説明

排気ガス浄化装置

【課題】低電圧でアンモニアを電解合成し、電解合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することのできる排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】電解合成装置11は、箱状の容器21と、容器21に貯留された溶融塩22と、容器21内に設けられた陽極23及び陰極24と、陽極23及び陰極24間に電解電圧を印加する電源25とを備えている。容器21には、水タンク12から供給される水が流通する水供給管26が接続され、水供給管26の先端部分が陽極23の下端部付近に位置している。また、容器21には、窒素分離膜14から供給される窒素が流通する窒素供給管27が接続され、窒素供給管27の先端部分が陰極24の下端部付近に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に係り、特に、アンモニアを還元剤として窒素酸化物(NOx)を選択的に還元する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるNOxを低減するために、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが開発されている。尿素SCRシステムの基本構成は、一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)にするための酸化触媒と、酸化触媒の下流側に設けられ、排気ガス中のパティキュレートマター(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)と、尿素水から生成したアンモニアとNOxとの化学反応により、NOxを窒素及び水に還元するためのSCR触媒と、SCR触媒に尿素水を添加するための尿素添加システムと、SCR触媒の下流側に設けられ、SCR触媒における化学反応で消費されずに残ったアンモニアを酸化するためのASC(Ammonia Slip Catalyst)触媒とから構成される。
【0003】
しかし、尿素水を添加するためにインジェクターを設ける場合、尿素の析出によってインジェクターが詰まるおそれがある。また、排気ガス中に液体である尿素水が添加されるため、尿素水の分散具合によってNOxの浄化率が変化してしまうおそれがある。さらに、排気ガスの温度が低い場合には、尿素の加水分解の進行が遅いためアンモニアの生成量が少なく、NOx浄化率が低くなるといった問題点があった。そもそも、排気ガス中に尿素水が添加されることにより、排気ガスの温度が低下してしまうので、尿素の加水分解に必要な昇温が遅くなるという問題点もあった。
【0004】
尿素水を添加することのこれらの問題点を考慮すると、NOxの還元反応に必要なアンモニアを直接添加するほうが好ましいと考えられる。アンモニアを直接添加するためには、アンモニアを充填したボンベを搭載するか、加水分解触媒を用いて燃料である軽油をアンモニアに改質する等が必要である。しかし、ボンベを搭載すると装置が大型化するという問題点がある。また、軽油をアンモニアに改質すると燃費が低下するといった問題点がある。
【0005】
これらの問題点を解決するためには、簡単な構成でアンモニアを生成することのできる装置が必要となる。特許文献1には、アンモニアを合成する装置に係る発明が記載されている。この装置は、板状の陰極、固体電解質、陽極、触媒層を積層して構成されている。陰極に窒素ガスを接触させると共に触媒層に水素を接触させて、固体電解質に電圧を加えると、固体電解質において窒素イオンが生成され、この窒素イオンから原子状窒素が生成される。触媒層では、水素ガスが吸着し、触媒作用によって原子状水素が生成される。生成された原子状窒素及び原子状水素が結合することでアンモニアが合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−272856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、陰極と陽極との間に、DC100Vといった高い電圧を加える必要があるといった問題点があった。
【0008】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、低電圧でアンモニアを電解合成し、電解合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することのできる排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る排気ガス浄化装置は、内燃機関から排出されて排気管を流通する排気ガス中のNOxを還元するSCR触媒と、SCR触媒によってNOxを還元するための還元剤であるアンモニアを供給するアンモニア供給装置とを備え、アンモニア供給装置は、溶融塩を収容すると共に溶融塩中に陰極及び陽極を設け、陰極及び陽極間に電圧を加えて、水又は水素と窒素とからアンモニアを電解合成する電解合成装置と、水又は水素を電解合成装置の陽極に向けて供給する水供給手段又は水素供給手段と、窒素を電解合成装置の陰極に向けて供給する窒素供給手段と、排気管においてSCR触媒よりも上流に設けられ、電解合成されたアンモニアを排気ガス中に供給するアンモニア供給手段とを備える。水又は水素と窒素とから溶融塩中でアンモニアを電解合成することにより、低電圧でアンモニアが電解合成可能となる。
アンモニア供給装置は、電解合成されたアンモニアの一部を蓄積すると共に蓄積されたアンモニアを放出するアンモニア蓄積放出部を備えてもよい。
アンモニア供給装置は水素供給手段を備え、水素供給手段はヒドロゲナーゼを備えてもよい。
窒素供給手段は窒素分離膜を備え、窒素分離膜によって空気から抽出された窒素が電解合成装置の陰極に向けて供給されてもよい。
内燃機関はガソリンエンジンであり、排気管には、SCR触媒よりも上流側に三元触媒が設けられ、アンモニア供給手段は、排気管において三元触媒の上流またはSCR触媒の上流に設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、水又は水素と窒素とから溶融塩中でアンモニアを電解合成することにより、低電圧でアンモニアを電解合成可能となり、電解合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排気ガス浄化装置の構成模式図である。
【図2】実施の形態1に係る排気ガス浄化装置の電解合成装置の構成模式図である。
【図3】実施の形態2に係る排気ガス浄化装置の構成模式図である。
【図4】実施の形態2に係る排気ガス浄化装置の水素供給手段の変形例である。
【図5】実施の形態3に係る排気ガス浄化装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に示されるように、内燃機関であるディーゼルエンジン1から排出された排気ガスが流通する排気管2に、酸化触媒3と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)4と、SCR触媒5と、ASC触媒6とが設けられている。排気管2には、ASC触媒6の下流側に、排気ガス中のアンモニア濃度を検出するためのアンモニア検出手段であるアンモニアセンサ7と、DPF4とSCR触媒5との間に、排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOx検出手段であるNOxセンサ8とが設けられている。
【0013】
DPF4から流出しSCR触媒5に流入する排気ガス中にアンモニアを供給するために、アンモニア供給装置10が設けられている。アンモニア供給装置10は、電解合成装置11と、水を貯留する水タンク12と、水タンク内の水を電解合成装置11に供給するポンプ13と、電解合成装置11に窒素を供給する窒素供給手段である複数の中空糸状の窒素分離膜14と、排気管2においてDPF4とSCR触媒5との間に設けられたアンモニア供給手段であるインジェクター15とを備えている。尚、アンモニア供給手段としては、図示しないポンプや、排気管2の形状等により、排気ガスとアンモニアガスとの差圧を発生させる手段も含む。水タンク12及びポンプ13は、電解合成装置11に水を供給する水供給手段を構成する。電解合成装置11とインジェクター15とを連通する配管16には、バイパス配管17が設けられ、バイパス配管17には、2つのバルブ18,19が設けられ、バルブ18,19間には、アンモニア吸着材20が設けられている。バルブ18,19とアンモニアセンサ7とNOxセンサ8はそれぞれ、制御装置であるECU9に電気的に接続されている。ECU9には、アンモニアセンサ7及びNOxセンサ8の検出値それぞれについての上限値が設定されている。
【0014】
バイパス配管17とバルブ18,19とアンモニア吸着材20とは、電解合成されたアンモニアの一部を蓄積すると共に蓄積されたアンモニアを放出するアンモニア蓄積放出部を構成する。アンモニア吸着材20には、Mg(NHCl、Ca(NHCl、Sr(NHCl等の金属アミンハロゲン化物や、(NHCO、NHCOONH、(NH)HCO等のアンモニウム塩や、NaBO、LiBO、LiO、NaO、Na等の酸化物や、3次元的構造を有するフラーレンなどの高分子材料や、吸湿性の高分子材料等が使用可能である。これらは、100℃以下の常圧で、アンモニアを吸蔵・吸着及び放出が可能である。
【0015】
図2に示されるように、電解合成装置11は、箱状の容器21と、容器21に貯留された溶融塩22と、容器21内に設けられた陽極23及び陰極24と、陽極23及び陰極24間に電解電圧を印加する電源25とを備えている。容器21には、水タンク12(図1参照)から供給される水が流通する水供給管26が接続され、水供給管26の先端部分が陽極23の下端部付近に位置している。また、容器21には、窒素分離膜14(図1参照)から供給される窒素が流通する窒素供給管27が接続され、窒素供給管27の先端部分が陰極24の下端部付近に位置している。
【0016】
容器21に貯留される溶融塩22として、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物若しくはこれらの混合物、又は、イオン液体を使用することができる。アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム等が挙げられる。また、アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム等が挙げられる。イオン液体としては、イミダゾリウム塩類やピリジニウム塩類などのアンモニウム系または四級アンモニウム系やアミン類、ホスホニウム系イオン、無系イオン等の陽イオンと、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系等の陰イオンとを組み合わせたものが挙げられる。
【0017】
次に、実施の形態1に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。
図1に示されるように、ディーゼルエンジン1の始動後、排気ガスは排気管2を流通する。排気ガスが酸化触媒3を流通することにより、排気ガス中のNOの一部がNOに酸化される。続いて排気ガスがDPF4を流通することにより、排気ガス中のパティキュレートマター(PM)がDPF4に捕捉される。DPF4から流出した排気ガスは、SCR触媒5に流入する。後述する動作により、アンモニア供給装置10は、SCR触媒5にアンモニアガスを供給する。SCR触媒5において、アンモニアと排気ガス中のNOxとが反応して、窒素(N)及び水(HO)となる。SCR触媒5において消費されずに残ったアンモニアは、ASC触媒6において酸化される。このようにしてNOxが浄化された排気ガスは、排気管2を流通して大気中へ排気される。
【0018】
次に、アンモニア供給装置10がアンモニアガスを供給する動作について説明する。
ディーゼルエンジン1の始動後、ポンプ13が起動して水タンク12内の水を電解合成装置11に供給する共に、大気中の空気が窒素分離膜14内に流入し、窒素分離膜14において空気から窒素のみが分離されて窒素が電解合成装置11に供給される。電解合成装置11には、図示しない加熱手段が配置され、図2に示されるように、溶融塩22が200℃以上で溶融状態となり、電源25が起動して陽極23及び陰極24間に1.2Vの電解電圧を印加すると、水供給管26を介して陽極23の下端部付近に供給された水が電気分解されて、陽極23では以下の反応によって酸素が発生する。
2O2− → O+4e ・・・(1)
尚、加熱手段は排気ガスの熱を利用したものや電気ヒーター等を単独・併用で用いても良い。尚、加熱手段は溶融塩22が例えばイオン液体など、使用温度において液体であれば不要である。
また、窒素供給管27を介して陰極24の下端部付近に供給された窒素が電気分解されて、陰極24では以下の反応が生じる。
+6e → 2N3− ・・・(2)
さらに、溶融塩22中では、以下の反応が生じる。
2N3−+3HO → NH+3O2− ・・・(3)
上記(1)〜(3)により以下の反応が生じることとなり、電解合成装置11においてアンモニアが電解合成される。
+3HO → 2NH+3/2O ・・・(4)
【0019】
図1に示されるように、ディーゼルエンジン1の始動後、NOxセンサ8及びアンモニアセンサ7はそれぞれ、排気ガス中のNOx濃度及びアンモニア濃度を検出し、その検出値はECU9に伝送される。NOxセンサ8による検出値が、ECU9に設定された上限値未満のときには、ECU9はバルブ18及び19を開ける。すると、電解合成装置11において電解合成されたアンモニアは、配管16及びバイパス配管17の両方を流通する。バイパス配管17を流通するアンモニアは、アンモニア吸着材20によって少なくとも一部が吸着され、残りのアンモニアが、配管16を流通するアンモニアと合流した後インジェクター15によって、DPF4から流出した排気ガス中に供給され、排気ガスと共にSCR触媒5に流入する。すなわち、NOxセンサ8による検出値が上記上限値未満のときは、電解合成装置11において電解合成されたアンモニアの一部をアンモニア吸着材20に蓄積し、残りのアンモニアを排気ガス中に供給する。
【0020】
これに対し、NOxセンサ8による検出値が上記上限値以上となったら、ECU9はバルブ18のみを閉める。すると、電解合成装置11において電解合成されたアンモニアはバイパス配管17を流通しなくなるので、電解合成されたアンモニアの全てが配管16を介して排気ガス中に供給される。それに加え、アンモニア吸着材20からは、吸着されていたアンモニアが放出され、放出されたアンモニアは、配管16を流通するアンモニアと共に排気ガス中に供給される。すなわち、NOxセンサ8による検出値が上記上限値以上のときは、電解合成されたアンモニアの全てに加えてアンモニア吸着材20に吸着されていたアンモニアが排気ガス中に供給されるので、NOxセンサ8による検出値が上記上限値未満のときと比べてアンモニアの供給量が増加するので、NOxの還元量も増加し、排気ガス中のNOx濃度の上昇に対処することができる。
【0021】
また、アンモニアセンサ7による検出値が上限以上となったら、SCR触媒5で使用されず、かつ、ASC触媒6でも酸化しきれないほどの過剰のアンモニアが排気ガス中に供給されていることになる。この場合、バルブ18が閉じているときには、ECU9はバルブ18を開き、電解合成装置11において電解合成されたアンモニアの一部がバイパス配管17を流通するようにして、その一部をアンモニア吸着材20に吸着させ、排気ガス中へのアンモニアの供給量を低下させる。
尚、ディーゼルエンジン1が停止するときには、アンモニア吸着材20に吸着したアンモニアが放出されないようにするために、ECU9は、バルブ18及び19を閉める。
【0022】
このように、水と窒素とから溶融塩22中でアンモニアを電解合成することにより、低電圧でアンモニアを電解合成可能となり、電解合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することができる。
【0023】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置について説明する。尚、以下の実施の形態において、図1及び2の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置は、実施の形態1に対して、水素と窒素とからアンモニアを電解合成するように変更したものである。
【0024】
図3に示されるように、アンモニア供給装置10は、電解合成装置11と、電解合成装置11に水素を供給する水素供給手段である水素吸蔵合金ボンベ30と、窒素分離膜14と、インジェクター15とを備えている。水素吸蔵合金ボンベ30と電解合成装置11とは、水素供給管31によって連通されており、水素供給管31は、実施の形態1の水供給管26(図2参照)と同じように、その先端部分が陽極23(図2参照)の下端部付近に位置している。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0025】
水素吸蔵合金ボンベ30は、水素を吸蔵可能な水素供給合金を充填したボンベである。水素吸蔵合金は、白金族元素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ランタン族元素、アルカリ土類金属元素などの発熱型金属(以下、Aとする)と、ニッケル、鉄、コバルト、マンガンなどの水素との親和力を持たない吸熱型金属(以下、Bとする)とから構成され、LaNiやCaNiなどのAB5型、MgZnやZrNiはどのAB2型、TiFeやTiNiなどのAB型、MgNiやCaFeなどのA2B型、Ti−VやV−Nbなどの固溶体型等を使用できる。
【0026】
次に、実施の形態2に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。尚、電解合成装置11におけるアンモニアの電解合成の動作以外については実施の形態1と同じであるので、電解合成装置11におけるアンモニアの電解合成の動作についてのみ、図2及び3に基づいて説明する。
【0027】
ディーゼルエンジン1の始動後、水素吸蔵合金ボンベ30の図示しないバルブを開いて水素を電解合成装置11に供給する共に、大気中の空気が窒素分離膜14内に流入し、窒素分離膜14において空気から窒素のみが分離されて窒素が電解合成装置11に供給される。電解合成装置11には、図示しない加熱手段が配置され、溶融塩22が例えば200℃以上で溶融状態となり、電源25が起動して陽極23及び陰極24間に0.05Vの電解電圧を印加すると、水素供給管31を介して陽極23の下端部付近に供給された水素が電気分解されて、陽極23では以下の反応が生じる。
3H → 6H ・・・(5)
6H+2N3− → 2NH+6e ・・・(6)
また、窒素供給管27を介して陰極24の下端部付近に供給された窒素が電気分解されて、陰極24では以下の反応が生じる。
+6e →2N3− ・・・(7)
上記(5)〜(7)により以下の反応が生じることとなり、電解合成装置11においてアンモニアが電解合成される。
3H+N → 2NH ・・・(8)
【0028】
このように、水素と窒素とから溶融塩22中でアンモニアを電解合成することにより、低電圧でアンモニアを電解合成可能となり、合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することができる。
【0029】
実施の形態2では、水素供給手段として水素吸蔵合金ボンベ30を使用していたが、これに限定するものではない。水素を充てんした水素ボンベを使用してもよい。さらに、化学的又は生化学的に水素を生成し、生成された水素を供給するようにしてもよい。化学的な反応としては、水素が発生する任意の化学反応を利用することができる。生化学的な反応としては、例えば、酵素であるヒドロゲナーゼを用いた反応を利用することができる。ヒドロゲナーゼは、水を原料とし、常温〜60℃で可視光を照射することで、以下の反応により水素を発生する。
2HO → 2H+O ・・・(9)
【0030】
従って、ヒドロゲナーゼを用いた反応を利用する場合には、水素供給手段は、ヒドロゲナーゼを収容した容器と、容器内に可視光を照射する発光源とから構成される。例えば、図4(a)に示されるように、円筒形状の容器50に、数nmレベルの細孔が規則配列している酸化ケイ素から成る円柱形状のメソポーラスシリカ51を収容し、メソポーラスシリカ51の細孔52内にヒドロゲナーゼ53を担持し、容器50の内周面50aに可視光を照射する発光源54を設ける形態であってもよい。容器50内に常温〜60℃の水蒸気を供給すると、その一部がメソポーラスシリカ51内に流入し、反応式(9)によって水素が生成される。この場合、水と水素と酸素とが電解合成装置11に供給されることになるが、水は実施の形態1における反応によって反応し、水素と酸素とは陽極23近傍で分離され、水素のみが陽極23において反応する。また、図4(b)に示されるように、発光源54を容器50の両端部付近に設けてもよい。この場合、対角線状に発光することで相乗効果が期待できる。いずれの場合でも、メソポーラスシリカ51は、発光源54から照射された可視光の一部を透過するので、反応式(9)が進行する。尚、容器50及びメソポーラスシリカ51の形状はそれぞれ、円筒形状及び円柱形状に限定するものではなく、任意の形状であってもよい。
【0031】
実施の形態1及び2では、DPF4をSCR触媒5と別体にしてSCR触媒5の上流に設けていたが、この形態に限定するものではない。多孔質性の基材の表面にPMを捕集する捕集層をコーティングすると共に基材の細孔内にSCR触媒を担持したものを設けてもよい。
【0032】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る排気ガス浄化装置について説明する。
この発明の実施の形態3に係る排気ガス浄化装置は、実施の形態1に対して、内燃機関であるディーゼルエンジン1をガソリンエンジンに変更したものである。
図5に示されるように、内燃機関はガソリンエンジン40である。ガソリンエンジン40から排出された排気ガスが流通する排気管2には、三元触媒41と、SCR触媒5と、ASC触媒6とが設けられている。インジェクター15は、三元触媒41の上流に設けられている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0033】
次に、実施の形態3に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。
ガソリンエンジン40から排出されて排気管2を流通する排気ガスは、三元触媒41に流入すると、排気ガス中の炭化水素及び一酸化炭素(CO)が酸化されると共にNOxが還元される。三元触媒41において排気ガス中のNOxの全てが還元されるわけではないので、三元触媒41から流出した排気ガス中のNOx濃度をNOxセンサ8が検出し、この検出値に基づいて、実施の形態1と同様の動作で、ECU9がバルブ18,19の開閉を制御しながら電解合成装置11において電解合成されたアンモニアがインジェクター15から排気ガス中へ供給される。インジェクター15から供給されたアンモニアガスは、排気ガスとともに三元触媒41に流入し、その一部が還元されて水素が生成する。続いて、水素及びアンモニアがSCR触媒5に流入し、水素及びアンモニアが還元剤となってNOxが還元される。その他の動作については、実施の形態1と同じである。
【0034】
このように、ガソリンエンジン40についても、水と窒素とから溶融塩22中でアンモニアを電解合成することにより、低電圧でアンモニアを電解合成可能となり、電解合成されたアンモニアを還元剤として使用してNOxを還元浄化することができる。
【0035】
実施の形態3では、インジェクター15を三元触媒41の上流に設けたが、この形態に限定するものではない。三元触媒41とSCR触媒5との間にインジェクター15を設けても、インジェクター15から供給されたアンモニアがSCR触媒5において還元剤として働くので、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3では、電解合成装置11において水と窒素とからアンモニアを電解合成したが、この形態に限定するものではない。実施の形態2と同じように、水素と窒素とからアンモニアを電解合成してもよい。
【0036】
実施の形態1〜3では、窒素供給手段として窒素分離膜14を使用したが、これに限定するものではない。窒素を充てんしたボンベを使用してもよい。
実施の形態1〜3では、アンモニアセンサ7及びNOxセンサ8の両方による検出値に基づいてバルブ18の開閉を行っていたが、この形態に限定するものではない。アンモニアセンサ7及びNOxセンサ8のどちから一方のみが設けられ、どちらか一方のみの検出値に基づいてバルブ18の開閉を行ってもよい。また、アンモニアセンサやNOxセンサが無くても、エンジン状態やその他の状態からNOx、アンモニアスリップ量を推定し、バルブ18の開閉を行っても良い。
実施の形態1〜3では、アンモニアセンサ7がASC触媒6の下流に配置されたが、SCR触媒5とASC触媒6の間でも良い。またASC触媒6が無くても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)、2 排気管、5 SCR触媒、6 ASC触媒、7 アンモニアセンサ(アンモニア検出手段)、8 NOxセンサ(NOx検出手段)、10 アンモニア供給装置、11 電解合成装置、12 水タンク(水供給手段)、13 ポンプ(水供給手段)、14 窒素分離膜(窒素供給手段)、15 インジェクター(アンモニア供給手段)、17 バイパス配管(アンモニア蓄積放出部)、18,19 バルブ(アンモニア蓄積放出部)、20 アンモニア吸着材(アンモニア蓄積放出部)、22 溶融塩、23 陽極、24 陰極、30 水素吸蔵合金ボンベ(水素供給手段)、40 ガソリンエンジン(内燃機関)、41 三元触媒、50 容器(水素供給手段)、51 メソポーラスシリカ(水素供給手段)、53 ヒドロゲナーゼ(水素供給手段)、54 発光源(水素供給手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出されて排気管を流通する排気ガス中のNOxを還元するSCR触媒と、
該SCR触媒によってNOxを還元するための還元剤であるアンモニアを供給するアンモニア供給装置と
を備え、
該アンモニア供給装置は、
溶融塩を収容すると共に該溶融塩中に陰極及び陽極を設け、該陰極及び該陽極間に電圧を加えて、水又は水素と窒素とからアンモニアを電解合成する電解合成装置と、
前記水又は前記水素を前記電解合成装置の前記陽極に向けて供給する水供給手段又は水素供給手段と、
前記窒素を前記電解合成装置の前記陰極に向けて供給する窒素供給手段と、
前記排気管において前記SCR触媒よりも上流に設けられ、電解合成されたアンモニアを前記排気ガス中に供給するアンモニア供給手段と
を備える排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記アンモニア供給装置は、電解合成されたアンモニアの一部を蓄積すると共に蓄積されたアンモニアを放出するアンモニア蓄積放出部を備える、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記アンモニア供給装置は水素供給手段を備え、該水素供給手段はヒドロゲナーゼを備える、請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記窒素供給手段は窒素分離膜を備え、該窒素分離膜によって空気から抽出された窒素が前記電解合成装置の前記陰極に向けて供給される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記内燃機関はガソリンエンジンであり、
前記排気管には、前記SCR触媒よりも上流側に三元触媒が設けられ、
前記アンモニア供給手段は、前記排気管において前記三元触媒の上流または前記SCR触媒の上流に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108480(P2013−108480A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256217(P2011−256217)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】