説明

排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法

【課題】排水中に存在する有機物を低エネルギーで効果的に分解することができる排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法を提供する。
【解決手段】被処理水を一方向に流動させる流動槽12と、被処理水がその間を通過可能に前記流動槽12内に配置された光触媒繊維14と、紫外線を照射可能な紫外線照射部16と、前記流動槽12内に設けられ、前記光触媒繊維14に紫外線を照射可能に、前記紫外線照射部16を収容する紫外線照射部収容部18とを備えた紫外線酸化装置であって、前記紫外線照射部収容部18は、被処理水が紫外線照射部収納部18内を流動可能に構成され、被処理水は、紫外線照射部収容部18内を流動した後に、前記流動槽12に導入されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水に含まれる有機物を分解するための排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排水の再生利用が進められており、再生利用をするために、生物処理による排水中に含まれる有機物の分解が行われている。しかし、上記生物による排水処理は、処理施設の大型化及び処理時間の長時間化は否めない。そのため、排水中に含まれる有機物を効果的に分解、浄化できる排水処理装置が求められている。
【0003】
有機物を含む排水の処理方法としては、例えば特許文献1に、水に紫外線を照射することによって水中に存在する不要な有機物を酸化分解する水浄化装置が示されている。通常、紫外線照射によって水中の有機物を分解させるためには、高出力の紫外線ランプを使用したり、多くの紫外線ランプを使用したりして、多くのエネルギーを必要とする。特許文献1においては、分解に要するエネルギーを節約するために、処理水中の有機物濃度をモニタリングし、この濃度に応じて紫外線ランプの出力を可変する。しかし、それでも紫外線照射による酸化分解に多大なエネルギーが必要であるという問題を有する。
【0004】
また、特許文献2には、光触媒を利用して水中の不要な有機物を分解する装置が示されている。この装置は、光触媒機能を有する繊維からなる平板状不織布に平行となるように設置された紫外線ランプから、その平板状不織布に180〜190nmと250〜260nmとにピーク波長を有する紫外線を照射することにより、排水中に含まれる有機物質を分解するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−198279号公報
【特許文献2】WO2009/063737 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、排水中に含まれる有機物の種類によっては、有機物が上記波長の紫外線を吸収するために、紫外線ランプから放射される紫外線が光触媒に十分に照射されず、分解効率が悪くなるという問題点がある。つまり、光触媒を十分に機能させるためには、光触媒に十分な紫外線を照射する必要があるが、水中に含まれる有機物によって紫外線が吸収されるため、光触媒を機能させるために、過大なエネルギーの紫外線照射を行う必要がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、排水中に存在する有機物を低エネルギーで効果的に分解することができる排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、排水処理装置に2反応工程を設け、まず、紫外線分解反応工程での紫外線照射によって、光触媒への紫外線照射の妨げとなる有機物の濃度を光触媒の機能発現上問題ない程度まで低減させ、次いで、光触媒分解反応工程において光触媒を利用して残存する有機物を分解することにより、低エネルギーで効率的に排水処理が可能であることを見出した。このとき、紫外線分解反応工程において紫外線が照射される液相長を短くすることにより、光触媒を機能させる紫外線を透過させ、光触媒分解反応工程にも同一紫外線照射手段を利用することで更なる低エネルギーで効率的な排水処理が可能となる。
【0009】
すなわち、本発明は、被処理水を一方向に流動させる流動槽と、被処理水がその間を通過可能に前記流動槽内に配置された光触媒繊維と、紫外線を照射可能な紫外線照射部と、前記流動槽内に設けられ、前記光触媒繊維に紫外線を照射可能に、前記紫外線照射部を収容する紫外線照射部収容部とを備え、前記紫外線照射部収容部は、被処理水が紫外線照射部収納部内を流動可能に構成され、被処理水は、紫外線照射部収容部内を流動した後に、前記流動槽に導入されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置である。
【0010】
本発明に係る排水処理装置において、前記紫外線照射部収容部は、紫外線照射部を収容する内管と、該内管を覆う外管とを備え、前記内管と外管との間を被処理水が流れるように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る排水処理装置は、被処理水を貯留可能に構成され、前記紫外線照射部収容部内に連通する第1供給槽と、被処理水を貯留可能に構成され、前記流動槽内に連通する第2供給槽とをさらに備え、前記第1供給槽内の被処理水は、第1供給槽と紫外線照射部収容部内を循環可能に構成され、前記第2供給槽内の被処理水は、第2供給槽と流動槽内を循環可能に構成され、第1供給槽内の被処理水を第2供給槽内に供給可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る排水処理装置において、第1供給槽と第2供給槽のうち少なくとも一方に酸化剤添加手段を備えることが好ましく、酸化剤添加手段は、過酸化水素、オゾン、及び次亜塩素酸ソーダのうち少なくとも1つを添加できることが好ましい。このように酸化剤添加手段を設けることにより、より低エネルギーで効率的に排水処理が可能となる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る排水処理装置において、内管が、180〜190nmと250〜260nmの波長を90%以上透過することができることが好ましく、外管が、180〜190nmと250〜260nmの波長を90%以上透過することができることが好ましく、内管と外管の径方向の間隔が1〜10mmであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る排水処理装置において、紫外線照射部は、内管内に紫外線ランプを備えることが好ましく、紫外線ランプが、180〜190nmと250〜260nmとにピーク波長を有する紫外線を照射できることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る排水処理装置において、前記光触媒繊維が、酸化チタンを表面に有する光触媒繊維の不織布であることが好ましく、前記光触媒繊維の不織布が、平板状に形成された平板状不織布であり、前記平板状不織布は、その面が排水の流動方向に対して交わるように配置されていることが好ましく、前記光触媒繊維は、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属化合物相(第2相)との複合酸化物の繊維からなり、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大しているシリカ基複合酸化物繊維であることが好ましく、加えて、前記光触媒繊維の表面に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びスズ(Sn)のうち少なくとも1以上の金属が担持されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、被処理水がその間を通過可能な光触媒繊維と、紫外線を照射可能な紫外線照射部と、該紫外線照射部を収容し被処理水が内部を流動可能な紫外線照射部収容部とを有する流動槽内を流動する被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する排水処理方法であって、被処理水に前記紫外線照射部から紫外線を照射させた状態で被処理水が前記紫外線照射部収容部内を流動する紫外線分解反応工程と、前記光触媒繊維に前記紫外線照射部から紫外線を照射させた状態で、前記紫外線照射部収容部内を流動した被処理水が前記光触媒繊維の間を通過する光触媒分解反応工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、排水中に存在する有機物を低エネルギーで効果的に分解することができる排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る排水処理装置の概念断面図である。
【図2】本実施形態に係る紫外線反応部、光触媒反応部の概念断面図である。
【図3】光触媒カートリッジの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る排水処理装置の実施形態について説明する。本実施形態に係る排水処理装置は、図1及び2に示すように、上下方向に3つの槽に分離された流動槽本体10と、流動槽本体10の中段の第1流動槽12内に被処理水が通過可能に配置された光触媒カートリッジ14と、紫外線を照射可能な紫外線照射ランプ16と、第1流動槽12内に設けられ、紫外線照射ランプ16を収容する紫外線照射ランプ収容部材18と、排水などの被処理水が貯留された第1供給槽20と、被処理水に紫外線照射ランプ16による紫外線分解反応処理が施された被処理水が貯留された第2供給槽22とを備えている。
【0020】
流動槽本体10は、略直方体状に形成されており、下段に配置された第2流動槽24と、中段に配置された第1流動槽12と、上段に配置された第3流動槽26とを備えている。第1流動槽12の上流側には、被処理水が流入可能な流入口28が設けられ、下流側には、光触媒カートリッジ14による光触媒分解反応処理が施された処理水が排出可能な流出口30が設けられている。また、第2流動槽24の上流側には、被処理水が流入可能な流入口32が設けられ、第3流動槽26の下流側には、紫外線分解反応処理が施された被処理水が排出可能な流出口34が設けられている。
【0021】
光触媒カートリッジ14は、被処理水の流動方向に対して垂直に交わる面の全域に亘って、流動方向に沿って11個並列した状態で第1流動槽12内に設置されている。各光触媒カートリッジ14は、図3に示すように平板状不織布14Aと一対の金網14B、14Bとからなり、平板状不織布14Aが一対のステンレス製の金網14B、14Bに狭持されている。このように金網14B、14Bをサポート材として用いてカートリッジ状にすることにより、光触媒機能が劣化した平板状不織布14Aを容易に取り換えることができる。多段の光触媒カートリッジを枠体等を用いて連結構造とすることにより、脱着を容易にすることができる。本実施形態において、光触媒カートリッジを11個としたが、求められる水質等に応じて、任意にその数を決定することができ、例えば1〜50個とすることができる。また、本実施形態においては、光触媒カートリッジ14として平板状不織布14Aを第1流動槽12に固定したが、他の手段により設置してもよい。さらに、本実施形態において、各光触媒カートリッジ14は、その面が水の流動方向に垂直に交わるように設置したが、流動する水が効率良く平板状不織布14Aを通過すれば良く、例えば流動方向に対して10°前後、好ましくは5°前後、傾いて設置されても良い。
【0022】
紫外線照射ランプ16は、円柱状に形成されており、その外表面には、円筒状のカバー部材(図示省略)が設けられている。このカバー部材は、250〜260nmだけでなく、180〜190nmのピーク波長を透過する材質、例えば、合成石英からなる。一般的な低圧水銀ランプは、本来、185nmと254nmの2つの波長を有するが、通常のカバー部材の素材であるガラスが短波長の紫外線を透過しないため、254nmの波長のみを照射する。本実施形態に係る排水処理装置において、紫外線照射ランプ16は、上述のようにカバー部材の素材を特殊なものにすることによって、180〜190nmと250〜260nmにピーク波長を有する紫外線を照射可能に構成されている。紫外線照射ランプ16から照射される紫外線は、180〜190nm、好ましくは185nmにピーク波長を有し、かつ、250〜260nm、好ましくは254nmにピーク波長を有する。
【0023】
紫外線照射ランプ収容部材18は、第1流動槽12内の各光触媒カートリッジ14の各間に並列して5個ずつ、計50個設置されている。各紫外線照射ランプ収容部材18は、円筒状の外管18A及び内管18Bからなる二重管から構成されており、250〜260nmだけでなく、180〜190nmのピーク波長を90%以上透過する材質、例えば、合成石英からなる。外管18Aと内管18Bの径方向の間隔は、1〜10mmであることが好ましく、特に3〜8mmであることが好ましい。これら紫外線照射ランプ収容部材18の下端は、いずれも第1流動槽12の底面を貫通して第2流動槽24内まで至っており、上端は、いずれも第1流動槽12の上面を貫通して第3流動槽26内まで至っており、流入口32から第2流動槽24内に流入された被処理水が、各紫外線照射ランプ収容部材18の外管18Aと内管18Bの間を通って第3流動槽26まで流動するよう構成されている。このように外管18Aと内管18Bの間を流動する際に、紫外線照射ランプ16からの紫外線が被処理水に照射され、有機物などをある程度分解することができる。本実施形態において、紫外線照射ランプ収容部材18は、円筒状に形成したが、それに限定されず、長手方向に延びる形状であればよい。紫外線照射ランプ16の数は、求められる水質や被処理水中に含まれる不要な有機物の量等に応じて決定される。本実施形態において、内管18Bは、円筒状に形成したが、紫外線照射ランプ16が中心に配置できる形状であればよい。
【0024】
第1供給槽20は、その上方に設けられた酸化剤添加部36と、第1供給槽20内底面近傍に設けられた空気注入部38とを備えており、それぞれから被処理水に過酸化水素水、次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤が添加され、空気が注入されるよう構成されている。酸化剤の供給量は、図示しないコンピュータにより制御されている。また、第1供給槽20は、第1循環路40を介して第2流動槽24の流入口32に連通しており、また第2循環路42を介して第3流動槽26の流出口34に連通している。第1循環路40には、ポンプ44及びオゾン供給部46が設けられており、ポンプ44によって第1供給槽20内の被処理水を第2流動槽24の流入口32まで流動させ、その際にオゾン供給部46から被処理水にオゾンを注入できるように構成されている。また、第1流動路40のオゾン供給部46よりも下流側には、バルブ48が設けられており、このバルブ48から第3循環路50が分岐し、この第3循環路50は、第2供給槽22に連通している。
【0025】
第2供給槽22は、その上方に設けられた酸化剤添加部52と、第2供給槽22内底面近傍に設けられた空気注入部54とを備えており、それぞれから被処理水に過酸化水素水、次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤が添加され、空気が注入されるよう構成されている。酸化剤の供給量は、図示しないコンピュータにより制御されている。また、第2供給槽22は、第4循環路56を介して第1流動槽12の流入口28に連通しており、また第5循環路58を介して第1流動槽12の流出口30に連通している。第4循環路56には、ポンプ60及びオゾン供給部62が設けられており、ポンプ60によって第2供給槽22内の被処理水を第1流動槽12の流入口28まで流動させ、その際にオゾン供給部62から被処理水にオゾンを注入できるように構成されている。
【0026】
空気注入部38、54は、第1供給槽20及び第2供給槽22の下部からエアレーション方式でバブリング可能な装置である。空気供給量は、被処理水200L/minに対して、200〜500L/minであることが好ましく、350L/minであることがさらに好ましい。バブリングした水中の溶存酸素量は、飽和率で50〜100%であることが好ましい。また、この空気注入部38、54とともに、又はそれに代えてマイクロバブル発生装置を用いて空気を供給してもよい。一般にマイクロバブルの発生方法としては、加圧溶解式、エジェクタ式、キャビテーション式、及び旋回式があるが、マイクロバブルの発生方法としては、加圧溶解式、及びエジェクタ式が好ましい。マイクロバブルの特性は生成した気泡の直径と生成量に左右されるため、比較的大量かつ微細な気泡を生成できる加圧溶解式の発生方法が特に好ましい。発生したマイクロバブルの直径は30μm以下であることが好ましい。マイクロバブル発生装置でマイクロバブルを発生した水中の溶存酸素量は飽和率で80〜150%であることが好ましい。マイクロバブルの自己加圧効果によって溶存酸素の飽和量以上の酸素を溶存させることができる。
【0027】
本実施形態に係る排水処理装置において、光触媒カートリッジ14の平板状不織布14Aは、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とチタンを含む金属酸化物相(第2相)との複合酸化物相からなるシリカ基複合酸化物繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のチタンの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している光触媒繊維からなる。
【0028】
光触媒繊維の表面は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びスズ(Sn)のうちの1以上が担持されていてもよい。担持方法は、特に限定されないが、例えば担持される金属イオンが含まれる液と光触媒繊維とを接触させながら、第2相を構成する金属酸化物のバンドギャップに相当するエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することによって、担持させることができる。
【0029】
第1相は、シリカ成分を主体とする酸化物相であり、非晶質であっても結晶質であってもよく、またシリカと固溶体あるいは共融点化合物を形成し得る金属元素あるいは金属酸化物を含有してもよい。シリカと固溶体を形成し得る金属元素(A)としては、例えば、チタン等が挙げられる。シリカと固溶体を形成し得る金属酸化物の金属元素(B)としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ホウ素、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、及び鉄等が挙げられる。
【0030】
第1相は、シリカ基複合酸化物繊維の内部相を形成しており、力学的特性を負担する重要な役割を演じている。シリカ基複合酸化物繊維全体に対する第1相の存在割合は40〜98重量%であることが好ましく、目的とする第2相の機能を十分に発現させ、なお且つ高い力学的特性をも発現させるためには、第1相の存在割合を50〜95重量%の範囲内に制御することがさらに好ましい。
【0031】
一方、第2相は、チタンを含む金属酸化物相であり、光触媒機能を発現させる上で重要な役割を演じるものである。金属酸化物を構成する金属としては、チタンが挙げられる。この金属酸化物は、単体でもいいし、その共融点化合物やある特定元素により置換型の固溶体を形成したもの等でも良いが、チタニアであることが好ましい。第2相は、シリカ基複合酸化物繊維の表層相を形成しており、シリカ基複合酸化物繊維の第2相の存在割合は、金属酸化物の種類により異なるが、2〜60重量%が好ましく、その機能を十分に発現させ、また高強度をも同時に発現させるには5〜50重量%の範囲内に制御することがさらに好ましい。第2相のチタンを含む金属酸化物の結晶粒径は15nm以下が好ましく、特に10nm以下が好ましい。
【0032】
第2相に含まれる金属酸化物のチタンの存在割合は、シリカ基複合酸化物繊維の表面に向かって傾斜的に増大しており、その組成の傾斜が明らかに認められる領域の厚さは表層から5〜500nmの範囲に制御することが好ましいが、繊維直径の約1/3に及んでもよい。尚、第1相及び第2相の「存在割合」とは、第1相を構成する金属酸化物と第2相を構成する金属酸化物全体、即ちシリカ基複合酸化物繊維全体に対する第1相の金属酸化物及び第2相の金属酸化物の重量%を示している。
【0033】
本実施形態に係る排水処理装置において、平板状不織布14A上の平均紫外線強度は、1〜10mW/cmであることが好ましく、さらに2〜8mW/cmの範囲であることが好ましい。平板状不織布14A表面での紫外線強度が1〜10mW/cmであると、2つの紫外線成分による水処理を高効率に行うことができる。このような範囲にするには、紫外線照射ランプ16と平板状不織布14Aとの距離等を適当な範囲になるようにすればよい。ここで、平均紫外線強度は、不織布表面の中央部から端部までの複数個所の紫外線強度を測定し、これらの値を平均して平均紫外線強度とすることができる。
【0034】
上記のような傾斜構造を有する光触媒繊維は、既知の方法によって製造することができ、例えばWO2009/63737号公報に記載の方法に基づいて製造することができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る排水処理装置の動作について説明する。先ず、ポンプ44を稼働することによって、第1循環路40を介して第1供給槽20内の被処理水を第2流動槽24内に供給する。第2流動槽24内に供給された被処理水は、紫外線照射ランプ収容部材18の外管18A及び内管18Bの間を通って第3流動槽26まで流動し、その際に紫外線照射ランプ16による紫外線分解反応処理が施される。次いで、第3流動槽26内の被処理水は、第2循環路42を介して第1供給槽20まで流動し、第1供給槽20→第2流動槽24→第3流動槽26→第1供給槽20と循環する。この循環の際、第1供給槽20内の被処理水には、酸化剤添加部36から適宜酸化剤が添加され、空気注入部38から空気が注入され、第1循環路40を流動する被処理水には、オゾン供給部46からオゾンが供給される。そして、所定の時間、循環されると、バルブ48が作動し、被処理水は、第3循環路50を介して第2供給槽22に流動する。
【0036】
被処理水が第2供給槽22に溜められると、ポンプ60を稼働して、第4循環路56を介して第2供給槽22内の被処理水を第1流動槽12内に供給し、第1流動槽12内を流動させる。この際、被処理水に紫外線照射ランプ16からの紫外線が照射された光触媒カートリッジ14による光触媒分解反応処理が施される。次いで、第1流動槽12内の被処理水は、第5循環路58を介して第2供給槽22まで流動し、第2供給槽22→第1流動槽12→第2供給槽22と循環する。この循環の際、第2供給槽22内の被処理水には、酸化剤添加部52から適宜酸化剤が添加され、空気注入部54から空気が注入され、第4循環路56を流動する被処理水には、オゾン供給部62からオゾンが供給される。また、第2供給槽22→第1流動槽12→第2供給槽22の循環と同時に、第1供給槽20→第2流動槽24→第3流動槽26→第1供給槽20の循環を行なっても良い。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に係る排水処理装置の実施例を説明する。
【0038】
(製造例1)
5リットルの三口フラスコに無水トルエン2.5リットルと金属ナトリウム400gとを入れ窒素ガス気流下でトルエンの沸点まで加熱し、ジメチルジクロロシラン1リットルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間加熱還流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、まずメタノールで洗浄した後、水で洗浄して、白色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。このポリジメチルシラン250gを、水冷還流器を備えた三口フラスコ中に仕込み、窒素気流下、420℃で30時間加熱反応させて数平均分子量が1200のポリカルボシランを得た。
【0039】
上記方法により合成されたポリカルボシラン16gにトルエン100gとテトラブトキシチタン64gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温して5時間反応させて変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で5gのテトラブトキシチタンを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0040】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をトルエンに溶解させた後、メルトブロー紡糸装置に仕込み、内部を十分に窒素置換してから昇温してトルエンを留去させて、180℃で紡糸を行った。紡糸した不織布を、空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1200℃の空気中で1時間焼成を行い、光触媒繊維としてチタニア/シリカ繊維を得た。
【0041】
製造例1によって得られた光触媒繊維は、第1相の存在割合が80重量%、第2相の存在割合が20重量%であった。存在割合は、蛍光X線分析によって求めた。第2相に含まれるチタニアの結晶粒子の粒子径は、8nmであった。粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡観察)によって求めた。光触媒繊維表面から、300nmの深さで金属酸化物のチタンの存在割合が傾斜していた。傾斜の深さは、オージェ電子分光分析によって求めた。
【0042】
(製造例2)
製造例1によって得られた酸化チタン/シリカ繊維不織布をパラジウム濃度2.5ppmのパラジウムメッキ液(パラデックス:田中貴金属(株)製)内に浸漬し、波長が351nmの紫外線を4mW/cmの強度で4時間照射した。照射後、繊維を取出し、水洗、さらに乾燥を行うことによって、製造例2に係るパラジウム担持酸化チタン/シリカ繊維不織布を得た。重量測定の結果から、パラジウム担持量は、0.05重量%であった。
【0043】
(実施例1)
製造例1で得られた酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を用いて、図3に示される平板状不織布14Aを含む光触媒カートリッジ14を作成し、図1に示される排水処理装置を作製した。ただし、酸化剤添加部36、52及びオゾン供給部46、62は設けなかった。用いた紫外線照射ランプ16は、ヘレウス社製NIQ201/107XLであり、内管18Bとしては合成石英が使用されている。出力は200Wであり、この紫外線照射ランプ16を50本使用した。紫外線照射ランプ16から放射される波長は、254nmと185nmの両方である。紫外線照射ランプ16間の距離は50mmとし、紫外線照射ランプ16と光触媒カートリッジ14の距離は25mmとした。平板状不織布14A表面の平均紫外線強度は10mW/cmであった。紫外線強度は浜松フォトニクス社製UV POWER METERを用いて測定した。
【0044】
被処理水は、フェノールをイオン交換水で溶解し、100ppmのフェノール水溶液とした。このフェノール水溶液の紫外線吸収率(254nm)は、50%であった。以下、紫外線吸収率は、島津製作所製紫外可視光分光光度計(UV−2450)を使用し、石英製セルを用いて光路長10mmで測定した。第1供給槽20では空気注入部38から計350L/minの空気エアレーションを発生させ、一方、第2供給槽22では空気注入部54から計200L/minの空気エアレーションを発生させた。さらに第1供給槽20では、図示しないマイクロバブル発生装置からマイクロバブルを60L/minで発生させた。各供給槽における処理溶液中の平均溶存酸素飽和率は第1供給槽20で110%、第2供給槽22で80%であった。溶存酸素量はHORIBA製D−50溶存酸素計を用いて測定し、飽和溶存酸素量は温度と水中の溶存酸素量から算出した。
【0045】
前記フェノール水溶液1000Lを167L/minの速度で前記排水処理装置に供給して循環処理を行った。紫外線分解反応処理を10パス行い、処理された液をバルブを開放して第1供給槽20から第2供給槽22に送液し、光触媒分解反応処理を10パス行った。前記排水処理装置では、1000Lのフェノール水溶液を167L/minで循環処理しており、6.0分で全溶液1000Lが処理される処理時間を便宜上、1パスと定義する。実施例1においては、まず紫外線分解反応処理を10パス行い(処理時間は60分)、次に光触媒分解反応処理を10パス行い(処理時間は60分)、本排水処理装置全体で120分処理を行った。
【0046】
(実施例2)
製造例2に記載の方法で得られたパラジウム担持酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を用いた以外は、実施例1と同様の条件で検討を行った。
【0047】
(実施例3)
第1供給槽20及び第2供給槽22に酸化剤添加部36、52をそれぞれ設置し、各供給槽に過酸化水素を添加した以外は、実施例2と同様の条件で検討した。過酸化水素は濃度10%の水溶液を用いて、添加量は第1供給槽20で67.5ml/min、第2供給槽22で7.5ml/minとした。
【0048】
(実施例4)
第1供給槽20及び第2供給槽22に酸化剤添加部36、52をそれぞれ設置し、各供給槽に次亜塩素酸ソーダを添加した以外は、実施例2と同様の条件で検討を行った。次亜塩素酸ソーダは濃度10%の水溶液を用いて、添加量は第1供給槽20で45ml/min、第2供給槽22で5ml/minとした。
【0049】
(実施例5)
第1循環路40及び第4循環路56にオゾン供給部46、62をそれぞれ設置し、紫外線分解反応処理、光触媒分解反応処理での処理中にオゾンを添加した以外は、実施例2と同様の条件で検討を行った。使用したオゾン供給部46、62のオゾン生成能力は第1循環路40で1500mg/h、第4循環路56で250mg/hである。
【0050】
(比較例1)
図1に示す製造例1の方法で得られた酸化チタン/シリカ繊維からなる不織布を設置しない以外は、実施例1と同様の条件で検討を行った。
【0051】
(比較例2)
図1に示す、外管18Aを具備せず、紫外線分解反応処理を行わない以外は、実施例1と同様の検討を行った。
【0052】
以上の結果を表1に示す。表1中、パス回数は合計パス回数である。
【0053】
【表1】

【0054】
本発明に係る排水処理装置は、優れた有機物分解性能を示し、さらに酸化剤を添加することにより、極めて効率的な分解性能を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0055】
12 第1流動槽(流動槽)
14 光触媒カートリッジ(光触媒繊維)
16 紫外線照射ランプ(紫外線照射部)
18 紫外線照射ランプ収容部(紫外線照射部収容部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を一方向に流動させる流動槽と、
被処理水がその間を通過可能に前記流動槽内に配置された光触媒繊維と、
紫外線を照射可能な紫外線照射部と、
前記流動槽内に設けられ、前記光触媒繊維に紫外線を照射可能に、前記紫外線照射部を収容する紫外線照射部収容部とを備え、
前記紫外線照射部収容部は、被処理水が紫外線照射部収納部内を流動可能に構成され、
被処理水は、紫外線照射部収容部内を流動した後に、前記流動槽に導入されるよう構成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
紫外線照射部収容部は、紫外線照射部を収容する内管と、該内管を覆う外管とを備え、前記内管と外管との間を被処理水が流れるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
被処理水を貯留可能に構成され、前記紫外線照射部収容部内に連通する第1供給槽と、被処理水を貯留可能に構成され、前記流動槽内に連通する第2供給槽とをさらに備え、
前記第1供給槽内の被処理水は、第1供給槽と紫外線照射部収容部内を循環可能に構成され、
前記第2供給槽内の被処理水は、第2供給槽と流動槽内を循環可能に構成され、第1供給槽内の被処理水を第2供給槽内に供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
第1供給槽と第2供給槽のうち少なくとも一方に酸化剤添加手段を備えることを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項5】
酸化剤添加手段は、過酸化水素、オゾン、及び次亜塩素酸ソーダのうち少なくとも1つを添加できることを特徴とする請求項4記載の排水処理装置。
【請求項6】
内管が、180〜190nmと250〜260nmの波長を90%以上透過することができることを特徴とする請求項2乃至5いずれか記載の排水処理装置。
【請求項7】
外管が、180〜190nmと250〜260nmの波長を90%以上透過することができることを特徴とする請求項2乃至6いずれか記載の排水処理装置。
【請求項8】
紫外線照射部は、内管内に紫外線照射ランプを備えることを特徴とする請求項2乃至7いずれか記載の排水処理装置。
【請求項9】
紫外線照射ランプが、180〜190nmと250〜260nmとにピーク波長を有する紫外線を照射できることを特徴とする請求項8記載の排水処理装置。
【請求項10】
内管と外管の径方向の間隔が1〜10mmであることを特徴とする請求項2乃至9いずれか記載の排水処理装置。
【請求項11】
光触媒繊維が、酸化チタンを表面に有する光触媒繊維の不織布であること特徴とする請求項1乃至10いずれか記載の排水処理装置。
【請求項12】
光触媒繊維の不織布が、平板状に形成された平板状不織布であり、前記平板状不織布は、その面が排水の流動方向に対して交わるように配置されていることを特徴とする請求項11記載の排水処理装置。
【請求項13】
光触媒繊維は、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属化合物相(第2相)との複合酸化物の繊維からなり、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大しているシリカ基複合酸化物繊維であることを特徴とする請求項1乃至12いずれか記載の排水処理装置。
【請求項14】
光触媒繊維の表面に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びスズ(Sn)のうち少なくとも1以上の金属が担持されていることを特徴とする請求項1乃至13いずれか記載の排水処理装置。
【請求項15】
被処理水がその間を通過可能な光触媒繊維と、紫外線を照射可能な紫外線照射部と、該紫外線照射部を収容し被処理水が内部を流動可能な紫外線照射部収容部とを有する流動槽内を流動する被処理水中に含まれる有機物を酸化分解処理する排水処理方法であって、
被処理水に前記紫外線照射部から紫外線を照射させた状態で被処理水が前記紫外線照射部収容部内を流動する紫外線分解反応工程と、
前記光触媒繊維に前記紫外線照射部から紫外線を照射させた状態で、前記紫外線照射部収容部内を流動した被処理水が前記光触媒繊維の間を通過する光触媒分解反応工程とを備えたことを特徴とする排水処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206048(P2012−206048A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74739(P2011−74739)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】