説明

排尿情報管理システム

【技術課題】 患者が排尿用紙にいちいち記入する手間を省き、かつ排尿記録の正確を期すことができると共に、医師が手入力でデータをコンピュータに入力する手間を省くことができる排尿情報管理システムを提供する。
【解決手段】 各種の排尿情報を入力するための入力キー及びこの入力キーで入力された排尿情報を時刻と共に記録する記録手段を具えた患者用携帯情報端末10と、前記携帯情報端末10に記録された排尿情報をとり込み、この排尿情報をそのまま、あるいは解析した結果を表示する出力手段を具えた医師側コンピュータ30とで排尿情報管理システム1を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者(看護者を含む)が携帯する排尿情報端末と医師側が使用するコンピュータとを組み合わせた排尿情報管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
泌尿器障害の診断と治療を行う場合には、患者の排尿の状態、つまり、排尿の回数、時刻、排尿の量、尿意の状態などを正確に医師が把握することが重要であり、その排尿状態に関するデータを医師が分析することにより適正な診断と治療が可能となる。
そのため、現在、入院及び在宅患者に対し、図12に示す排尿記録用紙を渡し、患者は、毎日、排尿記録をこの用紙に記入し、医師は、この排尿記録を見て診断あるいは治療に役立て、更に、この用紙の記載内容をその都度管理コンピュータに入力して記録・保存等している。
また、排尿量の記入に際しては、患者がメモリ付き容器に排尿し、そのメモリから排尿量を判断し、そして排尿記録用紙に記入するという極めて煩雑な方法にたよっている。
さらに、前記した排尿記録用紙への記入は、個人差もあって記入忘れや誤記する例も多く、診断や治療を誤る要因になることがある。特に、高齢患者の場合は、正確な記入が困難な人が多い。
【0003】
このようなことから、患者にかかる負担を軽減し、正確な排尿情報の入手手段が求められている。
また、図18に示した排尿記録用紙に記入する方式の場合、在宅患者が次回の診察までの間に異常な排尿があり、医師からみて緊急に対応を行わなければならない症状が現れても、自覚症状がないとそのまま放置されて、重大な問題を発生する心配もある。
【0004】
現在、排尿情報管理システムとしては、特開平11−56826号公報に掲載されている排尿チャートを自動的に作成する排尿作成方法および排尿検出装置が公知である。
その構成は、おむつ内の雰囲気をチューブとファンとを用いてガスセンサに導いて排尿を検出し、計時手段により排尿時刻を示す信号を求めて、排尿時刻をメモリに記憶させ、前記メモリを記憶した排尿時刻から排尿チャートを作成するものである。
しかし、おむつへチューブとファンを取り付けるため、患者がそのおむつを身につけた場合不自由な場合が多く、そのため患者の行動が制限されるなどの影響がある。
また、この方法の場合、チャートを医師が見ない限り、異常な排尿状況を発見することはできない。
【特許文献1】特開平11−56826号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、患者の手で簡単かつ正確に排尿状態を記録でき、その記録を医師がコンピュータへ取り入れて診断・治療に供することができると共に、患者に異常が発生した場合には直ちに適切な対応をとることができ、更に、排尿情報を医師側においていちいちコンピュータに手入力する手間を省くことができる排尿情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目標を達成するために、請求項1に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、各種の排尿情報を入力するための入力手段及びこの入力手段で入力された排尿情報を時刻と共に記録する記録手段及びこの記録した排尿情報を出力する情報端末側出力手段を具えた患者用携帯情報端末と、前記携帯情報端末に記録された排尿情報を前記情報端末側出力手段からとり込み、このとり込んだ排尿情報を出力する出力手段を具えた医師側コンピュータと、から成ることを特徴とするものである。
【0007】
排尿情報は、基本的な情報に併せて、患者の症状や病気に併せて特化した情報を含む。時刻を記録する時計手段等には、電波時計を含み、更に、時計手段には、カレンダー機能も組み込まれている。
医師側のコンピュータは、患者から持ち込まれた排尿情報端末、又は記録媒体、又は無線送信手段を通じて受け取った排尿情報をそのまま、あるいは加工して表示することができる。
更に、このコンピュータには、患者の排尿情報を記録、保存して、新しい治療方法を検討したり、治療効果の確認をしたりする機能が付加されている。
【0008】
更に、請求項2に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1に記載の携帯情報端末の入力手段には、少なくとも、起床及び就寝時刻、排尿時刻及び患者の健康状態を入力するための入力キーが具えられていることを特徴とするものである。
この入力キーは、排尿状況を知る上で最小限のものであり、更に、病状に応じて特化された入力キーを具える場合もある。
例えば、尿の色を入力するキーとか、排尿時の痛みを入力するキー等である。
【0009】
更に、請求項3に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1又は2に記載の携帯情報端末には、日時及び時刻記録用に電波時計が搭載されていることを特徴とするものである。
このように、電波時計を用いることにより、患者、医師側とも誤差のない同一時刻を共有することができる。
【0010】
更に、請求項4に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の携帯情報端末には、入力した排尿情報を表示するデータ表示手段が具えられていることを特徴とするものである。
携帯情報端末が排尿情報の入力キーだけの場合、入力ミスの不安があり、この場合に、入力した情報を目で確認できると安心である。この時、データの表示は、目の不自由な人のために、音声で表示できる機能を付加してもよい。
【0011】
更に、請求項5に記載の発明においては、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の携帯情報端末には、排尿量入力手段が具えられていて、排尿量計測手段で計測された排尿量が、手動又は自動入力されることを特徴とするものである。
排尿量の監視は排尿回数と共に診断・治療において重要な検査項目である。
【0012】
更に、請求項6に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項5に記載の排尿量計測手段は、排尿量を示す目盛り付の排尿容器から成り、患者は、この排尿容器の目盛りから排尿量を読み取り、これを排尿量入力手段を用いて携帯情報端末に入力することを特徴とするものである。
【0013】
更に、請求項7に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項5に記載の排尿量計測手段は、排尿容器と、この排尿容器内の尿を電子天秤により重量で検出し、この重量から排尿量を演算して電子信号に変換し、この変換した信号を携帯情報端末に無線送信する送信手段を具え、携帯情報端末には、この無線信号を受信して記録手段に記録するための排尿量受信手段が具えられていることを特徴とするものである。
この発明によると、排尿量が自動的に携帯情報端末に入力されることから、手間がいらず、しかも読み違いや入力ミスの心配もない。
【0014】
更に、請求項8に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項7に記載の排尿量計測手段から携帯情報端末への無線送信手段として、赤外線が用いられていることを特徴とするものである。
この発明により、例えば排尿量計測手段をトイレに置き、携帯情報端末を離れた場所に置いても、コードレスで情報の入力が可能である。
【0015】
更に、請求項9に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の携帯情報端末には、入力された排尿情報に異常があるか否かを自己診断する異常判定手段と、この異常判定手段が異常と判定した場合に、注意を促す注意信号出力手段が具えられていることを特徴とするものである。
【0016】
更に、請求項10に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の携帯情報端末には、外部に送信する送信手段が具えられていて、医師側コンピュータには、この送信手段で送信された排尿情報を受信する受信手段が具えられていることを特徴とするものである。
【0017】
更に、請求項11に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項10に記載の送信手段には、情報記録媒体が用いられることを特徴とするものである。
【0018】
更に、請求項12に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項10に記載の送信手段と受信手段は、無線通信手段であることを特徴とするものである。
【0019】
更に、請求項13に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項12の無線通信手段には、双方向通信機能が具えられていることを特徴とするものである。
【0020】
更に、請求項14に記載の発明においては、請求項12又は13に記載の無線通信手段には、携帯電話が用いられることを特徴とするものである。
【0021】
更に、請求項15に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1に記載の携帯情報端末には、患者の識別コード入力手段が具えられていることを特徴とするものである。
この発明によると、患者別の情報管理を正確に行うことができる。
【0022】
更に、請求項16に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1に記載の携帯情報端末には、患者の生体情報入力手段が具えられていることを特徴とするものである。
この発明によると、患者に発生する泌尿器に関連して発生する症状、あるいはその他の病気を早期に発見することができる。
【0023】
更に、請求項17に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1に記載の携帯情報端末には、医師への報告期日が経過した場合、これを患者に知らせる機能が具えられていることを特徴とするものである。
この発明によると、患者から医師への報告を確実に行うことができる。
【0024】
更に、請求項18に記載の発明においては、排尿情報管理システムにおいて、請求項1に記載の携帯情報端末には、記録されたデータを比較する判定回路が具えられていて、入力されたデータに異常と判定する情報が認められた場合、これを家族、介護師等が持つ携帯電話機に緊急通報する機能が具えられていることを特徴とするものである。
この発明によると、緊急時に適切に対応することができる。
【0025】
[作用]
排尿情報管理システムを構成する携帯情報端末は、携帯に適した大きさであり、その内部には時計手段も備えている。したがって、予め定められていたキーを押すことにより、記録部へ排尿状態及び時刻が入力される。患者は、キーを押すのみで良いため、排尿記録用紙に書いていた様な煩わしさから開放されると共に、誤記入もなくなる。さらに、携帯できるため、どこでも入力できるので記録する事を忘れない効果がある。
【0026】
起床時間や、就寝時間を明確にすることにより、尿意について患者が起きている時なのか、それとも就寝時なのかを知ることが大切である。そのため、起床した時押す起床キーや就寝するとき押す就寝キーを携帯情報端末に設け、患者がそのキーを押すことにより各時刻が記録される。
さらに、排尿をしたときの押す排尿キーを設けたことにより、排尿時刻が記録される。
さらに、尿意を催した時の状態、例えば、「急に尿意を催した」「トイレへ行く途中で漏れてしまった」「尿意を催したが自然に消滅した」等予め項目を設定しておいたキーを設けることにより、医師が患者の尿意傾向を的確に知ることができる。
【0027】
排尿した尿を容器に収容し、その容器を電子天秤にて重量を計測する。その排尿量に変換した値を電子天秤と接続された携帯情報端末に入力させることにより、排尿量を記録させることができる。したがって、従来排尿記録用紙にその都度書き込んでいた煩わしさがなくなり、医師も排尿時刻と共にその量も診断・治療の判断材料とすることができる。
【0028】
この発明によれば、トイレに電子天秤を用意しておき、検量する場合、尿が収容された容器を電子天秤に置けば、電子天秤から発する検量値を伝える赤外線を携帯情報端末で受信することにより、容易に携帯情報端末へ記録することができる。以上の様に無線で行えるので、通信ケーブルを接続する煩わしさや狭いトイレでも不便なく排尿管理が行える。
【0029】
携帯情報端末に記録された排尿情報(以下「データ」という)の伝達方法については、携帯情報端末を病院や医院へ患者が持ち込み、医師のコンピュータへ接続してデータを入力する方法もあるが、この方法では、患者が外出出来ない場合や、病院が遠距離である場合など、患者への負担がかかる場合がある。その負担を軽減する方法として、携帯情報端末から赤外線等を利用することにより、携帯電話又はパソコンへデータを入力し、さらに前記携帯電話又はパソコンから病院等のサーバーへ送信する携帯電話又はパソコンを媒体とする伝送方法であれば、患者が在宅のままでも目的を達することができる。医師は自分のコンピュータを病院等のサーバーへ接続すれば、容易に患者のデータを取り寄せることができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1〜請求項18に記載された発明の効果は次の通りである。
1.排尿情報管理システムを構成する携帯情報端末は、小型であるため、常に携帯でき 、排尿に関するデータ入力を簡単、かつ正確に行うことができる。さらに、医師は、 患者から受け取った携帯情報端末のデータを、直接コンピュータへ入力できる。した がって、医師は、手入力から開放されると共に、医師のコンピュータにデータがとり 込まれると、これを見て、即時に患者の状態を把握することが可能となる。
2.コンピュータへ入力したデータの蓄積により、治療例が統計的に整理され、新しい 治療方法の解明、あるいは、治療の効果を検討する場合に参考にすることができる。 3.携帯情報端末には、予め設定したキーを備えたことにより、患者は適応するキーを 押すだけで排尿に関するデータを携帯情報端末に簡単に記録することができる。
4.電子天秤を用いることにより、排尿時刻とともに、排尿量を自動的に携帯情報端末 に記録することができるので、採尿及びこの入力に手間がかからず、排尿量をデータ としてとり込むことにより、精度の高い診断を行うことができる(請求項7)。
5.電子天秤の検量データを赤外線で携帯情報端末に送信するようにしたため、ワイヤ レス方式での入力が可能となり、入力をいちいち患者が行う必要がないので、正確性 を期すことができる(請求項8)。
6.患者側と医師側において、双方向通信を可能としたことにより、データを読んだ医 師が、応急処置等の指示を患者に与えることができる(請求項13)。
7.携帯情報端末のデータについて携帯電話を伝送媒体とすることにより、何時、どこ からでも排尿に関するデータを送信することができる(請求項14)。
【実施例1】
【0031】
次に、本発明の実施例1を各図に基づいて詳細に説明する。
本実施例1は、本発明の基本的な構成に関わる実施例であって、図1は本排尿情報管理システム1の概念図、図2は排尿情報管理システム1において用いられる携帯情報端末10の外観図、図3は携帯情報端末10における操作部11の説明図、図4は携帯情報端末10の回路構成を示すブロック図である。
本発明の排尿情報管理システム1は、図1に示す様に、携帯情報端末10とコンピュータ30とから構成されている。携帯情報端末10は、患者が使用し、コンピュータ30は、携帯情報端末10から送信されるか、記録媒体からとり込んだデータを取り出して医師が診断・治療に利用するものである。
【0032】
更に詳細に説明する。図2は携帯情報端末10の斜視図である。本実施例の携帯情報端末10の大きさは、20×65×20(W×H×T)mmであり、携帯する場合適当な大きさである。携帯情報端末10の操作部11には、各種キーがレイアウトされ、下部には表示画面11a、音声出力部11bがレイアウトされている。
【0033】
次に、各キーの使用方法を図3を用いて説明する。
例えば、次の様に該当キーを押ことにより、排尿の状態や時刻を携帯情報端末10へ記録させる。
・「起床」キー12‥‥朝起きた時。
・「就寝」キー13‥‥夜寝る時。
・「0」キー14 ‥‥尿がたまった感じがしないのに排尿した場合、つまり、外出する
前、食事のあと、生活サイクル的(休憩時間など)行動、などが
該当する。
・「1」キー15 ‥‥尿がたまった感じがし始めたが、後1時間以上は我慢できそうな
場合。
・「2」キー16 ‥‥排尿したくなったが、後30分は我慢が出来そうな場合。
・「3」キー17 ‥‥すごく排尿したくなった。15分以上は我慢できない場合。
「0」キー14、「1」キー15、「2」キー16、「3」キー17から選んで押した後、排尿すると「トイレ」キー18をおす。以上のキーの選択により、排尿する前の状態が年月日と共に記録手段に記録される。
【0034】
・「切迫感」キー19‥突然尿意を催した場合押し、その後「トイレ」18を押すと“突
然我慢ができないくらいの強さで尿が出そうになりトイレで排尿
した”となる。
・「切迫感」キー19‥突然尿意を催した場合押し、その後「尿失禁」20を押すと“突
然排尿が我慢できなくなりトイレへ行く途中で尿が漏れた”とな
る。
・「切迫感」キー19‥突然尿意を催した場合押し、その後「消失」21を押すと“突然
排尿が我慢できなくなったが自然に消失した”となる。
・「記録中」ランプ22は、各キーを押すと受理したことを示すための点滅を行う。
【0035】
図4は携帯情報端末10の回路を示すブロック図であって、100は記録用のユーザ・インターフェイス、200は演算部、300は記録したデータの出力のユーザ・インターフェイスであって、101は入力部(入力手段)、102は表示部(表示手段11a)、103は外部入力部、200は演算部、201は発信部、202は電波時計、203は処理部、204は記録部(記録手段)、205は電波部、300は端末10の設定用と記録したデータのユーザ・インターフェイス、301は出力部、302は赤外線出力部である。
上記携帯情報端末10は、通常担当医師から患者へ渡して用いられるため、患者の識別子(例えばIDコード)の入力手段(図示せず)も具えている。この識別子及び入力手段は、現在、各分野で使用されている何れの手段でも良いが、患者の負担を考えて、簡単なものが良い。
【0036】
次に、上記した携帯情報端末10の使用例を説明する。先ず、患者は、例えばIDコードを入力する。そして、患者が朝起きた時、携帯情報端末10の「起床」キー12を押す。このことにより起床とその時刻が記憶される。
例えば、通常の生活習慣による自分で決めた定期的な排尿の時は、「0」キー14を押した後トイレへ行き、排尿を行った時「トイレ」キー18を押す。
尿意を感じたが直ぐトイレに行かなくても30分ぐらい持ちそうという場合は、尿意を感じたとき「2」キー16を押し、トイレへ行き排尿を行った時「トイレ」キー18を押す。
また、「トイレ」キーの使い方として、排尿する時「トイレ」キーを押し、排尿が終わったら再度「トイレ」キーを押すことにより排尿に要した時間が記録できることも可能である。
【0037】
また、急に排尿したいという切迫した場合においては、例えば、我慢できなくなりトイレに行く途中で漏れてしまった場合は、まず、切迫レベルの尿意を感じた時「切迫感」キー19を押し、後に漏れてしまった時「尿失禁」キー20を押す。
この様に、各キーを押す順序の組合せにより、排尿の状態及び時刻等を携帯情報端末10の記録部204に記録することができる。
就寝する時は、「就寝」キー13を押すことにより、患者の就寝時刻を知ることができ、この時刻以降、前記の様に尿意を催した時は就寝中の排尿状態であることが把握できる。
【0038】
この様に記録された携帯情報端末10内のデータを病院側のコンピュータ30にデータとしてとり込む時は、図4の携帯情報端末10の出力部301とコンピュータ30の入力部とを図1に示すようにRS232Cケーブル(またはそれに準ずるもの)24にて接続することにより、容易に行える。この点、従来は、患者が記入した図12に示す排尿記録用紙の記録を医師が読みとりながらコンピュータ30に手入力していたため、多くの時間を要していたが、携帯情報端末10を用いることにより、正確な情報を瞬時にコンピュータ30にとり込むことができる。
【0039】
コンピュータ30によるデータの表示の例を表1に示す。
なお、日付の表示は、携帯情報端末10をセットした時からの何日目(1日目、2日目、等)という表示も可能である。
医師は、表1のデータをコンピュータ30の画面又はハードコピーで確認することにより、患者の排尿の間隔、量、排尿する時の体調、さらに、就寝した後における排尿状態等も知ることができる。
また、この排尿情報管理システム1を用いることにより、様々なデータを容易に集計編集でき、その結果、様々なデータを得ることができる。
例えば、薬の投与による影響、薬の種類による傾向、年齢による傾向、などを把握でき、治療方法を検討する場合の参考資料として活用できる。
【0040】
なお、携帯情報端末10における各キーの設定、キーを押す手順などについては、本実施例にとらわれることなく、目的により自由に設定することができる。
さらに、生活情報や環境情報などを入力するキーを追加しても良い。
また、携帯情報端末10においては、時計機能として、内部の発振部を用いているが、さらに正確さを求める場合は、電波時計202を組み込むことにより時間のズレもなく記録することができる。
【表1】

【実施例2】
【0041】
実施例2では、請求項7及び請求項8に該当する実施例を図5、図6を用いて説明する。
患者の排尿状態を管理する上では、排尿量も知る必要がある場合がある。このために、本実施例2では、実施例1で説明した携帯情報端末10へ更に排尿量を記録できる機能を追加した。
図5は、排尿量入力キーのための天秤キー23を具えた操作部11の説明図、図6は携帯情報端末10と電子天秤40との接続概念図である。
本実施例2における携帯情報端末10の操作部11について説明すると、実施例1の携帯情報端末10の操作部11に、図5に示すように、さらに「天びん」キー23が追加されている。
【0042】
図6に基づいて使用方法を説明すると、予め専用容器41の風袋を電子天秤40に入力しておく。患者はその専用容器41に排尿した後(すでに「トイレ」キー18は押している)、専用容器41を電子天秤40に載せて重量を計測する。この計測値から風袋の値を差し引いた値を基にして、mlに換算された値が排尿量として表示部42に表示される。携帯情報端末10と電子天秤40とを接続し、「天びん」キー23を押すと、尿の量がデータとして携帯情報端末10へ記録されるので、医師がコンピュータ30で排尿時刻と同時に尿の量も知ることが可能になる。
なお、電子天秤40で計測した重量から量(ml)に換算する演算部は、電子天秤40側ではなく、携帯情報端末10又はコンピュータ30側に持たせてもよい。
【0043】
さらに、携帯情報端末10に赤外線の受光部、電子天秤40に赤外線の送信部を備えると、電子天秤40の計量データを無線で携帯情報端末10へ送ることができる。したがって、電子天秤40をトイレへ常備しておき、患者は「天びん」キー23を押すだけで簡単に携帯情報端末10へ赤外線25により計量データを記録することがでる。
また、図12に示す様に電子天秤40から携帯電話機50へ赤外線25を利用して計量データを送信し、後ほどその携帯電話機50から携帯情報端末10へ計量データを転送することもできる。これは、携帯電話機50を常に持ち歩く場合が多いが、その場合、携帯情報端末10も持つ必要があるので2つの携帯製品を携帯することになり、その結果、邪魔になる弊害が生じる。しかし、本案では携帯電話機50へ一旦計量データが取り込まれるので携帯電話機50のみを持ち歩くだけでよく、後に携帯情報端末10へ携帯電話機50から計量データを入力すればよい。
【0044】
なお、実施例では、電子天秤40を用いて排尿量を計測していたが、他の計測手段として電子天秤40以外の公知の計測手段、例えば、流量や液面高さ等を測定して排尿量を計測する計測手段を用いることも可能である。そして、その計量データを手動で携帯情報端末10に入力するか、又は赤外線25を利用して、携帯情報端末10へ自動入力するか、又は一旦携帯電話機50を経由して携帯情報端末10へ入力するようにする。
その結果、次に説明する実施例3の排尿情報管理システム1を用いれば、患者への負担を軽減することができる。
【0045】
表2は、本実施例2で説明した排尿量をデータとして追加したコンピュータ30によるデータの表示の例を示す。
【表2】

【実施例3】
【0046】
本実施例3は、請求項12に記載の発明に該当するデータ伝送手段であって、この伝送手段を図7を用いて説明する。
実施例1では医師のコンピュータ30へデータを入力する時、携帯情報端末10の出力部とコンピュータ30の入力部とを有線で接続して行っていたが、本実施例3は、携帯情報端末10とコンピュータ30間に携帯電話50を通信媒体として利用する例である。
【0047】
使用方法は、携帯情報端末10へ記録されたデータは、先ず、携帯情報端末10から赤外線等を利用することにより、携帯電話50へ入力する。その後、携帯電話50から病院等のサーバー60へ送信することにより、サーバー60へデータが入力される。その結果、医師は必要があれば病院等のサーバー60へコンピュータ30を接続することにより、容易に患者のデータを取り寄せることができる。よって、この携帯電話50を媒体とするデータ伝送方法の排尿情報管理システム1であれば、患者は、在宅のままでも手軽にデータ送信の目的を達することができる。したがって、患者が外出出来ない場合や、病院が遠距離である場合などでも患者への負担が軽減する。
【実施例4】
【0048】
本実施例4は、携帯情報端末10に入力されたデータと過去のデータとの対比を演算部200で行い、この対比でデータに異常が認められた場合、この異常信号又は警告を表示部11aに出力して患者に自覚させ、至急医師に連絡を入れる警告信号を出力し、併せて、医師側コンピュータ30に緊急で、この異常データを送信することにより、患者の安全を図るもので、請求項9の発明に対応している。
【実施例5】
【0049】
実施例3では、携帯情報端末10とコンピュータ30間を携帯電話50を通信媒体とする例を説明したが、実施例5では図8に示す様に、携帯情報端末10に無線通信機能を持たせて患者と医師が双方向的に連絡しあう事を可能にしたものである。
したがって、医師がデータを解析した結果、患者へ至急連絡をする必要が発生した場合、患者が常に携帯している携帯情報端末にその情報を通報することにより迅速な対応がとれる(請求項13)。
【実施例6】
【0050】
携帯情報端末10の記録部204については、図4に示す様にEEPROMを用いているが、メモリーカード等の記録媒体を使用することにより、前実施例とことなるデータの伝達方法が得られる。
例えば、図9に示す様に、携帯情報端末10の記録部204から記録媒体70を抜いて、その記録媒体70を医師に渡せばよいので、データの受け渡しの利便性が高まる。
また、図10に示す様に、電子天秤40で排尿量及び時刻をデータとして記録媒体70に記録した後、記録媒体70を電子天秤40から離脱させ、携帯情報端末10へ挿入してそのデータを入力する。その後、前記の様に記録媒体70を医師に提出することにより、患者は携帯情報端末10より小さな記録媒体70を携帯しておけばよいので、より利便性が高まる。
また、図11に示す様に、携帯電話50に赤外線機能が無い場合、携帯情報端末10のデータを記録媒体70に記録し、その記録媒体70を携帯電話50へ差し込んでデータを入力することによりデータの伝送が可能になる。
【実施例7】
【0051】
本実施例7では携帯情報端末10へ生体に関する計測機能を持たせた実施例を紹介する。
図13は携帯情報端末10に温度センサー80を取り付けて体温を計測する機能を持たせた携帯情報端末10である。例えば、朝目覚めたとき体温を測定したい場合、温度センサー80を体の体温測定位置に当て、「起床」キー12を押したのち、「体温」キー26を押すことにより測定時間とともに患者の体温が記録される。また、就寝時の体温も同様に「就寝」キー13を用いれば計測できる。
他に、図示しないが、携帯情報端末10に血圧を測定する機能を追加すれば、血圧も測定記録することができる。同様に、脈拍等、患者の生体情報入力キーを具えることにより、より端末機能を高めることができる。
【実施例8】
【0052】
本実施例8では、携帯情報端末10の表示画面11aに表示させる機能について説明する。実施例1に示す携帯情報端末10は表示画面11aの表示モードの切り替えが出来ないが、本実施例8の携帯情報端末10では表示モード切替キー27を図14に示す様に追加することにより、排尿情報を患者に知らすことが可能である。表示切替としては、表示モード切替キー27を押すごとに下記の様に表示画面11aの表示が切り替わる。
「ノーマル」→「1日の排尿回数」→「起床中の排尿回数」→「就寝中の排尿回数」
→「前回排尿した時の時刻」→戻る
「ノーマル」・・・通常状態で、各キーを押すと各キーに応じた表示がされる。
例 「起床」キー12を押すと表示は「起床 6時30分」
「1日の排尿回数」・・・・例 「2/15 排尿回数6回」 図15(A)
「起床中の排尿回数」・・・例 「2/15起 排尿回数4回」 図15(B)
「就寝中の排尿回数」・・・例 「2/15寝 排尿回数2回」 図15(C)
「前回排尿した時刻」・・・例 「前回2/15 8:30」 図15(D)
【実施例9】
【0053】
患者は、医師から排尿情報について3日毎に提出するように要望されている場合、うっかり患者が提出することを忘れてしまうことがある。その時、携帯情報端末10から患者へ指定日から過ぎたことを知らせる機能を、携帯情報端末10へ装備した。
例えば、患者が前日まで情報を提出することになっていたが、忘れて行っていない場合、本実施例9の携帯情報端末10は、患者が翌日の朝目覚めて携帯情報端末10の「起床」キー12を押したとき、携帯情報端末10の音声出力部から警告音を発生すると共に、表示画面11aにおいては図16に示す様に「報告日が過ぎています」と表示する。その結果、患者へ情報の提供を促す効果が得られる。
【実施例10】
【0054】
実施例10は、図17に示す様に、携帯情報端末10から家族や介護師などに緊急を知らせる機能を備えた携帯情報端末10の実施例である。
携帯情報端末10に入力された排尿データにより携帯情報端末10に予め入力されていた基準の排尿データより大きく外れていた場合、例えば、排尿量が異常に少なくなった、又は、排尿回数が異常に多くなった等、患者の体に何らかの生体変化が生じていると察知できるとき、携帯情報端末10から患者の家族やお世話になっている介護師へ自動的に警告信号を送る機能を有している。
特に、体調が弱まっている患者は外部へ援助を依頼することが難しい場合があり、早急に排尿データから病院へ行く必要が発生しても見逃してしまう恐れがある。そこで携帯情報端末10が異常と判断した場合、自動的に家族や介護師の携帯電話機50に異常を示す信号を送ることにより患者の状態を知ることができ処置を早急に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る排尿情報管理システムの説明図
【図2】携帯情報端末の説明図
【図3】携帯情報端末の操作キーの説明図
【図4】携帯情報端末の回路構成を示すブロック図
【図5】電子天秤キーを具えた携帯情報端末の操作キーの説明図
【図6】電子天秤を用いた排尿量計測及び自動記録例の説明図
【図7】携帯電話を用いたデータ伝送方式の説明図
【図8】携帯情報端末に無線通信機能を付加した時のデータ伝送方式の説明図
【図9】記録媒体を用いたデータ伝送方式の説明図
【図10】記録媒体を用いた他のデータ伝送方式の説明図
【図11】記録媒体を用いた他のデータ伝送方式の説明図
【図12】電子天秤と携帯情報端末間のデータの送信に携帯電話機を用いる例の説明図
【図13】携帯情報端末に体温測定機能を付加した例の説明図
【図14】携帯情報端末に表示画面切替機能を付加した例の説明図
【図15】(A)〜(D)表示画面切替例の説明図
【図16】報告期日経過の警告表示例の説明図
【図17】携帯情報端末に緊急通報機能を付加した例の説明図
【図18】現在用いられている排尿記録用紙の説明図
【符号の説明】
【0056】
1 排尿情報管理システム
10 携帯情報端末
11 操作部(入力部)
11a 表示部
30 コンピュータ
40 電子天秤
41 容器
50 携帯電話
70 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の排尿情報を入力するための入力手段及びこの入力手段で入力された排尿情報を時刻と共に記録する記録手段及びこの記録した排尿情報を出力する情報端末側出力手段を具えた患者用携帯情報端末と、
前記携帯情報端末に記録された排尿情報を前記情報端末側出力手段からとり込み、このとり込んだ排尿情報を出力する出力手段を具えた医師側コンピュータと、
から成る排尿情報管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯情報端末の入力手段には、少なくとも、起床及び就寝時刻、排尿時刻及び患者の健康状態を入力するための入力キーが具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯情報端末には、日時及び時刻記録用に電波時計が搭載されていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の携帯情報端末には、入力した排尿情報を表示するデータ表示手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の携帯情報端末には、排尿量入力手段が具えられていて、排尿量計測手段で計測された排尿量が、手動又は自動入力されることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の排尿量計測手段は、排尿量を示す目盛り付の排尿容器から成り、患者は、この排尿容器の目盛りから排尿量を読み取り、これを排尿量入力手段を用いて携帯情報端末に入力することを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の排尿量計測手段は、排尿容器と、この排尿容器内の尿を電子天秤により重量で検出し、この重量から排尿量を演算して電子信号に変換し、この変換した信号を携帯情報端末に無線送信する送信手段を具え、携帯情報端末には、この無線信号を受信して記録手段に記録するための排尿量受信手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の排尿量計測手段から携帯情報端末への無線送信手段として、赤外線が用いられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の携帯情報端末には、入力された排尿情報に異常があるか否かを自己診断する異常判定手段と、この異常判定手段が異常と判定した場合に、注意を促す注意信号出力手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の携帯情報端末には、外部に送信する送信手段が具えられていて、医師側コンピュータには、この送信手段で送信された排尿情報を受信する受信手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の送信手段には、情報記録媒体が用いられることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項12】
請求項10に記載の送信手段と受信手段は、無線通信手段であることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項13】
請求項12の無線通信手段には、双方向通信機能が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の無線通信手段には、携帯電話が用いられることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項15】
請求項1に記載の携帯情報端末には、患者の識別コード入力手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項16】
請求項1に記載の携帯情報端末には、患者の生体情報入力手段が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項17】
請求項1に記載の携帯情報端末には、医師への報告期日が経過した場合、これを患者に知らせる機能が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。
【請求項18】
請求項1に記載の携帯情報端末には、記録されたデータを比較する判定回路が具えられていて、入力されたデータに異常と判定する情報が認められた場合、これを家族、介護師等が持つ携帯電話機に緊急通報する機能が具えられていることを特徴とする排尿情報管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−231032(P2006−231032A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271989(P2005−271989)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(591061769)ムネカタ株式会社 (40)
【Fターム(参考)】