説明

排ガス通過部のライニング構造

【課題】排ガス通過部に施工されたライニング材の剥離損傷を防ぎ、断熱性及び耐食性を良好に維持可能な排ガス通過部のライニング構造を提供する。
【解決手段】燃焼機器から排出される高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスとが交互に繰り返し通過するコンクリート製の排ガス通過部のライニング構造において、排ガス通過部1の内面に発泡ガラス3が施工され、発泡ガラス3の排ガス通過面に、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材4が塗布された構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器から排出された排ガスが通過する排ガス通過部のライニング構造に係り、特に、高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスが交互に繰り返し通過する排ガス通過部のライニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排ガスが通過する煙突やダクト等の排ガス通過部には、鋼、コンクリート、繊維強化プラスチック等の材料が用いられている。このうちコンクリート製の排ガス通過部においては、耐熱温度と耐食性の観点からその内面にライニングを必要とする場合がある。
例えば特許文献1(特開2009−167054号公報)には、煙突のライニング材としてケイ酸カルシウムを含む成形体を用いる構成が開示されている。さらに特許文献1の成形体はその内部に、合成繊維を加熱分解させて形成した空隙を有している。この空隙は、ライニング材の爆裂を防止するために設けられている。
【0003】
これは、煙突のコンクリート打設時におけるコンクリート中の水分や煙突に入った雨等の水分がライニング材に吸水され、その状態のまま高温の排ガスが通過すると、ライニング材内部の水分が急激に水蒸気化し、ライニング材内部に圧力が発生し、爆裂してしまうことがある。したがって、特許文献1のようにライニング材内部に空隙を形成することにより、ライニング材内部の水蒸気を空隙から排出させ、排ガス通過時の爆裂を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−167054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1等のように内部に空隙が形成されたライニング材は、空隙が断熱性を向上させ、さらにライニング材内部の水蒸気が空隙から排出されるため、排ガス通過時の爆裂を防止可能であった。ただし、これは排ガスが一定温度の場合であって、例えば施工時に生じたコンクリート中の水分を空隙から蒸発させる場合のように、既にライニング材の内部に存在する水分を逃がす場合には適しているが、排ガス中に水分が多く含まれる場合には逆にこの空隙から水分がライニング材内部に侵入しやすくなってしまう。
特に、高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスが交互に繰り返し通過する排ガス通過部に施工されたライニング材は、その詳細なメカニズムは不明であったが、実機においては排ガスの切り替えが複数回行われるとライニング材が剥離して飛散する現象が発生していた。
【0006】
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、排ガス通過部に施工されたライニング材の剥離損傷を防ぎ、断熱性及び耐食性を良好に維持可能な排ガス通過部のライニング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、断熱性及び耐食性に優れたライニング材として発泡ガラスを選定し、さらに高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスが交互に繰り返し通過する排ガス通過部に発泡ガラスを用いた際にライニング材が損傷するメカニズムを見出した。図3乃至図5を用いて、発泡ガラスの損傷メカニズムについて説明する。なお、図3は発泡ガラス層の損傷メカニズムを説明する模式図であり、(a−1)〜(a−3)は断面の状態を示す図で、(b−1)〜(b−3)は表面の状態を示す図で、図4は発泡ガラス層の損傷メカニズムを説明する模式図であり、水分の状態を含む図で、図5(A)は発泡ガラス層を有する排ガス通過部の肉厚方向の温度勾配を示す断面図で、(B)は発泡ガラス層が剥離損傷した状態を示す断面図である。
【0008】
図5(A)の断面図に示すように、コンクリート層51の内面に発泡ガラス層52をライニングした排ガス通過部50において、発泡ガラス層52に接触して高温の乾燥ガスが通過する。このとき、排ガス通過部50の肉厚方向の温度勾配は、図中に示すように、断熱性の高い発泡ガラス層52は内側から外側に向けて急勾配で温度低下する温度分布となる。一方コンクリート層51は内側から外側に向けて緩やかに低下する温度分布となる。したがって図3(a−1)、(b−1)及び図4(a)に示すように、発泡ガラス層52の状態は、表面側が温度上昇し膨張する。さらに発泡ガラス層52の周囲が支持部材により拘束されている場合には、肉厚方向に圧縮応力が働く。
【0009】
次いで、排ガスが切り替えられて低温の湿潤ガスが通過すると、図3(a−2)、(b−2)及び図4(b)に示すように、湿潤ガス中の液滴の衝突により発泡ガラス層52の表面は急激に冷却される。このとき、体積収縮が発生するため表面には引張応力が発生する。この熱衝撃により肉厚方向にクラック(亀裂)が形成される。一方、発泡ガラス層内部には高温部分も存在することから発泡ガラス層内部で面方向にクラックが発生することが推定される。
【0010】
さらに排ガスが切り替えられて高温の乾燥ガスが通過すると、図4(c)、(d)に示すように、発泡ガラス層表面は初期加熱時と同様に圧縮応力が働く。一方、冷却時に発生したクラックに水が浸透し、この水が内部に取り残されている場合、温度上昇に伴い蒸発、体積膨張し、クラックが拡大する。さらにまた排ガスが切り替えられて低温の湿潤ガスが通過すると、図4(e)に示すように、熱衝撃によりクラックがさらに進展し、拡大する。湿潤ガスに含まれる液滴は、排ガス通過部50を通過するときに結露して拡大したクラックに侵入し、蒸発しきれずに残存する。
これらを繰り返していくと、図3(a−3)、(b−3)及び図4(f)に示すように低温の湿潤ガスから高温の乾燥ガスに切り替えられたときに、発泡ガラス層内部に残存する水分が行き場を無くして蒸発、膨張することにより、図5(B)の断面図に示すようにクラック61が発生して脆弱となった発泡ガラス層52の一部を飛散させ、スポーリング62が発生する。
【0011】
このようなメカニズムにより発泡ガラス層52が剥離し、飛散すると考えられる。
さらに本発明者らは、このメカニズムに基づいてライニング材内部に水分が侵入しにくい構造とすることでスポーリングが発生し難いライニング構造とすることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る排ガス通過部のライニング構造は、燃焼機器から排出される高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスとが交互に繰り返し通過するコンクリート製の排ガス通過部のライニング構造において、前記排ガス通過部の内面に発泡ガラスが施工され、前記発泡ガラスの排ガス通過面に、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材が塗布されていることを特徴とする。
尚、本発明における粘着性部材のゴム硬度は、JIS K6253に規定されるデュロメータ(タイプA)によるゴム硬度を意味する。
【0013】
本発明によれば、粘着性部材を発泡ガラスの排ガス通過面に塗布することにより排ガス中の水分が発泡ガラス内部に侵入することを防止する。これにより、発泡ガラス内部に多量の水分が残存することがなくなり、高温の乾燥ガスにより発泡ガラス表面が再加熱された際に、発泡ガラス内部で多量の水分が蒸発、膨張して発泡ガラスのクラックが拡大したり、発泡ガラスが剥離したりすることを防止でき、発泡ガラスが有する高い断熱性及び耐食性を維持することができる。
【0014】
また、発泡ガラス表面に塗布する材料として、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材を用いているため、高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスの温度差による発泡ガラスの体積変動に形状追従することが可能で、発泡ガラス内部への水分の侵入を確実に防ぐことが可能となる。ここで、粘着性部材のゴム硬度が20未満であると、垂直面や傾斜面において粘着性部材を保持することが困難となり、またゴム硬度が80を超過すると発泡ガラスの温度差に基づく体積変動に形状追従することが困難となり、粘着性部材が剥離したり粘着性部材に孔が開いたりし、水分の侵入路となってしまう。なお、粘着性部材が有する耐熱性とは、少なくとも前記高温の乾燥ガスの温度以内で物性を維持し得る性質を意味する。
【0015】
また、前記粘着性部材は、耐酸性を有する接着剤であることが好ましく、これにより排ガス中に含まれる酸性ガスによって粘着性部材が腐食することを防止でき、且つ発泡ガラスに対して簡単に塗布、固着させることが可能となる。
なお、接着剤とは、シリコン系樹脂接着剤やエポキシ系樹脂接着剤等の被接着材同士を接合する接着剤、シリコンエポキシやビニルエステルやタールエポキシ等の塗料、シリコンシーランド等のコーキング材を含む。また、ここでいう耐酸性とは、HCl、SOx等の酸性ガスによる腐食に耐え得る性質をいう。
【0016】
さらに、前記粘着性部材は、0.2mm以上5.0mm以下の肉厚となるように塗布されていることが好ましく、これにより発泡ガラスの体積変動に確実に形状追従することが可能となる。ここで、粘着性部材の肉厚が0.2mm未満であると、発泡ガラスが体積変動したときに粘着性部材が剥離したり孔が開いたりする惧れがあり、一方肉厚が5.0mmを超過すると発泡ガラスの体積変動に対する形状追従性が低下してしまう。
【0017】
また、上記したライニング構造は、前記燃焼機器に接続される排ガス処理装置の煙突に設けられることが好ましい。
このように、本発明に係るライニング構造が排ガス処理装置の煙突に設けられることにより、煙突の断熱性及び耐食性を高く維持でき、煙突のメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の他の態様として、上記したライニング構造は、石炭専燃と、石炭及び石油コークスの混焼とが交互に切り替えられる前記燃焼機器に接続され、前記燃焼機器から排出される排ガスの除塵を行う除塵手段と、前記除塵手段を通過した排ガスを湿式脱硫する脱硫手段と、前記燃焼機器の専燃時に前記脱硫手段をバイパスさせて前記排ガスを煙突から排出させる第1の排ガスライン、混焼時に前記排ガスを前記脱硫手段に導入して煙突から排出させる第2の排ガスラインを切り替える切替手段とを含む排ガス処理装置の排ガス通過部に設けられる構成としてもよい。
【0019】
上記の燃焼機器によれば、石炭専燃時にはSOx含有量の少ない排ガスが排出されるため脱硫手段をバイパスさせる。この排ガスは高温の乾燥ガスとなる。一方、石炭及び石油コークスの混焼時にはSOxを多く含む排ガスが発生する。したがって、この混焼時には排ガスを脱硫することが必須となる。湿式脱硫は、アルカリスラリやアルカリ溶液等の吸収剤とSOxを含む排ガスとを接触させて、SOxを液相中に溶解させ、液相内中和反応により脱硫するものである。この脱硫手段を通過した排ガスは、冷却されるとともに水分を多く含む低温の湿潤ガスとなる。
このように、燃料を切り替えることにより高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスの2種類の排ガスが発生する。燃料の切り替えにより高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスが繰り返し交互に排出される場合であっても、本発明に係るライニング構造を有する排ガス通過部を採用することにより、ライニング材の剥離損傷を防止し、断熱性及び耐食性の高い排ガス通過部とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のように本発明によれば、粘着性部材を発泡ガラスの排ガス通過面に塗布することにより排ガス中の水分が発泡ガラス内部に侵入することを防止する。これにより、発泡ガラス内部に多量の水分が残存することがなくなり、高温の乾燥ガスにより発泡ガラス表面が再加熱された際に、発泡ガラス内部で多量の水分が蒸発、膨張して発泡ガラスのクラックが拡大したり、発泡ガラスが剥離したりすることを防止でき、発泡ガラスが有する高い断熱性及び耐食性を維持することができる。
また、発泡ガラス表面に塗布する材料として、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材を用いているため、高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスの温度差による発泡ガラスの体積変動に形状追従することが可能で、発泡ガラス内部への水分の侵入を確実に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス通過部のライニング構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態が適用される排ガス処理装置の一例を示す構成図である。
【図3】発泡ガラス層の損傷メカニズムを説明する模式図であり、(a−1)〜(a−3)は断面の状態を示す図で、(b−1)〜(b−3)は表面の状態を示す図である。
【図4】発泡ガラス層の損傷メカニズムを説明する模式図であり、水分の状態を含む図である。
【図5】(A)は発泡ガラス層を有する排ガス通過部の肉厚方向の温度勾配を示す断面図で、(B)は発泡ガラス層が剥離損傷した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0023】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る排ガス通過部のライニング構造を説明する。
排ガス通過部1は、コンクリートで形成された筒状のコンクリート層2と、該コンクリート層2の内面に施工されたライニング構造とを有する。この排ガス通過部1には、燃焼機器から排出された高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスとが交互に繰り返し通過する。ここで、燃焼機器は、焼却炉、熱分解炉、溶融炉、ボイラ、内燃機関、外燃機関等種々の燃焼機器が用いられる。また、高温の乾燥ガスとは、例えば100℃以上で湿度が15%未満の排ガスであり、低温の湿潤ガスとは、例えば100℃未満で湿度が15%以上の排ガスである。
【0024】
ライニング構造は、コンクリート層2の内面に施工された発泡ガラス層3と、該発泡ガラス層3の排ガス通過面に塗布された粘着性部材層4とを含む。
発泡ガラス層3は、内部に多数の気泡を含む発泡ガラスからなる。発泡ガラス層3は、コンクリート層2の内面に対応した形状に成形されており、接着材によりコンクリート層2に固着されていることが好ましい。この発泡ガラス層3は、断熱性及び耐食性を有するものである。
【0025】
粘着性部材層4は、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材からなる。なお、粘着性部材(層)4のゴム硬度は、JIS K6253に規定されるデュロメータ(タイプA)によるゴム硬度を意味する。ここで、粘着性部材4のゴム硬度が20未満であると、垂直面や傾斜面において粘着性部材を保持することが困難となり、またゴム硬度が80を超過すると発泡ガラス(層)3の温度差に基づく体積変動に形状追従することが困難となり、粘着性部材層4が剥離したり粘着性部材4に孔が開いたりし、水分の侵入路となってしまう。なお、粘着性部材層4が有する耐熱性とは、少なくとも前記高温の乾燥ガスの温度以内で物性を維持し得る性質を意味する。
【0026】
また好適には、粘着性部材層4は、耐酸性を有する接着剤であることが好ましく、これにより排ガス中に含まれる酸性ガスによって粘着性部材が腐食することを防止でき、且つ発泡ガラス層3に対して簡単に塗布、固着させることが可能となる。なお、接着剤とは、シリコン系樹脂接着剤やエポキシ系樹脂接着剤等の被接着材同士を接合する接着剤、シリコンエポキシやビニルエステルやタールエポキシ等の塗料、シリコンシーランド等のコーキング材を含む。また、ここでいう耐酸性とは、HCl、SOx等の酸性ガスによる腐食に耐え得る性質をいう。
【0027】
さらに好適には、粘着性部材層4は、0.2mm以上5.0mm以下の肉厚となるように塗布されていることが好ましく、これにより発泡ガラス層3の体積変動に確実に形状追従することが可能となる。ここで、粘着性部材層4の肉厚が0.2mm未満であると、発泡ガラス3が体積変動したときに粘着性部材層4が剥離したり孔が開いたりする惧れがあり、一方肉厚が5.0mmを超過すると発泡ガラス層3の体積変動に対する形状追従性が低下してしまう。
【0028】
本実施形態を煙突に適用した場合、一例としてコンクリート層2の肉厚は150mm〜600mmとし、発泡ガラス層3の肉厚は25mm〜60mmとし、粘着性部材層4の肉厚は0.2mm〜5.0mmとすることが好ましい。粘着性部材の肉厚が0.2mm未満であると、発泡ガラスが体積変動したときに粘着性部材が剥離したり孔が開いたりする惧れがあり、一方肉厚が5.0mmを超過すると発泡ガラスの体積変動に対する形状追従性が低下してしまう。
【0029】
このように本実施形態によれば、粘着性部材層4を発泡ガラス層3の排ガス通過面に塗布することにより排ガス中の水分が発泡ガラス内部に侵入することを防止する。これにより、発泡ガラス内部に多量の水分が残存することがなくなり、高温の乾燥ガスにより発泡ガラス表面が再加熱された際に、発泡ガラス内部で多量の水分が蒸発、膨張して発泡ガラスのクラックが拡大したり、発泡ガラスが剥離したりすることを防止でき、発泡ガラス層3が有する高い断熱性及び耐食性を維持することができる。
【0030】
また、発泡ガラス表面に塗布する材料として、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材4を用いているため、高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスの温度差による発泡ガラス層3の体積変動に形状追従することが可能で、発泡ガラス内部への水分の侵入を確実に防ぐことが可能となる。
さらに本実施形態に係るライニング構造は排ガス処理装置の煙突に設けられることが好ましく、これにより煙突の断熱性及び耐食性を高く維持でき、煙突のメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0031】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るライニング構造の好適な適用例を説明する。ここで、図2は本発明の実施形態が適用される排ガス処理装置の一例を示す構成図である。
燃焼機器であるボイラ11には、石炭供給手段21と、石油コークス供給手段22とが設けられ、石炭専燃と、石炭及び石油コークスの混焼とが交互に切り替えられるようになっている。
【0032】
ボイラ11に接続される排ガス処理装置は、減温塔12と、除塵手段12と、脱硫手段14と、誘引送風機15と、煙突16とを含む。ここで、脱硫手段14は湿式脱硫を行う手段であり、アルカリスラリやアルカリ溶液等の吸収剤とSOxを含む排ガスとを接触させて、SOxを液相中に溶解させ、液相内中和反応により排ガスを脱硫する構成を有している。なお、排ガス処理装置は、除塵手段12と脱硫手段14と煙突16とを必須の構成とし、これら以外は適宜選択的に用いることができる。また、空気予熱器や脱硝手段等の他の装置を適宜用いることもできる。
【0033】
また、排ガス処理装置は、ボイラ11の石炭専燃時に、除塵手段12から排出された排ガスを、脱硫手段14をバイパスさせて煙突16から排出させる第1の排ガスライン27と、石炭及び石油コークスの混焼時に、除塵手段12から排出された排ガスを、脱硫手段14に導入して脱硫した後煙突16から排出させる第2の排ガスライン28と、これらのラインを切り替える切替バルブ23とを有する。さらに、ボイラ11へ供給される燃料種類に基づいて専燃時又は混焼時を判断し、専燃時には第1の排ガスライン27に切り替え、混焼時には第2の排ガスライン28に切り替える制御を行う切替手段25を有している。
【0034】
本実施形態に係る排ガス通過部のライニング構造は、煙突16又は脱硫手段14より後流側の排ガスダクトに設けられる。ここでは一例として、煙突16に本実施形態のライニング構造を適用した場合につき説明する。
ボイラ11に石炭のみが供給されるとき、該ボイラ11では石炭専燃により排ガスが発生する。この排ガスはSOx含有量が比較的少ない。ボイラ11から排出された排ガスは減温塔12で減温された後、除塵手段13に導入されて除塵が行われる。除塵手段13から排出された排ガスは、第1の排ガスライン27を通って脱硫手段14をバイパスして煙突16から排出される。煙突16に導入される排ガスは、脱硫手段14を通っていないため高温の乾燥ガスとなる。
【0035】
一方、ボイラ11に石炭と石油コークスの両方が供給されるとき、該ボイラ11では石炭及び石油コークス混焼により排ガスが発生する。この排ガスはSOx含有量が多い。ボイラ11から排出された排ガスは減温塔12で減温された後、除塵手段13に導入されて除塵が行われる。除塵手段13から排出された排ガスは、第2の排ガスライン28を通って脱硫手段14を通過して煙突16から排出される。煙突16に導入される排ガスは、脱硫手段14を通っているため脱硫手段14で冷却されるとともに含有水分が増加し、低温の湿潤ガスとなる。
【0036】
ボイラ11に供給される燃料の切り替えによって、煙突16には高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスとが交互に繰り返し導入される。ここで、煙突16には図1で説明した発泡ガラス層3と粘着性部材層4とからなるライニング構造が施工されているため、燃料の切り替えにより高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスが繰り返し交互に通過する場合であっても、発泡ガラス3の剥離損傷を防止し、断熱性及び耐食性の高い煙突16とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 排ガス通過部
2 コンクリート層
3 発泡ガラス層
4 粘着性部材層
11 ボイラ
12 減温塔
13 除塵手段
14 脱硫手段
15 誘引送風機
16 煙突
21 石炭供給手段
22 石油コークス供給手段
23 切替バルブ
25 切替手段
27 第1の排ガスライン
28 第2の排ガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機器から排出される高温の乾燥ガスと低温の湿潤ガスとが交互に繰り返し通過するコンクリート製の排ガス通過部のライニング構造において、
前記排ガス通過部の内面に発泡ガラスが施工され、前記発泡ガラスの排ガス通過面に、ゴム硬度が20以上80以下で且つ耐熱性を有する粘着性部材が塗布されていることを特徴とする排ガス通過部のライニング構造。
【請求項2】
前記粘着性部材は、耐酸性を有する接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス通過部のライニング構造。
【請求項3】
前記粘着性部材は、0.2mm以上5.0mm以下の肉厚となるように塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス通過部のライニング構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のライニング構造は、前記燃焼機器に接続される排ガス処理装置の煙突に設けられることを特徴とする排ガス通過部のライニング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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