説明

排水トラップ装置

【課題】落下水流が栓状になるのを防止して封水の吸い出しによる異音発生をなくすることができ、しかもゴミ等が溜まることのない排水トラップ装置を提供する。
【解決手段】排水路内に下傾状の傾斜部8b,9aと、その下流に垂下状の垂直部9bを有する排水トラップ装置6において、傾斜部8b,9aと垂直部9bの交わる部分9cの内側に、傾斜部9aの傾斜角が垂直部9b内まで連続する連続傾斜面93を設けて、排水路内に絞り部9eを形成させて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水トラップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排水トラップ装置として、例えば特許文献1に開示されているような構造のものがあり、この特許文献1の排水トラップ装置では、Sトラップの下向きに曲がり終えた第2下降部の上部管壁のうち、外曲がり側に凸部を配置して、落下水流が栓状になるのを防止し、封水の吸い出しによる異音の発生をなくすることができるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−59249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の排水トラップ装置では、異音の発生をなくすることができるが、外曲がり側に設けられている凸部にゴミが溜まりやすいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、異音の発生を防止することができ、しかもゴミが溜まりにくい排水トラップ装置の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、排水路内に、下傾状の傾斜部と、その下流に垂下状の垂直部を有する排水トラップ装置において、前記傾斜部と前記垂直部の交わる部分の内側に、前記傾斜部の傾斜角が前記垂直部内まで連続する連続傾斜面を設けて前記排水路内に絞り部を形成させたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の排水トラップ装置では、傾斜部と垂直部の交わる部分の内側に絞り部を形成させたため、この絞り部により、垂直部内を落下する排水の水流が栓状になるのを防止でき、封水の吸い出しによる異音の発生をなくすことができる。
また、絞り部は傾斜部の傾斜角が垂直部内まで連続する連続傾斜面を設けて形成されたものであるため、連続傾斜面に沿って排水中のゴミ等が良好に垂直部内に落下し、連続傾斜面にはゴミが溜まらないものとなる。
【0007】
また、本発明の排水トラップ装置において、前記絞り部を、前記連続傾斜面と、該連続傾斜面の下端から略垂下状をなす垂下面と、該垂下面の下端から外方向へ略水平に延びる水平面から構成される凹部により形成することもできる。
こうすれば、垂下面が、排水の流れる方向を安定させるガイドの役目を果たして、排水の流れが確実に真下方向を向くため、排水性能の安定化と異音防止性能の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明の排水トラップ装置において、前記傾斜部と前記垂直部が、45°で下傾する一次管と、該一次管の下流側に接続され135°の曲がり部を有する二次管とからなる構成とすることもできる。
こうすれば、45°で下傾する一次管の下流側に、135°の曲り部を有する二次管を接続することで、排水トラップ装置における異音の発生を防ぎ、しかも内部にゴミが溜まらない構造を実現することができる。また、この別体の135°の曲り部を有する二次管は接続部で回転させることで、垂直部を水平状に配置することもでき、床排水にも壁排水にも対応できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】洗面台の洗面器の底面に設けられた排水トラップ装置の全体構成図である。
【図2】排水トラップ装置の配管の拡大構成図である。
【図3】図2における排水導出管(二次管)の外観側面構成図である。
【図4】図3の縦断面構成図である。
【図5】排水導出管(二次管)の正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、洗面台に設けられた排水トラップ装置の構成図であり、洗面台1のキャビネット2の上面側には洗面器3が設置されており、この洗面器3の排水口3aには垂下状に排水案内管4が接続され、この排水案内管4の上方にはオーバーフロー管5が接続されている。排水案内管4の下端に、排水トラップ装置6を構成する、トラップ形成管7と、その下流側にV字形連結管8(一次管)と、その下流側に排水導出管9(二次管)が接続されている。
【0011】
トラップ形成管7はU字状をなし、図2の拡大図で示すように、そのU字状の底側位置に水抜き孔7aが形成されており、この水抜き孔7aの外周の雄ネジ7bにはパッキン10を介在させてドレンキャップ11が着脱可能に取り付けられている。なお、このトラップ形成管7は下流側に乱流が生じないように管径が均一に形成されている。
【0012】
このトラップ形成管7の下流に接続されるV字形連結管8は、垂直に立ち上がる起立部8aと、起立部8aの上端側から下方に向かって45°に傾斜する傾斜部8bが、上端の折り曲げ部8cで連続されて、全体としてV字形に形成されている。
このV字形連結管8の起立部8aをトラップ形成管7の下流端に上方より差し込んで、パッキン12を介在させて手締めナット13を締め付け、トラップ形成管7にV字形連結管8を連結することができる。
【0013】
また、V字形連結管8の傾斜部8bの下端外周には雄ネジ8eが形成されており、この雄ネジ8eにパッキンを介在させて手締めナット13を締め付け、V字形連結管8の下流に排水導出管9を連結することができる。
排水導出管9は全体がヘの字状に形成されており、上流側の傾斜部9aと下流側の垂直部9bが曲がり部9cで連続されて形成されており、傾斜部9aはV字形連結管8の傾斜部8bと同じ45°の傾斜角をなし、垂直部9bは垂直状に形成されたものである。
【0014】
排水導出管9は、図3の側面外観図で、また図4の側面縦断面構成図で、また図5の正面外観図で示すように、側面視して曲がり部9cの内側に凹ませて凹部9dが形成されており、この凹部9dにより垂直部9bの上端側に水路が絞られた絞り部9eが形成されている。
この凹部9dは、傾斜部9aの内側の傾斜壁面91から同じ傾斜角で連続して垂直部9b内に傾斜する連続傾斜面93と、この連続傾斜面93の下端から略垂下状をなす垂下面94と、垂下面94の下端から外方向へ略水平に延びる水平面95により凹み状に形成されたものである。
【0015】
前記連続傾斜面93は、垂直部9bの垂直な垂直壁面92を上方へ延長した傾斜壁面91との交差点Pよりも垂直部9b側へ向かって連続して、傾斜壁面91の傾斜角度で下傾状をなすため、V字形連結管8を通り流下される水流は、傾斜壁面91から連続傾斜面93に亘り流速を高めて絞り部9e内に流入されるため、この連続傾斜面93にはゴミが付着することがなく、水流は絞り部9eで絞られて排水導出管9の垂直部9b内に流れ落ち、垂直部9b内で落下水流が栓状になることが防がれ、垂直部9b内が満水になることはなく、そのため、垂直部9bでの封水の吸い出しによるゴボゴボという異音の発生は生じないものである。また、凹部9dを構成する垂下面94が、排水の流れる方向を安定させるガイドの役目を果たして、排水の流れが確実に真下方向を向くため、排水性能の安定化と異音防止性能の向上を図ることができる。
【0016】
なお、排水導出管9は、例えばその外径寸法aは32mmであり、内径寸法bは28mmである。また、絞り部9eの外径寸法cは19mmであり、絞り部9eの内径寸法dは17mmであり、絞り部9eの高さ寸法eは22mmである。また、傾斜部9aの中心線と垂直部9bの中心線とのなす角度αは135°に設定されている。
【0017】
このような図3〜図5に示す排水導出管9の傾斜部9aを、V字形連結管8の傾斜部8b内に差し込み、V字形連結管8内の当接段部8dに上端を当接させ、雄ネジ8eにパッキンを介在させて手締めナット13を締め付けて、V字形連結管8に排水導出管9を連結して設置することができ、排水導出管9の垂直部9bを垂直に配置することで床排水構造となり、この垂直部9bでの封水の吸い出しを絞り部9eにより防いで、ゴボゴボ音等の異音の発生を良好に防ぐことができ、しかも絞り部9eの上端側の連続傾斜面93にはゴミが溜まることがないように構成することができる。
なお、排水導出管9は手締めナット13を緩めて回転させて、図1のように垂直部9bを略水平に配置させて、壁排水にも対応させることができるものである。
【符号の説明】
【0018】
3 洗面器
4 排水案内管
6 排水トラップ装置
7 トラップ形成管
8 V字形連結管(一次管)
8a 起立部
8b 傾斜部
9 排水導出管(二次管)
9a 傾斜部
9b 垂直部
9c 曲がり部
9d 凹部
9e 絞り部
91 傾斜壁面
92 垂直壁面
93 連続傾斜面
94 垂下面
95 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水路内に、下傾状の傾斜部と、その下流に垂下状の垂直部を有する排水トラップ装置において、
前記傾斜部と前記垂直部の交わる部分の内側に、前記傾斜部の傾斜角が前記垂直部内まで連続する連続傾斜面を設けて前記排水路内に絞り部を形成させた
ことを特徴とする排水トラップ装置。
【請求項2】
前記絞り部を、
前記連続傾斜面と、該連続傾斜面の下端から略垂下状をなす垂下面と、該垂下面の下端から外方向へ略水平に延びる水平面から構成される凹部により形成することを特徴とする請求項1に記載の排水トラップ装置。
【請求項3】
前記傾斜部と前記垂直部が、
45°で下傾する一次管と、該一次管の下流側に接続され135°の曲がり部を有する二次管とからなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水トラップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−222890(P2010−222890A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72929(P2009−72929)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(000157212)丸一株式会社 (158)
【Fターム(参考)】