説明

排気システム及び排気方法

【課題】フラットな物品、例えばシリコン基板の、発生する反応ガスを吸引しながら行う片面の湿式化学的な処理を可能にし、その際、気泡の破裂に基づく上面の所望されない濡れの上述の問題を、この面の保護を必要とすることなく回避する装置及び方法を提供する。
【解決手段】捕集チャンバ(10)が、出口(9)の領域に流入開口(11)を備えるとともに、入口(8)の領域に流出開口(12)を備えて、排気通路(13)を形成し、搬送ガス(G)が、排気通路(13)を搬送方向(7)とは逆向きに、かつ搬送平面(6)及び搬送方向(7)に対して略平行に通流可能であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の化学的な連続処理の枠内で反応性のガスを含む空気を搬出する装置及び方法の改良に係り、特に、搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去するための装置であって、入口と、処理液を収容するための処理槽と、フラットな物品を搬送方向で水平に搬送するための搬送平面を備える連続搬送装置と、出口と、ガス状の反応生成物のための、搬送平面の上方に配置された捕集チャンバとを備える装置、並びに当該装置の使用下で搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、フラットな物品の湿式化学的な処理のための連続処理設備あるいは通過型処理設備(Durchlaufanlage)が公知である。この種の物品は、例えば、半導体及び太陽電池の製造において使用されるシリコン基板である。ある特定のプロセスステップにおいては、このような基板の、片面のみの湿式化学的な処理が所望されている。この処理の際、基板の一方の面のみが処理にかけられ、これに対して、他方の面は、元の状態にとどまるべきである。典型的には、この種の処理は、湿式化学式の設備で実施される。基板は、処理液を通して、又は処理液の表面に沿って搬送される。
【0003】
片面の湿式化学的な処理のために、従来技術において、種々異なる方法が公知である。
【0004】
第1の態様においては、処理したくない面を保護層により保護する。保護層は、(湿式化学的な)プロセスステップの前に被着すべきであり、通常は、このプロセスステップの後に再び除去されなければならない。この態様の欠点は、保護層の被着及び除去に要する付加的な手間あるいはコストである。
【0005】
別の態様においては、処理したくない面を、全面的に、例えばバキュームチャックに当接させるか、又は少なくとも、例えばシールリップにより形成される縁部領域において、封止する対応面に当接させる。これにより、湿式化学的なプロセスステップ中、処理液が、基板の、処理したくない面に到達し得ない。装置コストが高く、かつしばしば接触に対して敏感な基板面が、保護を行う対応面により損傷を被るか、又は汚損される場合があるという事実は、欠点である。
【0006】
さらに別の態様においては、処理したい基板を処理液の表面に沿って、基板の下面及び場合によっては縁部だけが処理液と接触するように案内する。このような処理法は、例えば欧州特許第1733418号明細書に記載されている。搬送が処理液を通して相応に注意深く実施される限りにおいて、基板の上面は、保護層を必要とすることなしにか、又は対応面による接触を必要とすることなしに、処理されずに済む。
【0007】
しかし、問題は、湿式化学的な処理時にしばしば発生する、化学反応に起因する気泡、例えば窒素酸化物(NO)である。気泡は、基板の下面に集積し、最終的に、搬送方向で見て、角張った基板の後縁において、あるいは丸みを帯びた基板の後側の領域において液面に上昇し、最終的に破裂する。気泡の破裂時に微細な滴が発生する場合があり、このような滴は、不都合な形で、基板の上面、特に後方を向いた領域を汚染し、処理結果にネガティブな影響を及ぼす。このために、(保護されていない)基板上面は、このガス及び場合によっては別の反応性のガスに曝されてしまい、このことは、やはり、この面の望ましくない変化に至らしめる場合がある。
【0008】
次に、反応ガスは、処理液及び基板の上方の領域に集合する。それゆえ、このような連続処理設備は、典型的には、反応ガスの吸い出しを行う。公知の設備の吸い出しは、常に、直接鉛直方向上方に、典型的には保護格子を通して実施される。反応ガスを迅速に導出するために、吸い出しは、通常、全負荷下で作動する。これにより、吸い出し能力のさらなる上昇はもはや不可能である。保護格子は、吸い出しの流量(Volumenleistung)をさらに低減させる付加的な流動抵抗をなす。しかし、消費電力(Leistungsaufnahme)のさらなる増大は、経済的ではないため、所望されないガス状の反応生成物の濃度は、吸い出しにもかかわらず、高止まりしたままである。さらにこの種の吸い出しにおいて、処理液の表面が波立って、基板の上面の濡れに至らしめる可能性があることは問題である。加えて、上向きに方向付けられた過度に強い吸引は、基板の持ち上げに至らしめる場合がある。このことは、いずれにしても、回避されなければならない。また、鉛直方向の吸引が、気泡の破裂時に放出される液滴を基板の上面に運ぶ可能性も完全に排除することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1733418号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ本発明の課題は、フラットな物品、例えばシリコン基板の、発生する反応ガスを吸引しながら行う片面の湿式化学的な処理を可能にし、その際、気泡の破裂に基づく上面の所望されない濡れの上述の問題を、この面の保護を必要とすることなく回避する装置及び方法を提供することである。その際、消費電力のさらなる上昇は回避されることが望ましい。
【0011】
さらに本発明は、不十分な吸い出しの問題に対処するために、既存の装置を簡単かつ安価に改変するために適していることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る、搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去するための装置では、捕集チャンバが、出口の領域に流入開口を備えるとともに、入口の領域に流出開口を備えて、排気通路を形成し、搬送ガスが、排気通路を搬送方向とは逆向きに、かつ搬送平面及び搬送方向に対して略平行に通流可能であるようにした。
【0013】
好ましい態様は、従属請求項に係る発明である。
【0014】
好ましい態様において、流入開口が、装置の出口により形成されており、かつ/又は流出開口が、装置の入口により形成されている。
【0015】
好ましい態様において、本発明に係る装置が、さらに、排気通路の領域に配置されるかつ/又は排気通路に流動接続されるガス圧送装置及び/又は搬送ガスの流動速度に影響を及ぼす手段を有している。
【0016】
好ましい態様において、本発明に係る装置が、さらに、ガス圧送装置及び/又は流動速度に影響を及ぼす手段を制御するための制御部を有している。
【0017】
好ましい態様において、本発明に係る装置が、さらに、搬送ガスの流れを水平に整流する手段を有している。
【0018】
好ましい態様において、捕集チャンバの領域に、少なくとも1つの別の流入開口及び/又は流出開口が配置されている。
【0019】
好ましい態様において、搬送ガスが空気であり、かつ/又は搬送ガスの通流量が、排気通路の1mの横断面積に関して、0.1〜5m/min、好ましくは1m/minに設定されており、かつ/又は流動速度の、搬送方向とは逆向きの成分が、搬送平面の領域において、0.01〜5m/s、好ましくは1m/sである。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る、上述の装置の使用下で搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去する方法では、搬送ガスを排気通路内で搬送方向とは逆向きに、かつ搬送平面及び搬送方向に対して略平行に案内するようにした。
【0021】
好ましい態様は、従属請求項に係る発明である。
【0022】
好ましい態様において、上述の装置が、入口と、処理液を収容するための処理槽と、フラットな物品を搬送方向で水平に搬送するための搬送平面を備える連続搬送装置と、出口と、ガス状の反応生成物のための、搬送平面の上方に配置された捕集チャンバとを備え、捕集チャンバが、出口の領域に流入開口を備えるとともに、入口の領域に流出開口を備えて、排気通路を形成するようにする。
【0023】
好ましい態様において、搬送ガスが有する流動を、排気通路の領域に配置されるかつ/又は排気通路に流動接続される少なくとも1つのガス圧送装置により形成するかつ/又は搬送ガスの流れを水平に整流する手段により変向する。
【0024】
好ましい態様において、排気通路内の搬送ガスの流動の速度を、搬送ガス内で導出されるガス状の反応生成物の濃度に基づいて制御する。
【0025】
その他の有利な態様は、明細書及び図面から看取可能である。
【0026】
以下に、まず、本発明の根底にある装置について説明した後、この種の装置により実施可能な本発明に係る方法について説明する。
【0027】
本発明に係る装置は、連続処理設備からガス状の反応生成物を除去するために役立ち、連続処理設備自体は、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理することを予定されている。本発明に係る装置は、入口と、例えばエッチング液又はクリーニング液であってよい処理液を収容するための処理槽と、フラットな物品を搬送区間に沿って搬送方向で水平に搬送するための搬送平面を備える連続搬送装置であって、例えばロール、ベルト、バンド、ビーム等が考慮される連続搬送装置と、処理すべき物品が装置内に進入するか、あるいは装置から進出する出口と、ガス状の反応生成物のための、搬送平面の上方に配置された捕集チャンバとを有している。搬送方向は、入口から出口への方向により規定される。典型的には、この捕集チャンバは、側方において相応の壁により画成されており、上方において天板により画成されている。本発明に係る装置は、捕集チャンバが、出口の領域に流入開口を備えるとともに、入口の領域に流出開口を備えて、排気通路を形成し、搬送ガスが排気通路を搬送方向とは逆向きに通流可能であるようになっていることを特徴とする。換言すれば、本発明に係る装置は、搬送区間の一端の領域に流入開口を備え、搬送区間の他端の領域に流出開口を備え、その結果、新気入口と排気出口との間に、捕集チャンバを含む排気通路が形成されており、冒頭で述べた搬送ガスが排気通路を水平方向で均一に通流可能であるようになっている。これにより、本発明に係る装置は、公知の装置とは、排気、つまり、ガス状の反応生成物を含む搬送ガスが、鉛直方向で導出されるのではなく、搬送平面に対して平行に延びる少なくとも1つの流動成分を有する点で相違する。
【0028】
これにより生じるガス流は、略水平に、つまり搬送平面に対して平行に、かつさらに搬送方向に対して平行に延びる。強い吸引による基板の持ち上げ又は基板表面を汚染しかねない波の発生は、効果的に抑制される。新気入口から排気出口に至る道中、流動技術的な障害物がガス流中に存在しないので、鉛直方向に働く装置の場合と比べると、低い出力で十分である。
【0029】
汚染防止の効果は、特に、新気入口が出口の領域に配置され、排気出口が入口の領域に配置され、その結果、搬送ガスが排気通路を装置の出口から入口にかけて通流可能であることにより達成される。これに応じて、搬送ガスの通流は、搬送方向とは逆向きに実施される。新気入口及び排気出口を本発明のように配置した効果は、基板の後側の領域において上昇してそこで破裂する気泡に起因する冒頭で述べた滴が、基板の表面から遠ざかるように運ばれることにある。これにより、滴からなる微細な霧は、もはや、滴を形成する気泡が後縁において上昇する基板の表面に到達し得ない。
【0030】
先行する基板の後縁において発生した滴による後続の基板の汚染を回避するために十分な大きさの、先行の基板に対する間隔が形成されていなければならないことは、自明である。
【0031】
好ましくは、流入開口が、装置の出口により形成されており、かつ/又は流出開口が、装置の(基板)入口により形成されている。これにより、装置の特に簡単な構造が達成される。
【0032】
択一的には、搬送ガスを装置に流入させ、再び装置から流出させる特別な開口が、入口及び出口の領域に設けられていてもよい。このような開口は、例えば、入口及び/又は出口の直接上方に又は側方に配置されていてよい。さらに、入口あるいは出口の領域における適当な箇所に終端あるいは始端を有する限りにおいて、搬送ガスを別の場所で吸入あるいは放出する管路も可能である。
【0033】
搬送ガスを圧送するために、適当なガス圧送装置が存在するか、又は本発明に係る装置に機能的に対応配置されていなければならないことは、自明である。これに応じて、本発明に係る装置が、排気通路の領域に配置されるかつ/又は排気通路に流動接続されるガス圧送装置を有していると有利である。本発明に係る装置の部分セグメントにそれぞれ新気を供給するか、あるいは部分セグメントからそれぞれ排気を吸い出す複数のこの種のガス圧送装置が存在していてもよいことは、自明である。やはり、吹き込み装置と吸い出し装置とを互いに組み合わせることも可能である。単数又は複数のガス圧送装置は、直接、捕集チャンバ内に配置されていてもいいし(例えばベンチレータとして)、又は搬送ガスは、一時的に、かつ本発明による水平の通流を実質的に変更することなしに、鉛直又は側方に導出される管路を通して案内され、相応に加速される。
【0034】
特に好ましい態様において、本発明に係る装置は、入口の領域に配置されている吸引カップ(Saugglocke)を有している。吸引カップは、排気を吸い込み、装置外に送り出すのに十分な大きさの吸引カップ開口を有している。特に好ましくは、吸引カップ開口は、排気通路の領域内(気相中、水平の吸い出し)に配置されている。択一的には、吸引カップ開口は、排気通路の上方(気相の上方、鉛直の吸い出し)に位置決めされている。
【0035】
別の態様において、本発明に係る装置は、搬送ガス、つまり新気及び/又は排気の流動速度に影響を及ぼす手段あるいは制御する手段を有している。この種の手段は、好ましくは、新気を供給するかつ/又は排気を導出する構成部材の横断面積を変更して、排気流の強さ及びガス圧送装置の出力の変化に適当に影響を及ぼすことが可能なスロットルバルブ又はこれに類するものである。
【0036】
特に好ましくは、本発明に係る装置は、ガス圧送装置あるいは流動速度に影響を及ぼす手段を制御するための制御部も有している。これにより、流動速度の変更は、自動的にも実施可能である。
【0037】
別の態様において、本発明に係る装置は、搬送ガスの流れを水平に整流する手段を有している。このことは、場合によってはまず鉛直に又は側方から捕集チャンバ内に流入する搬送ガスが、じゃま板(Blende)、案内板(Leitplatte)又はこれに類するものを介して、本発明による流動が成立するように変向可能であることを意味している。搬送ガスあるいは排気の流出についても、相応に、上述のように形成されていてよいことは、自明である。
【0038】
特に好ましくは、典型的には上方から排気通路に流入する新気を変向するために、(基板)出口の領域、つまり搬送区間の終端に単数又は複数の変向カップ(Umlenkglocke)が存在する。均一化のために、空気は、好ましくはパーフォレーションが施されたカバー領域(格子)からこのような変向カップ内に導入可能である。搬送ガスは、最終的に水平方向に、これにより搬送平面と、搬送平面内で搬送されるフラットな物品とに対して平行に、かつ搬送方向とは真逆の方向で変向カップを後にする。
【0039】
特に好ましくは、パーフォレーションの面積は、変向カップの開口の面積と少なくとも同じ大きさである。これらの開口の面積は、好ましくは存在する吸引カップの前述の吸引カップ開口の面積と好ましくは少なくとも同じ大きさである。
【0040】
別の態様において、捕集チャンバの領域に、少なくとも1つの別の流入開口及び/又は流出開口が配置されている。このことは、本発明に係る装置が著しく長尺であるか、又は捕集チャンバがそれぞれ異なる処理浴、ひいてはセグメントを備えるとき、常に有利である。特に好ましくは、これらの入口及び/又は出口の各々が、別個のガス圧送装置に接続されている。こうして、常に、搬送ガスの十分な搬送速度が、極端に高出力あるいは高性能のガス圧送装置を設けることなく保証可能であるか、又は連続処理設備のそれぞれ異なるセグメントにおいて発生するそれぞれ異なる反応ガスが、混じり合わないようにすることができる。ガス圧送装置が相応にフレキシブルに制御可能である場合、やはり簡単に、それぞれ異なる、簡単に変更可能な流動速度、及び場合によっては流動方向が達成される。
【0041】
特に好ましい態様において、搬送ガスは空気である。もちろん、それぞれの用途に応じて、別のガスであってもよい。これには、洗浄ガス又は処理ガスも含まれる。
【0042】
さらに、搬送ガスの好ましい通流量は、排気通路の1mの横断面積に関して、0.1〜5m/min、特に好ましくは1m/minに設定されており、かつ/又は流動速度の、搬送方向とは逆向きの(かつ搬送方向に対して平行な)成分が、搬送平面の領域において、0.01〜5m/s、特に好ましくは1m/sである。
【0043】
本発明は、従来技術において公知であるような装置の装備変換のための装備変換用セットの提供にも供することができる。したがって、この種の装備変換用セットは、鉛直の通流が予定され、捕集チャンバを上方において画成している元来の排気開口を閉鎖するための遮断プレートと、入口及び出口の領域に配置すべき新気入口及び/又は排気出口とを備え、新気入口は、外部への流動接続を備え、排気出口は、ガス圧送装置への流動接続を備える。換言すると、装備変換用セットは、鉛直の排気吸い出しを行う従来慣用の設備を、水平の通流を行う本発明に係る設備に造り替えるために、すべての主要なコンポーネントを提供する。好ましくは、新気入口及び排気出口が設けられ、典型的には既存のガス圧送装置の接続が、搬送方向とは逆向きの通流に至らしめることは、自明である。その他の上述のコンポーネント、例えば、特に、搬送ガスの流れを水平に整流する手段が、上述の装備変換用セットに含まれていてもよいことは、自明である。
【0044】
上述の装備変換用セットの好ましい態様では、排気出口の上方に配置すべき遮断プレート(この遮断プレートのみ)が、その上方に存在する在来の排気開口に通じる貫通部を有している。こうして、排気が、流動経路の終端においてのみ排気チャンバを通して、ひいては装備変換された連続処理設備の入口において鉛直方向で吸引されるのに対して(鉛直方向で吸引されたとしても)、捕集チャンバのその他の領域にあっては、在来の鉛直の開口がその他の遮断プレートによって閉鎖されているため、本発明により水平方向でのみ流動可能であることが保証される。
【0045】
上述したように、本発明は、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を、搬送ガスを媒介して除去する方法にも関する。
【0046】
したがって、本発明は、上述の装置の使用下で搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去する方法に関し、本発明に係る方法は、搬送ガスを排気通路内で搬送方向とは逆向きに、かつ搬送平面及び搬送方向に対して略平行に案内することを特徴とする。
【0047】
繰り返しを避けるため、本発明に係る装置についての上述の説明を参照されたい。
【0048】
ガス状の反応生成物を搬出するための搬送ガスの流動方向は、基本的に、搬送方向に対して平行に延びる単数又は複数の成分を有している。捕集チャンバ内部のある場所における流動の各々のベクトルは、これらの成分の単数又は複数の成分、例えば鉛直の成分、搬送方向を指向する成分、他の両成分に対して垂直の側方に配向された成分を有している。これにより、成分は、好ましくは、連続処理設備の相応の主方向と合致する直角の座標系の軸上を延びる。本発明において、搬送平面に対して平行かつ搬送方向に対して平行に指向する成分は、ゼロであってはならず、かつ搬送方向に対して逆向きに延びていなければならない。このことは、流動が鉛直の成分だけからなるわけではないことを意味している。流動がセグメント状に延びる場合、つまり、入口から出口にかけて連続した、搬送平面に対して平行な延びを有することができない場合、相応に、個々の又はセグメント状の流動のそれぞれの成分が、相応に配向されていなければならない。後者は、特に、連続処理設備が、それぞれ互いに独立的に本発明による流動成分を有する複数の排気通路セグメントを有する場合である。特に断りがない限り、以下では、簡単にするため、唯一の排気通路の存在を前提とする。
【0049】
好ましい態様において、搬送ガスの流動方向は、搬送平面に対して平行に延びる成分のみを有している。このことは、流動が水平の成分のみからなることを意味している。この種の成分は、例えば、搬送方向に対して横方向、つまり(搬送方向で見て)左から右にかつ/又は右から左に延びることができる。
【0050】
別の、特に好ましい態様において、搬送ガスの流動方向は、付加的に、搬送方向に対して平行に延びる成分のみを有している。このことは、流動が、搬送方向及び/又は搬送方向とは逆向きに延びる水平の成分のみからなることを意味している。
【0051】
搬送平面に対して平行に延びる成分が、搬送方向に対して必ずしも平行に延びているわけではないことは、自明である。しかし、反対に、搬送方向に対して平行に延びる成分は、搬送平面に対しても必ず平行に延びている。
【0052】
さらに好ましくは、これらの成分が、搬送平面に対して平行に延びるだけでなく、搬送方向に対して可及的平行に、つまり連続処理設備の入口と出口との間を延びている。
【0053】
特に好ましくは、(少なくとも可及的に)各々の/すべての成分が出口から入口に配向されており、ひいては搬送方向とは逆向きに指向している。例えば、流入開口及び/又は流出開口の領域において、構造上の理由から、本発明の思想を逸脱することなく、この方向から偏倚しなければならない場合があることは、自明である。上述のような向流の場合、この偏倚は、特に、連続処理設備の入口領域において問題となることはない。これは、入口領域では、基板の処理が開始されたばかりであるので、気泡の発生が想定されないからである。
【0054】
好ましくは、搬送ガスが、排気通路の領域に配置されるかつ/又は排気通路に流動接続される少なくとも1つのガス圧送装置によって形成される、かつ/又は搬送ガスの流れを水平に整流する手段によって配向、つまり変向される流動を有している。このために好適に使用されるガス圧送装置及び搬送ガスの流れを水平に整流する手段については、既に上述したので、当段落での繰り返しは省略する。
【0055】
別の態様において、変向の度合又は強さは、流動速度に依存している。このことは、流動速度が低いとき、大きな半径及び流動にとって好適な形態での緩やかな変向を必要とする高い流動速度の場合と比較して、強く、しかも突然の変向が可能であることを意味している。
【0056】
低い流動速度は、0.01〜1m/sの範囲にあり、これに対して、高い流動速度は、5m/s以上であってよい。
【0057】
別の態様において、排気通路内の搬送ガスの流動の速度を、搬送ガス内で導出されるガス状の反応生成物の濃度に基づいて制御する。それゆえ、低濃度のものには、低速の流動速度で十分である。こうして、可及的経済的にその都度の所与の条件に対応させることが可能である。好ましくは、排気の負荷状況あるいは汚れ具合を測定して、ガス圧送装置あるいは対応して設けられるスロットルバルブの制御部に伝送する適当なセンサが設けられている。その結果、流動速度の必要に応じた閉ループ制御が可能となる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の上述の構成により、フラットな物品、例えばシリコン基板の、発生する反応ガスを吸引しながら行う片面の湿式化学的な処理を可能にし、その際、気泡の破裂に基づく上面の所望されない濡れの上述の問題を、この面の保護を必要とすることなく回避することができる。以下に、本発明の有利な実施の形態について概略的に図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来技術における排気装置を備える連続処理設備を示す図である。
【図2】本発明に係る装置を備える連続処理設備を示す図である。
【図3】本発明に係る方法の実施時の個別のフラットな物品の領域における状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1に示した装置は、大まかに、公知の連続処理設備1の排気装置の構造を概略的に示したものである。当該設備は、処理液Fで満たされた処理槽4を有している。処理液Fの表面に沿って、本形態においては基板とも称呼されるフラットな物品3が、水平に搬送方向7で搬送平面6上を案内される。このために連続搬送装置5が使用される。連続搬送装置5は、図示の実施の形態では、十分に密に相前後して配置された多数のロールを有している(図中、大きな黒塗りの円として図示した。)。基板3は、鉛直方向で正確に調節された位置に基づいて、片面だけ、すなわち下面だけで、処理液Fにより処理される。
【0061】
処理液Fで満たされた処理槽4の上方には、捕集チャンバ10が存在する。捕集チャンバ10は、格子により、捕集チャンバ10の上方に存在する排気チャンバから仕切られている。基板3は、入口8を通って捕集チャンバ10に進入し、出口9を通って捕集チャンバ10を後にする。捕集チャンバ10は、ガス状の反応生成物2を捕集するために役立つ(全図において、小さな白抜きの円として図示した。)。これらの反応生成物2は、化学的な処理の際に、特に基板3の下面において発生し、処理液Fから浮上する。反応生成物2は、基板上面の所望されない処理を回避するために、搬出されなければならない。このために、搬送ガスG、本形態においては周囲空気が、入口8及び出口9を通して吸い込まれる。搬送ガスGは、途中、捕集チャンバ10を上方で画成する格子を通して反応生成物2を連行する。搬送ガスGの流動は、実線で示す太字の矢印により概略的に示してある。反応生成物2の流動経路のいくつかは、点線で示す細字の矢印により概略的に示してある。図1から看取可能であるように、これらの経路は、最短経路で処理液Fの表面から格子に向かって、かつ格子を通って延びるのではなく、まず、コントロール不能な状態で、格子の十分近傍に来るまで捕集チャンバ10内を漂流する。この挙動の理由は、搬送ガスGの、捕集チャンバ10の中央の領域における鉛直方向の流動が弱すぎることにある。それゆえ、まさに中央の領域において、ガス状の反応生成物2による基板上面の所望されない処理がなされる危険度が高まる。さらに、反応生成物2が処理液Fの表面を通過する際、形成された滴は、コントロール不能に全方位に飛散する(図示せず)。これにより、やはり、基板表面の汚染(コンタミネーション)の危険が生じる。
【0062】
これらの問題は、図2に示した本発明に係る装置により効果的に回避される。装置は、搬送区間の一端(出口9)の領域に流入開口11を備え、搬送区間の他端(入口8)の領域に流出開口12を備える。その結果、流入開口11と流出開口12との間には、捕集チャンバ10を含む排気通路13が形成されている。冒頭で言及した搬送ガスGは、排気通路13を、水平方向で均一に、搬送方向7とは逆向きに通流可能である。
【0063】
出口9の領域において捕集チャンバ10に流入する搬送ガスGが、可及的小さな鉛直方向の成分を有しているように、出口9の領域に、搬送ガスGの流れを水平に整流する手段14が存在する。この手段14は、本実施の形態では、バッフルプレート(Prallblech)として形成されている。
【0064】
排気通路13が、本実施の形態では連続処理設備1の入口8の領域に配置されている端部において初めて、流出開口12を有しているので、搬送ガスGは、略水平に捕集チャンバ10を貫流する。このことから以下の利点が生じる。
【0065】
流動は、捕集チャンバ10内の至る所で同じ速度及び同じ強さで流れる。公知の設備において発生するように、搬出が不均一となることはない。
【0066】
格子等が搬送ガスGの流動を妨げることがないので、ガス圧送装置(図示せず)は、相応に小型に設定可能であるか、又はサイズが決まっているのであれば、典型的にはさらに出力の余裕を有する。
【0067】
搬送ガスGが搬送方向7とは逆向きに流動することにより、飛沫による基板上面の汚染は回避される。
【0068】
この様子は、図3に示してある。連続搬送装置5のロールが、回転矢印により概略的に示したように、時計回りに回転するので、搬送方向7は、図中、左から右に延びている。基板3の鉛直位置は、基板3の下面のみが処理液Fと接触するように、正確に調節されている。ただし、これに匹敵する処理結果は、(図示しない変化態様において)処理液Fがロール5に受容され、「間接的」に、図示の位置より若干高く位置決めされた基板3に移送されても、達成可能である。
【0069】
本発明において要求されるように、ガス状の反応生成物2を搬出するための搬送ガスGの流動方向は、搬送方向7とは逆向きに延びる成分を有している。流動方向は、それどころか主として、搬送平面6に対して平行に延びる成分を有している。例外は、新気入口11及び排気出口12の領域である。これらの領域における流動は、構造に起因して増大する鉛直の成分も有している。
【0070】
看取可能であるように、基板3の下面に集合するガス状の反応生成物2は、基板の後縁(図中、左)の領域において上昇する。実線で示した太字の矢印により概略的に示した搬送ガスGの流動により、気泡の破裂時に形成される飛沫は、基板3の後縁及び表面から離間する方向(図中、左方向)に搬送される。これにより、基板上面の汚染を懸念する必要がなくなる。これにより、本発明に係る装置及び本発明に係る方法は、従来技術において公知の装置及び方法とは大きく相違する。
【0071】
本発明は、好ましくは、フラットな物品、例えばシリコン基板の、発生する反応ガスを吸引しながら行う片面の湿式化学的な処理を可能にし、その際、気泡の破裂に基づく上面の所望されない濡れの上述の問題を、この面の保護を必要とすることなく回避する装置及び方法を提供する。一実施の形態は、既存の装置を簡単かつ安価に改変することを可能にする。
【符号の説明】
【0072】
1 連続処理設備、 2 ガス状の反応生成物、 3 フラットな物品、基板、 4 処理槽、 5 連続搬送装置、ロール、 6 搬送平面、 7 搬送方向、 8 入口、 9 出口、 10 捕集チャンバ、 11 新気入口、流入開口、 12 排気出口、流出開口、 13 排気通路、 14 水平に整流する手段、 F 処理液、 G 搬送ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ガス(G)を用いて、フラットな物品(3)の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備(1)からガス状の反応生成物(2)を除去するための装置であって、入口(8)と、処理液(F)を収容するための処理槽(4)と、前記フラットな物品(3)を搬送方向(7)で水平に搬送するための搬送平面(6)を備える連続搬送装置(5)と、出口(9)と、前記ガス状の反応生成物(2)のための、前記搬送平面(6)の上方に配置された捕集チャンバ(10)とを備える装置において、前記捕集チャンバ(10)が、前記出口(9)の領域に流入開口(11)を備えるとともに、前記入口(8)の領域に流出開口(12)を備えて、排気通路(13)を形成し、前記搬送ガス(G)が、前記排気通路(13)を前記搬送方向(7)とは逆向きに、かつ前記搬送平面(6)及び前記搬送方向(7)に対して略平行に通流可能であるようになっていることを特徴とする、搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去するための装置。
【請求項2】
前記流入開口(11)が、前記装置の前記出口(9)により形成されており、かつ/又は前記流出開口(12)が、前記装置の前記入口(8)により形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
さらに、前記排気通路(13)の領域に配置されるかつ/又は前記排気通路(13)に流動接続されるガス圧送装置及び/又は前記搬送ガス(G)の流動速度に影響を及ぼす手段を有している、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
さらに、前記ガス圧送装置及び/又は前記流動速度に影響を及ぼす手段を制御するための制御部を有している、請求項3記載の装置。
【請求項5】
さらに、前記搬送ガス(G)の流れを水平に整流する手段(14)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記捕集チャンバ(10)の領域に、少なくとも1つの別の流入開口及び/又は流出開口が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記搬送ガス(G)が空気であり、かつ/又は前記搬送ガス(G)の通流量が、前記排気通路(13)の1mの横断面積に関して、0.1〜5m/min、好ましくは1m/minに設定されており、かつ/又は流動速度の、前記搬送方向(7)とは逆向きの成分が、前記搬送平面(6)の領域において、0.01〜5m/s、好ましくは1m/sである、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の装置の使用下で搬送ガス(G)を用いて、フラットな物品(3)の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備(1)からガス状の反応生成物(2)を除去する方法であって、前記搬送ガス(G)を前記排気通路(13)内で前記搬送方向(7)とは逆向きに、かつ前記搬送平面(6)及び前記搬送方向(7)に対して略平行に案内することを特徴とする、搬送ガスを用いて、フラットな物品の片面を湿式化学的に処理するための連続処理設備からガス状の反応生成物を除去する方法。
【請求項9】
前記装置が、入口(8)と、処理液(F)を収容するための処理槽(4)と、前記フラットな物品(3)を搬送方向(7)で水平に搬送するための搬送平面(6)を備える連続搬送装置(5)と、出口(9)と、前記ガス状の反応生成物(2)のための、前記搬送平面(6)の上方に配置された捕集チャンバ(10)とを備え、前記捕集チャンバ(10)が、前記出口(9)の領域に流入開口(11)を備えるとともに、前記入口(8)の領域に流出開口(12)を備えて、排気通路(13)を形成するようにする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記搬送ガス(G)が有する流動を、前記排気通路(13)の領域に配置されるかつ/又は前記排気通路(13)に流動接続される少なくとも1つのガス圧送装置により形成するかつ/又は前記搬送ガス(G)の流れを水平に整流する手段(14)により変向する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記排気通路(13)内の前記搬送ガス(G)の流動の速度を、前記搬送ガス(G)内で導出されるガス状の反応生成物(2)の濃度に基づいて制御する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−38424(P2013−38424A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174258(P2012−174258)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(504382349)レナ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】