説明

排気ガス還流量調整装置

【課題】触媒の劣化によるEGRバルブの動作不良を招くおそれを軽減することができる排気ガス還流量調整装置を提供する。
【解決手段】EGRガス還流量制限装置30は、空燃比センサ21、酸素センサ22の検出結果から触媒劣化度合実測値Ddmを算出する触媒劣化度合算出部31と、触媒劣化度合実測値Ddmが第1所定値以上であるか否かを判断する触媒劣化度合判断部32と、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは第1所定値以上であると判断したときに、EGRバルブ17を制御することにより、EGRガス還流量を制限するEGRガス還流量制限指示部33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関型エンジンの排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管に還流する排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関型エンジンの燃費改善手段の一つとして、排気管と吸気管とをEGRガス流路によって接続し、排気管を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管に還流する排気ガス還流装置(外部EGR装置)が既知である。そして、温暖化対策や経済性などの理由から、市場からの更なる燃費改善要求が高まっているために、内燃機関型エンジンの低負荷時だけでなく、内燃機関型エンジンの高負荷時にもEGRガスを還流することによって、燃費の改善を図ることが考えられている。
【0003】
また、排気ガス温度が低いほど多くのEGRガスを吸気管に還流することができるから、高負荷時においてEGRガス量を増加するためには、EGRガスを充分に冷却する必要がある。そして、排気ガス温度は排気管に設けられた触媒の上流側(前方)よりも触媒の下流側(後方)の方が低い。このため、従来のように触媒の上流側の排気ガスの一部をEGRガスとして還流するのではなく、触媒の下流側の排気ガスの一部をEGRガスとして還流する方が、内燃機関型エンジンの高負荷時にEGRガスを還流するために有効であるとされている。
【0004】
さらに、従来のように、触媒の上流側の排気ガスの一部をEGRガスとして還流したときには、排ガス中に内燃機関型エンジン内で燃料の燃焼によって生成された不完全燃焼生成物の堆積物(デポジット)が含まれた状態でEGRガスが吸気管に還流される。この場合、EGRガス流路に設けられたEGRクーラやEGRバルブに堆積物が堆積して、動作不良を招くおそれがある。これに対して、触媒の下流側の排気ガスの一部をEGRガスとして還流したときには、排ガス中の堆積物は触媒によって捕集されるから、堆積物の少ないEGRガスを吸気管に還流することができるので、EGRクーラやEGRバルブの堆積物による動作不良を招くおそれを減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−296482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、触媒が劣化すると、触媒による堆積物の捕集効率が低下するだけでなく、触媒ウォッシュコートが触媒の基材から剥がれ落ちることがある。このため、触媒の下流側の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管に還流したときには、触媒ウォッシュコートがEGRバルブに噛み込み、EGRバルブが動作不良を起こすことがあり、最悪の場合には内燃機関型エンジンの破壊に繋がる。
【0007】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、触媒の下流側から排気ガスの一部をEGRガスとして還流する排気ガス還流装置において、触媒の劣化によるEGRバルブの動作不良を招くおそれを軽減することができる排気ガス還流量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、発明の実施態様は、内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、排気管に設けられて上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合を算出する触媒劣化度合算出部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、上記触媒劣化度合が第1所定値以上である場合に、上記EGRガス還流量制限指示部が上記EGRバルブを制御して上記EGRガス還流量を制限することを特徴とする。
【0009】
また、発明の実施態様は、内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、排気管に設けられ上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合を算出する触媒劣化度合算出部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、上記触媒劣化度合が第2所定値以上である場合に、上記EGRガス還流量制限指示部が、上記EGRバルブを制御して上記EGRガス還流量を制限するとともに、上記触媒劣化度合が高いほど還流割合を小さくすることを特徴とする。
【0010】
また、発明の実施態様は、内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、排気管に設けられ上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合実測値を算出し、記録する触媒劣化度合算出・記録部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、上記EGRガス還流量制限装置は、ドライビングサイクルごとの上記触媒劣化度合実測値を記録し、前回までのドライビングサイクルごとの上記触媒劣化度合実測値と今回のドライビングサイクルの上記触媒劣化度合実測値との平均値である触媒劣化度合平均値を算出し、上記触媒劣化度合平均値が第1所定値以上になったとき、EGRガス還流量制限を開始し、上記触媒劣化度合平均値が第2所定値未満である場合に、上記EGRガス還流量の制限を解除することを特徴とする。
【0011】
また、発明の実施態様は、上記EGRガス還流量の制限は、上記EGRバルブを閉じることを特徴とする。
【0012】
また、発明の実施態様は、上記EGRガス還流量の制限は、上記触媒劣化度合平均値または今回のドライビングサイクルの上記触媒劣化度合実測値が高いほど還流割合を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る排気ガス還流量調整装置においては、触媒の劣化によって触媒が捕集できなかった堆積物や触媒から流出した触媒部材がEGRバルブに流れるのを抑制することができるから、EGRバルブの動作不良を招くおそれを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置を有する内燃機関型エンジンを示す図である。
【図2】図2は図1に示したEGRガス還流量制限装置30の詳細を示すブロック図である。
【図3】図3は触媒劣化度合実測値Ddmを説明するためのグラフである。
【図4】図4は図2に示したEGRガス還流量制限装置30を有する排気ガス還流量調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は本発明の他の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置を示すブロック図である。
【図6】図6は触媒劣化度合(触媒劣化度合実測値Ddm、触媒劣化度合平均値Dda)と還流割合との関係を示す図である。
【図7】図7は図5に示した排気ガス還流量調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は本発明の他の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置を示すブロック図である。
【図9】図9は各ドライビングサイクルの触媒劣化度合(触媒劣化度合実測値Ddm、触媒劣化度合平均値Dda)の一例を示すグラフである。
【図10】図10は図8に示した排気ガス還流量調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1により本発明の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置を説明する。内燃機関型エンジンの気筒10に吸気管11、排気管12が接続されている。排気管12に触媒13、マフラ14が設けられている。触媒13は排気ガスを浄化する。排気管12の触媒13よりも下流側と吸気管11とを接続するEGRガス流路15が設けられている。EGRガス流路15は排気ガスを吸気管11に還流させる。EGRガス流路15にEGRクーラ16が設けられている。EGRガス流路15にEGRバルブ17が設けられている。EGRバルブ17は吸気管11に還流させるEGRガス還流量を調整する。排気管12の触媒13よりも上流側に空燃比センサ(A/Fセンサ)21が設けられている。排気管12の触媒13よりも下流側に酸素センサ(O2センサ)22が設けられている。EGRバルブ17を制御するEGRガス還流量制限装置30が設けられている。EGRガス還流量制限装置30はコンピュータによって構成されている。そして、排気ガス還流量調整装置は空燃比センサ21、酸素センサ22、EGRガス還流量制限装置30を有する。
【0016】
図2により図1に示したEGRガス還流量制限装置30を説明する。EGRガス還流量制限装置30は、触媒劣化度合算出部31、触媒劣化度合判断部32、EGRガス還流量制限指示部33を有する。
【0017】
触媒劣化度合算出部31は、空燃比センサ21により検出された空燃比および酸素センサ22によって検出された酸素濃度により、触媒13の劣化度合を示す触媒劣化度合実測値Ddmを算出する。すなわち、触媒劣化度合算出部31は、空燃比センサ21により検出された空燃比(酸素濃度)の変化周期をT1とし、酸素センサ22によって検出された酸素濃度の変化周期をT2としたとき、T1/T2である触媒劣化度合実測値Ddmを算出する。
【0018】
図3により、触媒劣化度合実測値Ddmについて説明する。図3において、(a)は空燃比センサ21の出力値の時間的変化を示し、(b)は酸素センサ22の出力値の時間的変化を示す。また、(b)の曲線Aは触媒13が正常な場合の酸素センサ22の出力値の時間的変化を示し、曲線Bは触媒13が劣化した場合の酸素センサ22の出力値の時間的変化を示す。また、排気ガス中の燃料の濃度が濃い場合(リッチな場合)には、空燃比センサ21、酸素センサ22の出力値は「1」に近づき、反対に排気ガス中の燃料が薄い場合(リーンな場合)には、空燃比センサ21、酸素センサ22の出力値は「0」に近づく。そして、図3から明らかなように、触媒13の劣化が進むにつれて、酸素センサ22の出力値の変化周期が短くなりかつ振幅が大きくなる。これは、触媒13が劣化すると、触媒13の酸素貯蔵能力が低下して、触媒13の下流側の酸素濃度の変化が触媒13の上流側の酸素濃度の変化に近づくためである。つまり、触媒13の劣化が進むと、図3(b)に示す酸素センサ22の出力値の変化周期T2が図3(a)に示す空燃比センサ21の出力値の変化周期T1に近づき、触媒劣化度合実測値Ddm(T1/T2)が1に近づく。したがって、触媒劣化度合実測値Ddmを求めることにより、触媒13の劣化の度合を判断することができる。
【0019】
触媒劣化度合判断部32は、触媒劣化度合算出部31が触媒劣化度合実測値Ddmを算出したのちに、触媒劣化度合実測値Ddmが0.43(第1所定値)以上であるか否かを判断する。
【0020】
EGRガス還流量制限指示部33は、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43以上であると判断したときには、EGRバルブ17を制御することにより、EGRガス還流量を制限する。この場合、EGRガス還流量制限指示部33はEGRバルブ17を閉じる。また、EGRガス還流量制限指示部33は、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43未満であると判断したときには、EGRガス還流量を制限しない。すなわち、EGRガス還流量制限指示部33は触媒劣化度合判断部32の判断に基づいてEGRバルブ17にEGRガス還流量の制限を指示する。
【0021】
図2に示したEGRガス還流量制限装置30を有する排気ガス還流量調整装置の動作を図4により説明する。
まず、触媒劣化度合算出部31が触媒劣化度合実測値Ddmを算出する(ステップS11)。つぎに、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43以上であるか否かを判断する(ステップS12)。そして、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43以上であると判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33はEGRガス還流量を制限する(ステップS13)。一方、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43未満であると判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33はEGRガス還流量を制限しない(ステップS14)。なお、この排気ガス還流量調整は各ドライビングサイクル(DC)ごとに、すなわちイグニッションスイッチをオンにして内燃機関型エンジンを始動した後、イグニッションスイッチをオフにして内燃機関型エンジンを停止するまでの期間ごとに行なう。そして、そのドライビングサイクルにおいては、EGRガス還流量を制限する場合には、EGRバルブ17を閉じたままとし、EGRガス還流量を制限しない場合には、EGRバルブ17を開いたままとする。
【0022】
この排気ガス還流量調整装置においては、触媒劣化度合実測値Ddm(触媒劣化度合)が0.43(第1所定値)以上である場合に、EGRガス還流量制限指示部33がEGRバルブ17を制御してEGRガス還流量を制限するから、触媒13の劣化によって触媒が捕集できなかった堆積物や触媒13から流出した触媒部材がEGRバルブ17に流れるのを抑制することができるので、EGRバルブ17の動作不良を招くおそれを軽減することができる。
【0023】
(第2の実施の形態)
図5により他の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置のEGRガス還流量制限装置30Aを説明する。このEGRガス還流量制限装置30Aは、触媒劣化度合算出部31、触媒劣化度合判断部32A、EGRガス還流量制限指示部33Aを有する。なお、EGRガス還流量制限装置30Aの触媒劣化度合算出部31はEGRガス還流量制限装置30の触媒劣化度合算出部31と同様である。
【0024】
触媒劣化度合判断部32Aは、触媒劣化度合算出部31が触媒劣化度合実測値Ddmを算出したのちに、触媒劣化度合実測値Ddmが0.15(第2所定値)以上であるか否かを判断する。
【0025】
EGRガス還流量制限指示部33Aは、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15以上であると判断したときには、EGRバルブ17を制御することにより、EGRガス還流量を制限する。この場合の触媒劣化度合実測値Ddm(触媒劣化度合)と還流割合(触媒13が正常なときのEGRガス還流量に対する制限したEGRガス還流量の割合)との関係を図6に示す。また、EGRガス還流量制限指示部33Aは、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15未満であると判断したときには、EGRガス還流量を制限しない。
【0026】
図5に示したEGRガス還流量制限装置30Aを有する排気ガス還流量調整装置の動作を図7により説明する。
まず、触媒劣化度合算出部31が触媒劣化度合実測値Ddmを算出する(ステップS21)。つぎに、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15以上であるか否かを判断する(ステップS22)。そして、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15以上であると判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33AはEGRガス還流量を制限する(ステップS23)。一方、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15未満であると判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33AはEGRガス還流量を制限しない(ステップS24)。これらの場合、触媒劣化度合実測値Ddmが0.15以下のときには還流割合を100%とし、触媒劣化度合実測値Ddmが0.15を超えた場合には、触媒劣化度合実測値Ddmが高いほど還流割合を小さくし、触媒劣化度合実測値Ddmが0.43以上のときには還流割合を0%とする。なお、この排気ガス還流量調整は各ドライビングサイクルごとに行なう。そして、そのドライビングサイクルにおいては、EGRガス還流量を制限する場合には、EGRバルブ17を所定の開度のままとし、EGRガス還流量を制限しない場合には、EGRバルブ17を全開にしたままとする。
【0027】
触媒13の下流側から排気ガスの一部をEGRガスとして還流する排気ガス還流装置においては、触媒13の触媒劣化度合が高いほど、触媒13から流出する堆積物や触媒部材がEGRバルブ17に流れ込むおそがあるが、この排気ガス還流量調整装置においては、触媒劣化度合実測値Ddm(触媒劣化度合)が0.15(第2所定値)を超えた場合に、触媒劣化度合実測値Ddmが高いほど還流割合を小さくするから、触媒の劣化によるEGRバルブの動作不良を招くおそれを適切に軽減することができるとともに、燃費の改善を図ることができる。
【0028】
(第3の実施の形態)
図8により他の実施の形態に係る排気ガス還流量調整装置のEGRガス還流量制限装置30Bを説明する。このEGRガス還流量制限装置30Bは、イグニッションスイッチ判断部34、始動後時間判断部35、触媒劣化度合算出・記録部36、触媒劣化度合平均値算出部37、制限継続状態判断部38、制限解除判断部39、制限開始判断部40、EGRガス還流量制限指示部33B、制限継続状態記録部41を有する。
【0029】
イグニッションスイッチ判断部34は、イグニッションスイッチ23がオンであるか否かを判断する。
【0030】
始動後時間判断部35は、イグニッションスイッチ判断部34がイグニッションスイッチ23はオンであると判断したとき、エンジン始動後に所定時間を経過したか否かを判断する。
【0031】
触媒劣化度合算出・記録部36は、始動後時間判断部35がエンジン始動後に所定時間を経過したと判断したとき、触媒劣化度合実測値Ddmを算出し、触媒劣化度合実測値Ddmを記録する。したがって、各ドライビングサイクルごとの触媒劣化度合実測値Ddmが記録される。
【0032】
触媒劣化度合平均値算出部37は、触媒劣化度合算出・記録部36が触媒劣化度合実測値Ddmを記録したのちに、今まで記録された触媒劣化度合実測値Ddmおよび今回記録された触媒劣化度合実測値Ddmの平均値すなわち触媒劣化度合平均値Ddaを算出する。
【0033】
制限継続状態判断部38は、触媒劣化度合平均値算出部37が触媒劣化度合平均値Ddaを算出したのちに、制限継続状態記録部41が「制限継続状態」を記録しているか否かを判断する。
【0034】
制限解除判断部39は、制限継続状態判断部38が制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録していると判断したとき、EGRガス還流量の制限を解除するか否か、すなわち触媒劣化度合平均値Ddaが0.15(第2所定値)未満であるか否かを判断する。なお、図9に各ドライビングサイクルの触媒劣化度合実測値Ddm(線A)と触媒劣化度合平均値Dda(線B)の一例を示す。
【0035】
制限開始判断部40は、制限継続状態判断部38が制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録していないと判断したとき、EGRガス還流量の制限を開始するか否か、すなわち触媒劣化度合平均値Ddaが0.43(第1所定値)以上であるか否かを判断する。
【0036】
EGRガス還流量制限指示部33Bは、制限解除判断部39、制限開始判断部40の判断に基づいてEGRバルブ17を制御する。すなわち、制限解除判断部39が触媒劣化度合平均値Ddaは0.15以上であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を解除しないと判断したとき、および制限開始判断部40が触媒劣化度合平均値Ddaは0.43以上であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を開始すると判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33Bは、EGRバルブ17を制御することにより、EGRガス還流量を制限する。また、制限解除判断部39が触媒劣化度合平均値Ddaは0.15未満であると判断したときつまり制限解除判断部39がEGRガス還流量の制限を解除すると判断したとき、および制限開始判断部40が触媒劣化度合平均値Ddaは0.43未満であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を開始しないと判断したときには、EGRガス還流量制限指示部33Bは、EGRガス還流量を制限しない。
【0037】
制限継続状態記録部41は、EGRガス還流量制限指示部33BがEGRバルブ17を制御したのちに、制限継続状態であるか否かを記録する。すなわち、制限解除判断部39がEGRガス還流量の制限を解除しないと判断したとき、および制限開始判断部40がEGRガス還流量の制限を開始すると判断したときには、制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録し、制限解除判断部39がEGRガス還流量の制限を解除すると判断したとき、および制限開始判断部40がEGRガス還流量の制限を開始しないと判断したとき、制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録せず、「制限継続状態」が記録されていればそれを消去する。
【0038】
図8に示したEGRガス還流量制限装置30Bを有する排気ガス還流量調整装置の動作を図10により説明する。
まず、イグニッションスイッチ判断部34がイグニッションスイッチ23はオンであるか否かを判断する(ステップS31)。イグニッションスイッチ23がオンでない場合には、イグニッションスイッチ判断部34がイグニッションスイッチ23はオンであるか否かを繰り返し判断する。そして、イグニッションスイッチ判断部34がイグニッションスイッチ23はオンであると判断したとき、始動後時間判断部35はエンジン始動後に所定時間を経過したか否かを判断する(ステップS32)。始動後時間判断部35がエンジン始動後に所定時間を経過したと判断したとき、触媒劣化度合算出・記録部36は触媒劣化度合実測値Ddmを算出し、触媒劣化度合実測値Ddmを記録する(ステップS33)。触媒劣化度合算出・記録部36が触媒劣化度合実測値Ddmを記録したのちに、触媒劣化度合平均値算出部37は触媒劣化度合平均値Ddaを算出する(ステップS34)。
【0039】
触媒劣化度合平均値算出部37が触媒劣化度合平均値Ddaを算出したのちに、制限継続状態判断部38が制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録しているか否かを判断する(ステップS35)。制限継続状態判断部38が制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録していると判断したとき、制限解除判断部39はEGRガス還流量の制限を解除するか否かを判断する(ステップS36)。一方、制限継続状態判断部38が制限継続状態記録部41は「制限継続状態」を記録していないと判断したとき、制限開始判断部40はEGRガス還流量の制限を開始するか否かを判断する(ステップS37)。
【0040】
そして、EGRガス還流量制限指示部33Bは、制限解除判断部39が触媒劣化度合平均値Ddaは0.15以上であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を解除しないと判断したとき、および制限開始判断部40が触媒劣化度合平均値Ddaは0.43以上であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を開始すると判断したとき、EGRバルブ17を制御することにより、イグニッションスイッチ23がオフになるまでEGRバルブ17を閉じた状態に維持し、EGRガス還流量を制限する(ステップS38)。また、EGRガス還流量制限指示部33Bは、制限解除判断部39が触媒劣化度合平均値Ddaは0.15未満であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を解除すると判断したとき、および制限開始判断部40が触媒劣化度合平均値Ddaは0.43未満であると判断したときつまりEGRガス還流量の制限を開始しないと判断したときには、イグニッションスイッチ23がオフになるまでEGRバルブ17を開いた状態に維持し、EGRガス還流量を制限しない(ステップS39)。EGRガス還流量制限指示部33BがEGRバルブ17を制御したのちに、制限継続状態記録部41は制限継続状態であるか否かを記録する(ステップS40)。
【0041】
なお、EGRガス還流量制限指示部33BがEGRガス還流量を制限するときには、触媒劣化度合平均値Ddaが0.15を超えた場合には、触媒劣化度合平均値Ddaが高いほど還流割合を小さくし、触媒劣化度合平均値Ddaが0.43以上のときには還流割合を0%としてもよい。
【0042】
この排気ガス還流量調整装置においては、触媒13が劣化しているおそれがある場合に、EGRガス還流量の制限を行なって、EGRバルブ17の動作不良を招くおそれを軽減することができるとともに、触媒が劣化していないと判断できた場合に、EGRガス還流量の制限を解除することができるから、燃費の改善を図ることができる。
【0043】
また、始動後時間判断部35がエンジン始動後に所定時間を経過したと判断したとき、触媒劣化度合算出・記録部36が触媒劣化度合実測値Ddmを算出するから、内燃機関型エンジンの温度が上昇したのちに、触媒劣化度合実測値Ddmを算出することができるので、正確な触媒劣化度合実測値Ddmを算出することができる。
【0044】
(他の実施の形態)
なお、上述実施の形態においては、第1所定値を0.43とし、第2所定値を0.15としたが、第1所定値、第2所定値を他の値としてもよい。
【0045】
また、上述実施の形態においては、上流側酸素センサ、下流側酸素センサとして空燃比センサ21、酸素センサ22を用いたが、上流側酸素センサとして触媒13よりも上流側に設けた酸素センサを用い、下流側酸素センサとして触媒13よりも下流側に設けた空燃比センサを用いてもよい。また、上流側酸素センサ、下流側酸素センサとしては、排ガス中の酸素量を検出することができるあらゆるセンサを用いることができる。
【0046】
また、第1の実施の形態においては、触媒劣化度合判断部32が触媒劣化度合実測値Ddmは0.43(第1所定値)以上であると判断したときに、EGRガス還流量制限指示部33がEGRガス還流量を制限したが、触媒劣化度合判断部が触媒劣化度合平均値Ddaは第1所定値以上であると判断したときに、EGRガス還流量を制限してもよい。すなわち、第1の実施の形態においては、触媒劣化度合として触媒劣化度合実測値Ddmを用いたが、触媒劣化度合として触媒劣化度合平均値Ddaを用いてもよい。
【0047】
また、第2の実施の形態においては、触媒劣化度合判断部32Aが触媒劣化度合実測値Ddmは0.15(第2所定値)以上であると判断したときに、EGRガス還流量制限指示部33AがEGRガス還流量を制限したが、触媒劣化度合判断部が触媒劣化度合平均値Ddaは第2所定値以上であると判断したときに、EGRガス還流量を制限してもよい。この場合、触媒劣化度合平均値Ddaが高いほど還流割合を小さくする。すなわち、第2の実施の形態においては、触媒劣化度合として触媒劣化度合実測値Ddmを用いたが、触媒劣化度合として触媒劣化度合平均値Ddaを用いてもよい。
【0048】
また、第3の実施の形態においては、触媒劣化度合平均値Ddaが0.15を超えた場合には、触媒劣化度合平均値Ddaが高いほど還流割合を小さくし、触媒劣化度合平均値Ddaが0.43以上のときには還流割合を0%としたが、今回のドライビングサイクルの触媒劣化度合実測値Ddmが0.15を超えた場合には、今回のドライビングサイクルの触媒劣化度合実測値Ddmが高いほど還流割合を小さくし、今回のドライビングサイクルの触媒劣化度合実測値Ddmが0.43以上のときには還流割合を0%としてもよい。
【0049】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施の形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施の形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0050】
11…吸気管、12…排気管、13…触媒、15…EGRガス流路、17…EGRバルブ、21…空燃比センサ、22…酸素センサ、23…イグニッションスイッチ、30、30A、30B…EGRガス還流量制限装置、31…触媒劣化度合算出部、32、32A…触媒劣化度合判断部、33、33A、33B…EGRガス還流量制限指示部、34…イグニッションスイッチ判断部、35…始動後時間判断部、36…触媒劣化度合算出・記録部、37…触媒劣化度合平均値算出部、38…制限継続状態判断部、39…制限解除判断部、40…制限開始判断部、41…制限継続状態記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、
排気管に設けられて上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、
上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合を算出する触媒劣化度合算出部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、
上記触媒劣化度合が第1所定値以上である場合に、上記EGRガス還流量制限指示部が上記EGRバルブを制御して上記EGRガス還流量を制限する
ことを特徴とする排気ガス還流量調整装置。
【請求項2】
内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、
排気管に設けられ上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、
上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合を算出する触媒劣化度合算出部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、
上記触媒劣化度合が第2所定値以上である場合に、上記EGRガス還流量制限指示部が、上記EGRバルブを制御して上記EGRガス還流量を制限するとともに、上記触媒劣化度合が高いほど還流割合を小さくする
ことを特徴とする排気ガス還流量調整装置。
【請求項3】
内燃機関型エンジンの排気ガスの一部を吸気管に戻す排気ガス還流装置の排気ガス還流量調整装置であって、
排気管に設けられ上記排気ガスを浄化する触媒と、上記排気管の上記触媒よりも下流側と上記吸気管とを接続するEGRガス流路と、上記EGRガス流路に設けられて上記吸気管に還流させるEGRガス還流量を調整するEGRバルブと、上記排気管の上記触媒よりも上流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する上流側酸素センサと、上記排気管の上記触媒よりも下流側に設けられて排気ガス中の酸素量を検出する下流側酸素センサと、上記EGRバルブを制御するEGRガス還流量制限装置とを備え、
上記EGRガス還流量制限装置は、上記上流側酸素センサと上記下流側酸素センサとの検出結果から触媒劣化度合実測値を算出し、記録する触媒劣化度合算出・記録部と、上記EGRバルブに上記EGRガス還流量の制限を指示するEGRガス還流量制限指示部とを備え、
上記EGRガス還流量制限装置は、ドライビングサイクルごとの上記触媒劣化度合実測値を記録し、前回までのドライビングサイクルごとの上記触媒劣化度合実測値と今回のドライビングサイクルの上記触媒劣化度合実測値との平均値である触媒劣化度合平均値を算出し、上記触媒劣化度合平均値が第1所定値以上になったとき、EGRガス還流量制限を開始し、上記触媒劣化度合平均値が第2所定値未満である場合に、上記EGRガス還流量の制限を解除する
ことを特徴とする排気ガス還流量調整装置。
【請求項4】
上記EGRガス還流量の制限は、上記EGRバルブを閉じることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス還流量調整装置。
【請求項5】
上記EGRガス還流量の制限は、上記触媒劣化度合平均値または今回のドライビングサイクルの上記触媒劣化度合実測値が高いほど還流割合を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の排気ガス還流量調整装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113213(P2013−113213A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260185(P2011−260185)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】