説明

排気ガス成分分析装置

【課題】
コンパクト化、省電力化が可能で、なおかつ感度がよく、リアルタイム連続測定のできる排気ガス分析装置を提供する。
【解決手段】
内燃機関から排出された排気ガスを連続的に導入されて、その排気ガス中の複数の測定対象成分の濃度を時系列的に測定する複数の異なる分析計4、5、6と、
前記排気ガスが各分析計4、5、6に至るまでの時間の違いに基づいて、同時期に排出された排気ガスにおける対象成分濃度の実測値を取得する実測値取得部72と、
前記測定対象成分の相互の影響によって各実測値の一部又は全部に生じる真の値からのずれを、当該各実測値の一部又は全部に基づいて補正する補正部73とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の排気ガス等に含まれる種々の成分を分析する多成分ガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両から排出される排気ガスの成分測定のため、従来、種々のガス分析計が用いられている。例えば、特許文献1に示すように、COやCOの濃度を測定するためには、赤外線ガス分析計が用いられ、NO濃度を測定するには、化学発光式窒素酸化物分析計が用いられている。またTHC(全炭化水素、Total Hydro Carbon)濃度を測定する水素炎イオン化分析計もよく知られているところである。
【0003】
これらの分析装置は、その方式により、測定対象成分に対して排気ガス中の他の成分が干渉やクエンチングを起こし、測定結果に誤差が生じる。そのため、例えば赤外線ガス分析計では、内部に干渉補正用の検出器を別途設けるといったことがなされている。また、化学発光式窒素酸化物分析計では、COやHOによるクエンチングを低減するために、取り込む排気ガスの流量を少なくしたり、排気ガスを事前に希釈したり、あるいは真空度を上げるといった工夫がなされている。
【0004】
ところが、化学発光式窒素酸化物分析計において、多成分による干渉が生じている場合には、干渉補正用の検出器を成分毎に多数設けなければならず、構成が煩雑になる。また、化学発光式窒素酸化物分析計において、排気ガスの流量低減や希釈を行うと感度、精度が低くなり、測定の応答性にも影響する。真空度を上げると大型真空ポンプが必要になる。
【0005】
そしてこういった不具合、すなわち構成の煩雑化や巨大化、あるいは測定感度、測定精度、応答性の低減は、車両に搭載可能でリアルタイム連続測定のできる排気ガス分析計の開発を考えた場合に、大きなネックとなる。
【特許文献1】特開平11−230869
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、これらの不具合を一挙に解決し、コンパクト化、省電力化が可能で、なおかつ感度がよく、リアルタイム連続測定のできる排気ガス分析装置を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る排気ガス分析装置は、内燃機関から排出された排気ガスを時系列的に連続的に導入される主流路と、それから分岐して当該主流路に並列に設けられた1又は複数の副流路と、それら主流路及び副流路上にそれぞれ設けられ、排気ガス中の複数の測定対象成分の濃度を時系列的に測定する互いに異なる分析計と、前記排気ガスが各分析計に至るまでの時間の違いに基づき、同時期に排出された排気ガスにおける対象成分濃度の実測値を同期して取得する実測値取得部と、前記測定対象成分の相互の影響によって各実測値の一部又は全部に生じる真の値からのずれを、当該各実測値の一部又は全部に基づいて補正する補正部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、各分析計で測定した対象成分同士の干渉、クエンチング等に係る影響を、その測定値を用いて相互に補正するために、専用の補正用検出器を設ける必要がなくなり、装置のコンパクト化、省電力化を図れる。
排気ガスの測定対象成分としては、具体的には、少なくともCO、CO、HO及びTHCを挙げることができる。その場合、前記分析計として、CO濃度、CO濃度及びHO濃度を測定する赤外線ガス分析計と、THC濃度を測定する水素炎イオン化分析計とを備えたものが好ましい。そして、前記補正部が、CO濃度、CO濃度及びHO濃度に関して、それらの実測値を、水素炎イオン化分析計によるTHC濃度の実測値に基づき中間補正するとともに、CO及びCO濃度の中間補正値とHO濃度の中間補正値とに基づいて、当該CO及びCO濃度の中間補正値をさらに補正するものであることが望ましい。
【0009】
このようなものであれば、水分干渉影響低減のための除湿器やホットホースを、不要ないしサイズ低減することができるため、装置のコンパクト化、省電力化を図れる。さらに各分析計への排気ガス到達時間のずれを補正しているため、測定精度も担保できる。また、赤外線ガス分析計でHO濃度をも測定するようにしているので、専用のHO濃度計が不要になる。
【0010】
測定対象成分にNOがさらに含まれ、そのNO濃度を測定する化学発光式窒素酸化物分析計をさらに備えたものであれば、前記補正部において、NO濃度の実測値を、前記CO濃度及びHO濃度の最終補正値に基づいて補正するように構成しておけばよい。
【0011】
このことにより、化学発光式窒素酸化物分析計において、COやHOによるクエンチング低減のために取り込む排気ガスの流量を少なくしたり、排気ガスを事前に希釈したりすることが不要になるため、化学発光式窒素酸化物分析計への排気ガス導入流量を一気に上げられ、感度と応答性の向上を図れる。また高真空が不要になるため、真空ポンプのサイズ低減が可能となる。
【0012】
さらに、赤外線ガス分析計への排気ガス流量を増大できることを利用して、主流路(バイパス経路)上にこの赤外線ガス分析計を配置すれば、赤外線ガス分析計専用の流路を不要にできるため、この点においても装置の小型化に寄与し得る。
【0013】
前記主流路から分岐する副流路を設けて、その副流路上に化学発光式窒素酸化物分析計及び水素炎イオン化分析計を設ければ、各分析計へなるべく早くかつなるべく同時に排気ガスが導入されるように構成することができ、応答性よく、正確に排気ガス中の対象成分濃度を連続的に測定することができる。
【0014】
真空ポンプの数を可及的に減らすには、主流路と副流路の下流端を共通のポンプで吸引するように構成しているものが好ましい。
【0015】
そしてこのような結果、車両搭載型でリアルタイム連続測定が可能であり、なおかつ測定精度的にも優れた排気ガス分析装置の実現が初めて可能になる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、複数のガス濃度を希釈することなく連続時系列的に測定するための流路系を可及的に簡易に構成することができ、コンパクト化、省電力化が可能となり、しかも精度、応答性に優れ、感度がよく、なおかつリアルタイム連続測定のできる排気ガス分析装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る排気ガス分析装置100は、車両のトランク等に積み込んで車両を実走行させながら、排気ガス中の種々の成分濃度を測定することが可能なもので、図1に示すように、3つの異なる分析計4、5、6と、それら分析計4、5、6に排気ガスを連続的に供給するための流路系と、各分析計4、5、6からの実測データを受信して分析し真の測定値を算出するとともに、流路系に配置されたバルブ等の制御を行う情報処理装置7とを備えている。
【0019】
各部を詳述する。
【0020】
この実施形態では分析計4、5、6として、CO、CO、HOの濃度を測定するための赤外線ガス分析計4、THCの濃度を測定するための水素炎イオン化分析計5、NOの濃度を測定するための化学発光式窒素酸化物分析計6(以下CLD式NO計6ともいう)の3つを用いている。
【0021】
赤外線ガス分析計4は、非分散型のもので、CO、CO、HOがそれぞれ吸収する固有波長の赤外線をサンプルガス(排気ガス)に照射して通過させ、その際の各波長の光の強度を光検出器で測定してそれぞれ出力する。そしてその出力値を、光吸収がなかった場合のリファレンス値と比較することにより、各波長の光の吸収度を算出することができる。光吸収度は、各測定対象成分の濃度(量)に対応することから、これからCO、CO、HOの濃度(量)を特定することができるが、CO、CO、HOの光吸収度については、THCが干渉し、またCO、COについては相互に干渉がおこるとともにHOも干渉するため、単純に各光吸収度の値がCO、CO、HOの濃度に1対1に対応するわけではない。
【0022】
水素炎イオン化分析計5は、サンプルガス(排気ガス)に、燃料ガス(水素ガス)を一定の割合で混合して燃焼し、その際にそのサンプルガスに含まれるTHCがイオン化されて生じる電流の値を検知して出力する方式のもので、その電流値からTHCの量(濃度)を算出することができる。この水素炎イオン化分析計5には、燃料ガスの他に助燃用ガス(空気)も導かれるように構成している。
【0023】
CLD式NO計6は、排気ガスに含まれるすべてのNOをNOコンバータ61でNOに変換し、そのNOをオゾン発生器62から出力されるオゾンと反応槽63で混ぜ合わせて化学反応させ、そのときの反応で生じる発光の強度を光検出器(図示しない)で検知し出力するものである。この発光強度は、NOの濃度(量)に対応することから、これからNOの濃度(量)を特定することができる。ただし、COやHOが前記反応の際の発光現象を阻害する(クエンチング)ため、発光強度の値から直ちにNOの濃度を算出できるわけではない。
【0024】
なお、この実施形態では、排気ガスを直接反応槽63に導く経路6aこれと並列させてNOコンバータ61を介して反応槽63に導く経路6aの他に、排気ガスを直接反応槽63に導く経路6bを並列させて設けている。そして、バルブ65によっていずれか一方の経路6a、6bからのみ、反応槽63に択一的にガスが導かれるようにして、排気ガスに含まれるNOのみの濃度、あるいは差分をとることでNOを除くNOの濃度をも測定できるようにしている。オゾン発生器62には、大気を除湿することなくそのまま取り込むようにしている。符号64はオゾン除去器である。
【0025】
流路系は、排気ガスの大部分を通過させるバイパス経路としての役割を果たす主流路1と、その主流路1から分岐させて並列に設けた複数(2つ)の副流路2、3とを備えており、主流路1上に前記赤外線ガス分析計4、一方の副流路2(第1副流路2)上に前記水素炎イオン化分析計5、他方の副流路3(第2副流路3)上にCLD式NO計6をそれぞれ設けている。
【0026】
主流路1は、その上流端をメインポート11として開口させたもので、最も下流側には吸引ポンプ19が配設してある。そして、このメインポート11に車両の排気管を接続し、前記吸引ポンプ19で吸引することにより、排気ガスのうちの測定に必要な量が当該主流路1に導入されるように構成している。
【0027】
より具体的に説明すると、この主流路1上には、メインポート11に引き続いて、排気ガス中に含まれる液状水分を取り除くドレンセパレータ13、フィルタ14、流量制御管(キャピラリ)15a、分岐部16、赤外線ガス分析計4、流量制御管(キャピラリ)15b、合流部18、吸引ポンプ19がこの順で直列配置されている。車両の排気管から前記ドレンセパレータ13に至るまでは、少なくとも加熱配管を用いず、非加熱配管のみで接続してあるため、各分析計4、5、6にはドレンセパレータ13で液状水分のみが取り除かれた状態(以下semi−Dry状態ともいう)の排気ガスが導入される。赤外線ガス分析計4の下流に接続されている圧力制御弁17aは、前記キャピラリ15a、15b間の流路系の圧力をコントロールするためのものであり、各キャピラリ15a、15bと協働して赤外線ガス分析計4を流れる排気ガスの流量及び圧力を一定に保つ役割を担う。
【0028】
一方、前記副流路2、3は、前記分岐部16で主流路1から分岐され、前記合流部18で主流路1に再度接続されるように構成してある。
【0029】
第1副流路2上には、流量制御管(キャピラリ)21、水素炎イオン化分析計5がこの順で設けてある。流量制御管21は、この副流路2を流れるガスの量を、THCの濃度測定に必要な流量(主流路1を流れる排気ガス流量に比べればわずかである)に制限するものである。
【0030】
第2副流路3上には、流量制御管(キャピラリ)31、CLD式NO計6が上流からこの順で設けてある。流量制御管(キャピラリ)31は、この副流路3を流れるガスの量を、NOの濃度測定に必要な流量(主流路1を流れる排気ガス流量に比べればわずかである)に制限するものである。
【0031】
合流部18に接続されている圧力制御弁17bは、前記各副流路2、3の圧力をコントロールするためのものであり、各副流路2、3の上流部に設けられた前記キャピラリ21、22と協働して水素炎イオン化分析計5及びCLD式NO計6を流れる排気ガスの流量及び圧力を一定に保つ役割を担う。
【0032】
情報処理装置7は、図2に示すように、CPU701の他に、メモリ702、入出力チャネル703、キーボード等の入力手段704、ディスプレイ705等を備えた汎用乃至専用のものであり、入出力チャネル703には、A/Dコンバータ706、D/Aコンバータ707、増幅器(図示しない)などのアナログ−デジタル変換回路が接続されている。
【0033】
そして、CPU71及びその周辺機器が、前記メモリ72の所定領域に格納されたプログラムにしたがって協働動作することにより、この情報処理装置7は、図3に示すように、前記流路系等に設けられたバルブの開閉制御やヒータの温度制御を行う制御部71と、同時期に排出された排気ガスに対する各分析計4、5、6での実測値を取得する実測値取得部72と、各実測値の一部又は全部に生じる真の値からのずれを補正する補正部73としての機能を少なくとも発揮する。なお、この情報処理装置7は、物理的に一体である必要はなく、有線又は無線により複数の機器に分割されていても構わない。
【0034】
各機能部71〜73を説明する。
【0035】
実測値取得部72は、各分析計4、5、6からの出力データを所定時間間隔でサンプリングして受け付け、必要に応じて平均化処理やアンプ、検出器での利得、オフセット処理などを施し、実測データとして時系列的にメモリの所定領域に設定された実測データ格納部D1に格納するものである。また、この実測値取得部72は、各分析計4、5、6にまで排気ガスが到達する時間のずれを予め記憶しており、その時間のずれに基づいて、同時期に排出された排気ガスに係る各実測データを、実測データ格納部D1から抽出し、出力する。たとえば、最も排気ガスが到達するのが遅い分析計4、5、6からの実測データを取得した時点で、その実測データと、他の分析計4、5、6に係る実測データであって到達時間のずれ分だけ先に取得している実測データとを出力する。
【0036】
補正部73は、前記実測値取得部72から出力された各実測データを受け付け、それら各実測データの示す値、すなわち各測定対象成分に関する実測値を、当該各実測値の一部又は全部に基づいて補正し、その補正値を示す補正データを出力するものである。より具体的には、以下に説明する。
【0037】
まずTHC濃度に関して説明すると、この補正部73は、水素炎イオン化分析計5に係る実測値に、ゼロ/スパンキャリブレーション、リニアライゼーションを施し、さらに圧力補償、温度補償を施して、semi−DRY状態でのTHC濃度を算出する。
【0038】
次に、CO濃度、CO濃度及びHO濃度に関して説明する。
【0039】
補正部73は、赤外線ガス分析計4に係る実測値を、前述のようにTHC濃度の実測値から算出されたsemi−DRY状態でのTHC濃度に基づいて第1次補正をする。補正式は以下の通りである。
CO=OCO−KHC(CO)・[THCconc.(vol%)]
CO2=OCO2−KHC(CO2)・[THCconc.(vol%)]
H2O=OH2O−KHC(H2O)・[THCconc.(vol%)]
O:実測値
P:第1次補正値(THC干渉を排除した補正値)
HC:HC干渉補正係数
[THCconc.(vol%)]:THC濃度(semi−DRY状態)
*なお、添え字はCO、CO、HOに関する値であることを示す。
【0040】
次に、CO及びCOの相互干渉影響をさらに補正すべく、第1次補正されたCO濃度及びCO濃度の値を、相互の値に基づいて第2次補正する。補正式は以下の通りである。
CO=(PCO−KCO2(CO)・PCO2)/(1−KCO2(CO)・KCO(CO2)
CO2=(PCO2−KCO(CO2)・PCO)/(1−KCO(CO2)・KCO2(CO)
Q:第2次補正値(CO及びCOの相互干渉を排除した補正値)
CO(CO2):COの実測値に対するCOによる干渉補正係数
CO2(CO):COの実測値に対するCOによる干渉補正係数
【0041】
その後、このようにして求めたQCO、QCO2、PH2Oにゼロ/スパンキャリブレーション及びリニアライズを施す。その値(中間補正値)をそれぞれSCO、SCO2、SH2Oとする。
【0042】
次に、この中間補正値SCO、SCO2に対し、前記中間補正値SH2Oを使ってゼロ点の水分干渉を補正する。補正式は以下の通りである。
CO=SCO−KH2O0(CO)・SH2O
CO2=SCO2−KH2O0(CO2)・SH2O
T:ゼロ点での水分干渉を補正した値
H2O0(CO):COの水分干渉補正係数
H2O0(CO2):COの水分干渉補正係数
【0043】
さらに、SPAN点の水分共存影響を補正する。補正式は以下の通りである。
CO=TCO/(1−KH2O1(CO)・SH2O
CO2=TCO2/(1−KH2O1(CO2)・SH2O
U:スパン点での水分共存影響を補正した値
H2O1(CO):COの水分共存影響補正係数
H2O1(CO2):COの水分共存影響補正係数
【0044】
その後、このUCO、UCO2、SH2Oに圧力補償、温度補償を行って、semi−DRY状態でのCO、CO及びHOの濃度を算出する。
【0045】
次にNO濃度に関して説明する。
【0046】
補正部73は、CLD式NO計6に係る実測値を、水素炎イオン化分析計5で得られたTHC濃度の実測値ONOXに、ゼロ/スパンキャリブレーション、リニアライゼーションを施す。
【0047】
次にその値に、COによるクエンチング(消光効果)補正を施す。補正式は以下の通りである。
NOX=QNOX/(1+KCO2・[COconc.(vol%)])
NOX:実測値ONOXに前記ゼロ/スパンキャリブレーション等を施した値。
CO2:CO干渉(クエンチング)補正係数
[COconc.(vol%)]:CO濃度(semi−DRY状態)
【0048】
次に、HOによるクエンチング(消光効果)補正を施す。補正式は以下の通りである。
NOX=RNOX/(1+KH2O・[HOconc.(vol%)])
H2O:HO干渉(クエンチング)補正係数
[HOconc.(vol%)]:HO濃度(semi−DRY状態)
【0049】
その後、このUNOXに圧力補償、温度補償を行って、Semi−DRY状態でのNO濃度を算出する。
【0050】
このようにして、補正部73は、前述のようにして求めたsemi−DRY状態でのTHC濃度、CO濃度、CO濃度、NO濃度(最終補正値)を出力する。
【0051】
なお、この情報処理装置7は、図示しないWET換算部をさらに備えている。
【0052】
このWET換算部は、オペレータからの要求入力等によって、前記最終補正値から、水分を完全に除去したDRY状態での各成分の濃度を算出し、さらにそのDRY状態での各成分の濃度から車両排気管をでた直後の水分を含んだ排気ガス(WET状態での排気ガス)における各成分の濃度を出力する。
【0053】
DRY状態での濃度に換算する換算式は以下の通りである。
X=W・100/(100−[HOconc.(vol%)])
W:semi−DRY状態での測定対象成分濃度
X:DRY状態での測定対象成分濃度
[HOconc.(vol%)]:HO濃度(semi−DRY状態)
【0054】
またこのDRY状態での濃度Xを、前記WET状態での濃度に換算するには、CFR−1065に記載のDRY to WET換算式(詳細は省略する)を適用する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、各分析計4、5、6で測定した対象成分の干渉、クエンチングを、その測定値を用いて相互に補正するために、専用の補正用検出器を設ける必要がなくなり、装置のコンパクト化、省電力化を図れる。
【0056】
また、CLD式NO計6において、COやHOによるクエンチング低減のために取り込む排気ガスの流量を少なくしたり、排気ガスを事前に希釈したりすることが不要になるため、CLD式NO計6への排気ガス流量を一気に上げられ、感度の向上を図れる。さらにCLD式NO計6への排気ガス流量を増大できることを利用して、主流路1(バイパス経路)上にこのCLD式NO計6を配置し、CLD式NO計6専用の流路を設けないようにしているため、この点においても装置の小型化に寄与し得る。
【0057】
また高真空が必要でないため、真空ポンプ19のサイズ低減が可能であるうえに、主流路1や副流路2、3に、キャピラリ15a、15b、21、31や圧力制御弁17a、17bを配置して、各分析計4、5、6への排気ガスの流量及び圧力制御を、共通の1つの真空ポンプ19で行えるように構成しているため、この点でも装置の小型化、省電力化を図ることができる。
【0058】
さらに、赤外線ガス分析計4において、水分干渉影響低減のための除湿器を、不要ないしサイズ低減することができるため、やはり装置のコンパクト化、省電力化を図れる。
【0059】
加えて、この実施形態では、主流路1の分岐部16から副流路2、3を設け、各分析計4、5、6に、なるべく早くかつなるべく同時に排気ガスが導入されるようにしたうえで、さらに情報処理装置7において、各分析計4、5、6への排気ガス到達時間のずれを補正しているため、応答性よく、正確に排気ガス中の対象成分濃度を連続的に測定することができる。
【0060】
そしてかかる工夫の結果、この実施形態のように、車両搭載型でリアルタイム連続測定が可能であり、なおかつ測定精度的にも優れた排気ガス分析装置100の実現が初めて可能になる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。干渉やクエンチング補正の方法や構成は他にも考えられるし、測定対象成分も、前記実施形態で示したものに限られない。分析計も他の方式のものを用いてかまわない。車両搭載型のみならず、実験室で用いるようなスタンドアローン型のものにも適用して前記実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0062】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によって、コンパクト化、省電力化が可能で、なおかつ感度がよく、リアルタイム連続測定のできる排気ガス分析装置100を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス分析装置の全体流体回路図。
【図2】同実施形態における情報処理装置の回路構成図。
【図3】同実施形態における情報処理装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0065】
100・・・排気ガス分析装置
1・・・主流路
2、3・・・副流路
4・・・赤外線ガス分析計
5・・・水素炎イオン化分析計
6・・・化学発光式窒素酸化物分析計
19・・・ポンプ
73・・・補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが時系列的に連続的に導入される主流路と、
それから分岐して当該主流路に並列に設けられた1又は複数の副流路と、
それら主流路及び副流路上にそれぞれ設けられ、排気ガス中の複数の測定対象成分の濃度を時系列的に測定する互いに異なる分析計と、
前記排気ガスが各分析計に至るまでの時間の違いに基づき、同時期に排出された排気ガスにおける対象成分濃度の実測値を同期して取得する実測値取得部と、
前記測定対象成分の相互の影響によって各実測値の一部又は全部に生じる真の値からのずれを、当該各実測値の一部又は全部に基づいて補正する補正部と、を備えている排気ガス分析装置。
【請求項2】
測定対象成分が、少なくともCO、CO、HO及びTHCであり、前記分析計として、CO濃度、CO濃度及びHO濃度を測定する赤外線ガス分析計と、THC濃度を測定する水素炎イオン化分析計とを備えたものであって、
前記補正部が、CO濃度、CO濃度及びHO濃度に関して、それらの実測値を、水素炎イオン化分析計によるTHC濃度の実測値に基づき中間補正するとともに、CO及びCO濃度の中間補正値とHO濃度の中間補正値とに基づいて、当該CO及びCO濃度の中間補正値をさらに補正するものである請求項1記載の排気ガス分析装置。
【請求項3】
測定対象成分にNOがさらに含まれ、そのNO濃度を測定する化学発光式窒素酸化物分析計をさらに備えたものであって、
前記補正部が、NO濃度に関して、その実測値を、前記CO濃度及びHO濃度の最終補正値に基づいて補正するものである請求項2記載の排気ガス分析装置。
【請求項4】
前記主流路上に赤外線ガス分析計を設けている請求項3記載の排気ガス分析装置。
【請求項5】
前記副流路上に化学発光式窒素酸化物分析計及び水素炎イオン化分析計を設け、前記主流路を化学発光式窒素酸化物分析計及び水素炎イオン化分析計における共通のバイパスラインとしている請求項4記載の排気ガス分析装置。
【請求項6】
主流路と副流路の下流端を共通のポンプで吸引するように構成している請求項5記載の排気ガス分析装置。
【請求項7】
車両搭載型である請求項1〜6いずれかに記載の排気ガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−275801(P2006−275801A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96055(P2005−96055)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】