説明

排ガス計測装置

【課題】排気接続管内の汚れを高感度で簡易に分析を行なうことが可能な排ガス計測装置を提供する。
【解決手段】排ガス計測装置10は、取り込んだ空気11を精製した精製空気12を希釈空気として用いる排ガス計測装置であり、空気11の温度を調整し、温度調整した空気を精製空気12として圧送する空気精製機13と、精製空気12を流通させる主通路17と、排ガスを主通路17内に送給する排気接続管18と、排ガスと精製空気12とが混合される混合部19より下流側に設けられ、主通路17内を開閉可能とする開閉弁20と、排気接続管18の接続部21から分岐した第一の分析ライン22−1と、主通路17から分岐された第二の分析ライン22−2と、第一の分析ライン22−1に採取したパージガス12A又は第二の分析ライン22−2に採取した希釈排ガスを分析する分析器23に接続される第三の分析ライン22−3とが連結される三方弁24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの計測対象成分の排出質量を求める排ガス計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両では、排ガス計測装置を用いて、エンジンから放出される排ガスの排出質量を計測して評価することが行なわれている。自動車の排ガス中に含まれる各種の成分の排出質量を計測する場合、その信頼性、安定性からCVS(Constant Volume Sampler)と呼ばれる方法を採用した定容量採取装置(以下「CVS装置」という。)が排ガス計測装置として使用されている。CVS装置は、空気で希釈した排ガスから排出質量を計測するため、希釈空気中の計測対象成分(バックグラウンド:B.G)を別途計測し、計測対象成分との差で排ガスの計測対象成分の排出質量を求める。
【0003】
CVS装置において排気接続管の汚れ具合を確認する際には、上記原理に基づいて、車両の排気管を接続しないでCVS装置に空気のみを供給するダミー試験を行い、排気接続管をパージして、供給した空気のみを採取し、分析することで、排気接続管内の脱離した汚れが排出質量として計測されることにより、排気接続管内の汚れ状態を把握する方法が用いられている。
【0004】
また、空気精製機を備えたCVS装置として、前記空気精製機から排出される精製空気を取り込むラインと、大気中の空気を取り込むラインとを設け、精製空気又は空気のどちらか一方を選択して希釈空気として用い、排ガスの排出質量を求める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−19744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年の多種燃料車の開発、未規制成分を含む計測対象成分の多様化、及び低濃度化に伴い、CVS装置において排気接続管の汚れを計測して評価する際、より高度な計測性能を有するCVS装置のパージ方法が求められている。
【0007】
しかしながら、アルコール燃料や、圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)を用いた車両等から排出される排気中の水分濃度は、例えば従来より使用されている通常の燃料を用いた車両の1.5倍から2.0倍程度と高い。そのため、CVS装置を用いて排ガスの排出質量の計測を終了した後、排気接続管に凝縮水が残留し易く、この凝縮水にアルコール、アルデヒド、他に酸素を含む炭化水素及びNH3、NO2などの計測対象成分が溶解することで、排気接続管内にこうした計測対象成分が根強い汚れとして残る。こうした計測対象成分が次回以降で別の車両から排出される排ガスの排出質量の測定を行なう試験中に脱離することで、排ガスの排出質量の計測値に誤差を生じさせる、という問題がある。
【0008】
特に、次回以降で排ガスの排出質量の測定を行なう車両が低エミッション車である場合、低エミッション車の評価を正確に行うため、計測値の誤差を防ぎ、より正確に排ガスの排出質量の測定を行う必要がある。
【0009】
また、水溶性の高いアルコール、アルデヒド等のような酸素を含む化合物の排出割合が増加し、未規制成分を含む計測対象成分が更に多様化していることから、NH3等の水溶性の高い成分に対しても計測可能とすることが求められている。
【0010】
また、CVS装置において、排気接続管に残る計測対象成分を脱離するために従来より用いられているパージ方法では、図3に示すように、CVS装置100Aに空気のみを供給するダミー試験を行う際、排気接続管101内を流れる空気102の空気量は少なく、常温又は低温であるため、CVS装置100Aの排気接続管101のパージ効果は僅かである。また、排出質量として計測される汚れの状態は、排気接続管101から少しずつ脱離する成分を空気103により希釈して把握することになるため、排気接続管101の汚れを検知できるほどの感度が得られない。そのため、排気接続管101から脱離する計測対象成分が僅かであることに加え、排気接続管101に送給される空気102が例えば数十倍の空気103によって希釈されるため、排気接続管101の汚れを検知することができない、という問題がある。
【0011】
更に、図4に示すように、CVS装置100Bにおいて、希釈空気精製機を使用し、精製した空気を用いて排気接続管に残る計測対象成分を脱離するパージ方法では、CVS装置100Bに空気のみを供給するダミー試験を行った際、排気接続管101から空気102が流入すると、精製空気111中の計測対象成分を汚れとして誤認し、排気接続管101の入口側を栓112で塞いでしまうため、排気接続管101のパージ効果が得られない、という問題がある。
【0012】
このように、近年の多種燃料車の開発、及び未規制成分を含む計測対象成分の多様化、低濃度化に伴い、CVS装置において排気接続管の汚れをより高精度に分析することができる排ガス計測装置が求められている。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排気接続管内の汚れを高感度で簡易に分析を行なうことが可能な排ガス計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための本発明は、大気中の空気を取り込んで精製した精製空気を希釈空気として用い、検査対象から排出される排ガスを前記精製空気と混合し、希釈した希釈排ガスの排出質量を計測し、前記排ガスから排出される計測対象成分の排出質量を求める排ガス計測装置において、取り込んだ空気の温度を調整し、温度調整した空気を精製空気として圧送する空気精製機と、前記空気精製機で精製された前記精製空気を流通させる主通路と、前記検査対象から排出される前記排ガスを前記主通路内に送給する排気接続管と、前記排気接続管から前記主通路内に送給される前記排ガスと前記空気精製機より供給される前記精製空気とが混合される混合部より下流側に設けられ、前記主通路内を開閉可能とする開閉弁と、前記排気接続管が前記検査対象と接続される接続部から分岐した第一の分析ラインと、前記開閉弁より下流側に設けられ、前記主通路から分岐された第二の分析ラインと、前記第一の分析ラインからパージされた精製空気又は前記第二の分析ラインより採取された希釈排ガスの各々に含まれる計測対象成分の排出質量を求める計測手段に接続される第三の分析ラインとが各々連結されるガス流路制御手段と、を有することを特徴とする排ガス計測装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る排ガス計測装置によれば、高温に温度調整された大量の精製空気をパージガスとして排気接続管内に任意に逆流させ、排気接続管内の汚れを効果的にパージすることができ、脱離した汚れを含むパージガスを一部抜き出し、分析手段に連続して直接送給することで、脱離した汚れを含むパージガスを希釈することなく前記パージガスの排出質量を連続して直接分析することができるため、前記排気接続管内の汚れ状態を高感度で簡易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る排ガス計測装置の構成を簡略に示す図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、CVS装置に空気を供給して行なう試験を模式的に示す図である。
【図4】図4は、CVS装置に精製空気を供給して行なう試験を模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る排ガス計測装置について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る排ガス計測装置の構成を簡略に示す図であり、図2は、図1中の部分拡大図である。
【0019】
本実施の形態に係る排ガス計測装置10は、大気中の空気11を取り込んで精製した精製空気12を希釈空気として用い、試験車(検査対象)から排出される排ガスを精製空気12と混合、希釈した希釈排ガスの排出質量を計測し、前記排ガスから排出される計測対象成分の排出質量を求める排ガス計測装置である。排ガス計測装置10は、空気精製機13と、空気精製機13で精製された精製空気12を流通させる主通路(メインダクト)17とからなるものである。
【0020】
空気精製機13は、取り込んだ空気11を浄化し、精製する浄化部14と、浄化部14で精製された精製空気12の温度を調整する温調部(温調手段)15と、空気取入口31から大気中の空気11を取り入れて空気出口32へ送るブロワ(送風機)33と、を備える。
【0021】
また、主通路17は、前記試験車から排出される前記排ガスを主通路17内に送給する排気接続管18と、この排気接続管18から主通路17内に送給される前記排ガスと空気精製機13より供給される精製空気12とが混合する混合部19より下流側に設けられ、開閉可能な開閉弁(ガス流路制御手段)20と、を備える。
【0022】
また、排ガス計測装置10は、三方弁24を有している。三方弁24は、排気接続管18が前記試験車と接続される接続部21から分岐した第一の分析ライン22−1と、開閉弁20より下流側に設けられ、主通路17から分岐された第二の分析ライン22−2と、第一の分析ライン22−1からパージされた精製空気(パージガス)12A又は第二の分析ライン22−2より採取された希釈排ガスの各々に含まれる対象成分の排出質量を求める分析器(計測手段)23に接続される第三の分析ライン22−3とに各々連結されている。
【0023】
空気精製機13において大気中の空気11を取り込んで精製された精製空気12を希釈空気として用いている。空気精製機13の本体13aには、大気に開放する空気取入口31と空気出口32とを有している。また、ブロワ33は送風能力が可変可能であり、空気精製機13は、ブロワ33により適正な流量の精製空気12を送風するように流量制御を行なっている。
【0024】
ブロワ33に送風された空気11は浄化部14に供給され、空気11中に含まれる全炭化水素(THC)、CO、NO、NO2などのNOx等の規制物質である計測対象成分を除去する。また、全炭化水素とは、大気中の炭化水素(HC)の測定により得られるメタン(CH4)の濃度と、非メタン炭化水素(NMHC)の濃度との両方の和である。
【0025】
本体13a内の浄化部14の下流側には温調部15が設けられ、精製空気12の温度を調整可能としている。このため、精製空気12の温度を高温の所定温度に調整して主通路17内に送風することができる。精製空気12の温度としては、例えば、70℃以上、90℃以下の範囲が好ましく、更には80℃程度とするのがより好ましい。精製空気12の温度を高温とすることで、精製空気12を排気接続管18に供給した際、排気接続管18中の残っている計測対象成分が軟化するため、排気接続管18中の残っている計測対象成分を排気接続管18から剥離し易くすることができる。
【0026】
また、ブロワ33により精製空気12を空気出口32から圧送し、希釈ガス11の圧力を大気圧よりも高くして排出するようにしているが、温調部15の下流側に精製空気12の圧力を上昇させる圧送手段を設け、空気出口32から精製空気12を圧送するようにしてもよい。
【0027】
空気出口32は、主通路17に接続され、空気精製機13で精製された精製空気12を希釈空気として主通路17へ導入している。主通路17は、精製空気12を取り入れる取入口35と大気に開放する排出口36とを有し、取入口35と排出口36との相互間を連通するように設けられている。取入口35は、空気精製機13の空気出口32から圧送して送風される精製空気12を取り込めるようにしている。また、精製空気12は、直接、主通路17に送風するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気精製機13と主通路17との間に接続通路等を介して主通路17に精製空気12を送風するようにしてもよい。
【0028】
主通路17の下流側には、精製空気12を下流側へ吸引するためのブロア37(CVS吸引装置)が配設され、取入口35から精製空気12を下流側へ吸引している。また、主通路17の上流側には、ゴミ除去のためのフィルターやサイクロン等を配設するようにしてもよい。
【0029】
主通路17は、排気接続管18と連結される。排気接続管18は試験車に搭載されているエンジンからの排ガスを大気に放出する排気管に着脱自在に接続されている。主通路17は、排気接続管18から主通路17に送給される前記排ガスと主通路17内の精製空気12とを混合する混合部19を有し、前記排ガス中の計測対象成分の排出質量の計測が行なわれている間、前記試験車の前記エンジンから放出された前記排ガスを排気接続管18を介して主通路17内の精製空気12と混合、希釈して、希釈排ガスとする。
【0030】
また、混合部19より下流側には、主通路17内を開閉可能とする開閉弁20が設けられている。本実施例では、主通路17内に開閉弁20を希釈ガス11の流れ方向と同方向に開閉可能としているが、希釈ガス11の流れ方向と反対方向に開閉可能としてもよい。開閉弁20は、前記排ガス中の計測対象成分の排出質量の計測を行っている場合など排気接続管18内をパージしない場合には開放し、排気接続管18内をパージする場合には閉鎖する。主通路17の開閉状態は駆動装置38を用いて開閉弁20により調整される。排気接続管18内をパージする際、開閉弁20で主通路17を閉鎖することにより、空気精製機13から供給された精製空気12が主通路17の開閉弁20より下流側に送給されるのを抑制する。空気精製機13から圧送された精製空気12の圧力は混合部19付近で大気圧よりも高く、精製空気12を排気接続管18内に逆流させることで、排気接続管18内に逆流させた精製空気をパージガス12Aとして用い、排気接続管18内をパージすることができる。
【0031】
また、主通路17の混合部19には、主通路17内の圧力を検出するセンサ39が設けられており、主通路17内の混合部19における精製空気12の圧力に応じて開閉弁20の開閉具合を調整し、開閉弁20より下流側に送給される精製空気12の送給量を制御するようにしている。
【0032】
また、排気接続管18の接続部21から分岐した第一の分析ライン22−1と、開閉弁20より下流側の主通路17から分岐された第二の分析ライン22−2と、第一の分析ライン22−1より採取されたパージガス12A又は第二の分析ライン22−2より採取された希釈排ガスの各々に含まれる計測対象成分の排出質量を求める分析器23に接続される第三の分析ライン22−3とが、三方弁24により各々連結されている。
【0033】
三方弁24は、1個の弁に三方向への流路を開口するものであり、2方向からの流入口に対して1方向への流出口を備える。三方弁24は、第一の分析ライン22−1、第二の分析ライン22−2と連結する2つの流入口と、第三の分析ライン22−3と連結する1つの流出口とからなる。第一の分析ライン22−1と第三の分析ライン22−3とをつなぐことにより、排気接続管18内をパージする際、精製空気12を排気接続管18内に逆流させたパージガス12Aを排気接続管18の接続部21から第一の分析ライン22−1、第三の分析ライン22−3を介して分析器23に送給することができる。このため、精製空気12を希釈することなく分析器23によりパージガス12Aを連続して直接分析することができるため、排気接続管18内の汚れの分析を高感度で簡易に行うことができる。
【0034】
排気接続管18内の汚れの分析を行なう際の制御の一例を示す。
第一の分析ライン22−1及び第三の分析ライン22−3を介して排気接続管18内のパージに用いたパージガス12Aを分析器23に送給し、パージガス12A中のTHC、NOxの濃度を測定する。
【0035】
所定時間(例えば、10分)以内に、分析器23により測定されたパージガス12AのTHC、NOxの各々の濃度が0.2ppm以下となった場合には、精製空気12を排気接続管18内に逆流させ、排気接続管18内をパージすることを終了する。
【0036】
また、所定時間(例えば、10分)以内に、分析器23により測定されたパージガス12A中のTHC、NOxの各々の濃度が0.2ppm以下でない場合には、三方弁24は、第二の分析ライン22−2と第三の分析ライン22−3とをつなぐように切り替え、開閉弁20より下流側の主通路17から分岐された第二の分析ライン22−2から精製空気12を抜き出し、第二の分析ライン22−2、第三の分析ライン22−3を介して分析器23に送給し、精製空気12の排出質量を分析器23により求める。排気接続管18の接続部21から第一の分析ライン22−1に抜き出したパージガス12A中のTHC、NOxの各々の濃度と、主通路17から第二の分析ライン22−2に抜き出した精製空気12中のTHC、NOxの各々の濃度との差が、0.1ppm以上、0.1ppm以下の範囲内の場合には、排気接続管18内を精製空気12によりパージすることを終了する。
【0037】
上記のように、パージガス12A中のTHC、NOxの各々の濃度が0.2ppmより大きい場合、又は、接続部21から第一の分析ライン22−1に抜き出したパージガス12A中のTHC、NOxの各々の濃度と、主通路17から第二の分析ライン22−2に抜き出された精製空気12中のTHC、NOxの各々の濃度との差が、−0.1ppm以上、0.1ppm以下の範囲内でない場合には、上述の操作を繰り返し行なう。再度上述の操作を繰り返し行なった結果、上記条件の何れも満たさない場合には、排気接続管18など装置の点検を行なう。
【0038】
よって、高温に温度調整された大量の精製空気12をパージガス12Aとして排気接続管18内に逆流させ、排気接続管18内の汚れを効果的にパージすることで、脱離した汚れを含むパージガス12Aを希釈することなく連続して分析器23で直接分析することができるため、排気接続管18内の汚れ状態を高感度で簡易に測定することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係る排ガス計測装置10においては、開閉弁20を閉鎖して精製空気12を排気接続管18に逆流させ、逆流した精製空気12をパージガス12Aとして排気接続管18内をパージするようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ブロワ37を停止させて、精製空気12を排気接続管18に逆流させ、排気接続管18内をパージするようにしてもよい。
【0040】
またブロア37の上流側であってブロア37と開閉弁20との間には、ベンチュリ41が設けられ、試験車から排出される排ガスの計測対象成分の排出質量の分析を行う際、前記排ガスと精製空気12とを適正な希釈率としている。ベンチュリ41は一定の流量で排ガスと精製空気12とを混合した希釈排ガスを主通路17内を流れるようにしている。
【0041】
また、CVS装置としては、定容量ポンプ方式(PDP方式)と臨界流量ベンチュリ方式(CFV方式)との二方式が採用されている。本実施の形態に係る排ガス計測装置10においては、ベンチュリ41を用いたCFV方式のCVS装置を採用しているが、CFV方式に代えて正置換型ポンプ(PDP)式のCVS装置を用いるようにしてもよい。
【0042】
また、ベンチュリ41の上流側には、サンプリングベンチュリ42が設けられ、主通路17の外部に配設した吸引ポンプ43の吸込力により、サンプリングベンチュリ42から精製空気12を一定の流量で採集し、サンプルバッグ44に蓄えるようにしている。前記排ガス中の計測対象成分の排出質量の計測を行っている場合、前記排ガスを精製空気12で希釈した希釈排ガスをサンプルバッグ44内に蓄えて、排ガス中の測定対象成分の平均濃度を得るようにしている。
【0043】
また、主通路17の取入口35と混合部19との間には、吸引ポンプ45で精製空気12だけを分岐通路46を通じ採集して希釈空気バッグ47に蓄えるようにしている。前記排ガス中の計測対象成分の排出質量の計測を行っている間、精製空気12に残留しているCH4などのTHC、CO、NO、NO2などのNOxなど計測対象成分を蓄える。
【0044】
サンプルバッグ44、希釈空気バッグ47内の気体は、分析器23において分析されて、排ガス中の測定対象成分の濃度が求められる。具体的には、分析器23は、例えばサンプルバッグ44により採集された希釈排ガス中の計測対象成分から、希釈空気バッグ47により採集された精製空気12中の計測対象成分を差し引いて、試験車から排出された排ガス中の計測対象成分の排出質量を求める。
【0045】
また、分析器23には、分析に用いられたパージガス12A、精製空気12、前記希釈排ガスをベンチュリ41より下流側の主通路17内に排出する排気通路が設けられている。分析器23で分析に用いられたパージガス12A、精製空気12、前記希釈排ガスは、前記排気通路を介してベンチュリ41より下流側の主通路17内に送給される。
【0046】
このように、本実施の形態に係る排ガス計測装置10によれば、高温に温度調整された大量の精製空気12をパージガス12Aとして排気接続管18内に任意に逆流させ、排気接続管18内の汚れを効果的にパージすることができる。脱離した汚れを含むパージガス12Aを一部抜き出し、分析器23に連続して直接送給することで、脱離した汚れを含むパージガス12Aを希釈することなくパージガス12Aの排出質量を連続して直接分析することができるため、排気接続管18内の汚れ状態を高感度で簡易に測定することができる。
【0047】
従って、従来の空気精製機を用いたCVSのパージ法では困難であった排気接続管18の汚れ状態を把握できるようになり、近年の多種燃焼化におけるアルコール燃料、圧縮天然ガス車等の排気中の水分濃度が高く、排気接続管18に計測対象成分が溶解した凝縮水が残留し易い試験、未規制成分を含む計測対象成分の多様化、低濃度化に伴い、排ガスの計測対象成分の重量測定時にCVS装置において排気接続管18の汚れによる影響を解消し、より高精度に分析することができ、計測の信頼性を高めることができる。また、低エミッション車から排出される排ガスの計測対象成分の重量測定時における計測の信頼性を確保することができる。
【0048】
本実施の形態に係る排ガス計測装置10においては、検査対象として車両からの排ガス中の計測対象成分の重量を求める排ガス計測装置を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両以外から排出される排ガス中の成分の重量を求める計測装置のパージについても同様に用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係る排ガス計測装置は、排気接続管中に残留する計測対象成分を精製空気を用いてパージし、連続して直接分析しているので、排気接続管内の汚れの分析を行うのに有用であり、車両から排出される排ガス中の排ガス重量を求める排ガス計測装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0050】
10 排ガス計測装置
11 空気
12 精製空気(希釈空気)
12A パージガス
13 空気精製機
14 浄化部
15 温調部(温調手段)
17 主通路(メインダクト)
18 排気接続管
19 混合部
20 開閉弁(ガス流路制御手段)
21 接続部
22−1 第一の分析ライン
22−2 第二の分析ライン
22−3 第三の分析ライン
23 分析器(計測手段)
24 三方弁
31 空気取入口
32 空気出口
33 ブロワ(送風機)
35 取入口
36 排出口
37 ブロア(CVS吸引装置)
38 駆動装置
39 センサ
41 ベンチュリ
42 サンプリングベンチュリ
43 吸引ポンプ
44 サンプルバッグ
45 吸引ポンプ
46 分岐通路
47 希釈空気バッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の空気を取り込んで精製した精製空気を希釈空気として用い、検査対象から排出される排ガスを前記精製空気と混合し、希釈した希釈排ガスの排出質量を計測し、前記排ガスから排出される計測対象成分の排出質量を求める排ガス計測装置において、
取り込んだ空気の温度を調整し、温度調整した空気を精製空気として圧送する空気精製機と、
前記空気精製機で精製された前記精製空気を流通させる主通路と、
前記検査対象から排出される前記排ガスを前記主通路内に送給する排気接続管と、
前記排気接続管から前記主通路内に送給される前記排ガスと前記空気精製機より供給される前記精製空気とが混合される混合部より下流側に設けられ、前記主通路内を開閉可能とする開閉弁と、
前記排気接続管が前記検査対象と接続される接続部から分岐した第一の分析ラインと、前記開閉弁より下流側に設けられ、前記主通路から分岐された第二の分析ラインと、前記第一の分析ラインからパージされた精製空気又は前記第二の分析ラインより採取された希釈排ガスの各々に含まれる計測対象成分の排出質量を求める計測手段に接続される第三の分析ラインとが各々連結されるガス流路制御手段と、
を有することを特徴とする排ガス計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−230582(P2010−230582A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80283(P2009−80283)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】