説明

排土装置および排土方法

【課題】 一定水量当りの排土能率に優れる排土装置および排土方法を提供する。
【解決手段】 排土装置10には、5個の噴射口25を備えるノズルヘッド11が回転駆動可能に設けられ、このノズルヘッド11に水を供給し、ウォータジェット流として噴射させる水供給手段13と、ノズルヘッド11に空気を供給し、空気流として噴射させる空気供給手段14とが設けられる。この排土装置10を用いて、ノズルヘッド11からウォータジェット流を噴射させて地面を掘削し、掘削に引続きノズルヘッド11から空気流を噴射して土砂を排土する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば埋設地雷などの除去作業に好適に用いられる排土装置および排土方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の戦闘地域または過去戦闘地域であったような場所には、地中に地雷が埋設されていることがあり、この地雷は非戦闘員をも傷付けるので、特に過去戦闘地域であったけれども現在戦闘が終結している地域においては、土地を平和利用する上で、その除去が重大な問題とされている。
【0003】
埋設地雷を除去する方法としては、たとえば次のようなものが一般的である。地表からの圧力付加により起爆する種類の地雷に対しては、ホイールローラのような地雷処理車で地雷原を走行することによって爆破処理することができる。しかしながら、地雷原は、平坦な土地ばかりでなく、地雷処理車が走行できない土地も多い。また地雷処理車が走行できるような平坦な土地であっても、複数回の圧力付加によって起爆する種類の地雷では、その信管の起爆までの圧力付加回数の設定が不明なので、地雷処理車による地雷の完全な除去を望むことはできない。
【0004】
また、地雷原において外部から爆発を発生させ、その爆風および地面の振動等によって、埋設された地雷の起爆を誘発させることも行われている。しかしながら、この方法においても、地雷の信管がその外部からの爆発によって確実に作動するか否かは不明であり、地雷の中には非作動率が5〜30%と言われる自己不活性化機能付きのものもあるので、確実な除去を望むことはできない。
【0005】
したがって、上記のような方法によっても除去し得ずに残る地雷については、探知して手作業によって掘り出し除去することに頼らざるを得ないのが実情である。しかしながら、手作業では時間が掛かりすぎるので、世界的規模で考える場合、除去される地雷の個数よりも埋設される個数の方が多く、除去が追いつかないという問題がある。
【0006】
このような問題を解決する従来技術に、地中に埋設された地雷を、X線発生装置とガンマ線検出器とサーベイメータとによって探知し、地雷が有ると判別された領域の土砂をウォータジェット装置で除去(排土)して地雷を露出させ、処理するというものがある(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に開示される従来技術によれば、地中の地雷の有無を短時間で探査することができ、また埋設地雷を探知した場合には、ウォータジェット装置によって排土し、地雷を露出させることができるので、手作業に比べて危険度が低く作業効率が向上する。
【0008】
しかしながら、特許文献1の従来技術には、以下のような問題がある。図10は、従来のウォータジェット装置による排土の概要を示す図である。従来のウォータジェット装置は、1本または噴射口が1個から成るノズルヘッド1を備える構成である。このノズルヘッド1に対して、不図示の水源に設けられる電動式ポンプが配管によって接続され、高圧水流であるウォータジェット流2が、ノズルヘッド1から地面3の掘削部4に向けて噴射される。図10では、ウォータジェット装置のノズルヘッド1の部分のみを図示する。
【0009】
図10(a)では、ノズルヘッド1からウォータジェット流2を地面3の掘削部4へ噴射し、掘削部4の土が土砂5としてウォータジェット流の運動エネルギで吹飛ばされている状態を示す。図10(b)では、ウォータジェット流2の噴射を停止した状態を示す。ウォータジェット流2の噴射を停止した直後では、掘削によって地面3に形成された第1凹所6の周縁部に、吹飛ばされた土砂5が一旦堆積する。この堆積した土砂5は、大量の水分を含む泥水状であり流動性を有するので、第1凹所6の底部へ向って流動する。
【0010】
図10(c)では、泥水状となった土砂5が第1凹所6に崩落流入して覆い被さり、第1凹所6よりも深さが浅い第2凹所7になる状態を示す。このように1本のノズルまたは噴射口が1個のノズルでウォータジェット流を噴射させて排土する装置および方法では、比較的大量の水を使用するにも関わらず、排土部分の排土幅および排土深さともに小さく、排土性能が劣るという問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開平7−146097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、一定水量当りの排土能率に優れる排土装置および排土方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ノズルヘッドから流体を噴射して土砂を除去する排土装置において、
流体が水および空気であり、
ノズルヘッドに水を供給し、ウォータジェット流としてノズルヘッドから噴射させる水供給手段と、
ノズルヘッドに空気を供給し、空気流としてノズルヘッドから噴射させる空気供給手段とを含むことを特徴とする排土装置である。
【0014】
また本発明は、ノズルヘッドの流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更するスタンドオフ変更手段を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、ノズルヘッドは、複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、
該ノズルヘッドを、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線まわりに回転させる回転駆動手段を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明は、ノズルヘッドから流体を噴射して土砂を除去する排土装置において、
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、
ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを含むことを特徴とする排土方法である。
【0017】
また本発明は、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとの間に、
ノズルヘッドの流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更するステップを含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さが、
ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さよりも小さいことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを交互に繰返し実行することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを同時に実行することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、ノズルヘッドが、複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップの前に、
ノズルヘッドを、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線まわりに回転させるステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排土装置には、ノズルヘッドに水を供給し、ウォータジェット流としてノズルヘッドから噴射させる水供給手段と、ノズルヘッドに空気を供給し、空気流としてノズルヘッドから噴射させる空気供給手段とが含まれる。このことによって、ウォータジェット流で掘削し、掘削した土を土砂として吹飛ばすことに加えて、さらに空気流の噴射(エアーブロー)で土砂を充分に吹飛ばすことができるので、一旦掘削して形成される凹所に吹飛ばした土砂が崩落流入することを防止できる。したがって、一定の水量で幅および深さともに大きな凹所を形成、すなわち排土性能を向上することができる。
【0023】
また本発明によれば、排土装置には、スタンドオフ変更手段が備えられる。このことによって、排土の対象とされる地面の土質に応じて最適のスタンドオフ値に設定して排土することが可能になる。また地面の掘削と土砂の吹飛ばしとで、好適なスタンドオフ値が異なる場合であっても、掘削動作と土砂の吹飛ばし動作とを個別に動作させ、各動作に適した個別のスタンドオフ値に設定することが可能になる。
【0024】
また本発明によれば、ノズルヘッドが複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、該ノズルヘッドを、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線まわりに回転させることができるので、一層排土能率を向上することが可能になる。
【0025】
本発明によれば、排土方法には、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとが含まれる。このことによって、ウォータジェット流で掘削し、掘削した土を土砂として吹飛ばすことに加えて、さらにエアーブローで土砂を充分に吹飛ばすことができるので、一旦掘削して形成される凹所に吹飛ばした土砂が崩落流入することを防止し、一定の水量で幅および深さともに大きな凹所を形成することが可能になる。
【0026】
また本発明によれば、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとの間に、スタンドオフを変更するステップが含まれ、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さが、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さよりも小さいことが好ましい。このことによって、より広範な領域にエアーブローして土砂を効果的かつ確実に吹飛ばすことが可能になる。
【0027】
また本発明によれば、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとが交互に繰返し実行されることによって、地面の掘削と、掘削によって形成される土砂の吹飛ばしとが、効果的に繰返されるので、地面を深く掘り下げることが可能になり、深部に埋設されている物体であっても容易に露出させることができる。
【0028】
また本発明によれば、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを同時に実行することによって、地面の掘削と掘削によって形成される土砂の吹飛ばしとを同時に行うことが可能になり、排土作業の所要時間を短縮することができる。
【0029】
また本発明によれば、ノズルヘッドが複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップの前に、ノズルヘッドをその軸線まわりに回転させるステップを含むので、一層高能率で排土作業が実行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明の実施の一形態である排土装置10の構成を簡略化して示す図である。図1(a)では排土装置10の側面図を示し、図1(b)では排土装置10の正面図を示す。
【0031】
排土装置10は、大略、流体である水および/または空気を噴射するノズルヘッド11と、ノズルヘッド11が装着される装置本体12と、ノズルヘッド11に水を供給し、ウォータジェット流としてノズルヘッド11から噴射させる水供給手段13と、ノズルヘッド11に空気を供給し、空気流としてノズルヘッド11から噴射させる空気供給手段14と、ノズルヘッド11の流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッド11から噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更するスタンドオフ変更手段15と、ノズルヘッド11を、ノズルヘッド11から噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線11aまわり(矢符17方向)に回転させる回転駆動手段16とを含む構成である。
【0032】
装置本体12は、たとえば金属からなる略直方体形状の筐体である。装置本体12の底部21には、外方に向かって立上がるようにして4つの支持部材22が固設され、支持部材22にそれぞれ設けられる車軸23にキャスタ24が回転自在に装着される。このようにキャスタ24が設けられているので、装置本体12を所望の位置まで移動させることが可能である。
【0033】
図2は、図1の排土装置10に備わるノズルヘッド11を噴射口側から見た図である。水および/または空気を噴射するノズルヘッド11は、複数の噴射口25(本実施の形態では25a〜25eの5個)を備える。本実施の形態の噴射口25a〜25eは、2重口構造を有し、内口25a1〜25e1が水をウォータジェット流として噴射するウォータジェット噴射口であり、外口25a2〜25e2が、空気を空気流(エアーブロー)として噴射するエアーブロー噴射口である。
【0034】
図1に戻って、ノズルヘッド11の噴射口25が形成される側と反対側の端部に、たとえば電動機などで実現される回転駆動手段16が設けられる。回転駆動手段16は、第1支持アーム26に装着され、第1支持アーム26が回転関節継手27に接続される。また回転関節継手27には、第2支持アーム28が接続される。第2支持アーム28は、アーム移動部29に支持される。アーム移動部29は、駆動手段を備え、支持している第2支持アーム28を、図1(b)の正面図で紙面に向かって左右方向であるX軸方向と、図1(a)の側面図で紙面に向かって左右方向であるY軸方向との所望の位置へ所望の速度で移動させるとともに、回転関節継手27を矢符30方向に角変位駆動させて、ノズルヘッド11による流体の噴射方向を所望の方向に設定することができる。
【0035】
アーム移動部29の一方の端部付近には、前述のX軸およびY軸方向に垂直なZ軸方向に貫通孔が形成され、該貫通孔に臨むアーム移動部29の内壁には雌ねじが刻設される。
このアーム移動部29の一方の端部付近は、装置本体12の内部空間へ挿入され、刻設されている雌ねじ部に、装置本体12の内部にZ軸方向に延びて回転自在に設けられる雄ねじ部材31が螺合する。雄ねじ部材31は、その一端部が装置本体12の内壁に固設される軸受32に回転自在に支持され、その他端部が電動機33の出力軸に連結される。
【0036】
電動機33を駆動させることによって、雄ねじ部材31を回転させ、雄ねじ部材31に螺合するアーム移動部29をZ軸方向に移動、すなわちアーム移動部29に第1および第2支持アーム26,28ならびに回転関節継手27を介して装着されるノズルヘッド11をZ軸方向に移動させることができる。
【0037】
アーム移動部29のZ軸方向における位置、また回転関節継手27の角変位動作でノズルヘッド11の流体噴射方向を変えることによって、ノズルヘッド11の流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッド11から噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更することができる。したがって、雄ねじ部材31、軸受32、電動機33、アーム移動部29、第1および第2支持アーム26,29および回転関節継手27が、スタンドオフ変更手段15を構成する。
【0038】
スタンドオフ変更手段15およびスタンドオフ変更手段15に含まれるアーム移動部29の動作用電源としては、商用電源もしくは装置本体12に搭載する不図示の二次電池などを用いることができ、その動作制御は有線または無線によるリモートコントローラで行うことができる。
【0039】
空気供給手段14は、たとえばエアコンプレッサなどで実現される。本実施の形態では、エアコンプレッサ14が装置本体12の内部に設けられ、装置本体12の壁部に形成される空気取入口34から取入れた空気を加圧し、所望の圧力、流量でノズルヘッド11へ供給し、ノズルヘッド11のエアーブロー噴射口25a2〜25e2から噴射させる。エアコンプレッサ14と、ノズルヘッド11との間は、可撓配管、カップリングおよび固定配管等によって接続される。
【0040】
なお、空気供給手段14は、エアコンプレッサに限定されるものではなく、たとえば高圧空気ポンプなどであってもよい。
【0041】
水供給手段13は、水源である水を貯留する貯水槽35と、装置本体12の内部に設けられて貯水槽35内の水を吸い上げるとともに加圧してノズルヘッド11へ送給する電動式水ポンプ36とを含んで構成される。なお、水を加圧する手段は、電動式水ポンプ36に限定されるものではなく、他のたとえばベーンポンプ、プランジャーポンプ、増圧機式ポンプとアキュムレータとの組合せなどであってもよい。
【0042】
また、ノズルヘッド11におけるウォータジェット噴射口と、エアーブロー噴射口との配置は、前述の図2に示す2重口構造ものに限定されることなく、図3に示すようにウォータジェット噴射口と、エアーブロー噴射口とが、分離された構造であってもよい。図3は、もう一つのノズルヘッド41の噴射口の構成を示す図である。図3に示すノズルヘッド41は、仮想第1円44上に形成される6個のウォータジェット噴射口42a〜42fと、仮想第1円44の外方に位置する仮想第2円45上に形成される6個のエアーブロー噴射口43a〜43fとを備える構成である。
【0043】
排土装置10は、水供給手段13および空気供給手段14から供給される水および/または空気をノズルヘッド11から噴射して地面を掘削し土砂を除去することに利用される。
【0044】
図4は、排土装置10を用いる本発明の一態様である排土方法を説明する図である。なお、図4では排土装置10のノズルヘッド11のみを図示し、他の部分については図示を省略している。
【0045】
図4(a)では、矢符50方向に回転させているノズルヘッド11から水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射する。このステップは、いわゆる掘削ステップである。たとえば地中に地雷などの処理対象物が存在することが探知されたとき、当該領域の地面51に対してノズルヘッド11からウォータジェット流53を噴射して掘削し、掘削屑である土砂52をウォータジェット流53の運動エネルギで吹飛ばす。掘削ステップにおけるスタンドオフ値(SFW)は、後述するステップであるエアーブローステップにおけるスタンドオフ値(SFA)よりも小さく設定される。
【0046】
この掘削ステップでは、ノズルヘッド11を回転させながら5つの噴射口であるウォータジェット噴射口25a1〜25e1からウォータジェット流を噴射するので、大きな運動エネルギを有する無数の液滴を生じることができ、広範囲の領域を効率的に掘削することができる。
【0047】
図4(a)と図4(b)との間の不図示のステップでは、ノズルヘッド11からのウォータジェット流の噴射を停止し、スタンドオフ値を、掘削ステップにおけるスタンドオフ値SFWから、SFWよりも大きいスタンドオフ値SFAへ変更するステップが実行される。
【0048】
図4(b)では、一旦吹飛ばされた土砂52が、掘削で形成された凹所54へ崩落流入することを防止するために、ノズルヘッド11からエアーブロー流55を除去の対象である泥水化した土砂52および/または地表面に向けて噴射する。このエアーブロー流55を噴射するとき、スタンドオフ値SFAを大きくしているので、広範な領域にエアーブロー流55の噴射エネルギが与えられる。したがって、土砂52は、エアーブロー流55によって凹所54へ再び崩落流入することができない位置まで充分に吹飛ばされる。
【0049】
このことによって、掘削ステップで形成された凹所54が泥水化した土砂52によって埋戻されることがなく、掘削ステップで掘削された排土幅:大、かつ排土深さ:大である凹所54がそのままの大きさで維持されるので、排土性能が向上される。すなわち、少ない水量でより多くの排土を行うことが可能になる。
【0050】
図5は本発明の実施の第2形態である排土装置60の構成を簡略化して示す図であり、図6は図5の排土装置60に備わるノズルヘッド61を噴射口側から見た図である。本実施の形態の排土装置60は、実施の第1形態の排土装置10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施形態の排土装置60に備わるノズルヘッド61は、1重口の噴射口62を5個(参照符号62a〜62e)有する。また排土装置60には、電気式水ポンプ36とノズルヘッド61とを接続する可撓配管、およびエアーコンプレッサ14とノズルヘッド61とを接続する可撓配管の途中に流路切換弁63が設けられる。この流路切換弁63は、次の3通りの流路に切換えることができる。すなわち、水のみを流過、空気のみを流過、水と空気とを同時に流過させる流路の3通りである。したがって、流路切換弁63の流路を切換えることによって、1重口の噴出口62から、ウォータジェット流のみを噴出させたり、エアーブロー流のみを噴出させたり、またウォータジェット流とエアーブロー流との混合流体を噴出させたりすることができる。
【0052】
このような排土装置60によれば、前述の排土装置10と同様に、ウォータジェット流のみを噴射させて掘削するステップを行い、その後流路切換弁63を切換えてエアーブロー流のみを噴射させて泥水化した土砂を吹飛ばすステップを行うことができるとともに、流路切換弁63を水と空気とを同時に流過させる流路に切換えることによって、ウォータジェット流とエアーブロー流とを同時に噴出させて、掘削と土砂の吹飛ばしとを同時に行うこともできる。特に、ウォータジェット流とエアーブロー流とを同時に噴出させて、掘削と土砂の吹飛ばしとを同時に行うことによって、排土作業が効率化されて所要体積の排土を行うために必要な時間が短縮される。
【0053】
また前述のいずれの排土装置10,60においても、ノズルヘッド11,61から水をウォータジェット流として噴射するステップと、ノズルヘッド11,61からエアーブロー流を噴射するステップとを、交互に繰返し実行することができる。このことによって、地面の掘削と、掘削によって形成される土砂の吹飛ばしとが、効果的に繰返されるので、地面を深く掘り下げることが可能になり、深部に埋設されている物体であっても容易に露出させることが可能になる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、前述の排土装置10を用いて、以下に説明する試験例1および試験例2の設定で排土性能を試験した。
【0055】
(試験例1)
試験例1では、排土装置のノズルヘッドに備わる5個の噴射口のうち4個を封止し、1個の噴射口のみで稼動させて、ウォータジェット流で掘削ステップを実行した後、エアーブロー流で土砂の吹飛ばしステップを実行する本発明の実施例1について排土性能を評価した。
【0056】
なお、比較例として、1個の噴射口のみで稼動させて、ウォータジェット流で掘削ステップのみを実行した場合の排土量を求めた。
【0057】
実施例1および比較例のいずれの場合も、ノズルヘッドを回転させず、スタンドオフ値を100mm一定とした。掘削ステップにおけるウォータジェットの水圧を250MPa、水流量を2.7L(リットル)/minとした。実施例1の吹飛ばしステップにおけるエアーブローの空気圧力を0.5MPa、空気流量を500L/minとした。なお、掘削および吹飛ばしのいずれの場合も、アーム移動部を動作させてノズルヘッドを100mm/minで直線移動させ、実施例1では掘削ステップと吹飛ばしステップとを実施後の1分当りの排土量を測定し、比較例では掘削ステップを実施後の1分当り排土量を測定し、排土性能を評価した。
【0058】
図7は実施例1の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図であり、図8は比較例の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図である。単に掘削ステップのみを実行する比較例では、排土量が約1,000cm/minであるのに対して、掘削ステップに引続いてエアーブローを用いる吹飛ばしステップを実行する実施例1では、排土量が比較例の1.5倍である1,500cm/minに増加しており、一定の消耗水量に対する排土量の増加すなわち排土性能の向上が認められる。
【0059】
(試験例2)
試験例2では、排土装置のノズルヘッドに備わる5個の噴射口のすべてを使用するとともに、ノズルヘッドを回転させて稼動し、噴射口の複数化とノズルヘッドの回転とが排土性能に及ぼす影響を評価した。本試験例2では、スタンドオフ値を100mm一定とし、ノズルヘッドの回転速度を200rpmとし、先と同様にノズルヘッドを100mm/minで直線移動させた。掘削ステップにおけるウォータジェットの水圧を200MPa、水流量を2.7L(リットル)/minとした。吹飛ばしステップにおけるエアーブローの空気圧力を0.5MPa、空気流量を500L/minとした。この試験例2の設定による実験例を実施例2と呼ぶ。排土性能の評価は、先と同様に1分当りの排土量を測定して行った。
【0060】
図9は、実施例2の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図である。図9に示すように、実施例2の排土量は、3,000cm/minであり、比較例に比べて排土性能が優れていることは言うまでもなく、実施例1に比べても一層排土性能が向上しており、噴射口の複数化とノズルヘッドの回転とが排土性能の向上に有効であることが認められる。
【0061】
なお、詳細を省くけれども、掘削ステップのスタンドオフ値100mmに対して、吹飛ばしステップにおけるスタンドオフ値を150〜200mmと大きくすることによって、吹飛ばしステップにおける土砂の吹飛ばしが、広範な領域で一層効率的に行えることを確認している。
【0062】
以上に述べたように、本実施の形態では、ノズルヘッドに複数の噴射口を設ける構成であるけれども、これに限定されることなく、ノズルヘッドが複数のノズルから成るように構成されてもよい。またエアーブローは、常温で土砂に対して噴射されるけれども、これに限定されることなく、空気供給手段から送給される空気を加熱する手段を設け、昇温されたエアーブローを泥水化した土砂に噴射し、土砂の乾燥を促進し、吹飛ばし効果を一層向上させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の一形態である排土装置10の構成を簡略化して示す図である。
【図2】図1の排土装置10に備わるノズルヘッド11を噴射口側から見た図である。
【図3】もう一つのノズルヘッド41の噴射口の構成を示す図である。
【図4】排土装置10を用いる本発明の一態様である排土方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施の第2形態である排土装置60の構成を簡略化して示す図である。
【図6】図5の排土装置60に備わるノズルヘッド61を噴射口側から見た図である。
【図7】実施例1の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図である。
【図8】比較例の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図である。
【図9】実施例2の試験設定および条件と排土量測定結果を示す図である。
【図10】従来のウォータジェット装置による排土の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10,60 排土装置
11,41,61 ノズルヘッド
12 装置本体
13 水供給手段
14 空気供給手段
15 スタンドオフ変更手段
16 回転駆動手段
24 キャスタ
25,62 噴射口
35 貯水槽
63 流路切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルヘッドから流体を噴射して土砂を除去する排土装置において、
流体が水および空気であり、
ノズルヘッドに水を供給し、ウォータジェット流としてノズルヘッドから噴射させる水供給手段と、
ノズルヘッドに空気を供給し、空気流としてノズルヘッドから噴射させる空気供給手段とを含むことを特徴とする排土装置。
【請求項2】
ノズルヘッドの流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更するスタンドオフ変更手段を含むことを特徴とする請求項1記載の排土装置。
【請求項3】
ノズルヘッドは、複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、
該ノズルヘッドを、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線まわりに回転させる回転駆動手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の排土装置。
【請求項4】
ノズルヘッドから流体を噴射して土砂を除去する排土装置において、
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、
ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを含むことを特徴とする排土方法。
【請求項5】
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとの間に、
ノズルヘッドの流体を噴射する先端部と、除去されるべき土砂を含む地表面との離隔距離であって、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向の距離であるスタンドオフを変更するステップを含むことを特徴とする請求項4記載の排土方法。
【請求項6】
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さが、
ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップにおいて設定されるスタンドオフの長さよりも小さいことを特徴とする請求項5記載の排土方法。
【請求項7】
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを交互に繰返し実行することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の排土方法。
【請求項8】
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップと、ノズルヘッドから空気を空気流として除去されるべき土砂および/または地表面に向けて噴射するステップとを同時に実行することを特徴とする請求項4記載の排土方法。
【請求項9】
ノズルヘッドが、複数のノズルまたは複数の噴射口を備え、
ノズルヘッドから水をウォータジェット流として除去されるべき土砂を含む地表面に向けて噴射するステップの前に、
ノズルヘッドを、ノズルヘッドから噴射される流体の噴射方向に平行に延びるノズルヘッドの軸線まわりに回転させるステップを含むことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載の排土方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−249829(P2006−249829A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69626(P2005−69626)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】