説明

排気管の支持装置

【課題】排気管の支持装置において、サブフレームの剛性を向上するとともに、排気管から車体に伝わる振動を低減する。
【解決手段】車両幅方向に延びるサブフレーム5を車両の下部に配置し、サブフレーム5は、後側縁部のうち車両幅方向両端部に車両幅方向中央部より車両後方に突出する突部6を備え、サブフレーム5の前方に配置されるエンジンから車両後方へ延びる排気管8をサブフレーム5の上方に配置し、排気管8をマウント部材を介してサブフレーム5に弾性的に支持した排気管8の支持装置において、サブフレーム5に突部6の間を連絡するブラケット14を取り付け、ブラケット14にマウント部材9を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は排気管の支持装置に係り、特にサブフレームの剛性向上を図るとともに、排気管から車体に伝わる振動の低減を図る排気管の支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横置き、且つ、前方排気方式のエンジンにおいて、排気マニホルド(「エキマニ」ともいう。)の直下に接続される排気管はオイルパンの車両下方を通過した後、サブフレーム(「サスペンションフレーム」または「サスフレ」ともいう。)の車両上方、または、車両下方を通って床下に位置する触媒に繋がる。
多くの車両において、サブフレームの後端部付近にマフラハンガなどの支持装置を配設して排気管を固定している。
このとき、理想は、前記支持装置を排気管の軸中心よりも車両上方で、且つ、排気管の近傍に1箇所配設して排気管の動きを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−13062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示される従来構造では、車両の下部に配置されるサブフレームの車両後方に突出する突部に上下一対のブラケットを取り付け、このブラケットにマウント部材を嵌め込んで、このマウント部材と排気管とをステイで連結したものがあった。
しかし、このような構造では、排気管が車両幅方向中央部付近に配置されている場合、マウント部材から排気管までの距離が広がってステイの全長が長くなるため、ステイの振動や揺れなどが排気管に伝達されて排気管の振動および振幅が大きくなる虞があるという不都合がある。
更に、排気管から伝わる振動がブラケットを介して一方の突部に集中的に伝達されるため、サブフレームが振動し易くなり、如いては、サブフレームで振動伝播を分散できずに車体に振動が伝わり易くなるというという不都合がある。
【0005】
この発明は、排気管の支持装置において、サブフレームの剛性を向上するとともに、排気管から車体に伝わる振動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、車両幅方向に延びるサブフレームを車両の下部に配置し、前記サブフレームは、後側縁部のうち車両幅方向両端部に車両幅方向中央部より車両後方に突出する突部を備え、前記サブフレームの前方に配置されるエンジンから車両後方へ延びる排気管を前記サブフレームの上方に配置し、前記排気管をマウント部材を介して前記サブフレームに弾性的に支持した排気管の支持装置において、前記サブフレームに前記突部の間を連絡するブラケットを取り付け、このブラケットに前記マウント部材を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、車両幅方向に延びるサブフレームを車両の下部に配置し、サブフレームは、後側縁部のうち車両幅方向両端部に車両幅方向中央部より車両後方に突出する突部を備え、サブフレームの前方に配置されるエンジンから車両後方へ延びる排気管をサブフレームの上方に配置し、排気管をマウント部材を介してサブフレームに弾性的に支持した排気管の支持装置において、サブフレームに突部の間を連絡するブラケットを取り付け、ブラケットにマウント部材を取り付けた。
一般的に、前記サブフレームを車体に安定して取り付けるために、前記サブフレームの車両前後方向の寸法を大きくしている。しかし、前記サブフレームの車両前後方向の寸法を大きくすると、その分、前記サブフレームの重量が増加してしまう。前記サブフレームの重量増加を避けるために、前記サブフレームを後側縁部のうち車両幅方向両端部のみを車両幅方向中央部より車両後方に突出されている。
従来構造では、前記サブフレームのうち車両幅方向両端部に形成される前記突部に前記マウント部材を取り付けて、このマウント部材と前記排気管とをスティを介して連絡していた。しかし、このような構造では、前記マウント部材を取り付けることができる範囲が限定され、前記マウント部材を前記排気管に対して最適な箇所に配置できず、前記スティが長くなり、前記排気管からの振動が車体に伝達され易くなっていた。
そこで、この発明の特徴部分である「サブフレームに突部の間に連絡するブラケットを取り付け、ブラケットにマウント部材を取り付けた」の構造によって、前記ブラケットを用いて前記マウント部材を前記排気管に対して最適位置に配置でき、前記マウント部材と前記排気管との間を近づけることができ、前記マウント部材と前記排気管とを連絡する前記ステイの長さを短くすることができる。
これによって、前記排気管の振幅や振動を長さが短い前記ステイで抑制でき、前記排気管から前記車体に伝わる振動を低減できる。
また、前記サブフレームに前記突部の間を連絡する前記ブラケットを取り付けたことで、前記サブフレームの後部の変形(捩れなど)が抑制でき、前記サブフレーム全体の剛性を向上させることができる。
これによって、前記排気管から伝達される振動を前記サブフレームの剛性で低減でき、前記排気管から車体に伝わる振動を前記サブフレームで減衰できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の実施例を示す排気管の支持装置の分解斜視図である。(実施例)
【図2】図2は車両の前部の概略底面図である。(実施例)
【図3】図3は車両の前部の側面図である。(実施例)
【図4】図4は排気管の支持装置の車両後方からの斜視図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図4はこの発明の実施例を示すものである。
図2及び図3において、1は車両、2は車両前部、3は車両1の左側前輪、4は車両1の右側前輪である。
前記車両1は、図2に示す如く、車両幅方向に延びるサブフレーム5を前記車両1の下部に配置している。
そして、前記サブフレーム5は、後側縁部のうち車両幅方向両端部に車両幅方向中央部より車両後方に突出する突部6を備えている。
このとき、前記サブフレーム5の前方に配置されるエンジン7から車両後方へ延びる排気管8を前記サブフレーム5の上方に配置し、前記排気管8をマウント部材9を介して前記サブフレーム5に弾性的に支持する排気管8の支持装置を構成している。
つまり、前記車両1は、フロア10の下面に車両前後方向に延び、かつ、ほぼ平行な左右2本の左側及び右側サイドメンバ11a、11bを配置し、前記車両前部2において、左側及び右側サイドメンバ11a、11bに車両幅方向に延びる前記サブフレーム5を配置している。
このとき、このサブフレーム5は、図2に示す如く、前記車両前部2に配置される前記エンジン7及び変速機12よりも車両後方側に配置されるとともに、左右及び前後の合計4箇所の第1〜第4車体取付部13a、13b、13c、13dによって前記左側及び右側サイドメンバ11a、11bに取り付けられる。
また、前記サブフレーム5は、図1及び図2、図4に示す如く、前記突部6、つまり、左右に2個の左側及び右側突部6a、6bを備えている。
更に、前記車両1は、図1〜図4に示す如く、前記サブフレーム5の前方に前記エンジン7を配置し、このエンジン7から車両後方へ延びる前記排気管8を前記サブフレーム5の上方に配置するとともに、この排気管8を前記マウント部材9を介して前記サブフレーム5に弾性的に支持している。
そして、このサブフレーム5に前記突部6の間を連絡するブラケット14を取り付け、このブラケット14に前記マウント部材9を取り付ける構成とする。
詳述すれば、前記サブフレーム5は、図1及び図4に示す如く、前記突部6である左側及び右側突部6a、6bを有しており、これらの左側及び右側突部6a、6bの間を車両後方側で前記ブラケット14によって連結する。
そして、このブラケット14の上部に前記マウント部材9を取り付けるものである。
従って、この発明の特徴部分である「サブフレーム5に突部6の間を連絡するブラケット14を取り付け、ブラケット14にマウント部材9を取り付けた」の構造によって、前記ブラケット14を用いて前記マウント部材9を前記排気管8に対して最適位置に配置でき、前記マウント部材9と前記排気管8との間を近づけることができ、前記マウント部材9と前記排気管8とを連絡するステイ15の長さを短くすることができる。
これによって、前記排気管8の振幅や振動を長さが短いステイ15で抑制でき、前記排気管8から車体に伝わる振動を低減できる。
また、前記サブフレーム5に前記突部6の間を連絡する前記ブラケット14を取り付けたことで、前記サブフレーム5の後部の変形や捩れなどが抑制でき、前記サブフレーム5全体の剛性を向上させることができる。
これによって、前記排気管8から伝達される振動を前記サブフレーム5の剛性で低減でき、前記排気管8から車体に伝わる振動を前記サブフレーム5で減衰できる。
【0011】
また、前記ブラケット14は、パイプ材からなり、その軸線方向両端に内壁が密着するように扁平された偏平部16と、この扁平部16の間で少なくとも周壁の一部が平坦状態に形成された平坦部17とを備え、この平坦部17に前記マウント部材9を取り付けた構成を有する。
つまり、前記ブラケット14は、図1及び図4に示す如く、パイプ材により形成されるとともに、その軸線方向両端に内壁が密着するように扁平された偏平部16である左側及び右側偏平部16a、16bと、これらの左側及び右側偏平部16a、16bの間で少なくとも周壁の一部、例えば上部が平坦状態に形成された平坦部17とを備え、この平坦部17に前記マウント部材9を取り付けるものである。
従って、上述した特徴部分の構造によって、前記ブラケット14の剛性を向上させることができ、剛性の高い前記ブラケット14に前記平坦部17を設けて、この平坦部17に前記マウント部材9を配置したことで、安定した状態で前記マウント部材9を最適な位置に配置できる。
これによって、前記排気管8を安定して固定できるとともに、この排気管8から前記マウント部材9を介して伝達される振動を剛性の高い前記ブラケット14で低減させることができる。
【0012】
車両幅方向に延びてその両端部が夫々左右の前輪である左側前輪3及び右側前輪4側に取着するスタビライザ18を前記突部6に取り付け、前記サブフレーム5に前記ブラケット14を取り付けるブラケット取付部19と、前記スタビライザ18を取り付けるスタビライザ取付部20とを設け、前記ブラケット取付部19を前記スタビライザ取付部20よりも車両内側に配置した構成を有する。
つまり、図1及び図4に示す如く、前記サブフレーム5の突部6である左側及び右側突部6a、6bに前記スタビライザ18取り付ける。
このとき、前記サブフレーム5に前記ブラケット14を取り付けるブラケット取付部19を、左側及び右側ブラケット取付部19a、19bとするとともに、前記サブフレーム5に前記スタビライザ18を取り付けるスタビライザ取付部20を、左側及び右側スタビライザ取付部20a、20bとし、図1及び図4に示す如く、前記ブラケット取付部19である左側及び右側ブラケット取付部19a、19bを前記スタビライザ取付部20である左側及び右側スタビライザ取付部20a、20bよりも車両内側に配置するものである。
従って、上述した特徴部分の構造によって、前記ブラケット取付部19を前記スタビライザ取付部20よりも車両内側に配置したことで、このスタビライザ取付部20間に前記ブラケット14を配置でき、前記スタビライザ18で前記ブラケット14の変形や動きを規制でき、前記ブラケット14の振動を低減できる。
また、前記ブラケット取付部19を前記スタビライザ取付部20の近傍に配置できるため、前記排気管8から前記ブラケット14に伝わる振動を剛性の高い前記スタビライザ取付部20で減衰させることができる。
【符号の説明】
【0013】
1 車両
2 車両前部
3 左側前輪
4 右側前輪
5 サブフレーム
6 突部
7 エンジン
8 排気管
9 マウント部材
10 フロア
11a、11b 左側及び右側サイドメンバ
12 変速機
13a、13b、13c、13d 第1〜第4車体取付部
14 ブラケット
15 ステイ
16 偏平部
16a、16b 左側及び右側偏平部
17 平坦部
18 スタビライザ
19 ブラケット取付部
19a、19b 左側及び右側ブラケット取付部
20 スタビライザ取付部
20a、20b 左側及び右側スタビライザ取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延びるサブフレームを車両の下部に配置し、前記サブフレームは、後側縁部のうち車両幅方向両端部に車両幅方向中央部より車両後方に突出する突部を備え、前記サブフレームの前方に配置されるエンジンから車両後方へ延びる排気管を前記サブフレームの上方に配置し、前記排気管をマウント部材を介して前記サブフレームに弾性的に支持した排気管の支持装置において、前記サブフレームに前記突部の間を連絡するブラケットを取り付け、このブラケットに前記マウント部材を取り付けたことを特徴とする排気管の支持装置。
【請求項2】
前記ブラケットは、パイプ材からなり、その軸線方向両端に内壁が密着するように扁平された偏平部とこの扁平部の間で少なくとも周壁の一部が平坦状態に形成された平坦部とを備え、この平坦部に前記マウント部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の排気管の支持装置。
【請求項3】
車両幅方向に延びてその両端部が夫々左右の前輪側に取着するスタビライザを前記突部に取り付け、前記サブフレームに前記ブラケットを取り付けるブラケット取付部と前記スタビライザを取り付けるスタビライザ取付部とを設け、前記ブラケット取付部を前記スタビライザ取付部よりも車両内側に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排気管の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−66622(P2012−66622A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210966(P2010−210966)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】