説明

排水処理システム

【課題】排水を効率的に浄化処理することができる排水処理システムを提供する。
【解決手段】排水処理システム100は、排水が流入する排水流入槽1と、排水に気泡を発生させる泡沫分離装置2と、排水流入槽1において流入した排水を冷却する冷却槽3と、排水の量を計測する流量計4と、粗い汚濁物質を除去するストレーナ5と、オゾンを発生させるオゾン発生装置6と、排水に対してオゾンを溶解させて処理水を生成する溶解処理部7と、溶解処理部7から流出した処理水を減圧する減圧装置8と、減圧した処理水に残存するオゾンを分解する開放タンク部9と、処理水の水質を測定し、処理水の水質の基準に応じて排水を本システム1の外部に放流するかあるいは排水流入槽1に再度流入させる処理水タンク10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の浄化処理にかかる排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排水を浄化処理する技術が多く知られており、それらの中にはオゾンを利用して排水を浄化処理する技術がある。オゾンには強い酸化力があり、該酸化力によって排水に含まれる有機物質や細菌などを酸化分解することにより、排水の殺菌、脱色、脱臭などの浄化処理を行うというものである。このような排水の浄化処理に関する技術が、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1には、オゾンの有効利用及びそれに伴うコストの低減を図るため、オゾン接触槽において酸化分解しなかったオゾンを回収して再利用する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−122105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、オゾンを再利用することにより、排水の浄化処理における資源の有効利用が図られる一方、近年では、排水の浄化処理を効率化させることによって排水の浄化処理にかかるロスを低減し、環境の保全を図ることが強く求められている。
【0006】
この要請に対して、特許文献1に開示される技術は、オゾン接触槽で酸化分解しなかったオゾンを再利用し得るものの、排水の浄化処理における効率化という点においては上記の要請を十分に満たすものではなかった。
【0007】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、排水を効率的に浄化処理することができる排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水処理システムは、上記の目的を達成するために、排水が流入する排水流入部と、オゾンを発生させるオゾン発生部と、排水流入部から流出した排水に対して、オゾン発生部で発生したオゾンを溶解させて処理水を生成する溶解処理部と、溶解処理部から流出した処理水を減圧する減圧装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、溶解処理部から流出した処理水を減圧することによって処理水における発泡を抑制するようにしたため、オゾンで分解された汚濁物質が処理水の発泡によって再び気泡に吸着することを防止することができる。
【0010】
また、溶解処理部は、並列に設けられた複数の溶解タンクからなるのが好ましい。これによれば、排水とオゾンとにおける接触面積を大きくすることができるため、オゾンを効率的に溶解させることができる。
【0011】
また、減圧装置は、処理水が通過する方向に直交する態様で設けられた複数の孔を有する多孔板を少なくとも一枚備え、処理水を多孔板の孔に通過させることにより減圧するのが好ましい。これによれば、簡易な構成で、処理水を減圧することができる。
【0012】
また、多孔板は、処理水が通過する方向に直列に複数枚設けられているのが好ましい。これによれば、多孔板ごとに徐々に処理水を減圧することができる。
【0013】
また、多孔板は、隣接する多孔板同士の孔が重ならない態様で設けられているのが好ましい。これによれば、処理水が通過する流路の各々を屈曲させることができるため、処理水をより効果的に減圧することができる。
【0014】
また、多孔板と直交する方向において多孔板の各々を貫通する軸部材を備え、隣接する同一の多孔板同士が軸部材について回転位相差を有する態様で設けられているのが好ましい。これによれば、隣接する多孔板同士が同一であるため、各々が軸部材について回転位相差を有するようにさえすれば、隣接する同一の多孔板同士の各孔が排水の通過する方向において確実に重ならないようにすることができ、処理水の流路の全てを容易に屈曲させることができる。従って、各多孔板ごとに設けられる孔について複雑に設計及び開発する必要がなく、また、各多孔板ごとに異なる製造工程で形成する必要がない。すなわち、多孔板を容易に製造することができるとともに、コストを抑えることができる。
【0015】
また、溶解処理部の前工程または後工程に設けられ、排水に気泡を発生させることにより該気泡に汚濁物質を吸着させる泡沫分離装置を備えるのが好ましい。これによれば、排水に発生させた気泡の界面に汚濁物質を吸着させることにより、排水から汚濁物質を分離させるため、排水に汚濁物質がなくなり、溶解処理部におけるオゾンの溶解にかかる負荷を軽減することができる。
【0016】
また、溶解処理部の前工程に設けられ、排水を冷却する冷却槽を備えるのが好ましい。これによれば、排水が冷却されることにより、オゾンを排水に容易に溶解させることができる。
【0017】
また、減圧装置の後工程に設けられ、処理水に残存するオゾンを分解する開放タンク部を備えるのが好ましい。これによれば、処理水に残存したオゾンを分解するため、処理水にはオゾンが残存しなくなり、処理水を安全なものにすることができる。
【0018】
また、減圧装置の後工程に設けられ、処理水の水質を測定し、処理水の水質が基準を満たしている場合には排水処理システム外に放流する一方、処理水の水質が基準を満たしていない場合には排水流入部に流入させる処理水タンク部を備えるのが好ましい。これによれば、水質の基準を満たした処理水のみを放流し、水質の基準を満たしていない処理水を再度分解処理するようにしたため、安全な処理水のみを選別して放流することができる。
【0019】
また、溶解処理部の前工程に設けられ、凝集分離剤によって排水中の有機物質を凝集させる凝集分離槽を備えるのが好ましい。これによれば、凝集分離剤によって有機物質を凝集させることにより、固形化された有機物質が排水から除去されるため、溶解処理部におけるオゾンの溶解処理にかかる負荷を軽減することができる。
【0020】
また、凝集分離槽は、排水を撹拌する撹拌機を備えるのが好ましい。これによれば、凝集分離剤が混入された排水を撹拌することによって、排水中の有機物質を効率的に凝集することができる。
【0021】
また、凝集分離槽は、微細な気泡を発生させるマイクロバブル発生装置を備えるのが好ましい。これによれば、少量の凝集分離剤によって排水中の有機物質を細かく凝集し、凝集した有機物質を微細な気泡によって浮上させ得るため、凝集分離剤の使用量を削減することができる。
【0022】
また、溶解処理部の前工程に設けられ、排水を脱気する真空タンクを備えるのが好ましい。これによれば、排水を脱気することによって、オゾンと化学反応し得るすべての元素(窒素や酸素など)が排水中から除去されるため、溶解処理部におけるオゾンの溶解処理の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶解処理部から流出した処理水を減圧することによって処理水における発泡を抑制するようにしたため、オゾンで分解された汚濁物質が処理水の発泡によって気泡に再び吸着することを防止することができる。このことにより、気泡に吸着した汚濁物質を除去するなどといった手間を省くことができるため、排水を効率的に浄化処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態の排水処理システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【図2】減圧装置を示す斜視図である。
【図3】減圧装置の長さ方向における断面図である。
【図4】図3に示すIV−IVの線矢視図である。
【図5】第2の実施形態の排水処理システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【図6】第3の実施形態の排水処理システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る排水処理システムの第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。この実施形態に係る排水処理システム(以下、本システム100という)は、図1に示すように、家庭排水や産業排水等の各種排水が流入する排水流入槽1と、排水に気泡を発生させる泡沫分離装置2と、排水流入槽1から流出された排水を冷却する冷却槽3と、流路を流れる排水の量を計測する流量計4と、粗い汚濁物質を除去するストレーナ(図1中において「ST」と示す)5と、オゾンを発生させるオゾン発生装置6と、排水に対してオゾンを溶解させて処理水を生成する溶解処理部7と、溶解処理部7から流出した処理水を減圧する減圧装置8と、減圧した処理水に残存するオゾンを分解する開放タンク部9と、処理水の水質を測定し、処理水の水質の基準に応じて本システム100外に放流するかあるいは排水流入槽1に再度流入させる処理水タンク10とを備える。
【0026】
本システム100においては、排水が各構成を順に経ることにより、排水が浄化処理されて、本システム100外へと放流する。図1中において実線により示される矢印は、排水及び排水が浄化処理された処理水の流路を示しており、破線により示される矢印は、オゾンを搬送する経路を示している。また、流路の要所には加圧ポンプP1〜P5が設けられており、この加圧ポンプP1〜P5によって加圧されることにより、各構成間に示される矢印の方向に排水、排水が浄化処理された処理水及びオゾンが送られる。なお、以下の説明において、溶解処理部7により処理される前の水を「排水」、処理された後の水を「処理水」と称する。
【0027】
前記排水流入槽1は、下水道などに流出する直前の排水が流入し、該排水を貯留する。ここにおける排水には、水に溶け込んでいる有機物質や細菌などと、水に溶けていない汚濁物質などとが含まれている。この排水流入槽1において貯留された排水は、加圧ポンプP1により、次工程の泡沫分離装置2へと送られる。
【0028】
前記泡沫分離装置2は、排水に気泡を発生させることにより該気泡に汚濁物質を吸着させる装置である。この泡沫分離装置2によって排水から汚濁物質が除去される。
【0029】
一般的に、水と気泡との境目(気液界面)に存在する数μmの薄膜(マイクロレイヤ)は、蛋白質、脂質などの様々な物質を吸着するということが知られている。この気液界面に吸着した汚濁物質が発泡性を有する場合、水面上において消えにくい泡の層(以下「安定泡沫」という)が形成される。従って、この泡沫分離装置2により排水に気泡を発生させることによって形成された安定泡沫を除去することにより、排水中における汚濁物質を除去することができる。
【0030】
また、オゾンによる浄化処理(溶解処理部7での処理)を行う前工程において、泡沫分離装置2によって汚濁物質を除去しておくことにより、オゾンの溶解における負荷を低減することができるため、排水の浄化処理にかかる時間を短縮することができ、排水の浄化処理を効率的に行うことが可能になる。なお、泡沫分離装置2により発生した汚濁物質を所定時間以上放置して再び水溶液化したあと、本システム100により分解処理してもよい。
【0031】
前記冷却槽3は、泡沫分離装置2において汚濁物質が除去された排水を冷却する。ここにおいては排水を10℃程度まで冷却するが、該冷却温度は適宜変更されてもよい。このようにして、排水を冷却することにより、後述の溶解処理部7におけるオゾンの溶解にかかる負荷を軽減することが可能になる。この冷却槽3において冷却された排水は、加圧ポンプP2により、次工程へと送られる。
【0032】
前記流量計4は、冷却装置3によって冷却された排水の流量を計測する。また、ここにおいて計測された排水の流量値は、後述のオゾン発生装置6に送信される。これにより、溶解処理部7においてオゾンを溶解する際に必要なオゾン量を適切に調整することができる。
【0033】
前記ストレーナ5は、所定の粗さを有する編み部材によって濾過し、汚濁物質を除去する装置である。このストレーナ5を経た排水は、加圧ポンプP2により、次工程の溶解処理部7へと送られる。なお、ストレーナ5を経た段階では、泡沫分離装置2及びストレーナ5によって、水に溶けていない汚濁物質が排水から略除去されている。
【0034】
前記オゾン発生装置6は、流量計4から送信された排水の流量値に基づいて、必要な量のオゾンを発生する。また、オゾン発生装置6は、発生したオゾンを後述の溶解処理部7に送り込む。なお、ここにおけるオゾンの送り込みは、ストレーナ5から流出した排水とともになされるが、直接溶解処理部7に送り込むようにしてもよい。
【0035】
前記溶解処理部7は、ストレーナ5からの排水に対して、オゾン発生装置6で発生したオゾンを溶解させて処理水を生成する。溶解処理部7は、2〜5気圧という高い圧力をかけることにより、排水にオゾンを溶解させる溶解タンク71〜73を並列に備えている。これら3つの溶解タンク71〜73は、いずれも同一の構成を有しており、排水及びオゾンを同一の環境下で収容するとともに、同一の条件で排水にオゾンを溶解する処理を行う。
【0036】
ここにおいて、溶解タンク71〜73が並列であることより、排水とオゾンとの接触面積を大きくすることが可能であるため、オゾンを排水に効率的に溶解させることができる。また、例えば、溶解タンク71に不具合が生じた場合でも、正常な溶解タンク72、73を継続して稼働させ続けることができるため、いずれかの溶解タンクに不具合が生じても効率的な対応をすることが可能である。また、このことより、個別にメンテナンスを行うことが可能である。
【0037】
なお、溶解タンク71〜73において排水にオゾンが溶解されると、オゾンの酸化力により排水に溶け込んでいる有機物質や細菌などが酸化分解されて、殺菌、脱色、脱臭などといった浄化処理が行われる。ここにおいては、オゾンが排水中の有機物質や細菌などから電子を奪うことによって、電子を奪われた有機物質は電気吸引力を失い、低分子状態に分解される。この溶解処理部7において処理された処理水は次工程に送られる。
【0038】
前記減圧装置8は、溶解処理部7が流出した処理水を通過させる際に減圧する。ここにおける減圧装置8は、図2に示すように、中間部が径大に形成された管形状を有しており、一方端側に設けられ、溶解処理部7からの処理水が流入する流入口81と、流入口81から流入した処理水が通過する減圧部82と、減圧部82を通過した処理水が流出する流出部83とを備えている。なお、図2中に示す矢印の方向に処理水は流れる。
【0039】
前記減圧部82は、流入口81よりも径大に形成されているため、流入部81から流入した処理水にかかる流圧が減圧部82において減少する。また、この減圧部82は、図3に示すように、内部において多孔板群821を備えている。
【0040】
前記多孔板群821は、処理水が通過する方向に直交する態様で各々設けられた複数の孔を有する10枚の多孔板821a〜821jと、各多孔板821a〜821jの直交方向(処理水が通過する方向)において貫通する態様で多孔板821a〜821jの各々を支持する軸部材822とを備える。多孔板821a〜821jは、各々同一の構成を有している。ここで、例えば図4において実線で示される多孔板821cに着目すると、多孔板821cは、一点鎖線で示した減圧部82の内壁と当接し得る円盤形状で形成されており、周縁部において同一の孔が周方向に等間隔で計8箇所に穿設されている。他の9枚の多孔板もこの多孔板821cと同様の構成である。また、図3に示すように、軸部材822が各多孔板821a〜821jの中心を貫通して、多孔板821a〜821jを直列に等間隔で支持している。
【0041】
このように構成された多孔板群821を有する減圧装置8においては、処理水を多孔板821a〜821jにおける各孔に通過させることにより、各多孔板821a〜821jの孔ではない部分が流路の障壁としてそれぞれ作用するため、処理水を徐々に減圧させることができる。このことにより、処理水の発泡を抑制することができる。従って、オゾンで分解された汚濁物質が処理水の発泡によって再び気泡に吸着することを防止することができる。
【0042】
また、上記の多孔板群821において、多孔板821a〜821jは、隣接する多孔板同士の孔が重ならない態様で設けられている。こうすることにより、処理水が通過する流路の各々が屈曲するため、処理水を効果的に減圧することができる。この実施形態においては、多孔板821a〜821jにおいて隣接する同一の多孔板同士の孔が処理水の通過する方向に設けられた軸部材822について回転位相差θを有する態様で設けられている。ここにおいて、隣接する多孔板821c及び多孔板821d(破線表記)に着目すると、図4に示すように、多孔板821c及び多孔板821dは、各々の有する孔821cH及び孔821dHが、処理水の通過する方向に設けられた軸部材822について回転位相差θを有する態様で設けられている。このことにより、各孔821cH及び孔821dHは処理水の通過する方向において重ならない。また、その他の多孔板においても同様に構成されている。従って、各多孔板821a〜821jが軸部材822について各々回転位相差θを有しているため、隣接する各多孔板同士の各孔が排水の通過する方向において確実に重ならなくなる。従って、処理水の流路の全てを容易に屈曲させることができ、より処理水を効率よく減圧する。また、各多孔板821a〜821jが同一構成であるため、製造が容易であるとともに、製造コストを抑えることができる。なお、ここにおける回転位相差θは適宜設定される。
【0043】
また、上記した減圧装置8は、図1に示すように、減圧装置8を通過した処理水に含まれるオゾンの濃度を計測するオゾン濃度計8aを備えている。このオゾン濃度計8aは処理水に残存するオゾンの濃度を計測し、後述する開放タンク部9のオゾン安全装置9aに該オゾン濃度の測定値を送信する。
【0044】
なお、減圧装置8により減圧された処理水は、次工程の開放タンク部9へと送られる。
【0045】
前記開放タンク部9は、密閉構造を有し、減圧装置8により減圧された処理水を貯留する。また、開放タンク部9は、貯留している処理水内に残存するオゾンを分解するオゾン安全装置9aを備える。このオゾン安全装置9aが処理水内のオゾンを分解して処理水からオゾンを除去することによって処理水を安全な水にするため、本システム100外へ処理水を放流することが可能になる。このようにして残存するオゾンが除去された処理水は、加圧ポンプP3により、次工程の処理水タンク10に送られる。
【0046】
前記処理水タンク10は、開放タンク部9から流出された処理水を貯留する。この処理水タンク10は、該処理水の水質を測定する水質測定器10aを備えており、この水質測定器10aにより測定された処理水の水質が予め設定された水質の基準を満たしている場合には本システム100外に放流する。一方、処理水の水質が予め設定された水質の基準を超えた場合には、加圧ポンプP4により、排水流入部1に流入させて再度浄化処理させる。従って、安全である処理水のみを確実に本システム100から放流することができる。
【0047】
以上より、上記本システム100によれば、溶解処理部7から流出した処理水を減圧装置8により減圧することによって処理水における発泡を抑制するようにしたため、オゾンで分解された汚濁物質が処理水の発泡によって再び気泡に吸着することを防止することができる。このことにより、気泡に吸着した汚濁物質を除去するなどといった手間を省くことができるため、排水を効率的に浄化処理することが可能になる。
【0048】
なお、上記第1の実施形態において、多孔板821a〜821jが減圧装置8の内壁と当接する場合について説明したが、当接していなくてもよい。
【0049】
また、多孔板が10枚設けられる場合について説明したが、1〜9枚でもよいし、11枚以上でもよい。
【0050】
また、多孔板が処理水の通過する方向に直交する態様で設けられる場合について説明したが、直交でなく適宜傾斜している態様で設けられてもよい。
【0051】
また、隣接する多孔板同士の孔が重ならない場合について説明したが、適宜重なるようにしてもよい。また、孔の形状、数量、配置なども適宜変更してもよい。
【0052】
また、各多孔板821a〜821jは、隣接する多孔板同士における回転位相差が全てθである場合について説明したが、各多孔板同士において回転位相差が異なっていてもよい。
【0053】
また、複数の多孔板が軸部材により等間隔で支持される場合について説明したが、等間隔でなくてもよい。
【0054】
また、軸部材により多孔板を支持する場合について説明したが、軸部材を用いなくてもよい。要は、複数の多孔板が処理水の通過する方向に対して直交する態様で直列に設けられればよい。
【0055】
また、溶解タンクが3つである場合について説明したが、1つ、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0056】
また、泡沫分離装置2を溶解処理部7の前工程に設けるものとしたが、溶解処理部7の後工程に設けるものとしてもよい。
【0057】
また、オゾン安全装置でオゾンを分解するものとしたが、オゾン安全装置を設けないものとしてもよい。この場合、オゾンを装置外の外気に排出してもよいし、あるいはオゾンを加圧ポンプP5によって溶解処理部7の前工程へと送ることによりオゾンを再利用してもよい。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る排水処理システムの第2の実施形態について図5を参照しつつ説明する。
【0059】
本実施形態に係る排水処理システム200は、第1実施形態の泡沫分離槽2に代えて、凝集分離槽11を備える場合について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成については説明を省略し、同一の符号を付すこととする。
【0060】
前記凝集分離槽11は、図5に示すように、排水流入槽1と冷却槽3との間の工程に設けられ、排水を撹拌させる撹拌機111と、微細な気泡を発生させるマイクロバブル発生装置112とを備えている。
【0061】
この凝集分離槽11は、排水流入槽1から流入された排水に凝集分離剤が混入されて、撹拌機111によって排水を撹拌する。これにより、排水中のデンプン、油分、蛋白質などの有機物質を効率的に凝集して、いわゆる固形の「フロック」の状態にすることが可能である。このため、固形化された有機物質が排水から除去されるため、溶解処理部7におけるオゾンの溶解処理にかかる負荷を軽減することができる。したがって、ポンプP5によって開放タンク9から処理水を溶解処理部7に循環させてオゾンの溶解処理を行う回数を減らすことができるため、排水処理にかかるエネルギーコストを低減することが可能になる。
【0062】
また、凝集分離槽11においては、少ない凝集分離剤で排水中の有機物質を小さく凝集し、凝集した有機物質をマイクロバブル発生装置112が発生する微細な気泡によって浮上させる。また、有機物質が凝集分離される前後の排水についてAOP(促進酸化)処理を併用してもよい。これにより凝集分離剤の使用量を削減し、エネルギーコストおよび産業廃棄物処理費用を削減することが期待される。
【0063】
なお、上記第2実施形態において、凝集分離槽11が排水流入槽1と冷却槽3との間の工程に設けられる場合について説明したが、溶解処理部7の前工程であればいずれの位置に設けられてもよい。
【0064】
また、マイクロバブル発生装置112が発生する気泡(ガス)には、オゾンが含まれるようにしてもよい。これにより、凝集分離槽11での凝集作業中に発生する臭気を抑えることができる。あるいは、凝集分離槽11においてオゾンを発生させる散気装置を設け、該散気装置によってオゾンを発生させるようにしてもよい。
【0065】
また、凝集分離槽11が撹拌機111およびマイクロバブル発生装置112の両者を備える場合について説明したが、いずれか一方のみでもよい。
【0066】
また、凝集分離槽11が第1実施形態の泡沫分離槽2に代えて設けられる場合について説明したが、凝集分離槽11と泡沫分離槽2を併用するようにしてもよい。この場合、凝集分離槽11と泡沫分離槽2の順はどちらからでもよい。
【0067】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る排水処理システムの第3の実施形態について図6を参照しつつ説明する。
【0068】
本実施形態に係る排水処理システム300は、第1実施形態の排水処理システム100に排水を脱気する真空タンク12を備える場合について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成については説明を省略し、同一の符号を付すこととする。
【0069】
前記真空タンク12は、図6に示すように、泡沫分離槽2と冷却槽3の間の工程に設けられており、タンクの内部を負圧状態にし、泡沫分離槽2から流入された排水を脱気するものである。真空タンク12において排水を脱気することにより、排水中のオゾンと化学反応し得る窒素や酸素などのすべての元素が除去される。これらの元素は、後工程の溶解処理部7において溶解させるオゾンと化学反応し得ることから、真空タンク12においてそれらの元素を除去しておくことで、溶解処理部7において溶解するオゾンのロスを低減することができるため、溶解処理部7におけるオゾンの溶解処理の効率を高めることが可能となる。
【0070】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
100…排水処理システム
2…泡沫分離装置
3…冷却槽
4…流量計
5…ストレーナ
6…オゾン発生装置6
7…溶解処理部
71〜73…溶解タンク
8…減圧装置
821…多孔板群
821a〜821j…多孔板
822…軸部材
9…開放タンク部
9a…オゾン安全装置
10…処理水タンク
10a…水質測定器
11…凝集分離槽
111…撹拌機
112…マイクロバブル発生装置
12…真空タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入する排水流入部と、
オゾンを発生させるオゾン発生部と、
前記排水流入部から流出した排水に対して、前記オゾン発生部で発生したオゾンを溶解させて処理水を生成する溶解処理部と、
前記溶解処理部から流出した処理水を減圧する減圧装置とを備えることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記溶解処理部は、並列に設けられた複数の溶解タンクからなる請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記減圧装置は、処理水が通過する方向に直交する態様で設けられた複数の孔を有する多孔板を少なくとも一枚備え、処理水を前記多孔板の孔に通過させることにより減圧する請求項1または請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記多孔板は、処理水が通過する方向に直列に複数枚設けられている請求項3に記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記多孔板は、隣接する多孔板同士の孔が重ならない態様で設けられている請求項4に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記多孔板と直交する方向において前記多孔板の各々を貫通する軸部材を備え、隣接する同一の多孔板同士が前記軸部材について回転位相差を有する態様で設けられている請求項5に記載の排水処理システム。
【請求項7】
前記溶解処理部の前工程または後工程に設けられ、排水に気泡を発生させることにより該気泡に汚濁物質を吸着させる泡沫分離装置を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項8】
前記溶解処理部の前工程に設けられ、排水を冷却する冷却槽を備える請求項1から請求項7のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項9】
前記減圧装置の後工程に設けられ、処理水に残存するオゾンを分解する開放タンク部を備える請求項1から請求項8のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項10】
前記減圧装置の後工程に設けられ、処理水の水質を測定し、処理水の水質が基準を満たしている場合には排水処理システム外に放流する一方、処理水の水質が基準を満たしていない場合には前記排水流入部に流入させる処理水タンク部を備える請求項1から請求項9のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項11】
前記溶解処理部の前工程に設けられ、凝集分離剤によって排水中の有機物質を凝集させる凝集分離槽を備える請求項1から請求項10のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項12】
前記凝集分離槽は、排水を撹拌する撹拌機を備える請求項11に記載の排水処理システム。
【請求項13】
前記凝集分離槽は、微細な気泡を発生させるマイクロバブル発生装置を備える請求項11または請求項12に記載の排水処理システム。
【請求項14】
前記溶解処理部の前工程に設けられ、排水を脱気する真空タンクを備える請求項1から請求項13のいずれかに記載の排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85973(P2013−85973A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225428(P2011−225428)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(511051801)新生和光株式会社 (2)
【Fターム(参考)】