説明

排気ガス測定装置

【課題】低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる排気ガス測定装置を提供する。
【解決手段】排気ガス測定装置1は、希釈用ガス濃度測定手段と、運転状態検出手段と、運転判定手段と、希釈排気ガス採取手段と、希釈排気ガス濃度測定手段と、排気ガス濃度算出手段とによって、内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル21内の希釈された排気ガスの一部を採取してその濃度を測定し、B/G濃度および希釈された排気ガス濃度の測定結果に基づいてマスエミッションを算出する制御を実行することで、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができる。よって、低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の内燃機関の排気ガス中に含まれる成分を定量分析するために、排気ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈した後に成分を測定するCVS(Constant Volume Sampling)を用いた連続マスエミッション測定が広く実行されている(例えば特許文献1参照)。
CVSによる連続マスエミッション測定は、その測定の原理上、内燃機関からCVSに取り込まれる排気ガス量に応じて排気ガスの希釈率が変化する。そのため、アイドル運転時や低負荷運転時など、内燃機関が排出する排気ガス量が少量である場合、CVSに取り込まれた少量の排気ガスは希釈トンネル内で大きく希釈されてサンプルバッグに貯留される。このように、濃度測定用の排気ガスが大きく希釈されると測定の感度が低下することから、連続マスエミッション測定の信頼性が低下する場合がある。
【0003】
CVSによる連続マスエミッション測定の信頼性を向上させる手段として、任意の時間中にエア弁を開放して排気ガスを球型タンクに採取することで、吸着性の高い排気ガスを再現性よく自動分析する技術が特許文献2に開示されている。
また、スロート部の断面面積を自動的に制御する可変ベンチュリ式定流量制御装置を備え、バッグサンプル用試料ガスを一定流量で各モード運転の定められた条件においてサンプルラインおよび弁を経由して採取することで、排気ガス条件が大きく変化した場合でもガス質量流量を一定に制御する技術が特許文献3に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3004751号公報
【特許文献2】特許第2590385号公報
【特許文献3】特許第2945499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2、3の技術では、内燃機関が排出する排気ガス量が少量である場合に、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されてしまうことを抑制することが困難である。特に、HEV(Hybrid Electric Vehicle)等における低エミッション計測の場合、内燃機関の停止中、すなわち排気ガス量がゼロの場合にも希釈トンネル内のガスをサンプルバッグへ貯留するために、サンプルバッグ内の排気ガスが過剰に希釈されてしまう。よって、測定の感度が低下することから、連続マスエミッション測定の信頼性が大きく低下してしまう、といった問題点がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる排気ガス測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の排気ガス測定装置は、内燃機関から排出される排気ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排気ガスを分析部に供給するように構成された排気ガス測定装置であって、前記希釈用ガスの濃度を測定する希釈用ガス濃度測定手段と、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段の検出結果に基づいて、前記内燃機関が運転状態にあるか否かを判定する運転判定手段と、前記運転判定手段によって前記内燃機関が運転していると判定された場合に、前記希釈された排気ガスを採取する希釈排気ガス採取手段と、前記希釈排気ガス採取手段によって採取された希釈された排気ガスの濃度を測定する希釈排気ガス濃度測定手段と、前記希釈用ガス濃度測定手段および前記希釈排気ガス濃度測定手段の測定結果に基づいて、前記内燃機関から排出される排気ガスの濃度を算出する排気ガス濃度算出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排気ガス測定装置によれば、内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル内の排気ガスの一部を採取して連続マスエミッション測定を実行することができることから、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができる。よって、低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の排気ガス測定装置1の概略構成を示した構成図である。
【0011】
図1に示す排気ガス測定装置1は、ECU(Electronic Control Unit)10を備えており、電源ラインを通じて電力の供給を受けて稼動し、装置の運転動作を総括的に制御する。また、排気ガス測定装置1は、希釈トンネル21を備えており、排気ガス導入管23から導入した内燃機関の排気ガスを所定の濃度に希釈する。そして、排気ガス測定装置1は、CFV(Critical Flow Venturi)24を備えており、希釈された排気ガスの希釈トンネル21の通過流量を一定に制御する。更に、排気ガス測定装置1は、バックグラウンド(以下(B/G)と略記する)バッグ25およびサンプルバッグ26を備えており、それぞれ希釈用ガス採取通路61、希釈排気ガス採取通路62を通じて希釈トンネル21内の希釈用ガス、および希釈された排気ガスの一部を採取する。また、排気ガス測定装置1は、希釈用ガス採取通路61および希釈排気ガス採取通路62にそれぞれライン切替バルブ31および32を備えており、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26に取り込まれるガス流量を制御する。そして、排気ガス測定装置1は、連続分析計27を備えており、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26に採取されたガスの成分濃度を分析することで、希釈された排気ガスの定量分析を実行する。更に、排気ガス測定装置1は、希釈排気ガス採取通路62にCOセンサ51を備えており、希釈排気ガス採取通路62を通過するガスのCO濃度を検出する。
【0012】
希釈トンネル21は、その底部付近に排気ガス導入管23を備えており、車両のエンジンから排出される排気ガスを希釈トンネル21内へ導入する。また、希釈トンネル21は、希釈用ガスの導入口に活性炭を備えたエアフィルタ22を設けている。実験室内の空気は、エアフィルタ22を通過して希釈トンネル21へ進入し、排気ガス導入管23より導入した排気ガスと混合することで、排気ガスを所定の濃度へと希釈する。排気ガスの希釈比率は、排気ガス中に含まれる成分によって決定され、エアフィルタ22の開口面積を調整することによって結露が生じない比率にて希釈される。この場合、別途ガスボンベを設けて、排気ガスの希釈に用いる希釈用ガスをガスボンベから供給することもできる。
【0013】
CFV24は、エアフィルタ22および排気ガス導入管23の下流側に設けられており、その内部にガス通路を備えることで、希釈トンネル21内で希釈された排気ガスを通過させることができる。そして、CFV24は、ガス通路の一部の断面積が他の部分の断面積よりも小さく絞られて構成されている。希釈トンネル21内で希釈された排気ガスは、CFV24の下流に設けられたブロア(図示しない)の駆動によってCFV24へ向かう。そして、CFV24の内部を通過する際に流れを絞られることでガス流速が臨海流速(その温度における音速)に達することにより、ガスの通過流量が一定に制御される。この場合、CFV24に代えて連続流量可変可能なベンチュリフローメータ(VFM)を設けても良い。また、CFV24は、その内部を通過するガス体積を検出し、検出結果をECU10へ送信する。
【0014】
B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26は、伸縮可能な構成により、その内部にガスを貯留する。B/Gバッグ25は、エアフィルタ22の下流側であって排気ガス導入管23の上流側に設けられ、ポンプ41の駆動力により希釈トンネル21と連通した希釈用ガス採取通路61を通じて希釈用ガスの一部を採取する。サンプルバッグ26は、エアフィルタ22および排気ガス導入管23の下流側であってCFV24の上流側に設けられ、ポンプ41の駆動力により希釈トンネル21と連通した希釈排気ガス採取通路62を通じて希釈トンネル21内で希釈された排気ガスの一部を採取する。B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26は、ガスの採取が終了すると、採取したガスを後述する連続分析計27へと供給する。
なお、サンプルバッグ26および希釈排気ガス採取通路62は、本発明の希釈排気ガス採取手段に相当する。
【0015】
ライン切替バルブ31は、一方が希釈トンネル21と、他の一方がB/Gバッグ25と連通し、他のもう一方が大気開放されたバイパス部と連通した三方弁である。ライン切替バルブ31は、ECU10の指示に従って希釈トンネル21とB/Gバッグ25、またはバイパス部との連通を切り替えることで、希釈用ガスの採取および停止を制御する。
また、ライン切替バルブ32は、一方が希釈トンネル21と、他の一方がサンプルバッグ26と連通し、他のもう一方が大気開放されたバイパス部と連通した三方弁である。ライン切替バルブ32は、ECU10の指示に従って希釈トンネル21とサンプルバッグ26、またはバイパス部との連通を切り替えることで、希釈された排気ガスの採取および停止を制御する。この場合、ライン切替バルブ31および32としては、電磁弁やアクチュエータを適用することができる。また、ライン切替バルブ31および32は、希釈用ガス採取通路61および希釈排気ガス採取通路62の連通、遮断を制御することでガスの採取および停止を制御する形式の制御弁を三方弁に代えて適用することもできる。
なお、ライン切替バルブ32は、本発明の希釈排気ガス採取手段に相当する。
【0016】
連続分析計27は、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26が採取したガスを定量分析し、分析結果をECU10へ送信する。連続分析計27は、例えばCOおよびCOの定量分析として非分散赤外線吸収計(NDIR)を、HCの定量分析として水素炎イオン検出計(HFID)を、NOxの定量分析として化学発光検出計(CLD)を適用するが、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)や自動ガスクロマトグラフを適用することもできる。
なお、連続分析計27は、本発明の希釈用ガス濃度測定手段、希釈排気ガス濃度測定手段に相当する。
【0017】
COセンサ51は、希釈トンネル21とライン切替バルブ32との間の希釈排気ガス採取通路62に備えられ、希釈排気ガス採取通路62を通過するガスのCO濃度を検出し、検出結果をECU10へ送信する。COセンサ51としては、赤外線吸収方式や起電力検出方式等の一般的なセンサを用いることができる。この場合、COセンサ51に代えて、希釈トンネル21とライン切替バルブ32との間の希釈排気ガス採取通路62を通過するガスを連続分析計27に供給することでガスのCO濃度を検出することもできる。
なお、COセンサ51は、本発明の運転状態検出手段に相当する。
【0018】
ECU10は、CFV24等の検出結果、および連続分析計27の分析結果を読み込み、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26のガス供給動作、ライン切替バルブ31および32の切替動作、ポンプ41の動作、エアフィルタ22の開閉動作、装置内部のパージなど、排気ガス測定装置1の運転動作を統合的に制御する。
【0019】
また、ECU10は、ポンプ41をONさせて、かつライン切替バルブ31をサンプル採取ON、すなわち希釈トンネル21とB/Gバッグ25とを連通させるように切り替えるよう指令して、B/Gバッグ25へ希釈用ガスを貯留させる。つづいて、ECU10は、B/Gバッグ25に貯留させた希釈用ガスを連続分析計27へ供給させて希釈用ガス濃度、すなわちB/G濃度を測定する希釈用ガス濃度測定制御を実行する。この場合、B/G濃度の測定は、後述する希釈排気ガス濃度の測定タイミングと重複しない任意のタイミングで実行することができる。
【0020】
そして、ECU10は、COセンサ51の検出結果に基づいて、車両のエンジンが運転状態にあるか否かを判定する運転判定制御を実行する。ECU10は、COセンサ51が検出したCO濃度が所定のしきい値を超える場合は、車両のエンジンが運転状態にあると判定する。ここで、CO濃度のしきい値は、エンジンが停止していると判定できる充分に小さいCO濃度を適用することができるが、例えば600[ppm]とすることができる。
この場合、ECU10は、希釈トンネル21とライン切替バルブ32との間の希釈排気ガス採取通路62を通過するガスのCO濃度を連続分析計27で分析した結果に基づいて、車両のエンジンが運転しているか否かを判定することもできる。
【0021】
更に、ECU10は、運転判定制御によって車両のエンジンが運転状態にあると判定した場合に、ポンプ41をONさせて、かつライン切替バルブ32をサンプル採取ON、すなわち希釈トンネル21とサンプルバッグ26とを連通するように切り替えるよう指令して、サンプルバッグ26へ希釈された排気ガスを貯留させる。つづいて、ECU10は、サンプルバッグ26に貯留させた希釈された排気ガスを連続分析計27へ供給させて希釈排気ガス濃度を測定する希釈排気ガス濃度測定制御を実行する。
上記の制御を実行することにより、特に低エミッション測定時において、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができることから、後述する(1)式で用いる希釈排気ガス濃度C´tの測定値の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0022】
そして、ECU10は、B/G濃度および希釈排気ガス濃度の測定結果、CFV24の検出結果に基づいて、以下の(1)(2)式からマスエミッションMtを算出する排気ガス濃度算出制御を実行する。
[マスエミッション算出式]
Ct=C´t−(1−1/DFt)×CBG ・・・(1)
Mt=Ct×Vt×成分密度 ・・・(2)
(C´t:希釈排気ガス濃度,DFt:排気ガス希釈率,CBG:B/G濃度,Vt:ガス体積)
【0023】
図2に、本発明によるCVS分析濃度の向上効果試算を示す。本発明により、信頼性の高い希釈排気ガス濃度C´tの測定値に基づいて排気ガス濃度を算出することができることから、従来技術に対してマスエミッションの分析濃度を2倍以上に向上させることができる。このように、排気ガスの過剰な希釈による測定感度の低下を抑制することができることから、HEV等の低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0024】
図3に、ECU10のマイコン70のハードウェア構成を示す。マイコン70は、CPU71、ROM72、RAM73、NVRAM(Non Volatile RAM)74、入出力部75等を有している。CPU71は、ROM72に格納したプログラムを読み込んで、このプログラムに従った演算を行う。すなわち、ROM72に格納されたプログラムをCPU71が読み込むことで、装置の運転動作を統合的に制御したり、排気ガス濃度算出制御を実行したりする。また、RAM73には、マスエミッション算出などの演算結果のデータが書き込まれ、NVRAM74は、RAM73に書き込まれていたデータで、装置の電源OFF時に保存の必要なデータが書き込まれる。入出力部75は、CFV24を通過するガス体積信号、連続分析計27が測定するガス濃度信号、B/Gバッグ25およびサンプルバッグ26のガス貯留信号、COセンサ51のCO濃度信号、エアフィルタ22を通過する希釈用ガス流量信号等の各種機器からの信号を入力または出力する。
なお、ECU10は、本発明の運転判定手段、排気ガス濃度算出手段に相当する。
【0025】
つづいて、ECU10の制御の流れに沿って、排気ガス測定装置1の動作を説明する。図4はECU10の処理の一例を示すフローチャートである。本実施例の排気ガス測定装置1は、希釈用ガス濃度測定手段と、運転状態検出手段と、運転判定手段と、希釈排気ガス採取手段と、希釈排気ガス濃度測定手段と、排気ガス濃度算出手段とを備えることで、内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル内の希釈された排気ガスの一部を採取してその濃度を測定し、B/G濃度および希釈された排気ガス濃度の測定結果に基づいてマスエミッションを算出する制御を実行する。
【0026】
まず、B/G濃度を測定するフローを説明する。ECU10の制御は、装置の始動要求がされると、すなわち電源がONにされると開始する。ECU10はステップS1で、ライン切替バルブ31をサンプル採取ONにするように指令して、希釈トンネル21内を通過する希釈用ガスをB/Gバッグ25へ貯留させる。ECU10は、ステップS1の処理を終えると、次のステップS2へ進む。
【0027】
ステップS2で、ECU10は、ステップS1で貯留された希釈用ガスを連続分析計27へ供給しB/G濃度CBGを測定する。ECU10は、ステップS2の処理を終えると、制御の処理を終了する。
なお、ステップS1およびステップS2の制御の処理は、後述するステップS8の前であって、ステップS7と重複しない任意の処理タイミングで実行することができる。
【0028】
次に、排気ガス濃度を算出するフローを説明する。図5はECU10の処理の一例を示すフローチャートである。ECU10の制御は、装置の始動要求がされると、すなわち電源がONにされると開始する。まず、ECU10はステップS3で、ライン切替バルブ32をサンプル採取OFFにするように指令して、希釈トンネル21とサンプルバッグ26とを遮断させる。この処理を実行することにより、希釈トンネル21内を通過するガスがサンプルバッグ26内に進入することを抑制することができる。ECU10は、ステップS3の処理を終えると、次のステップS4へ進む。
【0029】
ステップS4で、ECU10は、COセンサ51の検出結果に基づいて、希釈排気ガス採取通路62を通過するガスのCO濃度を検出する。ECU10は、ステップS4の処理を終えると、次のステップS5へ進む。
【0030】
ステップS5で、ECU10は、ステップS4で検出した希釈排気ガス採取通路62を通過するガスのCO濃度が所定のしきい値を超えているか否かを判断する。ここで、CO濃度のしきい値については前述したために、その詳細な説明は省略する。CO濃度が所定のしきい値を超えていない場合(ステップS5/NO)、ECU10は車両のエンジンの運転が停止していると判定し、ステップS3へ戻り、CO濃度が所定のしきい値を超えるまで上記の処理を繰り返す。CO濃度が所定のしきい値を超えている場合(ステップS5/YES)は、ECU10は次のステップS6へ進む。
【0031】
ステップS6で、ECU10は、車両のエンジンが運転状態にあると判定し、ライン切替バルブ32をサンプル採取ONにするように指令して、希釈トンネル21内を通過する希釈された排気ガスをサンプルバッグ26へ貯留させる。この処理を実行することにより、特に低エミッション測定時において、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができることから、希釈排気ガス濃度C´tの測定値の信頼性を大幅に向上させることができる。ECU10は、ステップS6の処理を終えると、次のステップS7へ進む。
【0032】
ステップS7で、ECU10は、ステップS6で貯留された希釈排気ガスを連続分析計27へ供給し希釈排気ガス濃度C´tを測定する。ECU10は、ステップS7の処理を終えると、次のステップS8へ進む。
【0033】
ステップS8で、ECU10は、ステップS2で測定したB/G濃度CBGと、ステップS7で測定した希釈排気ガス濃度C´tと、CFV24が検出したガス体積Vtとに基づいて、前述した(1)(2)式から車両の排気ガス濃度を算出する。このように、排気ガスの過剰な希釈による測定感度の低下を抑制することで、HEV等の低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる(図2参照)。ECU10は、ステップS8の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0034】
以上のように、本実施例の排気ガス測定装置は、希釈用ガス濃度測定手段と、運転状態検出手段と、運転判定手段と、希釈排気ガス採取手段と、希釈排気ガス濃度測定手段と、排気ガス濃度算出手段とによって、内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル内の希釈された排気ガスの一部を採取してその濃度を測定し、B/G濃度および希釈された排気ガス濃度の測定結果に基づいてマスエミッションを算出する制御を実行することで、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができる。よって、低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【実施例2】
【0035】
つづいて、本発明の実施例2について説明する。本実施例の排気ガス測定装置2は、実施例1の排気ガス測定装置1とほぼ同様の構成となっているが、排気ガス測定装置2は、車両に搭載されたエンジンECUからの情報を検出することによって内燃機関の運転状態を検出する点で車両制御システム1と相違している。
【0036】
図6は、本発明の排気ガス測定装置2の概略構成を示した構成図である。なお、実施例1と同様の構成要素については、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施例の排気ガス測定装置2は、実施例1と同様に装置内部にECU10を備えている。そして、排気ガス測定装置2は、ECU10と車両に搭載されたエンジンECUとを交信可能に通信させる通信部52を備えている。このECU10および通信部52が、車両に搭載されたエンジンECUからエンジンの運転状態に関する情報を検出し、検出結果に基づいて車両のエンジンが運転状態にあるか否かを判定する。この場合、エンジンECUから運転状態に関する情報を検出する手段に限らず、その他のエンジン運転状態検出手段を採用してもよい。また、通信部52としては、CAN(Controller Area Network)等の通信プロトコルを用いることができる。
なお、ECU10および通信部52は、本発明の運転状態検出手段に相当する。
【0038】
つづいて、ECU10の制御の流れに沿って、排気ガス測定装置2の動作を説明する。図7はECU10の処理の一例を示すフローチャートである。なお、排気ガス測定装置2のECU10は、実施例1の排気ガス測定装置1のステップS1およびステップS2の制御の処理を行いつつ、以下のステップS9からステップS14までの制御を行う。よってステップS1およびステップS2の制御は実施例1の排気ガス測定装置1と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
本実施例の排気ガス測定装置2は、車両に搭載されたエンジンECUからの情報によって内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル内の希釈された排気ガスの一部を採取してその濃度を測定し、B/G濃度および希釈された排気ガス濃度の測定結果に基づいてマスエミッションを算出する制御を実行する。
【0039】
ECU10の制御は、装置の始動要求がされると、すなわち電源がONにされると開始する。まず、ECU10はステップS9で、ライン切替バルブ32をサンプル採取OFFにするように指令して、希釈トンネル21とサンプルバッグ26とを遮断させる。この処理を実行することにより、希釈トンネル21内を通過するガスがサンプルバッグ26内に進入することを抑制することができる。ECU10は、ステップS9の処理を終えると、次のステップS10へ進む。
【0040】
ステップS10で、ECU10は、通信部52を通じて車両に搭載されたエンジンECUからエンジンの運転状態に関する情報を検出する。ECU10は、ステップS10の処理を終えると、次のステップS11へ進む。
【0041】
ステップS11で、ECU10は、ステップS10で検出したエンジンの運転状態に関する情報に基づいて、車両のエンジンが運転状態にあるか否かを判断する。エンジンが運転状態にない、すなわち停止状態にある場合(ステップS11/NO)、ECU10はステップS9へ戻り、エンジンが運転状態となるまで上記の処理を繰り返す。エンジンが運転状態にある場合(ステップS11/YES)は、ECU10は次のステップS12へ進む。
【0042】
ステップS12で、ECU10は、ライン切替バルブ32をサンプル採取ONにするように指令して、希釈トンネル21内を通過する希釈された排気ガスをサンプルバッグ26へ貯留させる。この処理を実行することにより、特に低エミッション測定時において、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができることから、希釈排気ガス濃度C´tの測定値の信頼性を大幅に向上させることができる。ECU10は、ステップS12の処理を終えると、次のステップS13へ進む。
【0043】
ステップS13で、ECU10は、ステップS12で貯留された希釈排気ガスを連続分析計27へ供給し希釈排気ガス濃度C´tを測定する。ECU10は、ステップS13の処理を終えると、次のステップS14へ進む。
【0044】
ステップS14で、ECU10は、ステップS2で測定したB/G濃度CBGと、ステップS13で測定した希釈排気ガス濃度C´tと、CFV24が検出したガス体積Vtとに基づいて、前述した(1)(2)式から車両の排気ガス濃度を算出する。このように、排気ガスの過剰な希釈による測定感度の低下を抑制することで、HEV等の低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。ECU10は、ステップS14の処理を終えると、制御の処理を終了する。
【0045】
以上のように、本実施例の排気ガス測定装置は、車両に搭載されたエンジンECUからの情報によって内燃機関が運転状態にあるか否かを判定し、運転状態にあると判定した場合に希釈トンネル内の希釈された排気ガスの一部を採取してその濃度を測定し、B/G濃度および希釈された排気ガス濃度の測定結果に基づいてマスエミッションを算出する制御を実行することで、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることを抑制することができる。よって、低エミッション測定時においても高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【実施例3】
【0046】
つづいて、本発明の実施例3について説明する。本実施例の排気ガス測定装置3は、実施例1の排気ガス測定装置1とほぼ同様の構成となっているが、排気ガス測定装置3は、COセンサ51の検出結果と、通信部52を通じてECU10が検出した車両に搭載されたエンジンECUの情報との両方に基づいて、内燃機関が運転状態にあるか否かを判定する点で排気ガス測定装置1と相違している。
【0047】
このような構成とすることにより、より精度よく車両の運転状態を判定することができることから、信頼性の高い判定結果に基づいて排気ガスのサンプル採取制御を実行することができる。よって、濃度測定用の排気ガスが過剰に希釈されることをより抑制することができることから、低エミッション測定時において、より高いマスエミッション測定の信頼性を得ることができる。
【0048】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1の排気ガス測定装置の概略構成を示した構成図である。
【図2】本発明によるCVS分析濃度の向上効果試算を示している。
【図3】ECUのマイコンのハードウェア構成を示した構成図である。
【図4】実施例1のECUが行う制御のフローを示している。
【図5】実施例1のECUが行う制御のフローを示している。
【図6】実施例2の排気ガス測定装置の概略構成を示した構成図である。
【図7】実施例2のECUが行う制御のフローを示している。
【符号の説明】
【0050】
1 排気ガス測定装置
10 ECU(運転判定手段,排気ガス濃度算出手段)
21 希釈トンネル
22 エアフィルタ
23 排気ガス導入管
24 CFV
25 B/Gバッグ
26 サンプルバッグ(希釈排気ガス採取手段)
27 連続分析計(希釈用ガス濃度測定手段,希釈排気ガス濃度測定手段)
31 ライン切替バルブ
32 ライン切替バルブ(希釈排気ガス採取手段)
41 ポンプ
51 COセンサ(運転状態検出手段)
61 希釈用ガス採取通路
62 希釈排気ガス採取通路(希釈排気ガス採取手段)
71 CPU
72 ROM
73 RAM
74 NVRAM
75 入出力部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスを希釈用ガスによって所定の比率に希釈し、希釈された排気ガスを分析部に供給するように構成された排気ガス測定装置であって、
前記希釈用ガスの濃度を測定する希釈用ガス濃度測定手段と、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段の検出結果に基づいて、前記内燃機関が運転状態にあるか否かを判定する運転判定手段と、
前記運転判定手段によって前記内燃機関が運転していると判定された場合に、前記希釈された排気ガスを採取する希釈排気ガス採取手段と、
前記希釈排気ガス採取手段によって採取された希釈された排気ガスの濃度を測定する希釈排気ガス濃度測定手段と、
前記希釈用ガス濃度測定手段および前記希釈排気ガス濃度測定手段の測定結果に基づいて、前記内燃機関から排出される排気ガスの濃度を算出する排気ガス濃度算出手段と、
を備えることを特徴とする排気ガス測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−139340(P2010−139340A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315095(P2008−315095)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】