説明

排水の処理方法および排水の処理装置

【課題】懸濁物質および油分を含む排水を処理する際に、懸濁物質および油分をより効率よく除去することができる排水の処理方法等を提供する。
【解決手段】線材を螺旋状に巻回させることで形成されるコイル部11と、コイル部11の外周に配される珪藻土または活性炭等の多孔質の濾過助剤12と、を備えた濾過器10に、懸濁物質および油分を含む排水を通水することにより懸濁物質および油分を除去することを特徴とする排水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の処理方法等に係り、より詳しくは、例えば懸濁物質および油分を含む排水を処理する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の金属、プラスチック、セラミック、ガラスなどの製品製造を行なう工場において、製品を精密加工するための切削工程や研磨工程、あるいは製品の洗浄を行なう洗浄工程を有する場合がある。そしてこれらの工程では、切削屑、研磨屑が発生する。更に研磨工程では、研磨を行なうための研磨材を使用することがある。また、潤滑のために機械油等の油分を使用する。そのためこれらの工程においては、例えば切削屑、研磨屑、研磨材等からなる懸濁物質と、油分を含む排水が排出されることになる。
【0003】
一方、排水放流量の法的規制や使用する水に要するコスト削減のため、工場外部に放出する排水の量をできるだけ減らすことが求められている。そのため発生する排水についても回収水として再利用するため所定の回収処理が必要である。また、排水を工場外部に放出する場合でも含有する懸濁物質や油分を所定の濃度以下にして排出することが好ましい。
【0004】
ここで、懸濁物質や油分を含む排水を処理するのに、凝集剤を用いて懸濁物質や油分を凝集させ、大きなフロックとした後、沈降または浮上させることにより分離する技術が存在する。
また、油水分離膜を用いて、懸濁物質や油分を濾過することにより分離する技術が存在する(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「膜式油水分離装置ゆとり革命シリーズカタログ Cat.No.F15・09−2003」、NOK株式会社、2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、凝集剤を用いて懸濁物質や油分を凝集させ、沈降または浮上させることにより分離する方法では、添加する凝集剤やpH調整剤により、塩量が大きく増加する。そのため再利用できる水質にするには更に逆浸透膜やイオン交換樹脂で処理を行う必要がある。そしてその場合には、凝集剤により逆浸透膜やイオン交換樹脂が汚染され、処理能力が低下する場合がある。
更に、油水分離膜を用いて、懸濁物質や油分を濾過することにより分離する場合でも、油水分離膜は透過水量が大きくないため装置が大型となる。また油水分離膜の性能劣化が大きく、薬品による洗浄や膜モジュール自体の交換を頻繁に行なう必要がある。そのため運転経費が高くなると共に、薬品による洗浄を行なう場合は、洗浄排液の処理が更に必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、懸濁物質および油分を含む排水から、懸濁物質および油分をより効率よく除去することができる排水の処理方法等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして本発明によれば、線材を螺旋状に巻回させることで形成されるコイル部と、コイル部の外周に配される多孔質の濾過助剤と、を備えた濾過器に、懸濁物質および油分を含む排水を通水することにより懸濁物質および油分を除去することを特徴とする排水の処理方法が提供される。
【0009】
ここで、濾過器の濾過助剤は、コイル部の線材に設けられた突起部により形成される間隙、またはコイル部と濾過助剤の間に更に配される濾布材を被覆して形成されることが好ましく、濾過器の濾過助剤は、珪藻土または活性炭の少なくとも一方であることが好ましく、排水は、金属、プラスチック、セラミック、ガラスの少なくとも1つを含む材料を切削または研磨することにより生じるものであることが好ましい。
【0010】
また更に、本発明によれば、線材を螺旋状に巻回させることで形成されるコイル部を備えた濾過器と、コイル部の外周に形成させるための多孔質の濾過助剤を貯留する濾過助剤槽と、を備え、濾過助剤槽からコイル部に濾過助剤を流通させることで濾過助剤をコイル部の外周に配し、懸濁物質および油分を含む排水を通水することで濾過助剤により懸濁物質および油分を除去することを特徴とする排水の処理装置が提供される。
【0011】
ここで、濾過器の濾過助剤は、コイル部の線材に設けられた突起部により形成される間隙、またはコイル部と濾過助剤の間に更に配される濾布材を被覆して形成させることが好ましい。
また濾過器の前段に配され排水を前処理する前処理手段および濾過器の後段に配され濾過器を通過した濾過水を更に処理する後処理手段の少なくとも一方を更に有し、前処理手段および後処理手段は、下記(1)〜(4)の少なくとも1つを備えることが好ましい。
(1)前処理手段は、排水から懸濁物質を予め除去するための凝集沈殿手段であること
(2)後処理手段は、濾過水から油分を更に除去するための油分除去器であること
(3)後処理手段は、濾過水から更に懸濁物質を除去するための濾過装置であること
(4)後処理手段は、濾過水を脱塩するための脱塩装置であること
更に脱塩装置は、逆浸透膜装置およびイオン交換装置の少なくとも一方であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、懸濁物質および油分を含む排水を処理する際に、懸濁物質および油分をより効率よく除去することができる排水の処理方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態で使用する濾過器の第1の例を説明した図である。
【図2】図1の一部分を拡大した拡大図であり、コイル部と濾過助剤について更に詳しく説明した図である。
【図3】本実施の形態で使用する濾過器の第2の例を説明した図である。
【図4】本実施の形態による排水の処理装置の第1の例を示す図である。
【図5】図4に示した排水処理装置を使用して排水を処理する手順を示したフローチャートである。
【図6】本実施の形態による排水の処理装置の第2の例を示す図である。
【図7】図6に示した排水処理装置を使用して排水を処理する手順を示したフローチャートである。
【図8】通水時間と濁度との関係を示した図である。
【図9】通水時間と油分濃度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0015】
(排水)
本実施の形態の排水の処理方法で処理する被処理水は、例えば、切削工程、研磨工程、洗浄工程において発生する排水であって、切削屑、研磨屑、研磨材等からなる懸濁物質と、潤滑のために使用される機械油等の油分を含む。切削屑、研磨屑としては、各種の金属、プラスチック、セラミック、ガラスから生じるものを例示することができる。
ここで、本実施の形態の排水に含まれる懸濁物質濃度としては、例えば、10mg/L〜10000mg/Lである。また、本実施の形態の排水に含まれる油分濃度としては、例えば、n−ヘキサン抽出物質含有量で1mg/L〜1000mg/Lである。
【0016】
(濾過器)
図1は、本実施の形態で使用する濾過器10の第1の例を説明した図である。
図1に示した濾過器10は、所謂コイルバネ型フィルタまたはコイルスプリングフィルタと呼ばれるものである。そして、線材を螺旋状に巻回させることにより形成されるコイル部11と、コイル部11の外周に配されコイル部11を被覆して形成される濾過助剤12とから主要部が構成される。また、コイル部11の中心部を貫通して配される芯金13と、芯金13の両端においてナット15aおよびナット15bにより固定される金具14aおよび金具14bを更に備える。
【0017】
また図2は、図1の一部分を拡大した拡大図であり、コイル部11と濾過助剤12について更に詳しく説明した図である。
以下、図1および図2を用いて、濾過器10について更に詳しく説明を行なう。
コイル部11は、上述の通り、線材を螺旋状に巻回させることにより形成される。この線材は、断面外周が円形又は略円形の形状をなし、プラスチック、金属等の材料からなる。本実施の形態において、線材としては、例えば、断面が直径1mmの円形形状のものを使用することができる。そして隣接する線材の間には間隙16が形成されている。この間隙16は、線材に設けられた突起部11aにより予め定められた間隔になるように調整される。即ち、コイル部11は、芯金13とナット15aおよびナット15bにより固定される金具14aおよび金具14bにより圧縮され、これにより隣接する線材同士は、密着している。ただし、線材に設けられた突起部11aにより、完全に密着するには至らず、突起部11aが形成されている箇所以外の箇所において、予め定められた間隔の間隙16を形成することができる。本実施の形態において、この間隔は、例えば10μm〜90μmとすることができる。
【0018】
また、濾過助剤12は、少なくともこの間隙16を被覆するように形成される。即ち、間隙16の間隔は、非常に短い距離で調整することは困難である。よってこの間隙16のみでは、微細な懸濁物質を濾過することは困難である。よって、濾過助剤12によりこの間隙16を被覆することで、微細な懸濁物質を濾過し、除去することが可能となる。つまり、濾過器10は、コイル部11の外部から圧力を付加して内部に排水を通水することにより濾過を行なう装置である。そしてこの際に本実施の形態の排水に含まれる懸濁物質は、濾過助剤12を通過することができず、濾過助剤12の表面に蓄積する。一方水分は、濾過助剤12を通過することができる。そのため懸濁物質を除去することができる。また、間隙16は、濾過助剤12を通過させることができる間隔より狭い間隔で形成されるため、濾過助剤12はコイル部11の間隙16を通過することができない。そのため濾過助剤12をコイル部11の外周表面に留めることができる。
【0019】
ここで、濾過助剤12は、多孔質の材料からなる。濾過助剤12を多孔質の材料により形成することで、本実施の形態の排水に含まれる油分を除去することができる。つまり、濾過助剤12に達した油分は、濾過助剤12表面に形成されている孔に侵入し、そのまま捕獲される。そのため、油分は濾過助剤12を通過することができないが、水分は、濾過助剤12を通過することができる。そのため油分は濾過助剤12により濾過され、除去される。
結局、濾過部材12により排水から懸濁物質および油分が濾過され、除去されることになる。なお濾過助剤12を通過した水分は、コイル部11の内部を流通して、濾過器10の外部に濾過水として排出される。
また本実施の形態において、多孔質の材料としては、油分の除去をより効率よく行なうことができるという観点から、珪藻土または活性炭の少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0020】
なお、本実施の形態で使用する濾過器10の濾過助剤12が除去することができる懸濁物質および油分の量には上限が存在する。これは、濾過器10の入口水圧力を測定することで検知することができる。即ち、濾過助剤12に堆積した懸濁物質によりケーキ層が形成され、そのため濾過器10の入口水圧力が上昇する。そして所定の値以上に入口水圧力が上昇した場合は、濾過助剤12の処理能力が限界に達していると判断できる。このような場合でも濾過器10を容易に再生することができる。つまり、本実施の濾過器10のコイル部11にはわずかに延びしろがある、そしてコイル部11の内部から圧力をかけた場合、コイル部11がわずかに延び、緩む。このようにコイル部11が緩むと、コイル部11の線材間に上記の間隙より大きな間隙が生じる。そしてケーキ層が堆積した濾過助剤12はコイル部11から剥離し、脱落する。このような逆洗処理によりケーキ層を容易に除去することができる。
また、この際に濾過助剤12は、ケーキ層と共に除去されてしまうが、再度濾過助剤12をコイル部11上に被覆することも容易である。実際には、濾過助剤12は、スラリー状で別途貯留されており、濾過助剤12を含むスラリーをコイル部11に流通させる。そして上述の通り、間隙16は、濾過助剤12を通過させる間隔より狭い間隔で形成されるため、これにより濾過助剤12が、コイル部11表面に堆積することで被覆され、コイル部11の外周に配される。
【0021】
このような排水の処理を行なうのに、有機膜やセラミック膜による濾過膜を使用して濾過するような方法では、濾過膜の閉塞が生じやすく、また閉塞が生じた場合は、薬品洗浄が必要である。また特に有機膜による濾過膜では、排水中に油分等の有機物を含む場合、濾過膜の性能低下が著しく、薬品洗浄を行なっても再生できない場合もある。
一方、本実施の濾過器10を使用する方法では、濾過助剤12を被覆→濾過→ケーキ層の除去の繰り返しを行なうことで、高濃度の懸濁物質および油分を含む排水の処理を安定して行なうことができる。
【0022】
また図3は、本実施の形態で使用する濾過器10の第2の例を説明した図である。
図3に示した濾過器10は、例えば、バネ式フィルタと呼ばれるものである。そして、線材を螺旋状に巻回させることにより形成されるコイル部11と、コイル部11の外周に配される濾過助剤12と、コイル部11と濾過助剤12の間に配される濾布材17とを備える。
【0023】
コイル部11の構成は、図1および図2で説明したものとほぼ同様である。ただし線材に設けられた突起部11aは必要ではない。また隣接する線材間は予め定められた間隔が開けられて形成される。この間隔は、例えば、0.5cm〜1cmである。
また濾過助剤12は、図1および図2で説明したものと同様に多孔質の材料であり、珪藻土または活性炭の少なくとも一方であることが好ましい。
濾布材17は、例えば、ナイロン、ポリプロピレン(PP)等の繊維からなる筒状の布材である。そしてこれらの繊維を平織りや綾織り等することで繊維間に微細な間隙が形成されている。この間隙は、例えば、数μm程度である。
【0024】
図3に示した濾過器10は、中心部にコイル部11を有し、その外周に濾布材17が配される。このときコイル部11と濾布材17は密着している。つまりコイル部11の外径と筒状の濾布材17の内径はほぼ同じである。また濾過助剤12は、濾布材17を被覆して形成される。
【0025】
この濾過器10もコイル部11の外部から圧力を付加して内部に排水を通水することにより濾過を行なう装置である。つまり排水に含まれる懸濁物質は、濾過助剤12を通過することができず、濾過助剤12の表面に蓄積する。また油分は、濾過助剤12表面に形成されている孔に侵入し、そのまま捕獲される。一方水分は、濾過助剤12を通過することができる。そのため排水から懸濁物質および油分を除去することができる。また、濾過助剤12を通過した水分は、濾布材17に存在する微細な間隙を通過することで、更にコイル部11側に侵入することができる。そして本実施の形態では、コイル部11を形成する線材は、互いに予め定められた間隔を有して形成されているため、水分は、コイル部11の内部に容易に侵入し、コイル部11の内部を流通して、濾過器10の外部に濾過水として排出される。
【0026】
なおコイル部11を設け、濾布材17をコイル部11に密着して配することで、濾過器10の外部から圧力を付与しても濾布材17および濾過助剤12の形状はほとんど変化しない。そのため本実施の形態の濾過器10では、濾過助剤12の脱落等は生じにくい。この点でコイル部11は、濾布材17および濾過助剤12を支持する支持体として捉えることができる。
【0027】
また図3に示した濾過器10の場合でも再生が容易である。つまり、コイル部11の内部から圧力をかけると、ケーキ層が堆積した濾過助剤12は濾布材17から剥離し、脱落する。このような逆洗処理によりケーキ層を容易に除去することができる。そして濾過助剤12を濾布材17上に再び被覆することで再生ができる。
【0028】
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される排水の処理装置および本実施の形態が適用される排水の処理方法について具体的に説明する。
図4は、本実施の形態による排水の処理装置の第1の例を示す図である。また図5は、図4に示した排水の処理装置である排水処理装置100を使用して排水を処理する手順を示したフローチャートである。以下、図4および図5を使用して説明を行なう。
【0029】
図4に示す排水処理装置100は、切削工程や研磨工程等において発生した懸濁物質および油分を含む排水を導入し一時的な保管を行なう原水槽101と、排水を濾過する濾過器10と、処理を行なった後の排水である濾過水の一時的な保管を行なう濾過水槽102と、濾過助剤をスラリーとして貯留する濾過助剤槽103とを備える。なお本実施の形態では、濾過器10は複数本使用している。
また、原水槽101、濾過器10、濾過水槽102とは、ステンレス等からなる配管104b,104cによって直列に接続され、濾過助剤槽103と濾過器10とは、配管104e,104fにより接続されている。そして排水を原水槽101に導入する配管104aと、濾過水槽102から排水処理装置100の外部に濾過水を放流するための配管104dとを備える。
更に、配管104b,104d,104eの途中には、排水や濾過水等を移送するための移送ポンプ105b,105d,105eが設置されている。
【0030】
以下、このように構成された排水処理装置100を使用して、懸濁物質および油分を含む排水を処理する方法について説明を行う。
【0031】
まず、濾過助剤12をコイル部11または濾布材17に被覆する。そのためには移送ポンプ105eを使用して、濾過助剤槽103から濾過助剤12を含むスラリーを配管104eを通して濾過器10に移送し、流通させる。またこれと共にスラリーは、配管104fを通して濾過助剤槽103に戻される。即ちスラリーは、濾過助剤槽103と濾過器10との間を循環供給される。これはコイル部11または濾布材17に濾過助剤12が予め定められた厚さに堆積するまで続けられる。そしてこれにより濾過助剤12をコイル部11または濾布材17の外周に配することができる(ステップ101)。
【0032】
次に、排水を原水槽101に導入する(ステップ102)。排水は、この原水槽101に一時的に保管される。そして、一定の量以上になったときに以下に述べる処理を行なうことで、より効率的に排水の処理を行なうことができる。
【0033】
即ち、まず移送ポンプ105bを使用して、原水槽101から濾過器10へ排水を送出する。この際に移送ポンプ105bにより生じる圧力を使用することで、濾過器10により排水の濾過が行なわれる(ステップ103)。つまり図1〜図3において説明したようにコイル部11または濾布材17に被覆されている濾過助剤12により排水に含まれる懸濁物質および油分が除去される。
【0034】
濾過器10の処理能力が上限に達しない限りこの処理を続けることができる(ステップ104においてNoの場合)。そして懸濁物質および油分が除去され、濾過器10のコイル部11の内部に侵入した濾過水は、処理水として濾過水槽102に導入され、一時的に保管される(ステップ105)。そして、一定量以上になったときに、移送ポンプ105dにより排水処理装置100の外部に放流される(ステップ106)。
【0035】
また、濾過器10の処理能力が上限に達し、上述したように再生を行なう場合(ステップ104においてYesの場合)は、逆洗処理によりコイル部11または濾布材17から懸濁物質等からなる濾過助剤12と共にケーキ層を剥離させる(ステップ107)。そして剥離した濾過助剤12およびケーキ層は、濃縮汚泥として、濾過器10から取り出され、図示しない脱水装置により脱水されて脱水ケーキとして廃棄される(ステップ108)。
【0036】
また、濾過助剤12をコイル部11または濾布材17に再度被覆するには、再びステップ101に戻り、濾過助剤を含むスラリーを濾過助剤槽103と濾過器10との間で循環供給させる。これにより濾過助剤12をコイル部11または濾布材17の表面に被覆させることができる。
【0037】
図6は、本実施の形態による排水の処理装置の第2の例を示す図である。また図7は、図6に示した排水の処理装置である排水処理装置200を使用して排水を処理する手順を示したフローチャートである。以下、図6および図7を使用して説明を行なう。
【0038】
図6に示した排水処理装置200は、図1に示した排水処理装置100に対し、原水槽201、濾過器10、濾過水槽202、濾過助剤槽203を備えることについては同様である。ただし、排水処理装置200は、濾過器10の前段に配され排水を前処理する前処理手段の一例として排水中の懸濁物質を凝集させる凝集反応槽206と、同様に前処理手段の一例として凝集した懸濁物質を沈殿させる沈殿槽207と、沈殿槽207の上澄み液を導入し一時的な保管を行なう上澄み液槽208と、濾過器10の後段に配され濾過器10を通過した濾過水を更に処理する後処理手段の一例として濾過水から油分を更に除去するための油分除去器209と、同様に後処理手段の一例であり、脱塩装置の一例である逆浸透膜を備える逆浸透膜装置210とを更に備える。なお本実施の形態では、濾過器10は複数本使用している。
また、原水槽201、凝集反応槽206、沈殿槽207、上澄み液槽208、濾過器10、濾過水槽202、油分除去器209、逆浸透膜装置210とは、配管204b,204c,204d,204e,204f,204g,204hによって直列に接続され、濾過助剤槽203と濾過器10とは、配管204j,204kにより接続されている。そして排水を原水槽201に導入する配管204aと、逆浸透膜装置210から排出される回収水を通水するための配管204iとを備える。
更に、配管204b,204e,204g,204h,204jの途中には、排水や濾過水等を移送するための移送ポンプ205b,205e,205g,205h,205jが設置されている。
【0039】
凝集反応槽206は、本実施の形態では、無機凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄、硫酸バンドなど)を添加し排水に含まれる懸濁物質を凝集させるための装置である。排水中に含まれる懸濁物質が多く、直接濾過器10で排水を処理すると濾過器10に過度に負担がかかる場合に有効であり、濾過器10の1サイクルあたりの濾過時間を長くすることができる。また濾過水の水質や濾過速度がより改善される場合がある。なお無機凝集剤の添加量は、排水を凝集剤のみを用いて処理する場合に対して1/5〜1/10程度が適当である。つまり凝集剤の添加量が少量ですむため、塩量が増加しにくく、逆浸透膜装置210を通過した後の濾過水の水質が改善されたり、濾過器10を通過しリークする微量の無機凝集剤による逆浸透膜装置210の汚染が生じにくくなる。
【0040】
沈殿槽207は、凝集反応槽206で凝集した懸濁物質を静置することで沈殿させる。これにより沈殿槽207では、沈殿する固体としての懸濁物と上澄み液である液体としての排水とに固液分離が行なわれる。
なお本実施の形態では、凝集反応槽206と沈殿槽207を併せて排水から懸濁物質を予め除去するための凝集沈殿手段として捉えることができる。
【0041】
油分除去器209は、油除去フィルタまたは限外濾過膜(UF膜)を備える装置である。ここで油除去フィルタは、油分を選択的に吸着するフィルタである。また限外濾過膜は、例えば、大きさが2nm〜200nmの孔を多数設けた酢酸セルロース膜である。油分除去器209により濾過器10で除去しきれなかった油分を更に除去することができる。本実施の形態では、油分除去器209として、例えばNOK株式会社製の膜式油分分離装置ゆとり革命シリーズや日機装株式会社製Emulxフィルタを使用することができる。
【0042】
逆浸透膜装置210は、内部に逆浸透膜(RO膜)を備える装置である。逆浸透膜は、例えば、逆浸透膜は、例えば、酢酸セルロースまたは芳香族ポリアミドを素材とし、大きさが2nm以下の孔を多数有する濾過膜であり、この膜を通過させることで、金属イオン等のイオン類や塩類を除去することができる。
【0043】
以下、このように構成された排水処理装置200を使用して、懸濁物質および油分を含む排水を処理する方法について説明を行う。
【0044】
まず濾過助剤12をコイル部11または濾布材17に被覆する。そのためには移送ポンプ205h、配管204j,204kを使用して濾過助剤を含むスラリーを濾過助剤槽203と濾過器10との間で循環供給させる。これによりコイル部11または濾布材17に濾過助剤12が予め定められた厚さに堆積し、濾過助剤12をコイル部11または濾布材17の外周に配することができる(ステップ201)。
次に排水を原水槽201に導入し(ステップ202)、移送ポンプ205bを使用して、原水槽201から凝集反応槽206へ排水を移送する。そして凝集反応槽206で、無機凝集剤を添加し懸濁物質を凝集させる(ステップ203)。更に移送ポンプ205cを使用して沈殿槽207へ排水を送出し、沈殿槽207で凝集した懸濁物質を沈殿させ除去する(ステップ204)。
【0045】
更に沈殿槽207の上澄み液は、いったん上澄み液槽208に貯留した後、移送ポンプ205eを使用して、上澄み液槽208から濾過器10へ送出する。そして濾過器10により排水の濾過を行ない、排水に含まれる懸濁物質および油分を除去する(ステップ205)。濾過器10の処理能力が上限に達するまでこの処理は続けられ(ステップ206においてNoの場合)、濾過器10により濾過された濾過水は濾過水槽202に導入される(ステップ207)。
また濾過器10の処理能力が上限に達し、再生を行なう場合(ステップ206においてYesの場合)は、逆洗処理によりコイル部11または濾布材17から懸濁物質等からなる濾過助剤12と共にケーキ層を剥離させる(ステップ211)。そして剥離した濾過助剤12およびケーキ層は、濃縮汚泥として、濾過器10から取り出され、図示しない脱水装置により脱水されて脱水ケーキとして廃棄される(ステップ212)。
【0046】
一方、濾過水槽202に導入された濾過水は、移送ポンプ205gにより油分除去器209に導入される(ステップ208)。これにより濾過水中にわずかに含まれる油分を更に除去することができる。
【0047】
そして、油分除去器209により油分が更に除去された濾過水は、移送ポンプ205hにより逆浸透膜装置210に導入される(ステップ209)。そして、逆浸透膜装置210に備えられる逆浸透膜を通過することで、金属イオン、残存した懸濁物質、有機物等が除去される。なお、移送ポンプ205hは、逆浸透膜を通過させるための圧力を発生するために高圧ポンプであることが好ましい。
【0048】
このように油分除去器209を逆浸透膜装置210の前段に配置することにより、逆浸透膜装置210の逆浸透膜が油分により劣化することを抑制することができる。
【0049】
図4に示した排水処理装置100は、上述の通り、懸濁物質および油分を含む排水を処理し、排水処理装置100の外部に放流を行なうことを目的とする。一方、図6に示した排水処理装置200は、懸濁物質および油分を含む排水を処理し、回収水として再利用することを目的とする。即ち、排水処理装置100では排水から放流を行なう程度には懸濁物質および油分を除去できるが、回収水として利用するにはその純度が十分ではない。よって、濾過器10を通過した濾過水を更に処理することで、回収水とする必要がある。逆浸透膜装置210を通過した濾過水は、十分に不純物が除去され、回収水として利用することができる(ステップ210)。
【0050】
このように回収水として使用する場合でも、上述した凝集反応槽206、沈殿槽207、油分除去器209、逆浸透膜装置210の全てが必要であるとは限らない。即ち、排水に含まれる懸濁物質および油分の量によりこれらの装置を適宜選択し、設置することができる。また後処理手段として、濾過水から更に懸濁物質を除去するための濾過装置を設けてもよい。これにより濾過器10で除去しきれなかった微細な懸濁物質を除去することができ、濾過水の純度を更に向上させることができる。
なお本実施の形態では、逆浸透膜装置210の代わりに、イオン交換樹脂等を充填したイオン交換装置を使用することもできる。この場合、イオン交換装置を脱塩装置として捉えることができる。
【0051】
また上述した例では、予め珪藻土等を含むスラリーをコイル部11または濾布材17に流通させ、コイル部11または濾布材17の外周表面に濾過助剤12を被覆した後に懸濁物質および油分を含む排水を通水し、排水処理を行なっていた(所謂、プリコート法)が、これに限られるものではない。例えば、排水に珪藻土等を添加して通水することにより排水処理を行なう方法(所謂、ボディフィード法)でもよい。この場合、コイル部11または濾布材17の外周表面に濾過助剤12が被覆されると共に、排水に含まれる懸濁物質および油分もこの濾過助剤12に捕獲される。そして、濾過助剤12、懸濁物質、および油分が混合したケーキ層がコイル部11または濾布材17の外周表面に形成される。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
本実施例では、排水の処理装置として図4に示した排水処理装置100を用い、濾過器10として図1および図2に示したものを用いた。
そして、排水として、金属部品加工工程からの排出される排水を用いた。この排水の懸濁物質濃度は、4000mg/Lであり、油分濃度は、n−ヘキサン抽出物質含有量で100mg/Lであった。
濾過器10のコイル部11としては、株式会社モノベエンジニアリング製のバネ式フィルタであるモノMAXフィルタであって、大きさが15mmφ×400mmLのものを用いた。そして、このコイル部11に濾過助剤として珪藻土を10g被覆した。これは、濾過助剤槽103から珪藻土を含むスラリーをモノMAXフィルタに4分間通すことで行なうことができた。
【0054】
そして、このような濾過器10に上記の排水を流速1.0L/minで通水し、30分間濾過を行ない、懸濁物質および油分の除去を行なった。その後、モノMAXフィルタの内側から1分間濾過水を逆流させ、堆積したケーキ層を濾過助剤12と共に剥離させた。そして、更に1分間続けて逆流を行い、モノMAXフィルタの洗浄を行なった。
【0055】
以上の工程を10サイクル繰り返すことで排水の処理を行なった。各サイクルの濾過終了時の濾過器10の差圧は、0.2MPa以内であり、問題なく処理を行なうことができた。また濾過後の濾過水の懸濁物質濃度は、各サイクルで1mg/L以下であり、油分濃度は、n−ヘキサン抽出物質含有量で1mg/Lであった。即ち、良好に排水の処理が行えることを確認した。また、堆積したケーキ層および濾過助剤12の剥離、および濾過助剤12の再被覆も各サイクル毎に容易に行なうことができることを確認した。
【0056】
(実施例2)
本実施例では、排水の処理装置として図6に示した排水処理装置200から逆浸透膜装置210を取り除いたものを用い、濾過器10として図3に示したものを用いた。
ここで排水の懸濁物質濃度は、17mg/Lであり、油分濃度は、n−ヘキサン抽出物質含有量で4mg/Lであった。
また濾過器10としては、株式会社三鷹工業所製バネ式フィルタを用いた。このバネ式フィルタの濾布材17のサイズは、14mmφ×300mmLのものを用い、濾過器10を3本使用した。そして、この濾布材17に濾過助剤として珪藻土を10g被覆した。これは、濾過助剤槽203から珪藻土を含むスラリーを濾布材17に4分間通すことで行なうことができた。
【0057】
そして凝集反応槽206では、無機凝集剤として硫酸バンドを酸化アルミニウム(Al)の量に換算して60mg/L添加した。この際の凝集反応槽206内の排水のpHは6.5であり、沈殿槽207内の沈降速度は、5m/hであった。
そして油分除去器209として、日機装株式会社製Emulxフィルタを用いた。本実施の形態では、このフィルタとして長さが250mmのものを1本用いた。
【0058】
そして、このような排水処理装置100に上記の排水を流速1.0L/minで通水し、120分間濾過を行ない、懸濁物質および油分の除去を行なった。
【0059】
濾過器10の出口および油分除去器209の出口での懸濁物質濃度および油分濃度を以下の表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1より、懸濁物質については濾過器10の出口の時点で十分に除去ができていることが確認できる。また油分については、濾過器10の出口の時点で除去できるが、油分除去器209を通すことで更に除去されることが確認できる。
【0062】
また通水時間と濁度、および通水時間と油分濃度との関係を調べた。
図8に、通水時間と濁度との関係を示す。更に図9に通水時間と油分濃度との関係を示す。
なお図8および図9とも濁度および油分濃度については、排水、沈殿槽207の出口、濾過器10の出口、油分除去器209の出口について測定を行なった。
図8および図9からわかるように濁度および油分濃度については、沈殿槽207、濾過器10、油分除去器209を通過する毎に減少していく。そして少なくとも6日は、懸濁物質および油分について十分に除去ができていることが確認できた。
【0063】
(比較例1)
本比較例では、排水の処理装置として図1に示した排水処理装置100の濾過器10の代わりに油除去を行なう膜モジュールを設置したものを使用して処理を行なった。この膜モジュールは、分画分子量として50000のポリスルホンを使用している。そして、膜面積を、2mとし、通水方法としてクロスフロー濾過により処理を行なった。なお、排水は、実施例1と同様のものを使用した。
この際、排水の通水は、流速30L/hで行った。そして、濾過を30min、濾過水を逆流させることによる洗浄を30s行なうことを繰り返した。その結果、懸濁物質や油分を除去した濾過水が27L/h、濾過された懸濁物質や油分が含まれる濃縮水が3L/hとなった。
この処理を10日間行なったところ、濾過水の懸濁物質濃度は、1mg/L以下であり、油分濃度は、n−ヘキサン抽出物質含有量で1mg/L以下であった。しかし4日目より徐々に膜の差圧が上昇した。そして10日目には、透過水流量が低下し、差圧が油除去フィルタの耐圧値である0.2MPaを超えたため通水を停止した。この場合、更に、排水の処理を行なうには、膜モジュールを交換するか、薬品による洗浄が必要である。
【符号の説明】
【0064】
10…濾過器、11…コイル部、12…濾過助剤、17…濾布材、100,200…排水処理装置、206…凝集反応槽、207…沈殿槽、209…油分除去器、210…逆浸透膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を螺旋状に巻回させることで形成されるコイル部と、
前記コイル部の外周に配される多孔質の濾過助剤と、
を備えた濾過器に、
懸濁物質および油分を含む排水を通水することにより当該懸濁物質および当該油分を除去することを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
前記濾過器の前記濾過助剤は、前記コイル部の前記線材に設けられた突起部により形成される間隙、または当該コイル部と当該濾過助剤の間に更に配される濾布材を被覆して形成されることを特徴とする請求項1に記載の排水の処理方法。
【請求項3】
前記濾過器の前記濾過助剤は、珪藻土または活性炭の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または2に記載の排水の処理方法。
【請求項4】
前記排水は、金属、プラスチック、セラミック、ガラスの少なくとも1つを含む材料を切削または研磨することにより生じるものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項5】
線材を螺旋状に巻回させることで形成されるコイル部を備えた濾過器と、
前記コイル部の外周に形成させるための多孔質の濾過助剤を貯留する濾過助剤槽と、を備え、
前記濾過助剤槽から前記コイル部に前記濾過助剤を流通させることで当該濾過助剤を当該コイル部の外周に配し、懸濁物質および油分を含む排水を通水することで当該濾過助剤により当該懸濁物質および当該油分を除去することを特徴とする排水の処理装置。
【請求項6】
前記濾過器の前記濾過助剤は、前記コイル部の前記線材に設けられた突起部により形成される間隙、または当該コイル部と当該濾過助剤の間に更に配される濾布材を被覆して形成させることを特徴とする請求項5に記載の排水の処理装置。
【請求項7】
前記濾過器の前段に配され前記排水を前処理する前処理手段および当該濾過器の後段に配され当該濾過器を通過した濾過水を更に処理する後処理手段の少なくとも一方を更に有し、
前記前処理手段および前記後処理手段は、下記(1)〜(4)の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項5または6に記載の排水の処理装置。
(1)前記前処理手段は、前記排水から前記懸濁物質を予め除去するための凝集沈殿手段であること
(2)前記後処理手段は、前記濾過水から前記油分を更に除去するための油分除去器であること
(3)前記後処理手段は、前記濾過水から更に懸濁物質を除去するための濾過装置であること
(4)前記後処理手段は、前記濾過水を脱塩するための脱塩装置であること
【請求項8】
前記脱塩装置は、逆浸透膜装置およびイオン交換装置の少なくとも一方であることを特徴とする請求項7に記載の排水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−110815(P2012−110815A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261068(P2010−261068)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】