説明

排水トラップ

【課題】口径の小さな排水トラップにおいて、封水部を有する封水構造を含めて取り外し可能な構成にして、臭気漏れを防止し、全体の洗浄を容易とする。
【解決手段】流し台のシンクの底部に組み付け可能で、上面を開口した有底筒状体であるタンクの少なくとも底部に排出管を設けてなるトラップ本体と、このトラップ本体に密に着脱可能とした封水構造体からなる排水トラップであって、封水構造体は、有底筒状体の側壁の中間部に排水窓を設けてこの排水窓より下方を封水部としたカップと、下部を前記カップの封水部に進入した位置でこのカップの内側に着脱可能に係着する防臭管とを一体に組み付けて構成した。そして、封水構造体において、防臭管に環状の防臭パッキンを取り付けるとともに、防臭管の上端開口縁に鍔部を形成し、該鍔部をトラップ本体に設けた段差部に係着して、封水構造体を密にトラップ本体に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、封水部を有する排水トラップにおいて、トラップ本体に対する封水構造の組み付け部分からの臭気漏れを防止すると共に、封水構造全体を着脱可能として、分解、洗浄を容易とした排水トラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラップ本体に排水パイプを挿入固定した二重構造の排水トラップは、例えば特許文献1により公知である。即ち、トラップ本体は上面を流し台等と合致する排水口として開口した有底筒状であり、その側壁の中途に排水部を設けることで、排水部以下を封水部としたものである。また、排水パイプは上部においてトラップ本体の排水口をカバーするテーパー部と、下部において封水部に進入するパイプ部分とを連設した漏斗状に成型される。そして、排水パイプは、その上部に適宜設けたフランジ状の係合部をトラップ本体の上部内周に適宜設けた段差部に係合させるなどして、トラップ本体に組み付けられるものである。
【0003】
この二重管構造の排水トラップによれば、通常使用時において、排水パイプを介して流水する洗浄水等は、封水部がオーバーフローした段階でトラップ本体の排水部から流出する。また、トラップ本体の上面開口(排水口)は排水パイプの上部と合致し、なおかつ、排水パイプの下部は封水部によって閉塞されているため、トラップ本体で発生した臭気が排水パイプを連通して外部に漏れることがない。
【0004】
特許文献1では、排水パイプのフランジをトラップ本体の段差部に載せているだけであり、シール部の機能もフランジと段差部の接触面を封止するに過ぎない。つまり、この構造では、フランジの周縁から臭気が漏れ出しやすく、特に成型精度が悪い、或いは使用中の振動等によって、排水パイプの組み付け位置がずれると、トラップ本体との間に隙間が生じやすく、臭気漏れを完全に防止することは困難であった。
【0005】
なお、特許文献1にはシール部が具体的にどのような物であるかは説明されていないが、一般的にOリングを使用することが多いから、特許文献1においても適用すると考えられる。しかし、Oリングは密封性に優れる反面、非常に高い弾性を有するから、組み付けに相当の力が必要となるし、反対に、組み付けたものは容易に解除できない。
【0006】
一方、排水トラップは、トラップ本体のぬめり取りなど、メンテナンス性を考えると、排水パイプは容易に取り外しできることが好ましい。そこで、本出願人は、特許文献2に開示された排水トラップを提案している。
【0007】
この特許文献2における排水トラップは、トラップ本体と漏斗状の排水パイプとからなる排水トラップにおいて、トラップ本体の内周壁上部には段差部を形成すると共に、排水パイプの外周壁には前記段差部を気密可能に閉塞するリップを少なくとも一つ有する環状パッキンを設けている。
【0008】
この構造の排水トラップによれば、トラップ本体と排水パイプの組み付け部にOリングよりも変形能に優れたリップつきの環状パッキンを設けたので、組み付け部からの臭気漏れを防止できると共に、排水パイプの分解能も併有し、メンテナンス性に優れた排水トラップとすることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−97831号公報
【特許文献2】特開2007−205098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2における排水トラップを含むこの種の排水トラップの多くは、排水パイプ(特許文献1ではトラップカバー)を取り外して洗浄することは可能であるが、封水部を有するトラップ本体は流し台に固定されており、これを取り外して洗浄することはできなかった。そのため、封水部に滞留した水を何らかの手段で取り除いてから洗浄する必要があり、該部の洗浄に非常な時間と労力を要していた。特に、近年採用されつつある口径の比較的小さな排水トラップにおいて、顕著な不都合が生じていた。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑み、封水部を有する封水構造を含めて取り外し可能な構成にして、臭気漏れを防止すると共に、全体の洗浄が容易な排水トラップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、排水トラップの構成として、流し台のシンクの底部に組み付け可能で、上面を開口した有底筒状体であるタンクの少なくとも底部に排出管を設けてなるトラップ本体と、このトラップ本体に密に着脱可能とした封水構造体からなる排水トラップであって、前記封水構造体は、有底筒状体の側壁の中間部に排水窓を設けてこの排水窓より下方を封水部としたカップと、下部を前記カップの封水部に進入した位置でこのカップの内側に着脱可能に係着する防臭管とを一体に組み付けて構成するという手段を採用した。
【0013】
そして、上記封水構造体において、上記防臭管に環状の防臭パッキンを取り付けるとともに、上記防臭管の上端開口縁に鍔部を形成し、該鍔部をトラップ本体に設けた段差部に係着して、この封水構造体を密にトラップ本体に取り付けるようにするという手段を採用した。
【0014】
また、上記カップの上端開口にL字形の係止溝を設ける一方、上記防臭管の外周面に上記カップの係止溝に係入可能な係止突起を設け、その係止突起を前記係止溝に係入させて回転することで着脱可能に封水構造体を一体に組み付けるようにするという手段を採用した。
【0015】
また、上記タンクの底部には上記排出管側に向かって下がる傾斜を設けて水が滞留しないようにするという手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の本発明に係る排水トラップは、トラップ本体に対して封水構造体を着脱可能とすると共に、この封水構造体を構成するカップ及び防臭管も着脱自在に構成したので、封水部に溜まった水を容易に廃棄でき、トラップ本体、カップ、防臭管を、それぞれ個別に洗浄することが可能となった。そのため、排水トラップ全体を常に清浄に維持することができるという格別の効果が期待できるものである。
【0017】
また、封水構造体自体に封水構造を設けると共に、防臭管に防臭パッキンを取り付けているので、封水構造体をトラップ本体に密に取り付けることができ、防臭管からの臭気の漏れを確実に防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る排水トラップの一例を示す断面図である。
【図2】排水トラップにおける封水構造体を分解した態様を示す説明図で、(A)は使用状態を示し、(B)は封水構造体を取り外した状態、(C)は封水構造体をさらにカップと防臭管に分解した状態を示すものである。
【図3】カップの例を示すもので、(A)は平面図、(B)はA−A線断面図、(C)はB−B線断面図、(D)はC−C線断面図である。
【図4】防臭管の例を示すもので、(A)は平面図 (B)はA−A線断面図、(C)は側面図、(D)は底面図である。
【図5】防臭パッキンの例を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)はA−A線断面図である。
【図6】タンクの例を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【図7】ロックナットの例を示す図である。
【図8】マウスピースの例を示す図である。
【図9】口金の例を示す図である。
【図10】Y字パッキンの例を示す図である。
【図11】ファスナーの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る排水トラップの好ましい実施の形態を、添付した図面に従って説明する。図1の断面図において、10は流し台のシンク(S)の底部に組み付けたトラップ本体、20はトラップ本体10の内側に取り付けるカップ、30はカップ20に取り付ける防臭管である。このカップ20と防臭管30は一体に組み付けることができ、封水構造体40を構成する。なお、50は排水トラップの開口部分に載置する目皿で、排水口の平面態様も併せて図示している。また、トラップ本体10には、図示しない下水管につながるジョイントエルボ(J)を取り付けている。而して、カップ20及び防臭管30からなる封水構造体40は、図2に示すように簡単に脱着できるようになっている。
【0020】
上記構成をさらに詳細に説明すると、トラップ本体10は、流し台等に組み付け可能なマウスピース11と、それに取付ける口金12と、マウスピース11の止水用Y字パッキン13と、前記マウスピース11にネジ部14で螺合されるロックナット15と、ファスナー16を介して前記ロックナット15に取り付けるタンク17とからなり、これらが一体化して流し台のシンク(S)に取り付けられている。個々の部材の具体な構成例は、図6から図11に示しているが、これらに限定するものではなくその構成は設計的事項であるが、特に重要なのはタンク17の構成である。なお、18、19はOリングで、各部材間を水密に維持するものである。
【0021】
タンク17は、図1及び図6に示すように上面開口の有底の筒状であり、その側壁17aの一部から底部17bにかけて排出管17cを斜め下方に突出して設けてなり、この排出管17cの先端には下水管(図示せず)と連通するジョイントエルボ(J)を取り付け可能としている。また、タンク17の底部17bは上記排出管17c側に向かって下がる傾斜を設けて底部17bに水が滞留しないようになっている。このタンク17は、上述するように、ファスナー16を介してロックナット15に取り付ける。なお、上記排出管17cは、少なくともタンク17の底部17bに設ければよく、側壁17aを含む必要はない。即ち、底部17bから直接水が排出管17cに流れてタンク17内に水が滞留しないことが肝要である。
【0022】
カップ20は、図3に示すように有底の筒状であり、上記トラップ本体10のマウスピース11にほぼ隙間なく挿入可能なようにその外径が設定されている。このカップ20は、その側壁の中間部に複数の排水窓20a、20a・・・を有し、排水窓20aより下方が封水部20bとして機能し、流入してくる洗浄水は、封水部20bがオーバーフローした段階で上記排水窓20aから流出して上記タンク17に落下する。また、このカップ20の上端開口には、一対のL字形の係止溝20cが形成され、下述する防臭管30の外周面に設けた係止突起30aを係入可能としている。なお、カップ20の外周面の上記排水窓20aの開口上端縁と同じ高さ位置には複数の突起20d、20d・・・を設けている。これは、カップ20を上記トラップ本体10のマウスピース11の内周面に取り付けたときに、該突起20dがマウスピース11の下端縁で係止され、排水窓20aの開口上縁が前記マウスピース11の下端縁より下に位置して、排水窓20aが完全に露出し、確実に排水できるようにするためである。
【0023】
防臭管30は、図4に示すように、上記カップ20にほぼ隙間なく挿入可能な外径を有し、その外周面に上記カップ20の係止溝20cに係入可能な係止突起30aを突設した漏斗部30bと、上記カップ20の封水部20bに進入するパイプ部30cとを連接してなる。また、30dは防臭管30の上端開口縁に延設した鍔部であり、上記マウスピース11の上端縁内側に設ける段差部11aに係着可能としている。また、30eは防臭パッキン31を係着するパッキン溝である。防臭パッキン31は、図5に示すように、シリコンゴム等の弾性素材からなる環状パッキンであり、外周にスリット31aを設けると共に、その上下にリップ31b、31dを形成したものであって、マウスピース11に密着した状態とし、該部からの臭気漏れを防止するものである。なお、この防臭パッキン31としては、例えば先行技術文献として提示した特開2007−205098公報に開示したものを採用することができるが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0024】
この防臭管30は、その係止突起30aをカップ20の係止溝20cに係入させて回転することでカップ20に着脱自在に固定することができ、両者は一体となって封水構造体40を構成する。なお、30fは防臭管30を回転操作する際に手指や工具の引っ掛かりとして機能する羽根である。
【0025】
上記構成において、このようにカップ20と防臭管30を組み合わせた封水構造体40を上記トラップ本体10へ取り付けるには、全体をトラップ本体10の開口部分に嵌入させるだけでよい。このとき、防臭管30の上端の鍔部30dがトラップ本体10のマウスピース11に設けた段差部11aに係着して固定されると共に、防臭パッキン31によって密の状態となり、トラップ本体10からの臭気漏れを確実に防止する。また、防水管30のパイプ部30cが封水部20bに進入しているので、カップ20の封水部20bに水が滞留して、下流の下水管からの臭気が漏出することもない。
【0026】
次に、洗浄の際には、カップ20と防臭管30を組み合わせた封水構造体40の全体をトラップ本体10から真上に引き出す。このとき、カップ20の封水部20bに洗浄水が滞留しているが、トラップ本体10のタンク17の底部17bは上記排出管17c側に向かって下がる傾斜を設けているので、従来のようにトラップ本体10に滞留水は残らない。そして、トラップ本体10のタンク17の内面は完全に露出し、容易に洗浄することができる。
【0027】
一方、引き出したカップ20と防臭管30からなる封水構造体40は、係止突起30aと係止溝20cとの係着を解除すれば容易に分解できるので、個々に洗浄が可能である。即ち、カップ20の封水部20bに貯留された洗浄水は容易に廃棄でき、全体を洗浄できる。また、防臭管30も同様に全体を洗浄できる。
【0028】
従って、上記構成の排水トラップによれば、トラップ本体10に対して封水構造体40を着脱自在とし、さらに封水構造体40を構成するカップ20及び防臭管30も着脱自在としたので、トラップ本体10、カップ20、防臭管30を、個々に容易に洗浄することができ、排水トラップを常に清浄な状態に維持することが可能となる。又、防臭パッキン31と封水により臭気の漏出を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0029】
10 トラップ本体
11 マウスピース
12 口金
13 Y字パッキン
14 ネジ部
15 ロックナット
16 ファスナー
17 タンク
17a 側壁
17b 底部
17c 排出管
20 カップ
20a 排水窓
20b 封水部
20c 係止溝
30 防臭管
30a 係止突起
30b 漏斗部
30c パイプ部
30d 鍔部
30e パッキン溝
30f 羽根
31 防臭パッキン
40 封水構造体
50 目皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流し台のシンクの底部に組み付け可能で、上面を開口した有底筒状体であるタンクの少なくとも底部に排出管を設けてなるトラップ本体と、このトラップ本体に密に着脱可能とした封水構造体からなる排水トラップであって、前記封水構造体は、有底筒状体の側壁の中間部に排水窓を設けてこの排水窓より下方を封水部としたカップと、下部を前記カップの封水部に進入した位置でこのカップの内側に着脱可能に係着する防臭管とを一体に組み付けて構成したものであることを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
上記封水構造体において、上記防臭管に環状の防臭パッキンを取り付けるとともに、上記防臭管の上端開口縁に鍔部を形成し、該鍔部をトラップ本体に設けた段差部に係着して、この封水構造体を密にトラップ本体に取り付けるようにした請求項1記載の排水トラップ。
【請求項3】
上記カップの上端開口にL字形の係止溝を設ける一方、上記防臭管の外周面に上記カップの係止溝に係入可能な係止突起を設け、その係止突起を前記係止溝に係入させて回転することで着脱可能に封水構造体を一体に組み付けるようにした請求項1又は請求項2記載の排水トラップ。
【請求項4】
上記タンクの底部には上記排出管側に向かって下がる傾斜を設けて水が滞留しないようにした請求項1から請求項3のいずれか1項記載の排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−41789(P2012−41789A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185912(P2010−185912)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(591092523)株式会社伸晃 (18)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】