説明

排水処理枡

【課題】設置現場への搬入が容易で、設置現場の事前整備作業を軽減できる排水処理枡を提供することである。
【解決手段】受水槽1、第1分離槽2および第2分離槽3をユニット槽で個別に形成し、これらのユニット槽を上流側から下流側へ連接管4、5で連接して、上流側のユニット槽で受け取った排水を連接管で下流側のユニット槽に導くことにより、排水処理枡を嵩張らない個別のユニット槽として設置現場へ容易に搬入できるようにするとともに、個別のユニット槽の配列形態を設置スペースに応じて可変とし、設置現場の事前整備作業を軽減できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路面から集水される排水からごみ等の不純物や油分を分離して浄化する排水処理枡に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や一般道路の道路面には、ごみ、土砂、タイヤ屑等の各種不純物や、事故等によって自動車から漏れる石油燃料等の油分が溜まる。このように道路面に溜まった不純物や油分は、雨が降ると雨水と一緒に排水となって流れ出し、河川、池、水田等に流れ込んで、水質悪化等の環境汚染の原因となる。
【0003】
このような排水による環境汚染を防止するため、道路の橋梁下や法面等に、道路面から集水される排水から不純物や油分を分離して浄化する排水処理枡が設置されることがある。この排水処理枡はコンクリート製のものが多く、その総容量は、単位時間当たりの設計降雨量や集水面積等に基づいて決められており、1〜4m程度のかなり大容量のものとされている。排水処理枡で浄化された水は、河川等に通じる管路や溝等の水路に放出される。
【0004】
前記排水処理枡は、通常、道路面から集水された排水を受け取る上流側の受水槽と、受水槽で受け取った排水から不純物や油分を比重差で分離する1つまたは複数の分離槽とからなる(例えば、特許文献1参照)。上流側の受水槽を省略して、排水を直接分離槽に受け取るようにし、複数の分離槽を上流側から下流側に連ねたものもある。
【0005】
特許文献1に記載されたものでは、一体の排水処理枡をFRP(Fiber Reinforced Plastic)製とし、その内部を堰板で仕切って、受水槽、第1分離槽および第2分離槽の3槽に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−30239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたFRP製の排水処理枡は、コンクリート製のものより軽量化することができるが、一体の排水処理枡を堰板で仕切って受水槽や分離槽を形成しているので、一体の大容量の排水処理枡が嵩張るものとなり、狭い設置現場への搬入が難しく、かつ、設置スペースを確保するための設置現場の事前整備作業に多大な労力を要する問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、設置現場への搬入が容易で、設置現場の事前整備作業を軽減できる排水処理枡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つの分離槽を含む複数の槽で形成され、上流側の槽で受け取った排水を下流側の槽に導いて前記分離槽で浄化処理する排水処理枡において、前記複数の槽をユニット槽で個別に形成し、これらのユニット槽を上流側から下流側へ連接管で連接して、上流側のユニット槽で受け取った排水を前記連接管で下流側のユニット槽に導く構成を採用した。
【0010】
すなわち、複数の槽をユニット槽で個別に形成し、これらのユニット槽を上流側から下流側へ連接管で連接して、上流側のユニット槽で受け取った排水を連接管で下流側のユニット槽に導くことにより、排水処理枡を嵩張らない個別のユニット槽として設置現場へ容易に搬入できるようにするとともに、個別のユニット槽の配列形態を設置スペースに応じて可変とし、設置現場の事前整備作業を軽減できるようにした。
【0011】
前記ユニット槽をFRP製とすることにより、ユニット槽を軽量化して、設置現場への搬入作業をより容易にすることができる。
【0012】
前記ユニット槽の側壁に上下方向の段差を付与することにより、内部の水圧に対する側壁の剛性を高めることができる。
【0013】
前記ユニット槽の横断面形状を矩形形状とすることにより、複数のユニット槽を密に配列して、必要設置スペースを少なくすることができる。
【0014】
前記ユニット槽の側壁を、薄肉円管を輪切り切断した輪切り管で形成することにより、ユニット槽の製作コストを低減できるとともに、側壁の横断面を円形として、内部の水圧に対する剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る排水処理枡は、複数の槽を個別のユニット槽で形成し、これらのユニット槽を上流側から下流側へ連接管で連接して、上流側のユニット槽で受け取った排水を連接管で下流側のユニット槽に導くようにしたので、設置現場へ容易に搬入できるとともに、設置現場の事前整備作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態の排水処理枡を示す縦断面図
【図2】図1の平面図
【図3】(a)は図1の第1分離槽のユニット槽を示す縦断面図、(b)は(a)の平面図
【図4】図1のユニット槽の配列形態の変形例を示す平面図
【図5】第2の実施形態の排水処理枡を示す平面図
【図6】図5のユニット槽の側壁を形成する輪切り管の断面構造を示す切欠き斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。この排水処理枡は、図1および図2に示すように、上流側から下流側へ順に、受水槽1、第1分離槽2および第2分離槽3を有し、道路面から集水された排水を流入管31から受水槽1に受け取り、第1および第2分離槽2、3で、排水に混入する不純物や油分を比重差で分離して浄化処理し、浄化した水を第2分離槽3から放出管32に放出するものである。
【0018】
前記受水槽1、第1分離槽2および第2分離槽3は、FRP製の同寸法のユニット槽で個別に形成され、互いの側壁同士を密接させて一直線状に配列されており、受水槽1と第1分離槽2間は直管の連接管4で、第1および第2分離槽2、3間はエルボ管の連接管5でそれぞれ連接されている。第2分離槽3に取り付けられたエルボ管の連接管5は放出管32に接続されている。したがって、この排水処理枡は、嵩張らず、かつ軽量の個別のユニット槽として設置現場へ容易に搬入することができる。なお、図示は省略するが、各ユニット槽には蓋が取り付けられる。
【0019】
前記直管の連接管4は、受水槽1と第1分離槽2を側壁の上部で連接し、流入管31から受水槽1に落下した排水を第1分離槽2に導く。エルボ管の各連接管5は、導入口5aが各分離槽2、3の下部に開口し、導出口5bは側壁の上部で下流側の分離槽3または放出管32に接続されている。なお、下部の導入口5a側は、金具6で側壁に固定されている。したがって、各分離槽2、3に導かれた排水は、比重の大きいごみ等の不純物が底部に沈殿し、比重の小さい油分が水面に浮き上がって水と分離され、これらの中間部の浄化された水が、各連接管5の導入口5aから導入され、導出口5bから下流側へ導出される。
【0020】
図3(a)、(b)は、前記第1分離槽2のユニット槽を示す。このユニット槽は、上端開口部の外形が、一辺の長さLが1500mmの正方形とされ、側壁の高さHが1200mmとされており、側壁の上下方向中央部には、上部側が拡がる段差7が設けられている。したがって、内部の水圧に対する剛性が高められる。なお、側壁の厚みは5mmとされ、段差7の段差量Dは80mmとされている。この段差7は複数段に設けてもよく、下部側が拡がるようにしてもよい。図示は省略するが、受水槽1と第2分離槽3のユニット槽も、同じ寸法形状に形成されている。
【0021】
図4は、前記各ユニット槽の配列形態の変形例を示す。この変形例では、受水槽1、第1分離槽2および第2分離槽3のユニット槽が、互いの側壁同士を密接させてL字状に配列され、各連接管4、5で連接されている。この配列形態は、辺長が短いブロック状の設置スペースに適している。なお、図2に示した一直線状の配列形態は、細長形状の設置スペースに適している。
【0022】
図5および図6は、第2の実施形態を示す。この排水処理枡は、図5に示すように、受水槽1、第1分離槽2および第2分離槽3を形成する各ユニット槽の横断面が円形とされ、その側壁が、後述する薄肉円管を輪切り切断した輪切り管8で形成されている点が異なる。底板はFRPで形成されている。その他の部分は、第1の実施形態のものと同じであり、受水槽1と第1分離槽2間は直管の連接管4で、第1および第2分離槽2、3間はエルボ管の連接管5でそれぞれ連接され、第2分離槽3に取り付けられたエルボ管の連接管5は放出管32に接続されている。
【0023】
図6は、前記輪切り管8の断面構造を示す。この輪切り管8は、薄肉のFRPM(Fiber Reinforced Plastic Mortar)管を輪切り切断したものであり、表裏のFRP層8aの間に樹脂モルタル層8bが形成されている。この実施形態では、側壁を簡単に形成して、ユニット槽の製作コストを低減できるとともに、側壁を薄肉にして、内部の水圧に対する剛性を確保することができる。
【0024】
上述した各実施形態では、受水槽、第1分離槽および第2分離槽の3つのユニット槽で形成したが、本発明に係る排水処理枡は、2つまたは4つ以上のユニット槽で形成することもできる。また、複数のユニット槽を同一寸法形状としたが、ユニット槽は互いに異なる寸法形状とすることもできる。
【0025】
上述した第1の実施形態では、ユニット槽をFRP製のものとしたが、ユニット槽は他の複合材料や金属等で形成することもできる。また、上述した第2の実施形態では、ユニット槽の側壁を形成する輪切り管をFRPM管としたが、この輪切り管はFRP管や金属管等とすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 受水槽
2、3 分離槽
4、5 連接管
6 金具
7 段差
8 輪切り管
8a FRP層
8b 樹脂モルタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分離槽を含む複数の槽で形成され、上流側の槽で受け取った排水を下流側の槽に導いて前記分離槽で浄化処理する排水処理枡において、前記複数の槽をユニット槽で個別に形成し、これらのユニット槽を上流側から下流側へ連接管で連接して、上流側のユニット槽で受け取った排水を前記連接管で下流側のユニット槽に導くようにしたことを特徴とする排水処理枡。
【請求項2】
前記ユニット槽をFRP製とした請求項1に記載の排水処理枡。
【請求項3】
前記ユニット槽の側壁に上下方向の段差を付与した請求項1または2に記載の排水処理枡。
【請求項4】
前記ユニット槽の横断面形状を矩形形状とした請求項1乃至3のいずれかに記載の排水処理枡。
【請求項5】
前記ユニット槽の側壁を、薄肉円管を輪切り切断した輪切り管で形成した請求項1乃至3のいずれかに記載の排水処理枡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188806(P2012−188806A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50625(P2011−50625)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】