機38を設ける。この集塵機38は、通常の集塵電極(開口を有していない集塵電極をガスの流れ方向と平行に設置したもの)を有する電気集塵機、又はバグフィルタ式集塵機等が好ましい。なお、脱硝用電気集塵機18のみで全ての鉄含有粉体を回収できるのであれば、この集塵機を設けなくてもよい。
また、複数台の集塵機を設ける場合は、これらを直列又は並列に配置することができる。
【0035】
続いて、本発明の一実施の形態に係る排ガス脱硝装置10を使用して、コークス炉11から発生する排ガス中の窒素酸化物を除去する方法について説明する。
コークス炉11の操業に伴い、コークス炉11で発生する排ガスを煙突13側へ送ると共に、その一部を、ブロワー15によりバイパス路16側へ吸引する。このとき、脱硝用電気集塵機18の高電圧発生装置22を作動させ、添加手段17によりバイパス路16内に添加された鉄含有粉体を、脱硝用電気集塵機18の各集塵電極21に集塵すると共に、噴霧手段19を作動させ、排ガス中にアンモニアを噴霧する。この鉄含有粉体の添加は、連続的に行ってもよく、また、脱硝用電気集塵機18の槌打完了時期に対応させて間欠的に行ってもよい。
【0036】
これにより、各集塵電極21に集塵されて付着した鉄含有粉体が触媒となって、排ガス中の窒素酸化物を除去できる。なお、脱硝用電気集塵機18内の排ガスの滞留時間(集塵時間)は、通常2〜5秒程度で十分である。
そして、鉄含有粉体の脱硝能力が低下する前に、槌打機35を作動させて、各集塵電極21に付着した鉄含有粉体を落下させ、排出口37から排出する。なお、各槌打機35の動作時期は、同時でもよいが、ずらすことが好ましい。これにより、新たな鉄含有粉体が各集塵電極21に捕集され、常に、集塵電極21のいずれか1又は2以上に付着した鉄含有粉体が、脱硝機能を発揮できる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
図1に示すように、排ガス脱硝装置10を、コークス炉11から発生する排ガスの排ガス路12に設けて、コークス炉11から発生する排ガス中の窒素酸化物(NOx)を、焼結ダストを用いて除去した。なお、脱硝用電気集塵機18の集塵電極には、図4(C)に示す金属製のパイプ27を一列に並べたものを使用し、放電電極には、図5(A)に示すパイプ29に多数の突起30を取付けた形状のものを使用した。また、集塵機38にバグフィルタ式集塵機を使用し、脱硝用電気集塵機18で回収されなかった全ての焼結ダストを回収した。
ここで、コークス炉11から発生する燃焼排ガス量は128000Nm/時間、排ガスの温度は281℃、処理前の燃焼排ガス中の窒素酸化物量は170ppm、であった。
【0038】
次に、ブロワー15を作動させ、脱硝用電気集塵18内を流れる排ガスの流速を1.4m/秒とし、機焼結ダストを添加手段17によりバイパス路16内に添加すると共に、アンモニアを噴霧手段19によりバイパス路16内に噴霧した。なお、使用した焼結ダストの成分は、酸化鉄(Fe)が87質量%、その他(Si、Al、CaO等)が13質量%であり、その粒度は100μm以下であった。
ここで、焼結ダストの添加量を65kg/時間とし、バイパス路16内への添加を連続的に行った。また、アンモニアの添加量を180ppmとした。
【0039】
そして、脱硝用電気集塵機18の荷電圧を40kV、電流を92mAに設定し、排ガス中の窒素酸化物を除去したところ、その濃度を35ppm(20%程度)まで低減できた。
なお、窒素酸化物の除去率は、他の集塵電極や放電電極を使用した場合も、同様の傾向が得られたが、図4(A)に示す集塵電極を使用した場合に、窒素酸化物量の低減効果が特に顕著であった。
以上のことから、本発明の排ガス脱硝装置のように、排ガス中に添加された鉄含有粉体を集塵する複数の集塵電極を備える脱硝用電気集塵機を有することで、燃焼炉から発生する排ガス中の窒素酸化物を作業性よく、更には経済的に除去できることを確認できた。
【0040】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の排ガス脱硝装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、燃焼炉としてコークス炉を使用した場合について説明したが、窒素酸化物が発生する燃焼炉であれば、これに限定されるものではなく、例えば、乾燥炉やボイラー等がある。
【符号の説明】
【0041】
10:排ガス脱硝装置、11:コークス炉(燃焼炉)、12:排ガス路、13:煙突、14:主排ガス路、15:ブロワー、16:バイパス路、17:添加手段、18:脱硝用電気集塵機、19:噴霧手段、20:ケーシング、21:集塵電極、21a:支持部材、22:高電圧発生装置、23:放電電極、24:絶縁碍子、24a:貫通孔、24b:シール材、25:開口、26:金網、27:パイプ、28:棒、29:パイプ、30:突起、31〜33:放電電極、34:ワイヤー、35:槌打機、36:貯留部、37:排出口、38:集塵機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉から発生する排ガスの排ガス路に設けられた排ガス脱硝装置であって、
前記排ガス路内に加熱処理した鉄含有粉体を添加する添加手段と、
前記添加手段の下流側の前記排ガス路に設けられ、開口を有する多孔板で構成されて、前記排ガス路内に添加された前記鉄含有粉体を集塵する複数の集塵電極、及び該各集塵電極を槌打する槌打機を備える脱硝用電気集塵機と、
前記脱硝用電気集塵機の上流側の前記排ガス路内にアンモニアを噴霧する噴霧手段とを有することを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項2】
請求項1記載の排ガス脱硝装置において、前記鉄含有粉体は、製鉄工程から発生する集塵ダストであることを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の排ガス脱硝装置において、前記排ガス路はバイパス路を有し、前記脱硝用電気集塵機を前記バイパス路に設け、前記添加手段と前記噴霧手段を前記バイパス路の前記脱硝用電気集塵機より上流側位置に設けたことを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス脱硝装置において、更に、前記脱硝用電気集塵機の下流側には、該脱硝用電気集塵機で回収されなかった残部の鉄含有粉体を回収する集塵機が設けられていることを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス脱硝装置において、前記脱硝用電気集塵機の上流側に、排ガスを昇温するための昇温手段を設けたことを特徴とする排ガス脱硝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−161330(P2011−161330A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24466(P2010−24466)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】