説明

排水の処理方法

【課題】脱色効果及びCOD低減効果に優れ、併せて処理過程において多量に発生する汚泥をそのまま利用することによって作業性と経済性を改善できる排水処理方法を提供する。
【解決手段】有機物を含有する排水に、鉄と還元剤とを添加して作用させ、さらに過酸化水素を添加して処理することによって、最終処理水の水質を向上する。さらに、この処理の後に発生する汚泥の一部を再利用するで、排水処理にかかる手間やコストを削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の有機物を含有する排水を、河川等の環境へ放出可能なものとするために、生物処理法、活性炭吸着法、凝集沈殿法等の排水処理方法が広く利用されている。しかしながら、いずれの方法においても多量の汚泥が発生するために汚泥の二次処理が必要であり、この二次処理の方法が大きな社会問題となっている。また、これら従来の方法では処理される有機物が限られており、処理後も有害な有機物が依然として排水中に残ることから、排水処理が十分であるとはいえない。
【0003】
例えば、活性汚泥法に代表される生物処理法では、排水に含まれる一部の有機物を分解することができるが、分解に微生物の繁殖活動を利用するため、繁殖しすぎた微生物を汚泥として放出する必要があった。そして、環境ホルモン、トリハロンメタン類、ダイオキシン類や染料等の有機物は、生物難分解性であって生物処理法では分解することができず、フェノール類の有機物は微生物の活動を阻害するため、生物処理法そのものを阻害するという問題があった。さらに、排水に含まれる有機物の濃度が高いと微生物の活動が阻害されるため、排水処理が不十分となる問題もあった。
【0004】
近年、これらの従来方法の問題を解決するために、排水中に含まれる有機物を分解除去する方法として、化学的酸化処理法や、電気化学的処理方法等が提案されており、いずれの方法でも、排水に含有する有機物を酸化分解することによって低分子化したり、二酸化炭素として系外に排出したりすることが可能となっている。
【0005】
電気化学的処理方法としては、電気化学的に酸化剤を合成し、合成された酸化剤によって排水に含まれる有機物を酸化分解する方法と、有機物を電気化学反応によって酸化分解する方法の2種類が提案されている。
【0006】
前者の方法としては、例えば、特許文献1に、塩化物イオンを含有する水質条件においてエタノールアミン含有水を電解処理する方法、具体的には、塩化物イオンが陽極酸化されて生成する次亜塩素酸によってエタノールアミンを分解する方法が示されている。しかしながら、この方法では、次亜塩素酸とエタノールアミンとの反応過程でトリハロメタン類に代表される有害な有機塩素化合物が発生する可能性があり、二次汚染の可能性が指摘されている。
【0007】
後者としては、例えば特許文献2に、塩化物よりなる電解質を含む原水を第1の電解槽と第2の電解槽を用いて電解してヒドロキシラジカルを生成させ、このヒドロキシラジカルの酸化力により有機物を分解する方法が示されている。この方法では、酸化剤として次亜塩素酸は利用していないものの、ヒドロキシラジカルを合成する過程で次亜塩素酸が関与するため、前述と同様にトリハロメタン等の有害な有機塩素化合物を生成する可能性があった。また、ヒドロキシラジカルを生成する効率が低いため、経済性に問題があった。
【0008】
一方、化学的酸化処理方法としては、特許文献3に示されるように、排水に次亜塩素酸を添加して有機物を酸化処理する方法が広く利用されているが、有害で危険な次亜塩素酸を処理現場に運送や貯蔵しなければならないという安全性の問題があった。また、次亜塩素酸と有機物との反応によりトリハロメタン等の有害な有機塩素化合物を発生するという前述の問題は解決できない。
【特許文献1】特開平11−216473号公報
【特許文献2】特開2000−79394号公報
【特許文献3】特開平9−192679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機物を含有する排水の処理法として、従来の電気化学的処理方法や化学的酸化処理方法と比較して、脱色効果及びCOD低減効果に優れ、併せて処理過程において多量に発生する汚泥をそのまま利用することによって、作業性と経済性を改善できる排水の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機物を含有する排水に鉄と還元剤とを添加して作用させ、さらに過酸化水素を添加して処理することによって、最終処理水の水質を顕著に向上し得ることを見出した。さらに、この処理の後に発生する汚泥の少なくとも一部を再利用することにより、排水処理に添加する新たな鉄の量を減らし、かつ汚泥の廃棄量も削減することで、排水処理にかかる手間やコストを削減し得ることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)有機物を含有する排水に金属鉄と還元剤とを添加する第1の工程と、次いで、さらに過酸化物を添加する第2の工程とを含むことを特徴とする排水の処理方法、
(2)有機物を含有する排水のpHを1〜4に調整した後に金属鉄と還元剤を添加する第1の工程と、次いで、さらに過酸化物を添加する第2工程を含む上記の排水の処理方法、(3)金属鉄が粉末状である上記の排水の処理方法、
(4)過酸化物が過酸化水素である上記の排水の処理方法、
(5)還元剤が、亜硫酸塩、重亜硫酸塩又は亜ニチオン酸塩である上記の排水の処理方法、
(6)金属鉄と還元剤の割合を質量比で10:90〜99:1とすることを特徴とする上記の排水の処理方法、
(7)過酸化物の添加量を、金属鉄に対して質量比で0.5倍〜20倍とし、かつ、還元剤に対して当量以上とすることを特徴とする上記の排水の処理方法、を提供するものである。
【0012】
また、本発明の第二態様として、
(8)有機物を含有する排水に金属鉄と還元剤とを添加する第1の工程と、次いで、さらに過酸化物を添加する第2の工程とを含む前記のそれぞれの排水の処理方法において、過酸化物を添加する第2の工程の後に分離される汚泥の少なくとも一部を、第1の工程に戻し金属鉄と還元剤の代わりに使用することを特徴とする排水の処理方法、及び
(9)過酸化物を添加する第2の工程の後に分離される汚泥の少なくとも一部を、第1の工程に戻して利用する際において、金属鉄と還元剤とを質量比で0:100〜90:10となるように、新たに添加することを特徴とする上記の排水の処理方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排水の処理方法によれば、有機物を含有する排水の脱色効果及びCOD低減効果に優れ、処理後の処理水の水質を顕著に向上させることができる。さらに、過酸化水素を添加して処理する第2の工程の後に発生する汚泥の少なくとも一部を、次回以降の排水処理に再利用することができ、その結果、排水処理に添加する新たな鉄の量を減らし、汚泥の廃棄量も低減させることができ、排水処理にかかる手間やコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の排水処理の方法は、有機物を含有する排水に金属鉄と還元剤とを添加する第1の工程と、次いで、さらに過酸化物を添加する第2の工程とを含むことを特徴とする。
本発明において排水に添加する金属鉄としては、0価の鉄(Fe0)であれば特に制限なく用いることができ、例えば、純度の高い還元鉄やアトマイズ鉄等が挙げられ、または、メッキ等の表面処理がなされていない廃鉄材であってもよい。
【0015】
本発明において排水に添加する金属鉄の形状は、特に制限はないが、粉末状、粒状、ウール状、箔状、板状、切削屑のような鉄屑等のいずれでもよく、これらの表面が酸化され、酸化鉄の皮膜が形成されている場合は、皮膜を予め除去して用いてもよい。また、通常金属鉄(鉄粉)の表面は酸化されて酸化皮膜が形成されているが、本発明の方法においては、第1の工程中に、還元剤が排水に含まれる有機物と反応すると共に、金属鉄の表面の酸化皮膜にも作用し、金属鉄として反応に関与しやすい状態になっているため、有効に反応が進むと考えられる。
【0016】
本発明においては、金属鉄の表面積を大きくし排水処理の効率を高めるために粉末であることが好ましく、特に粉末の粒径が5〜500μmであることが好ましい。粒径が前記範囲より大きいと金属鉄の表面積が小さくなるため排水処理の効率、すなわち排水の脱色効果が低下したり有機物の分解が遅くなる傾向にあり、一方で粒径が前記範囲より小さいと、使用時に粉塵として舞いやすくなる等の作業上の不具合が生じる。
【0017】
還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜二チオン酸塩、チオグリコール酸塩等が挙げられるが、排水処理の効率を高めるためには亜硫酸塩、重亜硫酸塩又は亜二チオン酸塩が好ましい。なお、これらの塩としてはナトリウム塩等が挙げられる。
【0018】
本発明の第1の工程において排水に添加する前記金属鉄と還元剤の割合は、質量比で10:90〜99:1とすることが好ましく、50:50〜90:10であることがより好ましい。第1の工程において、還元剤が多く金属鉄の割合が前記範囲未満である場合は、触媒となる金属鉄の量が少ないため第2工程の処理効率が低下する。また、過剰な還元剤が、処理で消費されるべき過酸化物と酸化還元反応してしまうため、第2の工程での排水処理効率が悪くなる。
【0019】
一方、還元剤を添加せず金属鉄のみを添加した場合や、還元剤と金属鉄を併用しても金属鉄の割合が前記範囲より少ない場合は、過酸化物を添加する第2工程の処理効率が低くなり、排水の脱色効果及び有機物の分解効果が低下する。なお、金属鉄及び還元剤の添加量は、排水中に含まれる有機物の種類や濃度によって、適宜調整することができる。
【0020】
さらに、この第1の工程においては、有機物を含む排水のpHを1〜4に調整した後に金属鉄と還元剤を添加することが好ましい。排水のpHが1より低い場合は、pH調整に多くの酸が必要であるだけでなく、酸の添加量に見合うだけの排水の脱色効果及び有機物の分解効果の向上がみられない。
一方、排水のpHが4より大きい場合は、排水の脱色効果及び有機物の分解効果が低下し、排水処理に時間がかかるうえに、最終処理水の水質も不十分なものとなる。
【0021】
本発明の排水の処理方法においては、排水の脱色効果及び有機物の分解効果を最良のものとするために、第1の工程において、有機物を含有する排水に、金属鉄と還元剤とを添加したのち1分間以上、好ましくは10分間以上、攪拌しながら作用させた後に、第2の工程を行うことが好ましい。なお、有機物を含有する排水に金属鉄と還元剤とを作用させる時間には特に上限はなく、排水の攪拌の状態により適宜調整することができるが、一般
的には1時間程度まで、あるいは30分程度まででよい。
【0022】
本発明の第2の工程において用いられる過酸化物としては、金属鉄ひいてはFe2+の存在下でヒドロキシラジカルを発生するものであれば特に制限はなく、過酸化水素、過硫酸塩及び過炭酸塩等を挙げることができるが、処理の効率の面から過酸化水素を用いることが好ましい。
【0023】
過酸化物の添加量は、第1工程において加える金属鉄に対して質量比で0.5倍〜20倍であり、かつ、還元剤に対して当量以上とすることが好ましい。過酸化物の添加量が前記範囲より少ない場合は、排水の脱色効果及び有機物の分解あるいは除去が不良となる。一方、過酸化物の添加量が前記範囲より多い場合は、処理で消費されなかった過剰の過酸化物が排水中に残留し、排水処理にかかるコストの面でも望ましくない。
【0024】
本発明の排水処理方法には、前記第1の工程後に第2の工程を行うことを1回(1ステップ) の排水処理として、これを1回行うことはもちろん、複数回のステップを繰り返して行うことも含まれる。複数回のステップを繰り返し行うことによって最終処理水の水質をより向上させることができる。また、1回の排水処理をした後、あるいは複数回の廃水処理を繰り返した後に、再度第2の工程のみを追加して行うこともできる。
【0025】
さらに、本発明の第二態様として、前記の過酸化物を添加する第2の工程後に分離される汚泥の少なくとも一部を第1の工程に戻し、第1の工程における金属鉄と還元剤の代わりに使用する。第2の工程の後に分離された汚泥を用いる量は、分取された汚泥の100〜65%、好ましくは95〜80%の範囲で第1の工程に戻し、適宜使用する。
【0026】
汚泥の分離方法としては、従来公知の排水処理で行われる汚泥の分離方法を利用することができ、例えば、処理水をそのまま静置して汚泥を沈降させたり、遠心分離、フィルターや膜による分離等の操作により汚泥を分離する方法;水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の任意のアルカリにより処理水のpHを6以上、好ましくは7〜10に調整した後、硫酸アルミニウム(いわゆる硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄等の無機系凝集剤やアクリル酸系、メタクリル酸エステル系、ポリアクリルアミド系等の有機系高分子凝集剤等の公知の凝集剤を添加して凝集分離させる方法が挙げられる。また、分離させた汚泥を第1の工程で使用するには、遠心分離、フィルターや膜による分離、重量沈降等の操作により上澄みを取り除き、得られた汚泥に新たな排水を注入する方法や、得られた汚泥を別の処理漕へと循環させる方法等が挙げられる。
【0027】
このように第2の工程の後に分離される汚泥の少なくとも一部を第1の工程に戻して使用することによって、溶解せずに汚泥中に残存する金属鉄を第1の工程における金属鉄として用いることができるため、別途に添加する金属鉄の量を減らすこともでき、排水処理にかかる薬剤コストが節減できる。また、汚泥の廃棄量が少なくなるため、その処理が軽便となり、総体的に低コストでの排水処理が達成される。
【0028】
汚泥の少なくとも一部を第1の工程に戻して使用する場合、排水処理の効率を向上させるために、新たな金属鉄と還元剤とを、質量比で0:100〜90:10となる範囲で添加することが好ましい。
【0029】
なお、本発明において処理対象となる有機物を含む排水としては、例えば、染色工場等から排出される染料を含む排水、有機物を含む工場排水、下水、し尿、廃棄物埋立処理場から浸出する汚水、焼却工場排水等が挙げられる。なお、排水中に沈殿や懸濁物が含まれている場合は、本発明の処理の前に、凝集沈殿、加圧浮上、各種フィルターによるろ過等の沈殿分離操作を行い固液分離し、CODを低下させておくことが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例においては、下記組成の模擬染色水を調整し、排水として用いた。
(模擬染色水の組成)
Sumifix Supra Brill. Red 3BF 150% gran.(住友化学(株)製)0.5g/L
Sumifix Supra Blue BRF 150% gran.(住友化学(株)製) 0.5g/L
Sumifix Supra Yellow 3RF 150% gran.(住友化学(株)製) 0.5g/L
硫酸ナトリウム 2.5g/L
炭酸ナトリウム 1.0g/L
精練剤 [ピッチランL−135(日華化学(株)製)] 0.8g/L
キレート剤[ネオクリスタル170(日華化学(株)製)] 0.8g/L
【0031】
この組成を有する模擬染色水は、pH9における540nmの透過率が10%であり、CODは513mgO/Lであった。
なお、実施例においては、模擬染色水及び処理水の色を目視にて判定し、透過率を分光光度計U−3410((株)日立製作所製)を用いて測定し、CODはJIS K 0102(1998)の「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量」法に従って測定した。
【0032】
〔実施例1〕
模擬染色水100mLをpH2.5に調整した後、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃にて10分間攪拌した。
鉄粉 4.5g/L
亜二チオン酸ナトリウム 0.5g/L
【0033】
次いで、35質量%の過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
【0034】
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。その後、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜硫酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
鉄粉 4.9g/L
亜硫酸ナトリウム 2.1g/L
【0036】
〔実施例3〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜硫酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の
540nmにおける透過率、CODを測定した。
鉄粉 1.5g/L
亜硫酸ナトリウム 3.5g/L
【0037】
〔実施例4〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と重亜硫酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
鉄粉 2.5g/L
重亜硫酸ナトリウム 2.5g/L
【0038】
〔実施例5〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜硫酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
鉄粉 3.5g/L
亜硫酸ナトリウム 1.5g/L
【0039】
〔比較例1〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)を下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
鉄粉 5.0g/L
【0040】
〔比較例2〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、塩化鉄(II)4水和物を下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
塩化鉄(II)4水和物 5.0g/L
【0041】
〔比較例3〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、硫酸鉄(II)7水和物を下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
硫酸鉄(II)7水和物 5.0g/L
【0042】
〔比較例4〕
実施例1において用いた鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムの代わりに、塩化鉄(II)4水和物と亜硫酸ナトリウムとを下記濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様にして処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
塩化鉄(II)4水和物 3.5g/L
亜硫酸ナトリウム 1.5g/L
【0043】
〔比較例5〕
模擬染色水100mLをpH2.5に調整した後、鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)、亜硫酸ナトリウム及び過酸化水素を下記濃度になるように添加した後、15〜20℃にて10分間攪拌した。
鉄粉 3.5g/L
亜硫酸ナトリウム 1.5g/L
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水を実施例1と同様に操作して汚泥とろ液とに分離し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0044】
実施例1〜5及び比較例1〜5のろ液の色、透過率、CODの値を表1にまとめた。
【0045】
【表1】

【0046】
模擬染色水に鉄粉と還元剤とを添加し、次いで過酸化水素により処理を行った実施例1
〜5の排水処理においては、得られたろ液の透過度も高く、CODも顕著に低下していることが明らかである。
【0047】
一方、模擬染色水に鉄粉のみを加えた後に過酸化水素により処理を行った比較例1においては、ろ液の透過度とCODの低減効果が共に不十分であった。
また、模擬染色水に第一鉄塩のみを加えた後に過酸化水素により処理を行った比較例2及び比較例3、鉄粉の代わりに第一鉄塩と還元剤とを添加した後に過酸化水素により処理を行った比較例4においては、ろ液の透過度はやや良好であるもののCODの低減が不十分であった。
さらに、模擬染色水に鉄粉、還元剤及び過酸化水素を同時に添加した比較例5においては、ろ液の透過度とCODの低減効果が共に不十分であった。
【0048】
〔実施例6〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例1においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加えて、15〜20℃にて10分間攪拌した。
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0049】
〔実施例7〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例2においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜硫酸ナトリウムとを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
実施例2で得られた汚泥 全量の85質量%
鉄粉 0.7g/L
亜硫酸ナトリウム 0.3g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0050】
〔実施例8〕
実施例7において、実施例2で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、実施例7で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例7と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0051】
〔実施例9〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例2においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し亜硫酸ナトリウムを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
実施例2で得られた汚泥 全量の85質量%
亜硫酸ナトリウム 1.0g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0052】
〔実施例10〕
実施例9において、実施例2で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、実施例9で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例9と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0053】
〔実施例11〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例1においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と亜二チオン酸ナトリウムとを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
実施例1で得られた汚泥 全量の85質量%
鉄粉 0.5g/L
亜二チオン酸ナトリウム 0.5g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0054】
〔実施例12〕
実施例11において、実施例1で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、実施例11で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例11と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0055】
〔実施例13〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例4においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し鉄粉(重量積算累計50%の粒径75μm)と重亜硫酸ナトリウムとを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
実施例4で得られた汚泥 全量の85質量%
鉄粉 0.2g/L
重亜硫酸ナトリウム 0.8g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0056】
〔実施例14〕
実施例13において、実施例4で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、実施例13で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例13と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0057】
〔実施例15〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、実施例5においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し亜硫酸ナトリウムを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
実施例5で得られた汚泥 全量の85質量%
亜硫酸ナトリウム 1.5g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0058】
〔比較例6〕
実施例6において、実施例1で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、比較例2で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例6と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0059】
〔比較例7〕
実施例6において、実施例1で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、比較例3で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例6と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0060】
〔比較例8〕
実施例6において、実施例1で得られた汚泥の85質量%を用いる代わりに、比較例4で得られた汚泥の85質量%を用いた以外は実施例5と同様に処理し、得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0061】
〔比較例9〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、比較例4においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、さらに模擬染色水に対し塩化鉄(II)4水和物と亜硫酸ナトリウムとを下記組成となる量で添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
比較例4で得られた汚泥 全量の85質量%
塩化鉄(II)4水和物 0.5g/L
亜硫酸ナトリウム 0.5g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0062】
〔比較例10〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、比較例4においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、さらに模擬染色水に対し亜二チオン酸ナトリウムを下記組成となる量で添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
比較例4で得られた汚泥 全量の85質量%
亜二チオン酸ナトリウム 1.0g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0063】
〔比較例11〕
模擬染色水100mLをpH2.5になるよう調整し、比較例5においてNo.2ろ紙により分取された汚泥の85質量%を加え、模擬染色水に対し亜硫酸ナトリウムを下記組成となるように添加して、15〜20℃にて10分間攪拌した。
比較例5で得られた汚泥 全量の85質量%
亜硫酸ナトリウム 1.5g/L
次いで、35質量%過酸化水素水を下記濃度となるように添加したのち、15〜20℃でさらに10分間攪拌した。
過酸化水素水(35質量%) 7.5g/L
処理後の排水に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、高分子凝集剤(アニオン性ポリマー「アロンフロックA−101」、MTアクアポリマー(株)製)を1mg/Lとなるように添加して凝集沈殿させた後、No.2ろ紙でろ過し、汚泥とろ液とに分離した。得られたろ液の540nmにおける透過率、CODを測定した。
【0064】
実施例6〜15及び比較例6〜11で得られるろ液の色、透過率及びCOD値を表2にまとめた。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例6〜15の結果から明らかな通り、模擬染色水に鉄粉と還元剤とを添加して処理し、次いで過酸化水素により処理を行った後に発生する汚泥は、必要に応じて新たな金属鉄や還元剤を添加して、繰り返し排水処理に用いることが可能であり、その結果得られるろ液の水質も良好である。
【0067】
一方、比較例9及び10の結果から明らかな通り、鉄粉の代わりに第一鉄塩と還元剤とを添加した後に過酸化水素により処理を行った(比較例4)後に発生する汚泥は、新たに第一鉄塩や還元剤を添加した場合であっても排水処理がほとんど行われず、ろ液の透過率もCOD低減効果も著しく劣っている。
【0068】
また、鉄粉、還元剤及び過酸化水素を同時に添加して処理を行った(比較例5)後に発生する汚泥は、新たに還元剤を添加した場合であっても、ろ液の透過度及びCODの低減効果が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の排水処理方法によれば、従来の排水処理法に比べて、有機物を含む排水の脱色及びCOD低減について優れた効果を発揮する。また、本発明の排水処理によれば、発生する汚泥を再度排水処理に利用することができ、排水処理に使用する薬剤使用量の低減、汚泥廃棄量の低減、及び、排水処理作業の簡略化が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する排水に、金属鉄と還元剤とを添加する第1の工程と、さらに過酸化物を添加する第2の工程とを含むことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
有機物を含有する排水のpHを1〜4に調整した後に金属鉄と還元剤とを添加する第1の工程と、さらに過酸化物とを添加する第2の工程を含む請求項1に記載の排水の処理方法。
【請求項3】
金属鉄が粉末状である請求項1又は2に記載の排水の処理方法。
【請求項4】
過酸化物が過酸化水素である請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項5】
還元剤が、亜硫酸塩、重亜硫酸塩又は亜二チオン酸塩である請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項6】
金属鉄と還元剤との割合を質量比で10:90〜99:1とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項7】
過酸化物の添加量を、金属鉄に対して質量比で0.5倍〜20倍とし、かつ、還元剤に対して当量以上とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の排水の処理方法において、さらに、過酸化物を添加する第2の工程の後に分離される汚泥の少なくとも一部を、第1の工程に戻し金属鉄と還元剤の代わりに使用することを特徴とする排水の処理方法。
【請求項9】
過酸化物を添加する第2の工程の後に分離される汚泥の少なくとも一部を、第1の工程に戻して使用する際に、新たに金属鉄と還元剤との割合を質量比で0:100〜90:10となるように添加することを特徴とする請求項8に記載の排水の処理方法。