説明

排水ソケット、及び、それを備えた水洗大便器

【課題】水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結することができると共に、この洗い落し式便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部と間の排水流路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる排水ソケットを提供する。
【解決手段】本発明の排水ソケット16は、水洗大便器1の便器本体2の排水トラップ管路8の出口8dに接続される便器本体側接続管部材26と、この便器本体側接続管部材26の出口部32cと床下排水管18の入口部18aとを接続する床下側接続管部材28と、を有し、床下側接続管部材28は、外側ケーシング部材34と、この外側ケーシング部材内に配置された屈曲管路部材36と、を備え、この屈曲管路部材には、屈曲管路部材の屈曲管路40b内で発生する上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を抑制する負圧抑制手段42が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケット、及び、それを備えた水洗大便器に係わり、特に、水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケット、及び、それを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗大便器の種類の中で、サイホン作用を生じさせない便器として、洗い落し式便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の洗い落し式便器は、サイホン作用を生じさせて便器を洗浄するサイホン式便器に比べて、水の落差による流水作用で汚物を押し流す方式で構造がシンプルであり、かつ安価であることに加えて、サイホン作用を生じさせないため、便器洗浄に用いられる洗浄水の量が少なくて済むという利点を有する。したがって、従来から便器に要請されている洗浄水の節水のニーズにも合致したものとなっている。
【0003】
これらの利点を有する洗い落し式便器は、例えば、マンションや一戸建て住宅、店舗、その他の施設のトイレ室内のリフォームに対する低コスト化やトイレの節水化の要請に応え得る便器として多く採用されるようになっている。
しかしながら、トイレ室内において洗い落し式便器を用いたリフォームを行う際、洗い落し式便器本体の排水路の出口部とトイレ室の床下の排水管の入口部との相対位置がトイレ室内の便器の設置スペースによって制約されるため、リフォームに採用する洗い落し式便器本体の排水路の出口部の配置を変更するような便器の設計変更を行ったり、トイレ室床下の排水管の配置を変更したりするような配管工事を行ったりしなければならず、これらのリフォームに関する作業は非常に手間やコストがかかるという問題があった。
【0004】
そこで、上述した特許文献1に記載されている従来の洗い落し式便器は、洗い落し式便器本体の排水路の出口部とトイレ室内の床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結するリフォーム用の排水ソケットを採用することにより、トイレ室内のリフォームを行う際に、便器本体の設計変更を行ったり、床下排水管の配置を変更することなく、便器の取り換えを容易に行うことができるようになっている。
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の洗い落し式便器に関するリフォーム用の排水ソケットは、洗い落し式便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部との間の限られた狭いスペースに配置され、洗い落し式便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部とを接続する排水ソケットの管路を上流側と下流側とでほぼ直角に屈曲させた構造となっている。したがって、排水ソケットの管路から床下排水管に排水される際、排水ソケットのほぼ直角に屈曲した管路内で排水が満水になると、この屈曲した管路内で上流側の排水を下流側へ引き込もうとする負圧によるサイホン作用が発生し、この排水ソケットの管路内で発生したサイホン作用により、洗い落し式便器本体の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れを招く可能性があるという問題がある。
また、このような排水ソケットの管路内のサイホン作用を抑制する対策として、排水ソケットのほぼ直角に屈曲した管路自体の寸法を大きく設計することにより、ほぼ直角に屈曲した管路内が満水になることを防ぐことが考えられるが、下流側のほぼ直角に屈曲した管路は床下排水管に接続されており、床下排水管の管路寸法が規定されているために、大きくすることができないという問題がある。さらに、排水ソケットの屈曲した管路の下流側に接続される床下排水管の管路の寸法をより大きく設計し、排水ソケットの管路内の排水を床下排水管に流出させやすくすることにより、排水ソケットの管路内を満水にさせにくく、サイホン作用を発生させにくくすることも考えられるが、床下排水管の管路寸法は、配管の施工基準等によっても厳しく制約されているため、床下排水管の寸法等については、リフォームの内容に応じて適宜設計変更することもできないという問題もある。
【0005】
さらに、排水管路内で発生するサイホン作用を抑制する対策としては、例えば、特許文献2に記載されているように、空気溜り部を備えた排水エルボを採用したものが知られている。この排水エルボは、この上流側端部が洗い落し式便器の後部の床から所定の高さ位置に配置された排水口に接続され、排水エルボの下流側端部は、便器下方に配置された水平方向に延びる床下排水管から上方に延びる立ち上り配管の上端部に接続されている。この排水エルボは、洗い落し式便器の排水口に接続された上流側接続部と立ち上り配管の上端部に接続される下流側接続部との間に屈曲した管路部分を備え、この屈曲した管路部分から外側に突出する空気溜り部が設けられており、排水エルボの屈曲した管路内でサイホン作用が生じた際には、この空気溜り部の空気が排水エルボの屈曲した管路内に供給され、排水エルボの屈曲した管路内でサイホン切れを生じさせるようになっている。
【0006】
さらに、排水管路内で発生するサイホン作用を抑制する他の対策としては、例えば、特許文献3に記載されているように、ほぼL字形の排水管継手の上流側の空気と下流側の空気を連通させる通気チューブを排水管継手の外部或いは排水管継手の管内壁に沿って取り付けることにより、排水管継手の管路内でサイホン作用が発生した際に排水管継手の下流側の空気を通気チューブから排水管継手の管路内の上流側に供給し、サイホン切れを生じさせるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−234374号公報
【特許文献2】特開平10−292890号公報
【特許文献3】特開平8−253959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載されている排水エルボの空気溜り部のようなものを上述した特許文献1に記載されている排水ソケットに設けた場合には、空気溜り部のスペースの分だけ排水ソケットが外部に突出し、排水ソケット全体の大きさも大きくなるため、洗い落し式便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部との間の限られた狭いスペースに配置するには適さないという問題がある。また、空気溜まり部を設けると排水ソケットの流路自体の排水性能を損なう可能性があるという問題がある。
また、上述した特許文献3に記載されている通気チューブのようなものを上述した特許文献1に記載されている排水ソケットに設ける場合、通気チューブを床下排水管の外部から接続して設ける場合には床下排水管自体を加工しなければならず、配管の施工基準等を満たさず、床下排水管の排水性能を損なう可能性があるという問題がある。或いは、排水ソケットから床下排水管にかけての排水管路内に通気チューブを取り付けた場合には、この通気チューブによって床下排水管の管路内の寸法を狭めることにもなり、その分、床下排水管の上流側に配置された排水ソケットの管路内でサイホン作用が発生しやすくなるという問題もある。また、排水ソケットの流路自体の排水性能を損なう可能性があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結することができると共に、この水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部と間の排水流路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる排水ソケット、及び、それを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケットであって、上記便器本体の排水路の出口部に接続される便器本体側接続管部材と、この便器本体側接続管部材の出口部と床下排水管の入口部とを接続する床下側接続管部材と、を有し、上記床下側接続管部材は、外側ケーシング部材と、この外側ケーシング部材内に配置された屈曲管路部材と、を備え、この屈曲管路部材には、上記屈曲管路部材の管路内で発生する上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を抑制する負圧抑制手段が形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生しても、床下側接続管部材の屈曲管路部材に負圧抑制手段が形成されているため、例えば、施工基準で予め定められた床下排水管の管路の大きさを変更する等、床下排水管の設計変更を行うことなく、負圧を効果的に抑制することができる。また、これらの負圧によって水洗大便器の便器本体の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることも未然に防ぐことができるため、水洗大便器の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材に形成された負圧抑制手段は、上記屈曲管路部材の下流外周側の空気を空気流入口から上記屈曲管路部材の外周面を経て空気流出口から上記屈曲管路部材の上流側に流出させる通気路である。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生しても、床下側接続管部材の屈曲管路部材に形成された負圧抑制手段である通気路によって、屈曲管路部材の下流側空気を屈曲管路部材の外周面を経て上流側に流出させて負圧を効果的に抑制することができる。したがって、例えば、施工基準で予め定められた床下排水管の管路の大きさを変更する等、床下排水管の設計変更を行うことなく、上述した負圧を抑制することができる。また、床下側接続管部材の屈曲管路部材の外側に形成されるデッドスペースを通気路として活用しているため、排水ソケット全体の大きさをコンパクトにすることができると共に通気路の容積を十分に確保することができる。したがって、水洗大便器と床下排水管との間の比較的狭いスペースでも排水ソケットを設置しやすくすることができる。さらに、排水ソケットの排水性能を阻害する要因となる空気溜まりを床下側接続管部材に別途設けたり、床下側接続管部材の外部に通気管を別途設けたりする必要がないため、排水ソケットの排水性能を十分に確保することができる。また、床下排水管内の臭気が排水ソケットの外部に漏れ出ることも確実に防ぐことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材は、この内部に形成される排水管路の流路断面の大きさが上記便器本体側接続管部材の排水管路の流路断面の大きさとほぼ同一になるように上記便器本体側接続管部材に接続されている。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の内部に形成される排水管路の流路断面の大きさが便器本体側接続管部材の排水管路の流路断面の大きさよりも狭められることなく、ほぼ同一の流路断面の大きさで床下側接続管部材が便器本体側接続管部材に(直接的に又は間接的に)接続されているため、排水性能を損なうことなく、床下側接続管部材の排水管路内で負圧が発生することを効果的に抑制することができる。したがって、これらの負圧によって水洗大便器の便器本体の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることも未然に防ぐことができ、水洗大便器の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流出口は、上記屈曲管路部材が形成する屈曲管路の入口部よりも上方に位置するように形成されている。
このように構成された本発明においては、屈曲管路部材の通気路の空気流出口が屈曲管路部材が形成する屈曲管路の入口部よりも上方に位置しているため、屈曲管路の入口部に流入する排水中に含まれる汚物が通気路の空気流出口を詰ませてしまうことを防止することができる。したがって、屈曲管路部材の屈曲管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生したとしても、屈曲管路部材の下流外周側の空気を空気流入口から通気路を経て空気流出口から屈曲管路部材の上流側に流出させることができるため、このような負圧を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口は、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の下流外周側のほぼ全周に亘って形成され、上記床下排水管内に配置されている。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口が、屈曲管路部材の下流外周側のほぼ全周に亘って形成されて床下排水管内に配置されているため、排水性能を損なうことなく、床下排水管内の空気を空気流入口から通気路内により多く取り込みやすくすることができ、屈曲管路部材の屈曲管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口は、便器本体側接続管部材の近位側の空気流入口の開口断面積が、便器本体側接続管部材の遠位側の空気流入口の開口断面積よりも大きくなるように形成されている。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口のうち、便器本体側接続管部材の近位側の空気流入口の開口断面積が、便器本体側接続管部材の遠位側の空気流入口の開口断面積よりも大きくなるように形成されているため、屈曲管路部材の管路を滑らかに屈曲させることができ、負圧を生じさせにくくすることができる。また、特に、便器本体側接続管部材の近位側の屈曲管路部材の下流外周側における排水と干渉しにくい床下排水管内の空気を便器本体側接続管部材の近位側の空気流入口から通気路内により多く取り込みやすくすることができ、床下側接続管部材の屈曲管路部材の屈曲管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の下流側端部は、上記通気路の空気流入口の位置よりも所定距離下方に延びて床下排水管内に位置している。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の下流側端部は、通気路の空気流入口の位置よりも所定距離下方に延びて床下排水管内に位置しているため、屈曲管路部材の下流側端部の外周面と床下排水管の内周面との間において排水と干渉しにくい空気のスペースを確保することができ、このスペースの空気が通気路の空気流入口から通気路内に供給されるため、床下側接続管部材の屈曲管路部材の屈曲管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、上記排水ソケットを備えた水洗大便器である。
このように構成された本発明においては、床下側接続管部材の屈曲管路部材の管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧の発生を効果的に抑制し、この負圧によって水洗大便器の便器本体の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることを未然に防ぐことができるため、水洗大便器の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水ソケットによれば、水洗大便器の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結することができると共に、この水洗大便器本体の排水路の出口部と床下排水管の入口部と間の排水流路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
また、本発明の排水ソケットを備えた水洗大便器によれば、排水ソケットの管路内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧の発生を効果的に抑制し、この負圧によって水洗大便器の便器本体の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることを未然に防ぐことができるため、水洗大便器の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による排水ソケットを備えた洗い落し式便器の概略断面図である。
【図2】図1に示す本発明の第1実施形態による排水ソケットの拡大概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による排水ソケットの分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の側面断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図4のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の屈曲管路部材を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の内部において排水及び通気が行われているときの状態を説明する説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態による排水ソケットの側面断面図である。
【図13】本発明の一実施形態による排水管部材の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面により、本発明の第1実施形態による排水トラップ、及び、それを備えた洗い落し式便器(水洗大便器)を説明する。
まず、図1により、本発明の第1実施形態による排水ソケットが適用された洗い落し式便器を説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態による排水ソケットを備えた洗い落し式便器の概略断面図である。
図1に示すように、符号1は洗い落し式便器を示し、この洗い落し式便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2の上部の前方側には、ボウル部4が形成され、後方側の上部には導水路6が、導水路6の下方にはボウル部4と連通する排水トラップ管路8が、それぞれ形成されている。
【0022】
便器本体2のボウル部4の上縁部内側にはオーバーハング形状のリム10が形成され、さらに、このリム10の一部には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部4を洗浄するようになっている。
【0023】
排水トラップ管路8は、洗い落し式便器1の便器本体2の排水路であり、この排水トラップ管路8の近傍で且つボウル部4の下方には、一点鎖線で溜水面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、上述した排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端に位置する排水トラップ管路8の出口8dは、詳細は後述する排水ソケット16が接続されている。また、この排水ソケット16の下流側端部は、便器本体2が配置されている床Fの領域の下方に配置されて上下方向に延びる排水管18(以下「床下排水管18」)の上端で開口している入口部18aに接続されている。
【0024】
また、ボウル部4の中心下部の溜水面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口20が形成され、この第2吐水口20から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0025】
さらに、便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置22が設けられている。この洗浄水タンク装置22は、洗浄水タンク24を備え、この洗浄水タンク24の底部には、便器本体2の導水路6と連通して洗浄水タンク20内の洗浄水が排水される排水口24aが形成されている。
【0026】
つぎに、図2及び図3により、本実施形態の排水ソケット16の構成について概略的に説明する。
図2は、図1に示す本発明の第1実施形態による排水ソケットの拡大概略断面図であり、図3は、本発明の第1実施形態による排水ソケットの分解斜視図である。
図2及び図3に示すように、排水ソケット16は、上流側から下流側の順に、便器本体側接続管部材26、及び、床下側接続管部材28を備えている。
【0027】
また、排水ソケット16の便器本体側接続管部材26は、上流側から下流側の順に、便器本体側接続管本体30、及び、管路延長用連結管32を備えている。
さらに、排水ソケット16の床下側接続管部材28は、外側ケーシング部材34、屈曲管路部材36、及び、ベース部材38を備えている。
【0028】
排水ソケット16の便器本体側接続管部材26の便器本体側接続管本体30の上方位置には、上方に向けて開口する入口部30aが形成され、この便器本体側接続管本体30の入口部30aは、便器本体2の排水路の出口部である排水トラップ管路8の出口8dに接続されている。
【0029】
また、便器本体側接続管本体30には、この入口部30aから便器本体側接続管本体30の内部を下方に向かって所定距離延び、便器本体2の前方側(図2の右方向)に向けてほぼL字形形状で屈曲する屈曲管路30bを形成した後、所定長さ前方に突出する突出管路30cが形成されている。
【0030】
さらに、便器本体側接続管本体30の突出管路30cは、便器本体側接続管本体30の下方位置に位置し、この基端30dが屈曲管路30bの出口を形成している。また、突出管路30cは、この基端30dから前方側に所定距離延びた先端30eにかけてほぼ水平方向に延びた管路を形成している。この突出管路30c内の領域は、管路延長用連結管32の入口部32aが挿入されて連結され、便器本体側接続管本体30と管路延長用連結管32とが接続される接続部となっている。
【0031】
排水ソケット16の便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32は、便器本体側接続管部材26の便器本体側接続管本体30と床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34との相対距離に基づいて設計され、直線状に所定長さ延びた管路32bを形成する管部材である。
【0032】
管路延長用連結管32の入口部32aは、便器本体側接続管本体30の突出管路30c内に挿入されて便器本体側接続管本体30と管路延長用連結管32とが連結されると共に、管路延長用連結管32の出口部32cは、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aに挿入されて管路延長用連結管32と床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34とが連結されることにより、便器本体側接続管部材26と床下側接続管部材28が接続されるようになっている。
【0033】
便器本体2の排水トラップ管路8の出口8dから下方に向けて排出された排水は、便器本体側接続管本体30の入口部30aから屈曲管路30b内へ流入した後、屈曲管路30cに沿って便器本体側接続管本体30の前方側へと差し向けられ、便器本体側接続管本体30の屈曲管路30bの出口30dから流出し、管路延長用連結管32の入口部32aから管路延長用連結管32の管路32b内に排水されるようになっている。そして、管路延長用連結管32の管路32b内の排水は、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の出口部32b、並びに、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aを経て、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の内部の排水管路40の上流側管路40a内に流入するようになっている。
【0034】
なお、本実施形態の排水ソケット16においては、一例として、床下排水管18の入口部18aの位置が便器本体側接続管本体30の位置に対して比較的距離が離れた場合については、便器本体側接続管部材26が便器本体側接続管本体30と、この便器本体側接続管本体30に連結された管路延長用連結管32を備えることにより、便器本体側接続管部材26と床下側接続管部材28とを接続した形態について説明するが、このような形態に限定されない。例えば、床下排水管18の入口部18aの位置が便器本体側接続管本体30の位置に対して比較的隣接している場合には、便器本体側接続管部材26の便器本体側接続管本体30と床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34との相対距離も比較的短くなるため、管路延長用連結管32の長さをその分短くしたり、或いは、管路延長用連結管32自体を省略して、便器本体側接続管本体30の突出管路30cと床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aとを直接的に連結することにより、便器本体側接続管部材26と床下側接続管部材28とを接続した形態にしてもよい。
【0035】
床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34は、床下側接続管部材28の本体を形成し、この外側ケーシング部材34の内側には、詳細は後述する屈曲管路部材36が組み込まれ、この外側ケーシング部材34の内部には、上流側から上流側管路40a、屈曲管路40b、下流側管路40cによって構成される排水管路40が形成されると共に、屈曲管路40b及び下流側管路40cの外側には、詳細は後述する通気路42が形成されている。
なお、詳細は後述するが、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の通気路42は、床下側接続管部材28の排水管路40内が満水となった際に排水管路40の上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を抑制する負圧抑制手段として機能するようになっている。
【0036】
床下側接続管部材28のベース部材38は、屈曲管路部材36が組み込まれた状態の外側ケーシング部材34の底部に形成された凹部34bに嵌め込まれている。
また、ベース部材38は、この中央部から下方に所定長さ延びた管路38aを形成する管部38bを備え、外側ケーシング部材34及び屈曲管路部材36にベース部材38を組み込んだ状態では、屈曲管路部材36の下流側管路40cの下流側端部に相当する屈曲管路部材36の下端部36aがベース部材38の管路38a内に位置している。
【0037】
さらに、床下側接続管部材28のベース部材38の管部38bの外径は、床下排水管18の管路18bの内径にほぼ等しいか、管路18bの内径よりもわずかに小さく、床下側接続管部材28を床下排水管18に接続する際には、ベース部材38の管部38bを床下排水管18の入口部18aから挿入した後、ビス等の締結部材38cによってベース部材38が床Fに固定されるようになっている。そして、床Fに固定されたベース部材38にこの上方から外側ケーシング部材34及び屈曲管路部材36が組み込まれることによって、床下側接続管部材28と床下排水管18との接続が完了する。
【0038】
つぎに、図4〜図10により、上述した本実施形態の排水ソケット16の床下側接続管部材28において、外側ケーシング部材34に屈曲管路部材36を組み込んだ状態の床下側接続管部材28の内部について詳細に説明する。
図4は本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の側面断面図であり、図5は図4のV−V線に沿った断面図である。つぎに、図6は図4のVI−VI線に沿った断面図であり、図7は図4のVII−VII線に沿った断面図である。また、図8は図4のVIII−VIII線に沿った断面図であり、図9は図4のIX−IX線に沿った断面図である。さらに、図10は、本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の屈曲管路部材を示す斜視図である。
【0039】
まず、図4に示すように、床下側接続管部材28の排水管路40の上流側管路40aは、外側ケーシング部材34の入口部34aからこの内部前方(図4の右方向)に向かって延びるように形成されている。
【0040】
また、外側ケーシング部材34の上流側管路40aは、便器本体側接続部材26の管路延長用連結管32の出口部32cが外側ケーシング部材34の入口部34aから上流側管路40a内に沿って前方に所定距離L1の位置まで挿入される挿入領域R1と、この挿入領域R1の下流側に形成されて管路延長用連結管32の出口部32cが挿入されていない非挿入領域R2を備えている。
【0041】
すなわち、外側ケーシング部材34の上流側管路40aの挿入領域R1においては、便器本体側接続部材26の管路延長用連結管32の出口部32cが床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aに挿入されて連結接続されているため、外側ケーシング部材34の上流側管路40aの挿入領域R1に挿入されている管路延長用連結管32の出口部32cを含む管路延長用連結管32の管路32bの部分が、外側ケーシング部材34の上流側管路40aの一部を形成している。
【0042】
さらに、図10に示すように、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36は、屈曲管路/通気路形成部36b、通気路区画壁部36c、円環状接続部36d、下流側管路形成部36eを備えている。
【0043】
図4及び図10に示すように、屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bは、この内側に床下側接続管部材28の屈曲管路40bを形成すると共に、屈曲管路/通気路形成部36bの外側且つ外側ケーシング部材34の内側に通気路42を形成している。この屈曲管路40bは、外側ケーシング部材34の上流側管路40aの非挿入領域R2よりも下流側に位置し、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の出口部32cから外側ケーシング部材34の上流側管路40a内に排出された前方への排水の流れを床下排水管18の管路18b内に向けて下方への排水の流れとして異なる方向に流路を屈曲させるようになっている。
【0044】
屈曲管路部材36の通気路区画壁部36cは、屈曲管路/通気路形成部36bの外面に沿って前方側に突出して上下方向に延び、通気路42の流路断面を複数に区画するものであり、通気路42については、床下側接続管部材28の前方(図4及び図7の右方向)から見て通気路区画壁部36cによって左右に区画された2つの通気路(以下「左側通気路42a」及び「右側通気路42b」)が形成されている。
なお、本実施形態では、一例として、通気路42について通気路区画壁部36cによって2つの通気路(左側通気路42a及び右側通気路42b)が設けられている形態についえ説明するが、通気路区画壁部36cを複数設けて3つ以上の通気路を設けた形態でもよい。
【0045】
図4及び図6〜図10に示すように、屈曲管路部材36の円環状接続部36dは、通気路区画壁部36cの下端部の高さ位置に形成される屈曲管路/通気路形成部36bの外周面36fから外側に所定間隔を置いて円環状に形成されており、外側ケーシング部材34の内部に屈曲管路部材36が組み込まれた際に、外側ケーシング部材34の下端開口部34cに嵌め込まれて接続されるようになっている。
また、円環状接続部36dの下端部は、ベース部材38を介して床下排水管18の入口部18aに接続される床下側接続管部材28の下流側接続部となっている。
【0046】
さらに、図4及び図6〜図10に示すように、左側通気路42a及び右側通気路42bの下端は、通気路区画壁部36cの下端部分の高さ位置に屈曲管路/通気路形成部36bの外周面36fとこれと対向する円環状接続部36dの内周面36gとの間に位置し、左側通気路42aの複数(3つ)の空気流入口42c,42d,42e及び右側通気路42bの複数(3つ)の空気流入口42f,42g,42hをそれぞれ形成している。
【0047】
すなわち、左側通気路42aの各空気流入口42c,42d,42e及び右側通気路42bの各空気流入口42f,42g,42hは、屈曲管路/通気路形成部36bの屈曲管路40bを形成する外周面36fとこれと対向する円環状接続部36dの内周面36gとの間の領域において、各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hを区画する空気流入口区画部36h(図8〜図10参照)以外の領域でほぼ全周に亘って形成され、床下排水管18内の範囲内に配置されており、床下排水管18内と連通している。
【0048】
また、図4、図8及び図9に示すように、左側通気路42aの各空気流入口42c,42d,42e及び右側通気路42bの各空気流入口42f,42g,42hのうち、最も後方側(図4、図8及び図9の左側)、すなわち、便器本体側接続管部材26の側(近位側)に配置される左側通気路42aの空気流入口42e(後方側空気流入口42e)及び右側通気路42bの空気流入口42h(後方側空気流入口42h)に関する流路断面の大きさ(流路断面積)が、前方側(図4、図8及び図9の右側)、すなわち、便器本体側接続管部材26の反対側(遠位側)に配置される左側通気路42aの他の空気流入口42c,42d(前方側空気流入口42c,42d)及び右側通気路42bの他の空気流入口42f,42g(前方側空気流入口42f,42g)に関する流路断面の大きさ(流路断面積)よりも大きくなっている。
【0049】
図4、図6及び図10に示すように、屈曲管路部材36の下流側管路形成部36eは、屈曲管路/通気路形成部36bの外周面36fが左側通気路42a及び右側通気路42bの空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hよりも所定距離下方に延びて床下側接続管部材28の下流側管路40cを形成している。
また、下流側管路形成部36eの下端部36aは、床下排水管18内に配置された床下側接続管部材28のベース部材38の管路38a内に位置し、下流側管路形成部36eの外周面とこれと対向するベース部材38の管路38aの内周面との間に空間が形成され、この空間は、上方に位置する左側通気路42a及び右側通気路42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hと連通している。
【0050】
一方、図4、図6及び図10に示すように、左側通気路42a及び右側通気路42bの上端は、外側ケーシング部材34の上部34dとこの上部34dから所定距離下方に位置する屈曲管路/通気路形成部36bの上部36iとの間に位置し、左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jをそれぞれ形成している。
【0051】
また、図6に示すように、これらの左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jの断面形状は、図6の縦寸法よりも横寸法が長いほぼ扁平形状となっている。
【0052】
さらに、図4及び図10に示すように、屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bの外側表面は、通気路42a,42b内において屈曲管路40b側に形成される内側通気路面F1を形成し、これら通気路42a,42bの内側通気路面F1は、通気路42a,42bの上方に位置する左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jからこれらの空気流出口42i,42jよりも下方に対応して位置する左側通気路42aの前方側空気流入口42c,42d及び右側通気路42bの前方側空気流入口42f,42gに向かって下方且つ前側に張り出した曲がり面を形成している。
【0053】
また、図4に示すように、通気路42a,42bの内側通気路面F1と対向する外側ケーシング部材34の内面は、外側ケーシング部材34内に形成される通気路42a,42bの外側通気路面F2を形成し、この外側通気路面F2は、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jから外側ケーシング部材34内の上方前端部34eまで前方側に延びて内側通気路面F1に対して離間した後、外側ケーシング部材34内の上方前側端部34eから左側通気路42a及び右側通気路42bの最も前方側の空気流入口42c,42fまで下方に延びている。
【0054】
すなわち、内側通気路面F1と外側通気路面F2によって形成される通気路42a,42bは、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jから外側ケーシング部材34内の上方前端部34eを経て最も前方側の空気流入口42c,42fまでの通気路領域において、外側ケーシング部材34内の上方前端部34eを含む通気路断面の大きさが空気流出口42i,42j及び空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張された通気路拡張部Eを備えている。
【0055】
さらに、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jの断面積は、通気路42a,42bのすべての流路断面のうちで最小となっている。
【0056】
さらに、図4及び図5に示すように、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の上部34dにおいて、便器本体側接続部材26の管路延長用連結管32の出口部32cが挿入されている外側ケーシング部材34の入口部34aから所定距離L1の位置から上流側管路40a内の前方側の所定距離L2の位置にかけて、上流側管路40aの上方から下方に向って所定長さ突出する突出部34fが形成されている。
この突出部34fは、非挿入領域R2の上流側管路40a内の上部且つ左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jの上流側に位置し、汚物を含む排水が挿入領域R1の上流側管路40aから非挿入領域R2の上流側管路40a内に流入した際に、左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jに汚物が侵入することを防止する汚物侵入防止手段として機能するようになっている。
【0057】
図4に示すように、外側ケーシング部材34の入口部34aから所定距離L1に位置する便器本体側接続部材26の管路延長用連結管32の出口部32c(挿入領域R1の上流側管路40a)の流路断面をS1とする。
また、図4、図5及び図7に示すように、屈曲管路部材36の屈曲管路40bを形成するように屈曲する内壁面において、後方側(図4及び図7の左側)、すなわち、便器本体側接続管部材26の側(近位側)に形成された内壁面(以下「後方側内壁面36j」)上の最も上流側に位置する点(最上流点)をUとし、この最上流点Uを含む、外側ケーシング部材34の上部34dの突出部34fにおける非挿入領域R2の上流側管路40aの流路断面をS2とする。
【0058】
さらに、図4に示すように、屈曲管路部材36の後方側内壁面36jの最上流点Uと屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bの上部36iの上縁とを含むように切った屈曲管路40bの流路断面をS3とする。この流路断面S3は、外側ケーシング部材34の上流側管路40aの非挿入領域R2から屈曲管路部材36の屈曲管路40bに遷移する、上流側管路40aと屈曲管路40bとの境界の流路断面、すなわち、屈曲管路40bの入口部における流路断面となっている。
【0059】
同様に、図4、図6及び図7に示すように、屈曲管路部材36の屈曲管路40bから下流側管路40cに遷移する、屈曲管路40bと下流側管路40cとの境界の流路断面をS4とする。すなわち、この流路断面S4は、下流側管路40cの入口部における流路断面となっている。
【0060】
図4及び図5に示すように、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の出口部32c(挿入領域R1の上流側管路40a)の流路断面S1の大きさと、後方側内壁面36jの最上流点Uを含む外側ケーシング部材34の上部34dの突出部34fにおける非挿入領域R2の上流側管路40aの流路断面S2の大きさはほぼ同一となっている。
【0061】
また、図4及び図9に示すように、外側ケーシング部材34内の非挿入領域R2の上流側管路40aの上部において、突出部34fの前端(図4の突出部34fの右端)から屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36eの上部36iとの間の領域には、左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jから流出した空気が合流して非挿入領域R2の上流側管路40a内に流出される合流空気流出口42kが形成されている。この合流空気流出口42kは下方に向けてほぼ長方形形状で開口しており、この下方に差し向けられた合流空気流出口42kの開口断面S5は、流路断面S3を形成している外側ケーシング部材34内の屈曲管路40bの入口部よりも上方に位置している。
【0062】
また、図4に示すように、合流空気流出口42kの開口断面S5と下流側管路40cの入口部における流路断面S4とは、互いに上下方向に対向するように、互いがほぼ平行に配置されており、合流空気流出口42kの開口断面S5は、非挿入領域R2の上流側管路40a内の上方に配置されている。
【0063】
つぎに、図1〜図11を参照し、本発明の第1実施形態による排水ソケット、及び、それを備えた洗い落し式水洗便器の動作(作用)を説明する。
ここで、図11は、本発明の第1実施形態による排水ソケットの床下側接続管部材の内部において排水及び通気が行われているときの状態を説明する説明図である。なお、図11においては、床下側接続管部材の排水管路内の汚物を含む排水の流れを矢印D、床下側接続管部材の排水管路内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧の向きを矢印P、通気路を流れる空気の流れを矢印Aで示している。
【0064】
図1〜図11に示すように、便器使用者が洗い落し式便器1を使用後、洗浄水タンク装置22の洗浄水タンク24の排水口24aが開放され、この排水口24aから洗浄水が便器本体2の導水路6に排水される。
そして、この導水路6内の洗浄水が洗い落し式便器1の第1吐水口12及び第2吐水口20から溜水部14内に吐水され、洗い落し式便器1の洗浄が行われる。
溜水部14内の汚物を含む排水は、導水路6から溜水部14への洗浄水の落差による流水作用により、排水トラップ管路8の入口8aから上昇路8b及び下降路8cに押し流され、排水トラップ管路8の出口8dへと送られる。
【0065】
排水トラップ管路8の出口8dから流出した汚物を含む排水は、排水ソケット16の便器本体側接続管部材26における便器本体側接続管本体30の入口部30aから便器本体側接続管本体30の屈曲管路30b内に流入し、この屈曲管路30cに沿って便器本体側接続管本体30の前方側へと差し向けられ、便器本体側接続管本体30の屈曲管路30bの出口30dから流出し、管路延長用連結管32の入口部32aから管路延長用連結管32の管路32b内に排水される。そして、管路延長用連結管32の管路32b内の排水は、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の出口部32b並びに床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aが形成する床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の内部に流路断面S1を形成する排水管路40の上流側管路40aの挿入領域R1内に流入する。
【0066】
床下側接続管部材28の上流側管路40aの挿入領域R1内における汚物を含む排水は、流路断面S1の大きさとほぼ等しい大きさの流路断面S2を形成する上流側管路40aの非挿入領域R2内に流入する。
【0067】
床下側接続管部材28の上流側管路40aの非挿入領域R2内における汚物を含む排水は、図4に示す前方側へ直進し、流路断面S3を形成する屈曲管路40bの入口部から屈曲管路40b内に流入し、この屈曲管路40bの屈曲した内面に沿って、下方に位置する下流側管路40cの入口部に向けて差し向けられる。
【0068】
床下側接続管部材28の下流側管路40c内における汚物を含む排水は、床下排水管18内に配置されて屈曲管路部材36の下端部36aに位置する下流側管路40cの出口部から床下排水管18内に最終的に排水される。
【0069】
ここで、排水ソケット16における排水中、特に、図11に示すように、排水ソケット16内のすべての排水管路が満水となる、或いは、少なくとも床下側接続管部材28の内部の排水管路40(上流側管路40a、屈曲管路40b、下流側管路40cのすべて)が満水となった際には、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)において、上流側の排水Dを下流側に引き込もうとする負圧Pが発生し、いわゆるサイホン作用が起こり始める。
【0070】
しかしながら、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)でこのような負圧P(サイホン作用)が起きた時には、床下側接続管部材28の排水管路40の内圧が通気路42a,42b内の内圧よりも低下している圧力差が生じている状態となっている。このため、排水管路40内の圧力よりも高い通気路42a,42b内の空気が空気流出口42i,42jから引き出されて、合流空気流出口42kから床下側接続管部材28の排水管路40内に供給され、その分、床下側接続管部材28の排水管路40と通気路42a,42bとの圧力差が相殺され、負圧Pが抑制され、究極的には、負圧Pがほぼ零に近い状態となる。
【0071】
また、図11に示すように、通気路42a,42b内の空気Aが空気流出口42i,42jから排水管路40内に供給されると、その分、通気路42a,42b内の圧力は一時的に低下するが、この一時的に低下した圧力に相当する空気Aは、通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hの下方に形成されている空間、すなわち、屈曲管路部材36の下流側管路形成部36eの外周面とこれと対向するベース部材38の管路38aの内周面との間に形成されて通気路42a,42b内よりも圧力が高くなっている空間の空気Aを各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に取り込むことによって、常に通気路42a,42b内、特に、通気路42a,42bの通気路拡張部E内に十分な空気を確保する。
【0072】
上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、排水ソケット16による排水中、床下側接続管部材28の排水管路40内が満水となった際に、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生したとしても、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の通気路42(42a,42b)が、このような負圧を抑制する負圧抑制手段として機能する。この結果、排水管路40内の圧力よりも高い通気路42a,42b内の空気が空気流出口42i,42jから引き出され、合流空気流出口42kから床下側接続管部材28の排水管路40内に供給され、その分、床下側接続管部材28の排水管路40と通気路42a,42bとの圧力差が相殺され、負圧を抑制することができる。したがって、例えば、施工基準で予め定められた床下排水管18の管路18bの大きさを変更する等、床下排水管18の設計変更を行うことなく、上述した負圧を効果的に抑制することができる。また、これらの負圧によって洗い落し式便器本体2の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることも未然に防ぐことができるため、洗い落し式便器1の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【0073】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の内部且つ屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bの外側に形成されるデッドスペースを通気路42a,42bとして活用しているため、排水ソケット16全体の大きさをコンパクトにすることができると共に、通気路42a,42bの容積を十分に確保することができる。したがって、洗い落し式便器1と床下排水管18との間の比較的狭いスペースでも排水ソケット16を設置しやすくすることができる。さらに、排水ソケット16の排水性能を阻害する要因となる空気溜まりを床下側接続管部材28に別途設けたり、床下側接続管部材28の外部に通気管を別途設けたりする必要がないため、排水ソケット16の排水性能を十分に確保することができる。また、床下排水管18内の臭気が排水ソケットの外部に漏れ出ることも確実に防ぐことができる。
【0074】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の出口部32c(挿入領域R1の上流側管路40a)の流路断面S1の大きさと、後方側内壁面36jの最上流点Uを含む外側ケーシング部材34の上部34dの突出部34fにおける非挿入領域R2の上流側管路40aの流路断面S2の大きさはほぼ同一となっており、床下側接続管部材28の排水管路40の流路断面の大きさが便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32の排水管路32bの流路断面の大きさよりも狭められることなく、床下側接続管部材28が便器本体側接続管部材26に接続されているため、排水性能を損なうことなく、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で負圧が発生することを効果的に抑制することができる。したがって、これらの負圧によって洗い落し式便器1の便器本体2の溜水部14の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることも未然に防ぐことができ、洗い落し式便器1の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【0075】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kが、流路断面S3を形成している外側ケーシング部材34内の屈曲管路40bの入口部よりも上方に位置しているため、屈曲管路40bの入口部に流入する排水中に含まれる汚物が通気路42a,42bの合流空気流出口42kや空気流出口42i,42jを詰ませてしまうことを防止することができる。したがって、床下側接続管部材28の屈曲管路40b内で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生したとしても、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の下流外周側空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから屈曲管路部材36の屈曲管路40bの上流側(上流側管路40a)に流出させることができるため、このような負圧を効果的に抑制することができる。
【0076】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、左側通気路42aの各空気流入口42c,42d,42e及び右側通気路42bの各空気流入口42f,42g,42hが、屈曲管路/通気路形成部36bの屈曲管路40bを形成する外周面36fとこれと対向する円環状接続部36dの内周面36gとの間の領域において、各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hを区画する空気流入口区画部36h(図8〜図10参照)以外の領域でほぼ全周に亘って形成され、床下排水管18内の範囲内に配置されており、床下排水管18内と連通している。このため、排水性能を損なうことなく、床下排水管18内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内により多く取り込みやすくすることができ、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図4、図8及び図9に示すように、左側通気路42aの各空気流入口42c,42d,42e及び右側通気路42bの各空気流入口42f,42g,42hのうち、最も後方側(図4、図8及び図9の左側)、すなわち、便器本体側接続管部材26の側(近位側)に配置される左側通気路42aの空気流入口42e(後方側空気流入口42e)及び右側通気路42bの空気流入口42h(後方側空気流入口42h)に関する流路断面の大きさ(流路断面積)が、前方側(図4、図8及び図9の右側)、すなわち、便器本体側接続管部材26の反対側(遠位側)に配置される左側通気路42aの他の空気流入口42c,42d(前方側空気流入口42c,42d)及び右側通気路42bの他の空気流入口42f,42g(前方側空気流入口42f,42g)に関する流路断面の大きさ(流路断面積)よりも大きくなっているため、屈曲管路部材の管路を滑らかに屈曲させることができ、負圧を生じさせにくくすることができる。また、特に、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の円環状接続部36d付近における、排水と干渉しにくい床下排水管18内の便器本体側接続管部材26側領域内にある空気を後方側空気流入口42c,42hから通気路内により多く取り込みやすくすることができ、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0078】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図4、図6及び図10に示すように、屈曲管路部材36の下流側管路形成部36eの下端部36aが、床下排水管18内に配置された床下側接続管部材28のベース部材38の管路38a内に位置し、下流側管路形成部36eの外周面とこれと対向するベース部材38の管路38aの内周面との間に空間が形成され、この空間は、上方に位置する左側通気路42a及び右側通気路42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hと連通している。このため、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の円環状接続部36d付近における、床下排水管18内において排水と干渉しにくい空気のスペースを確保することができ、このスペースの空気が通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に供給されるため、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図6に示すように、これらの左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jの断面形状は、図6の縦寸法よりも横寸法が長いほぼ扁平形状となっているため、この扁平断面形状の空気流出口42i,42jの断面積と同一断面積で且つこの断面形状が円形である場合の空気流出口に比べて、万一排水中の汚物が空気流出口42i,42jに付着して詰まりかけたとしても、空気流出口42i,42jの扁平断面全体が汚物で完全に塞がれにくくすることができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0080】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、屈曲管路部材36が床下側接続管部材28の内側に組み込まれ、屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bが、この内側に床下側接続管部材28の屈曲管路40bを形成すると共に、屈曲管路/通気路形成部36bの外側且つ且つ外側ケーシング部材34の内側に通気路42を形成しているため、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図4に示すように、合流空気流出口42kの開口断面S5と下流側管路40cの入口部における流路断面S4とは、互いに上下方向に対向するように、互いがほぼ平行に配置されており、合流空気流出口42kの開口断面S5は、非挿入領域R2の上流側管路40a内の上方に配置されている。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40内の排水に含まれる汚物は上流側管路40aから屈曲管路40bを経て下方の下流側管路40cへ確実に排出されるため、床下側接続管部材28の通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kには汚物を詰まりにくくすることができる。この結果、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0082】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図4及び図5に示すように、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の上部34dにおいて、便器本体側接続部材26の管路延長用連結管32の出口部32cが挿入されている外側ケーシング部材34の入口部34aから所定距離L1の位置から上流側管路40a内の前方側の所定距離L2の位置にかけて、上流側管路40aの上方から下方に向って所定長さ突出する突出部34fが形成されている。この突出部34fは、非挿入領域R2の上流側管路40a内の上部且つ左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jの上流側に位置し、汚物を含む排水が挿入領域R1の上流側管路40aから非挿入領域R2の上流側管路40a内に流入した際に、左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jに汚物が侵入することを防止する汚物侵入防止手段として機能するようになっているため、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kにおける汚物を詰まりにくくすることができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流側にある床下排水管18内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、床下側接続管部材28の通気路42a,42bの空気流出口42i,42jの断面積が、通気路42a,42bのすべての流路断面のうちで最小となっているため、万一床下側接続管部材28の上流側管路40a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42jの少なくとも一方から通気路42a,42b内の少なくとも一方に入り込んでしまったとしても、空気流出口42i,42jよりも流路断面の断面積が大きい通気路42a,42b内の下流側に汚物が自然に流されるため、汚物を通気路42a,42b内で詰まりにくくすることができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0084】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、図4及び図10に示すように、屈曲管路部材36の屈曲管路/通気路形成部36bの外側表面は、通気路42a,42b内において屈曲管路40b側に形成される内側通気路面F1を形成し、これら通気路42a,42bの内側通気路面F1は、通気路42a,42bの上方に位置する左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jからこれらの空気流出口42i,42jよりも下方に対応して位置する左側通気路42a及び右側通気路42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hに向かって下方且つ前側に張り出した曲がり面を形成している。このため、万一床下側接続管部材28の上流側管路40a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42jの少なくとも一方から通気路42a,42b内の少なくとも一方に入り込んでしまったとしても、通気路42a,42b内の汚物が内側通気路面F1に沿って通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hに導かれ、これらの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから床下側接続管部材28の排水管路40の下流側に位置する床下排水管18内に向けて排出されるため、通気路42a,42b内に汚物が詰まることを防ぐことができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、屈曲管路部材36の通気路区画壁部36cによって区画された2つの通気路42a,42bとこれらに対応する空気流出口42i,42jが確保されているため、万一床下側接続管部材28の上流側管路40a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42j一方から通気路42a,42b内の一方に入り込んでしまったとしても、他方の空気流出口及びこれと対応する通気路において、汚物が入り込まない、或いは、汚物が入り込む量が少ない空気流出口及び通気路を確保することができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0086】
さらに、本実施形態による排水ソケット16、及び、それを備えた洗い落し式便器1によれば、内側通気路面F1と外側通気路面F2によって形成される通気路42a,42bが通気路42a,42bの空気流出口42i,42jから外側ケーシング部材34内の上方前端部34eを経て最も前方側の空気流入口42c,42fまでの通気路領域において、外側ケーシング部材34内の上方前端部34eを含む通気路断面の大きさが空気流出口42i,42j及び空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張された通気路拡張部Eを備えているため、万一床下側接続管部材28の上流側管路40a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42jの少なくとも一方から通気路42a,42b内の少なくとも一方に入り込んでしまったとしても、通気路拡張部Eによって通気路42a,42bの断面の大きさが空気流出口42i,42j及び最も前方側の空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張されて通気路42i,42j内の容積が比較的広くなっているため、通気路42i,42j内に汚物を蓄積しにくくすることができる。したがって、床下側接続管部材28の排水管路40(特に、屈曲管路40b)内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路40bの下流外周側にある床下排水管18内の空気を通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42bを経て空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路40aに流出させて、屈曲管路40b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0087】
つぎに、図12を参照して、本発明の第2実施形態による排水ソケットを説明する。
ここで、図12は、本発明の第2実施形態による排水ソケットの側面断面図である。なお、図12において、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケットの部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0088】
図12に示すように、本発明の第2実施形態による排水ソケット50においては、床下排水管18の入口部18aの位置が便器本体側接続管本体30の位置に対して比較的距離が離れている上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16とは異なり、床下排水管18の入口部18aの位置が便器本体側接続管本体30の位置に対して隣接しているため、便器本体側接続管部材26の管路延長用連結管32自体を省略した形態となっている。
すなわち、便器本体側接続管本体30の突出管路30cの先端30eが便器本体側接続管部材26の出口部となり、床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34a内に挿入され、この便器本体側接続管部材26の突出管路30cの先端30e(出口部)と床下側接続管部材28の外側ケーシング部材34の入口部34aとを直接的に連結することにより、便器本体側接続管部材26と床下側接続管部材28とを接続した形態となっている。
【0089】
上述した本発明の第2実施形態による排水ソケット50によれば、床下排水管18の入口部18aの位置が便器本体側接続管本体30の位置に対して隣接している状態においても、便器本体側接続管部材26と床下側接続管部材28とを容易に接続することができ、床下側接続管部材28の排水管路40内が満水となった際に、床下側接続管部材28の排水管路40内(特に、屈曲管路40b内)で上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生したとしても、このような負圧を抑制することができる。また、例えば、施工基準で予め定められた床下排水管18の管路18bの大きさを変更する等、床下排水管18の設計変更を行うことなく、上述した負圧を効果的に抑制することができる。さらに、これらの負圧によって洗い落し式便器本体2の溜水が下流側に引き込まれて溜水不足や封水切れになることも未然に防ぐことができるため、洗い落し式便器1の洗浄性能と節水効果を十分に確保することができる。
【0090】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による排水ソケット16,50においては、例として、便器本体側接続管部材26及び床下側接続管部材28を別体の部材とする形態について説明したが、このような形態に限定されず、両部材26,28が一体に形成された一部材とする形態にしてもよい。
【0091】
また、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による排水ソケット16,50においては、例として、通気路42が床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の屈曲管路40bの外周側に形成された形態について説明したが、このような形態に限定されず、通気路については、床下側接続管部材28の屈曲管路部材36の屈曲管路40bの内周側に形成された形態にしてもよい。
【0092】
さらに、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による排水ソケット16,50においては、例として、外側ケーシング部材34と屈曲管路部材36が別部材である形態について説明したが、このような形態に限定されず、外側ケーシング部材34及び屈曲管路部材36を一体的に形成された部材とし、床下側接続管部材28の内部の排水管路40及び通気路42a,42bを一つの部材で形成するようにしてもよい。
【0093】
つぎに、図13を参照し、本発明の一実施形態による排水管部材を説明する。
図13は、本発明の一実施形態による排水管部材の側面断面図である。ここで、図13において、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による排水ソケットの部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。なお、図13においては、排水管100の管路内の汚物を含む排水の流れを矢印D、床下側接続管部材の排水管路内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧の向きを矢印P、通気路を流れる空気の流れを矢印Aで示している。
【0094】
図13に示すように、本発明の一実施形態による排水管部材100は、上流側から下流側にかけて、横管部102、エルボ部104、及び、縦管部106を備えている。
横管部102は水平方向に延びており、横管部102の上流側端部は、排水管部材100の上流側に位置する洗い落し式便器又は洗面台等の衛生器具(図示せず)の排水路(図示せず)の出口部(図示せず)、又は、この出口部に接続された排水管(図示せず)に接続されている。
【0095】
横管部102の下流側端部は、エルボ部104の上流側端部104aに接続されており、エルボ部104の下流側端部104bは、上下方向に延びる縦管部106の上端に接続されている。
なお、本実施形態においては、縦管部106は、床から上方に配置されているが、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50において説明した床下排水管18と同様に、床下に配置されていてもよい。
【0096】
エルボ部104の内部には、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50の屈曲管路部材36と同一形態の屈曲管路部材108が設けられている。
【0097】
屈曲管路部材108は、排水管部材100の上流側の衛生器具(図示せず)から横管部102の管路(以下「上流側管路110a」)内に排出された排水Dの流路(図13の左から右に向かう方向の流路)をこの流路の方向とは異なる方向、すなわち、縦管部106の管路(以下「下流側管路110c」)内に形成される流路(図13の上から下に向かう方向の流路)に屈曲させる屈曲管路110bを形成している。
【0098】
屈曲管路部材108の屈曲管路110bの外側には、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50の通気路42a,42bと同一形態の通気路が形成されている。
【0099】
また、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの空気流入口、空気流出口、及び、合流空気流出口についても、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50の通気路42a,42bの空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42h、空気流出口42i,42j、及び、合流空気流出口42kと同一形態となっている。
【0100】
さらに、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの各空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jの断面形状についても、縦寸法よりも横寸法が長いほぼ扁平形状となっている。
【0101】
また、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの空気流出口42i,42jの断面積についても、通気路42a,42bのすべての流路断面のうちで最小となっている。
【0102】
さらに、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの合流空気流出口42kの開口断面S5と下流側管路40cの入口部における流路断面S4とは、互いに上下方向に対向するように、互いがほぼ平行に配置されており、合流空気流出口42kの開口断面S5は、上流側管路110a内の上方に配置されている。
【0103】
また、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、エルボ部104の上部104cにおいて、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jから所定距離の上流側の位置には、汚物が侵入することを防止する汚物侵入防止手段である突出部112が形成されている。
【0104】
さらに、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、屈曲管路部材108の屈曲管路/通気路形成部36bの外側表面は、通気路42a,42b内において屈曲管路110b側に形成される内側通気路面F1を形成し、これら通気路42a,42bの内側通気路面F1は、通気路42a,42bの上方に位置する左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jからこれらの空気流出口42i,42jよりも下方に対応して位置する左側通気路42aの前方側空気流入口42c,42d及び右側通気路42bの前方側空気流入口42f,42gに向かって下方且つ前側に張り出した曲がり面を形成している。
【0105】
また、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、屈曲管路部材108には、屈曲管路/通気路形成部36bの外面に沿って前方側に突出して上下方向に延び、通気路42の流路断面を2つの通気路に区画する通気路区画壁部36cが設けられている。
【0106】
さらに、上述した本発明の第1実施形態による排水ソケット16及び第2実施形態による排水ソケット50とものと同様に、通気路42a,42bの内側通気路面F1と対向するエルボ部104の内面は、エルボ部104内に形成される通気路42a,42bの外側通気路面F2を形成し、この外側通気路面F2は、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jからエルボ部104内の上方前端部104d(図13の右端部)まで前方側に延びて内側通気路面F1に対して離間した後、エルボ部104内の上方前側端部34eから通気路42a,42bの最も前方側の空気流入口42c,42fまで下方に延びている。
すなわち、内側通気路面F1と外側通気路面F2によって形成される通気路42a,42bは、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jからエルボ部104内の上方前端部104dを経て最も前方側の空気流入口42c,42fまでの通気路領域において、エルボ部104内の上方前端部104dを含む通気路断面の大きさが空気流出口42i,42j及び空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張された通気路拡張部Eを備えている。
【0107】
上述した本発明の一実施形態による排水管部材100によれば、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの空気流出口42i,42jの断面形状が扁平形状であるため、この扁平断面形状の空気流出口42i,42jの断面積と同一断面積で且つこの断面形状が円形である場合の空気流出口に比べて、万一排水中の汚物や浮遊物が空気流出口に付着して詰まりかけたとしても、空気流出口42i,42jの扁平断面全体が汚物で完全に塞がれにくくすることができる。したがって、屈曲管路部材108によって形成される屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流外周側の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、空気流出口42i,42jから屈曲管路110bの上流側に流出させることができ、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態による排水管部材100によれば、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの空気流出口42i,42jの断面積が通気路通気路42a,42bの流路断面のうちで最小となっているため、万一排水中の汚物が空気流出口42i,42jから通気路42a,42b内に入り込んでしまったとしても、空気流出口42i,42jよりも流路断面の断面積が大きい通気路42a,42b内に汚物が流されるため、汚物を通気路内で詰まりにくくすることができる。したがって、屈曲管路部材108によって形成される屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流外周側の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、空気流出口42i,42jから屈曲管路110bの上流側に流出させることができ、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0109】
さらに、本実施形態による排水管部材100によれば、屈曲管路部材108によって形成される通気路42a,42bの合流空気流出口42kの開口断面S5と下流側管路40cの入口部における流路断面S4とは、互いに上下方向に対向するように、互いがほぼ平行に配置されており、合流空気流出口42kの開口断面S5は、上流側管路110a内の上方に配置されている。したがって、上流側管路110a内の排水に含まれる汚物は屈曲管路110bを経て下方の下流側管路110cへ確実に排出されるため、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kには汚物を詰まりにくくすることができる。この結果、屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流側にある下流側管路110c内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路110aに流出させて、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態による排水管部材100によれば、エルボ部104の上部104cにおいて、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jから所定距離の上流側の位置には、汚物が侵入することを防止する汚物侵入防止手段である突出部112が形成されている。したがって、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kにおける汚物を詰まりにくくすることができ、屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流側にある下流側管路110c内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路110aに流出させて、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0111】
さらに、本実施形態による排水管部材100によれば、屈曲管路部材108の屈曲管路/通気路形成部36bの外側表面は、通気路42a,42b内において屈曲管路110b側に形成される内側通気路面F1を形成し、これら通気路42a,42bの内側通気路面F1は、通気路42a,42bの上方に位置する左側通気路42aの空気流出口42i及び右側通気路42bの空気流出口42jからこれらの空気流出口42i,42jよりも下方に対応して位置する左側通気路42aの前方側空気流入口42c,42d及び右側通気路42bの前方側空気流入口42f,42gに向かって下方且つ前側に張り出した曲がり面を形成している。したがって、万一上流側管路110a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42jの少なくとも一方から通気路42a,42b内の少なくとも一方に入り込んでしまったとしても、通気路42a,42b内の汚物が内側通気路面F1に沿って通気路42a,42bの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hに導かれ、これらの各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから下流側管路110c内に向けて排出されるため、通気路42a,42b内に汚物が詰まることを防ぐことができる。この結果、屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流側にある下流側管路110c内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、通気路42a,42bの空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路110aに流出させて、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0112】
また、本実施形態による排水管部材100によれば、屈曲管路部材108には、屈曲管路/通気路形成部36bの外面に沿って前方側に突出して上下方向に延び、通気路42の流路断面を2つの通気路に区画する通気路区画壁部36cが設けられている。したがって、屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流側にある下流側管路110c内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路110aに流出させて、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0113】
さらに、本実施形態による排水管部材100によれば、通気路42a,42bの内側通気路面F1と対向するエルボ部104の内面は、エルボ部104内に形成される通気路42a,42bの外側通気路面F2を形成し、この外側通気路面F2は、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jからエルボ部104内の上方前端部104d(図13の右端部)まで前方側に延びて内側通気路面F1に対して離間した後、エルボ部104内の上方前側端部34eから通気路42a,42bの最も前方側の空気流入口42c,42fまで下方に延びている。すなわち、内側通気路面F1と外側通気路面F2によって形成される通気路42a,42bは、通気路42a,42bの空気流出口42i,42jからエルボ部104内の上方前端部104dを経て最も前方側の空気流入口42c,42fまでの通気路領域において、エルボ部104内の上方前端部104dを含む通気路断面の大きさが空気流出口42i,42j及び空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張された通気路拡張部Eを備えている。したがって、万一上流側管路110a内の排水中の汚物が空気流出口42i,42jの少なくとも一方から通気路42a,42b内の少なくとも一方に入り込んでしまったとしても、通気路拡張部Eによって通気路42a,42bの断面の大きさが空気流出口42i,42j及び最も前方側の空気流入口42c,42fの断面の大きさよりも拡張されて通気路42i,42j内の容積が比較的広くなっているため、通気路42i,42j内に汚物を蓄積しにくくすることができる。したがって、屈曲管路110b内において上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧が発生した際に、屈曲管路110bの下流側にある下流側管路110c内の空気を各空気流入口42c,42d,42e,42f,42g,42hから通気路42a,42b内に流入させ、空気流出口42i,42j及び合流空気流出口42kから上流側管路110aに流出させて、屈曲管路110b内の負圧を確実に抑制することができる。
【0114】
なお、上述した本発明の一実施形態による排水管部材100においては、一例として、エルボ部104と屈曲管路部材108が別部材である形態について説明したが、このような形態に限定されず、エルボ部104及び屈曲管路部材108を一体的に形成された一部材とし、エルボ部104の内部に形成される排水管路及び通気路を一つの部材で形成するようにしてもよい。
【0115】
なお、上述した本発明の一実施形態による排水管部材100においては、一例として、通気路42が屈曲管路部材108の屈曲管路110bの外周側に形成された形態について説明したが、このような形態に限定されず、通気路については、屈曲管路部材108の屈曲管路110bの内周側に形成された形態にしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 洗い落し式便器(水洗大便器)
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 排水トラップ管路(水洗大便器の便器本体の排水路)
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の上昇路
8c 排水トラップ管路の下降路
8d 排水トラップ管路の出口
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 排水ソケット
18 床下排水管
18a 床下排水管の入口部
18b 床下排水管の管路
20 第2吐水口
22 洗浄水タンク装置
24 洗浄水タンク
24a 洗浄水タンクの排水口
26 便器本体側接続管部材
28 床下側接続管部材
30 便器本体側接続管部材の便器本体側接続管本体
30a 便器本体側接続管本体の入口部
30b 便器本体側接続管本体の屈曲管路
30c 便器本体側接続管本体の突出管路
30d 便器本体側接続管本体の突出管路の基端
30e 便器本体側接続管本体の突出管路の先端
32 便器本体側接続管部材の管路延長用連結管
32a 管路延長用連結管の入口部
32b 管路延長用連結管の管路
32c 管路延長用連結管の出口部
34 床下側接続管部材の外側ケーシング部材
34a 外側ケーシング部材の入口部
34b 外側ケーシング部材の凹部
34c 外側ケーシング部材の下端開口部
34d 外側ケーシング部材の上部
34e 外側ケーシング部材の上方前端部
34f 外側ケーシング部材の突出部(汚物侵入防止手段)
36 床下側接続管部材の屈曲管路部材
36a 屈曲管路部材の下端部
36b 屈曲管路部材の屈曲管路/通気路形成部
36c 屈曲管路部材の通気路区画壁部
36d 屈曲管路部材の円環状接続部
36e 屈曲管路部材の下流側管路形成部
36f 屈曲管路部材の屈曲管路/通気路形成部の外周面
36g 屈曲管路部材の円環状接続部の内周面
36h 空気流入口区画部
36i 屈曲管路部材の屈曲管路/通気路形成部の上部
36j 屈曲管路の後方側内壁面
38 床下側接続管部材のベース部材
38a 床下側接続管部材のベース部材の管路
38b 床下側接続管部材のベース部材の管部
38c 床下側接続管部材のベース部材の締結部材
40 床下側接続管部材の排水管路
40a 床下側接続管部材の上流側管路
40b 床下側接続管部材の屈曲管路
40c 床下側接続管部材の下流側管路
42 床下側接続管部材の通気路(負圧抑制手段)
42a 床下側接続管部材の左側通気路
42b 床下側接続管部材の右側通気路
42c,42d 床下側接続管部材の左側通気路の前方側空気流入口
42e 床下側接続管部材の左側通気路の後方側空気流入口
42f,42g 床下側接続管部材の右側通気路の前方側空気流入口
42h 床下側接続管部材の右側通気路の後方側空気流入口
42i 床下側接続管部材の左側通気路の空気流出口
42j 床下側接続管部材の右側通気路の空気流出口
42k 床下側接続管部材の通気路の合流空気流出口
50 排水ソケット
100 排水管部材
102 横管部
102a 横管部の管路
104 エルボ部
104a エルボ部の上流側端部
104b エルボ部の下流側端部
104c エルボ部の上部
104d エルボ部の前端部
106 縦管部
108 屈曲管路部材
110a 上流側管路
110b 屈曲管路
110c 下流側管路
112 突出部(汚物侵入防止手段)
E 通気路拡張部
F1 内側通気路面
F2 外側通気路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器の便器本体の排水路の出口部と床下に設けられた床下排水管の入口部とを連結する排水ソケットであって、
上記便器本体の排水路の出口部に接続される便器本体側接続管部材と、
この便器本体側接続管部材の出口部と床下排水管の入口部とを接続する床下側接続管部材と、を有し、
上記床下側接続管部材は、外側ケーシング部材と、この外側ケーシング部材内に配置された屈曲管路部材と、を備え、この屈曲管路部材には、上記屈曲管路部材の管路内で発生する上流側の排水を下流側に引き込もうとする負圧を抑制する負圧抑制手段が形成されていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
上記床下側接続管部材の屈曲管路部材に形成された負圧抑制手段は、上記屈曲管路部材の下流外周側の空気を空気流入口から上記屈曲管路部材の外周面を経て空気流出口から上記屈曲管路部材の上流側に流出させる通気路である請求項1記載の排水ソケット。
【請求項3】
上記床下側接続管部材は、この内部に形成される排水管路の流路断面の大きさが上記便器本体側接続管部材の排水管路の流路断面の大きさとほぼ同一になるように上記便器本体側接続管部材に接続されている請求項1又は2に記載の排水ソケット。
【請求項4】
上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流出口は、上記屈曲管路部材が形成する屈曲管路の入口部よりも上方に位置するように形成されている請求項2又は3に記載の排水ソケット。
【請求項5】
上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口は、上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の下流外周側のほぼ全周に亘って形成され、上記床下排水管内に配置されている請求項2乃至4の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項6】
上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の通気路の空気流入口は、便器本体側接続管部材の近位側の空気流入口の開口断面積が、便器本体側接続管部材の遠位側の空気流入口の開口断面積よりも大きくなるように形成されている請求項5記載の排水ソケット。
【請求項7】
上記床下側接続管部材の屈曲管路部材の下流側端部は、上記通気路の空気流入口の位置よりも所定距離下方に延びて床下排水管内に位置している請求項2乃至6の何れか1項に記載の排水ソケット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の排水ソケットを備えた水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−179187(P2011−179187A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42504(P2010−42504)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】