排気ガス浄化用触媒の製造方法
【課題】金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成する、排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【解決手段】耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成する、排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒の製造方法に関し、より詳しくは、金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒、例えばオートバイ等の内燃機関排気ガス雰囲気で長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガス中には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。それで、従来から、これら有害成分を浄化して無害化する三元触媒が用いられている。
【0003】
このような三元触媒として、Pt、Pd、Rh等の貴金属とアルミナ、セリア、ジルコニア又はこれらの複合酸化物とを任意に組み合わせてセラミックス又は金属等のハニカム担体上に塗布したものがある。例えば、アパタイト型構造を有する複合酸化物を含む排ガス浄化用触媒が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、ステンレススチール等の金属材料からなる担体に直接に担持させると温度変化、振動等により剥離しやすいという問題がある。その対策として、例えば、微粒子の存在下で機械的エネルギーを金属担体に付与することで、金属担体の表面に耐酸化性を有する表面層を形成させて触媒層と金属担体との接触を抑え、さらに、金属担体の表面を凹凸状に形成させて表面層上に形成される触媒層との界面を凹凸状とし、両者の剥離が生じにくくすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平06−055075号公報
【特許文献2】特開平11−197507号公報
【特許文献3】特開2004−321906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、固形分の平均粒子径が特定範囲内にあり且つ粘度が特定範囲内にあるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布することにより上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法は、耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法により得られる排気ガス浄化用触媒は、金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れており、室温−−900℃以上の高温−−室温の熱処理サイクルを繰り返しても剥離脱落量が少ないので、過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載する)で用いるスラリーは、耐熱性アルミナ、酸素貯蔵剤として機能するセリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるものである。
【0011】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなるが、スラリー中の固形分の平均粒子径が3μm未満であるか又は10μmを超えるスラリーや、スラリーの粘度が300mPa・s未満であるか又は2000mPa・sを超えるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布すると、得られる排気ガス浄化用触媒の層の耐剥離性が改良されず、過酷な熱条件下又は振動条件下で使用すると剥離脱落が生じ、優れた浄化性能を発揮することはできない。従って、本発明の製造方法においては、耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを用いる。
【0012】
固形分の平均粒子径が3〜10μmであるスラリーは、平均粒子径が3〜10μmである耐熱性アルミナ粒子及び平均粒子径が3〜10μmであるセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を用いてスラリーを調製することにより得ることができるが、耐熱性アルミナ粒子及びセリア−ジルコニア複合酸化物粒子の何れか一方又は両方の平均粒子径が10μmよりも大きいものを用い、それらとバインダー及び水からなる混合物を湿式粉砕して固形分の平均粒子径を3〜10μmとし、且つ粘度調整剤を添加して粘度を300〜2000mPa・sとすることにより得ることもできる。
【0013】
本発明の製造方法においては、好ましくは、耐熱性アルミナ:セリア−ジルコニア複合酸化物:バインダーの質量比が20〜80質量%:10〜50質量%:10〜30質量%であるスラリーを用いる。この配合比から外れる場合には排気ガス浄化用触媒の性能、耐剥離性等が低下する傾向がある。
【0014】
本発明の製造方法においては、バインダーとして排気ガス浄化用触媒の製造に用いられている任意のバインダーを用いることができる。
【0015】
本発明の製造方法においては、スラリーの粘度を300〜2000mPa・sに調整することができるものであればいかなる粘度調整剤も用いることができるが、粘度調整剤として界面活性剤をスラリーの0.1〜10質量%を占める量で用いることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては、ステンレス等の金属材料からなる担体を用いるが、金属材料からなる担体を用いることが必須と言うよりも金属材料からなる担体を用いる場合に問題となる耐剥離性を改善することが本発明の目的である。本発明の製造方法で用いる担体の形状は、特に限定されるものではなく、一般的にはハニカム、板、ペレット、針金等の形状であり、好ましくはハニカム形状である。
【0017】
本発明の製造方法においては、上記のようなスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、例えば300〜600℃で0.5〜5時間焼成する。このことにより耐熱性アルミナ及びセリア−ジルコニア複合酸化物が金属材料からなる担体に強固に担持される。
【0018】
本発明の製造方法においては、貴金属触媒成分としてPt、Pd、Rh等を用いることができるが、より良い触媒性能を達成するために貴金属触媒成分としてPt及びPdの少なくとも1種とRhとを(Pt+Pd)/Rhの質量比で1/1〜20/1となる量で用いることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法においては、上記の耐熱性アルミナ及びセリア−ジルコニア複合酸化物を担持している金属材料からなる担体を、貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、例えば300〜600℃で0.5〜5時間焼成する。
【0020】
本発明の製造方法で得られる排気ガス浄化用触媒は耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮し、また、例えば1000℃で5時間熱処理した後においてもBET比表面積の低下の程度が小さいので高い排ガス浄化性能を維持することができる。
【0021】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明する。
実施例1
BET比表面積が120m2/gで平均粒子径が30μmである耐熱性アルミナ(Al2O3換算で純度95%以上)55g、BET比表面積が60m2/gで平均粒子径が10μmであるセリアージルコニア複合酸化物粒子30g、アルミナコロイドを主成分とするバインダー(アルミナ酸化物換算で)15g及び蒸留水180gをボールミルに入れ、8時間湿式粉砕し、更にノニオン表面活性剤5.0gを加えて均一に混合してウオシュコート液を得た。このウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は8.5μmであり、粘度は700mPa・sであった。
【0022】
ステンレス製ハニカム担体(300セル、容量150cc)を上記のウオシュコート液に浸漬した後、エアブローでハニカム担体のセル中の余分のウオシュコート液を除去し、乾燥させ、520℃で1時間焼成した。この処理によってステンレス製ハニカム担体に担持された無機物の量は完成触媒1リッター当たり200gであった。次に、塩化白金酸H2PtCl6溶液及び塩化ロジウム溶液を蒸留水で希釈し、この希釈した水溶液中に上記の無機物を担持したハニカム担体を浸漬した後、エアブローでセル中の余分の溶液を除去し、乾燥させ、520℃で1時間焼成して完成触媒を得た。この触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0023】
実施例2
湿式粉砕時間を8時間から16時間に変更した以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は5.0μmであり、粘度は1100mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0024】
比較例1
湿式粉砕時間を8時間から32時間に変更した以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は2.5μmであり、粘度は2800mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0025】
比較例2
耐熱性アルミナ54gの代わりに耐熱処理をしていないアルミナ64gを用い、セリアージルコニア複合酸化物粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は12.2μmであり、粘度は280mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0026】
<耐剥離性試験>
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各々の排気ガス浄化用触媒について質量を測定した。次いで800℃に保持された電気炉中で30分間加熱した後、電気炉から取り出し、室温で30分間冷却する加熱−冷却サイクルを2回繰り返した。その後、同じ加熱条件でもう一度加熱した後、電気炉から取り出し、水中に投入して急冷し、その後、純水を張った超音波洗浄機で30分間超音波処理し、200℃で乾燥させた後再び質量を測定し、処理前後の質量の差から剥離量を計算し、耐剥離性を評価した。それらの結果を粉砕時間、平均粒子径、粘度と共に第1表に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
<排ガス浄化性能試験>
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各々の排気ガス浄化用触媒を900℃で10%H2Oの空気雰囲気に保持された電気炉中で25時間加熱した後、電気炉から取り出して室温まで冷却し、次いで、反応器に取り付けて、下記第2表に示す組成のモデルガスを25L/minの速度で流通させ、昇温10℃/min、100〜400℃の温度条件下での排ガス浄化性能を評価した。その結果は下記の第3表に示す通りであった。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒の製造方法に関し、より詳しくは、金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒、例えばオートバイ等の内燃機関排気ガス雰囲気で長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガス中には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。それで、従来から、これら有害成分を浄化して無害化する三元触媒が用いられている。
【0003】
このような三元触媒として、Pt、Pd、Rh等の貴金属とアルミナ、セリア、ジルコニア又はこれらの複合酸化物とを任意に組み合わせてセラミックス又は金属等のハニカム担体上に塗布したものがある。例えば、アパタイト型構造を有する複合酸化物を含む排ガス浄化用触媒が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、ステンレススチール等の金属材料からなる担体に直接に担持させると温度変化、振動等により剥離しやすいという問題がある。その対策として、例えば、微粒子の存在下で機械的エネルギーを金属担体に付与することで、金属担体の表面に耐酸化性を有する表面層を形成させて触媒層と金属担体との接触を抑え、さらに、金属担体の表面を凹凸状に形成させて表面層上に形成される触媒層との界面を凹凸状とし、両者の剥離が生じにくくすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平06−055075号公報
【特許文献2】特開平11−197507号公報
【特許文献3】特開2004−321906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する排気ガス浄化用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、固形分の平均粒子径が特定範囲内にあり且つ粘度が特定範囲内にあるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布することにより上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法は、耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法により得られる排気ガス浄化用触媒は、金属材料からなる担体上に直接に設けられているが耐剥離性に優れており、室温−−900℃以上の高温−−室温の熱処理サイクルを繰り返しても剥離脱落量が少ないので、過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の排気ガス浄化用触媒の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載する)で用いるスラリーは、耐熱性アルミナ、酸素貯蔵剤として機能するセリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるものである。
【0011】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなるが、スラリー中の固形分の平均粒子径が3μm未満であるか又は10μmを超えるスラリーや、スラリーの粘度が300mPa・s未満であるか又は2000mPa・sを超えるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布すると、得られる排気ガス浄化用触媒の層の耐剥離性が改良されず、過酷な熱条件下又は振動条件下で使用すると剥離脱落が生じ、優れた浄化性能を発揮することはできない。従って、本発明の製造方法においては、耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを用いる。
【0012】
固形分の平均粒子径が3〜10μmであるスラリーは、平均粒子径が3〜10μmである耐熱性アルミナ粒子及び平均粒子径が3〜10μmであるセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を用いてスラリーを調製することにより得ることができるが、耐熱性アルミナ粒子及びセリア−ジルコニア複合酸化物粒子の何れか一方又は両方の平均粒子径が10μmよりも大きいものを用い、それらとバインダー及び水からなる混合物を湿式粉砕して固形分の平均粒子径を3〜10μmとし、且つ粘度調整剤を添加して粘度を300〜2000mPa・sとすることにより得ることもできる。
【0013】
本発明の製造方法においては、好ましくは、耐熱性アルミナ:セリア−ジルコニア複合酸化物:バインダーの質量比が20〜80質量%:10〜50質量%:10〜30質量%であるスラリーを用いる。この配合比から外れる場合には排気ガス浄化用触媒の性能、耐剥離性等が低下する傾向がある。
【0014】
本発明の製造方法においては、バインダーとして排気ガス浄化用触媒の製造に用いられている任意のバインダーを用いることができる。
【0015】
本発明の製造方法においては、スラリーの粘度を300〜2000mPa・sに調整することができるものであればいかなる粘度調整剤も用いることができるが、粘度調整剤として界面活性剤をスラリーの0.1〜10質量%を占める量で用いることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては、ステンレス等の金属材料からなる担体を用いるが、金属材料からなる担体を用いることが必須と言うよりも金属材料からなる担体を用いる場合に問題となる耐剥離性を改善することが本発明の目的である。本発明の製造方法で用いる担体の形状は、特に限定されるものではなく、一般的にはハニカム、板、ペレット、針金等の形状であり、好ましくはハニカム形状である。
【0017】
本発明の製造方法においては、上記のようなスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、例えば300〜600℃で0.5〜5時間焼成する。このことにより耐熱性アルミナ及びセリア−ジルコニア複合酸化物が金属材料からなる担体に強固に担持される。
【0018】
本発明の製造方法においては、貴金属触媒成分としてPt、Pd、Rh等を用いることができるが、より良い触媒性能を達成するために貴金属触媒成分としてPt及びPdの少なくとも1種とRhとを(Pt+Pd)/Rhの質量比で1/1〜20/1となる量で用いることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法においては、上記の耐熱性アルミナ及びセリア−ジルコニア複合酸化物を担持している金属材料からなる担体を、貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、例えば300〜600℃で0.5〜5時間焼成する。
【0020】
本発明の製造方法で得られる排気ガス浄化用触媒は耐剥離性に優れていることにより過酷な熱条件下及び振動条件下でも長時間にわたって優れた浄化性能を発揮し、また、例えば1000℃で5時間熱処理した後においてもBET比表面積の低下の程度が小さいので高い排ガス浄化性能を維持することができる。
【0021】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明する。
実施例1
BET比表面積が120m2/gで平均粒子径が30μmである耐熱性アルミナ(Al2O3換算で純度95%以上)55g、BET比表面積が60m2/gで平均粒子径が10μmであるセリアージルコニア複合酸化物粒子30g、アルミナコロイドを主成分とするバインダー(アルミナ酸化物換算で)15g及び蒸留水180gをボールミルに入れ、8時間湿式粉砕し、更にノニオン表面活性剤5.0gを加えて均一に混合してウオシュコート液を得た。このウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は8.5μmであり、粘度は700mPa・sであった。
【0022】
ステンレス製ハニカム担体(300セル、容量150cc)を上記のウオシュコート液に浸漬した後、エアブローでハニカム担体のセル中の余分のウオシュコート液を除去し、乾燥させ、520℃で1時間焼成した。この処理によってステンレス製ハニカム担体に担持された無機物の量は完成触媒1リッター当たり200gであった。次に、塩化白金酸H2PtCl6溶液及び塩化ロジウム溶液を蒸留水で希釈し、この希釈した水溶液中に上記の無機物を担持したハニカム担体を浸漬した後、エアブローでセル中の余分の溶液を除去し、乾燥させ、520℃で1時間焼成して完成触媒を得た。この触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0023】
実施例2
湿式粉砕時間を8時間から16時間に変更した以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は5.0μmであり、粘度は1100mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0024】
比較例1
湿式粉砕時間を8時間から32時間に変更した以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は2.5μmであり、粘度は2800mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0025】
比較例2
耐熱性アルミナ54gの代わりに耐熱処理をしていないアルミナ64gを用い、セリアージルコニア複合酸化物粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様に処理した。得られたウオシュコート液中の固形分の平均粒子径は12.2μmであり、粘度は280mPa・sであった。実施例1と同様に処理し得られた触媒はPtを1.5g/L、Rhを0.3g/L担持していた。
【0026】
<耐剥離性試験>
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各々の排気ガス浄化用触媒について質量を測定した。次いで800℃に保持された電気炉中で30分間加熱した後、電気炉から取り出し、室温で30分間冷却する加熱−冷却サイクルを2回繰り返した。その後、同じ加熱条件でもう一度加熱した後、電気炉から取り出し、水中に投入して急冷し、その後、純水を張った超音波洗浄機で30分間超音波処理し、200℃で乾燥させた後再び質量を測定し、処理前後の質量の差から剥離量を計算し、耐剥離性を評価した。それらの結果を粉砕時間、平均粒子径、粘度と共に第1表に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
<排ガス浄化性能試験>
実施例1、2及び比較例1、2で得られた各々の排気ガス浄化用触媒を900℃で10%H2Oの空気雰囲気に保持された電気炉中で25時間加熱した後、電気炉から取り出して室温まで冷却し、次いで、反応器に取り付けて、下記第2表に示す組成のモデルガスを25L/minの速度で流通させ、昇温10℃/min、100〜400℃の温度条件下での排ガス浄化性能を評価した。その結果は下記の第3表に示す通りであった。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成することを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
耐熱性アルミナ:セリア−ジルコニア複合酸化物:バインダーの質量比が20〜80質量%:10〜50質量%:10〜30質量%であるスラリーを用いる請求項1記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
粘度調整剤として界面活性剤をスラリーの0.1〜10質量%を占める量で用いる請求項1又は2記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
貴金属触媒成分としてPt及びPdの少なくとも1種とRhとを(Pt+Pd)/Rhの質量比で1/1〜20/1となる量で用いる請求項1〜3の何れかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー及び水からなる混合物を湿式粉砕して固形分の平均粒子径を3〜10μmとし、且つ粘度調整剤を添加して粘度を300〜2000mPa・sとしたスラリーを用いる請求項1〜4の何れかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項1】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー、粘度調整剤及び水からなり、固形分の平均粒子径が3〜10μmであり且つ粘度が300〜2000mPa・sであるスラリーを金属材料からなる担体上に直接に塗布し、乾燥させ、焼成し、次いでこの焼成物を貴金属触媒成分含有溶液中に浸漬し、乾燥させ、焼成することを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
耐熱性アルミナ:セリア−ジルコニア複合酸化物:バインダーの質量比が20〜80質量%:10〜50質量%:10〜30質量%であるスラリーを用いる請求項1記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
粘度調整剤として界面活性剤をスラリーの0.1〜10質量%を占める量で用いる請求項1又は2記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
貴金属触媒成分としてPt及びPdの少なくとも1種とRhとを(Pt+Pd)/Rhの質量比で1/1〜20/1となる量で用いる請求項1〜3の何れかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
耐熱性アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物、バインダー及び水からなる混合物を湿式粉砕して固形分の平均粒子径を3〜10μmとし、且つ粘度調整剤を添加して粘度を300〜2000mPa・sとしたスラリーを用いる請求項1〜4の何れかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【公開番号】特開2010−89021(P2010−89021A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262219(P2008−262219)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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