説明

排水弁用フック

【課題】スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さの調節を一層容易にすることができる排水弁用フックを提供する。
【解決手段】排水弁用フック10は、便器洗浄タンク90に設けられたスピンドル80と、繰り返し要素としてのボール71及び連結材72が一定のピッチPで順次接続されてなり、スピンドル80の動作によって排水弁60を開閉して便器洗浄タンク90内の洗浄水を吐水及び止水可能な玉鎖70とを接続するために用いられる。
排水弁用フック10は、線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部11と、棒状部11の一方側に位置し、スピンドル80の係止穴80bに係止されるスピンドル係止部31と、棒状部11の他方側に位置し、玉鎖70の各連結材72を係止可能な玉鎖係止部12とが形成されている。玉鎖係止部12は、ピッチPとは異なる間隔L1で互いに上下方向に離れる第1、2玉鎖係止部12a、12bからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水弁用フックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に便器洗浄タンクに適用される従来の排水弁用フックが開示されている。この排水弁用フックは、便器洗浄タンクに回動可能に設けられたスピンドルと、繰り返し要素が一定のピッチで順次接続されてなるチェーンとを接続するために用いられるものである。
【0003】
チェーンは、具体的には、繰り返し要素が中空のボールと、ボールを自己に対して回動可能に接続する連結材とからなる玉鎖である。玉鎖のチェーンは、捩れが生じずに安定した動作を発揮する。そして、チェーンの上端は、排水弁用フックによってスピンドルと接続され、チェーンの下端は、便器洗浄タンクの排水弁に接続されている。このため、例えば、便器洗浄タンクの外側に設けられたレバーを操作することにより、スピンドルが回動すると、チェーンは、スピンドルの動作によって排水弁を開閉して便器洗浄タンク内の洗浄水を吐水及び止水可能となっている。
【0004】
このようにして用いられる従来の排水弁用フックは、一端から他端まで延びる線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部と、棒状部の一方側に位置し、スピンドルに貫設された係止穴に係止されるスピンドル係止部と、棒状部の他方側に位置し、チェーンの各繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部とが形成されている。
【0005】
具体的には、排水弁用フックは、棒状部の一方側から延在する線材の一端側が折り返されることにより、棒状部の一方側とスピンドル係止部とで略逆「U」字形状とされている。また、排水弁用フックは、棒状部の他方側から延在する線材の他端側が折り返されることにより、棒状部の他方側とチェーン係止部とで略「U」字形状とされている。
【0006】
このため、この排水弁用フックは、スピンドル係止部をスピンドルの係止穴に係止させ、さらにチェーン係止部にチェーンの各繰り返し要素のうちの一つを係止させることによって、スピンドルとチェーンとを接続することができる。この際、各繰り返し要素のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチの間隔の下、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さを調節することができる。その結果、従来の排水弁用フックが適用された便器洗浄タンクでは、スピンドルの動作に対する排水弁の開閉を適当に調整することが可能となっている。
【0007】
【特許文献1】実開平6−74674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の排水弁用フックに対しては、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さの調節を一層容易にすることが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さの調節を一層容易にすることができる排水弁用フックを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の排水弁用フックは、便器洗浄タンクに回動可能に設けられたスピンドルと、繰り返し要素が一定のピッチで順次接続されてなり、該スピンドルの動作によって排水弁を開閉して該便器洗浄タンク内の洗浄水を吐水及び止水可能なチェーンとを接続するために用いられ、
一端から他端まで延びる線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部と、該棒状部の一方側に位置し、前記スピンドルに貫設された係止穴に係止されるスピンドル係止部と、該棒状部の他方側に位置し、前記チェーンの各前記繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部とが形成された排水弁用フックにおいて、
前記スピンドル係止部及び前記チェーン係止部の少なくとも一方は、前記ピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れる複数個にされていることを特徴とする。
【0011】
このような構成である第1発明の排水弁用フックは、スピンドル係止部をスピンドルの係止穴に係止させ、さらにチェーン係止部をチェーンの各繰り返し要素のうちの一つに係止させることによって、スピンドルとチェーンとを接続することができる。この際、各繰り返し要素のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチの間隔の下、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さを調節することができる。
【0012】
ここで、この排水弁用フックでは、スピンドル係止部及びチェーン係止部の少なくとも一方が複数個にされている。複数個のスピンドル係止部又はチェーン係止部は、繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔で互いに上下方向(すなわち、チェーンの延びる方向)に離れている。
【0013】
このため、スピンドル係止部が複数個にされている場合には、この排水弁用フックは、複数個のスピンドル係止部のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔の下、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さを調節することができる。
【0014】
また、チェーン係止部が複数個にされている場合には、この排水弁用フックは、複数個のチェーン係止部のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔の下、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さを調節することができる。
【0015】
スピンドル係止部及びチェーン係止部が複数個にされている場合も同様である。
【0016】
その結果、この排水弁用フックが適用された便器洗浄タンクでは、スピンドルの動作に対する排水弁の開閉をより細かく調整することが可能となっている。
【0017】
したがって、第1発明の排水弁用フックは、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さの調節を一層容易にすることができる。
【0018】
スピンドル係止部が複数個にされている具体例としては、スピンドル係止部が2個ある場合で言えば、棒状部の一方側から延在する線材の一端側が折り返されることにより、棒状部の一方側と1つ目のスピンドル係止部とで略逆「U」字形状とされ、さらに、線材の一端側が棒状部と略平行に折り返されて、1つ目のスピンドル係止部よりも一方側に長く突出する第2棒状部が形成され、第2棒状部の一方側から延在する線材の一端側が折り返されることにより、第2棒状部の一方側と2つ目のスピンドル係止部とで略逆「U」字形状とされ得る。この場合、1つ目のスピンドル係止部と2つ目のスピンドル係止部とは、繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れている。
【0019】
チェーン係止部が繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れる複数個にされている具体例としては、チェーン係止部が2個ある場合で言えば、棒状部の他方側から延在する線材の他端側が折り返されることにより、棒状部の他方側と1つ目のチェーン係止部とで略「U」字形状とされ、さらに、線材の他端側が棒状部と略平行に折り返されて、1つ目のチェーン係止部よりも他方側に突出しない第2棒状部が形成され、第2棒状部の他方側から延在する線材の他端側が折り返されることにより、第2棒状部の他方側と2つ目のチェーン係止部とで略「U」字形状とされ得る。この場合、1つ目のチェーン係止部と2つ目のチェーン係止部とは、繰り返し要素の一定のピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れている。
【0020】
なお、実開昭56−785号公報に開示されている排水弁用フックは、複数個のチェーン係止用溝が形成された板状のものであり、一端から他端まで延びる線材が屈曲されてなる第1発明の排水弁用フックとは構成が異なる。第1発明の排水弁用フックは、線材が屈曲されてなるものであるため、この文献に開示された排水弁用フックと比べて簡易であり、安価なものとなる。
【0021】
第1発明の排水弁用フックにおいて、前記チェーン係止部は、前記ピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れる複数個にされていることが好ましい。スピンドルの係止穴は浅くないことが多く、スピンドル係止部を複数個にすると、排水弁用フックが大型化してしまいやすい。これに対し、チェーンの各繰り返し要素はさほど大きくないことから、チェーン係止部が複数個であれば、排水弁用フックの小型化を実現できる。
【0022】
第2発明の排水弁用フックは、便器洗浄タンクに回動可能に設けられたスピンドルと、繰り返し要素が一定のピッチで順次接続されてなり、該スピンドルの動作によって排水弁を開閉して該便器洗浄タンク内の洗浄水を吐水及び止水可能なチェーンとを接続するために用いられ、
一端から他端まで延びる線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部と、該棒状部の一方側に位置し、前記スピンドルに貫設された係止穴に係止されるスピンドル係止部と、該棒状部の他方側に位置し、前記チェーンの各前記繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部とが形成された排水弁用フックにおいて、
前記チェーンは、前記繰り返し要素が中空のボールと、該ボールを自己に対して回動可能に接続する連結材とからなる玉鎖であり、
前記チェーン係止部は、前記一端側と前記他端側とを互いに近づく方向に押圧することにより、該ボールの外径より大きくなり、該一端側と該他端側との押圧を解除することにより、該ボールの外径より小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0023】
このような構成である第2発明の排水弁用フックも、スピンドル係止部をスピンドルの係止穴に係止させ、さらにチェーン係止部に玉鎖のうちの一つを係止させることによって、スピンドルとチェーンとを接続することができる。この際、玉鎖のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチの間隔の下、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さを調節することができる。
【0024】
ここで、この排水弁用フックでは、チェーン係止部は、一端側と他端側とを互いに近づく方向に押圧することにより、ボールの外径より大きくなり、一端側と他端側との押圧を解除することにより、ボールの外径より小さくなるように形成されている。このため、この排水弁用フックは、単なる押圧によりチェーン係止部に玉鎖を挿通させた後、押圧の解除により玉鎖を確実に保持することができる。また、チェーン係止部に係止した玉鎖の長さを再び調整しようとする場合、単に押圧するだけで係止するボールを容易にずらすことができる。その結果、この排水弁用フックが適用された便器洗浄タンクでは、スピンドルの動作に対する排水弁の開閉を何度も容易に調整することが可能となっている。
【0025】
したがって、第2発明の排水弁用フックも、スピンドルと排水弁とを接続するチェーンの長さの調節を一層容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ、説明する。なお、図1〜図8において、上方側が一方側であり、下方側が他方側である。
【実施例1】
【0027】
図1に示すように、実施例1の排水弁用フック10は、便器洗浄タンク90に適用されて、便器洗浄タンク90の側壁に回動可能に設けられたスピンドル80と、繰り返し要素が一定のピッチPで順次接続されてなるチェーンとしての玉鎖70とを接続するために用いられるものである。
【0028】
より詳しくは、スピンドル80は、便器洗浄タンク90の側壁に配設された軸受91に回動可能に支承され、便器洗浄タンク90内に水平状に突出されている。便器洗浄タンク90の側壁の外側には、スピンドル80に連結され、揺動操作することによりスピンドル80を回動可能なレバー92が取り付けられている。スピンドル80の先端には、下方側に垂れ下がる垂下部80aが一体形成されており、垂下部80aには、水平方向に係止穴80bが貫設されている。
【0029】
玉鎖70は、繰り返し要素が中空のボール71と、ボール71を自己に対して回動可能に接続する棒状の連結材72とからなり、捩れが生じずに安定した動作を発揮可能なものである。そして、玉鎖70の上端70aは、排水弁用フック10によってスピンドル80の垂下部80aと接続され、玉鎖70の下端70bは、便器洗浄タンク90の底壁に設置された排水弁60に接続されている。
【0030】
排水弁60は、便器洗浄タンク90の底壁から下方に延在する排出管56の上端に形成された弁座部61に当接し、又は離れることにより開閉し、便器洗浄タンク90と排出管56との間の排水経路を開放又は遮断するものである。玉鎖70の上端70aから下端70bまでの長さは、レバー92が操作されていない状態では、玉鎖70が弛んで、排水弁60を引き上げず、レバー92が操作されてスピンドル80が回動された状態では、玉鎖70が緊張して、排水弁60を引き上げることができる長さに調整されている。このため、便器洗浄タンク90の外側に設けられたレバー92を操作することにより、スピンドル80が回動すると、玉鎖70は、スピンドル80の動作によって排水弁60を開閉して便器洗浄タンク90内の洗浄水を吐水及び止水可能となっている。
【0031】
このようにして用いられる実施例1の排水弁用フック10は、図2に示すように、一端10aから他端10bまで延びる金属製の線材(線径:0.5〜1.5mm程度)が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部11と、棒状部11の一方側に位置し、スピンドル80に貫設された係止穴80bに係止されるスピンドル係止部31と、棒状部11の他方側に位置し、玉鎖70の各繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部としての玉鎖係止部12とが形成されている。そして、玉鎖係止部12は、後述する通り、第1玉鎖係止部12aと第2玉鎖係止部12bとの2個にされている。
【0032】
より詳しくは、排水弁用フック10は、棒状部11の一方側から延在する線材の一端10a側が曲率の大きな円弧状に180°を超えて折り返され、さらに略「<」字形状に屈曲されることにより、棒状部11の一方側とスピンドル係止部31とで略「R」字形状とされている。この略「R」字形状により、スピンドル係止部31は、係止穴80bから抜け落ち難くなっている。
【0033】
また、排水弁用フック10は、棒状部11の他方側から延在する線材の他端10b側が曲率の小さな円弧状に180°を超えて折り返されることにより第1折り返し部13が形成され、さらに、第1折り返し部13から棒状部11の一方側に接近しつつ延在する第2棒状部14が形成されている。そして、第2棒状部14の一方側から延在する線材の他端10b側が曲率の小さな円弧状に約180°折り返されることにより第2折り返し部15が形成され、さらに、第2折り返し部15から第2棒状部14の他方側に略平行に延在する第3棒状部16が形成されている。そして、第3棒状部16の他方側から延在する線材の他端10b側が曲率の小さな円弧状に180°を超えて折り返されることにより第3折り返し部17が形成され、さらに、第3折り返し部17から第3棒状部16の一方側及び棒状部11の一方側に接近しつつ延在する第4棒状部18が形成されている。そして、第4棒状部18の一方側から延在する線材の他端10b側が棒状部11から離れるように屈曲された後、再び棒状部11に接近するように屈曲されて、棒状部11の一方側に延在する湾曲部19が形成されている。
【0034】
湾曲部19と棒状部11とにより形成される開口19aは、玉鎖70を構成するボール71の直径よりも充分大きくされ、玉鎖70を挿通し易くなっている。
【0035】
棒状部11と第2折り返し部15との隙間W1、第2折り返し部15と第4棒状部18との隙間W2、及び棒状部11と第4棒状部18の一方側との隙間W3は、玉鎖70を構成する連結材72の軸径よりも大きくされており、開口19aに挿通された玉鎖70の連結材72が隙間W1、W2、W3を通過可能となっている。
【0036】
第1折り返し部13及び第3折り返し部17の曲率は、玉鎖70を構成するボール71が通過できない大きさとされている。
【0037】
第1折り返し部13と第3折り返し部17とは、繰り返し要素の一定のピッチPとは異なる間隔L1で互いに上下方向(玉鎖70の延びる方向)で離れている。間隔L1は、ピッチPの約1/2とされ、第3折り返し部17の方が第1折り返し部13より上方に配置されている。
【0038】
棒状部11と第1折り返し部13と第2棒状部14とにより第1玉鎖係止部12aが構成されている。また、第3棒状部16と第3折り返し部17と第4棒状部18とにより第2玉鎖係止部12bが構成されている。そして、第1玉鎖係止部12aと第2玉鎖係止部12bとは、繰り返し要素の一定のピッチPとは異なる間隔L1で互いに上下方向(玉鎖70の延びる方向)で離れている。
【0039】
このような構成である実施例1の排水弁用フック10は、図3に示すように、スピンドル係止部31をスピンドル80の係止穴80bに係止させることにより、スピンドル80に取り付けられる。そして、排水弁用フック10の開口19aに玉鎖70を挿通させ、第1玉鎖係止部12aに玉鎖70の各繰り返し要素である連結材72のうちの一つを係止させることによって、スピンドル80と玉鎖70とを接続することができる。この際、各繰り返し要素である連結材72のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチPの間隔の下、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖70の長さを調節することができる。
【0040】
また、この排水弁用フック10は、図4に示すように、第2玉鎖係止部12bに玉鎖70の各繰り返し要素である連結材72のうちの一つを係止させることによっても、スピンドル80と玉鎖70とを接続することができる。この際、各繰り返し要素である連結材72のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチPとは異なる間隔L1の下、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖の長さを調節することができる。特に間隔L1がピッチPの約1/2であることから、この排水弁用フック10は、ピッチPの約1/2の間隔の下、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖70の長さを調節することが可能となっている。
【0041】
その結果、この排水弁用フック10が適用された便器洗浄タンク90では、スピンドル80の動作に対する排水弁60の開閉をより細かく調整することができている。
【0042】
したがって、実施例1の排水弁用フック10は、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖70の長さの調節を一層容易にすることができている。
【0043】
また、この排水弁用フック10において、玉鎖係止部12は、繰り返し要素の一定のピッチPとは異なる間隔L1で互いに上下方向に離れる第1玉鎖係止部12a及び第2玉鎖係止部12bの2個にされている。そして、玉鎖70の各繰り返し要素であるボール71及び連結材72がさほど大きくないことから、スピンドル係止部31が複数個にされる場合と比較して、排水弁用フック10の小型化を実現できている。
【実施例2】
【0044】
図5に示す形状の実施例2の排水弁用フック20も、実施例1の排水弁用フック10と同様に、便器洗浄タンク90に適用されて、便器洗浄タンク90の側壁に回動可能に設けられたスピンドル80と、繰り返し要素が一定のピッチPで順次接続されてなるチェーンとしての玉鎖70とを接続するために用いられるものである。そして、この排水弁用フック20が適用された便器洗浄タンク90でも、便器洗浄タンク90の外側に設けられたレバー92を操作することにより、スピンドル80が回動すると、玉鎖70は、スピンドル80の動作によって排水弁60を開閉して便器洗浄タンク90内の洗浄水を吐水及び止水可能となっている。
【0045】
このようにして用いられる実施例2の排水弁用フック20は、一端20aから他端20bまで延びる金属製の線材(線径:0.5〜1.5mm程度)が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部21と、棒状部21の一方側に位置し、スピンドル80に貫設された係止穴80bに係止されるスピンドル係止部32と、棒状部21の他方側に位置し、玉鎖70の各繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部としての玉鎖係止部22とが形成されている。
【0046】
より詳しくは、排水弁用フック20は、棒状部21の一方側から延在する線材の一端20a側が曲率の大きな円弧状に180°を超えて折り返され、さらに略「<」字形状に屈曲されることにより、棒状部21の一方側とスピンドル係止部32とで略「R」字形状とされている。この略「R」字形状により、スピンドル係止部32は、係止穴80bから抜け落ち難くなっている。
【0047】
また、排水弁用フック20は、棒状部21の他方側から延在する線材の他端10b側が略「<」字形状に屈曲されることにより第1屈曲部22aが形成され、第1屈曲部22aの他方側が180°を超えて折り返されることにより第1折り返し部23が形成され、第1折り返し部13から棒状部21の一方側に向けて延在する線材の他端10b側が略「>」字形状に屈曲されることにより第2屈曲部22bが形成されている。そして、第1屈曲部22aと第2屈曲部22bとにより略菱形状の開口22cが形成されている。さらに、第2屈曲部22bの一方側から延在する線材の他端20b側が棒状部21から離れつつ棒状部21の一方側に突出した後、再度棒状部21に接近するように屈曲されることにより押圧部24が形成されている。
【0048】
第1屈曲部22aと第2屈曲部22bと第1折り返し部23と押圧部24とにより玉鎖係止部22が形成されている。そして、玉鎖係止部22は、図6に示すように、押圧部24を押して、一端20a側と他端20b側とを互いに近づく方向に押圧することにより、開口22cがボール71の外径より大きくなり、図5に示すように、押圧部24を押すのを止めて、一端20a側と他端20b側との押圧を解除することにより、開口22cがボールの外径71より小さくなるようになっている。
【0049】
このような構成である実施例2の排水弁用フック20も、図7に示すように、スピンドル係止部32をスピンドル80の係止穴80bに係止させることにより、スピンドル80に取り付けられる。次に、押圧部24を押して開口22cを大きくした状態で、玉鎖70を玉鎖係止部22に挿通させ、玉鎖係止部22に玉鎖70の各繰り返し要素である連結材72のうちの一つを置き掛ける。そして、図8に示すように、押圧部24を押すのを止めて開口22cを小さくすることにより、玉鎖係止部22が玉鎖70を確実に保持する。こうして、この排水弁用フック20は、スピンドル80と玉鎖70とを接続することができる。この際、玉鎖70を構成する連結材72のなかから特定の一つを選択することにより、繰り返し要素の一定のピッチPの間隔の下、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖70の長さを調節することができる。
【0050】
また、玉鎖係止部22に係止した玉鎖70の長さを再び調整しようとする場合、図7に示すように、単に押圧部24を押圧するだけで、係止するボール71を容易にずらすことができる。その結果、この排水弁用フック20が適用された便器洗浄タンク90では、スピンドル80の動作に対する排水弁60の開閉を何度も容易に調整することが可能となっている。
【0051】
したがって、実施例2の排水弁用フック20も、スピンドル80と排水弁60とを接続する玉鎖70の長さの調節を一層容易にすることができている。
【0052】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は排水弁用フックに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の排水弁用フックが適用される便器洗浄タンクの模式図である。
【図2】実施例1の排水弁用フックの正面図である。
【図3】実施例1の排水弁用フックに係り、玉鎖が第1玉鎖係止部に係止された状態を示す部分拡大模式図である。
【図4】実施例1の排水弁用フックに係り、玉鎖が第2玉鎖係止部に係止された状態を示す部分拡大模式図である。
【図5】実施例2の排水弁用フックの正面図である(一端側と他端側との押圧を解除した状態)。
【図6】実施例2の排水弁用フックの正面図である(一端側と他端側とを互いに近づく方向に押圧した状態)。
【図7】実施例2の排水弁用フックに係り、玉鎖係止部を大きくして、玉鎖の長さ調整をしている状態を示す部分拡大模式図である。
【図8】実施例2の排水弁用フックに係り、玉鎖係止部を小さくして、玉鎖を保持している状態を示す部分拡大模式図である。
【符号の説明】
【0055】
10、20…排水弁用フック
11、21…棒状部
31、32…スピンドル係止部
12、22…チェーン係止部(玉鎖係止部)
11、13、14…第1玉鎖係止部(11…棒状部、13…第1折り返し部、14…第2棒状部)
16、17、18…第2玉鎖係止部(16…第3棒状部、17…第3折り返し部、18…第4棒状部)
24…押圧部
60…排水弁
70…チェーン(玉鎖)
71、72…繰り返し要素(71…ボール、72…連結材)
80…スピンドル
80b…係止穴
90…便器洗浄タンク
P…ピッチ
L1…ピッチとは異なる間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器洗浄タンクに回動可能に設けられたスピンドルと、繰り返し要素が一定のピッチで順次接続されてなり、該スピンドルの動作によって排水弁を開閉して該便器洗浄タンク内の洗浄水を吐水及び止水可能なチェーンとを接続するために用いられ、
一端から他端まで延びる線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部と、該棒状部の一方側に位置し、前記スピンドルに貫設された係止穴に係止されるスピンドル係止部と、該棒状部の他方側に位置し、前記チェーンの各前記繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部とが形成された排水弁用フックにおいて、
前記スピンドル係止部及び前記チェーン係止部の少なくとも一方は、前記ピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れる複数個にされていることを特徴とする排水弁用フック。
【請求項2】
前記チェーン係止部は、前記ピッチとは異なる間隔で互いに上下方向に離れる複数個にされている請求項1記載の排水弁用フック。
【請求項3】
便器洗浄タンクに回動可能に設けられたスピンドルと、繰り返し要素が一定のピッチで順次接続されてなり、該スピンドルの動作によって排水弁を開閉して該便器洗浄タンク内の洗浄水を吐水及び止水可能なチェーンとを接続するために用いられ、
一端から他端まで延びる線材が屈曲されることにより、棒状に延びる棒状部と、該棒状部の一方側に位置し、前記スピンドルに貫設された係止穴に係止されるスピンドル係止部と、該棒状部の他方側に位置し、前記チェーンの各前記繰り返し要素を係止可能なチェーン係止部とが形成された排水弁用フックにおいて、
前記チェーンは、前記繰り返し要素が中空のボールと、該ボールを自己に対して回動可能に接続する連結材とからなる玉鎖であり、
前記チェーン係止部は、前記一端側と前記他端側とを互いに近づく方向に押圧することにより、該ボールの外径より大きくなり、該一端側と該他端側との押圧を解除することにより、該ボールの外径より小さくなるように形成されていることを特徴とする排水弁用フック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−303217(P2007−303217A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134291(P2006−134291)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】