説明

排気流量制御弁

【課題】弁体を弁閉状態に付勢するねじりコイルばねの可動端を通じてコイル部に作用する力を好適に吸収すること。
【解決手段】内管34と、前記内管34の内部に配設された弁体42を弁閉状態に付勢するねじりコイルばね46と、前記内管34に固定され、前記ねじりコイルばね46を支持する支持部材70とを備え、前記ねじりコイルばね46は、螺旋体からなるコイル部46aと、前記コイル部46aの一端部に設けられる固定端46bと、前記コイル部46aの他端部に設けられる可動端46cとを有し、前記支持部材70には、前記可動端46cを介して前記コイル部46aに作用する力を吸収する切り欠き部73aからなる変形吸収部73が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)の排気通路に設けられ、前記排気通路を流通する排気ガスの流量を制御することが可能な排気流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車のエンジンの排気通路中に開閉弁を配設し、弾性部材で閉弁方向に付勢された前記開閉弁によって、前記排気通路を流通する排気ガスの流量を制御することが行われている。この種の排気流量制御弁として、例えば、特許文献1には、弾性部材であるねじりコイルばねの可動側アーム(可動端)を、円柱コロからなる連結子を介して、弁体と連動する弁軸に固定されたフック部材に係着された排気流量制御弁が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、排気管の外管と内管の凹部との間で形成された空間に、開閉弁を閉じ側に付勢するねじりコイルばねを配設し、前記ねじりコイルばねの可動側アーム(可動端)を、円柱コロからなる連結子を介して、弁体と連動する弁軸に固定されたフック部材に係着された排気流量制御弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205180号公報
【特許文献2】特開2006−322357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された排気流量制御弁では、断面C字状からなる湾曲部が設けられたばね支持部材を内管の壁面に片持ち状態で固定し、ねじりコイルばねのコイル部を前記ばね支持部材の湾曲部で把持することによって、前記ねじりコイルばねを保持するようにしている。また、特許文献2に開示された排気流量制御弁では、円筒状の支持管を内管の壁面から突出する状態で固定し、前記ねじりコイルばねのコイル部を前記支持管に対して嵌挿することで前記ねじりコイルばねを保持するようにしている。
【0006】
この場合、特許文献1及び特許文献2に開示された排気流量制御弁では、ねじりコイルばねによって閉じ側に付勢された弁体が排気ガスの圧力によって弁閉状態から弁開状態に切り換わろうとするとき、前記ねじりコイルばねの可動側アームを介して、ねじりコイルばねのコイル部を軸方向と略直交する方向に押圧する力(フック部材が連結子に及ぼす力の分力)が作用する。そこで、弁体が弁閉状態から弁開状態に切り換わって開閉動作するとき、変形したねじりコイルばねのコイル部がばね支持部材又は支持管と干渉(接触)して異音が発生したり、弁体の円滑な開閉動作が得られないおそれがある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、弁体を弁閉状態に付勢するねじりコイルばねの可動端を通じてコイル部に作用する力を好適に吸収することが可能な排気流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを外部に排出する排気系に設けられ、弁体が開閉動作することによって排気通路を流通する排気ガスの流量を制御する排気流量制御弁において、弁ボディと、前記弁ボディの内部に配設された前記弁体を弁閉状態に付勢するねじりコイルばねと、前記弁ボディに固定され、前記ねじりコイルばねを支持する支持部材とを備え、前記ねじりコイルばねは、螺旋体からなるコイル部と、前記コイル部の一端部に設けられる固定端と、前記コイル部の他端部に設けられる可動端とを有し、前記支持部材には、前記可動端を介して前記コイル部に作用する力を吸収する変形吸収部が設けられることを特徴とする。
なお、前記変形吸収部は、支持部材の軸方向に沿った一端部を切り欠いて形成された切り欠き部によって構成され、又は、支持部材の一端部に設けられてコイル部の外周面から離間する凹部によって構成されると好ましい。
【0009】
本発明によれば、ねじりコイルばねを支持する支持部材に変形吸収部を設け、前記ねじりコイルばねの可動端を介してコイル部に作用する力(例えば、圧縮力)を前記変形吸収部で好適に吸収することができる。従って、本発明では、ねじりコイルばねのコイル部と支持部材との間における干渉(接触)を防止して、異音の発生を好適に阻止することができ、弁体の円滑な開閉動作も確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、弁体を弁閉状態に付勢するねじりコイルばねの可動端を通じてコイル部に作用する力を好適に吸収することが可能な排気流量制御弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る排気流量制御弁を自動車用エンジンの排気系に組み込み、前記排気流量制御弁からカバー部材を外した分解斜視図である。
【図2】(a)は、カバー部材を省略した排気流量制御弁の概略斜視図、(b)は、(a)のII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】(a)は、前側の斜め方向から見た透視斜視図、(b)は、後側の斜め方向から見た透視斜視図である。
【図4】内管を省略した要部分解斜視図である。
【図5】ばね機構と弁体との位置関係を示す側面透視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った横断面図である。
【図7】本実施形態に係る排気流量制御弁の動作説明図であって、(a)は、弁体の弁閉状態を示し、(b)及び(c)は、弁体の弁開状態を示している。
【図8】(a)〜(c)は、本実施形態及びその変形例において、可動側アームを介して、ねじりコイルばねのコイル部に作用する力を変形吸収部で吸収する状態を示す説明図である。
【図9】(a)〜(c)は、比較例において、ねじりコイルばねのコイル部に作用する力によってコイル部と支持部材との間で干渉する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る排気流量制御弁を自動車用エンジンの排気系に組み込み、前記排気流量制御弁からカバー部材を外した分解斜視図である。
【0013】
図1に示されるように、排気系10は、図示しない自動車用エンジン(内燃機関)の排気ポートに接続され、自動車11の前後方向に沿って延在するように設けられる。この排気系10の上流側から下流側に沿って、第1消音器12、一対の第2消音器14a、14b、及び一対の第3消音器16a、16bがそれぞれ配設され、これらの第1〜第3消音器12、14a、14b、16a、16bは、複数のパイプ部材を介して一体的に接続されている。前記第2消音器14a、14bの手前であって前記第1消音器12の出力側には、本発明の実施形態に係る排気流量制御弁30が設けられる。
【0014】
なお、本実施形態では、排気流量制御弁30を第1消音器12と第2消音器14a、14bとの間に配置した排気系10を例示しているが、これに限定されるものではなく、排気流量制御弁30を排気系10の他の部位に配置してもよい。
【0015】
図2(a)は、カバー部材を省略した排気流量制御弁の概略斜視図、図2(b)は、図2(a)のII−II線に沿った縦断面図、図3(a)は、前側の斜め方向から見た透視斜視図、図3(b)は、後側の斜め方向から見た透視斜視図、図4は、内管を省略した要部分解斜視図、図5は、ばね機構と弁体との位置関係を示す側面透視図、図6は、図5のVI−VI線に沿った横断面図である。
【0016】
この排気流量制御弁30は、図2に示されるように、第1消音器12に接続されるインレットポート32a及び第2消音器14a、14b側の分岐したパイプ部材に接続されるアウトレットポート32bが形成される内管(弁ボディ)34と、上下一対の2分割構造に形成された矩形体からなり前記内管34を囲繞する一対のカバー部材36a、36b(図1参照)とを含む。
【0017】
内管34は、貫通孔38が形成された略楕円形状の筒体からなり、インレットポート32a及びアウトレットポート32bに沿った内管34の中間部位であって軸線と直交する方向の内管34の両側部には、内側に向かって窪む凹部40がそれぞれ形成される。
【0018】
また、内管34には、図3に示されるように、インレットポート32aから導入されアウトレットポート32bから導出される排気ガスの流量を制御するための弁体42を有する弁機構44と、前記弁体42を弁閉状態に付勢するねじりコイルばね(コイルスプリング)46を含むばね機構48と、前記弁体42を弁閉状態に向って付勢する前記ねじりコイルばね46の付勢力(ばね力)を弁体42に伝達する付勢力伝達機構50とが設けられる。なお、ねじりコイルばね46の付勢力(ばね力)とは、後記する弁軸52を回動支点として弁体42をストッパ部材60へ当接させる方向へ回動させようとする力をいう。
【0019】
弁機構44は、インレットポート32a及びアウトレットポート32bを結ぶ軸線と直交する方向に延在し、一対の支持孔を介して内管34の両側部を貫通して回動自在に軸支される弁軸52と、内管34の軸方向から見て矩形状の板体からなり(図2(b)参照)、前記弁軸52を支点として所定角度回動自在に設けられる弁体42と、前記矩形状の弁体42の一方の長辺近傍部位に固定されるウェイト部材56とを含む。
【0020】
この場合、前記弁軸52には、その軸方向に沿って延在し外周の一部を平面状に切り欠いて形成した連結部52aが設けられ(図3(b)、図4、図6参照)、前記連結部52aを合わせ面として、矩形状の板体からなる弁体42の他方の長辺近傍部位がねじ部材58を介して弁軸52に固定される。また、弁軸52の一端部側には、半径外方向に沿って突出する環状のフランジ部52bが設けられる。
【0021】
さらに、弁機構44は、内管34の内壁に固定された断面略L字状の部材からなり弁体42が当接して弁閉状態となるストッパ部材60と、前記ストッパ部材60に固着され弁体42がストッパ部材60に当接したときの衝撃を緩衝する緩衝部材62と、前記弁軸52の両側であって内管34の外部に設けられ弁軸52を回動自在に軸支する金属製メッシュからなる軸受部材64と、前記軸受部材64の変形を防止するリング体66とを備える(図6参照)。なお、弁体42がストッパ部材60に当接した弁閉状態にあるとき、図2(b)に示されるように、内管34の内壁と弁体42の外面との間隙67によって形成される排気ガス通路面積が最も絞られた状態(最小面積)となる。
【0022】
内管34から外部に突出する弁軸52の両端部や、ねじりコイルばね46等は、略楕円形状の筒体からなる内管34の外部で内側に向って窪む凹部40に配設されている(図2及び図6参照)。このため、内管34が上下一対のカバー部材36a、36bによって被覆されても前記ねじりコイルばね46等が邪魔となることがなく、カバー部材36a、36bが装着された状態における排気流量制御弁30の全体形状が略直方体形状に構成される。
【0023】
図6に示されるように、ばね機構48は、ねじりコイルばね46を含み、前記ねじりコイルばね46は、略円筒状の螺旋体からなるコイル部46aと、内管34から離間する前記コイル部46aの一側に設けられ前記コイル部46aの軸方向と略直交する方向に延在し固定端からなる固定側アーム46bと、内管34に近接する前記コイル部46aの他側に設けられ前記コイル部46aの軸方向と略直交する方向に延在し可動端からなる可動側アーム46cとによって構成される。
【0024】
さらに、ばね機構48は、内管34の軸方向に沿った中間部位の外壁に溶接等によって固着され側面視して矩形状からなるプレート68と、前記プレート68に固定され、ねじりコイルばね46のコイル部46aを内周側から支持する円柱状の支持部材70と、前記支持部材70のねじ穴に螺入されるボルト71を介して前記支持部材70に装着され、前記支持部材70からの前記ねじりコイルばね46の離脱を阻止する円板状の押さえプレート72とを有する。
【0025】
この場合、前記支持部材70のプレート68に近接する一端部側には、軸方向に沿った外周面の一部を平面視して断面略円弧状に切り欠いて形成された切り欠き部73aからなる変形吸収部73が設けられる。この変形吸収部73は、内管34を流通する排気ガスの圧力によって、弁体42がストッパ部材60に当接した弁閉状態(初期状態)から弁開状態に切り換わろうとするとき、可動側アーム46cを介してねじりコイルばね46のコイル部46aに付与される力(圧縮力)を吸収するものである。なお、変形吸収部73の形状は、断面略円弧状の切り欠き部73aに限定されるものではなく、後記するように、種々の形状が可能である。
【0026】
図2〜図6に示されるように、付勢力伝達機構50は、内管34から外部に露呈する弁軸52の軸方向に沿った一端部側に形成され、ねじりコイルばね46の固定端からなる固定側アーム46bが係止される環状溝74と、前記環状溝74に隣接する環状段部に装着されるCクリップ76と、前記ねじりコイルばね46の可動端からなる可動側アーム46cの折曲部46dに転動可能に装着される球体78と、一端部及び前記弁軸52の一端部に連続する直線状の中間部に前記球体78を点接触状態で保持する保持面80aが設けられ他端部に弁軸52に固定される断面略円弧状の固定部80bを有し弁軸52を支点として弁軸52と一体的に回動動作するステー部材80を備える。
【0027】
前記環状溝74は、ねじりコイルばね46の固定端を係止する係止部(溝部)として機能するものであり、本実施形態では、弁軸52の外周面に沿って周回するように形成された環状溝74を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、弁軸52の外表面の下部側を平面で切り欠いた平坦面や凹部等で形成するようにしてもよい。なお、弁軸52の軸方向に沿った他端部には、孔部を介して円板部材82が固定され、前記円板部材82によって内管34の支持孔からの弁軸52の抜け止めがなされる。
【0028】
この場合、図6に示されるように、弁軸52の環状溝74に係止されるねじりコイルばね46の固定側アーム46bと、弁軸52に固定されるステー部材80の固定部80bとの間には、Cクリップ76が介装され、前記Cクリップ76が隔壁として機能することにより、ステー部材80の固定部80bとねじりコイルばね46の固定側アーム46bとの非接触状態が好適に保持される。この結果、ねじりコイルばね46の固定側アーム46が弁軸52の環状溝74によって係止された場合であっても、弁軸52と一体的に回動するステー部材80の円滑な回動動作を確保することができる。
【0029】
また、このCクリップ76は、弁軸52の環状溝74に係止されたねじりコイルばね46の固定側アーム46bが弁軸52の軸方向に沿ってステー部材80側へ移動することを阻止するストッパ機能を併有する。さらに、弁軸52に固定されるステー部材80の固定部80bと軸受部材64との間には、環状のフランジ部52bが介在されることにより、ステー部材80と前記ステー部材80に近接する内管34の側壁とを非接触状態とし、ステー部材80の円滑な回動動作を確保することができる。
【0030】
ねじりコイルばね46の固定側アーム46bは、直線状に延在して弁軸52に形成された環状溝74の下部側に係合し、前記ねじりコイルばね46の固定側アーム46bがそのばね力によって上方に向って変位しようとするのを好適に阻止する。
【0031】
本実施形態に係る排気流量制御弁30が組み込まれた排気系10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
図7は、本実施形態に係る排気流量制御弁の動作説明図であって、図7(a)は、弁体の弁閉状態を示し、図7(b)及び図7(c)は、弁体の弁開状態を示している。
【0032】
図示しないエンジンが駆動(運転)されることにより、前記エンジンから排出される排気ガスは、図1の排気系10に導入される。この排気ガスは、第1消音器12及び排気流量制御弁30を経て排気ガスの流量が制御された後、下流側の第2消音器14a、14b及び第3消音器16a、16bによって排気音が順次消音されて外部に排出される。
【0033】
その際、例えば、アイドリング運転や始動運転を含むエンジン回転速度が低速度領域にある場合には、エンジン(燃焼室)の燃焼圧力が低く、前記エンジンから排出される排気ガスの排気圧力も低下しているため、排気系10に導入される排気ガスの排気圧力も低くなっている。
【0034】
このため、排気流量制御弁30は、図7(a)に示されるように、ねじりコイルばね46の付勢力(ばね力)によって弁体42がストッパ部材60に当接した弁閉状態に保持されており、内管34の内壁と弁体42の外面との間隙67(図2(b)参照)によって形成される排気ガス通路面積が最も絞られた状態(最小面積)となる。この結果、排気流量制御弁30は、第1消音器12の出力側から排出される排気ガスの排気エネルギを減少させて、第2消音器14a、14bの手前にて排気騒音を予備的に消音させると共に、エンジンの充填効率が高められる。
【0035】
換言すると、本実施形態に係る排気流量制御弁30では、ねじりコイルばね46の付勢力によって弁体42が閉じ側に付勢された弁閉状態であっても、内管34の排気通路が弁体42によって完全に封鎖されることがなく、内管34の内壁と弁体42の外面との間で形成された間隙67を通じて絞られた流量の排気ガスが流通するように構成されている。
【0036】
一方、エンジンの燃焼状態が完爆状態となって、エンジン回転速度が高速度領域に到達すると、エンジン(燃焼室)の燃焼圧力が高くなり、前記エンジンから排出される排気ガスの排気圧力も高くなる。従って、排気系10においてインレットポート32aから排気流量制御弁30内に導入される排気ガス動圧も高くなり、ねじりコイルばね46の付勢力に抗して弁体42を押圧する力が強くなる。この結果、弁体42を押圧する力がねじりコイルばね46の付勢力に打ち勝つことにより、弁体42が弁軸52を回動支点として反時計回り方向へ所定角度だけ回動し(図7(b)参照)、弁体42がストッパ部材60に当接した弁閉状態から、弁体42がストッパ部材60から離間する方向に所定角度だけ傾動した弁開状態へ切り換えられる。
【0037】
すなわち、内管34のインレットポート32aから導入された排気ガス動圧の押圧力によって弁体42が押圧されると、前記弁体42が弁軸52を支点として矢印A方向(反時計回り方向)に回動し、前記弁軸52に固定されたステー部材80が弁軸52を支点として矢印A方向(反時計回り方向)に一体的に回動する。この場合、ねじりコイルばね46の可動側アーム46cの折曲部46dに軸支された球体78は、図7(b)に示されるように、ステー部材80の保持面80aに沿って転動しながら移動する。なお、ねじりコイルばね46の固定側アーム46bは、弁軸52の環状溝74に係止された状態に保持される。
【0038】
弁体42が弁閉状態から弁開状態へと切り換わって内管34内を流通する排気ガスの排気ガス通路面積が徐々に大きくなり、図7(c)に示されるように、弁体42が全開状態となったときに排気ガス通路面積が最大面積となる。よって、エンジン回転速度が高速度領域となったときの排気圧力損失は、排気流量制御弁30によって排気ガスの流量が適宜制御されることによって低減される。
【0039】
次に、図8(a)〜(c)は、本実施形態及びその変形例において、可動側アームを介して、ねじりコイルばねのコイル部に作用する力を変形吸収部で吸収する状態を示す説明図、図9(a)〜(c)は、比較例において、ねじりコイルばねのコイル部に作用する力によってコイル部と支持部材との間で干渉する状態を示す説明図である。
なお、図8(a)〜(c)及び図9(a)〜(c)において、各分図における向って左側の図は、可動側アーム46cからコイル部46aに対して力が作用していない変形前の状態を示し、各分図における向って右側の図は、可動側アーム46cからコイル部46aへ力が作用した変形後の状態を示している。
【0040】
先ず、図7(a)に基づいて、可動側アーム46cを介して、ねじりコイルばね46のコイル部46aに作用する力について説明する。
図7(a)に示される弁体42が、弁閉状態から弁開状態へ切り換わろうとして弁体42が開閉動作しようとするとき、前記弁体42と一体的に回動するステー部材80は、可動側アーム46cの一端部に回動自在に保持された球体78に対して力F(ステー部材80が球体78に対して及ぼす力F)を付与し、この力Fの分力Faが可動側アーム46cを介してねじりコイルばね46のコイル部46aに作用する。この場合、可動側アーム46cを介してコイル部46aに作用する分力Faは、側面視して、可動側アーム46cを有するコイル部46aに向って前記コイル部46aを押圧する方向の力(圧縮力)であって、平面視して、ねじりコイルばね46のコイル部46aの一端部側をその軸方向と略直交する方向に押圧する力として作用する。
【0041】
本実施形態では、ねじりコイルばね46のコイル部46aの内周に円柱体からなる支持部材70を嵌挿し、前記支持部材70の軸方向に沿った一端部側(球体78に近接する側)に平面視して断面円弧状に切り欠かれた変形吸収部73が設けられている。このため、図8(a)に示されるように、分力Faが可動側アーム46cを媒介してコイル部46aの一端部側を変形させようとするが、コイル部46aの一端部側が断面円弧状の切り欠き部73aに沿って変形し、前記コイル部46aの変形力が変形吸収部73で吸収される。この結果、本実施形態では、ねじりコイルばね46のコイル部46aと支持部材70の外周面とが干渉(接触)することを防止し、異音が発生することを好適に回避することができると共に、弁体42と一体的に回動するステー部材80の円滑な回動動作を確保することができる。
【0042】
図8(b)は、ねじりコイルばね46の外周面を保持する支持部材70aに設けられる変形吸収部73の変形例を示したものであり、この支持部材70aは、ねじりコイルばね46の外周面を保持する点で、内周面を保持する支持部材70と相違している。この場合、可動側アーム46cを介してねじりコイルばね46のコイル部46aの一端部側に分力Faが作用すると、コイル部46aの一端部側の外周面が拡径する方向に変形しようとする。この場合、コイル部46aの外側を保持する支持部材70aには、前記コイル部46aの外周面から離間する方向に窪み、その断面が緩やかな曲線状に形成された凹部73bからなる変形吸収部73が設けられているため、コイル部46aの一端部側の外周面と支持部材70aとが干渉することが好適に防止される。
【0043】
図8(c)は、ねじりコイルばね46の外周面を保持する薄肉な板状の支持部材70bに設けられる変形吸収部73の他の変形例を示したものである。この場合も、図8(b)と同様に、コイル部46aの外側を保持する支持部材70bには、前記コイル部46aの外周面から離間する方向に窪み、その断面が緩やかな曲線状に形成された凹部73bからなる変形吸収部73が設けられているため、コイル部46aの一端部側の外周面と支持部材70bとが干渉することが好適に防止される。
【0044】
次に、ねじりコイルばねのコイル部を保持する支持部材に変形吸収部が設けられていない比較例をそれぞれ図9(a)〜(c)に示す。なお、図9(a)〜(c)では、コイル部46aと支持部材とが干渉(接触)した状態を、コイル部46aの一部と支持部材とが重畳した状態で描出している。
【0045】
ねじりコイルばね46のコイル部46aの内周側を保持する支持部材が設けられた比較例1では、図9(a)に示されるように、分力Faが作用したときに支持部材にばねの逃げ部となるものが何ら形成されていないため、連結子として機能する球体78に近接する側の支持部材の軸方向に沿った一端部側とコイル部46aの一端部側とが干渉(接触)し、異音が発生するおそれがあると共に、弁体42と一体的に回動するステー部材80の円滑な回動動作が邪魔されるおそれがある。
【0046】
また、ねじりコイルばね46のコイル部46aの外周側を保持する支持部材が設けられた比較例2、3では、図9(b)、(c)に示されるように、分力Faが作用したときに支持部材にばねの逃げ部となるものが何ら形成されていないため、連結子として機能する球体78から離間する側の支持部材の内側とコイル部46aの一端部側とが干渉(接触)し、前記と同様に、異音が発生するおそれがあると共に、弁体42と一体的に回動するステー部材80の円滑な回動動作が邪魔されるおそれがある。
【0047】
このように、本実施形態では、可動側アーム46bを介して分力Faがねじりコイルばね46のコイル部46aに作用するとき、支持部材70(70a、70b)において、前記コイル部46aが変形しようとする方向(コイル部46aの変形方向)に変形したばねの逃げ部(逃げ面)を設けることによって、ばねによる干渉を好適に回避することができる。
【0048】
本実施形態では、ねじりコイルばね46を支持する支持部材70に変形吸収部73を設け、前記ねじりコイルばね46の可動側アーム46c(可動端)を介してコイル部46aに作用する力(圧縮力)を前記変形吸収部73で好適に吸収することができる。従って、本実施形態では、コイル部46aと支持部材70との間における干渉(接触)を防止して、異音の発生を阻止することができ、弁体42の円滑な開閉動作も確保できる。
【0049】
換言すると、本実施形態では、ねじりコイルばね46の可動側アーム46cを通じて、ステー部材80が連結子として機能する球体78に及ぼす力の分力Faがコイル部46aの軸方向に沿った一端部に偏位する力として伝達されるが、このコイル部46aに作用する偏位力を支持部材70に切り欠いて形成された変形吸収部73へ逃がすことができ、前記偏位力によるコイル部46aの変形を好適に吸収することができる。
【0050】
なお、このコイル部46aに作用する力(偏位力)は、ねじりコイルばね46によって弁体42が閉じ側に付勢された弁閉状態(初期状態)から、排気ガスの圧力で弁体42が弁開状態に切り換わろうとして開閉作動するときに付与されるものである。
【0051】
この結果、本実施形態では、ステー部材80と一体的に回動動作するときの弁体42の開閉抵抗が抑制されて、弁体42の円滑な開閉動作を確保することができる。
【0052】
また、本実施形態では、変形吸収部73として、内管34の側壁から横方向に突出してねじりコイルばね46の内周面を保持する円柱状の支持部材70を設け、前記支持部材70の軸方向に沿った一端部を切り欠いて形成された切り欠き部73aを例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、内管34の側壁にねじりコイルばね46の外周面を保持する支持部材70a、70bを固定し、前記支持部材70a、70bに凹部73bからなる変形吸収部73を設けてねじりコイルばね46のコイル部46aの外周面との間でコイル部46aの変形を吸収するクリアランスを形成するようにしてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、可動側アーム46cを介してねじりコイルばね46のコイル部46aに作用する力として、コイル部46aの軸方向に沿った一端部をコイル部46a側に向かって押圧する力(圧縮力)によって説明しているが、例えば、図7(c)に示される弁体42の全開状態では、ねじりコイルばね46のコイル部46aに作用する力がステー部材80によって前記圧縮力と反対方向に引っ張られる力(引っ張り力)となり、このような引っ張り力を吸収するための変形吸収部73を支持部材70に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 排気系
30 排気流量制御弁
34 内管(弁ボディ)
42 弁体
46 ねじりコイルばね
46c 可動側アーム(可動端)
70、70a、70b 支持部材
73 変形吸収部
73a 切り欠き部
73b 凹部
80 ステー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスを外部に排出する排気系に設けられ、弁体が開閉動作することによって排気通路を流通する排気ガスの流量を制御する排気流量制御弁において、
弁ボディと、
前記弁ボディの内部に配設された前記弁体を弁閉状態に付勢するねじりコイルばねと、
前記弁ボディに固定され、前記ねじりコイルばねを支持する支持部材と、
を備え、
前記ねじりコイルばねは、螺旋体からなるコイル部と、前記コイル部の一端部に設けられる固定端と、前記コイル部の他端部に設けられる可動端とを有し、
前記支持部材には、前記可動端を介して前記コイル部に作用する力を吸収する変形吸収部が設けられることを特徴とする排気流量制御弁。
【請求項2】
請求項1記載の排気流量制御弁において、
前記変形吸収部は、前記支持部材の軸方向に沿った一端部を切り欠いて形成された切り欠き部、又は、前記支持部材の一端部に設けられて前記コイル部の外周面から離間する凹部からなることを特徴とする排気流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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