説明

排尿測定便器システム

【課題】 便器で排尿測定を行う排尿測定便器システムにおいて測定に影響を与える様々な障害行為を検出し、最終判断を行う医師や医療スタッフがその内容を参照し、正確な診断を可能とすることである。 また、医師や医療スタッフが確認不要と判断する、著しい障害行為が含まれる測定データーは、測定時点で無効データーとし、破棄する機能を有することである。
【解決手段】 温水洗浄手段と、便器洗浄手段と、トイレットペーパー供給手段のうち少なくともひとつの手段を有し、使用者が排尿した尿の量および/又は排尿速度を測定する排尿測定便器システムにおいて、前記各手段の使用状態を監視する使用状態監視手段を有し、前記使用状態監視手段の取得した前記各手段の使用状態情報によって、採取した排尿測定データの処理方法を決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が排尿した尿の量→、単位時間当たりの排尿量を示す排尿速度等の排尿情報を便器を用いて測定する技術分野において、得られた前記の排尿情報に関する測定データを活用する医療スタッフへ好適な測定データを提供するために考案された排尿測定便器、及びこれに併設される機器に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の排尿測定には、医師や看護士が同席する診察室内にカーテンなどで簡易に仕切られた一角を設け、排尿測定装置を設置して、患者の尿量や排尿速度を測定する方法ががあったが、患者自身のプライバシーが守られないことから、
トイレで排尿を行う時に排尿測定を実施する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、トイレでの測定では医師や看護士が同席しないため、患者へ緊張感を与えない測定環境のメリットはあるものの、非監視下であるため正確な診断を行なう上での障害となる影響を測定データに与える行為があっても、医師や医療行為を行うスタッフが得られた測定データに信頼性があるかどうかの検証ができないという問題があった。
【0004】
また、患者自身が排泄した尿に関する情報をトイレで測定する測定する排尿測定機としては、排尿測定と異なる機能(この例では温水洗浄機能)を併せ持ち、排尿測定時に測定動作を阻害する併設された機器の動作を測定中は禁止するものもある。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開平7−207736号公報
【0005】
しかしながら、この例は測定で得られた排尿データの評価に影響する要因に関する付帯データを排尿測定機自体が取得・付加するものではない。したがって、前述したような課題の対策案とはなり得ない。
【0006】
また、医師や看護士は測定された排尿測定データを評価する時に排尿測定データ取得時の状況について患者に問診を実施し、測定中に大便の排便がなかったか、または排尿測定データを阻害する併設器具の作動が認められないか、について確認を行う必要があり、医師や看護士にとって大きな負担となっている。
【0007】
さらにまた、入院中の患者にとっても、トイレで排尿を行う回数の都度医師や看護士の問診を受けねばならず、前述医師や看護士と同様に大きな負担となるため、病気療養に専念しにくい環境となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便器で排尿測定を行う排尿測定便器システムにおいて、測定結果に影響を与える様々な要因を検出し、その結果を測定データに対応付けて付帯させることによって、該測定データに基づいて診断や判断を行う医師や医療スタッフがその内容を参照し、正確な診断を行なうことを可能とすることである。
または医師や医療スタッフが確認不要と判断する、著しい障害行為が含まれる測定データーは、測定時点で無効データーとし、破棄する機能を有することである。
【0009】
具体的には、排尿測定便器システムを構成する温水洗浄便座、便器洗浄装置、紙巻器の動作を検出して、温水洗浄便座からの洗浄水滴下、便器洗浄装置からの洗浄水放水、そして紙巻器から引き出されたトイレットペーパーの便器ボール面内投入による障害を検出することである。
また、システムを構成する器具以外では、測定中の大便排便が上げられるが、大便の排便による障害についても検出が可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、温水洗浄手段と、便器洗浄手段と、トイレットペーパー供給手段のうち少なくともひとつの手段を有し、使用者が排尿した尿の量および/又は排尿速度を測定する排尿測定便器システムにおいて、前記各手段の使用状態を監視する使用状態監視手段を有し、前記使用状態監視手段の取得した前記各手段の使用状態情報によって、採取した排尿測定データの処理方法を決定しているので、医師や看護士は測定現場に臨席しなくても測定データーの有効性に基づく処理を実行することが可能となる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、前記使用状態情報が、前記温水洗浄手段では洗浄ノズルからの吐水に関する制御信号であり、便器洗浄手段では便器洗浄に関する制御信号であり、トイレットペーパー供給手段ではペーパー繰り出し量であることを特徴とすることで、排尿測定データへ障害を与える可能性のあるトイレ内設置器具の使用状況を把握することが可能であるため、各器具の使用状況を根拠として測定データーの有効性を判断することが可能である。
【0012】
また、請求項3記載の発明によれば、前記トイレットペーパー供給手段が紙巻器であり、前記ペーパー繰り出し量の算出を前記紙巻器にセットされるペーパーロールの保持棒の回転数を利用して行うことを特徴とすることで、測定データーに障害を与える可能性があるトイレットペーパー長さを具体的に測定することが可能となり、医師や看護士が測定データーの障害性を検証する際の補正根拠として利用することが可能である。
【0013】
また、請求項4記載の発明によれば、使用者を特定するための個人認証手段と、過去の排尿測定時における前記使用状態情報と前記排尿測定データとを、前記個人認証手段によって認識される使用者ごとに使用履歴情報として記憶する個人使用履歴情報記憶手段とを有し、取得された前記使用状態情報と前記使用履歴情報とを比較して採取した排尿測定データーの処理方法を決定することを特徴とすることで、過去の情報を利用した2重の照合を可能として正確な測定を可能とした。
【0014】
また、請求項5記載の発明によれば、前記処理方法が、特定された使用者の個人使用履歴情報の排尿測定データに対し、あらかじめ決められた範囲から外れた前記排尿測定データーは記憶および出力しない機能を有することを特徴とすることで、便器で排尿測定を行う排尿測定便器システムにおいて測定に影響を与える様々な障害行為を検出し、医師や医療スタッフが確認不要と判断する、著しい障害行為が含まれる測定データーは、測定時点で無効データーとし、破棄する機能を可能とした。
【0015】
また、請求項6記載の発明によれば、前記処理方法が、特定された使用者の個人使用履歴情報の排尿測定データに対し、あらかじめ決められた範囲内にある場合は、前記使用状態情報を出力する機能を有することを特徴とすことで、便器で排尿測定を行う排尿測定便器システムにおいて測定に影響を与える様々な障害行為の検出が可能なため、最終判断を行う医師や医療スタッフは、適正な条件下で測定が実施されたことを検証できるため、正確な診断が可能となった。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、便器で排尿測定を行う排尿測定便器システムにおいて、排尿測定に影響を与える様々な障害行為の検出が可能となり、最終判断を行う医師や医療スタッフは、患者への聞取り調査を実施しなくても、適正な条件下で排尿測定が実施されたことを検証可能となり、正確な診断を行うことが可能である。
【0017】
また、本発明によれば、過去の測定データーを含めて、排尿測定に影響を与える様々な障害行為の検出が可能であり、医師や医療スタッフが検証不要と判断する、著しい障害行為が含まれる測定データーは自動的に破棄することが可能なため、医師や医療スタッフの不要な検証や測定データー内容に関する患者への問診が不要となり、効率的な診断を下すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を以下に図を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は排尿測定便器システムの全体断面図、図2は排尿測定機能操作盤外観図、図3は機能設定盤の外観図である。まず、全体の構成を説明する。
【0020】
本発明である排尿測定便器本体は便器1及び隣接するキャビネット32で構成され、その他は、温水洗浄便座操作盤7、紙巻器9、測定を操作する排尿測定機能操作盤11、データーを出力するプリンター18から構成されている。
【0021】
便器1は使用者が排尿を行うと共に便器以降に接続される下水配管に対する水封を行うためのボール内面溜水2を保持するためのボール面19を有している。
ボール内面溜水2は便器洗浄ジェット配管33を利用して圧力センサー5に配管されており、同圧力センサー5の出力信号によりボール内面溜水水位を測定することが可能となっている。便器1は便器洗浄ジェット配管33、及び便器洗浄リム配管34を介して、便器洗浄バルブ3が接続されているので、便器洗浄バルブ3の作動により任意で便器1を洗浄することが可能である。
【0022】
また、便器1には温水洗浄便座6が設置されており、温水洗浄便座の各機能は壁面に設置される温水洗浄便座操作リモコン7によって操作することが可能となっている。温水洗浄便座操作リモコン7には温水洗浄便座操作検出センサー8が組込まれており、温水洗浄便座ノズルからの吐水に関する信号を検出して出力することが可能である。
【0023】
また、壁面には排尿測定機能操作盤11が設置され、排尿測定機能操作盤11には個人認証機能部12が組込まれているため、排尿測定データを個人別に識別することが可能である。
【0024】
さらに、壁面にはデーター出力プリンター18、及び紙巻器9が設置されるが、紙巻器9には使用時のトイレットペーパー軸回転数、及びトイレットペーパー回転径を検出する紙巻器繰り出し量検出センサー9が組込まれており、ペーパー繰り出し量を具体的に測定することが可能である。
【0025】
便器1に隣接するキャビネット32には各種器具の動作を管理する制御手段35、データー記憶装置16が組込まれており、キャビネット32前面には使用者の着座を検出する着座検知センサー30、及び使用者の近接を検知する人体検知センサー31が設置されている。また、キャビネット32の背面、又は側面には着脱可能に機能設定盤17が設置されている。制御手段32には第1演算手段13、第2演算手段14、第3演算手段15が含まれている。
【0026】
便器1へ排尿があると、排尿量によりボール面内溜水2の水位は変化し、圧力センサー5により水位信号へ変換されて制御手段35へ送られる。制御手段35内の第1演算手段13は受け取った水位信号から排尿量や、排尿速度を表す尿流率を計算する機能を有している。
【0027】
便器洗浄バルブ作動センサー4、温水洗浄便座操作検出センサー8、紙巻器繰り出し量検出センサー9からの各信号は制御手段35へ送られるが、これらの信号は制御手段35内の第2演算手段へ送られ、排尿測定時の根拠となるボール面内溜水2の水位変化に障害を与える可能性があるかの検証に使用される。具体的な内容は図4に示す。
【0028】
第1演算手段13によって計算された排尿量、尿流率、及び第2演算手段14へ送られた便器洗浄バルブ作動センサー4、温水洗浄便座操作検出センサー8、紙巻器繰り出し量検出センサー9からの各信号情報と各信号別の障害程度を求めた検証結果は第3演算手段15へ送られる。第3演算手段15はこれらの検証結果データー記憶装置16に記憶されている個人使用履歴情報と機能設定盤17で設定される数値とを用いて前述した計測された排尿量や、尿流率の妥当性を検証することが可能である。また、機能設定盤17では項目別の判定結果入力が可能であるため、想定される範囲外にある測定データ−を出力してデーター記憶装置16に記憶される個人使用履歴情報に組み入れるか、あるいは出力せずにデーター記憶装置16に記憶される個人使用履歴情報にも組み入れないかのいずれの設定も可能としている。
【0029】
次に、図2排尿測定機能操作盤11について説明を行う。
排尿測定機能操作盤11には測定を開始するための測定開始ボタン20、測定中であることを表示する測定中表示ランプ21、測定を終了させるための測定終了ボタン22、便器の洗浄を行う便器洗浄ボタン23、カードホルダー24が付属しており、任意で測定を制御できるよう配慮されている。カードホルダー24には個人認証を行い、また測定データーの書込みを行うためのリードライト機能が組込まれている。測定環境によってはデーター出力プリンター18を用いず、カードの記憶部分を利用してデーターの持ち出しを
行うことも可能である。また、測定開始ボタン20を省略し、カードホルダー24に個人認証カード25を差込んだ時点を測定開始をとすることも可能である。
【0030】
本発明の排尿測定機能操作盤11ではカードを利用した個人認証手段を用いて説明を行っているが、個人認証及びデーターの記録をRF−ID素子組込みのリストバンドへ置き換えた方式としてもよい。また、個人認証番号をバーコード表示としたカードやリストバンドを使用者が所持し、バーコードリーダーから読取る方法や、検査対象となる使用者に対応する押しボタンパネルをトイレ内へ設置して、使用者が測定前に押しボタンパネルのボタンを押すことで個人認証を行う方法とすることも可能である。
【0031】
また、個人認証手段を利用して、排尿測定データを記憶および出力しない回数の頻度が一定以上で、その原因が温水洗浄便座の温水洗浄機能操作や便器洗浄操作等の周辺機器の誤操作と推定されると判断された使用者に対しては、測定結果に影響を与えるそれらの機器の操作の各ボタンは複数回のボタン押し操作を行わないと作動しないようにして、無駄な測定動作を減らすようにしても良い。
【0032】
次に、図3機能設定盤17について説明を行う。
機能設定盤17はキャビネット32へ着脱自在に設置されているが、排尿測定項目に該当する尿量設定パネル26、尿流率設定パネル27、温水便座設定パネル28、紙巻器設定パネル29で構成されている。
【0033】
尿量設定パネル26には想定範囲設定ボタンが設置されており、測定前に110%、130%、150%の何れかの倍率を選択すれば、データー記憶装置16の個人使用履歴情報に残る最大値を乗じた数値から発生尿量想定範囲を設定することが可能である。尿量設定パネル26には任意倍率設定ボタンがあり、任意ボタンを押した後、+ボタン、−ボタンを更に操作して詳細の倍率を設定することが可能となっている。設定した倍率は隣接設置の表示部で確認することが可能となっている。
【0034】
更に下方には2個の判定結果選定ボタンが設置されており、印字ボタンを押すと測定された尿量が先に設定した発生尿量想定範囲外であっても、測定された尿量を出力し、同時にデーター記憶装置16の個人使用履歴情報に記憶を行う。一方、非記録ボタンを押すと先に設定した発生尿量想定範囲外にあるデーターは出力せず、またデーター記憶装置16の個人使用履歴情報に記憶しないようになっている。
尿流率設定パネル27、及び紙巻器設定パネル29においても尿量設定パネル26と同様の機能が提供されている。
【0035】
測定意思のない患者、又は外来などの利用者は排尿測定操作盤11へ個人認証カード12を挿入しないため、排尿測定機能は作動せず、温水洗浄便座機能が付属する一般便器として利用が可能である。この場合、患者、又は利用者は温水洗浄便座操作パネル7を操作して排尿、排便後の処理を行なった後退出するので、データ記憶手段16に患者又は利用者に関するデータは記録されない。
【0036】
次に、測定意思のある患者が利用する場合について記述する。患者は測定前に、個人認証カード12を排尿測定操作部11のカードホルダー24へ差込むことで排尿測定機能が作動する。排尿測定機能が作動すると、測定中表示ランプ21が点灯するため、患者や利用者は装置の動作状況を容易に確認することが可能である。
【0037】
患者は測定中表示ランプ21の点灯確認後、排尿を始めるが、装置は着座センサー30、及び人体検出センサー31の検知信号により、患者の排尿姿勢を検出することが可能である。
【0038】
検出原理は、着座センサー30及び人体検出センサー31の双方がオンの場合、患者の排尿姿勢は座位と判定し、着座センサー30がオフで人体検出センサー31がオンの場合、患者の排尿姿勢は立位と判定する。洋風便器での排尿では、女性患者は座位で排尿を行うが、男性患者は立位、座位の双方で排尿が可能であるため、該方法は男性患者の排尿姿勢を検知することが目的である。
男性の排尿姿勢は躾や生活環境などにより異なるが、同一者でも排尿姿勢の違いにより、尿道や関連臓器の状態が変わるため、測定結果が変化し、医師や医療関係者が正確な診断を行えないことがあったが、該排尿測定便器システムでは排尿姿勢を判定する機能を有するため、排尿姿勢を考慮した診断を行なうことが出来ることを特徴としている。
【0039】
排尿によるボール内面溜水水位の増加は溜水水位検出手段5によって測定され、第1の演算手段へ送られる。第1の演算手段13は便器1のボール内溜水2の水位と予め定められた便器個々の溜水量との関係を参照して、排尿量を算出する。また、排尿量の時間変化率を求める演算を行い、単位時間当たりの排尿量を示す排尿率の算定を行う。
【0040】
第2の演算機能は温水洗浄便座測定検出手段、及び紙巻器引出量検出手段からの信号を受け、排尿測定時間との関連、及びトイレットペーパーの使用量を算出する。
【0041】
データー記憶手段16には、個人別に記憶された過去の尿量、尿流率、トイレットペーパー使用量と併せて、項目別の上限値を記憶している。そして、第3の演算手段15は記憶された前記上限値と機能設定手段17で設定された係数から算出される閾値とを今回測定値と比較し、今回測定データが閾値以下の場合は測定阻害要因が含まれないとの判定を行う。
【0042】
図4〜図7は本システムの代表的な使用形態に分けてその動作を示すタイミングチャートである。
図4は本システムを通常の便器として使用した場合の動作を示す(動作1)。
この場合は前述したように個人認証入力操作をしないため、測定は行なわれず通常の便器や温水洗浄便座としての動作だけが行なわれる。
【0043】
図5は本システムを測定機としても使用する場合で、測定対象者が着座した状態で測定を行った後、便器洗浄する場合で、かつ温水洗浄便座及び紙巻器の使用がなかった場合である(動作2)。
【0044】
図5は本システムを測定機としても使用する場合で、測定対象者が立位の状態で測定を行った後便器洗浄を行ない、かつ場合温水洗浄便座及び紙巻器の使用がなかった場合である(動作3)。
【0045】
図6は本システムを測定機としても使用する場合で、測定対象者が座位の状態で測定を行った場合である。このケースでは測定中に1回の便器洗浄を行い、測定終了後に2回目の便器洗浄を行ない、かつ排尿が終った後温水洗浄便座を使用して温水洗浄を行なった後さらに紙巻器を使用した場合である(動作4)。
【0046】
測定値判定後のデーター処理については、機能設定手段17の判定結果で選択した方法に従って処理を行う。たとえば、患者Aの過去の一回の排尿量の上限が500ccで機能設定手段17の設定が130%、判定結果設定が印字であったとする。患者Aの今回測定結果が700ccだとすると、第3の演算手段15は500cc×130%=650ccと700ccとを比較し、650cc<700ccなので、データー出力手段18で測定データーを印刷し、個人認証手段12へは注意書きを併記記録し、データ記憶手段16へデーターを転送する。
【0047】
なお、注意書きには多量尿の検出など医師がデーターを参照する際、解り易いコメントを付加する機能を有する。また、判定結果選択が非記録の場合では、650cc<700ccなのでデーター出力手段18の印刷は行わず、また個人認証手段12、及びデーター記憶手段16へもデーターの記録を行わない。
【0048】
即ち、機能設定手段17で非記録を設定した場合、装置は医師や医療関係者の判断を受けず、測定結果を自動的に消去する機能を有することを特徴とする。判定の根拠とする設定は、病院や医療機関の内容により更に詳細の設定を必要とする場合があるが、医療関係者は任意設定のボタンを押し、1%単位で閾値係数の設定を行うことも可能である。
【0049】
患者は排尿が終了すると、排尿測定操作部11の測定終了ボタン22を押して排尿測定を終了させることが出来るが、測定終了ボタン22を押し忘れた場合は以下の動作で自動的に測定が終了する。
A.着座状態で測定を行っていた場合は、患者が便座から立ち上り着座センサー30がオフして定められた時間が経過した時点。
B.立位状態で測定を行っていた場合は、患者が便器から離れ、人体検知センサー31がオフして定められた時間が経過した時点。
【0050】
測定が終了し、出力されたデータが印刷用紙、または個人認証カード25で医師や医療関係者などの閲覧者へ提出される場合、先の機能設定手段17の設定で予め注記出力を指定された測定項目には注記印字があるので、医師又は医療関係者は該部分について患者へ問診を実施することが可能である。
【0051】
図8は本装置の出力例であり、前述したような温水洗浄便座や紙巻器や便器等の使用の有無といつ行なわれたかが測定結果とともに示されている。ここで、ペーパは使用の有無だけでなく測定に与える影響度を閾値を設定して判断した結果も併せて表示されている。この場合は×とマークされているが測定に重大な影響を与える量の使用があったと判断されている。
また、測定結果である排尿量、排尿率についても設定された閾値によって各々良否が判断されている。さらに測定の総合判定として前記のような不具合があったため「疑惑判定」とされて、測定結果を判断する時の注意を喚起している。
出力内容及び表示方法等はこの例に係らず種々の組み合わせが可能である。
【0052】
閲覧者は患者との問診で、測定データに阻害要因が含まれると判断した場合、医療者用端末を利用して該当する個人の測定データの無効を入力することも可能である。その場合、排尿測定便器システムはデーター記憶手段に記憶された測定データを直ちに無効又は消去しても良いが、患者は排尿測定時に該個人認証カードを何度も繰り返し使用するため、当該患者の次回測定時の個人認証を行なった時に、医療端末より書き込まれた無効入力を読み取り、該当する記憶された測定データを無効又は消去して、問診結果を反映することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態である測定結果を自動検証する排尿測定便器システムの全体断面図である。
【図2】本発明の実施形態の一部である排尿測定機能操作盤外観図である。
【図3】本発明の実施形態の一部である機能設定盤外観図である。
【図4】本発明の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の動作の一部を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の動作の一部を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の動作の一部を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の測定結果を示す出力例である。
【符号の説明】
【0054】
1… 便器
2… ボール内面溜水
3… 便器洗浄バルブ
4… 便器洗浄状況バルブ作動検出センサー
5… 圧力センサー
6… 温水洗浄便座部
7… 温水洗浄便座操作リモコン
8… 温水洗浄便座操作検出センサー
9… 紙巻器
10… 紙巻器繰り出し量検出センサー
11… 排尿測定機能操作盤
12… 個人認証機能部
13… 第1演算装置
14… 第2演算装置
15… 第3演算装置
16… データ記憶手段
17… 機能設定盤
18… データ出力プリンター
19… ボール面
20… 測定開始ボタン
21… 測定中表示ランプ
22… 測定終了ボタン
23… 便器洗浄ボタン
24… カードホルダー
25… 個人認証カード
26… 尿量判定設定部
27… 尿流率判定設定部
28… 温水便座判定設定部
29… 紙巻器判定設定部
30… 着座検知センサー
31… 人体検知センサー
32… キャビネット
33… 便器洗浄ジェット配管
34… 便器洗浄リム配管
35… 制御手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水洗浄手段と、便器洗浄手段と、トイレットペーパー供給手段のうち少なくともひとつの手段を有し、使用者が排尿した尿の量および/又は排尿速度を測定する排尿測定便器システムにおいて、前記各手段の使用状態を監視する使用状態監視手段と、前記使用状態監視手段の取得した前記各手段の使用状態情報によって、採取した排尿測定データの処理方法を決定して該処理を実行するデータ処理管理手段と、を有することを特徴とする排尿測定便器システム。
【請求項2】
前記使用状態情報が、前記温水洗浄手段では洗浄ノズルからの吐水に関する制御信号、便器洗浄手段では便器洗浄に関する制御信号、トイレットペーパー供給手段ではペーパー繰り出し量の少なくとも一つ以上を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の排尿測定便器システム。
【請求項3】
前記トイレットペーパー供給手段が紙巻器であり、前記ペーパー繰り出し量の算出を前記紙巻器にセットされるペーパーロールの保持棒の回転数を利用して行うことを特徴とする請求項2に記載の排尿測定便器システム。
【請求項4】
使用者を特定するための個人認証手段と、過去の排尿測定時における前記使用状態情報と前記排尿測定データとを、前記個人認証手段によって認識される使用者ごとに使用履歴情報として記憶する個人使用履歴情報記憶手段とを有し、取得された前記使用状態情報と前記使用履歴情報とを比較して採取した排尿測定データーの処理方法を決定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排尿測定便器システム。
【請求項5】
前記処理方法が、特定された使用者の個人使用履歴情報の排尿測定データに対し、あらかじめ決められた範囲から外れた前記排尿測定データーは記憶および出力しない機能を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の排尿測定便器システム。
【請求項6】
前記処理方法が、特定された使用者の個人使用履歴情報の排尿測定データに対し、あらかじめ決められた範囲内にある場合は、前記使用状態情報を出力する機能を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の排尿測定便器システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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