説明

排水処理装置

【課題】 グラニュールがリアクタ系外に流出するのを有効に防止することができる排水処理装置を提供する。
【解決手段】 底部に導入口を有するリアクタ本体21と、導入口を介してリアクタ本体内に排水を供給し、リアクタ本体内に排水の上昇流を形成する排水供給手段2,3,L1と、リアクタ本体内の水中に嫌気性微生物を投入し、該嫌気性微生物を沈降させることにより、リアクタ本体内の下部に滞留する嫌気性微生物からなるグラニュールの流動床が形成されるグラニュール部22と、リアクタ本体内においてグラニュール部よりも上方に配置され、嫌気性微生物を担持可能な担体を有する担体部25と、担体部の上方に処理水を排出する処理水排出手段27,L2と、グラニュール及び浮遊物質の各々とそれらに付着したガスとを分離する気固液分離部10,10A-10F,11,11A,12,16,20,50,51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、農村集落排水、工場排水等の有機排水を、嫌気性微生物により浄化処理する、嫌気リアクタを用いた排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水を浄化処理する手段として嫌気性微生物を利用する排水処理装置が、例えば特許文献1や特許文献2により提案されている。図8に示すように、従来の嫌気性微生物を利用する排水処理装置では、原水供給源1の排水はポンプ2を駆動することによって水配管ラインL1を通って嫌気リアクタ121の底部に導入される。このポンプ供給された排水は、嫌気リアクタ121内に投入され、リアクタ下部に沈降滞留する嫌気性微生物グラニュール部122の嫌気性微生物と接触することにより、当該微生物の浄化機能がはたらいて排水中の有機汚濁物質が分解される。この分解反応は、特許文献1の段落[0044]に記載されているように、高分子の有機汚濁物質が、嫌気性微生物の中の酸発酵菌により、下式(1)に従って脂肪酸やアミノ酸等に分解される。さらに、酸発酵菌により下式(2)に従って脂肪酸、アミノ酸等が酢酸まで分解される。また、嫌気性微生物の中のメタン発酵菌により下式(3)に従って酢酸がメタンと二酸化炭素とに分解される。
【0003】
有機汚濁物質(高分子の炭水化物、脂肪、蛋白質)*[酸発酵菌]
→ 脂肪酸、アミノ酸(R−COOH、RCHNHCOOH) …(1)
脂肪酸*[酸発酵菌] → 酢酸(CHCOOH) …(2)
酢酸*[メタン発酵菌] → メタン(CH)+二酸化炭素(CO)…(3)
さらに、分解処理された水は、第1の上澄み部123を上昇移動し、中心に芯を具備するひも状接触材たる嫌気性微生物担体部125と接触する。この担体部125には、嫌気性微生物グラニュール部122のグラニュールが壊れたり、微小なグラニュールが生じたりして、これらの一部が上昇して接触することにより当該担体部125の担体の表面に付着固定されている。この担体部125に固定されている嫌気性微生物と水中に残存した有機汚濁物質とが再び接触することにより、残存有機汚濁物質が分解され、さらに浄化処理される。嫌気性微生物処理された水は、嫌気リアクタ121から越流部127および水配管L2を順次通って次工程の処理装置4に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−028720号公報、段落0044
【特許文献2】特開2008−029993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来装置においては以下の不都合を生じる。
【0006】
(i)グラニュールや原水由来の浮遊物質にガスが付着して比重が小さくなり、リアクタ系外にグラニュールや浮遊物質が流出しやすい(処理水質の悪化を招く)。
【0007】
嫌気性微生物グラニュール部122のグラニュール(粒子径1〜10mm)は、沈降速度が1〜20m/時間以上あるので、その沈降速度以下の上向流速度であれば、嫌気性微生物グラニュール部122から上方に浮上流出しない。また、このグラニュールが壊れて微小になった微小グラニュール(粒子径0.1〜1mm)にあっても、上記沈降速度よりも小さくなるが、嫌気リアクタ121の上方に配置した嫌気性微生物担体部125の担体表面に付着固定されるので、通常その担体部125を通過して、さらに上方に流出する量は少ない。
【0008】
しかし、この嫌気性微生物グラニュール部22で、上記(1)〜(3)式の反応が促進されると、メタンガスやCO2ガスが多量に発生して、これらのガスが嫌気性微生物グラニュールや嫌気リアクタの下部に未分解で残存している原水由来のSSの表面に多量に付着する。また、嫌気性微生物担体部25の表面に付着固定された微小グラニュールにも、同様のガスが多量に発生してこのガスがこの微小グラニュール表面にも付着することとなる。
【0009】
これらのグラニュールや微小グラニュール、原水由来の浮遊物質に多量にガスが付着することにより、これらは比重が小さくなるため、浮力を有し、沈降速度が低下し、上昇線速度が0.01〜1m/sec(36〜3600m/h)と非常に大きくなる。このように、上昇線速度が大きくなると、嫌気性微生物担体部25に付着固定されずに、嫌気リアクタ21上方に流出され、ひいては嫌気リアクタ処理水3内として流出することとなる。これらの作用を模式化したのが、図9である。通常のグラニュール及び原水由来の浮遊物質30は担体部芯部125bを有する担体部ひも部125cの表面と接触して、この表面に付着固定される。一方、ガス付着グラニュール及び付着浮遊物質32はメタンガスを多量に付着しているため、前述の通り高い上昇線速度を有し、担体部ひも部125cの表面と接触するものの、ガスの浮力による上昇線速度が高いため、当該表面に付着固定されずに、通過してさらに上昇して、流出されるということが生じた。
【0010】
従って、上述したように、ガス付着グラニュール及び浮遊物質32がリアクタ系外に流出することにより以下の問題を生じる。
【0011】
(a)嫌気リアクタ21内の嫌気性微生物グラニュール部22の量が低減することにより、酸発酵菌やメタン発酵菌の量が低減し、上記(1)式の反応が抑制され、かかる有機汚濁物質の浄化処理も悪化し、嫌気リアクタ処理水の処理水質が悪化する。
【0012】
(b)原水由来の浮遊性の有機汚濁物質が(1)式の加水分解反応過程により、分解(可溶化)する前に流出してしまうことにより、未処理のまま流出し、嫌気リアクタ処理水の処理水質が悪化する。
【0013】
特許文献2の従来装置は、リアクタの中央部に気固液分離ゾーンを形成し、その気固液分離ゾーンより上方にあるリアクタ内の排水をグラニュールとともにリアクタ下部に戻す循環ラインを設け、グラニュールの系外への流出を防止するようにしている。しかし、このような循環ラインにより高い上昇線速度を有するメタンガス付着グラニュール及びガス付着浮遊物質をとらえることは難しく、この従来装置の循環ラインだけではグラニュール及び浮遊物質の系外流出を十分に防止することはできない。
【0014】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、グラニュール及び浮遊物質が系外に流出するのを有効に防止することができる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る排水処理装置は、底部に導入口を有するリアクタ本体と、前記導入口を介して前記リアクタ本体内に処理対象となる排水を供給し、前記リアクタ本体内において前記排水の上昇流を形成する排水供給手段と、前記リアクタ本体内に嫌気性微生物を投入し、凝集させ、沈降させることにより、前記嫌気性微生物の凝集体からなるグラニュールが前記リアクタ本体内の下部に滞留して流動床を形成するグラニュール部と、前記リアクタ本体内において前記グラニュール部よりも上方に配置され、前記嫌気性微生物を担持可能な担体を有する担体部と、前記担体部の上方に処理水を排出する処理水排出手段と、前記リアクタ本体内の嫌気性条件下において発生するガスが付着したガス付着グラニュールおよび前記ガスが前記排水中の浮遊物質に付着したガス付着浮遊物質が前記リアクタ本体内で前記排水の上昇流に伴われて前記リアクタ本体内で移動する際に、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が前記担体と接触しないように前記リアクタ本体内で前記担体部との間を仕切られ、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を前記担体部よりも上方に誘導し、前記リアクタ本体内の水面に浮上させ、前記グラニュールから前記付着ガスを分離するとともに、前記浮遊物質から前記付着ガスを分離する気固液分離部と、を具備することを特徴とする。
【0016】
本願明細書中の用語を次のように定義する。
【0017】
「グラニュール」とは、嫌気性の糸状メタン菌が絡み合い直径が数ミリメートルの粒状になった菌凝集物をいう。グラニュールは、排水処理装置の下部に滞留する流動床を形成し、排水中に含まれる溶解性の有機物を分解して主な副生成物としてメタンガスを発生させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水処理装置によれば、グラニュールにガスが付着して上部に浮上した場合であっても、グラニュールをリアクタ系外に流出させることなく、嫌気リアクタ内の嫌気性微生物グラニュール部や嫌気性微生物担体部の表面に付着した酸発酵菌やメタン発酵菌などの嫌気性微生物の量を高濃度に維持することができる。
【0019】
また、原水由来の浮遊物質の流出を防止することにより、嫌気リアクタ内に長く蓄積させ、嫌気微生物により分解させることにより、処理水を悪化させることなく、安定した水処理運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図2】本発明装置内でのグラニュールの動きを説明するための模式図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図8】従来の排水処理装置を示す構成ブロック図。
【図9】従来装置内でのグラニュールの動きを説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための好ましい形態を以下に説明する。
【0022】
(1)本発明の排水処理装置は、底部に導入口を有するリアクタ本体と、前記導入口を介して前記リアクタ本体内に処理対象となる排水を供給し、前記リアクタ本体内において前記排水の上昇流を形成する排水供給手段と、前記リアクタ本体内に嫌気性微生物を投入し、凝集させ、沈降させることにより、前記嫌気性微生物の凝集体からなるグラニュールが前記リアクタ本体内の下部に滞留して流動床を形成するグラニュール部と、前記リアクタ本体内において前記グラニュール部よりも上方に配置され、前記嫌気性微生物を担持可能な担体を有する担体部と、前記担体部の上方に処理水を排出する処理水排出手段と、前記リアクタ本体内の嫌気性条件下において発生するガスが付着したガス付着グラニュールおよび前記ガスが前記排水中の浮遊物質に付着したガス付着浮遊物質が前記リアクタ本体内で前記排水の上昇流に伴われて前記リアクタ本体内で移動する際に、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が前記担体と接触しないように前記リアクタ本体内で前記担体部との間を仕切られ、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を前記担体部よりも上方に誘導し、前記リアクタ本体内の水面に浮上させ、前記グラニュールから前記付着ガスを分離するとともに、前記浮遊物質から前記付着ガスを分離する気固液分離部と、を有している。
【0023】
本発明の装置では、気固液分離部によりグラニュールや浮遊物質(SS)の移動経路を担体部から仕切っているため、ガス付着グラニュールおよびガス付着SSが担体と接触することなく、排水の上昇流に伴われて液面部まで浮上し、越流することなく液面部にて撹拌され、付着ガスがグラニュールやSSから分離される。ガス離脱グラニュールとガス離脱SSは、水の比重より大きい元の比重に戻るため、リアクタ本体の下部に沈降する(図2)。この沈降過程において、ガス離脱グラニュールおよびSSは、担体と接触することなく沈降経路を通ってグラニュール部まで沈降するので、担体部に目詰まりを生じさせない。このようにしてリアクタ本体からのグラニュールの流出が有効に防止される。
【0024】
(2)上記(1)において気固液分離部が担体部の下部に配置されていることが好ましい。ガス付着グラニュール及びガス付着浮遊物質の大部分は、リアクタ本体内を上昇する過程において先ず気固液分離部に回収され、グラニュールから付着ガスが離脱される。ごく一部が、下部円錐部11の外側の測方から上昇するもののそれらも、気固液分離部を設置しない場合に比べると、量が少なく、また担体設置の効果により、補捉されるものもあるため、リアクタ本体からのグラニュール及び浮遊物質の流出の大部分を防止することができる。
【0025】
(3)上記(1)または(2)のいずれかにおいて、気固液分離部は、担体部の側方に並行配置され、担体と接触しないようにガス付着グラニュールおよびガス付着浮遊物質が通流する経路を形成する経路形成部材12,20と、担体部の上方に配置され、経路部材を通過した前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を浮上させる水面を周囲から隔離するように取り囲み、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が前記リアクタ本体から流出するのを防止するとともに、前記グラニュールおよび前記浮遊物質から前記付着ガスの分離を促進させる液面囲い部材16(外部円筒管の上部が水面より高い位置にあればよい)と、を有することが好ましい(図1、図3〜図7)。経路形成部材によって形成される経路は担体部から仕切られているため、ガス付着グラニュール及び浮遊物質が担体部の担体に接触して捕捉されることなく、上昇(浮上)と下降(沈降)を繰り返すことになり、リアクタ本体からのグラニュール及び浮遊物質の系外流出が有効に防止される。また、液面囲い部材によってガス付着グラニュール及び浮遊物質の浮上水面を周囲の液面部から隔離しているため、浮上したグラニュール及び浮遊物質はオーバーフローして流出することなく液面部にて撹拌され、グラニュール等と付着ガスとの分離が促進される。
【0026】
(4)上記(3)において、経路形成部材は、付着ガスが分離したガス離脱グラニュールおよびガス離脱浮遊物質をグラニュール部に戻すための沈降経路を形成する内筒20と、この内筒を取り囲み該内筒との間にガス付着グラニュールおよびガス付着浮遊物質を上昇させるための上昇経路を形成する外筒12と、を有することが好ましく、また、液面囲い部材16は、外筒12の上部に連続して配置され、リアクタ本体内の液面部15の一部を取り囲むことが好ましい(図3〜図7)。内筒20と外筒16を組み合わせた二重管構造を用いることにより、ガス付着グラニュール及び浮遊物質が上昇して液面部まで浮上する上昇経路と、ガス離脱グラニュール及び浮遊物質が沈降してグラニュール部まで沈殿する沈降経路とを別々の経路とし、ガス離脱グラニュール及び浮遊物質の沈降速度を速めることができる。
【0027】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、気固液分離部は、リアクタ本体の内周面から中央に向けて突出する流出防止構造体を有することが好ましい(図4〜図6)。第1の流出防止構造体によりリアクタ本体中央部におけるグラニュールの上昇流および下降流が担体部と接触干渉しない。さらに、第2及び第3の流出防止構造体50,51によりリアクタ本体の内周縁部の僅かな間隙を通ってグラニュール上昇流が担体部に浸入することが防止される。
【0028】
(6)上記(3)乃至(5)のいずれかにおいて、気固液分離部が、担体部の上部に配置されることが好ましく(図7)、または担体部の上部および下部に配置されることが好ましい(図7と図8の組合せ)。浮遊物質(SS)を多量に含む下水を処理する場合、SSは非常に比重が小さいためその一部が、担体部の下部に配置した流出防止構造体11の下端とリアクタ本体21aの内周壁との間隙を通過してそのまま上昇し、最上部の液面部15まで浮上するか、あるいは、グラニュール部22又は担体部14で、メタンガスを付着させたガス付着SSとなり、液面部15まで到達する。これらの浮上SSが、液面部15、越流部27、水配管ラインL2を順次介して、嫌気リアクタ処理水とともに系外に排出されるおそれがある。そこで、多量のSSを含む下水のような排水を処理する場合に、担体部の上部に流出防止構造体11Aを配置することにより、浮上SSの系外排出がさらに防止される。
【0029】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかにおいて、処理水排出手段により前記リアクタ本体から排出される処理水を受け入れて、好気性微生物により処理する好気リアクタをさらに有することが望ましい(図6)。先ず嫌気リアクタにおいて嫌気性微生物グラニュールにより排水を嫌気処理し、これに引き続き嫌気処理水を好気リアクタにおいて好気性微生物により好気処理することで、下水などの有機排水を効率よく低コストで浄化処理でき、法律により規制される排水基準を容易に満たすことができる。
【0030】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の形態を説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態の排水処理装置1は、原水供給源2、ポンプ3、嫌気リアクタ21および嫌気処理水受入部4を備えている。原水供給源2は図示しない排水発生源から下水などの有機排水が流れ込み、流入した排水を一時的に貯留しておく設備である。原水供給源2の出口と嫌気リアクタ21の底部の導入口とは配管ラインL1を介して接続され、ポンプ3の駆動により排水が原水供給源2からラインL1を通って嫌気リアクタ21の底部に導入されるようになっている。また、嫌気リアクタ21の上部の排出口と嫌気処理水受入部4とは配管ラインL2を介して接続され、越流部27にオーバーフローする嫌気処理水が嫌気リアクタ21からラインL2を通って次工程の嫌気処理水受入部4の上部に供給されるようになっている。また、嫌気リアクタ21の最上部の排出口と図示しないメタンガス処理装置またはメタンガス回収利用装置とは配管ラインL3を介して接続され、図示しないポンプの駆動によりメタンガスが嫌気リアクタ21の気相部28からラインL3を通ってメタンガス処理装置またはメタンガス回収利用装置に排出されるようになっている。
【0033】
嫌気リアクタ21は、円錐状の下部および円筒状の本体部を備えるリアクタ本体21aを有している。上述した排水導入口はリアクタ本体21aの円錐状下部の最下部に設けられている。リアクタ本体21aの上部は閉じられ、内部が密閉されている。
【0034】
リアクタ本体21aの上部には越流部27が設けられ、液面部15の水位を超える処理水が越流部27からオーバーフローして排出ラインL2を通って嫌気処理水受入部4に流れ込むようになっている。嫌気処理水受入部4は、次工程の処理を行うための設備の一部に該当し、例えば好気性微生物を有する好気リアクタである。
【0035】
また、リアクタ本体21aの上部には担体部14が設けられている。担体部14は、越流部27の直下に配置された担体支持部24により相互に間隔をあけて吊り下げ支持された多数のひも状接触材13を有している。これらのひも状接触材13は所定の嫌気性微生物を担持する多数の担体25が取り付けられている。
【0036】
リアクタ本体21aの下部には、嫌気性微生物グラニュールが嫌気リアクタの有効容積(満水時の水容積)の約1/4(約25%)が充填されており、嫌気性微生物グラニュール部22が形成されている。嫌気性微生物グラニュール部22は、所定の嫌気性微生物をリアクタ本体21a内に投入し、沈殿させ、凝集させることにより所望のグラニュール30の流動床が生成されるものである。また、下水などの浮遊性の汚濁物質を含む水を原水とする場合、このグラニュール部21には、配管L1を介して流入する浮遊物質(SS)もこの部分に蓄積する。グラニュール部22の嫌気性微生物グラニュール30及び比重の大きな浮遊物質は、比重が水より大きいためリアクタ本体21aの下部の排水中に滞留して流動床を形成するが、排水中に含まれる有機成分がメタン発酵菌により分解される際に上式(3)に従って発生するメタンガスや二酸化炭素ガスが表面に付着すると、ガス付着グラニュール及びガス付着浮遊物質32となり、比重が水より小さくなり、リアクタ内の排水の上昇流にのって浮上し、リアクタ系外に流出しやすくなる。しかし、本発明装置は後述する気固液分離部(図2参照)を有するため、付着ガス31を効率よく分離し、処理水中へのグラニュール及び浮遊物質の流出を防止することができる。
【0037】
リアクタ本体21a内には気固液分離部としての流出防止構造体10が設けられている。流出防止構造体10は、リアクタ本体21a内においてグラニュール部22よりも上方に位置するように配置され、グラニュール及び浮遊物質30のリアクタ系外への流出を防止するためのものである。流出防止構造体10は、担体部14の下部に配置された下部円錐部11と、上部円筒部12と、液面囲い部材16とを備えている。下部円錐部11は、下方に向かって拡径する円錐形状をなし、グラニュール部22の直上に位置し、かつ、担体部14の直下に位置している。すなわち、下部円錐部11は、グラニュール部22と担体部14との間に挟まれたスペースに配置されている。下部円錐部11の大径部は、下部円錐部11とリアクタ本体21aとの間隙を小さくしてガス付着グラニュール及び浮遊物質32の担体部14への侵入を防ぐために、リアクタ本体21aの円筒部分の内径より少しだけ小さい。
【0038】
上部円筒部12は、その下端開口が下部円錐部11の中央部に連通し、担体部14の中央部分を貫通して上方の液面部15に達している。さらに上部円筒部12の上端部は、液面囲い部材16に連続している。液面囲い部材16は、液面部15より上方に突出するように設けられ、その上端は液面部15の高さレベルより高いところに位置している。上部円筒部12により、ガス付着グラニュール及び浮遊物質32が上昇する経路17とガス離脱グラニュール及び浮遊物質30が沈降する経路19とを兼ねるグラニュール及び浮遊物質移動経路が形成されている。また、液面囲い部材16により、グラニュール及び浮遊物質30から付着ガス31が撹拌作用によって離脱する経路18(図2参照)が形成されている。
【0039】
嫌気リアクタ21の最上部には所定スペースの気相部28が形成されている。この気相部28とその直下の液面部15とは連続しており、液面部15に浮上したメタンガス気泡が気相部28に開放されるようになっている。さらに、気相部28は、嫌気リアクタ21の最上部の排出口およびガス排出ラインL3を介してメタンガス処理装置(図示せず)またはメタンガス回収装置(図示せず)に連通している。
【0040】
本実施形態では図示のように液面囲い部材16の内径を上部円筒部12の内径と同じにしているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、液面囲い部材16の内径を上部円筒部12の内径よりも大きくすることができる。このようにすると液面囲い部材16で囲われる液面部15の面積が増加するため、図2に示すように液面部15に浮上したガス付着グラニュール及び浮遊物質32から付着ガス31が離脱しやすくなるというメリットがある。
【0041】
本実施形態の作用を説明する。
【0042】
下水は、ポンプ3の駆動により原水供給源2から排水供給ラインL1を介して嫌気リアクタ本体21aの底部に導入され、嫌気リアクタ21内に投入されている嫌気性微生物グラニュール部22内の嫌気性微生物グラニュール30によって、下水中の有機性汚濁物質が上式(1)〜(3)の反応にしたがって分解され、排水が浄化される。
【0043】
図2に示すように、分解・浄化処理後、嫌気性微生物グラニュール部22内のグラニュール30の一部は、その表面に気泡化したメタンガス31が多量に付着してガス付着グラニュール32となる。下水などの浮遊性の汚濁物質を含む水を原水とする場合、このグラニュール部21には、配管L1を介して流入する浮遊物質(SS)も蓄積し、その一部はガス付着浮遊物質となる。また、このガス付着グラニュール及び浮遊物質32は、比重が水よりも小さいことから上昇線速度が非常に高くなって上昇し、下部円錐部11を介して上部円筒部12に集められ、上部円筒部12内の上昇経路17を通って嫌気リアクタ21上部の液面部15まで到達し、液面に浮上する。この液面部15では、液面部15での撹拌反応によってガス付着グラニュール及び浮遊物質32が撹拌され、液面部15または液面直下の経路18において気相部28の大気との気液接触が起こり、グラニュール及び浮遊物質30から付着メタンガス31が離脱する。付着ガス31の離脱により、ガス離脱グラニュール及び浮遊物質30は水の比重1.0より大きい元の比重に戻る。グラニュール及び浮遊物質30から離脱したメタンガス31は、気相部28に一時的に貯留され、ラインL3のバルブ(図示せず)を定期的に又は必要に応じて開けることにより、気相部28から前述のメタンガス処理装置またはメタンガス回収利用装置に排出され、メタンガス処理装置により無害化処理されるか、あるいはメタンガス回収利用装置により電気エネルギ源または熱エネルギ源として利用される。
【0044】
次いで、元の比重に戻ったガス離脱グラニュール及び浮遊物質30は、本来の沈降速度で沈降経路19を通って沈降し、嫌気リアクタ下部のグラニュール部22に沈殿する。
【0045】
一方、浄化された処理水は、流出防止構造体10の下部円錐部11の最下端部と、嫌気リアクタ21の側面内部との間隙部を通過し、その後、流出防止構造体10の側面部に配した嫌気性微生物担体部14内を浮上移動し、さらに液面部15、越流部27、排出ラインL2を順次通過して、嫌気リアクタ処理水として嫌気リアクタ21から排出され、次工程の装置4(例えば好気リアクタ)に送られる。
【0046】
また、気固液分離部を通らず、気固液分離部の外側から上昇したグラニュール及び浮遊物質30は、嫌気性微生物担体部25内の間隙部を通過する際に、嫌気性微生物担体部14内のひも状接触材13と接触する。これによりひも状接触材13の表面にグラニュール及び浮遊物質30が捕捉され、グラニュール30は処理水に随伴されてリアクタ系外に流出することなく、嫌気リアクタ21の内部に留まる。
【0047】
本実施形態の効果を以下に列記する。
【0048】
(1)簡易構造の流出防止構造体の採用で、設置とメンテナンスが容易である。
【0049】
流出防止構造体10は、下部円錐部11と上部円筒部12とを一体化した単一の板で構成されているので、上部に吊り下げる等の簡易な構造でよいという利点がある。また、このような吊り下げ構造の流出防止構造体10を採用することにより、流出防止構造体10が破損した場合やリアクタ本体の内部が汚れた場合に、メンテナンスやクリーニングが必要になったときであっても、リアクタ21の上部の蓋を開けることにより流出防止構造体10をリアクタ内から引き出し、リアクタの外部で清掃等の作業を容易にすることができる。
【0050】
(2)嫌気性微生物担体部のひも状接触材の採用で、設置とメンテナンスが容易である。
【0051】
上記(1)の効果と同様に、嫌気性微生物担体部14として、ひも状接触材13を上部から吊り下げる構造としたので、設置とメンテナンスが容易となる。また、当該ひも状接触材13は、そのひも状構造により、グラニュール30を捕捉しやすいので、グラニュール30のリアクタ系外への流出防止をさらに促進することができる。
【0052】
なお、担体はひも状のみに限られるものではなく、嫌気性微生物担体部の上部、下部をメッシュで区切り、その間に敷き詰められた円筒状、球状、角状などの形状のプラスチック担体を用いるようにしてもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
次に図3を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0054】
図3に示すように、本実施形態の排水処理装置1Aでは、流出防止構造体10Aが二重管構造の外筒12および内筒20を有している。内筒20は、外筒12のなかに挿入され、上端が液面部15に開口し、かつ、下端がグラニュール部22の直上スペースに開口し、ガス離脱グラニュール30が沈降する沈降経路41dを形成する経路形成部材である。また、内筒20は、図示しない連結部材により流出防止構造体10Aと連結され、一体化されている。
【0055】
外筒12は、内筒20の周囲を取り囲み、内筒20との間にガス付着グラニュール及び浮遊物質32が上昇する上昇経路41bを形成する経路形成部材である。外筒12の上端部は、ほぼ同径の液面囲い部材16に連続している。
【0056】
本実施形態の作用を説明する。
【0057】
メタンガス付着グラニュール及び浮遊物質32は付着したメタンガス31の浮力によって流出防止構造体10Aの下部円錐部11に集められ、経路41aから外筒12の経路41bを通過して最上部の液面部15まで達する。液面囲い部材16によって取り囲まれた液面部15において、上昇経路41bを通って液面部15に到達したガス付着グラニュール及び浮遊物質32(図中の黒丸)は、撹拌経路41cにおいて撹拌作用によりグラニュールから付着ガスが離脱し、ガス離脱グラニュール及び浮遊物質30(図中の白丸)となって内筒20に流れ込み、沈降経路41dを通って沈降し、リアクタ下部のグラニュール部22に沈殿する。
【0058】
本実施形態の効果を説明する。
【0059】
本実施形態では、外筒12と内筒20からなる二重管構造を採用したことにより、メタンガス付着グラニュール及び浮遊物質32の上向流と、メタンガス離脱グラニュール及び浮遊物質107の下降流とを別々の経路に分けて通流させることが可能となり、グラニュールとメタンガスとの気液分離反応が促進され、メタンガス付着グラニュール及び浮遊物質が減少するので、メタンガスの回収と、グラニュールの嫌気性微生物グラニュール部22への定着と浮遊物質が嫌気リアクタ内に長く滞留することにより、徐々に嫌気性微生物による分解が進み、処理水質の悪化を防止するとともに浮遊物質の分解(メタンガス化)が促進されるというメリットがある。
【0060】
また、内筒20を流出防止構造体10Aと連結して一体化することにより、上部から吊り下げ構造として設置やメンテナンスも容易となるメリットがある。
【0061】
(第3の実施形態)
次に図4を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0062】
図4に示すように、本実施形態の排水処理装置1Bでは、流出防止構造体10Bの下方に別に第2の流出防止構造体50を設置している。この第2の流出防止構造体50は、リアクタ本体21aの内周壁から突出する断面が三角形状の環状部材からなり、流出防止構造体10Bの下部円錐部11とリアクタ本体21aとの間の僅かな間隙を通って担体部14に侵入しようとするガス付着グラニュール及び浮遊物質32を阻止するものである。
【0063】
本実施形態の作用を説明する。
【0064】
本実施形態では、流出防止構造体10Bの下部円錐部11とリアクタ本体21aとの間の経路41fを通って担体部14に侵入しようとするガス付着グラニュール及び浮遊物質32を第2の流出防止構造体50により阻止することができ、ガス付着グラニュール及び浮遊物質32の流出がさらに有効に防止される。
【0065】
本実施形態の効果を説明する。
【0066】
本実施形態では、第2の流出防止構造体50により経路41fが阻害されるため、嫌気性微生物グラニュール部22の周縁部に存在しているグラニュール及び浮遊物質32がそのまま上昇して、流出防止構造体10Aの外側に流出するのを防止することができ、グラニュール及び浮遊物質の少量の流出をも防止することができ、前述よりも、さらに嫌気性微生物グラニュール部22の嫌気性微生物濃度を高く維持すると同時に、浮遊物質の流出による処理水質の悪化も防止できるというメリットがある。
【0067】
(第4の実施形態)
次に図5を参照して本発明の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0068】
図5に示すように、本実施形態の排水処理装置1Cでは、さらに流出防止構造体10Cの下部円錐部11の下方に、第3の流出防止構造体51を下部円錐部11と平行に配置している。
【0069】
本実施形態の効果を説明する。
【0070】
第3の流出防止構造体51が無い場合には、図4に示すように下降経路41eの流れと上昇経路41gの流れとが衝突することにより、図5に示す経路41hのように上向流が屈曲する場合がある。この屈曲した経路41hが生じた場合には、グラニュール及び浮遊物質の一部がこの経路41hを介して流出防止構造体10Cの外部に流出するおそれがある。しかし、本実施形態の装置1Cでは、第3の流出防止構造体51を配置しているので、この経路41hが第3の流出防止構造体51により遮断されて、経路41aの流れとなって上方に移動するようになる。従って、さらに、グラニュール及び浮遊物質のさらに完全な流出防止を図ることが可能となる。
【0071】
(第5の実施形態)
次に図6を参照して本発明の第5の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0072】
図6に示すように、本実施形態の排水処理装置1Dでは、嫌気リアクタ21の後段に好気リアクタ60を配置している。好気リアクタ60は、嫌気リアクタ処理水を原水としてラインL2により嫌気リアクタ21の排出口に上部が接続されている。この好気リアクタ60の上部には担体支持部61が設けられている。担体支持部61には、ひも状接触材たる好気性微生物担体部62が吊り下げ配置されている。当該担体部62の下部には、下部空隙部63が配置され、この側面部には水配管ラインL4を介して、好気リアクタ処理水タンク64が接続されている。
【0073】
本実施形態の作用を説明する。
【0074】
嫌気リアクタ21は、前述の図1〜図5に示す通り、嫌気性微生物グラニュール部22で下水1中の有機性汚濁物質を浄化処理するとともに、これらのグラニュール及び浮遊物質にメタンガスが付着結合して浮力により上昇した場合でも、流出防止構造体10Dによりグラニュール及び浮遊物質の流出を防止するとともに、嫌気性微生物担体部14により浄化処理を行う。この嫌気リアクタ処理水は、嫌気リアクタ21からラインL4を通って好気リアクタ60の上部担体支持部61、ひも状接触材をもつ好気性微生物担体部62に供給される。このひも状接触材に付着した好気性微生物により、嫌気リアクタ処理水中に残存する有機性汚濁物質や、嫌気リアクタ21内の嫌気性微生物の1種である硫酸還元菌により生じた溶存性の硫化水素は、下式(4)と(5)の反応にしたがって分解浄化処理される。
【0075】
有機汚濁物質 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
((CxHyOz) + (x+y/4-z/2)O → xCO + y/2 HO) …(4)
硫化水素 + 酸素 → 硫酸 + 水素イオン
(HS + 2O → SO +2H) …(5)
本実施形態の効果を説明する。
【0076】
嫌気リアクタ21のみならず、好気リアクタ60で上記(4)式のように有機性汚濁物質を仕上げ処理するため、有機性汚濁物質がほとんど除去できた好気性処理水が得られるので、排出先の河川や湖沼、下水道等の水質保全に大きく寄与できるというメリットを有する。また、この好気リアクタ60は、好気性微生物担体部62としてひも状接触材を用いているので、この接触材の表面に、下水中に含まれるSS成分(Suspended Solids、浮遊物質)、嫌気リアクタ21内の嫌気性微生物の微小な細菌もしくは細菌群が、負荷変動や下水中の阻害物質混入などにより増殖速度が低下したり死滅したりして、流出した場合であっても、この好気リアクタ60の好気性微生物担体部62中のひも状接触材により結合し捕獲されるので、好気リアクタ処理水中に流出することなく、当該処理水の水質が良好に維持できるというメリットも有する。
【0077】
本実施形態では、好気リアクタ、嫌気リアクタともにひも状の担体を一例として挙げたが、この担体は微生物が付着しやすいものであればどのようなものでもよく、例えば、ひも状でなくとも一般的に水処理用に市販されている円筒状、球状、角状などのプラスチック担体であってもよい。
【0078】
(第6の実施形態)
次に図7を参照して本発明の第6の実施形態について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0079】
図7に示すように、本実施形態の排水処理装置1Eでは、担体部14の上方に流出防止構造体10Eを設けている。嫌気リアクタ21内下部に配置した嫌気性微生物グラニュール部22の、上部に嫌気性微生物担体部14を配し、その嫌気性微生物担体部104bの上部には、下部円錐部101bと上部円筒部12bとから成る流出防止構造体10Eを配している。この流出防止構造体10E内には、内筒20が液面囲い部材としての上部円筒部16の中央部から嫌気性微生物担体部14の下方でかつ嫌気性微生物グラニュール部22の上方まで垂直方向に配されている。水流の移動経路としては、経路41jから経路41mまでを有している。
【0080】
本実施形態の作用を説明する。
【0081】
前記と同様に、下水の上向流によって、嫌気性微生物グラニュール部22を通過して、経路41i、嫌気性微生物担体部14、経路41kまたは経路41jを順次介して、メタンガス付着グラニュール及び浮遊物質32は液面部15に到達し、ここで気液分離により付着したメタンガスを離脱させてメタンガス離脱グラニュール及び浮遊物質30となる。このガス離脱グラニュール及び浮遊物質30は、さらに内筒20内の経路41mを通って沈降し、嫌気性微生物グラニュール部22に戻される。
【0082】
嫌気性微生物担体部14では、担体に付着した嫌気性微生物により、嫌気リアクタのグラニュール部22で分解できなかった有機物の分解反応が生じる。この分解過程でもメタンガスが生じる。図2の構成の場合、この担体部で発生したガスにより、担体に付着したグラニュールや浮遊物質を剥離させ、処理水を悪化する可能性がある。
【0083】
担体の上部に気固液分離部を設置する効果として、担体に付着した浮遊物質またはグラニュールがガスとともに剥離し、流出することを防止できるというメリットを有する。
【0084】
また、他の効果として、内部管20を設けたので、ガス離脱グラニュール及び浮遊物質32を、ポンプ等の動力を使わずに、その内部管20の最上部で逆転する水流のみだけで、嫌気性微生物グラニュール部22まで返送することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B,1C,1D,1E…排水処理装置、
2…原水供給源、3…ポンプ、4…嫌気処理水受入部(後工程処理槽)、
10,10A,10B,10C,10D,10E…流出防止構造体(気固液分離部)、
11…下部円錐部(第1の流出防止構造体、気固液分離部)、
11A…上部円錐部(気固液分離部)、
12…外筒(上昇経路形成部材、第1の流出防止構造体、気固液分離部)、
13…ひも状接触材、14…担体部、15…液面部、
16…液面囲い部材(気固液分離部)、
17…ガス付着グラニュールの移動経路(上昇経路)、
18…ガス離脱グラニュールの移動経路(撹拌離脱経路)、
19…ガス離脱グラニュールの移動経路(沈降経路)、
20…内筒(沈降経路形成部材、第1の流出防止構造体、気固液分離部)、
21…嫌気リアクタ、21a…リアクタ本体、
22…グラニュール部、
24…担体支持部、
25…担体、
27…越流部、
30…グラニュール及び浮遊物質(ガス離脱グラニュール及び浮遊物質)、
31…ガス(メタンガス、二酸化炭素ガス)、
32…ガス付着グラニュール及びガス付着浮遊物質、
41a〜41e,41f,41g,41h,41j〜41n…グラニュール及び浮遊物質移動経路、
50…第2の流出防止構造体(気固液分離部)、
51…第3の流出防止構造体(気固液分離部)、
60…好気リアクタ、61…担体支持部、62…好気性微生物担体部、
63…下部空隙部、64…好気性リアクタ処理水槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に導入口を有するリアクタ本体と、
前記導入口を介して前記リアクタ本体内に処理対象となる排水を供給し、前記リアクタ本体内において前記排水の上昇流を形成する排水供給手段と、
前記リアクタ本体内に嫌気性微生物を投入し、凝集させ、沈降させることにより、前記嫌気性微生物の凝集体からなるグラニュールが前記リアクタ本体内の下部に滞留して流動床を形成するグラニュール部と、
前記リアクタ本体内において前記グラニュール部よりも上方に配置され、前記嫌気性微生物を担持可能な担体を有する担体部と、
前記担体部の上方に処理水を排出する処理水排出手段と、
前記リアクタ本体内の嫌気性条件下において発生するガスが付着したガス付着グラニュールおよび前記ガスが前記排水中の浮遊物質に付着したガス付着浮遊物質が前記リアクタ本体内で前記排水の上昇流に伴われて前記リアクタ本体内で移動する際に、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が前記担体と接触しないように前記リアクタ本体内で前記担体部との間を仕切られ、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を前記担体部よりも上方に誘導し、前記リアクタ本体内の水面に浮上させ、前記グラニュールから前記付着ガスを分離するとともに、前記浮遊物質から前記付着ガスを分離する気固液分離部と、
を具備することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記気固液分離部が前記担体部の下部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記気固液分離部は、
前記担体部の側方に並行配置され、前記担体と接触しないように前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が通流する経路を形成する経路形成部材と、
前記担体部の上方に配置され、前記経路形成部材を通過した前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を浮上させる水面を周囲から隔離するように取り囲み、前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質が前記リアクタ本体から流出するのを防止するとともに、前記グラニュールおよび前記浮遊物質から前記付着ガスの分離を促進させる液面囲い部材と、
を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記経路形成部材は、前記付着ガスが分離したガス離脱グラニュールおよびガス離脱浮遊物質を前記グラニュール部に戻すための沈降経路を形成する内筒と、前記内筒を取り囲み前記内筒との間に前記ガス付着グラニュールおよび前記ガス付着浮遊物質を上昇させるための上昇経路を形成する外筒と、を有し、
前記液面囲い部材は、前記外筒の上部に連続して配置され、前記リアクタ本体内の液面部の一部を取り囲むことを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記気固液分離部は、前記リアクタ本体の内周面から中央に向けて突出する流出防止構造体を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記気固液分離部が、前記担体部の上部に配置されるか、または前記担体部の上部および下部に配置されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記処理水排出手段により前記リアクタ本体から排出される処理水を受け入れて、好気性微生物により処理する好気リアクタをさらに有することを特徴する請求項1乃至6のいずれか1項記載の排水処置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−250159(P2012−250159A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123611(P2011−123611)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【Fターム(参考)】