説明

排気流路制御弁

【課題】エンジンの回転速度が非常に高い場合にも、渦巻状の弁体を十分に開放してバイパス流路に必要とされる十分な排気流量を流通させることが可能であり、排気圧力の上昇でエンジンの出力が低下することを確実に防止することができる。
【解決手段】バイパス流路と連通してエンジンからの排気が流通する略筒状のハウジング20と、ハウジング20に周縁近傍を当接して固定され、ハウジング20内の流通路を開閉する渦巻状の弁体30と、弁体30を常時閉じる方向に付勢するねじりコイルばねである弁ばね40と、弁体30に固着され、弁ばね40のコイル部41を保持する弁ばねホルダ50とを備え、ハウジング20に設けられるばね受23の貫通孔24に、弁ばね40のアーム部42を挿通し、アーム部42の先端側に、ハウジング20側に近づくように傾斜する屈曲部422を設ける排気流路制御弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンの排気系に設けられる排気流路制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンの排気系に於ける消音器内に、排気が流通する通常の排気流路とは別に排気のバイパス流路を設けると共に、排気の圧力が所定値以上になると開放する排気流路制御弁を設け、排気流路制御弁でバイパス流路を開閉する構造が知られている。この排気流路制御弁は、排気圧力の低いエンジンの低速回転時には閉塞して、エンジンからの排気を通常の排気流路に流して消音し、大気に放出するようにし、又、排気圧力の高いエンジンの高速回転時には開放して、エンジンからの排気を通常の排気流路とバイパス流路とに流すようにし、排気圧力の上昇によるエンジンの出力低下の防止を図るものである。
【0003】
このような排気流路制御弁としては、例えばバイパス流路と連通してエンジンからの排気が流通する略筒状のハウジングと、ハウジングの外周縁のフランジ部に外周部を当接して固定され、ハウジング内の流通路を開閉する渦巻状の弁体と、弁体を常時閉じる方向に付勢するねじりコイルばねである弁ばねと、弁体に一体的に固着され、弁ばねのコイル部を係合保持する略半円周状の弁ばねホルダから構成されるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−113834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の排気流路制御弁は、弁バネの付勢で弁体の開放度を制御してバイパス流路への排気流量を制御するものであり、排気圧力の高いエンジンの高速回転時に渦巻状の弁体を適度に開放してバイパス流路への流れを形成することができる。しかし、エンジンの回転速度がより高くなって排気圧力がより高くなり、バイパス流路への排気流量を増大する必要がある場合に、実際には渦巻状の弁体を十分に開放することができずに、バイパス流路に必要とされる十分な排気を流すことができないという問題がある。斯様なバイパス流路への排気流量の制限は、排気圧力(背圧)を上昇させ、エンジンの出力を低下させてしまう。
【0006】
本発明は上記問題を解消するために提案するものであって、エンジンの回転速度が非常に高い場合にも、渦巻状の弁体を十分に開放してバイパス流路に必要とされる十分な排気流量を流通させることが可能であり、排気圧力の上昇でエンジンの出力が低下することを確実に防止することができる排気流路制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排気流路制御弁は、バイパス流路と連通してエンジンからの排気が流通する略筒状のハウジングと、前記ハウジングに周縁近傍を当接して固定され、前記ハウジング内の流通路を開閉する渦巻状の弁体と、前記弁体を常時閉じる方向に付勢するねじりコイルばねである弁ばねと、前記弁体に固着され、前記弁ばねのコイル部を保持する弁ばねホルダとを備え、前記ハウジングに設けられるばね受の貫通孔に、前記弁ばねのアーム部を挿通し、前記アーム部の先端側に、前記ハウジング側に近づくように傾斜する屈曲部を設けることを特徴とする。
前記構成では、屈曲部が貫通孔内に位置するようになった際に、弁体の開放量の増加に必要となる圧力の増分を屈曲部がない構成の場合よりも低下させることができる。従って、エンジンの回転速度が非常に高い場合にも、渦巻状の弁体を十分に開放してバイパス流路に必要とされる十分な排気流量を流通させることが可能であり、排気圧力(背圧)の上昇でエンジンの出力が低下することを確実に防止することができる。これにより、例えば自動車のエンジンの低速回転時に要求される低騒音化と、高速回転時に要求される低背圧化を確実に達成することができる。
【0008】
また、本発明の排気流路制御弁は、前記弁体の開放量の増加に必要とする圧力の増分が、前記アーム部の基部が前記貫通孔内に位置する場合より前記屈曲部が前記貫通孔内に位置する場合の方が低下することを特徴とする。
前記構成では、エンジンの高速回転時に一層スムーズに弁体の開放量を増やして排気流量を増大することが可能となり、例えば自動車のエンジンの高速回転時に要求される低背圧化をより確実に達成することができる。また、弁ばねに負荷される圧力を減少して弁ばねの耐久性を高めることができる。
【0009】
また、本発明の排気流路制御弁は、前記アーム部の基部に対する前記屈曲部の傾斜角度を1°〜15°とすることを特徴とする。
前記構成では、エンジンの高速回転時にバイパス流路に流れる排気流量を大幅に増やし、排気圧力(背圧)の上昇によるエンジンの出力低下をより確実に防止できる。また、弁ばねに負荷される圧力を減少して弁ばねの耐久性を確実に高めることができる。また、屈曲部の大きな傾斜角度で急激に弁体が全開になることを防止し、弁体の開放量を適度に制御しながら弁体を開放することができる。
【0010】
また、本発明の排気流路制御弁は、前記渦巻状の弁体を対となる渦巻板を重ね合わせて構成し、前記重ね合わせた渦巻板の合計の高さを4.2〜7.0mmとすることを特徴とする。
前記構成では、弁体の剛性を強めて排気脈動の振動を減衰することが可能となり、排気脈動で生ずる弁体の共振異音を抑制することができる。また、上記屈曲部による弁体の開放圧力の減少により、剛性の強い弁体でも高速回転時に確実に開放することができる。
【0011】
また、本発明の排気流路制御弁は、前記渦巻状の弁体を3枚以上の複数の渦巻板を重ね合わせて構成することを特徴とする。
前記構成では、弁体を構成する渦巻板間の摩擦作用を高めて排気脈動の振動を減衰することが可能となり、排気脈動で生ずる弁体の共振異音を抑制することができる。また、上記屈曲部による弁体の開放圧力の減少により、渦巻板間の摩擦作用の高い弁体でも高速回転時に確実に開放することができる。
【0012】
また、本発明の排気流路制御弁は、前記弁ばねのコイル部と前記弁ばねホルダとの間に振動を減衰する緩衝材を設けることを特徴とする。
前記構成では、排気脈動により弁ばねが共振し、弁ばねホルダを叩いて発生する異音を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の自動車は、本発明の排気流路制御弁をエンジンの排気系に備えることを特徴とする。前記本発明の自動車には、自動四輪車、自動二輪車など適宜の自動車が含まれる。
前記構成では、本発明の排気流路制御弁の効果を有する自動車を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排気流路制御弁或いはこれを用いた自動車は、エンジンの回転速度が非常に高い場合にも、渦巻状の弁体を十分に開放してバイパス流路に必要とされる十分な排気流量を流通させることが可能であり、排気圧力の上昇でエンジンの出力が低下することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施形態の排気流路制御弁の斜視図。
【図2】本発明による実施形態の排気流路制御弁の正面図。
【図3】本発明による実施形態の排気流路制御弁の平面図。
【図4】(a)は実施形態の排気流路制御弁に於ける弁体を構成する渦巻板の分解斜視図、(b)はその渦巻板を重ね合わせた弁体の斜視図。
【図5】(a)は図4の渦巻板を2枚重ね合わせた状態を示す縦断面図、(b)は図4は渦巻板を4枚重ね合わせた状態の弁体の縦断面図。
【図6】(a)実施形態の排気流路制御弁に於ける弁ばねのアーム部の先端周辺で基部が貫通孔内に配置されている状態を示す部分正面図、(b)はその屈曲部が貫通孔内に配置されている状態を示す部分正面図。
【図7】排気流路制御弁に負荷される圧力と排気流路制御弁を流れる排気流量との関係を示す図。
【図8】排気流路制御弁の弁体の変位と前記変位に必要な荷重の増分との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態の排気流路制御弁〕
本発明の実施形態の排気流路制御弁について説明する。本実施形態の排気流路制御弁10は、図1〜図3に示すように、自動車等のエンジンの排気系に於ける消音器内のバイパス流路等と連通してエンジンからの排気が流通する略筒状のハウジング20と、ハウジング20に周縁近傍に当接して固定され、ハウジング20内の流通路を開閉する渦巻状の弁体30と、弁体30を常時閉じる方向に付勢するねじりコイルばねである弁ばね40と、弁体30に固着され、弁ばね40のコイル部41を保持する略半円周状の弁ばねホルダ50と、弁ばねのコイル部41と弁ばねホルダ50との間に設けられる緩衝材60とを備え、弁ばね40の付勢力により弁体30の開放度を制御されながら排気圧力に応じて弁体30が開閉するものである。
【0017】
ハウジング20は、バイパス流路を構成するインナパイプ等に連通して接続し得るように筒状に形成され、その内側に排気が流通する流路を有する。ハウジング20の一端側にはフランジ21が設けられ、フランジ20の周縁の複数箇所(本実施形態では6箇所)にはハウジング20と反対側から内側に屈曲するようにして折返し片22が形成されている。また、フランジ21の周縁の折返し片22以外の2箇所には、側面視略L字形で略板状のばね受23が設けられており、ばね受23の略中央には貫通孔24が形成され、貫通孔24のハウジング20と反対側(図1の上側)の略半分には、後述するアーム部42の移動方向を規制する覆い状の規制部25が形成されている。
【0018】
弁体30は、図4及び図5に示すように、4枚の渦巻板31、32、33、34を重ね合わせて構成される。この4枚の渦巻板31、32、33、34の内、一方側(図示左側)に位置する2枚の渦巻板31、32は同方向の螺旋状で重ね合わされると共に、他方側(図示右側)に位置する2枚の渦巻板33、34は、一方側の渦巻板31、32とは逆向きで同方向の螺旋状で重ね合わされ、一方側の渦巻板31、32と他方側の渦巻板33、34が対となって2重螺旋状に重ね合わされる。そして、渦巻板31、32の半円形の中央部31a、32aの隣接する弦31b、32bと、渦巻板33、34の半円形の中央部33a、34aの隣接する弦33b、34bとを互いに突き合せ、弦31b、32b、33b、34bを溶接して渦巻状の弁体30が形成される。弁体30は、渦巻板31、32、33、34の重合部の外周縁近傍をハウジング20のフランジ21に接触するように重ねて、フランジ21と折返し片22との間に挟んで締め付け固定される。尚、各渦巻板31、32、33、34の厚さはそれぞれ0.3mm〜0.5mmとし、弁体30に於ける、重ね合わせた状態の渦巻板31〜34の合計の高さは4.2mm〜7.0mmになるようにすると好適である。
【0019】
弁ばね40は、図1〜図3に示すように、巻回されたコイル部41と、コイル部41の両端から突出する一対のアーム部42・42とから構成されるねじりコイルばねである。各アーム部42は、基部421と、先端側に設けられ、基部421からハウジング20側に近づくように傾斜する屈曲部422と、先端部に略直角に折り曲げられて形成されている折曲部423とから構成される。基部421に対する屈曲部422の傾斜角度は、後述する弁体30の開放量の増加に必要となる圧力の増分を屈曲部422がない構成の場合よりも低下させることが可能であれば適宜であるが、例えば5°、10°など1°〜15°とすると好適である。
【0020】
弁ばねホルダ50は、基台51と、基台51上に設けられている略半円周状の受部52と、基台51から起立する一対の起立片53・53とから構成され、基台51が弁体30の中央部に溶接等で一体的に取り付けられている。弁ばねホルダ50の受部52上には、金属ニットメッシュの圧縮成形品等の振動を減衰する緩衝材60が配設されており、後述する弁ばね40のコイル部41と弁ばねホルダ50との間の緩衝材60で、排気脈動による弁体30、弁ばね40の振動を減衰可能になっている。
【0021】
弁ばねホルダ50の受部52の緩衝材60上には、弁ばね40のコイル部41が配置され、コイル部41は一対の起立片53・53間に位置決め固定される。一対のアーム部42・42は、それぞれハウジング20のフランジ21・21に一体的に設けられたばね受23の貫通孔24に挿通して保持され、貫通孔24内を移動可能とされる。このアーム部42は、常時ハウジング20と反対方向に開き傾向にあり、その反力でコイル部41及び弁ばねホルダ50を介して弁体30の中央部がハウジング20側に移動付勢され、これによって弁体30の隣接する渦巻板31〜34が互いに密着状態に重なり合い、常時閉弁状態に保持されている。
【0022】
そして、排気流路制御弁10において、エンジンの高速回転時にハウジング20内の排気圧力が所定圧力以上に上昇すると、弁ばね40の付勢力に抗して弁体30が図2の右方に押し動かされ、互いに重なり合った弁体30の渦巻板31〜34の間に隙間が生じて開弁状態となる。この際、弁体30に固着された弁ばねホルダ50に保持された弁ばね40は弁体30と共に右方に移動して、図6(a)に示すように、ばね受23の貫通孔24内をアーム部42の基部421が摺動する。
【0023】
更に、エンジンの回転速度がより高速になってハウジング20内の排気圧力が上昇すると、弁体30、弁ばね40が図2の右方により移動し、弁体30の渦巻板31〜34の間の隙間が増大する。この際、図6(b)に示すように、ばね受23の貫通孔24内を摺動する部分がアーム部42の基部421からアーム部42の角度が変化する曲がり部を介して屈曲部422となると、アーム部42の傾斜角度が浅くなり、弁体30の開放量の増加に必要となる圧力の増分が屈曲部422がない場合に比べて低下した状態で、弁体30の開放量を増やすことができ、バイパス流路に十分な排気流量を流通させることができる。特に、本実施形態では、弁体30の開放量の増加に必要とする圧力の増分が、アーム部42の基部421が貫通孔24に位置する場合よりも屈曲部422が貫通孔24内に位置する場合の方が低下するようになっており、より開放量を増やしてバイパス流路に流れる排気流量を増やすことができる。
【0024】
尚、図7に排気流路制御弁に負荷される圧力と排気流路制御弁を流れる排気流量との関係を示す。図7中、SC(破線)は従来のアーム部42に屈曲部422がない弁ばね40を備える排気流路制御弁、S1(実線)はアーム部42に屈曲部422を備える本実施形態の排気流路制御弁10で、基部421に対する屈曲部422の傾斜角度が5°のもの、S2(一点鎖線)はアーム部42に屈曲部422を備える本実施形態の排気流路制御弁10で、基部421に対する屈曲部422の傾斜角度が10°のものであり、SC、S1、S2が重なり合っている部分は基部421或いはこれに対応する箇所が貫通孔24に摺動している部分に対応する。図7から明らかなように、屈曲部422がある場合の方が屈曲部422と貫通孔24とが摺動している部分において、排気圧力の上昇に伴う排気流量が大幅に増大し、更に、傾斜角度が5°よりも10°のものの方が排気流量の増加量が大きくなっている。
【0025】
また、図8に排気流路制御弁の弁体の変位と前記変位に必要な荷重の増分との関係を示す。図8中、TC(破線)は従来のアーム部42に屈曲部422がない弁ばね40を備える排気流路制御弁、T1(実線)はアーム部42に屈曲部422を備える本実施形態の排気流路制御弁10で、基部421に対する屈曲部422の傾斜角度が5°のもの、T2(一点鎖線)はアーム部42に屈曲部422を備える本実施形態の排気流路制御弁10で、基部421に対する屈曲部422の傾斜角度が10°のものであり、TC、T1、T2が重なり合っている部分は基部421或いはこれに対応する箇所が貫通孔24に摺動している部分に対応する。図8から明らかなように、屈曲部422がある場合の方が屈曲部422と貫通孔24とが摺動している部分において、弁体30の変位に必要に荷重の増分が大幅に低下し、更に、傾斜角度が5°よりも10°のものの方が荷重の増分が低下していることが分かる。
【0026】
その後、エンジンの回転速度がより一層高速になってハウジング20内の排気圧力が上昇すると、弁体30、弁ばね40が図2の右方により一層移動してアーム部42の先端の折曲部423がばね受23に当接し、それ以上の移動が阻止され、弁体30の渦巻板31〜34の間の隙間が全開となる。即ち、折曲部23のばね受23の当接により、弁体30の開放量の上限が規制されると共に、弁ばね40の離脱が防止される。
【0027】
本実施形態の排気流路制御弁10は、屈曲部422が貫通孔24内に位置するようになった際に開閉特性が変化し、弁体30の開放量の増加に必要となる圧力の増分を屈曲部422がない構成の場合よりも低下させることができ、特に、弁体30の開放量の増加に必要とする圧力の増分を、アーム部42の基部421が貫通孔24内に位置する場合より屈曲部422が貫通孔24内に位置する場合に低下させることができる。従って、エンジンの回転速度が非常に高い場合にも、渦巻状の弁体30を十分に開放してバイパス流路に必要とされる十分な排気流量を流通させることが可能であり、排気圧力(背圧)の上昇でエンジンの出力が低下することを確実に防止できる。また、弁ばね40に負荷される圧力を減少して弁ばね40の耐久性を高めることができる。
【0028】
また、アーム部42の基部421に対する屈曲部422の傾斜角度を1°〜15°など好適な範囲とすることにより、排気圧力(背圧)の上昇によるエンジンの出力低下のより確実な防止、弁ばね40の耐久性のより確実な向上を図ることができると共に、屈曲部422の大きな傾斜角度で急激に弁体30が全開になることを防止し、弁体30の開放量を適度に制御しながら弁体30を開放することができる。
【0029】
また、渦巻状の弁体30を4枚の渦巻板31〜34を重ね合わせて構成することにより、弁体30を構成する渦巻板31〜34間の摩擦作用を高めて排気脈動の振動を減衰することが可能となり、排気脈動で生ずる弁体30の共振異音を抑制することができる。また、屈曲部422による弁体30の開放圧力の減少により、渦巻板31〜34間の摩擦作用の高い弁体でも高速回転時に確実に開放することができる。また、弁ばね40のコイル部41と弁ばねホルダ50との間に振動を減衰する緩衝材60を設けることにより、排気脈動により弁ばね40が共振して、弁ばねホルダ50を叩いて異音が発生することを抑制できる。
【0030】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0031】
例えば上記実施形態では、渦巻状の弁体30を4枚の渦巻板31〜34を重ね合わせて構成したが、本発明には、弁体の剛性や摩擦作用を高めて排気脈動の振動を減衰可能な構成、例えば3枚以上の複数の渦巻板を重ね合わせて弁体30とする構成や、渦巻状の弁体30を2枚で一対の渦巻板とし、その重ね合わせた合計の高さを4.2mm〜7.0mmとする構成も含まれ、2枚以上の複数の渦巻板で弁体を構成する場合であれば包含する。前記構成により、弁体30の摩擦作用や剛性を高めて排気脈動の振動を減衰することが可能となり、排気脈動で生ずる弁体30の共振異音を抑制することができると共に、屈曲部422による弁体30の開放圧力の減少により、斯様な剛性や摩擦作用の高い弁体30でも高速回転時に確実に開放することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば自動車のエンジンの排気系に設けられる排気流路制御弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…排気流路制御弁 20…ハウジング 21…フランジ 22…折返し片 23…ばね受 24…貫通孔 25…規制部 30…弁体 31、32、33、34…渦巻板 31a、32a、33a、34a…中央部 31b、32b、33b、34b…弦部 40…弁ばね 41…コイル部 42…アーム部 421…基部 422…屈曲部 423…折曲部 50…弁ばねホルダ 51…基台 52…受部 53…起立片 60…緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイパス流路と連通してエンジンからの排気が流通する略筒状のハウジングと、
前記ハウジングに周縁近傍を当接して固定され、前記ハウジング内の流通路を開閉する渦巻状の弁体と、
前記弁体を常時閉じる方向に付勢するねじりコイルばねである弁ばねと、
前記弁体に固着され、前記弁ばねのコイル部を保持する弁ばねホルダとを備え、
前記ハウジングに設けられるばね受の貫通孔に、前記弁ばねのアーム部を挿通し、
前記アーム部の先端側に、前記ハウジング側に近づくように傾斜する屈曲部を設けることを特徴とする排気流路制御弁。
【請求項2】
前記弁体の開放量の増加に必要とする圧力の増分が、前記アーム部の基部が前記貫通孔内に位置する場合より前記屈曲部が前記貫通孔内に位置する場合の方が低下することを特徴とする請求項1記載の排気流路制御弁。
【請求項3】
前記アーム部の基部に対する前記屈曲部の傾斜角度を1°〜15°とすることを特徴とする請求項1又は2記載の排気流路制御弁。
【請求項4】
前記渦巻状の弁体を対となる渦巻板を重ね合わせて構成し、前記重ね合わせた渦巻板の合計の高さを4.2〜7.0mmとすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の排気流路制御弁。
【請求項5】
前記渦巻状の弁体を3枚以上の複数の渦巻板を重ね合わせて構成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の排気流路制御弁。
【請求項6】
前記弁ばねのコイル部と前記弁ばねホルダとの間に振動を減衰する緩衝材を設けることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の排気流路制御弁。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の排気流路制御弁をエンジンの排気系に備えることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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