説明

排気熱回収式空調システム

【課題】 室内機で冷却され居室やトイレに供給された冷却空気と空調システムの冷媒との間で熱交換を行って冷媒を過冷却して冷房能力を高め、省エネルギー化した空調システムを提供する。
【解決手段】屋外に設置された1台の屋外機と、少なくとも1台の室内機とを冷媒管路で繋ぎ、前記屋外機と室内機の間で冷媒を循環させる空調システムにおいて、夏期冷房時、屋外機によって高温高圧の液となった冷媒を室内機に内蔵する膨張弁に導く冷媒管路の途中に排熱回収装置を設け、当該排熱回収装置は、前記屋外機から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排出ダクトを経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクトの途中に配置されてなる排気熱回収式空調システムによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置された1台の屋外機と、空調対象室へ温調空気を送り還気を吸込む少なくとも1台の室内機との間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムにおいて、夏季冷房時の冷凍サイクルの成績係数を高めるため、排気ダクト内に冷媒の飽和液線を超えた過冷却を行う排気熱交換器を備え、該排気熱交換器に冷媒を循環させて冷媒の飽和液線を超えて過冷却してなる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調システムで冷媒を過冷却する技術は多数開示されている。
例えば特許第4430612号公報には、
「室内機と室外機とを配管接続し、前記室内機と室外機の間で冷媒を循環させる空気調和装置において、前記室内機で生じた結露水を蒸発させることで室内熱交換器に流入する高温の冷媒を過冷却する蒸発式補助交換器と、室内熱交換器における熱交換で形成される低温空気の一部を取り込んで前記蒸発式熱交換器に送気するためのダクトとを前記室内機に設けたことを特徴とする空気調和装置」
が開示されている(請求項1)。
また、特開2004−293904号公報には、
「それぞれに冷凍サイクル機器が収容される1台もしくは複数台の室外ユニット1及び室内ユニット2をヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するよう冷凍管Pを介して連通する空気調和装置において、各室内ユニット2に、冷凍サイクルを構成する室内熱交換器12とともに過冷却用熱交換器14を収容し、室内熱交換器で生成されるドレン水を過冷却用熱交換器に導き、ドレン水と過冷却用交換器との熱交換を行わせるよう、たとえば過冷却用熱交換器を下部に、室内熱交換器を上部に配置する」空気調和装置が開示されている。
これら発明の過冷却機構のいずれもが室内機で生じる結露水(ドレン水)を冷媒との熱交換相手としている。
しかし、居室など空調対象室やトイレなどの非空調対象室から、温調された結果あるいは温調された他室の空気を室内空気バランスにより移動させて導入された結果、外気温より低い温度の室内空気の一部は屋外へ排出されるが、その空気を熱交換相手として冷媒を飽和液線を超えて過冷却する空気調和装置の発明は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4430612号公報
【特許文献2】特開2004−293904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの空調システムは、フロン冷媒や二酸化炭素等の冷媒を、圧縮機により圧縮して高温高圧になったガス冷媒と、外気とを凝縮器で熱交換して高温高圧の液に相変化させた後、膨張弁で断熱膨張し、室内空気と蒸発器で熱交換して、低圧低温ガス冷媒として蒸発させ、再び圧縮機に吸引することで循環する冷凍サイクルを夏場に、冬場には、圧縮機からの流路を4方弁などで切替えて、外気側を蒸発器、室内側を凝縮器とする冷凍サイクルを有する屋外機と室内機とからなる空調システムである。この空調システムの夏期における冷房は、外気温が高いため屋外の凝縮器での冷却が熱量的に多くなく、圧縮機の圧縮仕事の熱量換算値に対する蒸発器冷却能力の比:成績係数の小さいことによる、圧縮機の電力消費量が増え、冷却効果が上がらない。そこで、背景技術で記載したように省エネルギー化のために室内機に過冷却熱交換器を備えることが行われている。
しかし、この室内機に過冷却熱交換器を備えるものでは、当該過冷却熱交換器は冷媒と室内の温調すべき空気との間の熱交換を行っていて、冷凍サイクルの蒸発器側の更なる熱負荷になっているだけのものである。
そして、これまでの空調システムでは、室内機で冷却された空気が居室など空調対象室に供給され、前記空調対象室に供給された冷却空気は、全熱交換器を介して取り入れた高温多湿の外気との間で熱交換が行われ、前記冷却空気の持つ冷熱エネルギーの一部は回収されているものの、空調対象室の残りの熱エネルギーはそのまま排出して捨てられている。 さらに、トイレなどの非空調対象室へ空調対象室の空気を屋内空気バランスにより移動させて導入された温調空気については、全く熱回収されず排出空気の冷熱エネルギーはそのまま排出して捨てられている。
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであって、室内機で冷却され居室など空調対象室に供給され、あるいはトイレなどの非空調対象室へ空調対象室の空気を屋内空気バランスにより移動させて導入された冷却空気と、空調システム凝縮器の出口側高温高圧の液となった冷媒との間で熱交換を行って冷媒を過冷却して冷房能力を高めるとともに、さらに前記排出空気を断熱加湿することによって排出空気の乾球温度を更に低下させ、その後に前記冷媒との飽和液線を超える過冷却熱交換を行って、より省エネルギー効果の高い空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)屋外に設置された1台の屋外機と、空調対象室へ温調空気を送り還気を吸い込む少なくとも1台の室内機とを冷媒管路で繋ぎ、前記屋外機と室内機の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、
夏期冷房時において、屋外機に内蔵された圧縮器によって高温高圧にされた冷媒ガスを凝縮器となる屋外熱交換器により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を室内機に内蔵する膨張弁に導く冷媒管路の途中に排熱回収装置を設け、
当該排熱回収装置は、前記屋外機から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクトを経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクトの途中に配置されてなることを特徴とする排気熱回収式空調システム。
【0006】
(2)屋外に設置された1台の屋外機と、空調対象室へ温調空気を送り還気を吸込む少なくとも1台の室内機とを冷媒管路で繋ぎ、前記屋外機と室内機の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、
夏季冷房時において、室内機に内蔵された圧縮器によって高温高圧にされた冷媒ガスを冷媒管路を介して、屋外機が内蔵する凝縮器となる屋外機熱交換器により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を、室内機に内蔵する膨張弁に導く冷媒管路の途中に排熱回収装置を設け、
当該排熱回収装置は、前記屋外機から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクトを経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクトの途中に配置されてなることを特徴とする排気熱回収式空調システム。
【0007】
(3)前記排熱回収装置は、
前記冷媒と排出空気との間で熱交換を行う排気熱交換器と、
前記排気熱交換器に流入する排出空気を水の断熱変化(断熱飽和過程のこと)により加湿して乾球温度を低下させる加湿器と、
前記加湿器へ水を供給する給水管と、
前記加湿器が排出空気へ載せきれなかった余剰水を集めるドレンパン及び余剰水を排出する排水管と
を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気熱回収式空調システム。
【0008】
(4)前記排熱回収装置は、
暖房時において室内機の室内機熱交換器が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液に相変化させた後、室内機が内蔵する膨張弁を通すことで低圧になった冷媒を前記排気熱交換器を介することなく直接屋外機の屋外機熱交換器に還流させるためのバイパス管路を備え、
冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して、冷媒の流路を前記排気熱交換器と前記バイパス管路に切り換えられるよう排気熱交換器とバイパス管路にそれぞれ流通させる向きを異にする逆止弁を設けてなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【0009】
(5)前記排熱回収装置は、
暖房時において、室内機の室内機熱交換器が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液に相変化させた後、室内機が内蔵する膨張弁を通さずに直接屋外機が内蔵する膨張弁及び屋外機熱交換器へ、前記排気熱交換器を介することなく還流させるためのバイパス管路を備え、
冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して、冷媒の流路を前記排気熱交換器と前記バイパス管路に切り換えられるよう排気熱交換器とバイパス管路にそれぞれ流通させる向きを異にする逆止弁を設けてなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【0010】
(6)前記排熱回収装置が、屋内の非空調対象室からの排気ダクトに配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
(7)前記排熱回収装置が、屋内の空調対象室からの排気ダクトに配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
(8)前記排熱回収装置が配設されている排気ダクトには、排出空気の上流側に、空調対象室に導入する外気と顕熱および潜熱とを熱交換する全熱交換器を備えていることを特徴とする請求項7に記載の排気熱回収式空調システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排気熱回収式空調システムによって下記の効果が発揮できる。
〈1〉本発明の排気熱回収式空調システムが、屋外に設置された1台の屋外機と、空調対象室へ温調空気を送り還気を吸込む少なくとも1台の室内機とを冷媒管路で繋ぎ、前記屋外機と室内機の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、夏季冷房時において、屋外機に内蔵される圧縮器によって高温高圧にされた冷媒ガスを凝縮器となる屋外機熱交換器により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を、室内機に内蔵する膨張弁に導く冷媒管路の途中に排熱回収装置を設け、当該排熱回収装置は、前記屋外機から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクトを経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクトの途中に配置されているので、前記排熱回収装置において、冷媒が高温高圧の液の状態で排出空気との間での熱交換によって飽和液線を超えた過冷却が行われ、これによって従来に比べて凝縮側でのエンタルピ差が大きく取れ、断熱膨張する膨張弁の後の蒸発器のエンタルピ差も大きく取れることから、空調システムの冷却能力が向上し、圧縮器の圧縮仕事の熱量換算値に対する蒸発器冷却能力の比で求められる成績係数(COP)が高くなる。
【0012】
〈2〉前記排熱回収装置は、前記冷媒と排出空気との間で熱交換を行う排気熱交換器と、前記排気熱交換器に流入する排出空気を水の断熱変化により加湿して乾球温度を低下させる加湿器と、前記加湿器へ水を供給する給水管と、前記加湿器が排出空気へ載せきれなかった余剰水を集めるドレンパン及び余剰水を排出する排水管とを備えているので、前記〈1〉の過冷却するための空気側の乾球温度を低下させて、高温高圧冷媒液の更なる飽和液線を超えた過冷却が可能となり、空調システムの冷却能力や冷凍サイクルの成績係数の一層の向上が図れる。
【0013】
〈3〉前記排熱回収装置は、例えば室内機と屋外機とが1対1の空調システムでは、暖房時において室内機の室内機熱交換器が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液に相変化させた後、室内機が内蔵する膨張弁を通すことで低圧になった冷媒を前記排気熱交換器を介することなく直接屋外機に内蔵される屋外機熱交換器に還流させるためのバイパス管路を備え、冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して切り替えられる逆止弁を前記排気熱交換器の冷媒流入口と、前記バイパス管路に備えているので、前記排熱回収装置は夏期冷房時にのみ作動し、冬期暖房時には作動せず空調システムの暖房効果を低下させることがない。
【0014】
〈4〉前記排熱回収装置は、例えば屋外機が1台で室内機が複数台のビルマルチ型空調システムでは、暖房時において、室内機が内蔵する室内機熱交換器が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液の冷媒に相変化させた後、室内機が内蔵する膨張弁を通さずに直接屋外機が内蔵する膨張弁及び屋外機熱交換器へ、前記排気熱交換器を介することなく還流させるためのバイパス管路を備え、冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して切り替えられる逆止弁を前記排気熱交換器の冷媒流入口と、前記バイパス管路に備えているので、前記排熱回収装置は夏期冷房時にのみ作動し、冬期暖房時には作動せず空調システムの暖房効果を低下させることがない。
【0015】
〈5〉前記排熱回収装置は、屋内の非空調対象室からの排気ダクトに配設されているので、トイレなどの非空調対象室へ空調対象室の空気を屋内空気バランスにより移動させて導入された温調空気についても、従来捨てていた排出空気から冷熱エネルギーを熱回収できる。
〈6〉前記排熱回収装置は、空調対象室からの排気ダクトに配設され、さらにこの排気ダクトには、排出空気の上流側に、空調対象室に導入する外気と顕熱および潜熱とを熱交換する全熱交換器を備えているので、全熱交換器で熱回収しきれなかった冷熱エネルギーを、更に熱回収することができる。
〈7〉前記排熱回収装置は、排気ダクトに配設するだけなので、従来の空調システムへの付加も容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の排気熱回収式空調システムの一実施例の構成図
【図2】本発明の排気熱回収式空調システムの他の実施例の構成図
【図3】排熱回収装置の拡大構成図
【図4】冬季冷房にも使用できる排熱回収装置の拡大構成図
【図5】空調対象室から全熱交換器を通した排気への加湿による空気線図上での動き
【図6】非空調対象室からの排気への加湿による空気線図上での動き
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の排気熱回収式空調システムを実施するための形態を、実施例の図面に基づいて説明する。
図1は本発明の排気熱回収式空調システムの一実施例の構成図、図2は本発明の排気熱回収式空調システムの他の実施例の構成図、図3は排熱回収装置の拡大構成図、図4は冬季冷房にも使用できる排熱回収装置の拡大構成図、図5は空調対象室から全熱交換器を通した排気への加湿による空気線図上での動き、図6は非空調対象室からの排気への加湿による空気線図上での動きである。
図において10は屋外機、11は圧縮器、12は夏に凝縮器になる屋外機熱交換器、13は四方弁、14は冷媒管路、15は屋外機ファン、20は室内機、21は夏に蒸発器になる室内機熱交換器、22は膨張弁、30は排熱回収装置、31は排気熱交換器、32は加湿器、33はバイパス管路、34、34’は逆止弁、35は給水管、36はドレンパン、37は筐体、38はダクト接続部、39は排水管、41は排気ダクト、42は外気取入ガラリ、43は排気ガラリ、44は全熱交換器、45は排気ファン、51は居室など空調対象室、52はトイレなど非空調対象室を示す。
なお、屋外機10が1台に対し室内機20が複数台冷媒管路14で接続されるいわゆるビルマルチ型パッケージ空調システムでは、屋外機10にも図示しない膨張弁が備わり、冷媒の流れ方向で室内機20の膨張弁と屋外機10の膨張弁とが逆止弁などで自動選択できるようになっている。
【0018】
本発明の排気熱回収式空調システムは、図1に示すように、屋外に設置された1台の屋外機10と、空調対象室51へ温調空気を送り還気を吸込む少なくとも1台の室内機20とを冷媒管路14で繋ぎ、前記屋外機10と室内機20の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、
夏季冷房時において、屋外機10に内蔵された圧縮器11によって高温高圧にされた冷媒ガスを凝縮器となる屋外機熱交換器12により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を、室内機20に内蔵する膨張弁22に導く冷媒管路14の途中に排熱回収装置30を設け、当該排熱回収装置30は、前記屋外機10から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクト41を経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクト41の途中に配置されて構成されている。
なお、屋外機10に設けられた四方弁13は、冷房時と暖房時とで冷媒管路14を流れる冷媒の向きを、屋外機熱交換器12と室内機熱交換器21との関係で逆転させるためのものであり、この四方弁13の切り替え操作により、冬期には室内機熱交換器21が凝縮器に、屋外機熱交換器12が蒸発器に切り替えられる。
そして、前記排熱回収装置30によって過冷却された高温高圧の液冷媒は、室内機20の膨張弁22によって減圧され低温低圧の液冷媒となり、夏に蒸発器になっている室内機熱交換器21に導入されて低温低圧のガス冷媒に気化され、室内の空気から排気熱交換器フィンなどを介して気化熱を奪って冷却する。
したがって、本発明の排気熱回収式空調システムの要点は、従来空調対象室、非空調対象室のいずれかからも、十分な熱回収が行われないまま排出されていた、温調され外気より低温となっている排出空気の冷熱を、冷媒の過冷却に活用して冷房効果を高めた排熱回収装置30を設けたことにある。
【0019】
本発明における排熱回収装置30は、図3に示した構成の空調システムが、例えば室内機と屋外機とが1対1の場合では、排出空気と冷媒との間で熱交換を行う排気熱交換器31と、排気熱交換器31の前方(排出空気の上流側)に設けられた断熱加湿を行う加湿器32と、暖房時に前記排気熱交換器31での冷媒の熱交換作用を停止し、室内機20の室内機熱交換器21で凝縮され室内機20内蔵の膨張弁22で低温低圧の液冷媒に断熱膨張した冷媒を、直接屋外機10の屋外機熱交換器12へ還流させるためのバイパス管路33と、冷房時、暖房時に前記冷媒の流れを前記排気熱交換器31又はバイパス管路33へ切り替えるために前記排気熱交換器31及びバイパス管路33の双方にそれぞれ逆方向に設けられた逆止弁34、34’と、加湿器32が排出空気へ載せきれなかった余剰水を集めるドレンパン36及び余剰水を排出する排水管39とで構成されている。
又は、本発明における排熱回収装置30は、図3に示した構成の空調システムが、例えば屋外機が1で室内機が多数のビルマルチ型空調システムの場合では、排出空気と冷媒との間で熱交換を行う排気熱交換器31と、排気熱交換器31の前方(排出空気の上流側)に設けられた断熱加湿を行う加湿器32と、暖房時に前記排気熱交換器31での冷媒の熱交換作用を停止し、室内機20の室内機熱交換器21で凝縮され、室内機20内蔵の膨張弁22に並行して設けられた図示しない逆止弁付き回避管でそのまま屋外機10の内蔵する図示しない膨張弁に送られ低温低圧の液冷媒に断熱膨張した冷媒を、屋外機10の屋外機熱交換器12へ還流させるためのバイパス管路33と、冷房時、暖房時に前記冷媒の流れを前記排気熱交換器31又はバイパス管路33へ切り替えるために前記排気熱交換器31及びバイパス管路33の双方にそれぞれ逆方向に設けられた逆止弁34,34'と、加湿器32が排出空気へ載せきれなかった余剰水を集めるドレンパン36および余剰水を排出する排水管39とで構成されている。
そしてバイパス管路33,逆止弁34、34’を除く、排気熱交換器31、加湿器32、ドレンパン36は一つの筐体37に納められ、前後に設けたダクト接続部38を介して排気ダクト41(図1参照)に接続可能に構成され、前記筐体37には加湿器32への給水管35、ドレンパン36からの排水管39が接続されている。なお、図3においては、バイパス管路33、逆止弁34、34’を筐体外に配置させて表示したが、これらを筐体37内に収納しておくことを妨げるものではない。
加湿器32は、水を加熱する形式の加湿器以外の等エンタルピ加湿ができる形式のものであれば何でもよく、例えば遠心式水噴霧形、超音波式噴霧形、水スプレー式、滴下式、回転式、毛細管式のどの形式のものでもよい。
【0020】
本排熱回収装置30は、冷房時、屋外機10に内蔵される圧縮器11によって高温高圧にされた冷媒ガスを凝縮器となる屋外機熱交換器12により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒が、図3に実線の矢印で示すように逆止弁34を順方向に通って排気熱交換器31に流入し、該排気熱交換器31に接続された排気ダクト41から導入される屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われる。この際、凝縮器を通過してある程度外気により熱を奪われた前記高温高圧の液冷媒は、さらに冷却されることで過冷却の状態となり、室内機20に内蔵される膨張弁22に導入される冷媒のエンタルピが更に低下するので、そのまま膨張弁で断熱膨張した低温低圧の液冷媒は、蒸発器での気化エンタルピを稼ぐことができ、蒸発器において冷媒が少ししか過冷却されず導入される従来の場合より、大量の蒸発熱を、熱交換する空調対象室の空気から奪えるようになる。
また、事務所ビルなどの空調の場合、従前の夏場の温調設定条件は、室内の還り空気において、26℃DB(乾球温度)、50%RH(相対湿度)が条件であり、ほぼこの温湿度そのままの排出空気が、非空調対象室52(例えば図1に示すトイレ)からの排気として排出される。この排出空気に、排気熱交換器31の前方(排出空気の上流側)に設けられた断熱加湿を行う加湿器32によって加湿を行うと、図6に示すように飽和効率のあまり高くない滴下式などの加湿器32でも、飽和効率50%で23℃まで、飽和効率70%で21.5℃まで等湿球温度線上を移動することとなり、前記排気熱交換器31における高温高圧の液冷媒の過冷却を、より推進することができる。
これが、26℃DB(乾球温度)、50%RH(相対湿度)の還気の一部を排気として、空気対空気熱交換器を内蔵する全熱交換器で外気と排気を熱交換すると、その後の排出空気の温湿度状態は、図5に示すように、外気33℃DB、63%RHが夏のピークとして、全熱交換器での熱交換を外気と還気とを直線で結んだ線分のせいぜい半分強:30℃DB、60%RH程度の状態で排出される。この30℃DB、60%RH程度の排出空気は、空調対象室51(例えば図1に示す居室)からの排気として排出される。この排出空気に、排気熱交換器31の前方(排出空気の上流側)に設けられた断熱加湿を行う加湿器32によって加湿を行うと、飽和効率のあまり高くない滴下式などの加湿器32でも、飽和効率50%で27℃まで、飽和効率70%で26℃まで等湿球温度線上を移動することとなり、前記排気熱交換器31における高温高圧の液冷媒の過冷却を、より推進することができる。
ちなみに本排熱回収装置30を使用した空調システムでは、このように過冷却として熱回収できることで、冷凍サイクルの成績係数(COP)が従来の4から4.2に約5%向上しており、つまり5%のCO排出量の削減が可能である排気熱回収式空調システムとしてその効果が確認されている。
【0021】
本排熱回収装置30は上記のように冷房時に効果をもたらすものであり、暖房時にはその作用を停止させることが好ましい。そのため本排熱回収装置30には逆止弁34’を備えたバイパス管路33が設けられ、室内機20で凝縮、液化した冷媒が、前記逆止弁34’の作用により図2に点線の矢印で示すように前記排熱回収装置30を経ずして直接屋外機10に還流するように構成されている。
なお、冬季にも冷房の必要性が発生する場所にあっては、屋外機10における冷媒の凝縮温度が低下し、前記排熱回収装置30に流入する排出空気の温度より前記冷媒の凝縮温度が低くなる場合も生じる。このような場合には冷媒の過冷却を目的とした、前記排熱回収装置30の排気熱交換器31によって冷媒が加熱され逆効果を呈することとなる。したがってこの逆効果を防止するため、図4に示すように、前記冷媒が、前記排熱回収装置30の排気熱交換器31に流入することなく室内機20へ流れるように第2の冷媒バイパス管路33’を設け、この第2の冷媒バイパス管路33’と前記排気熱交換器31への冷媒の切り替えを電磁弁によって行えるようにしておくことが好ましい。
【0022】
本発明の排気熱回収式空調システムとしては、図1に示した取り入れ外気と空調対象室51からの排気との間で熱交換を行う全熱交換器44を備えたものに限定されるものでなく、図2に示すように、全熱交換器44を備えず、冷媒を過冷却する本発明の排熱回収装置30のみ備えるものであっても十分冷房効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0023】
10:屋外機
11:圧縮器
12:夏に凝縮器になる屋外機熱交換器
13:四方弁
14:冷媒管路
15:屋外機ファン
20:室内機
21:夏に蒸発器になる室内機熱交換器
22:膨張弁
30:排熱回収装置
31:排気熱交換器
32:加湿器
33:バイパス管路
33’:第2の冷却バイパス回路
34、34’:逆止弁
35:給水管
36:ドレンパン
37:筐体
38:ダクト接続部
39:排水管
41:排気ダクト
42:外気取入ガラリ
43:排気ガラリ
44:全熱交換器
45:排気ファン
51:居室など空調対象室
52:トイレなど非空調対象室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置された1台の屋外機(10)と、空調対象室(51)へ温調空気を送り還気を吸い込む少なくとも1台の室内機(20)とを冷媒管路(14)で繋ぎ、前記屋外機(10)と室内機(20)の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、
夏期冷房時において、屋外機(10)に内蔵された圧縮器(11)によって高温高圧にされた冷媒ガスを凝縮器となる屋外機熱交換器(12)により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を室内機(20)に内蔵する膨張弁(22)に導く冷媒管路(14)の途中に排熱回収装置(30)を設け、
当該排熱回収装置(30)は、前記屋外機(10)から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクト(41)を経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクト(41)の途中に配置されてなることを特徴とする排気熱回収式空調システム。
【請求項2】
屋外に設置された1台の屋外機(10)と、空調対象室(51)へ温調空気を送り還気を吸込む少なくとも1台の室内機(20)とを冷媒管路(14)で繋ぎ、前記屋外機(10)と室内機(20)の間で冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空調システムであって、
夏季冷房時において、室内機(20)に内蔵された圧縮機によって高温高圧にされた冷媒ガスを冷媒管を介して、屋外機(10)が内蔵する凝縮器となる屋外機熱交換器(12)により外気と熱交換して高温高圧の液となった冷媒を、室内機(20)に内蔵する膨張弁(22)に導く冷媒管路(14)の途中に排熱回収装置(30)を設け、
当該排熱回収装置(30)は、前記屋外機(10)から導出された高温高圧の液になった冷媒と、屋内の冷房によって外気より低温となり排気ダクト(41)を経て屋内から屋外に排出される排出空気との間で熱交換が行われるよう、前記排気ダクト(41)の途中に配置されてなることを特徴とする排気熱回収式空調システム。
【請求項3】
前記排熱回収装置(30)は、
前記冷媒と排出空気との間で熱交換を行う排気熱交換器(31)と、
前記排気熱交換器(31)に流入する排出空気を水の断熱変化(断熱飽和過程のこと)により加湿して乾球温度を低下させる加湿器(32)と、
前記加湿器(32)へ水を供給する給水管(35)と、
前記加湿器(32)が排出空気へ載せきれなかった余剰水を集めるドレンパン(36)及び余剰水を排出する排水管(39)と
を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気熱回収式空調システム。
【請求項4】
前記排熱回収装置(30)は、
暖房時において室内機(20)の室内機熱交換器(21)が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液に相変化させた後、室内機(20)が内蔵する膨張弁(22)を通すことで低圧になった冷媒を前記排気熱交換器(31)を介することなく直接屋外機(10)の屋外機熱交換器(12)に還流させるためのバイパス管路(33)を備え、
冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して、冷媒の流路を前記排気熱交換器(31)と前記バイパス管路(33)に切り換えられるよう排気熱交換器(31)とバイパス管路(33)にそれぞれ流通させる向きを異にする逆止弁(34、34’)を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【請求項5】
前記排熱回収装置(30)は、
暖房時において、室内機(20)の室内機熱交換器(21)が凝縮器となり、導入される高温高圧になった冷媒ガスを高温高圧の液に相変化させた後、室内機(20)が内蔵する膨張弁(22)を通さずに直接屋外機(10)が内蔵する膨張弁及び屋外機熱交換器(12)へ、前記排気熱交換器(31)を介することなく還流させるためのバイパス管路(33)を備え、
冷房時と暖房時に冷媒の流れの向きが逆転することを利用して、冷媒の流路を前記排気熱交換器(31)と前記バイパス管路(33)に切り換えられるよう排気熱交換器(31)とバイパス管路(33)にそれぞれ流通させる向きを異にする逆止弁(34、34’)を設けてなる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【請求項6】
前記排熱回収装置(30)が、屋内の非空調対象室(52)からの排気ダクト(41)に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【請求項7】
前記排熱回収装置(30)が、屋内の空調対象室(51)からの排気ダクト(41)に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気熱回収式空調システム。
【請求項8】
前記排熱回収装置(30)が配設されている排気ダクト(41)には、排出空気の上流側に、空調対象室(51)に導入する外気と顕熱および潜熱とを熱交換する全熱交換器(44)を備えていることを特徴とする請求項7に記載の排気熱回収式空調システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202627(P2012−202627A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68309(P2011−68309)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)