説明

排水処理装置及び排水処理方法

【課題】環境負荷の大きい薬品を使用しないで、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができると共に、汚泥量を著しく低減することができる排水処理装置を提供する。
【解決手段】COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水1を貯溜する原水槽2と、原水槽2から供給された排水1を汚泥の発生を抑制しながら電解処理する電解処理槽3とを、具備する排水処理装置に関する。電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分の量を測定する測定手段6を電解処理槽3に設ける。測定手段6による測定結果に基づいて電流密度を増減させる電解制御手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の処理、特に電車等の車両を洗浄したときに生じる排水の処理に好適に用いられる排水処理装置及び排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より排水処理装置や排水処理方法としては様々なものが提供されているが(例えば、特許文献1−3参照。)、電車等の車両を洗浄したときに生じる排水(車両洗浄排水)を処理するにあたっては、油分が含まれているため、加圧浮上処理が行われていた。
【0003】
近年においては、車両の床に塗布されているワックスを除去する目的で、車両洗浄の際に剥離剤が使用され始めているが、この剥離剤に含まれているCOD(Chemical oxygen demand:化学的酸素要求量)成分やBOD(Biochemicaloxygen demand:生物学的酸素要求量)成分は加圧浮上処理では十分に分解することができないので、排水基準を超える事態が発生している。
【0004】
そこで、このような事態に対処すべく、活性炭吸着処理設備を増設してCOD成分やBOD成分を処理することが行われている。また近年の排水処理規制の強化により、車両洗浄排水に含まれる重金属が規制値を超える場合があるので、重金属処理設備を追加して重金属を処理することも行われている。
【特許文献1】特開2004−113965号公報
【特許文献2】特開2003−275765号公報
【特許文献3】特開平7−60257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排水の中でも特に車両洗浄排水の水質は変化しやすいものである。そして従来の排水処理装置や排水処理方法は、排水の水質をほぼ一定であると想定して開発されたものであるため、このような装置や方法では、水質変化の大きい車両洗浄排水を安定して処理することができないという問題があった。また従来の排水処理ではPAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のような薬品が使用されているが、このような薬品は環境負荷が大きい上に、汚泥量が著しく増大してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、環境負荷の大きい薬品を使用しないで、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができると共に、汚泥量を著しく低減することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る排水処理装置は、COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水1を貯溜する原水槽2と、原水槽2から供給された排水1を汚泥の発生を抑制しながら電解処理する電解処理槽3とを、具備する排水処理装置において、電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分の量を測定する測定手段6を電解処理槽3に設けると共に、測定手段6による測定結果に基づいて電流密度を増減させる電解制御手段を設けてあることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記測定手段6による測定結果に基づいて電解処理槽3に供給される排水1の量を増減させる流量制御手段を設けてあることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記測定手段6がポーラログラフ法を用いたものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、上記電解制御手段がデューティー制御により電流密度を増減させるものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る排水処理方法は、COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水1を電解処理槽3に供給して汚泥の発生を抑制しながら電解処理するようにした排水処理方法において、電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分の量を測定し、この測定結果に基づいて電流密度を増減させることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5において、上記測定結果に基づいて電解処理槽3に供給される排水1の量を増減させることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6において、電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分の量をポーラログラフ法を用いて測定することを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項5乃至7のいずれか1項において、デューティー制御により電流密度を増減させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る排水処理装置によれば、排水中の残留塩素量等に基づいて電流密度を増減させることによって、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができるものである。またPAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のように環境負荷の大きい薬品を使用しないで、電気分解によって排水を処理するので、汚泥量を著しく低減することができるものである。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、排水中の残留塩素量等が多い場合には、電解処理槽への排水の供給量を増加させ、排水中の残留塩素量等が少ない場合には、電解処理槽への排水の供給量を減少させることによって、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができるものである。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、排水中の残留塩素量等を正確に測定することができ、汚濁負荷の大きい排水をさらに安定して処理することができるものである。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、電流のON−OFF時間の比率を変化させて、平均電流の大きさを制御することによって、不要な電力の消費を抑えることができるものである。
【0019】
本発明の請求項5に係る排水処理方法によれば、排水中の残留塩素量等に基づいて電流密度を増減させることによって、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができるものである。またPAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のように環境負荷の大きい薬品を使用しないで、電気分解によって排水を処理するので、汚泥量を著しく低減することができるものである。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、排水中の残留塩素量等が多い場合には、電解処理槽への排水の供給量を増加させ、排水中の残留塩素量等が少ない場合には、電解処理槽への排水の供給量を減少させることによって、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができるものである。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、排水中の残留塩素量等を正確に測定することができ、汚濁負荷の大きい排水をさらに安定して処理することができるものである。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、電流のON−OFF時間の比率を変化させて、平均電流の大きさを制御することによって、不要な電力の消費を抑えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明に係る排水処理装置の一例を示すものであり、この排水処理装置は、原水槽2と、電解処理槽3と、補助剤溶解タンク5と、ろ過前水槽9と、ろ過水槽10と、排水調整槽11とを、具備して形成されている。
【0025】
原水槽2は、COD成分、BOD成分、油分、重金属(Mn、Fe等)、汚泥を含む排水1を貯溜するものである。上記排水1としては、電車等の車両を屋外などで洗浄したときに生じる車両洗浄排水を好適に用いることができ、図1に示すものでは、このような排水1が直接原水槽2に供給されるようにしてある。原水槽2の内部には、インバータ制御される複数の原水ポンプ12a,12b,12cが設置されており、これらの原水ポンプ12a,12b,12cによって排水1が原水供給管13を通じて電解処理槽3に供給されるようにしてある。各原水ポンプ12a,12b,12cはバルブ14a,14b,14cを介して並列に原水供給管13に接続されており、いくつかの原水ポンプ12を作動させることによって、排水1の供給量を調整することができるようにしてある。原水供給管13の途中には電磁流量計15が設けられており、原水供給管13の下流側の先端部にはバルブ16が設けられている。また、原水槽2には超音波レベルセンサー17が設けられており、この超音波レベルセンサー17で原水槽2に貯溜されている排水1の水位を監視するようにしている。なお、原水槽2の容量は特に限定されるものではないが、例えば50〜1000mに設定することができる。
【0026】
電解処理槽3は、原水槽2から供給された排水1を汚泥の発生を抑制しながら電解処理するものであり、電解送水ポンプ18a,18bを備えた電解電極ユニット19a,19bを内部に複数設けて、ポリ塩化ビニル(PVC)等で形成されている。電解送水ポンプ18は、電解電極ユニット19の内部に排水1を送るためのものであり、このように送水することによって排水1の分解効率を上げることができる。電解電極ユニット19a,19bを構成する電解電極(アノード・カソード)は、いずれも不溶解性の導電体であれば特に限定されるものではないが、白金(Pt)若しくは白金(Pt)とイリジウム(Ir)の合金からなる貴金属電極、又は、白金(Pt)若しくは白金(Pt)とイリジウム(Ir)の合金からなる貴金属被覆電極であることが好ましい。そして電解電極ユニット19a,19bに通電すると電気分解によって、カソードでは水酸化物が生成され、アノードでは次式のように排水1中の塩化物イオン(Cl)から塩素(Cl)が生成される。
2Cl→Cl+2e
さらにこのようにして生成された塩素(Cl)から次式のように活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)が生成される。
Cl+HO→1/2O+2HCl
Cl+HO→HCl+HClO
そしてこのようにして生成された活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)によって、COD成分、BOD成分、油分、重金属を酸化分解することができ、汚泥を減容化することができるものである。COD成分やBOD成分のような有機物は、電解処理による酸化分解によって、炭酸ガス及び水を生成する。以下に油分の分解(ノルマルヘキサン換算)、洗剤(脂肪酸ナトリウム)の分解、重金属(Mn、Fe)の処理の一例を示す。
(0)14+m(0)→n(1)CO+m(1)
RCOONa+n(0)+l(0)HCl→n(1)CO+l(1)O+m(1)NaCl
(Rは炭化水素基)
Mn2++O+2e→MnO
3Fe2++2O+6e→Fe
なお、電解処理槽3の容量は特に限定されるものではないが、例えば0.2〜10mに設定することができる。
【0027】
また電解処理槽3には測定手段6が設けられている。この測定手段6は、電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分(以下「排水消費成分」ともいう。)の量を測定するものである。ここで、排水消費成分としては、塩素(Cl)や活性酸素(O)のほか、オゾンや二酸化塩素等を例示することができる。このような排水消費成分の中から例えば塩素(Cl)を選択すれば、この量を測定する測定手段6の具体例としては、残留塩素計を挙げることができる。残留塩素計としては、例えば、特許第3384973号公報や特許第3559253号公報等に記載されているものを用いることができる。また電解処理槽3には攪拌機20が設けられており、この攪拌機20による強制的な攪拌によって、電解処理による酸化分解を促進することができるものである。さらに電解処理槽3にはpH電極56が設けられており、このpH電極56で測定された電解処理槽3内のpHが排水1の流入により放流基準値を超える場合には、pH調整剤を用いて、河川等への放流に適したpHに調整されるものである。
【0028】
そして本発明においては、電解制御手段(図示省略)が設けられている。この電解制御手段は、測定手段6による測定結果に基づいて電解電極ユニット19a,19bの通電時における電流密度を増減させるものであり、各種のCPU、ROM、RAM等から構成され、電解電極ユニット19a,19b及び測定手段6と電気的に接続されている。
【0029】
さらに本発明においては、流量制御手段(図示省略)が設けられている。この流量制御手段は、測定手段6による測定結果に基づいて電解処理槽3に供給される排水1の量を増減させるものであり、各種のCPU、ROM、RAM等から構成され、原水ポンプ12、バルブ14,16、電磁流量計15、測定手段6等と電気的に接続されている。つまり、流量制御手段は、原水ポンプ12を作動・停止させたり、バルブ14,16の開閉度を調整したりして、排水1の供給量を増減させるものである。
【0030】
そして例えば測定手段6として残留塩素計を用いる場合において、電解処理槽3内の排水1の残留塩素量が規定値より少ないとき、つまり排水1によって消費される塩素量が多いときには、排水1の汚れの程度が比較的高いので、電解制御手段によって電流密度を増加させるものである。ただし、電流密度が上限値に達した場合には、流量制御手段によって電解処理槽3に供給される排水1の量を減少させ、処理しきれない量の排水1が電解処理槽3に流れ込まないようにしてある。一方、電解処理槽3内の排水1の残留塩素量が規定値より多いとき、つまり排水1によって消費される塩素量が少ないときには、排水1の汚れの程度が比較的低いので、電解制御手段によって電流密度を減少させるものである。あるいは電流密度を減少させずに、電解処理槽3の容量を超えない範囲内で、流量制御手段によって電解処理槽3に供給される排水1の量を増加させるようにしてもよい。特に、降雨時に電車等の車両を屋外で洗浄すると大量の車両洗浄排水が生じ、原水槽2が満水となって排水1が溢れ出るおそれがある。しかし、この排水1の汚れの程度は雨水によって低くなっているので、本発明によれば、電流密度を減少させずに、電解処理槽3の容量を超えない範囲内で、流量制御手段によって電解処理槽3に供給される排水1の量を増加させることができる。そのため、原水槽2が満水となるのを未然に防止することができるものである。なお、残留塩素量等の規定値は適宜に設定することができ、また電流密度も適宜に設定することができる。
【0031】
このように、電解制御手段によって、排水1中の残留塩素量等に基づいて電流密度を増減させることによって、汚濁負荷の小さい排水1のみならず、汚濁負荷の大きい排水1であっても、安定して処理することができるものである。さらに、流量制御手段によって、排水1中の残留塩素量等が多い場合には、電解処理槽3への排水1の供給量を増加させ、排水1中の残留塩素量等が少ない場合には、電解処理槽3への排水1の供給量を減少させることによって、汚濁負荷の小さい排水1のみならず、汚濁負荷の大きい排水1であっても、安定して処理することができるものである。また本発明に係る排水処理装置においては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のように環境負荷の大きい薬品を使用しないで、電気分解によって排水1を処理するので、汚泥量を著しく低減することができるものである。
【0032】
ここで、上記測定手段6が、比較電極を持つ3極ポーラログラフ式残留塩素計のようにポーラログラフ法を用いたものであると、排水1中の残留塩素量等を正確に測定することができ、汚濁負荷の大きい排水1をさらに安定して処理することができるものである。
【0033】
また、上記電解制御手段がデューティー制御により電流密度を増減させるものであると、電流のON−OFF時間の比率を変化させて、平均電流の大きさを制御することによって、不要な電力の消費を抑えることができるものである。
【0034】
次に、補助剤溶解タンク5は、電解処理に必要な補助剤を電解処理槽3に供給するものであり、ポリ塩化ビニル(PVC)等で形成されている。補助剤としては、例えば、食塩(NaCl)を用いることができる。そして給水電磁弁21を設けた市水供給管57を通じて市水を補助剤溶解タンク5に供給すると共に、この市水に補助剤を溶解させることによって、所定濃度の補助剤溶解液が調製されるようにしてある。この補助剤溶解液は、複数の補助剤注入ポンプ22a,22bを並列に設けた補助剤注入管23を通じて電解処理槽3に供給されるが、もともと排水1に塩化物イオン(Cl)等が多く含まれている場合には補助剤の電解処理槽3への供給は不要である。なお、補助剤注入管23において補助剤溶解タンク5と補助剤注入ポンプ22a,22bとの間にはバルブ24が設けられており、補助剤注入管23の下流側の先端部にもバルブ25が設けられている。また、補助剤溶解タンク5にはレベルセンサー26が設けられており、補助剤溶解タンク5に貯溜されている補助剤溶解液の水位を監視するようにしている。
【0035】
またろ過前水槽9は、ポリ塩化ビニル(PVC)等で形成され、電解処理槽3に隣接して設けられている。排水1を電解処理して得られた電解処理液51は、電解処理槽3をオーバーフローして、ろ過前水槽9に一旦貯溜されるようにしてある。そして電解処理液51は、ろ過前水槽9の下部に設けた電解処理液供給管29を通り、必要に応じてバッグフィルター27a,27bによってろ過処理された後、ろ過水槽10に供給されるようにしてある。なお、ろ過処理によって電解処理液51中のSS(suspended solids:懸濁物質)を除去することができる。また、ろ過前水槽9にはレベルセンサー28が設けられており、ろ過前水槽9に貯溜されている電解処理液51の水位を監視するようにしている。
【0036】
電解処理液供給管29にはバルブ30が設けられており、このバルブ30より下流側に複数の並列管31a,31bが形成されている。これらの並列管31a,31bは、電解処理液供給管29の下流側の分岐部32で分岐した後さらに下流側の合流部33で合流するように形成されており、この合流部33からろ過処理液供給管34が形成されている。各並列管31a,31bには上流側から、フィルター送水ポンプ35a,35b、ろ過エアー弁36a,36b、バッグフィルター27a,27b、ろ過エアー弁37a,37bが設けられている。また各並列管31a,31bにおいてフィルター送水ポンプ35a,35bとろ過エアー弁36a,36bとの間には分岐管38a,38bが設けられており、各分岐管38a,38bは下流側の合流部39で合流して合流管40が形成されている。この合流管40にはろ過エアー弁41が設けられている。そして、電解処理液51をそのままろ過水槽10に供給するにあたっては、バルブ30を開き、ろ過エアー弁36a,36bを閉じてろ過エアー弁41を開くものである。このようにしてフィルター送水ポンプ35a,35bを作動させると、電解処理液51は、電解処理液供給管29、並列管31a,31bの一部、分岐管38a,38b、合流管40を順に通ってろ過水槽10に供給されることになる。一方、電解処理液51に対してろ過処理を行うにあたっては、バルブ30を開き、ろ過エアー弁41を閉じてろ過エアー弁36a,36b,37a,37bを開くものである。このようにしてフィルター送水ポンプ35a,35bを作動させると、電解処理液51は、電解処理液供給管29を通り、並列管31a,31bに設けたバッグフィルター27a,27bでろ過処理された後、さらにろ過処理液供給管34を通ってろ過水槽10に供給されることになる。このように、必要に応じてバッグフィルター27a,27bによるろ過処理を行うことができるものである。
【0037】
またろ過水槽10は、電解処理液51又はろ過処理液(これらを以下単に「処理液52」という。)を一旦貯留するものであり、既設の処理水槽等を利用することができる。ろ過水槽10にはスラジ攪拌ポンプ42及び濁度センサー43が設けられており、スラジ攪拌ポンプ42でろ過水槽10内を攪拌して、濁度センサー43で処理液52の正確な濁度を測定することができるようにしてある。さらに、ろ過水槽10にはレベルセンサー44が設けられており、ろ過水槽10に貯溜されている処理液52の水位を監視するようにしている。そして処理液52は、排出管45に設けた放流ポンプ46によって、排出管45を通じて放流されることになる。排出管45において放流ポンプ46の上流側にはバルブ47、下流側には放流エアー弁48が設けられている。また排出管45において放流ポンプ46と放流エアー弁48との間には返送管49が設けられており、この返送管49によって必要に応じて処理液52が原水槽2に返送されるようにしてある。返送管49には返送エアー弁50が設けられている。
【0038】
なお、排水調整槽11は、既設の処理設備から新設の処理設備への切換えをスムーズに行うために適宜に利用することができる。図1中、59は排出管45から排水調整槽11内へ分岐した配管であり、60はこの配管59に設けたバルブである。
【0039】
次に、図1に示す排水処理装置を用いて排水1を処理する方法について説明する。
【0040】
まず、COD成分、BOD成分、油分、重金属、汚泥を含む排水1、例えば車両洗浄排水を原水槽2に供給して貯溜した後、この排水1を原水ポンプ12によって原水供給管13を通じて電解処理槽3に供給する。
【0041】
そして必要に応じて補助剤溶解タンク5から補助剤溶解液を電解処理槽3に供給した後、電解処理槽3内の排水1を汚泥の発生を抑制しながら電解電極ユニット19によって電解処理する。このとき、電気分解によって生成され、かつ排水1によって消費される成分、例えば塩素(Cl)等の量を測定手段6によって測定し、この測定結果に基づいて電解電極ユニット19の通電時における電流密度を増減させる。具体的には、測定手段6によって得られた残留塩素量等が規定値であれば、これに対応する電流密度を維持するものである。しかし、残留塩素量等が規定値より少ないときには、排水1の汚れの程度が比較的高いので、電解制御手段によって電流密度を増加させるものである。ただし、電流密度が上限値に達した場合には、流量制御手段によって電解処理槽3に供給される排水1の量を減少させ、処理しきれない量の排水1が電解処理槽3に流れ込まないようにする。一方、残留塩素量等が規定値より多いときには、排水1の汚れの程度が比較的低いので、電解制御手段によって電流密度を減少させるものである。あるいは電流密度を減少させずに、電解処理槽3の容量を超えない範囲内で、流量制御手段によって電解処理槽3に供給される排水1の量を増加させる。なお、残留塩素量等の規定値は適宜に設定することができ、また電流密度も適宜に設定することができる。
【0042】
このようにして、COD成分、BOD成分、油分、重金属を酸化分解することができ、汚泥を減容化することができるものである。COD成分やBOD成分のような有機物は、電解処理による酸化分解によって、炭酸ガス及び水を生成する。
【0043】
排水1を電解処理して得られた電解処理液51は、電解処理槽3をオーバーフローして、ろ過前水槽9に一旦貯溜される。そして電解処理液51は、そのままろ過水槽10に供給されたり、必要に応じてバッグフィルター27a,27bによってろ過処理された後、ろ過水槽10に供給されたりする。
【0044】
その後、処理液52は、排出管45に設けた放流ポンプ46によって、排出管45を通じて放流されることになる。処理液52のCOD成分やBOD成分は電解処理によって酸化分解されているので、処理液52を河川等に放流しても、溶存酸素量の低下を招くことがなく、悪臭の発生を防止することができると共に、生物が生存できる環境を保護することができるものである。なお、処理液52の一部は必要に応じて返送管49によって原水槽2に返送される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0046】
図1に示す排水処理装置を用いて次のように排水1を処理した。排水処理は5日間にわたって行った。
【0047】
すなわち、下記[表1]に示すような車両洗浄排水を原水槽2(容量500m)に供給して貯溜した後、この排水1を原水ポンプ12によって原水供給管13を通じて電解処理槽3(容量0.2m)に供給した。排水1の供給量は24m/日に設定した。
【0048】
そして電解処理槽3内の排水1を電解電極ユニット19によって電解処理した。このとき、測定手段6として3極ポーラログラフ式残留塩素計を用いて、排水1の残留塩素量の測定を続けた。残留塩素量が規定値1.0mg/Lであれば、これに対応する電流密度0.25A/cmを維持した。また残留塩素量が規定値1.0mg/Lより少ないときには、電解制御手段によって電流密度を0.35A/cmに増加させた。一方、残留塩素量が規定値1.0mg/Lより多いときには、電解制御手段によって電流密度を0.15A/cmに減少させた。
【0049】
このようにして得られた電解処理液51のデータを下記[表2]に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
上記[表1]のように汚濁負荷の大きい排水1であっても、本発明によれば、[表2]に示すようにCOD成分、BOD成分、油分、重金属の量をいずれも基準値以下にすることができ、安定して処理できることが確認される。なお、SSについては、ろ過処理によって除去できるものと考えられる。
【0053】
また、従来は汚泥の発生量は約10t/月であったのに対し、本発明では汚泥の発生量は約3kg/月であり、PAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のように環境負荷の大きい薬品を使用しないで、電解処理することによって、汚泥の発生量を従来の約1/30に減量することができた。
【0054】
また、排水処理による悪臭の発生はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 排水
2 原水槽
3 電解処理槽
6 測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水を貯溜する原水槽と、原水槽から供給された排水を汚泥の発生を抑制しながら電解処理する電解処理槽とを、具備する排水処理装置において、電気分解によって生成され、かつ排水によって消費される成分の量を測定する測定手段を電解処理槽に設けると共に、測定手段による測定結果に基づいて電流密度を増減させる電解制御手段を設けてあることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
上記測定手段による測定結果に基づいて電解処理槽に供給される排水の量を増減させる流量制御手段を設けてあることを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
上記測定手段がポーラログラフ法を用いたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
上記電解制御手段がデューティー制御により電流密度を増減させるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水を電解処理槽に供給して汚泥の発生を抑制しながら電解処理するようにした排水処理方法において、電気分解によって生成され、かつ排水によって消費される成分の量を測定し、この測定結果に基づいて電流密度を増減させることを特徴とする排水処理方法。
【請求項6】
上記測定結果に基づいて電解処理槽に供給される排水の量を増減させることを特徴とする請求項5に記載の排水処理方法。
【請求項7】
電気分解によって生成され、かつ排水によって消費される成分の量をポーラログラフ法を用いて測定することを特徴とする請求項5又は6に記載の排水処理方法。
【請求項8】
デューティー制御により電流密度を増減させることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の排水処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−212816(P2008−212816A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53353(P2007−53353)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(391039173)株式会社ジェイアール西日本テクノス (26)
【出願人】(505136790)株式会社エイエスイー (3)
【Fターム(参考)】