説明

排水口装置

【課題】排水口の内部表面の汚れの発生をタイムリーに自動検知して住戸人などに報知する排水口装置を提供する。
【解決手段】排水口21の内部に配設され、排水口21内部の特定位置の表面状態を計測する表面計測手段14と、表面計測手段14を所定のタイミングで動作させて計測した表面状態の計測データ13bを、あらかじめ記憶された基準データ13aと比較して、汚れの発生を判別する汚れ判別手段10と、汚れ判別手段10が汚れを判別したときに汚れを報知する報知手段16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクや浴室などの排水口の内部表面に付着した汚れを自動的に検知する排水口装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来には、シンクや浴室の排水口内のゴミ詰まりを検知する技術が種々、提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、浴室の排水トラップの封水にフロートを浮かべ、その高さの変動を監視することによってゴミ詰まりを検知して、清掃タイミングを知らせる技術が開示されている。また特許文献2には、水位センサーにより排出管の詰まりを検知する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平11−181850号公報
【特許文献2】特開平11−128888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排水トラップのゴミ詰まりは、長期にわたって油脂、食物の残滓などが内壁に付着、堆積したことが原因となって発生する場合が多く、排水管詰まりが発見されたときには、堆積した固化物の除去作業がきわめて困難となる可能性が高い。むしろ、排水口の内部表面に視認できる程度の汚れが発生したときに、その汚れを早めに取り除くほうが作業としては簡易に行えるが、そのような汚れを定期的に自動検知できる装置は、従来には提案されていなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、排水管詰まりが発生する前に排水口の内部表面の汚れを自動検知して住戸人などに報知する排水口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の排水口装置は、排水口の内部に配設され、排水口内部の特定位置の表面状態を計測する表面計測手段と、表面計測手段を所定のタイミングで動作させて計測した表面状態の計測データを、あらかじめ記憶された基準データと比較して、汚れの発生を判別する汚れ判別手段と、汚れ判別手段が汚れを判別したときに汚れを報知する報知手段とを備えている。
【0007】
請求項2に記載の排水口装置は、表面計測手段が撮像カメラである。
【0008】
請求項3に記載の排水口装置は、表面計測手段が色差計である。
【0009】
請求項4に記載の排水口装置は、汚れ判別手段が排水トラップの内壁面の汚れの発生を判別するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の排水口装置によれば、排水口の内部表面を所定タイミングで計測して汚れの発生を判別して報知する構成であるため、油脂や残滓が内壁に付着、堆積して固化する前に汚れを自動判別することができ、適切な排水口の清掃タイミングを、住戸人に報知することができる。
【0011】
請求項2に記載の排水口装置によれば、表面計測手段として撮像カメラを設けているため、排水口の内部表面の状態に関する種々の数値データが得られ、客観的に汚れを判断できる。
【0012】
請求項3に記載の排水口装置によれば、表面計測手段として色差計を設けているため、簡易な構成で色差による汚れ発生の判断が行える。
【0013】
請求項4に記載の排水口装置によれば、排水トラップの内壁面の汚れを検出する構成としているため、住戸人は、トラップ内の視認しにくい場所などの汚れを判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面とともに説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を示した、キッチンカウンタのシンクの排水口に対して設けられた排水口装置の基本構成の一例を示したブロック図で、図2は、シンクの排水口の縦断面図である。
【0016】
同排水口装置1は、シンク20の排水口21の内部の表面を計測する表面計測手段を構成する撮像カメラ14と、撮像用の光照射手段15と、その撮像カメラ14を所定のタイミングで動作させて、排水口21の内部の表面状態を計測し、あらかじめ記憶部13に記憶された基準データ13aと比較して、汚れの発生を検出する汚れ判別手段10と、基準データ13aを保存した記憶部13と、汚れを判別したときに汚れを報知する表示ランプ16a、ブザー16b、液晶画面16cなどで構成される報知手段16とを備えている。
【0017】
図2に示すように、排水トラップ22は、トラップ本体22aの上部側に網目状のゴミ収容器23を収納する収納部24を備えるとともに、トラップ本体22aの下部側には封水部25を備えている。この封水部25は、トラップ本体22aの底部から上方に立ち上がる立ち上がり管部26と、その立ち上がり管部26の上方に被せた椀形状の防臭器27とよりなり、この防臭器27は、水平方向に突設した取り付け部28を、トラップ本体22aの受け部29に係合して固定される。また、トラップ本体22aの底部は、排水管31に接続する排水管接続管部30を構成している。
【0018】
撮像カメラ14は、図2の例では、ゴミ収容器23の外周面の表面状態を撮像可能なように、収納部24の周壁に埋め込み設置されている。なお撮像カメラ14と光照射手段15は、防水カバー(不図示)などで防水保護されている。また、排水口21内で撮像を可能とするための光照射手段15は、ハロゲンランプやLEDなどよりなり、カメラ設置位置の近傍に設置されている。
【0019】
なお、撮像カメラ14の設置位置は、図中のA、Bなどの、排水口21内の汚れの付着しやすい特定位置を撮像できる箇所であればいずれでもよく、またそのような箇所に複数のカメラを設置してもよい。Aの位置に設置した場合、カメラの撮像角度によって、防臭器27の上面27aやトラップ本体22aの内壁面、ゴミ収容器23の外底面などの各表面状態の撮像が可能となる。Bの位置の場合は、防臭器27の外周壁面27bの撮像が可能となる。また、操作パネル2の操作によって、撮像カメラ14の撮影角度を動作させて撮影部位を変更できるようにしてもよい。
【0020】
本例では、撮像カメラ14としてCCDカメラを適用しているが、公知のもの例えば、MOS型センサー、CMOS型センサーなども適用可能である。
【0021】
汚れ判別手段10は、CPU11と種々のプログラム12を含んで構成され、内蔵したクロックタイマ(不図示)によって、後述するように、定期的に撮像カメラ14と光照射手段15を動作させて、排水口21内の特定位置の表面汚れを検出するようにしている。
【0022】
また、記憶部13はRAMなどで構成され、撮像画像の比較データである基準データ13aを保存するとともに、撮像カメラ14によって撮像された現画像データ13bなども保存される。
【0023】
上記のCPU11、プログラム12を記憶したROM(不図示)と、RAMなどで構成された記憶部13と、その他の回路部(不図示)と、表示ランプ16aと、ブザー16bと、液晶画面16cとは操作パネル2に内蔵され、その操作パネル2には、排水口21内に配設した撮像カメラ14、光照射手段15が、動力線Lおよび信号線Lを介して接続されている。この操作パネル2は、例えばシンクカウンタ奥の起立壁(不図示)などに載置されるか、起立壁に埋設されて使用される。
【0024】
図3は、同排水口装置1の汚れ検知動作のフローチャートである。また図4は、撮像画像の比較例を示した図である。
【0025】
この汚れ検知動作は、CPU11により、例えば24時間ごとなど一定時間ごとに実行される。実行時刻、周期などは操作パネル2で設定できるようにすればよい。また、利用者が操作パネル2を所定操作することで、不定期に汚れ検知動作をさせる構成としてもよい。
【0026】
汚れ判別手段10は、一定時間間隔などに作動され、光照射手段15と撮像カメラ14を動作させ、排水口21内の特定部位の表面を撮像し、それによって得た現画像データ13bを、あらかじめ数値化され記憶した基準データ13aと比較し、表面汚れが基準を超えたと判断した場合には、表面状態が変化して所定の汚れを発生したものと判定して、表示ランプ16a、ブザー16bなどの報知手段16を作動して汚れ検知を報知する(以上、ステップ101〜104)。
【0027】
例えば、ゴミ収容器23(図2参照)の撮像位置の画像が、清浄時である図4(a)の状態から、網目が目詰まりした図4(b)の状態に変化したときに、汚れを検出できるようにすればよい。
【0028】
基準データ13aとしては、次に示すように種々の比較手法にて、排水口内の特定位置の汚れ発生の検出が行えるように、それら手法に合致した比較対象データがあらかじめ保存されている。
【0029】
汚れ判別手段10は、現画像データ13bについて、各画素をRGBに分解し、各色ごとに輝度分布(ヒストグラム)を集計し、それらの輝度値の平均値、標準偏差、最大値、最小値など算出し、しきい値である基準データ13aと比較して、汚れの発生の有無を検出する。
【0030】
例えば、256階調の輝度値を黒が0として、数値が増加するにつれて、灰色から最終的に白になり、白を255とすると、画素ごとに処理された各画素データの平均値をそれぞれ計算し、それら輝度値の平均値と基準データ13aとを比較することができる。
【0031】
また、現画像データ13bを、L(エルスター・エースター・ビースター)表色系に変換し、得られた明度、色相、彩度を、基準データ13aと比較して汚れを判断してもよい。L表色系によれば、輝度値によるものと比較すると、色調を含む数値化ができるので、色変化による判断も可能となる。
【0032】
撮像カメラ14を使用した汚れ判別手段10としては、上記の手法に限らず、公知の画像認識技術、測色技術も適用できる。また、パターンマッチングで画像を比較判断してもよい。
【0033】
また、汚れ判別手段10により判別した汚れは、表示ランプ16aの点灯、点滅や、ブザー16bの鳴動などで報知するほか、液晶画面16cにメッセージを表示させるようにしている。液晶画面16cで汚れを報知する場合には、汚れ発生メッセージとともに、撮像画像を同時に表示させるようにしてもよい。なお、報知手段16による報知は、操作パネル2の操作スイッチ(不図示)の操作により停止できる。
【0034】
このように、表面計測手段として撮像カメラ14を備えた排水口装置1によれば、排水口21内部の視認しにくい場所などをカメラで撮像して、油脂や残滓が内壁に付着、堆積して固化する前に、汚れの発生を判断して報知できる構成であるため、住戸人などは、排水口21の内部を定期的に観察する必要はなく、排水口21の清掃タイミングを知ることができる。また、CCDカメラなどの撮像カメラを用いているため、表面状態についての種々の数値データが得られ、そのため客観的な汚れの判断ができる。
【0035】
ついで、図1と同様の排水口装置を浴室排水口に適用した例を説明する。
【0036】
図5は、同排水口装置を適用した浴室の排水トラップの縦断面図である。なお、同排水口装置の基本構成を示すブロック図、およびその基本動作を示すフローチャートについては、上記のシンク排水口(図1〜3参照)の例と同様であるため、図示および説明を省略する。
【0037】
この排水トラップ40は、防水床パン45に開口され、防水床パン45の上方に載置された浴槽(不図示)の排水口(不図示)と連通し、円筒形状で下端が開口した排水筒46を有した浴槽下排水口44と、洗い場側の洗い場パン42に開口して設けられ、円筒形状で下端が開口した封水筒43を有した排水口41とが、トラップ連通管47により相互に連通し、さらに排水管路48に連通した構造となっている。集合住宅においては、この排水管路48が下流側で他の住戸の排水管路と合流している。
【0038】
ここで、浴槽下排水口44には、逆止弁付フロート49aと、排水孔49bとを設けた調整蓋49が取り付けられ、通常、浴槽からの排水はこの排水孔49bを介して排水トラップ40内へ排出される。
【0039】
撮像カメラ14は、光照射手段15とともに例えば、封水筒43の上部に設置され、封水筒43の内部表面を撮像し、操作パネル2に内蔵した汚れ判別手段10が、図1〜4に示した例と同様の手法によって、内部表面の汚れを判断し検出する。
【0040】
なお、撮像カメラ14は、浴槽側の浴槽下排水口44や、浴槽下排水口44と浴槽排水口(不図示)をつなぐ排水管(不図示)に配設してもよい。
【0041】
次に、本発明の排水口装置の他の実施形態について説明する。
【0042】
図6は、本発明の排水口装置の他の実施形態についての一例を示したブロック図である。なお、同排水口装置は、シンク排水口や浴室排水口に適用が可能であり、図1〜5に示した例と同様であるため、設置態様を示す各縦断面図については図示を省略する。
【0043】
本実施形態に示した排水口装置1Bは、表面計測手段として撮像カメラの代わりに色差計14Bを備えている。他の構成については図1と同様であるため、同一の符号を付して、それらの説明は割愛する。
【0044】
色差計14Bは、被計測面である排水口の特定位置に光照射して、その特定位置で反射して受光した光にもとづいて色差を計測する。汚れ判別手段10は、色差計14Bにより所定の色差が得られたときに汚れが発生したものと判断する。
【0045】
色差計14Bは、L表色系における公知の計算方法、
ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb}1/2によって、色差値を算出する。
【0046】
ここに、ΔEabはL表色系による色差、ΔL、Δa、Δbは、L表色系における2つの表面色、つまり本例の場合でいえば、経時変化する特定位置の表面色と、例えば製造時の特定位置の表面色との間における、明度差、彩度差、色相差である。基準データ13aとしては、排水口製造時の特定位置の表面色データがあらかじめ保存されている。
【0047】
このように、表面計測手段として色差計14Bを備えた排水口装置1によれば、簡易な構成で色差による汚れ発生の判断が行える。
【0048】
なお、その他の表面計測の方法として、バイオセンサーによるものや有機物量の計測によるものなど種々のものが想定できる。
【0049】
以上には、排水口装置をシンク排水口と浴室排水口に適用した例を示したが、これらには限定されず、洗面化粧台の排水口やトイレの排水口など種々の排水口にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の排水口装置の一実施形態についての一例を示したブロック図である。
【図2】同排水口装置を設置したシンクの排水口の縦断面図である。
【図3】同排水口装置の動作フローチャートである。
【図4】撮像画像の比較例を示した図で、(a)は清浄時の基準画像、(b)は汚れ発生時の画像例である。
【図5】本発明の排水口装置の一実施形態についての他例を示した浴室排水口の縦断面図である。
【図6】本発明の排水口装置の他の実施形態についての一例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 排水口装置
2 操作パネル
10 汚れ判別手段
13 記憶部
13a 基準データ
13b 現画像データ(計測データ)
14 撮像カメラ(表面計測手段)
16 報知手段
16a 表示ランプ
16b ブザー
16c 液晶画面
20 シンク
21 排水口
22 排水トラップ
22a トラップ本体
26 防臭器
40 排水トラップ
41 洗い場排水口
42 洗い場パン
43 封水筒
44 浴槽下排水口
45 防水床パン
46 排水筒
47 トラップ連通管
1B 排水口装置
14B 色差計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口の内部に配設され、該排水口内部の特定位置の表面状態を計測する表面計測手段と、該表面計測手段を所定のタイミングで動作させて計測した上記表面状態の計測データを、あらかじめ記憶された基準データと比較して、汚れの発生を判別する汚れ判別手段と、該汚れ判別手段が汚れを判別したときに汚れを報知する報知手段とを備えたことを特徴とする排水口装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記表面計測手段は、撮像カメラである、排水口装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記表面計測手段は、色差計である、排水口装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
上記汚れ判別手段は、排水トラップの内壁面の汚れの発生を判別する、排水口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−30302(P2009−30302A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194525(P2007−194525)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】