説明

排水処理方法及び排水処理装置

【課題】排水処理全体の効率化と亜酸化窒素の発生量及び揮散量の低減とを両立させること。
【解決手段】排水処理装置Sが、転用槽61〜64の最下流近傍位置におけるORP値D1を計測し、ORP値D1が第1の所定範囲Dc1内にある転用槽を特定転用槽と判断し、特定転用槽内及びそれより上流側の転用槽内に散気装置16により空気を供給し、特定転用槽より下流側の転用槽内に供給する空気量を特定転用槽及びそれより上流側の転用槽内に供給する空気量よりも減少させる。これにより、下流槽では散気装置を低電力で稼働させることができるので、省エネルギー化を実現することができる。また、下流槽における亜酸化窒素の発生量や揮散量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素を含有する排水を生物処理する排水処理方法及び排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素を含有する排水(以下、窒素含有排水と略記)を生物処理する際、反応副生成物として亜酸化窒素ガス(NO)が発生することが知られている。亜酸化窒素ガスは温室効果ガスであり、その温室効果は二酸化炭素ガスの約310倍と非常に高い。また、亜酸化窒素ガスは、フロンガスと同様、成層圏のオゾン層を破壊するオゾン層破壊ガスとしても問題視されている。このため、窒素含有排水を生物処理する際、大気中への亜酸化窒素ガスの拡散を抑制することが地球環境保護の観点から急務となっている。なお、窒素含有排水としては、下水処理場の最初沈殿池より供給される原水、一般下水や汚水、し尿,工場排水,農業集落排水,漁業集落排水,養殖排水等を処理した排水や浄水原水等を例示できる。
【0003】
一般に、窒素含有排水を生物処理する方法(以下、排水処理方法と表記)は、硝化菌を利用して窒素含有排水中のアンモニア性窒素を酸化する硝化工程と、脱窒菌を利用して窒素含有排水中に含まれる窒素酸化物を還元する脱窒工程と、を含む(特許文献1参照)。硝化工程は、以下に示す化学反応式(1),(2)に従ってアンモニアが酸化されて亜硝酸となる工程と、以下に示す化学反応式(3)に従って亜硝酸が酸化されて硝酸となる工程と、を含む。
【0004】
NH+O+H+2e → NHOH+HO …(1)
NHOH+HO → NO+5H+4e …(2)
NO+0.5O → NO …(3)
【0005】
化学反応式(1),(2)は、本来的には1対の反応として連続的に進み、以下の化学反応式(4)に示すように余った電子が酸素に渡される。しかしながら、化学反応式(1)に従って生成されたNHOHの一部が化学反応式(2)の反応経路を経ることなく以下に示す化学反応式(5)に従って酸化されることによって、亜酸化窒素が生成されることがある。また、曝気量が不足して硝化工程に必要な酸素量を確保できない場合、反応が十分に進行せず、排水中にNOが蓄積し、以下に示す化学反応式(6),(7)の反応が生じ、硝化率が低下することによって、亜酸化窒素への転換率が上昇することがある。
【0006】
0.5O+2H+2e → HO …(4)
NHOH+NO → NO+HO+OH …(5)
NO+3H+2e → 0.5NO+1.5HO …(6)
NO+H+2(H) → 0.5NO+1.5HO …(7)
【0007】
一方、脱窒工程は、有機物を利用して以下に示す化学反応式(8)に従って進行する。化学反応式(8)中の(H)はエタノール及びその他の有機物を示している。しかしながら、この脱窒工程において、有機物量が少ない、溶存酸素量が多い等、反応環境が良好でないと、脱窒反応が不十分になり、窒素への完全な分解が進まなくなる。この結果、以下に示す化学反応式(9)〜(12)のうち、化学反応式(11)までで反応が終了してしまい、亜酸化窒素の発生量が増加することがある。
【0008】
NO+H+5(H) → 0.5N+3HO …(8)
NO+H+5(H) → NO+HO …(9)
NO+H+(H) → NO+HO …(10)
NO+(H) → 0.5NO+0.5HO …(11)
O+2(H) → N+HO …(12)
【0009】
ところで、嫌気好気法(AO法),嫌気無酸素好気法(A2O法),循環型硝化脱窒法等の排水処理方法において、窒素除去率を向上させるためには、硝化槽において発生した硝化液を脱窒槽(嫌気槽や無酸素槽)に循環させ、生物学的な還元反応によって窒素化を促進する必要がある。しかしながら、硝化液を循環させるためにはエネルギーが必要であり、また、酸素が溶存した硝化液が脱窒槽に流入することにより、脱窒槽内での脱窒反応の効率が悪化してしまう。従って、好気槽を複数設け、その中で硝化反応が十分に完了した槽を見極めて、それ以降の槽を脱窒反応に利用できれば、硝化液の循環量をいたずらに増大させる必要がなくなり好ましい。このような背景から、特許文献2には、酸化還元電位の値に基づいて複数の好気槽のうちの一部を嫌気槽に切り替えて使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−63588公報
【特許文献2】実開平5−18699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術は、省エネルギー等を含む排水処理の効率化を目的としているものの、亜酸化窒素の発生量低減まで考慮されていない。特に、好気槽における散気(空気供給)に伴い溶存状態の亜酸化窒素が大気中に容易に揮散してしまうという弊害については何ら検討されていない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、排水処理全体の効率化と亜酸化窒素の発生量や揮散量の低減とを両立可能な排水処理方法及び排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る排水処理方法は、窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置における排水処理方法であって、各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測するステップと、前記酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定するステップと、前記特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給するステップと、前記特定転用槽より下流側の転用槽内に前記第1供給量より少ない第2供給量の空気を供給するステップと、を含む。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る排水処理装置は、窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置であって、各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定する手段と、該特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給する手段と、特定転用槽より下流側の転用槽内に前記第1供給量より少ない第2供給量の空気を供給する手段と、を備える。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係る排水処理方法は、窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置における排水処理方法であって、各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測するステップと、前記酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定するステップと、前記特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給するステップと、前記特定転用槽より下流側の転用槽内に有機物を添加し、該有機物が添加された転用槽内を撹拌するステップと、を含む。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係る排水処理装置は、窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置であって、各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定する手段と、該特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給する手段と、該特定転用槽より下流側の転用槽内に有機物を添加し、該有機物が添加された転用槽内を撹拌する手段と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る排水処理方法及び排水処理装置によれば、排水処理全体の効率化と亜酸化窒素の発生量や揮散量の低減とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態である排水処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す排水処理装置の変形例の構成を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態である排水処理装置の構成を示す模式図である。
【図4】図4は、転用槽におけるORP値とアンモニア濃度との関係を示す図である。
【図5】図5は、図3に示す排水処理装置の変形例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態である排水処理装置及びその排水処理方法について説明する。
【0020】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1,図2を参照して、本発明の第1の実施形態である排水処理装置及びその排水処理方法について説明する。
【0021】
〔排水処理装置の構成〕
図1は、本発明の第1の実施形態である排水処理装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態である排水処理装置Sは、嫌気槽2,脱窒槽4,転用槽6,固液分離槽(沈殿槽)10,散気装置16,ORP計24,及びコンピュータ28を主な構成要素として備えている。嫌気槽2は、窒素含有排水が最初に又は下水処理場の構成によっては図示しない最初沈殿池を介して流入する槽である。嫌気槽2は、嫌気環境下でリン蓄積細菌の作用によって窒素含有排水に対し脱リン処理(嫌気処理)を施すためのものである。
【0022】
脱窒槽4は、嫌気槽2の下流側に配置され、嫌気槽2から流出した処理水が流入する槽である。脱窒槽4は、無酸素環境下で脱窒菌の作用によって処理水に対し脱窒処理を施すためのものである。脱窒槽4内の処理水には、循環経路8を介して転用槽64(6)内の硝化液が循環されることによって硝酸が含まれている。この硝酸は、既に述べた化学反応式(9)〜(12)に従った化学反応によって窒素へと分解される。循環経路8を介して脱窒槽4内に硝化液を循環させることによって、脱窒槽4における脱窒効率を向上させることができる。
【0023】
転用槽6は、脱窒槽4の下流側に配置され、脱窒槽4から流出した処理水が流入する槽である。転用槽6は、複数の転用槽61〜64によって構成されている。複数の転用槽61〜64は、物理的に分離したものであってもよいし、隔壁又は槽内流によって1つの転用槽内を仮想的に複数に区分けしたものであってもよい。各転用槽の底部には、貯留されている処理水に空気を供給するための散気装置16が設けられている。各散気装置16の散気量は個別のコントローラ18によって制御される。各コントローラ18は、ブロアと流量調整弁とを備え、コンピュータ28からの制御指令に従って各散気装置16の散気量を調整する。各槽の終端位置(最下流近傍位置)6aには、各槽に貯留されている処理水の酸化還元電位(ORP値)を計測するためのORP計24が設置されている。
【0024】
初段(最上流)の転用槽61は、好気(硝化)槽として利用される。すなわち、転用槽61内では、散気装置16による散気が充分に行われ、溶存酸素濃度が高い環境下で硝化菌の作用によって処理水の硝化が行われる。一方、次段以降の転用槽62〜64は、各ORP計24によるORP値の計測値に応じて、好気槽又は下流槽のいずれかに切り替えて利用される。より具体的には、コンピュータ28によって転用槽62〜64のうちのいずれかの槽が特定転用槽であると判断された場合、特定転用槽及びそれより上流側の転用槽は好気槽として利用され、特定転用槽より下流側の転用槽は下流槽として利用される。本明細書中において、特定転用槽とは、「その転用槽までにおいて、硝化反応が略完了していると判断することができる」転用槽のことを意味する。なお、初期動作時においては、全ての転用槽61〜64を好気槽として利用することが好ましい。
【0025】
固液分離槽10は、転用槽6の下流側に位置し、転用槽6から流出した処理水が流入する槽である。固液分離槽10は、生物学的処理が完了した処理水を固液分離するためのものである。固液分離槽10では、固液分離によって生成された上澄水が装置外に排出される。固液分離によって生成された汚泥の一部は、返送経路12を介して嫌気槽2や嫌気槽2に流入する前の窒素含有排水と合流する位置にまで返送され、嫌気槽2内の生物量を維持している。固液分離によって生成された汚泥の残部は余剰汚泥として排出管14を介して装置外に排出される。
【0026】
コンピュータ28は、各転用槽61〜64に設置されたORP計24からのORP値に基づいて、転用槽61〜64のうちのいずれの転用槽が特定転用槽であるかを判断する。本実施形態では、コンピュータ28内のメモリに第1の所定範囲Dc1を示す数値範囲の情報が予め格納されており、コンピュータ28は、この数値範囲と各ORP計24からのORP値D1とを比較し、ORP値D1がこの数値範囲内にある転用槽を特定転用槽と判断する。
【0027】
コンピュータ28は、特定転用槽とそれより上流側の転用槽の各コントローラ18に対し散気装置16による散気を継続して行うように制御指令D2を送出する。これにより、特定転用槽とそれより上流側の転用槽は好気槽として利用される。一方、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽の各コントローラ18に対しては、好気槽において散気装置16によって供給される空気量よりも少ない空気量を供給するように制御指令D2を送出する。これにより、特定転用槽の下流側の転用槽は下流側脱窒槽として利用される。下流側脱窒槽は、亜酸化窒素の発生量や揮散量を低減するために、脱窒反応や硝化反応を極力進行させない槽内環境を実現した槽である。この結果、散気に要する電力量を削減することができると共に、排水処理装置を有効活用することができる。
【0028】
下流槽への散気を完全に停止すると、下流槽は無酸素状態となるが、有機物量が不足しているので、十分な脱窒反応を行わせることが難しい。このため、脱窒反応が部分的に進行してしまい、半脱窒状態となり、亜酸化窒素の発生量が増大することがある。一方、下流槽に空気を多量に供給すると、不必要なエネルギーを用いて不必要な硝化反応を促進する結果になる上に、溶存状態の亜酸化窒素が揮散してしまう。このため、脱窒反応及び硝化反応が進行せず、且つ、溶存状態の亜酸化窒素が揮散しない程度に空気を供給することが望ましい。
【0029】
特定転用槽の下流側の転用槽に対する空気量の制御は、特定転用槽の下流側の転用槽のORP値D1に基づいて行うことが好ましい。具体的には、本実施形態では、コンピュータ28内のメモリに第2の所定範囲Dc2の情報が格納されており、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽からのORP値D1とこの第2の所定範囲Dc2を比較する。そして、特定転用槽の下流側の転用槽からのORP値D1が第2の所定範囲Dc2以上である場合、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽のコントローラ18に向けて供給空気量をより減少させる制御指令を送出する。
【0030】
一方、特定転用槽の下流側の転用槽からのORP値D1が第2の所定範囲Dc2未満である場合、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽のコントローラ18に向けて供給空気量をより増加させる制御指令を送出する。これにより、特定転用槽の下流側の転用槽からのORP値D1は第2の所定範囲Dc2内に入るようにフィードバック制御される。
【0031】
〔排水処理方法〕
次に、本発明の第1の実施形態である排水処理装置Sによる排水処理方法について説明する。
【0032】
本発明の第1の実施形態である排水処理装置Sでは、始めに、窒素含有排水は、嫌気槽2に流入し、脱リン処理される。次に、処理水は、上流側脱窒槽4に流入し、脱窒処理される。次に、処理水は、転用槽6に流入し、硝化処理される。次に、転用槽61〜64の槽終端位置6aにおけるORP値D1がORP計24によって計測され、計測されたORP値D1はコンピュータ28に送出される。次に、コンピュータ28は、ORP値D1と所定範囲Dc1とを比較することによって特定転用槽を特定する。
【0033】
次に、コンピュータ28は、特定転用槽及び特定転用槽より上流側の転用槽への空気供給量よりも空気供給量を減少させる制御指令D2を特定転用槽より下流側の転用槽のコントローラ18に送出する。また、コンピュータ28は、特定転用槽より下流側の転用槽のORP値D1と第2の所定範囲Dc2とを比較する。そして、特定転用槽より下流側の転用槽のORP値D1が第2の所定範囲Dc2以上である場合、コンピュータ28は、特定転用槽より下流側の転用槽への空気供給量をより一層減少させる制御指令D2を送出する。一方、特定転用槽より下流側の転用槽のORP値D1が第2の所定範囲Dc2未満である場合には、コンピュータ28は、特定転用槽より下流側の転用槽への空気供給量を増加させる制御指令D2を転用槽64のコントローラ18に向けて送出する。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態である排水処理方法では、排水処理装置Sが、転用槽61〜64の最下流近傍位置におけるORP値D1を計測し、ORP値D1が第1の所定範囲Dc1内にある転用槽を特定転用槽と判断し、特定転用槽内及びそれより上流側の転用槽内に散気装置16により空気を供給し、特定転用槽より下流側の転用槽内に供給する空気量を特定転用槽及びそれより上流側の転用槽内に供給する空気量よりも減少させる。このような排水処理方法によれば、下流槽では散気装置を低電力で稼働させることができるので、省エネルギー化を実現することができる。また、下流槽における亜酸化窒素の発生量や揮散量を低減させることができる。すなわち、このような排水処理方法によれば、排水処理全体の効率化と亜酸化窒素の発生量及び揮散量の低減とを両立させることができる。
【0035】
また、本発明の第1の実施形態である排水処理方法では、排水処理装置Sが、特定転用槽より下流側の転用槽におけるORP値が第2の所定範囲Dc2となるように、特定転用槽より下流側の転用槽内に供給する空気量を調整するので、特定転用槽より下流側の転用槽において脱窒反応や硝化反応が進行することを抑制できる。
【0036】
[変形例]
本実施形態では、コンピュータ28は、転用槽内のORP値D1が第1の所定範囲Dc1内であるか否かに基づいて特定転用槽を特定したが、上下流方向に連続するORP計24のORP値D1の差分値が所定差分値以上であるか否かに基づいて特定転用槽を特定してもよい。より具体的には、この場合、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のORP値D1の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値未満である場合、上下流方向に連続する転用槽は特定転用槽でないと判断する。一方、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のORP値D1の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値以上である場合には、下流側の転用槽を特定転用槽と判断する。
【0037】
本実施形態では、転用槽内のORP値D1が第1の所定範囲Dc1内であるか否かに基づいて特定転用槽を特定したが、図2に示すように、各転用槽61〜64の槽終端位置6aにORP計24に加えて溶存酸素濃度(DO値)を測定するDO計34を設け、上下流方向に連続するDO計34のDO値D3の差分値が所定差分値Dc3以上であるか否かに基づいて特定転用槽を特定してもよい。より具体的には、この場合、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のDO値D3の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値Dc3未満である場合、上下流方向に連続する転用槽は特定転用槽でないと判断する。一方、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のDO値D3の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値Dc3以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽と判断する。なお、所定差分値Dc3は、略0.3mg/Lであることが好ましい。また、本変形例においても、特定転用槽より下流側の転用槽下流槽に対する空気供給量のフィードバック制御がORP値D1と第2の所定範囲Dc2との比較に基づいて行われる。
【0038】
本実施形態及び変形例では、排水処理装置Sが嫌気槽2及び脱窒槽4を含む場合について説明したが、排水処理装置Sが嫌気槽2及び上流側脱窒槽4のいずれも含まない構成、排水処理装置Sが嫌気槽2又は脱窒槽4の一方のみを含む構成についても本発明を適用することが可能である。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に、図3乃至図5を参照して、本発明の第2の実施形態である排水処理装置及びその排水処理方法について説明する。
【0040】
〔排水処理装置の構成〕
図3は、本発明の第2の実施形態である排水処理装置の構成を示す模式図である。図3に示すように、本発明の第2の実施形態である排水処理装置Sは、嫌気槽2,上流側脱窒槽(脱窒槽)4,転用槽6,固液分離槽(沈殿槽)10,ORP計24,有機物添加手段26、及びコンピュータ28を主な構成要素として備えている。嫌気槽2は、窒素含有排水が最初に又は下水処理場の構成によっては図示しない最初沈殿池を介して流入する槽である。嫌気槽2は、嫌気環境下でリン蓄積細菌の作用によって窒素含有排水に対し脱リン処理(嫌気処理)を施すためのものである。
【0041】
上流側脱窒槽4は、嫌気槽2の下流側に配置され、嫌気槽2から流出した処理水が流入する槽である。上流側脱窒槽4は、無酸素環境下で脱窒菌の作用によって処理水に対し脱窒処理を施すためのものである。上流側脱窒槽4内の処理水には、循環経路8を介して転用槽64(6)内の硝化液が循環されることによって硝酸が含まれている。この硝酸は、既に述べた化学反応式(9)〜(12)に従った化学反応によって窒素へと分解される。循環経路8を介して上流側脱窒槽4内に硝化液を循環させることによって、上流側脱窒槽4における脱窒効率を向上させることができる。
【0042】
転用槽6は、脱窒槽4の下流側に配置され、脱窒槽4から流出した処理水が流入する槽である。転用槽6は、複数の転用槽61〜64によって構成されている。複数の転用槽61〜64は、物理的に分離したものであってもよいし、隔壁又は槽内流によって1つの転用槽内を仮想的に複数に区分けしたものであってもよい。各転用槽の底部には、貯留されている処理水に空気を供給するための散気装置16が設けられている。各散気装置16の散気量は個別のコントローラ18によって制御される。各コントローラ18は、ブロアと流量調整弁とを備え、コンピュータ28からの制御指令に従って各散気装置16の散気量を調整する。各槽の終端位置(最下流近傍位置)6aには、各槽に貯留されている処理水の酸化還元電位(ORP値)を計測するためのORP計24が設置されている。
【0043】
初段(最上流)の転用槽61は、好気(硝化)槽として利用される。従って、転用槽61内では、散気装置16による散気が充分に行われ、溶存酸素濃度の高い環境下で硝化菌の作用によって窒素含有排水の硝化が行われる。一方、次段以降の転用槽62〜64は、各ORP計24によるORP値の計測値に応じて、好気槽又は脱窒槽のいずれかに切り替えて利用される。より具体的には、コンピュータ28によって転用槽62〜64のうちのいずれかの槽が特定転用槽であると判断されると、その特定転用槽及びそれより上流側の転用槽は好気槽として利用され、特定転用槽より下流側の転用槽は脱窒槽として利用される。
【0044】
本実施形態では、上流側脱窒槽4のみならず、好気槽である転用槽61の下流側にも脱窒槽が配置されることとなるので、循環経路8を介した硝化液の循環量を減少させることができる。この結果、硝化液の循環に必要なエネルギーを削減できると共に、溶存酸素の多い硝化液が多量に上流側脱窒槽4に流入することによって脱窒効率が低下することを抑制できる。本明細書中において、特定転用槽とは、「その転用槽までにおいて、硝化反応が略完了していると判断することができる」転用槽のことを意味する。なお、初期動作時においては、全ての転用槽61〜64を好気槽として利用することが好ましい。
【0045】
固液分離槽10は、転用槽6の下流側に位置し、転用槽6から流出した処理水が流入する槽である。固液分離槽10は、生物学的処理が完了した処理水を固液分離するためのものである。固液分離槽10では、固液分離によって生成された上澄水が装置外に排出される。固液分離によって生成された汚泥の一部は、返送経路12を介して嫌気槽2や嫌気槽2に流入する前の窒素含有排水と合流する位置にまで返送され、嫌気槽2内の生物量を維持している。固液分離によって生成された汚泥の残部は余剰汚泥として排出管14を介して装置外に排出される。
【0046】
有機物添加手段26は、初段の転用槽61を除く転用槽62〜64の上流側に近い位置に有機物を添加するものである。有機物添加手段26は、開閉及び流量調整弁を有し、コンピュータ28からの制御指令に従って有機物を添加する転用槽62〜64を切り替えることができる。また、有機物添加手段26は、コンピュータ28からの制御指令に従って有機物の添加量も調整することができる。添加する有機物としては、メタノールやエタノール等のアルコール,酢酸等の揮発性脂肪酸,グルコース等の易分解性の炭水化物等,嫌気槽2に流入する前の窒素含有排水を例示することができる。
【0047】
コンピュータ28は、各転用槽61〜64に設置されたORP計24からのORP値に基づいて、転用槽61〜64のうちのいずれの転用槽が特定転用槽であるかを判断する。本実施形態では、コンピュータ28内のメモリに第1の所定範囲Dc1を示す数値範囲の情報が予め格納されており、コンピュータ28は、この数値範囲と各ORP計24からのORP値D1とを比較し、ORP値D1がこの数値範囲内にある転用槽を特定転用槽と判断する。なお、本発明者らの検討によれば、図4に示すように、ORP値が40mV以上であるとアンモニア濃度が大きく低下する。このことから、第1の所定範囲Dc1は、ORP値が略40mV以上、略60mV以下の範囲であることが望ましい。
【0048】
コンピュータ28は、特定転用槽とそれより上流側の転用槽の各コントローラ18に対し散気装置16による散気を継続して行うように制御指令D2を送出する。これにより、特定転用槽とそれより上流側の転用槽は好気槽として利用される。一方、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽の各コントローラ18に対しては散気を停止するように制御指令D2を送出する。これにより、特定転用槽の下流側の転用槽は、無酸素状態となり、下流側脱窒槽として利用される。また、特定転用槽の下流側の転用槽内に僅かな亜酸化窒素が溶存していたとしても、亜酸化窒素が大気中に揮散することを抑制できる。また、散気のための電力量を削減することができ、省エネルギー化を実現できる。また、下流側脱窒槽で脱窒を行うことができるので、上流側脱窒槽4に循環させる硝化液の量を減少させ、硝化液の循環に要するエネルギー量を削減することができる。
【0049】
なお、特定転用槽の下流側の転用槽内に撹拌装置が設置されている場合、コンピュータ28は、撹拌装置を駆動することによって転用槽内の処理水を撹拌ことによって脱窒反応を促進させてもよい。この場合、散気装置16及びコントローラ18に撹拌機能を実現させてもよい。すなわち、コンピュータ28は、空気供給を完全には停止しないが、極めて少量の空気供給を行う制御指令D2をコントローラ18に送出し、溶存酸素量をあまり増大させない範囲での槽内の撹拌機能を実現してもよい。この場合、攪拌のための散気量が微量であるので、脱窒反応への悪影響は殆どない。また、溶存状態の亜酸化窒素が存在したとしても、散気量が微量であるので亜酸化窒素は殆ど揮散されることがない。
【0050】
特定転用槽の下流側の転用槽には、有機物添加手段26から有機物が添加される。すなわち、コンピュータ28は、有機物添加手段26に対して特定転用槽の下流側の転用槽に有機物を添加するための制御指令D2を送出する。この際、有機物の添加量は、特定転用槽の下流側の転用槽のORP値D1に基づいて調整される。すなわち、コンピュータ28のメモリ内には所定臨界値Dc2が格納されており、コンピュータ28は、特定転用槽の下流側の転用槽のORP値D1とこの所定臨界値Dc2とを比較する。そして、特定転用槽の下流側の転用槽のORP値D1が所定臨界値Dc2以上である場合、コンピュータ28は、有機物添加手段26に対し有機物添加量を増大させる制御指令D2を送出する。これにより、脱窒反応の効率が悪化した場合であっても、特定転用槽の下流側の転用槽内での有機物量が増加し、脱窒反応が促進され、亜酸化窒素の発生量を低減できる。
【0051】
〔排水処理方法〕
次に、本発明の第2の実施形態である排水処理装置Sによる排水処理方法について説明する。
【0052】
本発明の第2の実施形態である排水処理装置Sでは、始めに、窒素含有排水は、嫌気槽2に流入し、脱リン処理される。次に、処理水は、上流側脱窒槽4に流入し、脱窒処理される。次に、処理水は、転用槽6に流入し、硝化処理される。次に、転用槽61〜64の槽終端位置6aにおけるORP値D1がORP計24によって計測され、計測されたORP値D1はコンピュータ28に送出される。次に、コンピュータ28は、ORP値D1と所定範囲Dc1とを比較することによって特定転用槽を特定する。
【0053】
次に、コンピュータ28は、散気装置16を散気機能でなく撹拌機能を発揮する程度に動作させる制御指令D2を特定転用槽より下流側の転用槽のコントローラ18に送出する。また、コンピュータ28は、有機物添加手段26に対して特定転用槽より下流側の転用槽に有機物を添加する制御指令を送出する。そして、コンピュータ28は、特定転用槽より下流側の転用槽のORP値D1と所定臨界値Dc2とを比較し、特定転用槽より下流側の転用槽のORP値D1が所定臨界値Dc2以上である場合、有機物添加手段26に対して特定転用槽より下流側の転用槽に添加する有機物の量を増大させる制御指令D2を送出する。
【0054】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態である排水処理方法では、排水処理装置Sが、転用槽61〜64の最下流近傍位置におけるORP値を計測し、ORP値が第1の所定範囲内にある転用槽を特定転用槽と判断し、特定転用槽内及びそれより上流側の転用槽内に散気装置16により空気を供給し、特定転用槽より下流側の転用槽内に有機物を添加し、有機物が添加された転用槽内を撹拌する。このような排水処理方法によれば、下流槽では散気装置の動作を停止させることができるので、省エネルギー化を実現することができる。また、下流槽における亜酸化窒素の発生量や揮散量を低減させることができる。すなわち、このような排水処理方法によれば、排水処理全体の効率化と亜酸化窒素発生量の低減とを両立させることができる。
【0055】
また、本発明の第2の実施形態である排水処理方法では、排水処理装置Sが、特定転用槽より下流側の転用槽におけるORP値が所定臨界値以上である場合、有機物の添加量を増加させるので、下流槽における脱窒反応が促進され、亜酸化窒素の発生量を低減することができる。
【0056】
[変形例]
本実施形態では、コンピュータ28は、転用槽内のORP値D1が第1の所定範囲Dc1内であるか否かに基づいて特定転用槽を特定したが、上下流方向に連続するORP計24のORP値D1の差分値が所定差分値以上であるか否かに基づいて特定転用槽を特定してもよい。より具体的には、この場合、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のORP値D1の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値未満である場合、上下流方向に連続する転用槽は特定転用槽でないと判断する。一方、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のORP値D1の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値以上である場合には、下流側の転用槽を特定転用槽と判断する。
【0057】
本実施形態では、転用槽内のORP値D1が第1の所定範囲Dc1内であるか否かに基づいて特定転用槽を特定したが、図5に示すように、各転用槽61〜64の槽終端位置6aにORP計24に加えて溶存酸素濃度(DO値)を測定するDO計34を設け、上下流方向に連続するDO計34のDO値D3の差分値が所定差分値Dc3以上であるか否かに基づいて特定転用槽を特定してもよい。より具体的には、この場合、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のDO値D3の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値Dc3未満である場合、上下流方向に連続する転用槽は特定転用槽でないと判断する。一方、コンピュータ28は、上下流方向に連続する転用槽のDO値D3の差分値がメモリ内に記憶されている所定差分値Dc3以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽と判断する。
【0058】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
2 嫌気槽
4 上流側脱窒槽(脱窒槽)
6,61〜64:転用槽
6a 槽終端位置(最下流近傍位置)
8 循環経路
10 固液分離槽(沈殿槽)
12 返送経路
14 排出管
16 散気装置
18 コントローラ
24 ORP計
26 有機物添加手段
28 コンピュータ
34 DO計
S 生物処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置における排水処理方法であって、
各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測するステップと、
前記酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定するステップと、
前記特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給するステップと、
前記特定転用槽より下流側の転用槽内に前記第1供給量より少ない第2供給量の空気を供給するステップと、
を含むことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記特定転用槽を特定するステップは、前記酸化還元電位が第1所定範囲内にある転用槽を前記特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記特定転用槽を特定するステップは、窒素含有排水の流れ方向に連続する2つの転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位の差分値が所定差分値以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記特定転用槽を特定するステップは、窒素含有排水の流れ方向に連続する2つの転用槽の最下流近傍位置における溶存酸素濃度の差分値が所定差分値以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記特定転用槽より下流側の転用槽における酸化還元電位が第2所定範囲内になるように、前記特定転用槽より下流側の転用槽内に供給する空気量を調整するステップを含むことを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項6】
窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置であって、
各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定する手段と、
該特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給する手段と、
特定転用槽より下流側の転用槽内に前記第1供給量より少ない第2供給量の空気を供給する手段と、
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項7】
窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置における排水処理方法であって、
各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測するステップと、
前記酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定するステップと、
前記特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給するステップと、
前記特定転用槽より下流側の転用槽内に有機物を添加し、該有機物が添加された転用槽内を撹拌するステップと、
を含むことを特徴とする排水処理方法。
【請求項8】
前記特定転用槽を特定するステップは、前記酸化還元電位が第1所定範囲内にある転用槽を前記特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の排水処理方法。
【請求項9】
前記特定転用槽を特定するステップは、窒素含有排水の流れ方向に連続する2つの転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位の差分値が所定差分値以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の排水処理方法。
【請求項10】
前記特定転用槽を特定するステップは、窒素含有排水の流れ方向に連続する2つの転用槽の最下流近傍位置における溶存酸素濃度の差分値が所定差分値以上である場合、下流側の転用槽を特定転用槽として特定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の排水処理方法。
【請求項11】
前記特定転用槽より下流側の転用槽における酸化還元電位が所定臨界値以上である場合、前記有機物の添加量を増加させるステップを含むことを特徴とする請求項7〜10のうち、いずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項12】
窒素含有排水の流れ方向に沿って配列された、該窒素含有排水を硝化する複数の転用槽を備える排水処理装置であって、
各転用槽の最下流近傍位置における酸化還元電位又は溶存酸素濃度を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された酸化還元電位又は溶存酸素濃度に基づいて、前記窒素含有排水の硝化反応が略完了している転用槽を特定転用槽として特定する手段と、
該特定転用槽内及び該特定転用槽より上流側の転用槽内に第1供給量の空気を供給する手段と、
該特定転用槽より下流側の転用槽内に有機物を添加し、該有機物が添加された転用槽内を撹拌する手段と、
を備えることを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218346(P2011−218346A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55265(P2011−55265)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】