説明

排気ガス測定装置

【課題】排気ガス導入通路の浄化が必要なときに、排気ガス導入通路を適切に浄化可能にする。
【解決手段】排気ガスの一部をガス導入通路16を介してHC分析計14に導き、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定する排気ガス測定装置10は、ガス導入通路16に供給する清浄ガスの流量を調節する流量調節手段40、56、58、60と前記清浄ガスを必要に応じて加熱する加熱手段38とを備えて、流量および温度の調節された清浄ガスを前記ガス導入通路16に供給する清浄ガス供給系統32と、ガス導入通路16を含んで形成された排気ガス導入通路17の浄化を行う際、所定流量の清浄ガスを所定温度で前記ガス導入通路16に供給するように前記清浄ガス供給系統32の前記流量調節手段40、56、58、60および前記加熱手段38を制御する制御手段48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスの一部を抽出し、その排気ガスの炭化水素成分濃度を分析測定する排気ガス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気ガス中には、未燃燃料などの炭化水素成分(HC)、一酸化炭素、NOx、SOxなどの大気汚染の原因となる数多くの成分が含まれている。環境面などから、これらの成分の成分量をより正確に測定して、これらの成分が大気中に排出されないように対策を講じることが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、正確に排出ガス中の成分が定量乃至測定されるように、自動車排出ガス測定装置に測定乃至検査される排出ガスを案内するためのサンプリング導管が開示されている。このものは、排出ガスを案内するチューブ状体の周囲にリボンヒーターを巻き付け、このリボンヒーターによる加熱によりチューブ状体の内部温度を排出ガスの露点温度以上に加熱し、排出ガス中の水分等の凝集を無くすようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、ガス分析計に導入される排ガス中から測定成分が損失されないように、サンプルガス源からのサンプルガスをガス分析計に導入するガスサンプリング装置が開示されている。このものは、サンプルガス源から排出されるガスの温度に関係なく、ガス分析計に導入されるサンプルガスの温度を一定の温度になるように、サンプルガス導入管を内管と外管とから構成し、内管を流れるサンプルガスを、内管と外管との間を流れる加熱された恒温水で調温するようにしている。
【0005】
このような装置においても、排気ガスを導く排気ガス導入通路が汚れていたのでは、正確な排気ガスの分析測定を行うのは困難である。そこで、次回の測定の前に、そのような排気ガス導入通路の浄化を行うことが考えられる。例えば、特許文献3の排気ガス測定装置では、次回の測定に際して正確に排気ガス中のHC濃度を測定するように、上記の如き分析計の一つであるHC濃度計での測定に際して、排気ガス導入通路に洗浄空気を流して、排気ガス導入通路に残留、吸着、脱着するHC成分をパージするようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−308710号公報
【特許文献2】実開平5−71750号公報
【特許文献3】特開平6−207888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば炭化水素成分は、ある程度以上の沸点を有しているので、上記特許文献3のもののように、単に洗浄空気を流すことでは、排気ガス導入通路の十分な浄化(パージ)を図ることが難しい場合がある。
【0008】
そこで、本発明では、排気ガス導入通路の浄化が必要なときに、排気ガス導入通路を適切に浄化可能にする排気ガス測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る排気ガス測定装置は、内燃機関の排気ガスの一部を、ガス導入通路を介してHC分析計に導き、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定する排気ガス測定装置であって、前記ガス導入通路に供給する清浄ガスの流量を調節する流量調節手段と、前記清浄ガスを必要に応じて加熱する加熱手段とを備え、流量および温度の調節された清浄ガスを前記ガス導入通路に供給する清浄ガス供給系統と、前記ガス導入通路を含んで形成された排気ガス導入通路の浄化を行う際、所定流量の清浄ガスを所定温度で前記ガス導入通路に供給するように前記清浄ガス供給系統の前記流量調節手段および前記加熱手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記ガス導入通路を含んで形成された排気ガス導入通路の浄化を行う際、所定流量の清浄ガスが所定温度でガス導入通路に供給されるので、その所定流量の清浄ガスが所定温度で排気ガス導入通路に流通することになる。このように、所定流量の清浄ガスが排気ガス導入通路に流通することで、排気ガス導入通路に吸着等した成分が適切に除かれる。加えて、その清浄ガスが所定温度にされているので適切にその吸着等した成分の離脱が促されて、それらが除かれることになる。すなわち、排気ガス導入通路が適切に浄化され得る。
【0011】
ただし、前記所定流量は、前記HC分析計の吸引流量を超えた流量であり、前記所定温度は、前記HC分析計での分析温度を超えた温度であるのが好ましい。これにより、排気ガス導入通路には過剰に清浄空気が流れることになり、排気ガス導入通路全体に清浄空気を確実に行き渡らせることが可能になって、排気ガス導入通路に吸着等した成分の離脱が適切に促されることになる。さらに、清浄空気はHC分析計での分析温度を超えた温度にされて排気ガス導入通路を流れるので、排気ガス導入通路に吸着等した成分の離脱が適切に促されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。なお、以下の実施形態で説明する排気ガス測定装置は、エンジンベンチでの排気ガスの直接採取測定に用いられる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス測定装置10の概念図であり、図2は、図1の円A内の模式的な拡大断面図である。なお、図1中、各種通路を区画形成する各種の配管等を実線で表し、電気配線等を点線で表した。
【0014】
内燃機関(不図示)の排気管12内には排気ガス(図1中の白抜き矢印)が流れ、その排気ガスの炭化水素成分濃度(HC濃度)を分析測定すべく、排気ガス測定装置10が用いられる。排気ガス測定装置10は、内燃機関の排気ガスの一部をHC分析計14に導いて分析することで、内燃機関の排気ガス中の炭化水素成分濃度を測定する。なお、本実施形態では、内燃機関を、燃料に軽油を用いるディーゼルエンジンとしているが、本発明はこれ以外の各種の内燃機関、例えば火花点火式内燃機関に適用されても良い。
【0015】
HC分析計14は、図示しないが、検出部と、流量制御部と、ポンプ部と、内部導入通路とを備えている。流量制御部とポンプ部とによりHC分析計14に導かれる排気ガスの吸引流量が規定される。そして、その吸引流量に適合した流量の排気ガスは、ガス導入通路16を介して内部導入通路に導かれて分析に供される。なお、本明細書において、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定するために、排気ガスを導く通り路を、総称して「排気ガス導入通路」17と称する。具体的には、この排気ガス導入通路17には、ガス導入通路16と、HC分析計14の内部導入通路が含まれる。
【0016】
ところで、排気ガス中の炭化水素成分は、概ね200℃前後の沸点を有するので、それが気化した状態でHC分析計14に導かれるようにするには、例えば191℃±20℃に排気ガスの温度が保たれることが必要である。そこで、抽出した排気ガスは、後述するように、そのような温度に調節されて分析測定に供される。
【0017】
ガス導入通路16を区画形成するガス導入管18は、HC分析計14に排気ガスの一部を導くべく、排気管12とHC分析計14とを繋げている。ガス導入管18は、温度調節手段としてのヒーター20により加熱される加熱部22と、ヒーター20により加熱されない非加熱部24とからなっている。加熱部22は、排気管12の外表面から下流側のHC分析計14までのところに延在し、この区間にヒーター20が配置されている。ヒーター20は、加熱部22内を通るガスの温度を200℃近傍に調温するように、加熱部22を加熱および保温する。ヒーター20はリボンヒーターであり、ガス導入管18の周囲に巻き付けられるが、本発明はこれ以外の温度調節手段を排除するものではない。
【0018】
ガス導入管18の非加熱部24は、排気ガスの一部を流れに逆らわず、適切に抽出するように排気管12内に位置付けられている。図1から明らかなように、非加熱部24の開口部28は、排気管12の上流側に向けて開口している。それ故、開口部28近傍のガス導入管18の軸線は、排気管12の軸線に概ね平行である。
【0019】
図2に示すように、ガス導入管18の非加熱部24内には、ガス導入通路16を縮径する縮径部30が設けられている。縮径部30は、いわゆるオリフィスを構成する。縮径部30は、開口部28近傍に位置付けられ、その縮径部30において、開口部28からガス導入通路16に導かれた排気ガスの流速を高めると共に、その圧力を下げるべく機能する。
【0020】
さらに、HC分析計14に排気ガスをより確実に調温して導くべく、排気ガス測定装置10には、清浄ガス供給系統32が設けられている。清浄ガス供給系統32は、清浄ガス、本実施形態ではタンク34内に蓄えられている炭化水素成分を含まない清浄空気を、必要に応じて、所定流量に調整しつつ、所定温度に加熱して、ガス導入通路16に供給することを可能にする構成を備えている。具体的には、清浄ガス供給系統32は、タンク34と、このタンク34と非加熱部24とを接続する供給管36と、この供給管36を流れる清浄ガスを必要に応じて加熱する加熱手段38と、清浄ガス供給系統30を流れる清浄ガスの流量を調節制御する流量制御手段40とからなっている。清浄ガス供給系統32がガス導入通路16の上流側先端部分に清浄ガスを供給できるように、供給管36は、非加熱部24であって、縮径部30の最大縮径部位30aよりも下流側のガス導入管18に繋げられている。なお、本実施形態では、図2に示すが如く、縮径部30下流直下に、供給管36の開口部36aが位置付けられている。
【0021】
供給管36は、途中で二系統に分かれて再び合流される構造となっている。ここでは、供給管36の内、タンク34に繋がった一系統である上流側の部分を上流部42とし、ガス導入管18の非加熱部24に繋がった一系統である下流側の部分を下流部44とし、そして、上流部42と下流部44とにより挟まれた二系統になっている中間の部分を中流部46とする。上流部42には流量制御手段40が備えられていて、流量制御手段40は後述する制御装置48により制御される。具体的には、流量制御手段40は、いわゆるレギュレータとなっている。中流部46の二系統は、加熱系統50と非加熱系統52とからなり、その加熱系統50には加熱手段38が設けられている。なお、制御装置48により制御される加熱手段38は、上記温度調節手段としてのヒーター20と同様に、リボンヒーターであるが、他の加熱手段であっても良い。さらに、下流部44には、供給管36を閉止、あるいは開通させるための二方制御弁56が設けられている。また、上流部42と中流部46との連結部、および中流部46と下流部44との連結部には、それぞれ三方制御弁58、60が設けられている。これにより、ガス導入通路16には、加熱系統50を経由させることにより加熱された清浄ガス(以下、加熱清浄ガスと称する。)と、非加熱系統52を経由させることにより加熱されない常温の清浄ガス(以下、常温清浄ガスと称する。)が選択的に供給可能にされる。なお、本実施形態では、流量制御手段40、制御弁56、58、60が、流量調節手段を構成する。
【0022】
排気ガス測定装置10は、ガス導入通路16に導かれた排気ガスそのものの温度を検出するための温度センサ62を備えている。温度センサ62は、非加熱部24であって、縮径部30よりも下流側且つ、供給管36の接続箇所よりも下流側の部分に設けられている。
【0023】
さらに、排気ガス測定装置10は、供給管36の上流部42にタンク34から供給される清浄ガスの温度を検出するための温度センサ64を備えている。本実施形態では、上流部42の内、流量制御手段40よりも下流側の部分に温度センサ64は設けられている。なお、以下において、ガス導入管18に設けられた温度センサ62を第一温度センサと、供給管36に設けられた温度センサ64を第二温度センサと称する。
【0024】
そして、排気ガス測定装置10は、制御装置48を備えている。制御装置48は、制御手段の機能を含んで構成されている。制御装置48は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、上記HC分析計14、上記第一および第二温度センサ62、64が電気的に接続されている。この第一および第二温度センサ62、64からの出力信号に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって排気ガスの炭化水素成分濃度の測定がなされるように、制御装置48は出力インタフェースから電気的に信号を出力して、ヒーター20、加熱手段38、流量制御手段40、制御弁56、58、60の作動を制御するようになっている。
【0025】
まず、本実施形態における排気ガス中の炭化水素成分濃度の測定について概略的に説明する。ガス導入通路16に導かれた排気ガスの温度ETが所定範囲温度であればそのままHC分析計14に導いて、排気ガス測定装置10は、その炭化水素成分濃度を測定する。一方、ガス導入通路16に導かれた排気ガスの温度ETが所定範囲温度になければ、排気ガス測定装置10は、清浄ガスを清浄ガス供給系統32からガス導入通路16に供給して、その排気ガスを所定範囲温度の温度に調温しつつ、HC分析計14に導き、その炭化水素成分濃度を測定する。つまり、所定範囲温度の上限温度UT以上の温度を排気ガスが有している場合には、上記常温清浄ガスをガス導入通路16に供給して排気ガスに混ぜて調温することが行われる。逆に、所定範囲温度の下限温度DT以下の温度を排気ガスが有している場合には、上記加熱清浄ガスをガス導入通路16に供給して排気ガスに混ぜて調温することが行われる。
【0026】
以下に、上記構成である排気ガス測定装置10による排気ガス中の炭化水素成分濃度の測定について、図3のフローチャートに基づいて説明する。ただし、排気ガス測定装置10においては、詳述しないが、HC分析計14での分析は、試験者などにより排気ガス測定装置10の電源がONにされている間、継続的に行われ、HC分析計14からの分析値は制御装置48に送られる。そして、図3のフローチャートにて表しているのは、HC分析計14に調温した排気ガスを導くための制御についてである。なお、制御装置48は、HC分析計14から送られてくる分析値を必要に応じて補正をして、排気ガスの炭化水素成分濃度の測定値とする。
【0027】
HC分析計14では、上述の如く、ガス導入通路16を介しての排気ガスの吸引流量は概ね一定にされていて、所定流量の排気ガスがガス導入通路16を介して抽出されてHC分析計14での分析に供されている。その状態において、ステップS301では、ガス導入通路16に導かれた排気ガスの温度ETが検出される。この排気ガスの温度ETの検出は、第一温度センサ62により行われる。ここでは、検出された排気ガスの温度ETが、200℃であったとして以下の説明を続ける。
【0028】
次いで、ステップS303では、タンク34内に蓄えられている清浄ガスの温度CTが検出される。この清浄ガスの温度CTの検出は、第二温度センサ64により行われる。ここでは、検出された清浄ガスの温度CTが、25℃であったとして以下の説明を続ける。
【0029】
そして、ステップS305へ進み、ステップS301で検出された排気ガスの温度ETが、HC分析計14での分析温度と称すべき、所定範囲温度内の温度か否かが判定される。本実施形態では、この所定範囲温度は、191℃±20℃であり、その境界の温度である上限温度UTおよび下限温度DTを含まないように規定されている。なお、上限温度UTは211℃、下限温度DTは171℃である。ステップS305では、検出した排気ガスの温度ETが上限温度UT以上か否かが判定される。ここでは、排気ガスの温度ETが200℃であるので、否定されて、ステップS307へ進む。
【0030】
ステップS307では、検出した排気ガスの温度ETが下限温度DT以下か否かが判定される。ここでは、排気ガスの温度ETが200℃であるので、否定されて、ステップS309へ進む。ステップS309では、清浄ガス供給系統32からガス導入通路16への清浄ガスの供給を停止させるべく、流量制御手段40に清浄ガス供給量を「0」にするように作動信号が出力されると共に、制御弁56、58、60が閉弁するようにそれらを作動させる不図示のアクチュエータに作動信号が出力される。なお、少なくとも、制御弁56が閉弁されて、清浄ガスの供給が停止されれば良い。
【0031】
以上、排気ガスの温度ETが所定範囲温度の温度であれば、上記の如く、抽出された排気ガスがそのままHC分析計14に導かれて、その炭化水素成分濃度が分析されることになる。そして、この分析値は、そのまま制御装置48に送られて排気ガスの炭化水素成分濃度として記録乃至使用されることになる。
【0032】
一方、例えば、排気ガスの温度ETが所定範囲温度外であり、上限温度UT以上の場合について次に説明する。具体的には、以下、第一温度センサ62により検出された排気ガスの温度ETが700℃であるとして説明する。なお、第二温度センサ64により検出された清浄ガスの温度CTは25℃であるとする。
【0033】
上記ステップS301では排気ガスの温度ETが検出され、ステップS303では清浄ガスの温度CTが検出されて、ステップS305で排気ガスの温度ETが上限温度UT以上と判定されて、ステップS311へ進む。そして、ステップS311に至ると、制御装置48は、ガス導入通路16に導かれた排気ガスの温度ETを下げて所定範囲温度に調温するべく、常温清浄ガスを流す制御を行うことになる。まず、ステップS311に至ると、制御装置48は、ステップS301で検出した排気ガスの温度ETおよびステップS303で検出した清浄ガスの温度CTに基づいて、予め実験により求めてROMに記憶されているマップを検索して、常温清浄ガスの流量を導出する。そして、この流量の常温清浄ガスを供給管36の中流部46の非加熱系統52を介してガス導入通路16に供給するように、制御弁56が開かれ、上流部42と中流部46の非加熱系統52とが連通されるように制御弁58が開かれ、下流部44と中流部46の非加熱系統52とが連通されるように制御弁60が開かれ、そしてその常温清浄ガスの流量が調整されるように流量制御手段40が制御される。この結果、所定流量の常温清浄ガスがガス導入通路16に供給されることになる。
【0034】
ここで、供給される常温清浄ガスの流量について説明する。ガス導入通路16において、排気ガスとそこに供給される常温清浄ガスとが混ざり、HC分析計14にて分析される排気ガスの温度が上記所定範囲温度に調温されるように、常温清浄ガスの流量は求められる。例えば、上記の如く、排気ガスの温度ETが700℃であり、常温清浄ガスの温度が25℃である場合には、常温清浄ガスの流量と排気ガスの流量の比が約3:1(清浄ガスの流量:排気ガスの流量)になるように常温清浄ガスの流量が求められる。そして、この常温清浄ガスの流量が実現されるように、上記の如く流量制御手段40などが制御装置48により制御されることで、例えば排気ガスは194℃にされる。
【0035】
なお、上記の如く、ガス導入管18の非加熱部24に縮径部30が設けられ、その縮径部30の最大縮径部位30aよりも下流側の非加熱部24の部分に常温清浄ガスが供給されるので、常温清浄ガスが低圧になった排気ガスによるエゼクタ(霧吹き)効果によって適切にガス導入通路16に吸引される(図4参照)。さらに、縮径部30を通過した排気ガスが断面積の大きいガス導入通路16に広がることに伴って、ガス導入通路16に吸引された常温清浄ガスが適切に排気ガス中に拡散されて、先端部24において排気ガスと常温清浄ガスとは確実に混合されるという混合効果が発揮される。そして、混合された排気ガスは適切に第一温度センサ62によりその温度が検出されることが可能になり、制御装置48は流量制御手段40などをフィードバック制御可能となる。そして、混合された排気ガスは、均一組成となって、HC分析装置14に至ることになる。なお、上記の如き、エゼクタ効果や混合効果により、常温清浄ガスが、排気管12内に逆流して至ることは防止されるので、常温清浄ガスは排気ガスの調温に有効に用いられることになる。
【0036】
他方、例えば、排気ガスの温度ETが所定範囲温度外であり、下限温度DT以下の場合について次に説明する。具体的には、以下、第一温度センサ62により検出された排気ガスの温度ETが、25℃であるとして説明する。なお、第二温度センサ64により検出された清浄ガスの温度CTは25℃であるとする。
【0037】
上記ステップS301では排気ガスの温度ETが検出され、上記ステップS303では清浄ガスの温度CTが検出され、ステップS305で排気ガスの温度ETが上限温度UT以上でないとして否定されて、ステップS307へ進み、排気ガスの温度ETが下限温度DT以下であると判定されて、ステップS313へ進む。そして、ステップS313では、ガス導入通路16に導かれた排気ガスの温度ETを上げて所定範囲温度に調温するべく、加熱清浄ガスが流されることになる。まず、ステップS313に至ると、制御装置48は、ステップS301で検出した排気ガスの温度ETおよびステップS303で検出した清浄ガスの温度CTに基づいて、予め実験により求めてROMに記憶されているマップ(上記ステップS311に至ったときに用いた上記マップとは異なるマップ)を検索して、加熱清浄ガスの温度および流量を導出する。そして、この温度および流量の加熱清浄ガスを供給管36の中流部46の加熱系統50を介してガス導入通路16に供給するように、制御弁56が開かれ、上流部42と中流部46の加熱系統50とが連通されるように制御弁58が開かれ、下流部44と中流部46の加熱系統50とが連通されるように制御弁60が開かれ、その加熱清浄ガスの流量が調整されるように流量制御手段40が制御され、そしてその加熱清浄ガスの温度が調整されるように加熱手段38が制御される。この結果、所定流量および所定温度の加熱清浄ガスがガス導入通路16に供給されることになる。
【0038】
ここで、供給される加熱清浄ガスの温度および流量について説明する。ガス導入通路16において、排気ガスとそこに供給される加熱清浄ガスとが混ざり、排気ガスの温度が上記所定範囲温度に調温されるように、加熱清浄ガスの流量および温度は求められる。例えば、上記の如く、排気ガスの温度ETおよび清浄ガスの温度が共に25℃である場合には、加熱清浄ガスの温度として、250℃という温度が求められる。そして、加熱清浄ガスの流量と排気ガスの流量の比が約3:1(清浄ガスの流量:排気ガスの流量)になるように加熱清浄ガスの流量が求められる。そして、この加熱清浄ガスの流量および温度が実現されるように、上記の如く、流量制御手段40や加熱手段38などが制御装置48により制御される。なお、このような流量および温度に調節された加熱清浄ガスは、上記の如く、ガス導入通路16において、排気ガスと混ざり合い、例えば194℃となって、適切にHC分析計14に至ることになる。
【0039】
このように、排気ガスの温度が所定範囲温度でない場合には、清浄ガスを常温清浄ガスあるいは加熱清浄ガスとしてガス導入通路16に供給して、排気ガスに混ぜて分析することにしている。しかしながら、このように清浄ガスを排気ガスに混ぜて排気ガスを希釈して炭化水素成分濃度を分析しているのであるから、その分析値は、排気ガスそのものに対する値ではない。そこで、制御装置48は、供給された清浄ガスの供給量に対応させて、HC分析計14からの分析値を補正して測定値を導き出すことにしている。
【0040】
上記した如く、清浄ガスを供給するときには、清浄ガスの流量と排気ガスの流量との比が、例えば3:1の如く、所定比率になるように流量制御手段40を制御することにしている。そこで、制御装置48は、その所定比率に基づいて、予め実験により求めてROMに記憶されているデータを検索して補正係数を導出して、その補正係数に基づいてHC分析計14からの分析値を補正することにしている。なお、清浄ガスの供給箇所はガス導入管18の上流側端部分である加熱部24であり、HC分析計14から離れているので、清浄ガス供給系統32からの清浄ガスの供給時期と、HC分析計14での分析時期とには時間差が生じる。そこで、詳述しないが、予め実験により求めた結果をもとに、その時間差を解消して、制御装置48は分析値の補正をすることにしている。したがって、あらゆる運転条件下で、内燃機関の排気ガスを適切に分析することが可能になる。すなわち、全運転条件において連続的に精度良く、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定することが可能になる。
【0041】
このように、HC分析計14へ排気ガスを調温して導き、必要に応じて分析値を補正して測定値を導き出すことで、図1に示す如く、ガス導入通路16の長さを所定の長さにすることができる。清浄ガス供給系統32が無ければ、あらゆる温度の排気ガスを分析可能にすべく、例えば、排気管12から続くガス導入管18のある程度の長さの部分が冷却路とされ、この冷却路に加えて、その冷却路で十分に冷却された排気ガスを分析温度にまで加熱すべく加熱手段を備えた加熱路をさらに備えることが必要であった。しかしながら、本発明を適用することで、少なくともそのような冷却路を備えることが必要でなくなり、HC分析計14に至るガス導入通路16の長さを短く出来るようになる。
【0042】
排気ガス測定装置10における排気ガスの分析測定について、実施形態に基づいて上記したが、本発明はそれに限定されない。例えば、排気ガスに清浄ガスを供給するか否かを、排気ガスの温度がある幅を持つ所定範囲温度の温度でないか否かで判定したが、その所定範囲温度は、幅を持たない温度、例えば200℃であっても良い。この場合には、排気ガスの温度が200℃を超えているときには常温清浄ガスを供給し、一方、排気ガスの温度が200℃を下回っているときには加熱清浄ガスを供給するようにすると良い。そのときの清浄ガスの供給は、上記ステップS311およびステップS313に関して説明したのと同様に行われるのが好ましい。また、上記実施形態では、ガス導入管18は非加熱部のみとしても良い、すなわちヒーター20といった温度調節手段によりガス導入管18は全く加熱されなくても良い。上記の如く、常温清浄ガスあるいは加熱清浄ガスの供給により、適切に排気ガスが分析温度に調温されるからである。ただし、HC分析計14に排気ガスをより適切に調温して導くために、上記の如く温度調節手段が備えられることを排除するものではない。さらに、上記実施形態では、清浄ガス供給系統32の供給管を途中で二系統に分けて、その一方に加熱手段38を備えて、常温清浄ガスと加熱清浄ガスとを選択的に供給可能にしたが、供給管は一系統からなっても良い。この場合には、その一系統の供給管の途中に加熱手段を設け、加熱清浄ガスを供給したいときのみに加熱手段による加熱を行うことで、加熱清浄ガスと常温清浄ガスとの選択的な供給が可能になる。
【0043】
ところで、排気ガスを調べる内燃機関を別のものに交換したときや、同一内燃機関において異なる運転条件下で排気ガスの分析測定を行うときに、そのまま継続して排気ガスの炭化水素成分濃度を分析測定しようとすると、前回の分析測定の影響が次回以降の測定値に生じないとも限らない。そこで、そのようなときには、前回の分析測定の影響を極めて低減するべく、ガス導入通路16を含んで形成された排気ガス導入通路17の浄化、すなわちパージを行うことにしている。排気ガス導入通路17の浄化について、以下に説明する。
【0044】
上記の如く、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定するときにはガス導入通路16において排気ガスは200℃近傍の温度にまで加熱等されるので、概ね排気ガス中の炭化水素成分は気化していて、その大部分はHC分析計14での分析に供されることになる。しかしながら、排気ガス導入通路17、例えばガス導入管18内壁面には、排気ガス中の炭化水素成分などが吸着することがある。吸着した炭化水素成分などは、その分析測定中に一部が脱離することもあるが、次回の排気ガスの分析測定のときにまでガス導入管18内壁面に吸着し続ける場合もある。
【0045】
そこで、吸着した炭化水素成分などが次回の分析測定時に悪影響を及ぼさないように、加熱清浄ガスを排気ガス導入通路17に供給してその通路17の浄化を行うことにしている。制御装置48の清浄ガス供給系統32の流量制御手段40や加熱手段38などに対する制御により、所定流量の清浄ガスは所定温度で供給される。
【0046】
ここでいう「所定流量」は、HC分析計の吸引流量を超えた流量であり、予めROMに記憶されている。したがって、ガス導入管18内に供給された清浄ガスは、オーバーフローして、HC分析計14側ばかりでなく、縮径部30を超えて排気管12側へも流れることになる(図5参照)。したがって、ガス導入通路16を含んで構成される排気ガス導入通路17全体の浄化が適切に行われることになる。
【0047】
さらに、その「所定温度」は、HC分析計14での分析温度、すなわち上記所定範囲温度を超えた温度であり、予めROMに記憶されている。したがって、排気ガス導入通路17に供給される清浄ガスは加熱清浄ガスであり、吸着した炭化水素成分などの脱離が促されることになる。ただし、この所定温度は、200℃以上且つ250℃以下の範囲の温度であるのが好ましい。なお、制御装置48から加熱手段38へのこのときの制御は、第二温度センサ64により検出された清浄ガスの温度CTに基づいて行われると良い。
【0048】
以上のように、分析温度である所定範囲温度を超えた所定温度の加熱清浄ガスが、HC分析計14の吸引流量を超える所定流量で、ガス導入通路16に供給され、排気ガス導入通路17を流通するので、加熱清浄ガスの有する力学的な力と、加熱清浄ガスの熱による化学的作用とにより、排気ガス導入通路17、例えばガス導入管18内壁面に吸着した炭化水素成分などは適切に除去されることになる。したがって、次回での排気ガスの炭化水素成分濃度の分析測定は、より正確に行えることになる。
【0049】
なお、上記の如き浄化により、ガス導入管18内などの浄化が完全になされなくても、そのように加熱清浄ガスにより排気ガス導入通路17の浄化を行ったことで、HC分析計14での分析温度に調温された排気ガスが排気ガス導入通路17に至っても、残留している炭化水素成分の脱離は最小限に抑制される。したがって、排気ガスの炭化水素成分濃度の分析測定が適切に行えることになる。
【0050】
また、上記の如き浄化により、ガス導入管18内壁面などにおける吸着した炭化水素成分などが十分に除けず、その吸着した炭化水素成分が次回以降の分析測定に際して脱離するような場合には、清浄ガスを分析温度に加熱してガス供給管18内に供給して、その清浄ガスの炭化水素成分濃度をHC分析計14で分析測定し、その分析した分析値を基準値として補正することとしても良い。例えば、そのような分析値(以下、基準分析値と称する)を次回の分析測定前に求めておき、その後の排気ガスの分析測定における分析値から、その基準分析値分を除く補正を行うことで、排気ガス中の炭化水素成分濃度を適切に測定することが可能になる。
【0051】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はそれに限定されない。例えば、上記実施形態では、排気ガス測定装置を、エンジンベンチでの排気ガスの直接採取測定に用いるものとしたが、走行車両に搭載して同様に排気ガスを分析測定するために用いても良い。そして、その測定値を用いて、走行中の車両の内燃機関の制御を行うようにしても良い。
【0052】
なお、上記実施形態では、清浄ガスとして炭化水素成分を含まない清浄空気を用いたが、他に窒素ガスなどでも良い。また、清浄ガスとして、炭化水素成分を含むガスを用いる場合には、その炭化水素成分濃度を予め測定しておき、それを測定値から差し引くことで排気ガスの炭化水素成分濃度を求めるようにしても良い。また、上記実施形態では、清浄ガスをタンク34内に蓄えておくことにしたが、排気ガス測定装置10周囲の空気を清浄ガスとして用いても良い。さらに、上記実施形態では、供給管36に導かれる清浄ガスの温度を検出して、その検出した温度に基づいて清浄ガス供給系統32を制御することにしたが、清浄ガスの温度に基づかずに制御されても良い。この場合には第二温度センサ64を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る一実施形態の排気ガス測定装置の概念図である。
【図2】図1の円A内の拡大断面図である。
【図3】排気ガスを調温するための、フローチャートの一例である。
【図4】排気ガス分析中の、清浄ガスの流れを模式的に表した図である。
【図5】排気ガス導入通路浄化中の、清浄ガスの流れを模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0054】
10 排気ガス測定装置
12 排気管
14 HC分析計
16 ガス導入通路
17 排気ガス導入通路
18 ガス導入管
20 ヒーター
22 加熱部
24 非加熱部
26 排気通路
28 開口部
30 縮径部
32 清浄ガス供給系統
34 タンク
36 供給管
38 加熱手段
40 流量制御手段
48 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスの一部を、ガス導入通路を介してHC分析計に導き、排気ガスの炭化水素成分濃度を測定する排気ガス測定装置であって、
前記ガス導入通路に供給する清浄ガスの流量を調節する流量調節手段と、前記清浄ガスを必要に応じて加熱する加熱手段とを備え、流量および温度の調節された清浄ガスを前記ガス導入通路に供給する清浄ガス供給系統と、
前記ガス導入通路を含んで形成された排気ガス導入通路の浄化を行う際、所定流量の清浄ガスを所定温度で前記ガス導入通路に供給するように前記清浄ガス供給系統の前記流量調節手段および前記加熱手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする排気ガス測定装置。
【請求項2】
前記所定流量は、前記HC分析計の吸引流量を超えた流量であり、
前記所定温度は、前記HC分析計での分析温度を超えた温度であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−278897(P2007−278897A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106607(P2006−106607)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】