説明

排気ガス浄化用触媒およびこれを用いてなる浄化システム

【目的】 ロジウムを使用せず、極めて少量でCO、HC及びNOxの三成分を同時に除去できる排気ガス浄化用触媒を提供する。
【構成】 触媒1リットルに対して、パラジウム0.5〜30g、アルカリ土類金属酸化物0.1〜50g、ランタン酸化物0.1〜50g、セリウム酸化物10〜150g及びジルコニウム酸化物0.1〜50gよりなる触媒活性成分、及び活性アルミナ10〜300gよりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる内燃機関の排気ガスから一酸化炭素、炭化水素類および窒素酸化物を同時に除去するための排気ガス浄化用触媒である。
【効果】 エンジン排気ガスがリッチな状態でのNOx浄化能、及び燃料ガス組成が化学量論比近傍でのCO、HC及びNOx浄化能を著しく向上できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、排気ガス浄化用触媒および排気ガス浄化システムに関するものである。詳しく述べると、本発明は、自動車などの内燃機関からの排気ガス中に含まれる有害成分である一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOх)を同時に除去する排気ガス浄化用触媒および排気ガス浄化システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関から排出される排気ガス中の有害成分を除去する排気ガス浄化用触媒に関して種々なものが提案されている。
【0003】従来パラジウム触媒は高い耐熱性を有していることやエンジン排気ガスの酸化雰囲気(いわゆるリーン;空気/燃料(A/F)が空気側大)におけるCO、HCの高い浄化能を有することは、一般に知られていた。一方、問題点として、エンジン排気ガスが還元雰囲気(いわゆるリッチ;空気/燃料(A/F)が燃料側大)の場合、NOx浄化能が低いことが挙げられる。そのためリーン側のみでの使用、例えば、いわゆる酸化触媒として使用、または高いNOx浄化能を有するロジウムを上記パラジウムと組み合わせて、CO、HCおよびNOxを同時に浄化する三元触媒として用いられる。
【0004】しかしながら、ロジウムは、非常に高価であるために、触媒成分中の使用量の減少、または使用しないことが望まれているが、高いNOx浄化能を有するという特徴を有するために、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOх)を同時に除去する排気ガス浄化用触媒の成分としては、必須成分として不可欠である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、新規な排気ガス浄化用触媒および排気ガス浄化システムを提供することにある。
【0006】本発明の他の目的は、ロジウムを使用することなく、かつ従来より極めて少量でCO、HCおよびNOxの三成分を同時に除去することができる排気ガス浄化用触媒および排気ガス浄化システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記諸目的を解決するために鋭意研究した結果、パラジウム、アルカリ土類金属酸化物、ランタン酸化物、セリウム酸化物およびジルコニウム酸化物よりなる触媒活性成分および活性アルミナよりなる混合物をモノリス構造担体に担持することにより、従来のロジウムを含有する三元触媒に相当する排ガス能を有することを見出し、さらにパラジウム触媒の問題点であるエンジン排気ガスがリッチでのNOx浄化能を著しく向上させたものであることのみならず、燃料ガス組成が化学量論比(燃料ガスを完全燃焼させるのに必要な空気量)近傍でもCO、HCおよびNOx浄化能を向上させることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明の諸目的は、触媒1リットルに対して、パラジウム0.5〜30g、アルカリ土類金属酸化物0.1〜50g、ランタン酸化物0.1〜50g、セリウム酸化物10〜150gおよびジルコニウム酸化物0.1〜50gよりなる触媒活性成分および活性アルミナ10〜300gよりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる内燃機関の排気ガスから一酸化炭素、炭化水素類および窒素酸化物を同時に除去するための排気ガス浄化用触媒により達成される。
【0009】本発明の他の諸目的は、排気ガス流入側の触媒として触媒1リットルに対して、パラジウム0.5〜30g、アルカリ土類金属酸化物0.1〜50g、ランタン酸化物0.1〜50g、セリウム酸化物10〜150gおよびジルコニウム酸化物0.1〜50gよりなる触媒活性成分および活性アルミナ10〜300gよりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を、また排気ガス流出側の触媒として(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を配置してなる排気ガス浄化システムによっても達成される。
【0010】本発明の他の諸目的は、排気ガス流入側の触媒として、(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を、また排気ガス流出側の触媒として、触媒1リットルに対して、パラジウム0.5〜30g、アルカリ土類金属酸化物0.1〜50g、ランタン酸化物0.1〜50g、セリウム酸化物10〜150gおよびジルコニウム酸化物0.1〜50gよりなる触媒活性成分および活性アルミナ10〜300gよりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を配置してなる排気ガス浄化システムによっても達成される。
【0011】
【作用】以下、本発明を詳しく説明する。
【0012】まず、本発明に係るパラジウムの使用量は、触媒の使用条件によって異なるが、通常触媒1リットル当り0.5〜30g、好ましくは0.5〜25gである。パラジウムの量が0.5g未満である場合は、浄化能が低く、また、30gを越える場合は、添加量に見合う性能の向上は見られないものである。
【0013】パラジウムの担持される位置は、その使用量および使用条件により異なるが、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、ランタン酸化物または活性アルミナに単独に、またはまたがって担持されてなる。
【0014】次に、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられるが、特にカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、該アルカリ土類金属の前駆体としては、酸化物、有機塩、および無機塩のいずれでもよく、特に限定されるものでない。例えば、酢酸バリウム、シュウ酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウムなどがあり、その状態については、水溶液、ゲル状物、懸濁状物および固体のいずれであってもよい。
【0015】本発明に係るアルカリ土類金属酸化物の使用量は、触媒1リットル当り0.1〜50g、好ましくは0.5〜40gである。アルカリ土類金属酸化物の量が、0.1g未満である場合は、浄化能が低く、また、50gを越える場合は、添加量に見合う性能の向上は見られないものである。
【0016】アルカリ土類金属酸化物は、セリウム酸化物、ジルコニウム酸化物またはそれらの複合物、固溶体あるいはランタン酸化物または活性アルミナのいずれに担持されてもよいため、調製方法は、特に限定されない。
【0017】アルカリ土類金属酸化物とパラジウムの関係は、それらの重量比(アルカリ土類金属酸化物/パラジウム)で、1:100〜150:1、好ましくは、1:100〜100:1である。1:100よりアルカリ土類金属酸化物の量が少なくなると、三元性能が悪くなり、特に、NOx浄化率が劣り、150:1よりアルカリ土類金属酸化物の量が多くなると添加効果は向上するが、その他の酸化物等の担持量および触媒の強度の関係により、担持比率および担持量が制限される。次に、セリウム酸化物としては、特に限定されるものではないが、酸化物のまま、または種々の水溶性の塩等を焼成することによりセリウム酸化物として用いることができる。
【0018】本発明に係るセリウム酸化物の使用量は、触媒1リットル当り10〜150g、特に20〜140gが好ましく、10g未満である場合は、浄化能が低く、また、150gを越える場合は、それ以上加えても大きな効果は見られない。
【0019】本発明に使用されるセリウム酸化物源としては、触媒中で二酸化セリウム(CeO2 )として存在しうるものであれば、出発物質は特に限定されない。例えば市販のCeO2 、炭酸セリウム、水酸化セリウム等が使用可能である。また、セリウム塩の溶液、例えば硝酸セリウム溶液を活性アルミナに含浸担持させてもよい。
【0020】水不溶性セリウム化合物としては、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸セリウム等が挙げられる。この水不溶性セリウム化合物は、微粉末状で使用される。
【0021】ジルコニウム酸化物としては、特に限定されるものではないが、酸化物のまま、または種々の水溶性の塩等を焼成することによりジルコニウム酸化物として用いることができる。
【0022】本発明に係るジルコニウム酸化物の使用量は、触媒1リットル当り0.1〜50g、特に1〜50gが好ましく、0.1g未満である場合は、効果が少なく、50gを越える場合は、浄化性能が低下する。
【0023】また、本発明に係るモノリス構造担体に担持されてなるセリウム酸化物とジルコニウム酸化物は、少なくともその1部が複合物または固溶体として存在してなることが好ましい。さらに好ましくは、このセリウム酸化物とジルコニウム酸化物の比(酸化物換算重量比)が100:2〜100:60であり、好ましくは、100:4〜100:40である。この比が100:2よりセリウム酸化物が多くなる場合、または100:60よりジルコニウム酸化物が多くなる場合には触媒性能が低くなる傾向となるものである。
【0024】セリウム酸化物とジルコニウム酸化物の複合物または固溶体の調製方法を以下に示すが、これらの酸化物の少なくとも1部が複合物または固溶体として存在してなるものであれば、特に限定されることはないが、上記の比の範囲内にあることが好ましい。
【0025】(1)水に溶解性のあるセリウム塩とジルコニウム塩の水溶液を乾燥、焼成する方法、(2)セリウム酸化物とジルコニウム酸化物とを固相反応させる方法、(3)セリウム酸化物に水溶性ジルコニウム塩の水溶液を浸し乾燥、焼成する方法、(4)活性アルミナに水に溶解性のあるセリウム塩とジルコニウム塩の水溶液を含浸後、乾燥、焼成する方法、または(5)モノリス構造体担体に活性アルミナを被覆した後に水に溶解性のあるセリウム塩とジルコニウム塩の水溶液を乾燥、焼成する方法等、触媒の調製に応じて種々の方法を適宜用いることができる。
【0026】本発明で使用されるセリウム酸化物は、空気中で900℃、10時間の焼成後に、その結晶子径が250オングストローム以下であることが好ましく、この範囲のセリウム酸化物は、熱安定性を有し、触媒の耐久性を向上させるものである。また、結晶子径が250オングストロームを越える場合は、熱安定性が劣り好ましくないものである。この結晶子径の測定は、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物が、少なくとも1部が複合物または固溶体である粉体を調製後または場合によっては触媒調製後に、空気中で900℃、10時間の焼成後、X線回折法により得られたX線回折チャートの半値幅により、計算で測定し求めた。
【0027】また、少なくとも1部が複合物または固溶体であるセリウム酸化物とジルコニウム酸化物は、空気中で900℃、10時間の焼成後に、500℃で30分間の水素還元後の400℃での酸素消費量が、セリウム酸化物1g当り、5×10 -5モル(O2 換算)以上であることが好ましい。酸素消費量が、セリウム酸化物1g当り、5×10-5モル(O2 換算)未満である場合は、触媒の耐久性が低いものである。
【0028】酸素消費量の測定は、通常の流通系パルス型反応装置を用いて行った。少なくとも1部が複合物または固溶体であるセリウム酸化物とジルコニウム酸化物を、空気中で900℃、10時間の焼成後、該反応装置に所定量の粉体を充填し、次いで、不活性ガスを通した後、500℃で水素で30分間還元した後、再度不活性ガスを通過させ、400℃まで降温し、酸素のパルスを通過させ、その時の酸素の消費量を測定し、セリウム酸化物1g当りの酸素消費量を求めた。
【0029】次に、ランタン酸化物としては、特に限定されるものではないが、酸化物、または種々の水溶性塩等をセリウム酸化物、ジルコニウム酸化物または活性アルミナに単独に、またはまたがって担持されるものである。
【0030】本発明に係るランタン酸化物の使用量は、触媒1リットル当り0.1〜50g、特に0.5〜30gが好ましく、0.1g未満である場合は、効果が少なく、50gを越える場合は、それ以上加えてもそれに見合う効果はみられないものである。
【0031】本発明に係る活性アルミナの比表面積は10〜400m2 /g、好ましくは50〜300m2 /gである。その使用量は、触媒1リットル当り10〜300g、好ましくは50〜250gである。すなわち、10g未満であると浄化性能が低く、一方、300gを越えると触媒の背圧が上昇し好ましくない。ここで、活性アルミナとは、その結晶形が、χ、ρ、κ、γ、δ、η、θ等の不定形アルミナをいう。
【0032】次に、本発明に係る触媒を調製する方法としては、例えば(1)上記した触媒活性成分および活性アルミナを一括し、ボールミル等を用いて水性スラリーとし、モノリス構造担体に被覆し、その後乾燥し、必要により焼成して完成触媒とする方法、(2)活性アルミナを予めモノリス構造担体に被覆した後、水に溶解性のあるセリウム塩、ジルコニウム塩の水溶液に該モノリス構造担体を浸漬し、乾燥、焼成し、次いで残りの触媒活性成分を同様な手順で担持する方法、(3)上記の複合酸化物および各成分を担持した活性アルミナをボールミル等により水性スラリーとし、モノリス構造担体に被覆し、その後乾燥し、必要により焼成して完成触媒とする方法などがあるが、これらの方法は作業手順の便により適宜変更し使用される。
【0033】触媒1リットルに対する触媒活性成分の合計使用量は、50〜400g、好ましくは100〜350gである。50g未満である場合は、浄化性能が低く、400gを越える量を、該担持体であるモノリス構造担体に被覆した場合は、その背圧が上昇し好ましくないものである。
【0034】本発明に使用されるモノリス構造担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、特にコージェライト、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、ペタライト、スポジュメン、アルミノ−シリケート、珪酸マグネシウムなどを材料とするハニカム担体が好ましく、中でもコージェライト質のものがとくに内燃機関用として好ましい。その他、ステンレスまたはFe−Cr−Al合金などの如き酸化抵抗性の耐熱金属を用いて一体構造担体としたものも使用される。これらモノリス構造担体は、押出成型法や、シート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル型状)の形は、6角形、4角形、3角形またはコルゲーション型のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、150〜600セル/平方インチであれば十分に使用可能で、好結果を与える。
【0035】前記触媒活性成分および活性アルミナよりなる混合物を被覆したモノリス構造担体は、乾燥後、200〜800℃、好ましくは300〜700℃の温度で、0.1〜5時間、好ましくは0.2〜3時間焼成されて完成触媒を得る。
【0036】このようにして得られる触媒は、コンバータに挿入されて、自動車等の内燃機関からの排気ガスの浄化に使用される。
【0037】また、本発明による触媒を排気ガス流入側の触媒として使用し、一方(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造を有する担体に担持してなる触媒(以下「貴金属触媒」ともいう)を排気ガス流出側に配置して排気ガス浄化システムにしてもよい。
【0038】さらに、逆に(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造を有する担体に担持してなる触媒を排気ガス流入側に、かつ前記本発明による触媒を排気ガス流出側に配置して排気ガス浄化システムにしてもよい。
【0039】上記排気ガス浄化システムにおける貴金属触媒で用いられる貴金属としては、(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムであり、これらの使用量は触媒1リットル当り0.1〜10g、好ましくは0.3〜5gである。0.1g未満である場合は、浄化能が低く、10gを越える場合は、添加量に見合う効果が少ない。
【0040】貴金属触媒で用いられる耐火性無機酸化物としては、活性アルミナ、シリカ、チタニア、セリウム酸化物、ジルコニウム酸化物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、鉄、コバルト、ニッケル等の添加物を金属、金属酸化物等の形態で加えることができる。これらの添加物のうち好ましくは活性アルミナ、セリウム酸化物、ジルコニウム酸化物である。使用される耐火性無機酸化物の量は、触媒1リットル当り10〜300g、好ましくは10〜250gである。
【0041】排気ガス流入側の触媒および排気ガス流出側の触媒に使用される一体構造担体としては、通常、排気ガス浄化用触媒に使用される一体構造担体であればいずれのものでもよく、例えばハニカム型、コルゲート型等の一体構造担体が用いられ、その材質は、耐火性を有するものであればいずれのものであってもよく、例えばコージェライト等の耐火性を有するセラミック製、フェライト系ステンレス等金属製の一体構造担体が用いられる。
【0042】排気ガス流入側の触媒と排気ガス流出側の触媒との体積比は100:1〜1:100、好ましくは50:1〜1:50である。100:1未満である場合および1:100を越える場合は、組み合わせによる性能向上は示されない。
【0043】排気ガス流入側の触媒と排気ガス流出側の触媒は、同一の触媒コンバータ内に設置することができるし、また排気管の形状、触媒の形状などにより適宜、各々分離して放置することもできる。
【0044】排気ガス流入側の触媒および排気ガス流出側の触媒とも各々1個である必要はなく、排気管の形状、触媒の設置する場所、排気ガスの背圧の上昇等に支障がないかぎり、排気ガス流入側の触媒および排気ガス流出側の触媒とも各々複数個の触媒に分割し使用することもできる。
【0045】
【実施例】以下に実施例により具体的に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの実施例に限定されるものでない。
【0046】実施例1市販のセリウム酸化物(CeO2 、比表面積149m2 /g)にオキシ硝酸ジルコニル水溶液をCeO2 /ZrO2 の比で10/1(CeO2 とZrO2 の合計が100g)となるように混合し、乾燥後、500℃で1時間焼成して100gの粉体を得た。次にランタン酸化物として20g含有する酢酸ランタン水溶液を活性アルミナ(γ−Al2 3 、平均粒径45μm、比表面積155m2 /g)180gに浸漬し、乾燥後、焼成して200g粉体を得た。上記粉体と酢酸バリウム16.7gおよびパラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液を加え、ボールミルで湿式粉砕することにより水性スラリーを調製した。このスラリーに、断面積1インチ平方当り400個のセルを有するコージェライト製モノリス担体(外径33mm×長さ76mm)を浸漬し、取り出した後、セル内の過剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばした後、乾燥、焼成し、完成触媒を得た。
【0047】実施例2実施例1で用いたセリウム酸化物にオキシ硝酸ジルコニル水溶液をCeO2 /ZrO2 の比で10/1(CeO2 とZrO2 の合計が100g)およびランタン酸化物として20g含有する硝酸ランタン水溶液を混合し、乾燥後、500℃で1時間焼成して120g、活性アルミナ180gおよびパラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液を加え、ボールミルで湿式粉砕することにより水性スラリーを調製した。このスラリーに、断面積1インチ平方当り400個のセルを有するコージェライト製モノリス担体(外径33mm×長さ76mm)を浸漬し、取り出した後、セル内の過剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばした後、乾燥、焼成し、完成触媒を得た。
【0048】実施例3実施例1において、該スラリーの代わりに、実施例1で得られるCeO2 ・ZrO2 の粉体100gおよび活性アルミナ180gを混合した粉体に、ランタン酸化物として20g含有する酢酸ランタン水溶液を加え、乾燥後、500℃で1時間焼成して得た300g、酢酸バリウム16.7gおよびパラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液を加え、ボールミルで湿式粉砕することにより水性スラリーを調製した。このスラリーに、断面積1インチ平方当り400個のセルを有するコージェライト製モノリス担体(外径33mm×長さ76mm)を浸漬し、取り出した後、セル内の過剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばした後、乾燥、焼成し、完成触媒を得た。
【0049】実施例4実施例1で得られるCeO2 ・ZrO2 の粉体100gおよび活性アルミナ180gとランタン酸化物として20g含有する酢酸ランタン水溶液、酢酸バリウム16.7gおよびパラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液を加え、ボールミルで湿式粉砕することにより水性スラリーを調製した。このスラリーに、断面積1インチ平方当り400個のセルを有するコージェライト製モノリス担体(外径33mm×長さ76mm)を浸漬し、取り出した後、セル内の過剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばした後、乾燥、焼成し、完成触媒を得た。
【0050】実施例5実施例1において、ランタン酸化物20gを1gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0051】実施例6実施例1において、ランタン酸化物20gを90gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0052】実施例7実施例1において、酢酸バリウム16.7gを133.6gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0053】実施例8実施例1において、酢酸バリウム16.7gを0.83gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0054】実施例9実施例1において、酢酸バリウム16.7gを酢酸カルシウム28.2gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0055】実施例10実施例1において、酢酸バリウム16.7gを酢酸ストロンチウム19.8gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0056】実施例11実施例1において、CeO2 /ZrO2 の比を10/1(CeO2 とZrO 2 の合計が30g)に変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0057】実施例12実施例1において、CeO2 /ZrO2 の比を10/1(CeO2 とZrO 2 の合計が160g)に変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0058】実施例13実施例1において、CeO2 /ZrO2 の比を10/3(CeO2 とZrO 2 の合計が100g)に変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0059】実施例14実施例1において、CeO2 /ZrO2 の比を25/1(CeO2 とZrO 2 の合計が100g)に変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0060】実施例15実施例1において、酢酸バリウム16.7gを酢酸マグネシウム35.3gに変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0061】実施例16実施例1において、パラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液をパラジウム2g含有する硝酸パラジウム水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0062】実施例17実施例1において、パラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液をパラジウム8g含有する硝酸パラジウム水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0063】実施例18実施例1において、パラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液をパラジウム16g含有する硝酸パラジウム水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0064】実施例19実施例1において、パラジウム4g含有する硝酸パラジウム水溶液をパラジウム40g含有する硝酸パラジウム水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0065】実施例20実施例1において、CeO2 /ZrO2 の比を10/1(CeO2 とZrO 2 の合計が260g)に変えた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0066】比較例1実施例1において、酢酸バリウムを除いた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0067】比較例2実施例1において、オキシ硝酸ジルコニルを除いた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0068】比較例3実施例1において、オキシ硝酸ジルコニルおよび酢酸バリウムを除いた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0069】比較例4実施例1において、ランタン酸化物を除いた以外は、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0070】比較例5白金を2.25g含有するジニトロジアミン白金水溶液とロジウムを0.22g含有する硝酸ロジウム水溶液を混合した溶液に実施例1で用いた活性アルミナ200gを含浸担持した粉体と実施例1で用いたセリウム酸化物100gをボールミルで湿式粉砕後、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0071】比較例6パラジウムを2.25g含有する硝酸パラジウム水溶液とロジウムを0.22g含有する硝酸ロジウム水溶液の混合溶液を実施例1で用いた活性アルミナ200gに含浸、乾燥、焼成して得られた粉体と実施例1で用いた酸化セリウム100gをボールミルで湿式粉砕後、実施例1と同様にして完成触媒を得た。
【0072】比較例7白金を2.25g含有するジニトロジアミン白金水溶液、ロジウムを0.22g含有する硝酸ロジウム水溶液を混合した溶液、酢酸バリウム16.7gに実施例1で用いた活性アルミナ200gを含浸担持した粉体および実施例1で用いた酸化セリウムとオキシ硝酸ジルコニル水溶液をCeO2 /ZrO2 の比で10/1(CeO2 とZrO2 の合計が100g)となるように混合し、乾燥後、500℃で1時間焼成して得た粉体100gを加え、ボールミルで湿式粉砕後、実施例1と同様にして、完成触媒を得た。
【0073】このようにして得られた実施例と比較例の触媒の1リットル当りの各触媒成分の担持量を表1に示した。
【0074】
【表1】


【0075】実施例21次に、実施例1〜20の触媒と、比較例1〜7の触媒のエンジン耐久走行後の触媒活性を調べた。
【0076】市販の電子制御方式のエンジン(8気筒4400cc)を使用し、各触媒を充填したマルチコンバーターをエンジンの排気系に連設して耐久テストを行った。エンジンは、定常運転60秒、減速6秒(減速時に燃料がカットされて、触媒は、高温酸化雰囲気の厳しい条件にさらされる。)というモード運転で運転し触媒入口ガス温度が定常運転時900℃となる条件で50時間触媒をエージングした。
【0077】エージング後の触媒性能の評価は、市販の電子制御方式のエンジン(4気筒1800cc)を使用し、各触媒を充填したマルチコンバータを、エンジンの排気系に連設して行った。触媒の三元性能は触媒入口ガス温度400℃、空間速度90,000hr-1の条件で評価した。この際、外部発振器より1Hzサイン波型シグナルをエンジンのコントロールユニットに導入して、空燃比(A/F)を±1.0A/F、1Hzで振動させながら平均空燃比を連続的に変化させ、この時の触媒入口および出口ガス組成を同時に分析して、平均空燃比が、A/Fが15.1から14.1までのCO、HCおよびNOxの浄化率を求めた。
【0078】上記のようにして求めたCO、HCおよびNOxの浄化率対入口空燃比をグラフにプロットして、三元特性曲線を作成し、COおよびNOxの浄化率曲線の交点(クロスオーバーポイントと呼ぶ)の浄化率と、その交点のA/F値におけるHC浄化率、さらに、A/Fが14.2(エンジン排気ガスがリッチ)でのCO、HCおよびNOxの浄化能を表2に示した。
【0079】また、触媒の低温での浄化性能は、空燃比が±0.5A/F(1Hz)の条件で振動させながら、平均空燃比を、A/Fを14.6に固定してエンジンを運転し、エンジン排気系の触媒コンバーターの前に熱交換器を取り付けて、触媒入口ガス温度を200℃〜500℃まで連続的に変化させ、触媒入口および出口ガス組成を分析して、CO、HCおよびNOxの浄化率を求めることにより評価した。上記のようにして求めた、CO、HCおよびNOxの浄化率50%での温度(ライトオフ温度)を測定して表2に示した。
【0080】
【表2】


【0081】表1および表2の結果より、本発明に開示される触媒は、貴金属として、ロジウムを含まずパラジウムのみで、CO、HCおよびNOxの三成分を同時に除去できることがわかった。
【0082】さらに表2の結果より、本発明に開示される触媒は、著しく低温で、CO、HCおよびNOxの三成分を同時に除去できることもわかった。
【0083】実施例22以下の手順で、CeO2 の結晶子径、酸素消費量を測定した。
【0084】実施例22A実施例1で用いたセリウム酸化物にオキシ硝酸ジルコニル水溶液をCeO2 /ZrO2 の比でそれぞれ100/4(試料NO.a)、100/10(試料NO.b)、100/30(試料NO.c)、100/50(試料NO.d)となるように混合し、乾燥後に500℃で焼成し、その後、空気中で、900℃で10時間焼成した。なお、これらはCeO2 とZrO2 の合計は、20gである。
【0085】実施例22B硝酸セリウム水溶液とオキシ硝酸ジルコニル水溶液をCeO2 /ZrO2 の比で100/10(試料NO.e)となるように混合し、乾燥し、500℃で1時間焼成した。その後、空気中で、900℃で10時間焼成した。
【0086】実施例22C実施例1で用いたセリウム酸化物20gを空気中で、900℃で10時間焼成した(比較試料f)。
【0087】結晶子径の測定実施例22A、22Bおよび22Cで得られた試料のX線回折を測定し、セリウム酸化物の結晶子径を求めた。結果を表3に示した。この結晶子径の測定の目的は、触媒は、通常、高温耐久性が要求されるが、常温処理だけでは、高温耐久性の有無が評価し難いため、高温時でのセリウム酸化物とジルコニウム酸化物の複合物等が効果的であるか否かの評価のために行なうものである。その条件として、空気中で900℃、10時間の焼成を行なったものである。
【0088】酸素消費の測定実施例22A、22Bおよび22Cで得られた試料を通常の流通系パルス型反応装置に充填し、次いで、ヘリウムガスを通した後、500℃で水素で30分間還元処理した後、再度ヘリウムガスを15分間通過させ、次いで同雰囲気下で400℃まで降温した後、所定量の酸素のパルスを通過させ、その時の酸素の消費量を測定し、セリウム酸化物の1グラム当りの酸素消費量を求めた。この結果を表3に示した。
【0089】
【表3】


【0090】表3からわかるように、900℃酸素雰囲気において、セリウム酸化物は、ジルコニウム酸化物により安定化されていることがわかる。
【0091】実施例23以下の手順で、触媒を調製し、完成触媒のCO、HCおよびNOxの浄化率を測定した。
【0092】触媒の調製実施例1で得られた触媒を完成触媒(I)とした。
【0093】次いで、白金を1.67g含有するジニトロジアミン白金水溶液、ロジウムを0.33g含有する硝酸ロジウム水溶液を混合した溶液に実施例1で用いた活性アルミナ200gを含浸担持した粉体、および実施例1で用いたセリウム酸化物100gを加え、ボールミルで湿式粉砕後、上記の手順と同様にして完成触媒(II)を得た。
【0094】完成触媒の浄化率測定上記の触媒調製で得られた完成触媒(I)および(II)を組み合わせて実施例に該当する触媒、すなわち、実施例の組み合わせ(1)である前段触媒(I)および後段触媒(II)および組み合わせ(2)である前段触媒(II)および後段触媒(I)並びに比較例の組み合わせ(3)である前段触媒(II)および後段触媒(II)の3種類の組み合わせについて、実施例21と同様の評価方法により、CO、HCおよびNOxの浄化率を求めた結果を表4に示した。
【0095】
【表4】


【0096】
【発明の効果】本発明による排気ガス浄化用触媒は、パラジウム、アルカリ土類金属酸化物、ランタン酸化物、セリウム酸化物およびジルコニウム酸化物よりなる触媒活性成分および活性アルミナよりなる混合物を、モノリス構造担体に担持してなるものであり、アルカリ土類金属酸化物の添加効果は、パラジウムに直接作用し、その電荷状態を変化させることにより、反応性を高めるものと推察され、さらに、セリウム酸化物およびジルコニウム酸化物を用いることにより前記の効果をさらに向上することができるものである。
【0097】すなわち本発明による排気ガス浄化用触媒およびこれを用いてなる排気ガス浄化シムテムは、アルカリ土類金属酸化物、ランタン酸化物、セリウム酸化物およびジルコニウム酸化物をパラジウムと組合わせることにより、パラジウム触媒の問題点であるエンジン排気ガスがリッチな状態でもNOx浄化能を著しく向上させることができ、さらに燃料ガス組成が化学量論比(燃料ガスを完全燃焼させるのに必要な空気量)近傍でもCO、HCおよびNOx浄化能を向上させることができる点においても優れたものであるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 触媒1リットルに対して、パラジウム0.5〜30g、アルカリ土類金属酸化物0.1〜50g、ランタン酸化物0.1〜50g、セリウム酸化物10〜150gおよびジルコニウム酸化物0.1〜50gよりなる触媒活性成分、および活性アルミナ10〜300gよりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる内燃機関の排気ガスから一酸化炭素、炭化水素類および窒素酸化物を同時に除去するための排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】 該セリウム酸化物と該ジルコニウム酸化物とは、少なくとも一部が複合物または固溶体として存在してなる請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】 該セリウム酸化物と該ジルコニウム酸化物の比(酸化物換算重量比)が100:2〜100:60である請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】 該セリウム酸化物と該ジルコニウム酸化物との少なくとも一部の複合物または固溶体は、900℃の温度で空気中で10時間焼成した後に、その結晶子径が250オングストローム以下である請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項5】 該セリウム酸化物と該ジルコニウム酸化物との少なくとも一部の複合物または固溶体は、900℃の温度で空気中で10時間焼成した後に、500℃で30分間の水素還元後の400℃での酸素消費量が、該セリウム酸化物1g当り5×10-5モル(O2 換算)以上である請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項6】 排気ガス流入側の触媒として請求項1〜5のいずれかに記載の触媒を、また排気ガス流出側の触媒として(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を配置してなる排気ガス浄化システム。
【請求項7】 排気ガス流入側の触媒として(a)ロジウムおよび白金または(b)ロジウム、白金およびパラジウムよりなる触媒活性成分および耐火性無機酸化物よりなる混合物をモノリス構造担体に担持してなる触媒を、また排気ガス流出側の触媒として請求項1〜5のいずれかに記載の触媒を配置してなる排気ガス浄化システム。