説明

排水回収システム

【課題】殺菌処理等で使用する水の安全性を確保しつつ、より多くの水を再利用できる排水回収システムを提供する。
【解決手段】被処理物に蒸気又は温水を導入して被処理物の予熱処理及び殺菌処理を順次行うと共に殺菌処理の後に冷水を導入して被処理物の冷却処理を行う殺菌処理装置2に接続され、殺菌処理装置2から排出される排水W1を回収する排水回収システム1であって、排水W1が流通する排水ラインL1と、排水W1の温度を検出する排水温度検出部3と、系外排出ラインL2と、回収ラインL3と、排水W1の流通先を系外排出ラインL2又は回収ラインL3へ切り換える流通先切り換え手段4及び5と、排水温度検出部3により検出される排水W1の温度に対して設定された基準温度Tに基づいて、排水W1の流通先を系外排出ラインL2又は回収ラインL3へ切り換えるように、流通先切り換え手段4及び5を制御する流通先切り換え制御部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌処理装置から排出された排水を回収する排水回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶や缶詰等の包装飲食物(以下、「被処理物」ともいう)は、液体や食品を密閉容器に充填した後、レトルト釜やパストライザ等の殺菌処理装置において殺菌処理される。
【0003】
従来、温水により被処理物を設定温度で一定時間加熱する殺菌(加熱)処理と、冷水により被処理物を一定温度以下となるまで冷却する冷却処理とを順次実行する殺菌処理装置が提案されている。この殺菌処理装置では、被処理物を加熱した温水と、被処理物を冷却した冷水とがタンクに回収され、再利用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料缶を殺菌処理装置により殺菌処理した場合に、回収された水からホルムアルデヒド等の有害物質が検出されることがある。回収された水に含まれるホルムアルデヒドは、飲料缶の側面に印刷された絵柄の塗料等から溶出したものと考えられる。現状では、回収された水からホルムアルデヒドを除去することは技術的に難しい。そのため、回収された水がホルムアルデヒドを含む場合、その水は再利用されることなく、大量の水を用いて自治体等が定める基準値以下まで希釈された後、下水道や河川等に放流されていた。
【0006】
従って、本発明は、殺菌処理等で使用する水の安全性を確保しつつ、より多くの水を再利用することができる排水回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被処理物を収容可能な収容部を有し且つ該収容部に蒸気又は温水を導入して被処理物の予熱処理及び殺菌処理を順次行うと共に殺菌処理の後に前記収容部に冷水を導入して被処理物の冷却処理を行う殺菌処理装置に接続され、該殺菌処理装置から排出される排水を該殺菌処理装置へ回収する排水回収システムであって、前記殺菌処理装置から排出される排水が流通する排水ラインと、前記排水ラインを流通する排水の温度を検出する排水温度検出部と、前記排水ラインを流通する排水を系外へ排出する系外排出ラインと、前記排水ラインを流通する排水を前記殺菌処理装置へ回収させる回収ラインと、排水の流通先を前記系外排出ライン又は前記回収ラインへ切り換える流通先切り換え手段と、前記排水温度検出部により検出される排水の温度に対して設定された基準温度に基づいて、排水の流通先を前記系外排出ライン又は前記回収ラインへ切り換えるように、前記流通先切り換え手段を制御する流通先切り換え制御部と、を備える排水回収システムに関する。
【0008】
また、前記基準温度は、排水中におけるホルムアルデヒドの濃度に基づいて設定されることが好ましい。
【0009】
また、前記基準温度は、前記濃度が0.05mg/L以下となる温度であることが好ましい。
【0010】
また、基準温度は40℃以下であることが好ましい。
【0011】
また、前記回収ラインには、排水に促進酸化処理を行う促進酸化処理部、促進酸化処理が行われた排水に活性炭処理を行う活性炭処理部、及び、活性炭処理が行われた排水に限外濾過膜又は精密濾過膜による濾過処理を行う濾過処理部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、殺菌処理等で使用する水の安全性を確保しつつ、より多くの水を再利用することができる排水回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の殺菌処理システム1を示す概略構成図である。
【図2】被処理物の加熱時間(分)とホルムアルデヒドの濃度(mg/L)との関係を加熱温度ごとに測定した結果を示すグラフである。
【図3】実施形態の制御部7が排水W1の流通先を切り換える制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る排水回収システムの実施形態について説明する。本実施形態では、殺菌処理装置と排水回収システムとを備えた殺菌処理システムについて説明する。図1は、本実施形態の殺菌処理システム1を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の殺菌処理システム1は、殺菌処理装置2と、排水温度検出部としての温度センサ3と、流通先切り換え手段としての第1排水弁4及び第2排水弁5と、回収タンク6と、流通先切り換え制御部としての制御部7と、を備える。
【0016】
また、殺菌処理システム1は、循環水タンク8と、加圧ポンプ9と、流量センサ10と、促進酸化処理部11と、活性炭処理部12と、殺菌剤添加装置13と、濾過処理部14と、濁度測定装置15と、残留塩素濃度測定装置16と、pH値測定装置17と、を備える。なお、図1では、温度センサ3、第1排水弁4及び第2排水弁5と、制御部7との電気的な接続の経路を破線で示す。その他の電気的な接続の経路については図示を省略する。
【0017】
更に、殺菌処理システム1は、排水ラインL1と、系外排出ラインL2と、回収ラインL3と、排水移送ラインL4と、ブローラインL5と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0018】
図1に示す殺菌処理システム1において、排水ラインL1、系外排出ラインL2、回収ラインL3、温度センサ3、第1排水弁4、第2排水弁5、及び制御部7は、本実施形態における排水回収システムを構成する。
【0019】
殺菌処理装置2は、被処理物としての飲料缶(不図示)を収容可能な収容部21を有するレトルト釜である。殺菌処理装置2は、収容部21に収容された飲料缶に対して、後述する予熱処理、殺菌処理、及び冷却処理を順次実行する。
【0020】
予熱処理は、収容部21に蒸気又は温水を導入して、飲料缶を設定温度(後述)まで加熱する処理である。温水を導入して加熱する場合には、飲料缶に充填された内容物の膨張等を防ぐため、殺菌処理装置2の内部を加圧することが好ましい。後述する殺菌処理においても同様である。
【0021】
殺菌処理は、予熱処理に引き続き、収容部21に蒸気又は温水を導入して、飲料缶を設定温度で一定時間加熱する処理である。上述した予熱処理及び殺菌処理における設定温度は、例えば、110℃〜120℃である。
【0022】
冷却処理は、収容部21に冷水を導入して、飲料缶を冷却する処理である。冷却処理では、冷水の温度を段階的に下げていき、最終的に20℃の冷水を導入することにより、飲料缶が40℃未満となるように冷却する。なお、冷水を導入して冷却する場合には、飲料缶に充填された内容物の膨張等を防ぐため、殺菌処理装置2の内部を加圧することが好ましい。
【0023】
上記各処理において、加熱や冷却に使用された温水や冷水は、排水ラインL1を介して殺菌処理装置2の外部へ排水W1として排出される。
【0024】
殺菌処理装置2の一次側(給水側)ポートには、回収ラインL3の下流側の端部が接続される。また、殺菌処理装置2の二次側(排水側)ポートには、排水ラインL1の上流側の端部が接続される。
【0025】
温度センサ3は、排水ラインL1を流通する排水W1の温度を検出する機器である。温度センサ3は、接続部J1において排水ラインL1に接続される。接続部J1は、殺菌処理装置2と分岐部J2(後述)との間に配置されている。温度センサ3は、制御部7と電気的に接続される。温度センサ3で検出された排水W1の温度(以下、「検出温度値T」ともいう)は、制御部7へ検出信号として送信される。
【0026】
排水ラインL1は、殺菌処理装置2から排出された排水W1を、系外排出ラインL2又は回収ラインL3に向けて流通させるラインである。排水ラインL1の下流側は、分岐部J2において、系外排出ラインL2及び回収ラインL3に分岐している。
【0027】
系外排出ラインL2は、殺菌処理装置2から排出され、排水ラインL1を流通する排水W1を系外に排出するラインである。系外排出ラインL2の下流側の端部は、飲料工場や食品工場等に付設の排水処理設備(不図示)に向けて開放されている。本実施形態において、系外排出ラインL2には、基準温度T(後述)以上の排水W1が流通する。
【0028】
回収ラインL3は、殺菌処理装置2から排出され、排水ラインL1を流通する排水W1を殺菌処理装置2へ回収させるラインである。本実施形態において、回収ラインL3には、基準温度T未満の排水W1が流通する。
【0029】
回収ラインL3の上流側の端部は、分岐部J2において排水ラインL1に接続される。また、回収ラインL3の下流側の端部は、殺菌処理装置2の一次側ポートに接続される。回収ラインL3は、図1に示すように、排水ラインL1の分岐部J2と回収タンク6との間を接続する区間と、循環水タンク8と殺菌処理装置2の一次側ポートとの間を接続する区間とに分割されている。回収タンク6と循環水タンク8との間は、排水移送ラインL4により接続される。排水移送ラインL4は、回収タンク6に貯留された排水W1を、循環水タンク8に向けて流通させるラインである。
【0030】
第1排水弁4は、系外排出ラインL2を開閉する機器である。第1排水弁4は、制御部7と電気的に接続される。第1排水弁4における弁体の開閉は、制御部7からの駆動信号により制御される。
【0031】
第2排水弁5は、回収ラインL3を開閉する機器である。第2排水弁5は、制御部7と電気的に接続される。第2排水弁5における弁体の開閉は、制御部7からの駆動信号により制御される。
【0032】
第1排水弁4及び第2排水弁5は、本実施形態における流通先切り換え手段を構成する。第1排水弁4及び第2排水弁5の開閉を制御することにより、殺菌処理装置2から排出された排水W1の流通先を、系外排出ラインL2又は回収ラインL3へ切り換えることができる。
【0033】
すなわち、第1排水弁4を開状態とし、第2排水弁5を閉状態とすることにより、殺菌処理装置2から排出された排水W1を系外排出ラインL2へ流通させることができる。また、第1排水弁4を閉状態とし、第2排水弁5を開状態とすることにより、殺菌処理装置2から排出された排水W1を回収ラインL3へ流通させることができる。
【0034】
回収タンク6は、回収ラインL3を流通する排水W1を貯留する設備である。回収タンク6の底部近傍の側面には、排水移送ラインL4が接続される。回収タンク6に貯留された排水W1は、排水移送ラインL4を介して循環水タンク8へ供給される。
【0035】
また、回収タンク6の底部近傍の側面には、ブローラインL5が接続される。ブローラインL5は、回収タンク6に貯留された排水W1を系外に排水するラインである。回収タンク6に貯留された排水W1に含まれる不純物の濃度は、時間の経過と共に高くなる。このため、定期的(月一回程度)に排水W1を系外に強制的に排水するブロー処理が行われる。
【0036】
制御部7は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部7は、温度センサ3により検出された排水W1の検出温度値Tに対して設定された基準温度Tに基づいて、排水W1の流通先を系外排出ラインL2又は回収ラインL3へ切り換えるように、第1排水弁4及び第2排水弁5の開閉を制御する。
【0037】
具体的には、制御部7は、検出温度値T≧基準温度Tであれば、第1排水弁4を開状態に、第2排水弁5を閉状態に制御する。これにより、排水W1の流通先が系外排出ラインL2へ切り換えられる。また、制御部7は、検出温度値T<基準温度Tであれば、第1排水弁4を閉状態に、第2排水弁5を開状態に制御する。これにより、排水W1の流通先が回収ラインL3へ切り換えられる。制御部7による第1排水弁4及び第2排水弁5の制御については後述する。
【0038】
本実施形態において、基準温度Tは、排水W1に含まれるホルムアルデヒドの濃度に基づいて設定される。ここで、基準温度Tとホルムアルデヒドの濃度との関係について説明する。図2は、被処理物(飲料缶)の加熱時間(分)とホルムアルデヒドの濃度(mg/L)との関係を加熱温度ごとに測定した結果を示すグラフである。
【0039】
図2において、横軸は加熱時間(分)、縦軸は検出されたアルデヒドの濃度(mg/L)を示す。本実験では、容量1Lのビーカーにイオン交換水を入れ、アルミ箔で蓋をした後、ウォーターバスで水温を設定温度に調整した。そして、水温が安定した後、試料となる市販の飲料缶をビーカーの中に投入した。この飲料缶の側面には、絵柄が印刷されている。その印刷に使われた塗料(インキ)には、ホルムアルデヒドが含まれている。
【0040】
また、本実験では、飲料缶をビーカーに投入してからの時間を加熱時間とし、予め設定した加熱時間ごとにビーカーからイオン交換水を採水して、ホルムアルデヒドの濃度を測定した。採水は、1回ごとに約5mL使用した。
【0041】
設定温度は、40℃、60℃、80℃、100℃とした。また、実際の殺菌処理に近い条件とするため、設定温度が低いほど加熱時間を長くし、設定温度が高くなるほど加熱時間を短くした。
【0042】
図2に示すように、ホルムアルデヒドの濃度は、設定温度が高くなるにつれて大きくなり、設定温度が低くなるにつれて小さくなることが明らかとなった。設定温度を40℃とした場合には、加熱時間420分(7時間)を経過した時点においても、ホルムアルデヒドの濃度は0.05mg/Lであった。ホルムアルデヒドの濃度は、0.05mg/L以下であれば人体に有害な濃度ではないとされている。
【0043】
本実施形態における基準温度Tは、ホルムアルデヒドの濃度が0.05mg/L以下となる温度である。具体的には、本実施形態において、基準温度Tは、40℃に設定されている。
【0044】
再び、図1に戻って殺菌処理システム1の構成を説明する。
循環水タンク8は、回収タンク6から供給された排水W1を循環水W2として貯留する設備である。循環水タンク8に貯留された排水W1は、循環水タンク8から殺菌処理装置2に向けて、循環水W2として回収ラインL3を流通する。なお、循環水タンク8には、補給水ライン(不図示)が接続される。補給水ラインは、循環水タンク8の水位が低い場合に、循環水タンク8に補給水を供給するラインである。
【0045】
加圧ポンプ9は、循環水W2を吸引し、殺菌処理装置2の一次側ポートへ向けて吐出する装置である。加圧ポンプ9は、循環水タンク8と促進酸化処理部11との間において、回収ラインL3に設けられている。
【0046】
流量センサ10は、回収ラインL3を流通する循環水W2の流量を検出する機器である。流量センサ10は、加圧ポンプ9の下流側の接続部J3において、回収ラインL3に接続されている。流量センサ10は、制御部7と電気的に接続される。流量センサ10で検出された循環水W2の流量は、制御部7へ検出信号として送信される。
【0047】
促進酸化処理部11は、循環水W2に促進酸化処理を実施する設備である。「促進酸化処理」とは、特定の酸化剤に紫外線を照射することにより、循環水W2の内部に強力な酸化力を有するヒドロキシルラジカルを生成し、これにより循環水W2に含まれる難分解性の有害物質の酸化分解、循環水W2の色度成分や臭気成分の分解、及び微生物の殺菌等を複合的に行う処理をいう。促進酸化処理部11は、加圧ポンプ9(J3)の下流側に設けられている。促進酸化処理部11は、酸化剤添加装置11aと、紫外線照射装置11bと、を備える。
【0048】
酸化剤添加装置11aは、循環水W2に酸化剤を添加する装置である。酸化剤は、循環水W2における菌の繁殖を抑制する殺菌剤として使用されると共に、紫外線照射装置11bにおいて促進酸化処理を行う際の酸化剤としても使用される。酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素が挙げられる。
【0049】
紫外線照射装置11bは、酸化剤添加装置11aにより酸化剤の添加された循環水W2に紫外線を照射する装置である。紫外線照射装置11bは、循環水W2に紫外線を照射する紫外線ランプ(不図示)と、循環水W2が流通する処理槽(不図示)と、を備える。
【0050】
紫外線ランプは、予め設定された波長の紫外線を循環水W2に照射可能に構成される。処理槽は、循環水W2が流通可能な形状(例えば、円筒状)を有する。紫外線ランプは、処理槽の内部に収容されている。処理槽を流通する循環水W2には、酸化剤添加装置11aにより添加された酸化剤が含まれる。この酸化剤に、紫外線ランプにより紫外線を照射すると、循環水W2の内部にヒドロキシルラジカルが生成される。これにより、循環水W2に含まれる難分解性の有害物質が酸化分解される。また、循環水W2の色度成分や臭気成分が分解される。更に、循環水W2に含まれる微生物が殺菌される。
【0051】
活性炭処理部12は、促進酸化処理部11により促進酸化処理された循環水W2に対し活性炭処理を実施する装置である。「活性炭処理」とは、循環水W2に含まれる残留有機物等を活性炭により除去する処理をいう。活性炭処理部12は、促進酸化処理部11の下流側に設けられている。
【0052】
殺菌剤添加装置13は、循環水W2に殺菌剤を添加する装置である。循環水W2に殺菌剤を添加することにより、後段の濾過処理部14における膜面での微生物の繁殖を抑えることができる。殺菌剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
【0053】
濾過処理部14は、活性炭処理部12により活性炭処理された循環水W2に対し限外濾過膜又は精密濾過膜による濾過処理を実施する装置である。濾過処理部14は、限外濾過膜モジュール又は精密濾過膜モジュール(不図示)を備える。循環水W2に含まれる懸濁物質等の不純物は、これらの濾過膜モジュールにより除去される。なお、濾過処理部14の上流側にはプレフィルタ(不図示)が設けられる。
【0054】
濁度測定装置15は、濾過処理部14の下流側に設けられ、循環水W2の濁度を測定する機器である。濁度測定装置15は、制御部7と電気的に接続される。濁度測定装置15で測定された循環水W2の濁度は、制御部7へ検出信号として送信される。
【0055】
残留塩素濃度測定装置16は、濾過処理部14の下流側に設けられ、循環水W2の残留塩素濃度を測定する機器である。残留塩素濃度測定装置16は、制御部7と電気的に接続される。残留塩素濃度測定装置16で測定された循環水W2の残留塩素濃度は、制御部7へ検出信号として送信される。
【0056】
pH値測定装置17は、濾過処理部14の下流側に設けられ、循環水W2のpH値を測定する機器である。pH値測定装置17は、制御部7と電気的に接続される。pH値測定装置17で測定された循環水W2のpH値は、制御部7へ検出信号として送信される。
【0057】
制御部7は、濁度測定装置15、残留塩素濃度測定装置16及びpH値測定装置17から検出信号を受信し、循環水W2の濁度が基準値を超える場合、循環水W2の残留塩素濃度が基準値を超える場合、又は循環水W2のpH値が基準値を超える場合には、例えば、アラーム(不図示)を制御して、システムの管理者に異常の発生を通知する。
【0058】
図1において、循環水タンク8から回収ラインL3に送出された循環水W2は、促進酸化処理部11、活性炭処理部12、殺菌剤添加装置13、及び濾過処理部14でそれぞれ処理された後、殺菌処理装置2の一次側ポートへ供給される。そして、殺菌処理装置2において、温水又は冷水として、予熱処理、殺菌処理及び冷却処理に使用される。なお、殺菌処理装置2に供給される循環水W2の水量が少ない場合には、殺菌処理装置2の一次側ポートよりも上流側の回収ラインL3において、補給水が給水される。
【0059】
次に、上記のように構成された殺菌処理システム1において、制御部7が排水W1の流通先を切り換える制御について説明する。図3は、制御部7が、排水W1の流通先を切り換える制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、殺菌処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0060】
図3に示すステップST101において、制御部7は、温度センサ3から排水W1の検出温度値Tを取得する。
【0061】
ステップST102において、制御部7は、検出温度値Tが基準温度T以上であるか否かを判定する。このステップST102において、制御部7が、検出温度値T≧基準温度Tである(YES)と判定した場合には、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、制御部7が、検出温度値T<基準温度Tである(NO)と判定した場合には、処理はステップST104へ移行する。
【0062】
ステップST103(ステップST102:YES)において、制御部7は、第1排水弁4に駆動信号を送信して、第1排水弁4を開状態に制御する。また、制御部7は、第2排水弁5に駆動信号を送信して、第2排水弁5を閉状態に制御する。この後、本フローチャートの処理は終了する。
【0063】
制御部7が、ステップST103の処理を実行することにより、殺菌処理装置2から排出された排水W1の流通先は、排水ラインL1から系外排出ラインL2へ切り換えられる。その結果、排水W1は、系外排出ラインL2を流通し、下水道(不図示)に放流される。
【0064】
一方、ステップST104(ステップST102:NO)において、制御部7は、第1排水弁4に駆動信号を送信して、第1排水弁4を閉状態に制御する。また、制御部7は、第2排水弁5に駆動信号を送信して、第2排水弁5を開状態に制御する。この後、本フローチャートの処理は終了する。
【0065】
制御部7が、ステップST104の処理を実行することにより、殺菌処理装置2から排出された排水W1の流通先は、排水ラインL1から回収ラインL3へ切り換えられる。その結果、排水W1は、回収ラインL3を流通して、回収タンク6に回収される。
【0066】
上述した本実施形態の殺菌処理システム1によれば、例えば、次のような効果を奏する。
【0067】
本実施形態の殺菌処理システム1は、殺菌処理装置3から排出される排水W1の検出温度値Tに対して設定された基準温度Tに基づいて、排水W1の流通先を系外排出ラインL2又は回収ラインL3へ切り換える制御部7を備える。制御部7は、検出温度値T≧基準温度Tであれば、排水W1の流通先を、排水ラインL1から系外排出ラインL2へ切り換える。また、制御部7は、検出温度値T<基準温度Tであれば、排水W1の流通先を、排水ラインL1から回収ラインL3へ切り換える。
【0068】
これによれば、検出温度値T≧基準温度Tであれば、排水W1にホルムアルデヒドが溶出する程度が高く、ホルムアルデヒドの濃度が高くなるため、排水W1は回収されることなく系外へ排出される。また、検出温度値T<基準温度Tであれば、排水W1にホルムアルデヒドが溶出する程度が低く、ホルムアルデヒドの濃度が低くなるため、排水W1は殺菌処理装置2へ回収される。この場合には、排水W1を加熱や冷却に再利用することができる。従って、本実施形態の殺菌処理システム1によれば、殺菌処理等で使用する水の安全性を確保しつつ、より多くの水を再利用することができる。
【0069】
また、本実施形態の殺菌処理システム1において、基準温度Tは、排水W1におけるホルムアルデヒドの濃度に基づいて設定される。このため、循環水W2におけるホルムアルデヒドの濃度を抑制することができ、回収ラインL3上の水処理設備を簡易な構成としながら、より多くの水を再利用することができる。
【0070】
また、本実施形態の殺菌処理システム1において、基準温度Tは、ホルムアルデヒドの濃度が0.05mg/L以下となる温度に設定される。このため、循環水W2におけるホルムアルデヒドの濃度を抑制することができ、回収ラインL3上の水処理設備を簡易な構成としながら、安全性の高いより多くの水を再利用することができる。
【0071】
また、本実施形態の殺菌処理システム1において、基準温度Tは40℃以下である。このため、循環水W2におけるホルムアルデヒドの濃度をより確実に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態の殺菌処理システム1は、促進酸化処理部11、活性炭処理部12、及び濾過処理部14を備える。このため、再利用される循環水W2の水質をより向上させることができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0074】
例えば、本実施形態では、殺菌処理装置2をレトルト釜とした例について説明した。この例に限らず、殺菌処理装置2はパストライザでもよいし、レトルト釜やパストライザと同等の機能を備えた殺菌装置であってもよい。
【0075】
また、本実施形態では、被処理物として飲料缶を例として説明した。この例に限らず、被処理物は、缶詰でもよいし、パック食材(真空包装された食材)でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 殺菌処理システム
2 殺菌処理装置
3 温度センサ(排水温度検出部)
4 第1排水弁(流通先切り換え手段)
5 第2排水弁(流通先切り換え手段)
7 制御部(流通先切り換え制御部)
11 促進酸化処理部
12 活性炭処理部
14 濾過処理部
21 収容部
L1 排水ライン
L2 系外排水ライン
L3 回収ライン
W1 排水
W2 循環水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容可能な収容部を有し且つ該収容部に蒸気又は温水を導入して被処理物の予熱処理及び殺菌処理を順次行うと共に殺菌処理の後に前記収容部に冷水を導入して被処理物の冷却処理を行う殺菌処理装置に接続され、該殺菌処理装置から排出される排水を該殺菌処理装置へ回収する排水回収システムであって、
前記殺菌処理装置から排出される排水が流通する排水ラインと、
前記排水ラインを流通する排水の温度を検出する排水温度検出部と、
前記排水ラインを流通する排水を系外へ排出する系外排出ラインと、
前記排水ラインを流通する排水を前記殺菌処理装置へ回収させる回収ラインと、
排水の流通先を前記系外排出ライン又は前記回収ラインへ切り換える流通先切り換え手段と、
前記排水温度検出部により検出される排水の温度に対して設定された基準温度に基づいて、排水の流通先を前記系外排出ライン又は前記回収ラインへ切り換えるように、前記流通先切り換え手段を制御する流通先切り換え制御部と、
を備える排水回収システム。
【請求項2】
前記基準温度は、排水中におけるホルムアルデヒドの濃度に基づいて設定される
請求項1に記載の排水回収システム。
【請求項3】
前記基準温度は、前記濃度が0.05mg/L以下となる温度である
請求項2に記載の排水回収システム。
【請求項4】
基準温度は40℃以下である
請求項1〜3のいずれかに記載の排水回収システム。
【請求項5】
前記回収ラインには、排水に促進酸化処理を行う促進酸化処理部、促進酸化処理が行われた排水に活性炭処理を行う活性炭処理部、及び、活性炭処理が行われた排水に限外濾過膜又は精密濾過膜による濾過処理を行う濾過処理部が設けられる
請求項1〜4のいずれかに記載の排水回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56306(P2013−56306A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196704(P2011−196704)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】