説明

排水の処理方法及び排水の処理装置

【課題】本発明は、別々の反応槽で共通の生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理において、汚泥の沈降性を改善し、処理速度(負荷)を向上させることができる排水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、窒素含有排水を硝化反応槽内で好気的に生物処理する硝化工程と、前記排水を脱窒反応槽内で嫌気的に生物処理する脱窒工程と、前記硝化工程及び前記脱窒工程から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離工程と、分離された生物汚泥を前記硝化工程又は前記脱窒工程へ返送する汚泥返送工程と、を備え、前記硝化工程及び前記脱窒工程では、前記排水の生物処理を共通の生物汚泥によって行う排水の処理方法であって、前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有排水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中に含まれる処理対象物質を栄養源として増殖する微生物の集合体である浮遊汚泥を用いて、排水を処理し、その後、浮遊汚泥と処理水とを分離する処理方法は、従来からよく知られている。この処理方法では、汚泥濃度(微生物濃度)を高めることで、処理効率を上昇させることができる。しかし、汚泥濃度を高めるほど、浮遊汚泥と処理水との分離が困難になっていくため、処理系内に浮遊汚泥を高濃度で保持し続けることができず、処理が不安定になる。汚泥濃度を高めた状態で、浮遊汚泥と処理水との分離を行うには、浮遊汚泥の沈降性に見合った水面積負荷を持つ、大きな固液分離部の設置スペースを確保する必要がある。
【0003】
近年、浮遊汚泥の微生物が自己造粒したグラニュールと呼ばれる生物汚泥が注目されている。グラニュールは微生物が密集して密度が高く、沈降速度が高いため、浮遊汚泥がグラニュール化すると、その生物汚泥と処理水との分離が容易となる。そのため、微生物を反応槽内に高濃度で保持することができ、高速処理が可能となり、設備の設置スペースを大幅に削減することができる。
【0004】
従来、グラニュールを用いた処理においては、硝化処理、脱窒処理、BOD好気処理、嫌気処理、嫌気性アンモニア酸化処理等といったそれぞれの処理において1種類ずつのグラニュールが用いられてきた。特に硝化処理、脱窒処理においては、通常アンモニアを処理する場合、アンモニアの硝化から、硝酸の脱窒といった2ステップを経由する。その中で、硝化処理においてはグラニュール化が困難と考えられていたことから、浮遊汚泥や担体に菌を付着させたものを用い、脱窒処理ではグラニュールを用いるといったように、別々の汚泥による処理が行われている(例えば、特許文献1〜5を参照)。このグラニュールを用いる脱窒処理の反応槽は、グラニュール形成に必要とされる上向流汚泥床(USB)である。しかし、上記一連の処理においては、硝化処理にグラニュールを用いていないため、硝化工程において高い負荷(例えば、1kg/m/d以上)による処理は困難である。
【0005】
また、硝化処理にグラニュールを用いて高い負荷による処理を可能にしても(例えば、特許文献6を参照)、排水中にSS成分やCa,Fe等といった析出物があると、脱窒処理で用いられるUSBが閉塞する虞があり、その適用が困難である。特にCaイオンが流入する場合、脱窒反応によって無機炭素が発生するのに加えてpHも上昇するため、槽内のpHコントロールが難しいUSBでは、炭酸カルシウムが生成して閉塞が起こりやすくなる。このようなCaイオンを多く含む排水は、半導体工場の排水によく見られる。これは、排水中に含まれるフッ素イオンを窒素処理の前段で処理するために、Caを用いた凝集沈殿が行われるためである。
【0006】
また、同一のグラニュールで、好気処理である硝化及び嫌気処理である脱窒を行うには、例えば、シークエンスバッチ式反応装置(SBR)にて形成されたグラニュールを用いて、同一の反応槽内で、まず曝気をすることで硝化処理を行い、次に曝気を停止して嫌気状態にして脱窒処理を行う処理方法が知られている。このように形成された同一のグラニュールを用いて硝化及び脱窒を行う方法は、そもそもSBRだからこそ可能であると従来では考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−232391号公報
【特許文献2】特開2002−172399号公報
【特許文献3】特開2008−49283号公報
【特許文献4】特開平10−80696号公報
【特許文献5】特開平10−137787号公報
【特許文献6】特開2003−266095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、同一の反応槽内で共通の生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理とは異なり、別々の反応槽で共通の生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理において、汚泥の沈降性を改善し、処理速度(負荷)を向上させることができる排水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、窒素含有排水を硝化反応槽内で好気的に生物処理する硝化工程と、前記排水を脱窒反応槽内で嫌気的に生物処理する脱窒工程と、前記硝化工程及び前記脱窒工程から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離工程と、分離された生物汚泥を前記硝化工程又は前記脱窒工程へ返送する汚泥返送工程と、を備え、前記硝化工程及び前記脱窒工程では、前記排水の生物処理を共通の生物汚泥によって行う排水の処理方法であって、前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する。
【0010】
また、前記排水の処理方法において、前記排水には、カルシウムが200mgCa/L以上含まれている。
【0011】
また、本発明は、窒素含有排水を好気的に生物処理する硝化反応槽と、前記排水を嫌気的に生物処理する脱窒反応槽と、前記硝化反応槽及び前記脱窒反応槽から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離槽と、分離された生物汚泥を前記硝化反応槽又は前記脱窒反応槽へ返送する返送手段と、を備え、前記硝化反応槽及び前記脱窒反応槽内では、前記排水の生物処理を共通の生物汚泥によって行う排水の処理装置であって、前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する投入手段を備える。
【0012】
また、前記排水の処理装置において、前記排水には、カルシウムが200mgCa/L以上含まれている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、別々の反応槽で共通の生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理でも、汚泥の沈降性を改善し、処理速度(負荷)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る排水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】(A)に実施例で得られた硝化脱窒グラニュールの顕微鏡写真を示し、(B)に実施例で用いた硝化グラニュールの顕微鏡写真を示し、(C)一般的な浮遊汚泥の顕微鏡写真に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す排水処理装置1は、硝化反応槽10と、脱窒反応槽12と、酸化槽14と、固液分離槽16と、水素供与体添加手段としてのポンプ18と、タンク20と、水素供与体添加ライン22と、硝化グラニュール投入ライン24と、排水流入ライン26a,26b,26c,26dと、処理水排出ライン28と、汚泥返送ライン30と、を備えるものである。
【0017】
硝化反応槽10の排水入口(不図示)には、排水流入ライン26aが接続されており、硝化反応槽10のグラニュール投入口(不図示)には、硝化グラニュール投入ライン24が接続されている。硝化反応槽10の排水出口(不図示)と脱窒反応槽12の被処理水入口(不図示)との間は、排水流入ライン26bが接続されている。脱窒反応槽12の水素供与体入口(不図示)とタンク20の出口(不図示)との間は、ポンプ18を介して水素供与体添加ライン22が接続されている。脱窒反応槽12の排水出口(不図示)と酸化槽14の排水入口(不図示)との間は、排水流入ライン26cが接続され、酸化槽14の排水出口(不図示)と沈殿処理槽の排水入口(不図示)との間は、排水流入ライン26dが接続されている。沈殿処理槽の処理水出口(不図示)には処理水排出ライン28が接続されている。沈殿処理槽の汚泥出口(不図示)と排水流入ライン26aとの間には、汚泥返送ライン30が接続されている。
【0018】
硝化反応槽10、酸化槽14には、槽内に酸素を供給し且つ攪拌するためのエアレーション装置32が設置されている。脱窒反応槽12には、槽内を均一に攪拌するための攪拌機34が設置されている。なお、図1に示す排水処理装置1では、脱窒反応槽12を硝化反応槽10の後段に設置した構成を例として説明するが、必ずしもこれに制限されるものではなく、脱窒反応槽12を硝化反応槽10の前段に設置した構成であってもよい。
【0019】
以下に、本実施形態の排水処理装置1の動作について説明する。
【0020】
本実施形態の処理対象となる排水は、アンモニア、有機体窒素等を含有する窒素含有排水である。特に生活排水、食品工場排水、発電所排水、電子産業排水等の産業排水である。ここで、電子産業排水は、様々な薬品が含まれており、また製造する製品によっても排水中の成分は大きく異なるが、窒素含有排水としては、例えばウェハー洗浄排水等が挙げられる。この排水中には、アンモニアの他、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、過酸化水素、フッ素イオン、IPA(イソプロピルアルコール)等を含むことが多い。
【0021】
<硝化工程>
アンモニア、有機体窒素等を含有する窒素含有排水は、排水流入ライン26aから硝化反応槽10に供給される。また、グラニュール投入ラインから硝化能力を有するグラニュールが硝化反応槽10に投入される。本実施形態では、説明を容易とするため便宜上、グラニュール投入ラインを硝化反応槽10に設け、硝化反応槽10に硝化能力を有するグラニュールを投入しているが、必ずしもこれに制限されるものではない。本実施形態では、汚泥は循環されるため、各排水流入ライン26a,26b,26c,26d、脱窒反応槽12、酸化槽14、固液分離槽16、汚泥返送ライン30等から硝化能力を有するグラニュールを投入することができる。すなわち、排水に硝化グラニュールが投入されればよい。
【0022】
そして、硝化反応槽10内では、主に、硝化能力を有するグラニュールにより、排水中のアンモニウム、有機体窒素が硝酸、亜硝酸に硝化される。
【0023】
ここで、硝化能力を有するグラニュールは、被処理水中に含まれるアンモニウムイオンを亜硝酸に硝化する独立栄養性細菌のアンモニア酸化細菌、アンモニウムイオンを硝酸に硝化する独立栄養性細菌の亜硝酸酸化細菌等を含むものから構成されるものである。そして、上記細菌を含むものから構成されていれば、硝化能力を有するグラニュールの作成方法は特に制限されるものではないが、例えば、特開2006−289311号公報、特開2009−66505号公報記載の作成方法等が挙げられる。
【0024】
本明細書でグラニュールとは、浮遊汚泥の微生物が自己造粒した生物汚泥であり(本明細書で称する「生物汚泥」は、グラニュールを含む概念である)、一般的な生物処理に使用される浮遊汚泥とは区別される。
【0025】
硝化能力を有するグラニュールの投入量は、特に制限されるものではないが、処理立ち上げ時の際、汚泥濃度であるMLSS濃度で500mg/L〜3000mg/L程度でよい。また、後段の脱窒処理を早く立ち上げることができる点で、投入した硝化能力を有するグラニュールの1〜20%程度の濃度で脱窒菌を含む浮遊汚泥(グラニュールであってもよい)を同時に投入することが好ましい。
【0026】
硝化反応槽10内で、上記のようにアンモニア、有機体窒素が硝酸にまで硝化されるとpHが低下する。そこで、細菌の活性が高いpH6〜8となるよう、アルカリ剤を硝化反応槽10に添加する必要がある。使用するアルカリ剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが特に限定はない。
【0027】
また、硝化工程には無機炭素が必要であるが、通常ではエアレーションから溶解する分と、後述する脱窒工程により生成された無機炭素が返送汚泥と共に供給される分とで十分であるが、硝化反応工程での処理速度が1.0kgN/m/d以上で運転される場合には、硝化反応槽10へ無機炭素を供給する必要がある。供給する無機炭素としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、二酸化炭素などが挙げられるが特に限定はない。
【0028】
<脱窒工程>
硝酸、亜硝酸を含む被処理水が硝化反応槽10内の生物汚泥と共に、排水流入ライン26bを通り、脱窒反応槽12へ供給される。また、ポンプ18により水素供与体添加ライン22から脱窒反応槽12内へ水素供与体が添加され、脱窒反応槽12内で、主に排水中の硝酸、亜硝酸が、窒素ガスに還元され、また、無機炭素が生成される。
【0029】
処理の立ち上げ時には、硝化能力を有するグラニュールが種汚泥として用いられているため、上記硝化工程はスムーズに立ち上がるが、脱窒工程は十分に立ち上がっていない。そのため、処理の立ち上げ時には、脱窒工程の負荷(処理速度)が過剰にならないように、脱窒反応が確認できる程度の負荷に調整する必要がある。そして、後述する汚泥返送工程によって生物汚泥を返送しながら、脱窒処理を継続していくと、投入した硝化能力を有するグラニュールに脱窒菌が付着していき、グラニュール化がさらに進行して硝化脱窒グラニュールが形成されていくこととなる。
【0030】
本実施形態では、投入するグラニュールを硝化能力を有するグラニュールとしているが、投入するグラニュールを脱窒能力を有するグラニュールとすると、処理の立ち上げ時にアンモニアを消化することが難しいために硝酸が脱窒工程に供給されずに、低負荷運転により脱窒グラニュールの崩壊を招くこととなる。また、脱窒能力を有するグラニュールを用いて、処理の立ち上げ時に硝酸を添加して立ち上げようとしても、脱窒菌は硝化菌と比較して増殖速度が速いため、硝化菌が馴養し難くなるため好ましくない。
【0031】
本実施形態で用いられる水素供与体としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、水素ガス、アセトン、グルコース、エチルメチルケトン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等が挙げられるが、これに制限されるものではなく、水素供与体として従来公知のもの全てを使用することができる。また、水素供与体の添加量は特に制限されるものではないが、メタノールの場合には、例えば流入する硝酸、亜硝酸に含まれる窒素量の3.0倍(重量比)程度で、イソプロピルアルコールの場合には、例えば、流入する硝酸、亜硝酸に含まれる窒素量の2.0倍(重量比)程度が一般的である。
【0032】
脱窒反応槽12を硝化反応槽10の前段に設ける場合には、排水中の有機物を水素供与体として脱窒反応を起こすことができるため、必ずしも上記列挙した水素供与体の添加を必要としない場合がある。
【0033】
攪拌機34による脱窒反応槽12内の攪拌は、槽内のグラニュールを崩壊させない強度で行えばよい。
【0034】
脱窒反応槽12内で、硝酸、亜硝酸が脱窒反応により減少するとpHが上昇する。そこで、細菌の活性が高いpH6〜8となるよう、脱窒反応槽12内に酸を添加する必要がある。使用する酸は塩酸、硫酸などが挙げられるが特に限定はない。
【0035】
<酸化工程>
脱窒反応槽12から排出される排水は硝化槽内の生物汚泥と共に、排水流入ライン26cを通り、酸化槽14に供給される。多くの場合、水素供与体は脱窒反応槽12にやや過剰に添加されるため、排水中には水素供与体が残存している場合がある。酸化槽14では、エアレーション装置32により空気が供給され(曝気され)、主に被処理水中の水素供与体が酸化処理される。なお、水素供与体が過剰に添加されていない場合等には、必ずしも酸化槽14を設置する必要はない。
【0036】
酸化槽14ではpHのコントロールは必要ないが、排水濃度が高濃度の場合には、脱窒工程で生成した無機炭素も高濃度になるため、酸化工程による曝気により無機炭素が二酸化炭素として放出されることで、pHが上昇する場合がある。そして、処理水のpHが排水基準や環境基準が満たされない場合等は、塩酸等の酸を酸化槽14に添加して、処理水の基準値となるように調整することが好ましい。
【0037】
<固液分離工程及び汚泥返送工程>
酸化槽14で処理された排水は酸化槽14内の生物汚泥と共に、排水流入ライン26dを通り、固液分離槽16に供給される。固液分離槽16では、処理水と生物汚泥とに分離され、処理水排出ライン28から(最終)処理水が得られ、分離された生物汚泥は、汚泥返送ライン30を通り、硝化反応槽10へ返送される。脱窒反応槽12が硝化反応槽10の前段に設置されている場合には、分離された汚泥は、脱窒反応槽12に返送される。本実施形態では、生物汚泥は、汚泥返送ライン30、排水流入ライン26aを介して最前段の反応槽に返送されているが、汚泥返送ライン30を最前段の反応槽に直接接続して、生物汚泥を汚泥返送ライン30から直接反応槽に返送してもよい。
【0038】
生物汚泥の返送量は一般的な値を採用することができるが、例えば、排水流量の0.3〜2倍の流量とすることが望ましい。
【0039】
以上のように、硝化能力を有するグラニュールを投入し、硝化工程及び脱窒工程を繰り返し行い、排水処理を継続して行うことにより、硝化能力を有するグラニュールに脱窒菌が付着し、硝化能力と脱窒能力を兼ね備えた硝化脱窒グラニュールを作成することができ、硝化処理の処理速度が1.0kgN/m/d以上、脱窒処理の処理速度が1.4kgN/m/d以上といった高い負荷でも安定に処理することが可能となる。
【0040】
本実施形態の排水処理において、排水の温度が低いと、硝化・脱窒工程での処理速度が低下するため、必要に応じて、硝化反応槽、脱窒反応層に加温設備を設置し、槽内の排水を加温して各処理を行ってもよい。硝化反応、脱窒反応の温度は10〜40℃の範囲であることが好ましい。
【0041】
排水中にSS成分、過酸化水素、フッ素イオンが混入している場合、過酸化水素やフッ素イオン等は生物に対し阻害性を有するため、硝化反応や脱窒反応を行う前に、予め除去しておくことが好ましい。これらの阻害性物質の処理方法としては、既存の技術を使用することができ、過酸化水素の処理においては、酵素を添加する方法、還元剤を注入する方法、活性炭に接触させる方法等が挙げられる。また、SS成分等は凝集沈殿により処理することができ、フッ素イオンの処理においては、カルシウムを添加してフッ化カルシウムとして除去する方法、イオン交換樹脂にて処理する方法等が挙げられる。
【0042】
硝化工程及び脱窒工程を行う前に、Ca等を用いてフッ素イオンを予め除去すると、本実施形態で処理する排水中にCaが含まれる場合があり、pHによっては、脱窒工程で無機炭素とカルシウムが反応して炭酸カルシウムが析出する可能性がある。その場合には、脱窒工程のpHをランゲリア指数を参考に決定することで、炭酸カルシウムの析出を防ぐことができる。これらは、槽内を攪拌することができないUSBでは適用できない対処方法である。本実施形態では、排水中のCaイオン濃度が200mg/L以上であっても、pH調整により、炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
図1に示した処理装置を用いて、硝化脱窒グラニュールの作成と最大処理速度の測定を行った。硝化反応槽の容積を100L、脱窒反応槽の容積を80L、酸化槽の容積を90L、固液分離槽の容積を10Lとした。硝化反応槽と酸化槽は空気による曝気で攪拌し、曝気量は酸素溶解率8%として、理論上十分な量の空気を各槽に供給した。実験期間中、硝化反応槽へは炭酸ナトリウムを無機炭素濃度が10mgC/L、リン酸をリン濃度が1mgP/Lとなるように添加した。脱窒反応槽には径20cmの攪拌翼をつけた攪拌機を設置し、50rmpで槽内を攪拌した。試験中、硝化反応槽内のpHを水酸化ナトリウムによりpH7に、脱窒反応槽内のpHを塩酸によりpH7に調整した。脱窒反応槽に供給する水素供与体にはメタノールを使用し、流入する窒素濃度(mgN/L)に対して重量比で3倍となる量を脱窒反応槽に添加した。試験期間中の水温は約20℃と一定であった。硝化反応槽への汚泥の返送にはエアリフトを用いて行い、返送量は負荷を上昇させても排水流量の1/2となるように調整した。
【0045】
試験に使用した排水の組成を下記表1に示す。Caを200mgCa/L含む排水を使用したが、試験期間中、脱窒反応槽のpHを7に調整しているため、脱窒反応槽で発生した無機炭素とカルシウムが反応して炭酸カルシウム等が析出することはなく、ほとんどのCaが処理水中に残存していることを確認した。なお、pHの調整を停止すると脱窒反応槽内のpHは8.5付近まで上昇し、炭酸カルシウムと思われる物質がグラニュールに付着していたが、pHを7に戻すとグラニュールから上記物質が脱着していることを確認した。これにより、本実施の装置であれば、pH調整によりCaの影響を制御することができることを確認した。そして、これはUSBでは不可能な操作である。
【0046】
【表1】

【0047】
処理立ち上げ時では、硝化能力を有するグラニュールを2500mg/Lとなるように、硝化反応槽に添加した。また上記グラニュール添加に合わせて脱窒菌を含む汚泥も500mg/Lとなるように、脱窒反応槽に添加した。
【0048】
表2に、実施例の試験結果をまとめた。まず、硝化反応槽への負荷を0.05kgN/m/dに調整し、脱窒反応槽での脱窒処理が確認できるように排水処理を立ち上げたところ、除々に脱窒反応が立ち上がり、試験開始200日目には硝化負荷(硝化処理速度)が1.0kgN/m/d、脱窒負荷(脱窒処理速度)が1.4kgN/m/dに達し、その後50日間安定して運転を行えることができた。また、表2から分かるように、試験期間中のMLSS濃度は最終的に10000mg/Lまで増加した。また、本実施例の試験後の生物汚泥を顕微鏡で観察すると、図2(A)の試験後の生物汚泥は、図2(B)の実施例で用いた硝化グラニュールや、図2(C)の一般的な浮遊汚泥より粒径が大きく、グラニュールが成長していることを確認した。硝化・脱窒負荷、MLSS濃度、粒径等の添加から、本実施例によって、硝化グラニュールから硝化脱窒グラニュールが作成されたことを確認した。
【0049】
また、汚泥の沈降性を示すSVIの値は、表2から分かるように処理の立ち上げ初期に投入した汚泥がグラニュールであったため、初期段階から小さい値となっているが、グラニュールが成長するにつれて(図2を参照)、SVIの値がさらに低下し、より沈降性が改善した。
【0050】
【表2】

【符号の説明】
【0051】
1 排水処理装置、10 硝化反応槽、12 脱窒反応槽、14 酸化槽、16 固液分離槽、18 ポンプ、20 タンク、22 水素供与体添加ライン、24 硝化グラニュール投入ライン、26a,26b,26c,26d 排水流入ライン、28 処理水排出ライン、30 汚泥返送ライン、32 エアレーション装置、34 攪拌機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有排水を硝化反応槽内で好気的に生物処理する硝化工程と、前記排水を脱窒反応槽内で嫌気的に生物処理する脱窒工程と、前記硝化工程及び前記脱窒工程から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離工程と、分離された汚泥を前記硝化工程又は前記脱窒工程へ返送する汚泥返送工程と、を備え、前記硝化工程及び前記脱窒工程では、前記排水の生物処理を共通の生物汚泥によって行う排水の処理方法であって、
前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入することを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
前記排水には、カルシウムが200mgCa/L以上含まれていることを特徴とする請求項1記載の排水の処理方法。
【請求項3】
窒素含有排水を好気的に生物処理する硝化反応槽と、前記排水を嫌気的に生物処理する脱窒反応槽と、前記硝化反応槽及び前記脱窒反応槽から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離槽と、分離された汚泥を前記硝化反応槽又は前記脱窒反応槽へ返送する汚泥返送手段と、を備え、前記硝化反応槽及び前記脱窒反応槽内では、前記排水の生物処理を共通の生物汚泥によって行う排水の処理装置であって、
前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する投入手段を備えることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項4】
前記排水には、カルシウムが200mgCa/L以上含まれていることを特徴とする請求項3記載の排水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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