説明

排便検出装置

【課題】排便をより正確に検出することができる排便検出装置を提供する。
【解決手段】身体と対向して排便を受ける排便受け部材と、前記排便受け部材の、排便を受ける排便位置に設けられた第1温度センサーと、前記排便受け部材の、排便を受けない非排便位置に設けられた第2温度センサーと、前記第1温度センサーから出力される信号と前記第2センサーから出力される信号とに基づいて前記排便の有無を検出する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排便検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばおむつ内に備えた温度センサーから出力される信号に基づいて排便を検出する装置は既に知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置は、おむつ内に備えられた1つの温度センサーから出力される信号により温度の上昇が検出されることにより、便が排泄されたことを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−301098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、おむつ内の温度は、排便及び排尿のみならず、例えばおむつの着用者が身体を動かしたことによっても変化する。このため、便が排出されたことを正確に検出することができない虞があるという課題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排便をより正確に検出することができる排便検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
身体と対向して排便を受ける排便受け部材と、
前記排便受け部材の、排便を受ける排便位置に設けられた第1温度センサーと、
前記排便受け部材の、排便を受けない非排便位置に設けられた第2温度センサーと、
前記第1温度センサーから出力される信号と前記第2センサーから出力される信号とに基づいて前記排便の有無を検出する制御部と、
を有することを特徴とする排便検出装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排便をより正確に検出することができる排便検出装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る自動尿処理装置の構成図である。
【図2】吸尿部材の内面側を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う切断面を示す図である。
【図4】図2のB−B線に沿う切断面を示す図である。
【図5】電極部の平面図である。
【図6】図5におけるC−C線に沿う断面図である。
【図7】図5におけるD−D線に沿う断面図である。
【図8】図5におけるE−E線に沿う断面図である。
【図9】絶縁性被覆の一部が剥離され電力供給電極を露出した状態にある電極部の平面図である。
【図10】排尿時と排便時における温度変化を説明するための図である。
【図11】ノイズ除去処理を説明するための模式図である。
【図12】自動尿処理装置による排尿及び排便の検出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
身体と対向して排便を受ける排便受け部材と、
前記排便受け部材の、排便を受ける排便位置に設けられた第1温度センサーと、
前記排便受け部材の、排便を受けない非排便位置に設けられた第2温度センサーと、
前記第1温度センサーから出力される信号と前記第2センサーから出力される信号とに基づいて前記排便の有無を検出する制御部と、
を有することを特徴とする排便検出装置である。
【0011】
このような排便検出装置によれば、排便を受ける排便受け部材の排便位置に設けられた第1温度センサーは、便が排泄された際には、便と接触して温度が急激に上昇する。一方、排便受け部材の非排便位置に設けられた第2温度センサーは、便が排泄されても便と接触しないので、排泄された便により急激に温度が上昇することはない。更に、第1温度センサーと第2温度センサーとは、単一の排便受け部材に設けられているので、排便受け部材と身体との間における排便以外の要因による温度変化の影響をほぼ同様に受けることになる。このため、排便による温度変化と排便以外の要因による温度変化とが含まれている第1温度センサーから出力される信号と排便以外の要因による温度変化が含まれている第2センサーから出力される信号とに基づき、制御部が排便の有無を検出することにより、排便をより正確に検出することが可能である。ここで、排便位置とは、例えば、排便受け部材のうち、寝たきりの介護を必要とする要介護者が着用して便を排泄した際に、便が溜まる位置であり、具体的には、寝た状態の要介護者の肛門と対向する位置及び肛門より後方側に相当する。また、非排便位置とは、例えば、排便受け部材のうちから排便位置を除いた位置に相当する。
【0012】
かかる排便検出装置であって、前記制御部は、前記第1温度センサーから出力される信号から前記第2センサーから出力される信号を除いた信号に基づいて前記排便の有無を検出することが望ましい。
このような排便検出装置によれば、制御部が排便を検出するための信号には、第1温度センサーから出力される信号から第2センサーから出力される信号が除かれているので、排便以外の要因による温度変化を含まない、より正確な信号から排便をより正確に検出することが可能である。
【0013】
かかる排便検出装置であって、前記第2センサーは、前記排便受け部材が前記身体と対向した際に、股間と対向する部位、又は、当該股間と対向する部位と前記排便位置との間に配置されていることが望ましい。
排便検出を必要とする者は、例えば、介護を必要とするような寝たきりの高齢者等の要介護者なので、排便検出装置は寝た状態にて使用される。このとき、要介護者が寝た状態で、便を排泄した際には、便は身体より下側、すなわち、身体の後方側に溜まることになる。また、排便以外の要因による温度変化を検出可能な第2センサーは、非排便位置のうちでもできるだけ第1センサーに近く、また、便に接しない位置に設けることが望ましい。このため、第2センサーを、股間と対向する部位、又は、当該股間と対向する部位と排便位置との間に配置することにより、第2センサーが便と接することなく、かつ、第1センサーにおける排便以外の要因による温度変化をより確実に検出することが可能である。よって、排便をより正確に検出することが可能である。
【0014】
かかる排便検出装置であって、前記第1センサーと前記第2センサーとは、1枚の絶縁性合成樹脂フィルム上に形成されていることが望ましい。
このような排便検出装置によれば、第1センサーと第2センサーとが1枚の絶縁性合成樹脂フィルム上に形成されているので、第1センサー及び第2センサーを個々に取り付ける必要はなく簡単に第1センサー及び第2センサーを取り付けることが可能である。また、第1センサー及び第2センサーが形成されているのは、絶縁性合成樹脂フィルムなので、薄く、可撓性を有しており、使用者は違和感を覚えることなく使用することが可能である。
【0015】
かかる排便検出装置であって、排便があったことを報知する報知部を有し、前記制御部は、排便があったことを検出した際に、前記報知部を動作させることが望ましい。
このような排便検出装置によれば、排便があった際には、例えば介助者に排便があったことを報知することが可能である。
【0016】
かかる排便検出装置であって、前記排便受け部材に排泄された尿を検出する尿検出部を有することが望ましい。
このような排便検出装置によれば、排便のみならず排尿も検出することが可能である。
【0017】
かかる排便検出装置であって、前記尿検出部は、互いに間隔を隔てて前記絶縁性合成樹脂フィルム上に設けられた対をなす電極であり、前記排泄された尿による前記対をなす電極間における電圧の変化に基づいて尿を検出することが望ましい。
このような排便検出装置によれば、尿検出部は互いに間隔を隔てて絶縁性合成樹脂フィルム上に設けられた対をなす電極なので、安価に尿を検出する機能を実現することが可能である。また、対をなす電極は薄く、可撓性を有する絶縁性合成樹脂フィルムに設けられているので、使用者は違和感を覚えることなく使用することが可能である。また、互いに間隔を隔てた対をなす電極は尿により導電性が高まるので、電極間における電圧の変化に基づいて尿が検出することにより確実に尿を検出することが可能である。
【0018】
かかる排便検出装置であって、前記排便受け部材に着脱自在に設けられ、前記排便受け部材に排泄された尿を吸引可能な尿吸引装置を有し、前記制御部は、前記尿検出部にて尿を検出した際に、前記尿吸引装置にて前記排便受け部材の尿を吸引することが望ましい。
このような排便検出装置によれば、尿を吸引可能な尿吸引装置を有しているので、排尿を検出した際には、尿を吸引して継続して使用することが可能である。
【0019】
===自動尿処理装置の構成について===
排便検出装置の一例としての自動尿処理装置について添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る自動尿処理装置100の構成図である。自動尿処理装置100は、部分的に破断して示されている吸尿部材102と、その吸尿部材102が離脱可能に接続される、尿吸引装置としての真空吸引装置100aを含むコントローラー101とを有する。吸尿部材102は、着用者(図示せず)の肌に向ける内面側とその反対側であって着用者の着衣に向ける外面側とを有するもので、図では着衣である、仮想線で示されたパンツ300とともに着用され、パンツ300によって内面が肌に密着可能な状態にある。パンツ300は、前胴周り域301と、後胴周り域302と、股下域303とを有するもので、外面側を容易に透視することができるように、例えばメッシュタイプの布地を使用したものであることが好ましい。なお、吸尿部材102は、図示例のパンツ300の他に、テープで固定される開放型のおむつやパンツ型のおむつ、おむつカバー、失禁患者用パンツ等適宜の部材を使用して着用することができる。
【0021】
自動尿処理装置100は、着用者が排泄した尿を吸尿部材102に集めて処理することができる装置である。その吸尿部材102は容器部102aと検出部150とを有する。容器部102aは、着用者の尿道口近傍の肌と対向して排泄された尿を受け容れることができ、検出部150は、尿が排泄されたことを検出する尿検出部102bと便を検出する便検出部としてのサーミスタ145とを含んでいる(図5参照)。真空吸引装置100aは、容器部102aに接続される継手部材104、導尿チューブ106、尿タンク106a、ポンプユニット108、電気配線116等を含む。
【0022】
ポンプユニット108は、検出部150から電気配線116を介して送られる電気信号を処理する制御部としての制御回路108aとその制御回路108aによって運転が制御される吸引ポンプ108b等を含んでいる。吸尿部材102では、容器部102aの容器112の周壁部に形成された尿排出用開口114に対して継手部材104を介して導尿チューブ106が接続される。ポンプユニット108から延びる電気配線116の先端には、検出部150のうちの尿検出部102bとしての対をなす電極としての尿検出用電極218a,218b(図5参照)及びサーミスタ145に電力を供給する電力供給電極143a,143b、143cと電気配線116とを電気的に接続するためのクリップ120が取り付けられている。このような自動尿処理装置100では、尿が排泄されると尿検出部102bから検出信号をポンプユニット108に送り、吸引ポンプ108bを作動させて尿タンク106a内の空気を吸引することにより、尿を容器112の内部へ吸引し、その吸引した尿を継手部材104と導尿チューブ106とを介してさらに吸引して、尿タンク106aに集めることができる。また、吸尿部材102に設けられたサーミスタ145から出力された信号がポンプユニット108に送出されており、ポンプユニット108に含まれる制御回路108aにて受信した信号に基づいて報知部としての警報ランプ504を点滅させて便の存在を介護者に知らせることができる。
【0023】
図1に示すように、吸尿部材102を着用すると、クリップ120が腹側に位置する。吸尿部材102の容器112は、その大部分が着用者身体の前側において上下方向へ延びてその内側が着用者の尿道口とその周辺の肌とに向かい合うとともに、下端部が股下域303の内面に沿って緩やかに湾曲しながら肛門へ向かい身体の背後に至るように延びた状態で着用される。特に、吸尿部材102は、着用者が寝たきりの状態にあるときに着用するのが好ましいもので、吸尿部材102は股下域303のうちでも後胴周り域302に寄った部位に位置するように形成されている。このため、吸尿部材102は、尿だけでなく排出された便を受けることが可能である。
【0024】
図2,図3,図4において、図2は吸尿部材102の内面側を示す平面図であり、図3は図2のA−A線に沿う切断面を示す図であり、図4は図2のB−B線に沿う切断面を示す図であって、図3,図4では、吸尿部材102の厚さ方向Rにおいて重なり合うべき各部材が一部のものを除いて互いに離間した状態で示されている。厚さ方向Rは、容器部102aの深さ方向でもある。
【0025】
吸尿部材102は、着用者身体の前後方向に一致させる長さ方向Pと、長さ方向Pに直交する幅方向Qとを有し、長さ方向Pの両端部近傍で幅が広く、中央部で幅が狭くなっている。吸尿部材102はまた、厚さ方向Rを有し、容器112の図3における上方(着用した際の肌側)には、その厚さ方向Rの下方(着用した際の着衣側)から順に、透液性の難通気性シート124、拡散シート126、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、透液性肌当てシート134からなる複数のシート状部材が重なり、肌当てシート134には一対の防漏堤136が重なっている。難通気性シート124と拡散シート126とは容器112と一体になって容器部102aを形成している。また、クッションシート128、電極部118、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134は互いに重なり合って検出部150を形成している。本実施形態においては、吸尿部材102から電極部118を除いた部分が排便を受ける排便受け部材に相当する。
【0026】
容器112は、トレー形状のものであり、軟質ポリエチレンやシリコンゴム等の軟質弾性材料で形成され、長さ方向Pにも幅方向Qにも湾曲できる可撓性を有しているが、吸引ポンプ108bで尿を吸引するときに作用する負圧による変形には耐えられるように作られている。容器112の周縁フランジ部152には難通気性シート124が部位112aにおいて接着または溶着により接合している。容器112の深さ方向は、厚さ方向Rに同じである。
【0027】
難通気性シート124は、透液性は高いが空気を殆どまたは全く通さないもので、図3に示されるように容器112の頂部の開口を覆っている。難通気性シート124を有する容器112は、ポンプユニット108の吸引ポンプ108bが作動すると容易に負圧となり、尿を速やかに吸引することができる。難通気性シート124は、例えば22g/mのスパンボンド不織布と10g/mのメルトブローン不織布と22g/mのスパンボンド不織布とからなるSMS不織布を、好ましくは界面活性剤で親水化処理して使用することができる。難通気性シート124の通気性は、JIS L 1096のセクション6.27.1に規定される通気性測定方法のA法に従って測定したときに、湿潤状態においては0〜100cc/cm/秒、好ましくは0〜50cc/cm/秒の範囲にある。また、乾燥状態においては20〜200cc/cm/秒、好ましくは20〜100cc/cm/秒、さらに好ましくは20〜50cc/cm/秒の範囲にある。この通気性を測定するときの湿潤状態とは、下記の式(1)で算出される難通気性シート124の含水率が100%以上である状態を意味し、乾燥状態とは、難通気性シート124を20℃、RH50%の室内に24時間以上放置したときの同シート124の状態を意味している。
含水率=(湿潤状態のシート重量−乾燥状態のシート重量)/(乾燥状態のシート重量)・・・式(1)
【0028】
拡散シート126は、レーヨン繊維を一例とする親水性繊維を含む不織布等の透液性シート片で形成され、尿が排泄されたときにその尿を難通気性シート124の表面(肌)側において速やかに拡散させて難通気性シート124を広い面積にわたって湿潤状態にするために使用される。難通気性シート124が湿潤状態になることによって、容器112の内部を負圧にして尿をその内部に吸引することが容易になる。拡散シート126は、難通気性シート124に対して互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0029】
クッションシート128は、例えば坪量が20〜30g/mのサーマルボンド不織布等の透液性シート片で形成されており、尿を速やかに浸透させることができるもので、拡散シート126や難通気性シート124に存在する尿が電極部118に向かって逆流することを防いでいる。クッションシート128はまた、それに対して電極部118、スペーサ130、フィルタ132等のシート状部材を予め重ねておけば、吸尿部材102の製造過程において、これらシート状部材を吸尿部材102における所定の位置に置くためのキャリヤ部材となる。クッションシート128は、拡散シート126に対して、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0030】
電極部118は、便を検出するための薄膜サーミスタ(以下、サーミスタという)が実装され、尿を検出するための所要形状の電極と、サーミスタに電力を供給する電極とが導電性インクを使用して合成樹脂フィルムに印刷されて形成されている。電極部118の構造の詳細については後述する。電極部118は、クッションシート128に対して接合することができる。ここで、本自動尿処理装置100に適したサーミスタ145としては、熱容量が小さく、周りの温度の影響を受けやすいサーミスタが好ましく、例えば、石塚電子株式会社製 サーミスタ ET−103が一例として挙げられる。
【0031】
スペーサ130は、検出部150におけるシート状部材のうちで厚さが最も厚いもので、ネット状の透液性シート片で形成される。吸尿部材102では、尿の吸引後にも尿が肌当てシート134に残り、その尿によって肌当てシート134が湿潤状態にあるということがある。そして、その肌当てシート134が、体圧等の作用を受けて電極部118に直接的または間接的に接触し、自動尿処理装置100を誤動作させるということがある。スペーサ130は、そのような誤動作を防止するために電極部118とフィルタ132とを厚さ方向Rにおいて離間させておく部材であって、吸尿能力がなくて撥水性であり、かつ難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有し、体圧を受けてもその厚さが変化しないものである。そのようなスペーサ130は、例えばエチレン酢酸ビニル等の柔軟な合成樹脂で形成された厚さ0.5〜1mmのネットで作ることができ、クッションシート128に対して、互いの透液性を阻害することがないように接合していることが好ましい。
【0032】
フィルタ132は、尿に含まれる固形分が電極部118に付着して電極部118が恒久的に通電状態になるというような事態を防止するためのもので、難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有するシート片、より好ましくは不織布片によって形成される。フィルタ132は、スペーサ130に対して互いの透液性を阻害することがないように接合することができる。
【0033】
肌当てシート134はフィルタ132の表面(肌)側に設けられるもので、吸尿部材102が着用されたときには、着用者の尿道口とその近傍の肌とに向かい合った状態で肌に接触する。かかる肌当てシート134は、例えば坪量が15〜25g/mのサーマルボンド不織布等の柔軟性と透液性とを有するシート片で形成される。肌当てシート134は、クッションシート128と同様に排尿の初期段階で尿を瞬間的に浸透させることができるもので、フィルタ132に対して、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。肌当てシート134には、親水性のものである場合と、撥水性のものである場合とがある。
【0034】
防漏堤136は、図2,図3に示されるように左右一対を成すもので、尿が肌当てシート134の上を幅方向Qへ流れて吸尿部材102から横漏れすることを防止することができる。図3の防漏堤136は、吸尿部材102の外側寄りに位置する外側縁部136cが肌当てシート134に接合される一方、内側寄りに位置する内側縁部136dは、肌当てシート134に接合されることがなく、そこには糸ゴム等の弾性部材136bが長さ方向Pへ伸長した状態で取り付けられている。一対の防漏堤136を形成しているシート136aは、容器112の底部を覆っている。吸尿部材102は、それが着用されときに図1の如く長さ方向Pにおいて湾曲して弾性部材136bが収縮すると、防漏堤136の内側縁部136dは、肌当てシート134から離間するように起立する。防漏堤136におけるシート136aは好ましくは不透液性のものであり、それには柔軟な熱可塑性合成樹脂フィルムやそのフィルムと不織布との複合シート等を使用することができる。吸尿部材102を平面的に見たときの防漏堤136(図2参照)は、上端部と下端部とのそれぞれが第1、第2エンドシート138,140のそれぞれで被覆されている。
【0035】
図5は、図2,図3,図4において使用されている電極部118の平面図である。電極部118は、合成樹脂フィルムで形成された絶縁性のフィルム部260と、フィルム部260の片面に形成された対をなす尿検出用電極218a,218bと、同じくその片面に実装された2つのサーミスタ及びサーミスタに電力を供給するための電力供給電極143a,143b、143cと、これらの電極218a,218b,143a,143b,143cの大部分を覆う絶縁性被覆170とを有する。
【0036】
フィルム部260は、長さ方向Pへ延びる短冊状のものであるが、幅方向Qの中央部が長さ方向Pへ長く切り取られることによって形成された矩形の開口171を2つ有する。このようなフィルム部260は、図5における上方にクリップ120で把持するための上端部266を有し、上端部266の下方には電極部118の幅を二等分する中心線L1−L1の両側に側部267a,267bを有し、さらに下方には側部267aと側部267bとにつながる下端部268と、上端部266と下端部268との間にて側部267a,267bを繋ぐ中継部265を有する。フィルム部260の上端部266では、尿検出用電極218a,218bの端部と電力供給電極143a,143b、143cの端部とが露出している。また、側部267a,267bには、絶縁性被覆170に8つの非塗装部分169aが形成されている。この非塗装部分169aは、幅方向Qに2つずつ並べて設けられ、長さ方向Pに適宜間隔を隔てて設けられており、非塗装部分169aからは、尿検出用電極218a,218bが尿で濡れることを可能にするために、尿検出用電極218a,218bが部分的に露出している。
【0037】
具体的には、フィルム部260の片面には、上端部266から側部267a,267bを通って下端部268に至る尿検出用電極218a,218bが形成されており、下端部268にて折り返すとともに、幅方向Qにおいて互いに内側から下端部268側の開口171の脇を長さ方向に沿って引き回され、中継部265にて繋がっている。尿検出用電極218a,218bの下端部268にて折り返されて中継部265にて互いに繋がる部分が、後述する断線検出用回路250である。この尿検出用電極218a,218bは、上端部266側の端部、すなわちクリップ120にて把持された際にポンプユニット108側と接続される端部と非塗装部分169aを除き絶縁性被覆170にて覆われている。
【0038】
絶縁性被覆170の表面側には、上端部266から側部267a,267bを通る電力供給電極143a,143b,143cが形成されている。電力供給電極143a,143bは、尿検出用電極218a,218bより上端側に端部を有し、側部267a,267bでは電極部118の幅方向において尿検出用電極218a,218bより外側に形成されている。また、電力供給電極143cは、上端部266にて露出されている尿検出用電極218a,218bのいずれか一方に重ねて形成されており、重ねられた尿検出用電極218a,218b(本実施形態では218b)の内側を通って側部267bに延び、中継部265にて2本に分岐されている。中継部265側に分岐された一方は、電極部118の長さ方向Pに沿って真っ直ぐ延び、他方は中継部265を通って、尿検出用電極218aと下端部268側の開口171との間に延びている。
【0039】
電力供給電極143aの下端部268側の端部と電力供給電極143cの分岐された下端部268側の端部とは、側部267aにて、吸尿部材102を着用した際に、身体の前後方向における中央となる股間より僅かに後方側に至り、電力供給電極143bの下端部268側の端部と電力供給電極143cの真っ直ぐに延びた下端部268側の端部とは吸尿部材102を着用した着用者の肛門と対向する位置から後方側に至るように形成されている。電力供給電極143a,143b,143cはいずれも、上端部266側の端部と
下端部268側の端部と、を除いて絶縁性被覆170にて覆われている。尚、尿検出用電極218a,218bの非塗装部分169aは2層に設けられた絶縁性被覆170に覆われることなく露出している。
【0040】
そして、電力供給電極143aの下端部268側の端部と電力供給電極143cの分岐された下端部268側の端部とに、また、電力供給電極143bの下端部268側の端部と電力供給電極143cの真っ直ぐに延びた下端部268側の端部とに、それぞれ架け渡すようにサーミスタ145が設けられ、その表面は図示しない保護シートにて覆われている。
【0041】
以下の説明において、股間側に設けられたサーミスタ145を前側サーミスタ145a、肛門側に設けられたサーミスタ145を後側サーミスタ145bと称する。また、前側サーミスタ145aが設けられている位置は、着用している介助者が仰向けに寝ている状態において、肛門より上方となるので排便を受けない非排便位置に相当し、後側サーミスタ145bが設けられている位置は、肛門より下方となるので排便を受ける排便位置に相当する。このため、前側サーミスタ145aが第2温度センサーに相当し、後側サーミスタ145bが第1温度センサーに相当する。
【0042】
図6は、図5におけるC−C線に沿う断面図であって、尿検出用電極218a,218bの露出部102cを示している。図6では、電力供給電極143a,143b,143cが絶縁性被覆170によって覆われている。
【0043】
図7は、図5におけるD−D線に沿う断面図であって、前側サーミスタ145aが実装された状態を示している。図7では、断線検出用回路250、尿検出用電極218a,218b、電力供給電極143b、及び、側部267b側の電力供給電極143cが絶縁性被覆170によって覆われ、前側サーミスタ145aが電力供給電極143a、及び、側部267a側の電力供給電極143cと接続されている。
【0044】
図8は、図5におけるE−E線に沿う断面図であって、後側サーミスタ145bが実装された状態を示している。ここでは、断線検出用回路250、尿検出用電極218a,218b、電力供給電極143a、及び、側部267a側の電力供給電極143cが絶縁性被覆170によって覆われ、後側サーミスタ145bが電力供給電極143b、及び、側部267b側の電力供給電極143cと接続されている。
【0045】
図9は、絶縁性被覆170の一部が剥離され電力供給電極143a,143b,143cを露出した状態にある電極部118の平面図である。フィルム部260の側部267a,267bには、一対の尿検出用電極218a,218bが互いに離間並行して長さ方向Pへ延びる態様で形成されている。これらの尿検出用電極218a,218bは、図5の非塗装部分169aにおいて露出している。尿検出用電極218aと尿検出用電極218bとの間には、断線検出用回路250が形成されている。断線検出用回路250は、尿検出用電極218a,218bそれぞれの下端部分に電気的につながるとともに、図示の如く開口171の縁に沿って延びている。フィルム部260の側部267a,267bにはまた、尿検出用電極218aと尿検出用電極218bの外側に前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bに電力を供給する電力供給電極143a,143bが幅方向Qに互いに間隔を隔てて長さ方向Pへ延びる態様で形成されており、その先端にサーミスタ145が設けられている。
【0046】
電極部118において、フィルム部260には、好ましくは厚さが50〜100μmのポリエステルフィルムが使用される。尿検出用電極218a,218bは、導電性インクや導電性塗料を使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。導電性インクや導電性塗料には、導電性材料として例えば3〜7重量%のカーボンブラック、10〜30重量%のカーボングラファイト等の人造黒鉛、適宜量の銀粉等が含まれる。尿検出用電極218a,218bのそれぞれは、例えば幅が0.5〜2mm、抵抗が150kΩ以下となるように作られる。断線検出用回路250は、例えばカーボンブラックが3〜7重量%、人造黒鉛が5〜10重量%含まれるインクを使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。この断線検出用回路250は、その抵抗値が尿検出用電極218a,218bの抵抗値よりもはるかに高いもので、好ましい断線検出用回路250は幅が0.3〜1mm、抵抗値が2〜10MΩ程度となるように作られる。電力供給電極143a,143b,143cは、尿検出用電極218a,218bと同様なインクや塗料を使用して作られる他に、アルミニゥムを真空蒸着することによって作られることもある。電力供給電極143a,143b,143cもまた幅が例えば0.5〜2mmとなるように作られ、電力供給電極143a,143b,143cの先端には、サーミスタを実装できるよう非塗装部分が適宜幅に作られている。
【0047】
電極部118とコントローラー101とがクリップ120を介して電気的につながると、コントローラー101に含まれている電源116a(図1参照)から微弱な電流が尿検出用電極218a,218bに供給され、サーミスタが動作可能な電力が電力供給電極143a,143b,143cを介してサーミスタに供給される。
【0048】
ポンプユニット108の制御回路108aでは、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗またはその電気抵抗に相等する他の物理量と、サーミスタ145から出力される電気抵抗の変化が連続的または間欠的に測定される。ただし、尿検出用電極218a,218bは断線検出用回路250を介してつながっており、制御回路108aではこれらを通る微弱な電流を検出する。そして、所定の時間が経過してもその電流を検出することができなくなったときには、尿検出用電極218a,218bに異常があるとみなして自動尿処理装置100の使用者に対して警報を出す。
【0049】
吸尿部材102において尿が排泄されると、尿検出用電極218aと218bとにおける露出部102cどうしが電気的につながり、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が低下するように変化し、制御回路108aではその変化を尿が尿検出部102bに存在すること、換言すると尿が排泄されたことを検出した信号と判断して吸引ポンプ108bを始動させる。電気抵抗の低下の程度は、吸尿部材102の諸条件、例えば非塗装部分169aにおける尿検出用電極218a,218bの露出面積等に依存するから、図示例の吸尿部材102では、例えば尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が、尿が排泄されると0.4kΩ以下に容易に低下するようにしておいて、0.4kΩまたはそれ以下の電気抵抗が所定の時間、例えば0.2秒間継続することを、吸引ポンプ108bを始動させる規定抵抗値、すなわち閾値とすることができる。また、吸引ポンプ108bは、吸尿部材102による尿の吸引を1〜2分以内で完了することができる能力を有することが好ましく、そのような吸引ポンプ108bを使用するときには、吸引ポンプ108bの運転が例えば3分間以上継続するときに、自動尿処理装置100に異常があると判断することができる。
【0050】
また、ポンプユニット108の制御回路108aと接続されたサーミスタ145a、145bは、吸尿部材102と身体との間の温度に応じて電気抵抗が変化する。そして、制御回路108aは、所定の時間間隔(例えば、1秒間隔)にてサーミスタ145a、145bの電気抵抗を検出する。さらに、制御回路108aは、検出した電気抵抗に基づいて、1秒ごとの電気抵抗の変化から、吸尿部材102と身体との間の温度変化を検出している。このとき、非排便位置に設けられた前側サーミスタ145aでは、非排便位置における温度の変化を検出し、排便位置に設けられた後側サーミスタ145bでは、排便位置における温度の変化を検出する。
【0051】
着用者にて便が排泄され、便が排便位置に至り後側サーミスタ145bに近接又は接触した際には、体内から排泄された便が体温より高いため後側サーミスタ145bの電気抵抗が急激に大きくなる。
【0052】
ところで、前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bにて検出される温度は、着用者が尿を排泄したときや身体を動かしたときなどにも変化する。特に尿を排泄した際には、便が排出された際と同様に後側サーミスタ145bの電気抵抗が急激に大きくなる。このため、後側サーミスタ145bにより検出された温度変化のみにて排便を検出することは難しい。そこで、発明者らは、排尿時における後側サーミスタ145bにより検出される温度変化と排便時における後側サーミスタ145bにより検出される温度変化とを比較した。
【0053】
図10は、排尿時と排便時における温度変化を説明するための図である。
図10は、排便、排尿を認識可能な者が着用した吸尿部材102の前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bの温度変化を約1時間検出し続けた結果であり、尿又は便を排泄した際には着用者の操作により、その旨がわかるように、制御回路108aに信号Sが入力されている。また、排尿が検出された際には、吸引ポンプ108bが作動している。
【0054】
図示するように、排尿時の温度は、数秒で2〜3℃上昇し、その後、吸引ポンプ108bが作動していることもあって1〜2分で約2℃下降している。また、排便時の温度は、上昇時は排尿時と同様に数秒で2〜3℃上昇しているが、その後は約2分が経過しても約0.3℃下降しただけである。このように、排尿及び排便時の温度は、急激に上昇する点では同様であるが、その後の温度変化は排尿時においては急激に下降するのに対し、排便時においては緩やかに時間をかけて下降する。これは、吸引ポンプ108bによる吸尿の影響もあるが尿と便との熱容量の相違にも起因していると考えられ、信頼性が高い。このため発明者らは、この排尿時と排便時とにおける温度の下降の相違に注目した。すなわち、温度が上昇した後の温度の変化に基づいて、温度の下降が所定時間(例えば、2分間)後に所定値(例えば、1℃)以下で、緩やかに継続している場合には、排尿ではなく排便があったことを検出することとした。
【0055】
また、前述したように、前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bにて検出される温度は、身体を動かしたときなどにも変化する。このため、本自動尿処理装置100は、身体を動かしたときの温度変化による誤検知を防止するために、前側サーミスタ145aを設けている。前側サーミスタ145aは非排便位置に設けられているので、排便による電気抵抗の変化は生じにくい。その一方で、前側サーミスタ145aは、非排便位置である股間と対向し、かつ、排便位置と比較的近い位置に設けられているので、例えば着用者が身体を動かしたことにより、吸尿部材102と身体との間の温度が変化すると、後側サーミスタ145bとほぼ同様に出力が変化する。
【0056】
図11は、前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bにて検出された温度変化を示す模式図である。図11の左上段の図は後側サーミスタ145bにて検出された温度変化を示し、左下段は前側サーミスタ145aにて検出された温度変化を示している。上段の後側サーミスタ145bから出力される信号は、前半と後半とにそれぞれ大きな温度の上昇と下降が生じたことを示しており、下段の前側サーミスタ145aから出力される信号は、後側サーミスタ145bから出力される信号における後半の温度変化と同期して温度の上昇と下降が生じたことを示している。すなわち、後半部分では排便位置と非排便位置とで同様の温度変化が生じているため、後半に生じた温度変化は排便によるものではなく、着用者が身体を動かすなどして、吸尿部材102と身体との間の空間の温度に変化が生じたものと考えられる。このため、後側サーミスタ145bの温度にて排便を検出する際には、まず前側サーミスタ145aにて検出された温度変化を除く、ノイズ除去処理を制御回路108aにて実行する。
【0057】
===便検出方法について===
図12は、自動尿処理装置100による排尿及び排便の検出方法を説明するための図である。
【0058】
図示するように、本実施形態の自動尿処理装置100における排便の検出方法では、尿検出用電極218a,218bと前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bから出力される信号を制御回路108aにて並行して検出している。すなわち、ポンプユニット108の制御回路108aでは、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗(インピーダンス)と、サーミスタ145a,145bから出力される電気抵抗の変化が連続的または間欠的に測定される。
【0059】
吸尿部材102において尿が排泄されると、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗が低下したことを制御回路108aが検出する(S1)。そして、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗の低下が確認されると、制御回路108aにて所定時間内の電気抵抗の変化を検出し安定した出力が得られると(S2)、尿が排泄されたことを検出した信号と判断して(S3)、吸引ポンプ108bを始動させる(S4)。
【0060】
排尿の検出と並行して、制御回路108aは、前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bから出力される電気抵抗の変化を、同期させて所定の時間ごとにそれぞれ測定している。例えば、1秒ごとの電気抵抗の変化を5分間測定した信号を1つの単位として、測定開始時間を1秒ずつずらしつつ測定している。
【0061】
後側サーミスタ145bの電気抵抗が低下したことを制御回路108aが検出すると(S5)、制御回路108aでは、電気抵抗が低下したことを検出した時点からの信号は、後側サーミスタ145bにて測定された電気抵抗の変化の信号から前側サーミスタ145aにて測定された電気抵抗の変化の信号を差し引くことにより、排便以外による温度変化、所謂ノイズが除去される(S6)。
【0062】
次に、制御回路108aは、ノイズを除去した信号における電気抵抗の変化の推移を
検出し、電気抵抗の変化の推移から温度下降の速度を測定する(S7)。例えば、ノイズを除去した5分間の信号のうち、後側サーミスタ145bの電気抵抗の変化に基づいて温度が上昇したことを検出した後の2分間において、下降した温度を検出して排便又は排尿を判断する(S8)。そして、ノイズを除去した信号における電気抵抗が上昇する速度、すなわち温度が下降する速度が緩やかな場合には、便が排泄されたことを検出した信号と仮に判断する。このとき、尿検出用電極218aと尿検出用電極218bとの間の電気抵抗値に基づく排尿の有無の検出結果を取得し(S9)、既に尿が排泄されたことが検出されていた場合(S10)には、尿検出用電極218a、218bの検出結果を優先し、排泄されたものが便ではなく尿と判断する。この場合には、既に吸引ポンプ108bが作動されているので、改めて吸引ポンプ108bが作動させることはない。
【0063】
また、ノイズを除去した信号に基づいて,便が排泄されたことを検出した信号と仮に判断した後(S8)、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗値に基づく排尿の有無の検出結果を取得して(S9)、尿が排泄されたことが検出されていなかった場合(S10)には、制御回路108aは排泄されたものが便であると判断して吸尿部材102の交換を促すための警報等を報知させる(S11)。
【0064】
また、ノイズを除去した信号における電気抵抗が上昇する速度、すなわち温度が下降する速度が急激な場合には,尿が排泄されたことを検出した信号と判断する(S8)。このとき、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗値に基づく排尿の有無の検出結果を取得し(S12)、既に尿が排泄されたことが検出されていた場合(S13)には、排泄されたものが尿であると判断するが既に吸引ポンプ108bは作動されているので、制御回路108bにより改めて吸引ポンプ108bが作動されることはない。一方、尿検出用電極218aと218bとの間の電気抵抗値に基づく排尿の有無の検出結果にて尿が排泄されたことが検出されていなかった場合(S13)には、制御回路108aは吸引ポンプ108bを始動させる(S4)。
【0065】
本実施形態の自動尿処理装置100によれば、排便を受ける吸尿部材102における排便位置に設けられた後側サーミスタ145bは、便が排泄された際には、便と接触して温度が急激に上昇する。一方、吸尿部材102における非排便位置に設けられた前側サーミスタ145aは、便が排泄されても便と接触しないので、排泄された便により急激に温度が上昇することはない。また、前側サーミスタ145aと後側サーミスタ145bとは、単一の吸尿部材102に設けられているので、吸尿部材102と身体との間における排便以外の要因による温度変化の影響をほぼ同様に受けることになる。このため、排便による温度変化と排便以外の要因による温度変化とが含まれている後側サーミスタ145bから出力される信号と排便以外の要因による温度変化が含まれて、排便による温度変化が含まれていない前側サーミスタ145aから出力される信号とに基づき、制御回路108aが排便の有無を検出することにより、排便をより正確に検出することが可能である。
【0066】
具体的には、後側サーミスタ145bから出力される信号から前側サーミスタ145aから出力される信号を除いた信号に基づいて、制御回路108aが排便を検出するので、排便以外の要因による温度変化を含まない、より正確な信号から排便をより正確に検出することが可能である。
【0067】
かかる排便検出装置であって、前記第2センサーは、前記排便受け部材が前記身体と対向した際に、股間と対向する部位、又は、当該股間と対向する部位と前記排便位置との間に配置されていることが望ましい。
【0068】
また、排便検出を必要とする者は、例えば、介護を必要とするような寝たきりの高齢者等の要介護者なので、自動尿処理装置100は要介護者が寝た状態にて使用される。このとき、要介護者が寝た状態で便を排泄すると、便は身体より下側、すなわち、身体の後方側の排便位置に溜まることになる。また、排便以外の要因による温度変化を検出可能な前側サーミスタ145aは、非排便位置のうちでもできるだけ排便位置の後側サーミスタ145bに近く、また、便に接しない位置に設けることが望ましい。このため、前側サーミスタ145aを、股間と対向する部位、又は、当該股間と対向する部位と排便位置との間に配置することにより、前側サーミスタ145aが便と接することなく、かつ、前側サーミスタ145aにおける排便以外の要因による温度変化をより確実に検出することが可能である。よって、排便をより正確に検出することが可能である。
【0069】
また、前側サーミスタ145aと後側サーミスタ145bとが1枚の絶縁性合成樹脂製のフィルム部260上に形成されているので、前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bを個々に取り付ける必要はなく簡単に前側サーミスタ145aと後側サーミスタ145bを取り付けることが可能である。また、前側サーミスタ145aと後側サーミスタ145bが形成されているのは、薄く、可撓性を有する絶縁性合成樹脂製のフィルム部260なので、使用者は違和感を覚えることなく使用することが可能である。
【0070】
自動尿処理装置100の制御回路108aが、排便があったことを検出した際に排便があったことを報知するための警報ランプ504を動作させるので、排便があった際には、例えば介助者に排便があったことを報知することが可能である。
【0071】
また、自動尿処理装置100は、尿が排泄されたことを検出する尿検出部102bを有するので、排便のみならず排尿も検出することが可能である。
【0072】
また、尿検出部102bは互いに間隔を隔てて絶縁性合成樹脂製のフィルム部260上に設けられた対をなす尿検出用電極218a,218bなので、安価に尿を検出する機能を実現することが可能である。また、対をなす尿検出用電極218a,218bは薄く、可撓性を有する絶縁性合成樹脂製のフィルム部260に設けられているので、使用者は違和感を覚えることなく使用することが可能である。また、互いに間隔を隔てた対をなす尿検出用電極218a,218bは尿により導電性が高まるので、尿検出用電極218a,218b間における電圧の変化に基づいて尿が検出することにより確実に尿を検出することが可能である。
【0073】
また、自動尿処理装置100は、尿を吸引可能な真空吸引装置100aを有しているので、排尿を検出した際には、尿を吸引して継続して使用することが可能である。
【0074】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る排便検出装置としての自動尿処理装置を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0075】
上記実施形態においては、排便検出装置の一例として、自動尿処理装置100を例に挙げて説明したが、排便検出装置としては、例えば、尿検出部やポンプユニットを備えない形態であっても構わない。すなわち、前側サーミスタ145aと後側サーミスタ145bとを有し尿検出部を備えない電極部と、電極部を備えない吸尿部材相当の排便受け部材と、電極部と接続されて前側サーミスタ145a及び後側サーミスタ145bから出力される信号に基づいて排便の有無を検出する制御回路を備えた構成であれば構わない。
【0076】
上記実施形態においては、前側サーミスタと後側サーミスタの2つの温度センサーを用いた例について説明したがこれに限るものではない。例えば、電極部に長さ方向に沿って複数のサーミスタを備えて、各々のサーミスタから出力される信号を検出する。そして、急激に温度が上昇し緩やかに下降する温度変化を検出した際に、この温度変化が検出されたサーミスタを排便位置に設けられた排便位置サーミスタとし、排便位置サーミスタも最も近いサーミスタであって、急激に温度が上昇し緩やかに下降する温度変化が検出されないサーミスタを非排便位置に設けられた非排便位置サーミスタとする。そして、排便位置サーミスタから出力される信号から非排便位置サーミスタから出力される信号を除いて、排便の有無を検出してもよい。この場合には、非排便位置サーミスタが排便位置のより近くに位置するので、ノイズをより正確に除去することが可能であり、より正確に排便の有無を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 自動尿処理装置(排便検出装置)、
100a 真空吸引装置(尿吸引装置)、101 コントローラー、
102 吸尿部材、102a 容器部(排便受け部材)、
102b 尿検出部、102c 露出部、104 継手部材、
106 導尿チューブ、106a 尿タンク、108 ポンプユニット、
108a 制御回路(制御部)、108b 吸引ポンプ、112 容器、
114 尿排出用開口、116 電気配線、116a 電源、118 電極部、
120 クリップ、124 難通気性シート、126 拡散シート、
128 クッションシート、130 スペーサ、132 フィルタ、
134 肌当てシート、136 防漏堤、136a シート、
136b 弾性部材、136c 外側縁部、136d 内側縁部、
138 エンドシート、140 エンドシート、143a 電力供給電極、
143b 電力供給電極、143c 電力供給電極、145 サーミスタ、
145a 前側サーミスタ(第2温度センサー)、
145b 後側サーミスタ(第1温度センサー)、150 検出部、
152 周縁フランジ部、169a 非塗装部分、170 絶縁性被覆、
171 開口、218a 尿検出用電極(対をなす電極)、
218b 尿検出用電極(対をなす電極)、250 断線検出用回路、
260 フィルム部、265 中継部、266 上端部、267a 側部、
267b 側部、268 下端部、300 パンツ、301 前胴周り域、
301 後胴周り域、303 股下域、504 警報ランプ(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体と対向して排便を受ける排便受け部材と、
前記排便受け部材の、排便を受ける排便位置に設けられた第1温度センサーと、
前記排便受け部材の、排便を受けない非排便位置に設けられた第2温度センサーと、
前記第1温度センサーから出力される信号と前記第2センサーから出力される信号とに基づいて前記排便の有無を検出する制御部と、
を有することを特徴とする排便検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排便検出装置であって、
前記制御部は、前記第1温度センサーから出力される信号から前記第2センサーから出力される信号を除いた信号に基づいて前記排便の有無を検出することを特徴とする排便検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排便検出装置であって、
前記第2センサーは、前記排便受け部材が前記身体と対向した際に、股間と対向する部位、又は、当該股間と対向する部位と前記排便位置との間に配置されていることを特徴とする排便検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排便検出装置であって、
前記第1センサーと前記第2センサーとは、1枚の絶縁性合成樹脂フィルム上に形成されていることを特徴とする排便検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排便検出装置であって、
排便があったことを報知する報知部を有し、
前記制御部は、排便があったことを検出した際に、前記報知部を動作させることを特徴とする排便検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の排便検出装置であって、
前記排便受け部材に排泄された尿を検出する尿検出部を有することを特徴とする排便検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排便検出装置であって、
前記尿検出部は、互いに間隔を隔てて前記絶縁性合成樹脂フィルム上に設けられた対をなす電極であり、
前記排泄された尿による前記対をなす電極間における電圧の変化に基づいて尿を検出することを特徴とする排便検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の排便検出装置であって、
前記排便受け部材に着脱自在に設けられ、前記排便受け部材に排泄された尿を吸引可能な尿吸引装置を有し、
前記制御部は、前記尿検出部にて尿を検出した際に、前記尿吸引装置にて前記排便受け部材の尿を吸引することを特徴とする排便検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−87823(P2011−87823A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244822(P2009−244822)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】