説明

排水弁装置、及び、それを備えた洗浄水タンク装置

【課題】大洗浄及び小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上昇に伴うストロークのずれを抑制すると共に、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることにより、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内で生ずるずれを抑制し、排水弁の止水不良を防ぐことができる排水弁装置を提供する。
【解決手段】本発明の排水弁装置28は、操作レバー42の回転軸44の玉鎖引き上げ部材46と排水弁ユニット58とを連結する第1玉鎖48及び第2玉鎖50を有し、第1玉鎖及び第2玉鎖は、操作レバーを回転操作することにより排水弁ユニットの弁体84を上昇させて便器の大洗浄及び小洗浄をそれぞれ実行させ、玉鎖引き上げ部材の第1玉鎖取付部46a及び第2玉鎖取付部46bのそれぞれは、操作レバーの回転軸の中心軸線44aに対して一方の側及び他方の側にそれぞれ配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水弁装置、及び、それを備えた洗浄水タンク装置に係り、特に、便器を洗浄する洗浄水を貯える洗浄水タンクの排水弁装置、及び、それを備えた洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器を洗浄する洗浄水を貯える洗浄水タンクの排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水タンクの底部に形成された排水口とこの排水口を開閉させる排水弁とを囲むように筒体が設けられ、この筒体の側面には開口が形成されると共に、この筒体の開口を開閉する弁体が設けられているものが知られている。
このような、従来の洗浄水タンクの排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置においては、便器の大洗浄を行う際には、筒体の開口が開放されたままの状態で排水弁が上昇して排水口を開放することにより、洗浄水タンク内の洗浄水が筒体の開口を通過し、排水口から便器へ排出される洗浄水量を多くする一方、便器の小洗浄を行う際には、筒体の開口を弁体で閉じた状態で排水弁が上昇して排水口を開放し、洗浄水タンク内から排水口を経て便器へ排出させる洗浄水量を少なくすることにより、大洗浄モードと小洗浄モードのいずれかの洗浄モードに切り替えるようになっている。
また従来の排水弁装置では、洗浄水タンク装置の操作部の回転軸を一方の方向に回転操作することにより、操作部の回転軸と排水弁とを連結する単一の玉鎖が引き上げられると共に排水弁が鉛直方向に所定のストロークで引き上げられ、排水口が開放されて便器の大洗浄が行われる一方、操作部を他方の方向に回転操作することにより、上述した単一の玉鎖が引き上げられると共に排水弁が上述した大洗浄の場合と同一のストロークで鉛直方向に引き上げられ、排水口が開放されて便器の小洗浄が行われるようになっている。すなわち、大洗浄モードと小洗浄モードによる便器の洗浄開始時においては、共通な単一の玉鎖によって排水弁を引き上げるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−72144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の排水弁装置においては、この排水弁装置が取り付けられている洗浄水タンク装置の洗浄水タンクが、製造誤差が生じやすい陶器で形成されているため、洗浄水タンクに取り付けられる操作部の取付位置が洗浄水タンクの製造誤差によってずれてしまうという問題がある。
また、操作部の取付位置が洗浄水タンクの製造誤差によってずれると、操作部の回転軸の中心軸と排水弁の中心軸との位置関係や、操作部の回転軸及び排水弁のそれぞれに取り付けられる玉鎖の取付位置の相互の位置関係もずれるため、大洗浄モード及び小洗浄モードのそれぞれに対応する操作部の回転軸の回転方向に応じて、引き上げられる排水弁のストロークが異なってしまう。この結果、排水開始後に排水弁が降下する際に排水弁自体がその中心軸回りに回転してしまい、排水弁が排水口へ着座する位置が着座する面内でずれてしまい、この着座位置のずれが便器の洗浄毎に繰り返すと、例えば、排水弁に使用されているシートパッキン等にひずみが生じて、排水弁の止水不良につながるおそれがあるという問題がある。
さらに、特に、洗浄水タンクの上下方向の寸法が制限されるような、いわゆるローシルエットタイプの洗浄水タンクに上述した排水弁装置を適用した場合には、操作部の回転軸と排水弁との上下方向の距離も短く、操作部の回転軸と排水弁とを連結する玉鎖の長さも短くなるため、操作部の取付位置が洗浄水タンクの製造誤差によってずれると、上述した問題はより顕著なものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、大洗浄及び小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上昇に伴うストロークのずれを抑制すると共に、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることにより、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内で生ずるずれを抑制し、排水弁の止水不良を防ぐ排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯える洗浄水タンクの排水弁装置であって、上下動することにより、洗浄水タンクの底面に配置された排水口を開閉する排水弁と、回転軸を備え、この回転軸の軸回りに回転操作することにより上記排水弁の開閉を操作して、上記排水口から便器に供給される洗浄水量を、便器の大洗浄を行うための大洗浄水量又は便器の小洗浄を行うための小洗浄水量のいずれかに切り替える操作部と、この操作部と上記排水弁とを連結する連結手段と、を有し、この連結手段は、一端が上記操作部の第1の取付位置に取り付けられて他端が上記排水弁の第1の取付位置に取り付けられ、上記操作部の回転軸を所定の回転方向に回転操作することにより上記排水弁を上昇させて上記便器の大洗浄を実行させる大洗浄用連結部材と、一端が上記操作部の第2の取付位置に取り付けられて他端が上記排水弁の第2の取付位置に取り付けられ、上記操作部の回転軸を上記所定の回転方向とは反対の方向に回転操作することにより上記排水弁を上昇させて上記便器の小洗浄を実行させる小洗浄用連結部材と、を備え、上記大洗浄用連結部材の一端が取り付けられている上記操作部の第1の取付位置は、上記操作部の回転軸の中心軸線に対して一方の側に配置され、上記小洗浄用連結部材の一端が取り付けられている上記操作部の第2の取付位置は、上記操作部の回転の中心軸線に対して他方の側に配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、便器の洗浄を行う際、操作部の回転軸を所定の回転方向に回転操作すると、連結手段の大洗浄用連結部材が排水弁を上昇させて便器の大洗浄を実行させる一方、操作部の回転軸を所定の回転方向とは反対の方向に回転操作すると、連結手段の小洗浄用連結部材が排水弁を上昇させて便器の小洗浄を実行させ、操作部の回転軸の回転操作により、便器の大洗浄又は小洗浄のいずれかに切り替えることができる。この際、大洗浄用連結部材の一端が取り付けられている操作部の第1の取付位置が、操作部の回転軸の中心軸線に対して一方の側に配置され、小洗浄用連結部材の一端が取り付けられている操作部の第2の取付位置が、操作部の回転の中心軸線に対して他方の側に配置されているため、例えば、陶器で製造された洗浄水タンクの製造誤差によって、操作部と排水弁との相対位置にずれが生じたとしても、大洗浄又は小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上昇に伴うストロークのずれを抑制することができる。また、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることができ、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内で生ずるずれを抑制することにより、排水弁の着座面(例えば、シートパッキン等)にひずみが生じて止水不良に至ることを防ぐことができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記操作部の回転軸の中心軸は、上記排水弁の中心軸を通過し、上記操作部の第1の取付位置と上記操作部の第2の取付位置との間隔は、上記大洗浄用連結部材の他端が取り付けられている上記排水弁の第1の取付位置と上記小洗浄用連結部材の他端が取り付けられている上記排水弁の第2の取付位置との間隔とほぼ同一である。
このように構成された本発明においては、操作部の回転軸の中心軸が、排水弁の中心軸を通過し、操作部の第1の取付位置と操作部の第2の取付位置との間隔が、大洗浄用連結部材の他端が取り付けられている排水弁の第1の取付位置と小洗浄用連結部材の他端が取り付けられている排水弁の第2の取付位置との間隔とほぼ同一であるため、例えば、陶器で製造された洗浄水タンクの製造誤差によって、操作部と排水弁との相対位置にずれが生じたとしても、大洗浄又は小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上下動に伴うストロークのずれを抑制することができる。また、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることができ、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内でずれが生ずることにより、排水弁の着座面(例えば、シートパッキン等)にひずみが生じて止水不良に至ることを防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、上記排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置である。
このように構成された本発明においては、例えば、陶器で製造された洗浄水タンクの製造誤差によって、操作部と排水弁との相対位置にずれが生じたとしても、大洗浄又は小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上下動に伴うストロークのずれを抑制することができる。また、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることができ、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内でずれが生ずることにより、排水弁の着座面(例えば、シートパッキン等)にひずみが生じて止水不良に至ることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置によれば、大洗浄及び小洗浄のそれぞれの場合における排水弁の上昇に伴うストロークのずれを抑制すると共に、排水弁が上下動する際に、排水弁の中心軸回りの回転を低減させることにより、排水弁が着座する位置が止水動作毎に平面内で生ずるずれを抑制し、排水弁の止水不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置について蓋体を取り外した状態で貯水タンク内の構造を前方斜め上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク内の構造を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿って見た断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿って見た断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の分解斜視図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の閉弁時の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図であり、図7(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図であり、図7(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始前の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始直後の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(d)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水終了後の状態の排水弁装置を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始前の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始直後の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(d)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水終了後の状態の排水弁装置を示す断面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の閉弁時の排水弁装置を示す断面図であり、図10(b)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図10(c)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す断面図である。
【図11A】図11Aの(a)〜(c)は、本発明の第3実施形態による排水弁装置において、筒体が排水弁装置に取り付けられた状態から筒体を取り外した状態に設定するまでの工程を示す工程図である。
【図11B】図11Bの(d)〜(f)は、本発明の第3実施形態による排水弁装置において、筒体が排水弁装置に取り付けられた状態から筒体を取り外した状態に設定するまでの工程を示す工程図である。
【図11C】図11Cの(g)〜(i)は、本発明の第3実施形態による排水弁装置において、筒体が排水弁装置に取り付けられた状態から筒体を取り外した状態に設定するまでの工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、添付図面により、本発明の第1実施形態による排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置を説明する。
まず、図1により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図である。
【0012】
図1に示すように、符号1は洗落し式の水洗便器を示し、この便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2にはボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通するトラップ管路8がそれぞれ形成されている。
便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0013】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0014】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18(詳細は後述する)が設けられている。
洗浄水タンク装置18は、陶器製の外装タンク20と、この外装タンク20内に配置され、水洗便器1を洗浄する洗浄水が貯水される貯水タンク22と、外装タンク20に載せられる蓋体24を備えている。
貯水タンク22の底部には、便器本体2の導水路6と連通する排水口22aが形成され、貯水タンク22内の洗浄水が導水路6へと排水されるようになっている。また、貯水タンク22は、便器の種類に応じて、貯水する洗浄水の量が異なっている。
なお、本実施形態による洗浄水タンク装置18においては、上述した洗落し式以外の他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン式水洗便器など)にも適用可能である。
【0015】
つぎに、図2により、洗浄水タンク装置18を詳細に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置について蓋体を取り外した状態で貯水タンク内の構造を前方斜め上方から見た斜視図であり、図3は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク内の構造を示す平面図である。
また、図4は、図3のIV−IV線に沿って見た断面図であり、図5は、図4のV−V線に沿って見た断面図である。なお、図4及び図5においては、貯水タンク22の満水時の止水水位をWL0で示している。
【0016】
図2〜図5に示すように、洗浄水タンク装置18の貯水タンク22内には、この貯水タンク22内に洗浄水を供給する給水装置26と、貯水タンク22に貯えられた洗浄水について排水口22aを開放して便器本体2の導水路6に排出する排水弁装置28とが設けられている。
【0017】
給水装置26は、外部の給水源に接続され貯水タンク22の底部から上方に延びる給水管30と、この給水管30の上端部に取り付けられ、給水管30から給水される洗浄水の貯水タンク22内への吐水と止水を切り替える給水バルブ32と、貯水タンク22内の水位の変動に応じて上下動して給水バルブ32による吐水と止水を切り替えるフロート34とを備えている。
【0018】
給水管30の外周側下端部には、吐水口36が開口し、給水バルブ32からの洗浄水がこの吐水口36から貯水タンク22内に吐水されるようになっている。
給水装置26は、更に、給水バルブ32に接続されたリフィール管38を備え、このリフィール管38の下流端は、後述する排水弁装置28のオーバーフロー管40の上端開口の上方に位置している。
【0019】
給水装置26においては、後述する排水弁装置28により、貯水タンク22内の洗浄水が便器に排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート34が下降し、それにより給水バルブ32が開き、吐水口36から吐水が開始される、貯水タンク22内への吐水が開始される。次に、吐水が継続されて水位が上昇すると、フロート34も上昇し、それにより給水バルブ32が閉じ、吐水口36が止水される。これにより、貯水タンク22内の洗浄水の水位を所定の満水時の水位に維持するようになっている。
【0020】
つぎに、図2〜図9を参照して、排水弁装置28を詳細に説明する。
図6は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁装置の分解斜視図である。
また、図7(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の閉弁時の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図であり、図7(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図であり、図7(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す図3のVII−VII線に沿って見た断面図である。
【0021】
さらに、図8(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始前の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始直後の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図8(d)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水終了後の状態の排水弁装置を示す断面図である。
【0022】
また、図9(a)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始前の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(b)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始直後の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(c)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図9(d)は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水終了後の状態の排水弁装置を示す断面図である。
【0023】
図2〜図6に示すように、排水弁装置28は、貯水タンク22の外部に取り付けられた操作レバー42と、一端が操作レバー42に取り付けられ、他端が貯水タンク22内まで延びて操作レバー42の操作により回転する回転軸44を備えている。
ここで、本実施形態では、一例として、操作レバー42及び回転軸44については、使用者が操作レバー42を直接回転操作して回転軸44を回転させるような手動式の操作形態について説明するが、このような形態に限定されず、操作レバー42及び回転軸44を回転させるためのモータ等の駆動手段を設け、外部に設定された操作ボタン(図示せず)又は人感センサー(図示せず)からの指令信号によって駆動手段の作動を自動的に制御するような操作形態にしてもよい。
【0024】
また、回転軸44の他端には、回転軸44の回転と共に回転軸44の中心軸線44aを中心に回転する玉鎖引き上げ部材46が回転軸44と一体的に取り付けられている。
この玉鎖引き上げ部材46においては、回転軸44の中心軸線44aに対して一方の側には、回転軸44の回転により上下動するようになっている第1玉鎖48が取り付けられる第1玉鎖取付部46aが設けられ、回転軸44の中心軸線44aに対して他方の側には、回転軸44の回転により上下動するようになっている第2玉鎖50が取り付けられる第2玉鎖取付部46bが設けられている。
【0025】
また、第1玉鎖48及び第2玉鎖50のそれぞれの下端は、後述するフロート部材52の第1玉鎖取付部52a及び第2玉鎖取付部52bのそれぞれに取り付けられている。
さらに、玉鎖引き上げ部材46において、第2玉鎖取付部46bから操作レバー42側に隣接した所定位置に、回転軸44の回転により上下動するようになっている第3玉鎖54が取り付けられる第3玉鎖取付部46cが設けられており、第3玉鎖54の下端は、後述する切替弁56の第3玉鎖取付部56aに取り付けられている。
【0026】
また、図7(b)及び図8(b)に示すように、操作レバー42を一方に回動させると、玉鎖引き上げ部材46が回転軸44と共に所定方向に回動し、第2玉鎖50及び第3玉鎖54が弛んだ状態で第1玉鎖48のみが玉鎖引き上げ部材46によって引き上げられ、切替弁56が開弁した状態のままフロート部材52と共に後述する弁体84が上昇し、後述する便器の大洗浄モードによる排水が開始されるようになっている。
一方、図7(c)及び図9(b)に示すように、操作レバー42を他方に回動させると、第1玉鎖48が弛んだ状態で第2玉鎖50及び第3玉鎖54が玉鎖引き上げ部材46によって引き上げられ、フロート部材52及び弁体84が上昇すると共に切替弁56が閉弁し、後述する便器の小洗浄モードによる排水が開始されるようになっている。
【0027】
また、図3及び図7(a)〜(c)に示すように、回転軸44の中心軸線44aは、後述する排水弁ユニット58の中心軸線58aを通過し、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aと第2玉鎖取付部46bとの間隔は、フロート部材52の第1玉鎖取付部52aと第2玉鎖取付部52bとの間隔とほぼ同一となるように設定されている。
【0028】
排水弁装置28は、図6に示すように、貯水タンク22の底面に取り付けられ、便器本体2の導水路6に連通する排水口22aを形成する排水口ユニット60と、この排水口ユニット60の上端に取り付けられた排水弁ユニット58と、排水口ユニット60に上方から着脱可能に取り付けられた筒体62を備えている。
【0029】
図6に示すように、排水弁装置28の排水口ユニット60は、貯水タンク22の底面の所定位置に取り付けられて排水口22aを形成する排水口形成部材64を備えている。
この排水口形成部材64の下端部は、貯水タンク22の底面を貫き、シール部材66を介して締結部材68によって締結され、排水口形成部材64が貯水タンク22の底面に固定されている。
【0030】
また、排水口形成部材64は、排水口22aの上縁を形成する排水口上縁部70を備え、この排水口上縁部70の外周の所定の対角位置には、筒体62が上方から着脱可能に取り付けられる筒体取付用の保持突起72が形成されている。
さらに、排水口形成部材64の上端開口部74の外周の所定の対角位置には、後述する排水弁ユニット60の制御筒76が上方から着脱可能に取り付けられる制御筒取付用の保持突起78が形成されている。
また、排水口形成部材64は、排水口上縁部70と上端開口部74との間に円周方向に沿って所定間隔を置いて上下方向に延びる複数のリブ80を備え、これらのリブ80により、制御筒76の外側の洗浄水を排水口22aへ流入させるための複数の連通口82が形成されている。
【0031】
つぎに、図6に示すように、排水弁装置28の排水弁ユニット58は、弁体84と、オーバーフロー管40と、制御筒76と、フロート部材52と、オーバーフロー管取付部材86と、リフィール管取付部材88を備えている。
【0032】
弁体84は、シートパッキン等のシール部材からなり、図6に示すように、オーバーフロー管40の下端部に円周方向に沿って形成され且つ半径方向内側に向って凹溝状に形成された弁体保持部40aにはめ込まれて固着され、オーバーフロー管40と共に上下動して、排水口22aを開閉する排水弁として機能するようになっている。
【0033】
制御筒76は、この弁体84の上下動を制御するものとして機能するようになっており、洗浄水を貯水すると共にその貯水された洗浄水を所定の小さな流量で排出する小穴76aが形成されたほぼ円筒状の貯水部76bと、この貯水部76bの底部の中央から上方に延びたほぼ円筒状のガイド部76cと、貯水部76bの下端部に形成されて排水口ユニット60の排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78に係合される1つ又は複数の係合溝76dを備えている。この係合溝76dは、ほぼL字形の鍵穴状の溝を形成し、制御筒取付用保持突起78を下方から挿入可能した後、係合溝76dを水平方向に移動させることにより制御筒取付用保持突起78に係止可能となっている。
【0034】
また、フロート部材52は、薄肉でほぼ円環状に形成して制御筒76の貯水部76の内周側且つガイド部76cの外周側に収容されるフロート部52cと、このフロート部52cの下端に取り付かれた底部52dを備え、フロート部52cの内側と底部52dによって内部空間が形成されている。これらのフロート部52c及び底部52dは、制御筒76の貯水部76内に洗浄水が貯水されている状態では、浮力作用により制御筒76の貯水部76内に浮かんだ状態で収容されており、制御筒76の貯水部76内の洗浄水の水位の低下に伴って、制御筒76のガイド部76cにガイドされて下降するようになっている。
さらに、フロート部材52は、フロート部52cの上端に固定されて所定距離上方に延びた後、半径方向内側にアーチ状に延びてオーバーフロー管40の円筒部40bの上端が取り付けられるオーバーフロー管取付部52eを備えている。
【0035】
また、オーバーフロー管40の上下方向に円筒状に延びる円筒部40bは、制御筒76のガイド部76cの内周側に挿入され、上下方向に摺動可能にガイドされている。
さらに、オーバーフロー管40の円筒部40bの上端は、フロート部材52のオーバーフロー管取付部52eに取り付けられて、オーバーフロー管取付部材86によって固定される。
このオーバーフロー管取付部材86は、実質的には、洗浄水タンク22内の所定水位(満水水位)を超えた洗浄水が流入するオーバーフロー管40の上端の流入口86aを形成している。
また、オーバーフロー管40の上端の流入口86aは、オーバーフロー管40の管径に対して滑らかに上方且つ外側に広がるラッパ形状となっており、洗浄水タンク22内の所定水位(満水水位)を超えた洗浄水がオーバーフロー管40によって洗浄水タンク22の外部へより確実に排出されるようになっている。
【0036】
さらに、リフィール管取付部材88が、上述したリフィール管38の下流端が接続されるノズル部88aを備え、このノズル部88aの下端部の開口は、オーバーフロー管40の流入口86aの上方に位置している。
【0037】
つぎに、図6に示すように、筒体62は、横断面形状がほぼ矩形状に形成されて上方が開放された筒体本体90を備えている。この筒体本体90の下端部は、排水口ユニット60の排水口形成部材64を上下方向に挿入可能な開口を形成し、筒体本体90の下端部の周縁には、筒体本体90をその中心軸線(排水弁ユニット58の中心軸線58aに相当)を中心に回転させることにより、排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に着脱可能な1つ又は複数の係合溝90aが設けられている。
この係合溝90aは、ほぼL字形の鍵穴状の溝を形成し、筒体取付用保持突起72を下方から挿入可能した後、係合溝90aを水平方向に移動させることにより筒体取付用保持突起72に係止可能となっている。
【0038】
また、筒体本体90の係合溝90aが排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に係合された状態では、筒体本体90の側壁90bが排水口ユニット60及び制御筒76の一部を取り囲むように洗浄水タンク22の底面から上方に延びており、この筒体本体90の操作レバー42側の側壁90bには、この側壁90bを貫く洗浄モード切替用の開口部90cが形成されている。
【0039】
さらに、筒体本体90の操作レバー42側の側壁90bには、開口部90cを開閉可能とする切替弁56が取り付けられており、この切替弁56には、錘56bが取り付けられている。そして、切替弁56が開口部90cを開放した状態では、大洗浄モードによる排水が行われ、切替弁56が開口部90cを閉鎖した状態では、小洗浄モードによる排水が行われるようになっている。
【0040】
また、筒体本体90の開口部90cが形成された側壁90bと対向する側壁には、流量調節用の開口部90dが形成され、この開口部90dには、流量調節用のスライド部材90eが上下方向にスライド可能に取り付けられており、このスライド部材90eを上下方向にスライドさせて開口部90dの開口面積を調節することにより、小洗浄モードにおける筒体本体90へ流入する洗浄水の流量を調節することができ、洗浄水タンク22の外部へ流出される洗浄水の量を調節することができるようになっている。
なお、本実施形態においては、スライド部材90eが開口部90dにスライド可能に取り付けられ、スライド部材90eをスライドさせることにより開口部90dの開口面積を調節するような形態について説明しているが、このような形態に限定されず、開口部90dの開口面積に応じて開口部90dに着脱可能に取り付けた部材を着脱することにより、開口部90dの開口面積を調節するようにしてもよい。
【0041】
さらに、図4に示すように、制御筒76の係合溝76dが排水口ユニット60の排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78に係合され、且つ筒体本体90の係合溝90aが排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に係合された状態において、制御筒76の底部から排水口22aまで延びた排水口形成部材64の側面に形成された複数の連通口82は、筒体本体90の内部と排水口22aとを連通させる連通口となっており、筒体本体90の洗浄モード切替用の開口部90cは、これらの連通口82の上端以下の高さ位置に配置されている。
【0042】
また、図8(b)及び図9(b)に示すように、大洗浄モード及び小洗浄モードによる排水開始直後の排水弁ユニット58の弁体84は、制御筒76の底部に当接する所定の最高高さ位置まで上昇するようになっているが、この弁体84の最高高さ位置は、筒体本体90の洗浄モード切替用の開口部90cの上端以上の高さ位置に設定されている。
【0043】
さらに、図4に示すように、制御筒76の貯水部76bの小穴76aについても、筒体本体90の洗浄モード切替用の開口部90cの上端以上の高さ位置に設定されている。
【0044】
また、図4及び図5に示すように、弁体84が固着されたオーバーフロー管40の弁体保持部40aの下端部は、排水口22aの上方に対向するように位置し、上方から下方に向って窄まるように縮径する曲がり面40cを形成している。すなわち、この曲がり面40cを形成する部分の図4及び図5に示す縦方向断面の輪郭は、上方から下方に向って内側に凸とするほぼ円弧状となっている。
【0045】
さらに、図4及び図5に示すように、排水口形成部材64によって形成される排水口22aについても、弁体保持部40aの下端部の曲がり面40cと対向する面が、下方へ延びる内周面に沿って縮径する曲がり面となる流路面64aを形成している。すなわち、この流路面64aを形成する部分の図4及び図5に示す縦方向断面の輪郭は、上方から下方に向って内側に凸とするほぼ円弧状となっている。
【0046】
つぎに、本発明の第1実施形態による排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置の動作(作用)を説明する。
まず、図7(a)及び(b)と図8(a)〜(d)により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置により実行される2種類の洗浄モードのうちの大洗浄モードについて説明する。
なお、以下で説明する大洗浄及び小洗浄の各洗浄モードでは、いずれも、筒体本体90の流量調節用の開口部90dが流量調節用のスライド部材90eによって閉鎖した状態の例について説明する。
【0047】
まず、図7(a)及び図8(a)に示されるような大洗浄モードにおける排水が開始される前の状態の排水弁装置28においては、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46a及び第2玉鎖取付部46bと、フロート部材52の第1玉鎖取付部52a及び第2玉鎖取付部52bとは、それぞれ上下方向に対向しており、第1玉鎖48及び第2玉鎖50は、共に上下方向にほぼ直線状に伸ばされた状態となっている。
また、図7(a)に示すように、切替弁56については、錘56bを加えた切替弁56自体の自重により、筒体本体90の洗浄モード切替用の開口部90cを開放した状態となっている。
このとき、貯水タンク22内の水位は、満水時の止水水位WL0となり、制御筒76の上端よりも上方且つオーバーフロー管40の流入口86aよりも下方に位置しており、筒体本体90の内部及び制御筒76の貯水部76bの内部は、洗浄水で満たされている。
【0048】
つぎに、図7(b)及び図8(b)に示すように、大洗浄モードにおける排水が開始された直後の状態の排水弁装置28においては、使用者が操作レバー42を手前側(正面側)に所定角度(例えば、90度)回転させると、玉鎖引き上げ部材46が回転軸44と共に回動し、玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46bが第1玉鎖取付部46aよりも下方に位置し、玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46bとフロート部材52の第2玉鎖取付部52bとの相対距離が、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも近づき、第2玉鎖50が弛んだ状態となる。
【0049】
また、図7(b)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第3玉鎖取付部46cと切替弁56の第3玉鎖取付部56aとの相対距離についても、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも近づいているため、第3玉鎖54も弛んだ状態となり、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態となる。
【0050】
一方、図7(b)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aの位置は、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇するため、第1玉鎖48のみが玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aによって引き上げられることにより、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇する。
このとき、弁体84は、制御筒76の底部に当接し、筒体本体90の開口部90cの上端以上の高さ位置となる最高高さ位置に位置し、引き上げが完了した状態となっており、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放され、排水が開始される。
【0051】
また、貯水タンク22内の筒体本体90の外側の領域の洗浄水は、切替弁56によって開放された開口部90cから筒体本体90内に流入し、制御筒76の貯水部76b内の洗浄水は、小穴76aから筒体本体90内に流入する。そして、筒体本体90内の洗浄水は、排水口ユニット60の連通口82を通過し、排水口22aから便器本体2の導水路6に排出され、貯水タンク22内の水位WL1は、図8(b)に示すように、排水によって満水時の止水水位WL0よりも低下し、例えば、筒体本体90の上端よりも上方且つ制御筒76の上端よりも下方に位置している。
しかしながら、筒体本体90の外側の領域から連通口82を経て排水口22aに流れ込む流速は、制御筒76の貯水部76b内から小穴76aを経て筒体本体90内に流入する流速よりも速いため、制御筒76の貯水部76b内の水位WL1’は、貯水タンク22内の水位WL1よりも高く且つ止水水位WL0よりも低い状態となる。
【0052】
つぎに、図8(c)に示すように、大洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置28においては、図8(b)に示す第1玉鎖48、フロート部材52及び弁体84の引き上げが完了した直後に操作レバー42が初期位置に戻されているため、フロート部材52が、制御筒76の貯水部76b内の洗浄水よって与えられる浮力によって浮いた状態となっており、第1玉鎖48及び第2玉鎖50が弛んだ状態となっている。
そして、貯水タンク22内の水位が、図8(b)に示す水位WL1から時間と共に低下し、筒体本体90の上端に達した後は、貯水タンク22内と筒体本体90内が開口部90cで連通しているため、貯水タンク22内の水位と筒体本体90内の水位が同一の水位WL2で低下し、この水位WL2が時間と共に制御筒76の貯水部76bの小穴76aの上端よりも低下すると、制御筒76の貯水部76bの小穴76aから流出する貯水部76b内の洗浄水の流量に応じた所定の速度で制御筒76の貯水部76b内の水位WL2’が低下し始める。
また、図8(c)に示す制御筒76の貯水部76b内の水位WL2’の低下に伴ってフロート部材52も下降し、このフロート部材52の下降に連動してオーバーフロー管40及び弁体84も、フロート部材52の下降速度と同じ速度で下降する。
【0053】
つぎに、図8(d)に示すように、大洗浄モードにおける排水終了時の排水弁装置28においては、図8(c)に示す制御筒76の貯水部76b内の水位WL2’がフロート部材52に浮力を与えない水位(すなわち、WL2’がほぼ零)まで低下して、フロート部52cの底部52dが貯水部76bの底部に到達したとき、弁体84が排水口22aを閉鎖し、排水が終了する。
このとき、貯水タンク22内と筒体本体90内の水位は、図8(c)に示す水位WL2よりも低い死水水位DWLとなる。
このとき、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46a及び第2玉鎖取付部46bとフロート部材52の第1玉鎖取付部52a及び第2玉鎖取付部52bは、図7(a)に示すように、それぞれが再び上下方向に対向し、第1玉鎖48及び第2玉鎖50の双方が上下方向にほぼ直線状に伸ばされた状態となる。
【0054】
つぎに、図7(a)及び(c)と図9(a)〜(d)により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置により実行される小洗浄モードについて説明する。
まず、図7(a)及び図9(a)に示されるような小洗浄モードにおける排水が開始される前の状態の排水弁装置28においては、上述した図8(a)に示されている大洗浄モードの場合と同様であるため、説明は省略する。
【0055】
つぎに、図7(c)及び図9(b)に示すように、小洗浄モードにおける排水が開始された直後の状態の排水弁装置28においては、使用者が操作レバー42を奥側(背面側)に所定角度(例えば、90度)回転させると、玉鎖引き上げ部材46が回転軸44と共に回動し、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aが第2玉鎖取付部46bよりも下方に位置し、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aとフロート部材52の第1玉鎖取付部52aとの相対距離が、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも近づき、第1玉鎖48が弛んだ状態となる。
【0056】
一方、図7(c)及び図9(b)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46bの位置は、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇するため、第2玉鎖50が玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46bによって引き上げられることにより、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇する。
同時に、第3玉鎖54についても、玉鎖引き上げ部材46の第3玉鎖取付部46cによって引き上げられ、切替弁56の第3玉鎖取付部56bも上方に引き上げられて筒体本体90の開口部90cが切替弁56によって閉鎖される。
このとき、弁体84は、制御筒76の底部に当接し、筒体本体90の開口部90cの上端以上の高さ位置となる最高高さ位置に位置し、引き上げが完了した状態となっており、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを閉鎖した状態で、排水口22aが開放され、排水が開始される。
【0057】
また、図9(b)に示すように、排水開始後、筒体本体90の内部の洗浄水が筒体本体90の外部の洗浄水よりも先に排水口22aから排出されるため、筒体本体90の内部を流れる洗浄水の流速が、筒体本体90の外部を流れる洗浄水の流速より相対的に大きくなり、切替弁56の外側の水圧が内側の水圧よりも高くなり、切替弁56の内外で水圧の差圧が生じる。そして、この差圧により、切替弁56には、筒体本体90の開口部90cを閉鎖する方向の力Fが加わるため、切替弁56が閉弁状態に保持される。
【0058】
さらに、図9(b)に示すように、貯水タンク22内の筒体本体90の外側の領域の洗浄水は、切替弁56によって閉鎖された開口部90cから筒体本体90内に流入することなく、筒体本体90の上方からのみ筒体本体90内に流入し、制御筒76の貯水部76b内の洗浄水は、小穴76aから筒体本体90内に流入する。
そして、筒体本体90内の洗浄水は、排水口ユニット60の連通口82を通過し、排水口22aから便器本体2の導水路6に排出され、貯水タンク22内の水位WL3は、図9(b)に示すように、排水によって満水時の止水水位WL0よりも低下し、例えば、筒体本体90の上端よりも上方且つ制御筒76の上端よりも下方に位置している。
しかしながら、筒体本体90の外側の領域から連通口82を経て排水口22aに流れ込む流速は、制御筒76の貯水部76b内から小穴76aを経て筒体本体90内に流入する流速よりも速いため、制御筒76の貯水部76b内の水位WL3’は、貯水タンク22内の水位WL3よりも高く且つ止水水位WL0よりも低い状態となる。
【0059】
つぎに、図9(c)に示すように、小洗浄モードにおける排水途中の状態の排水弁装置28においては、図9(b)に示す第2玉鎖50、第3玉鎖54、フロート部材52及び弁体84の引き上げが完了した直後に操作レバー42が初期位置に戻されているため、フロート部材52が、制御筒76の貯水部76b内の洗浄水よって与えられる浮力によって浮いた状態となっており、第1玉鎖48、第2玉鎖50及び第3玉鎖54が弛んだ状態となっている。
しかしながら、第3玉鎖54が弛んでいても、上述した切替弁56の内外で水圧の差圧によって切替弁56に筒体本体90の開口部90cを閉鎖する方向の力Fが加わった状態となっているため、切替弁56が閉弁状態に保持されている。
【0060】
また、図9(c)に示すように、貯水タンク22内の水位WL4が、図9(b)に示す水位WL3から時間と共に低下し、筒体本体90の上端に付近まで低下した時点で、筒体本体90内の洗浄水が急激に連通口82を経て排水口22aから排出されるようになる。
さらに、筒体本体90内の水位WL4”が時間と共に制御筒76の貯水部76bの小穴76aの上端よりも低下すると、制御筒76の貯水部76bの小穴76aから流出する貯水部76b内の洗浄水の流量に応じた所定の速度で制御筒76の貯水部76b内の水位WL4’が低下し始める。
また、図9(c)に示す制御筒76の貯水部76b内の水位WL4’の低下に伴ってフロート部材52も下降し、このフロート部材52の下降に連動してオーバーフロー管40及び弁体84も、フロート部材52の下降速度と同じ速度で下降する。
さらに、図9(b)と同様に、切替弁56の内外で水圧の差圧によって切替弁56に筒体本体90の開口部90cを閉鎖する方向の力Fが加わった状態となっているため、切替弁56が閉弁状態に保持されている。
【0061】
つぎに、図9(d)に示すように、小洗浄モードにおける排水終了時の排水弁装置28においては、制御筒76の貯水部76b内の水位WL5’がフロート部材52に浮力を与えない水位(すなわち、WL5’がほぼ零)まで低下して、フロート部52cの底部52dが貯水部76bの底部に到達したとき、弁体84が排水口22aを閉鎖し、排水が終了する。
このとき、貯水タンク22内の水位WL5は、図9(c)に示す水位WL4と同一であり、実質的な貯水タンク22内の死水水位DWL’となる。
一方、筒体本体90内の水位WL5”は、図9(c)に示すWL4”よりも低下し、実質的な筒体本体90内の死水水位DWL”となる。
また、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46a及び第2玉鎖取付部46bとフロート部材52の第1玉鎖取付部52a及び第2玉鎖取付部52bは、図7(a)に示すように、それぞれが再び上下方向に対向し、第1玉鎖48、第2玉鎖50及び第3玉鎖54が上下方向にほぼ直線状に伸ばされた状態となる。
さらに、図9(b)及び(c)と同様に、切替弁56の内外で水圧の差圧によって切替弁56に筒体本体90の開口部90cを閉鎖する方向の力Fが加わった状態となっているため、切替弁56が閉弁状態に保持されている。
【0062】
このように、小洗浄モードにおいて、排水開始後、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを閉鎖した状態に保持されるため、排水口22aから排出される洗浄水の流量は、大洗浄モードの場合に比べて、貯水タンク22の洗浄水が筒体本体90の外側から開口部90cを通過して排水口22aから排出される洗浄水の流量分だけ少なくなる。
【0063】
上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、大洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合には、使用者が操作レバー42を手前側(正面側)に所定角度(例えば、90度)回転させて回転軸44を所定の回転方向に回転操作すると、図7(b)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aの位置が、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇する。そして、第2玉鎖50及び第3玉鎖54が弛んだ状態で、第1玉鎖48のみが玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aによって引き上げられ、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇し、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放され、大洗浄モードによる排水が実行される。
【0064】
一方、小洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合には、使用者が操作レバー42を奥側(背面側)に所定角度(例えば、90度)回転させて回転軸44を所定の回転方向に回転操作すると、図7(c)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46b及び第3玉鎖取付部46cの位置が、図7(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇する。そして、第1玉鎖48が弛んだ状態で、第2玉鎖50及び第3玉鎖54のそれぞれが玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46b及び第3玉鎖取付部46cのそれぞれによって引き上げられ、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇し、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを閉鎖した状態で、排水口22aが開放され、小洗浄モードによる排水が実行される。
この際、回転軸44の中心軸線44aは、排水弁ユニット58の中心軸線58aを通過し、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aと第2玉鎖取付部46bとの間隔は、フロート部材52の第1玉鎖取付部52aと第2玉鎖取付部52bとの間隔とほぼ同一となるように設定されているため、大洗浄モードと小洗浄モードのそれぞれの場合における弁体84及びオーバーフロー管40の上下動のストロークが等しくなる。
【0065】
したがって、例えば、陶器で製造された外装タンク20及び貯水タンク22の製造誤差によって、回転軸44と排水弁ユニット58との相対位置にずれが生じたとしても、大洗浄モードと小洗浄モードのそれぞれの場合における弁体84及びオーバーフロー管40の上下動に伴うストロークのずれを抑制することができる。
また、弁体84及びオーバーフロー管40が上下動する際に、弁体84及びオーバーフロー管40の中心軸58a回りの回転を低減させることができ、弁体84が排水口22aに着座する位置が止水動作毎に平面内で生ずるずれが抑制することにより、シートパッキン等のシール部材からなる弁体84の着座面にひずみが生じて止水不良に至ることを防ぐことができる。
【0066】
さらに、本実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、大洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合、フロート部材52、オーバーフロー管40及び弁体84を一体的に上昇させ、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放されると、貯水タンク22内の筒体本体90の外側の洗浄水は、筒体本体90の開口部90cから筒体本体90内に流入し、排水弁ユニット58の制御筒76から排水口22aまで延びた排水口ユニット60の排水口形成部材64の側面に形成された連通口82を通過して、排水口22aへと流れる。
この際、筒体本体90の開口部90cが、排水口形成部材64の連通口82の上端以下の高さ位置に配置されているため、貯水タンク22内の筒体本体90の外側の洗浄水が筒体本体90の開口部90cから筒体本体90内に流入した状態では、筒体本体90の開口部90cが連通口82の上端よりも上方の高さ位置に配置されている場合よりも、洗浄水の流れの勢いが弱められた状態となる。
したがって、このような流れの勢いが弱められた洗浄水により、開弁状態の排水弁ユニット58の弁体84を閉鎖する方向に押し下げる力も弱められるため、洗浄水の流れによる排水弁ユニット58の弁体84の早閉まりを防ぐことができる。この結果、排水弁ユニット58の弁体84の閉鎖後に貯水タンク22内に残される洗浄水の死水水位DWLを安定させることができ、水洗便器1の安定した洗浄を行うことができる。
【0067】
また、本実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、大洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合、フロート部材52、オーバーフロー管40及び弁体84を一体的に上昇させ、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放されると、排水弁ユニット58の弁体84が上昇した所定の最高高さ位置が、筒体本体90の開口部90cの上端以上の高さ位置に設定されているため、貯水タンク22内の筒体本体90の外側から筒体本体90の開口部90cを経て筒体本体90内に流入した洗浄水により、開弁状態の排水弁ユニット58の弁体84が閉鎖する方向に押し下げられることをより効果的に防ぎ、洗浄水の流れによる排水弁ユニット58の弁体84の早閉まりをより効果的に防ぐことができる。
【0068】
さらに、本実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、大洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合、フロート部材52、オーバーフロー管40及び弁体84を一体的に上昇させ、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放されると、排水弁ユニット58の制御筒76の貯水部76bの小穴76aが、筒体本体90の開口部90cの上端以上の高さ位置に配置されているため、この制御筒76の貯水部76bの小穴76aから排出される洗浄水が、貯水タンク22内の筒体本体90の外側から筒体本体90の開口部90cを経て筒体本体90内に流入した洗浄水の影響を受けることがなく、制御筒76の貯水部76b内の水位が安定して低下するため、フロート部材52及びこれに取り付けられているオーバーフロー管40を安定して下降させることができると共に、排水弁ユニット58の弁体84を安定して下降させることができる。
【0069】
さらに、本実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、排水弁ユニット58の弁体84が固着されたオーバーフロー管40の弁体保持部40aの下端部が、排水口22aの上方に対向するように位置し、上方から下方に向って窄まるように縮径する曲がり面40cを形成しているため、排水弁ユニット58の弁体84が開弁され、貯水タンク22内の洗浄水が、弁体保持部40aの下端部を通過する際に、洗浄水が弁体保持部40aの下端部の曲がり面40cに沿って滑らかに流れて排水口22aから排出される。したがって、弁体保持部40aの下端部を通過する洗浄水の圧力損失を低減させることができ、水洗便器1の洗浄性能を向上させることがきる。
【0070】
さらに、本実施形態による排水弁装置28及びそれを備えた洗浄水タンク装置18によれば、排水弁ユニット58の弁体84が固着されたオーバーフロー管40の弁体保持部40aの下端部と対向する排水口22aの面が下方へ延びる内周面に沿って縮径する流路面64aを形成することにより、排水弁ユニット58の弁体84が開弁され、貯水タンク22内の洗浄水が、排水口22aから便器本体2の導水路6に排出される際に、排水口22aの下方へ延びる内周面に沿って縮径する流路面64aに沿って滑らかに流れて排出される。したがって、排水口22aを通過する洗浄水の圧力損失を低減させることができ、水洗便器1の洗浄性能を向上させることがきる。
【0071】
つぎに、図10により、本発明の第2実施形態による排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置について説明する。
図10(a)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の閉弁時の排水弁装置を示す断面図であり、図10(b)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す断面図であり、図10(c)は、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける排水開始時の状態の排水弁装置を示す断面図である。
ここで、図10(a)〜(c)に示す本発明の第2実施形態による排水弁装置において、図7(a)〜(c)に示す第1実施形態による排水弁装置の部分と同一の部分について同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0072】
図10(a)〜(c)に示すように、本発明の第2実施形態による排水弁装置100においては、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aと第2玉鎖取付部46bとの間隔が、フロート部材52の第1玉鎖取付部52aと第2玉鎖取付部52bとの間隔とほぼ同一となるように設定されている構成については、図7(a)〜(c)に示されている上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置28の構成と同一である。
【0073】
しかしながら、本実施形態の排水弁装置100の操作レバー42の回転軸44の中心軸線44aが、排水弁ユニット58の中心軸線58aを通過することなく、両中心軸44a,58aが互いにずらされた状態で設定されている構成については、図3及び図7(a)〜(c)に示す回転軸44の中心軸線44aが排水弁ユニット58の中心軸線58aを通過するように設定されている本発明の第1実施形態による排水弁装置28の構成とは異なっている。
【0074】
上述した本発明の第2実施形態による排水弁装置100によれば、大洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合には、使用者が操作レバー42を手前側(正面側)に所定角度(例えば、90度)回転させて回転軸44を所定の回転方向に回転操作すると、図10(b)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aの位置が、図10(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇する。そして、第2玉鎖50及び第3玉鎖54が弛んだ状態で、第1玉鎖48のみが玉鎖引き上げ部材46の第1玉鎖取付部46aによって引き上げられ、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇し、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを開放したままの状態で、排水口22aが開放され、大洗浄モードによる排水が実行される。
一方、小洗浄モードによる水洗便器1の洗浄を行う場合には、使用者が操作レバー42を奥側(背面側)に所定角度(例えば、90度)回転させて回転軸44を所定の回転方向に回転操作すると、図10(c)に示すように、玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46b及び第3玉鎖取付部46cの位置が、図10(a)に示す排水開始前の状態よりも上昇する。そして、第1玉鎖48が弛んだ状態で、第2玉鎖50及び第3玉鎖54のそれぞれが玉鎖引き上げ部材46の第2玉鎖取付部46b及び第3玉鎖取付部46cのそれぞれによって引き上げられ、フロート部材52が上昇し、このフロート部材52の上昇と共に、オーバーフロー管40及び弁体84が一体的に上昇し、切替弁56が筒体本体90の開口部90cを閉鎖した状態で、排水口22aが開放され、小洗浄モードによる排水が実行される。
【0075】
ここで、操作レバー42の回転軸44の中心軸線44aが、排水弁ユニット58の中心軸線58aを通過することなく、両中心軸44a,58aが互いにずらされた状態で設定されているにもかかわらず、大洗浄モードと小洗浄モードのそれぞれの場合における弁体84及びオーバーフロー管40の上下動のストロークが等しくなる。
したがって、例えば、陶器で製造された外装タンク20及び貯水タンク22の製造誤差によって、回転軸44と排水弁ユニット58との相対位置にずれが生じたとしても、大洗浄と小洗浄のそれぞれの場合における弁体84及びオーバーフロー管40の上下動に伴うストロークのずれを抑制することができる。
また、弁体84及びオーバーフロー管40が上下動する際に、弁体84及びオーバーフロー管40の中心軸58a回りの回転を低減させることができ、弁体84が排水口22aに着座する位置が止水動作毎に平面内でずれが生ずることにより、シートパッキン等のシール部材からなる弁体84の着座面にひずみが生じて止水不良に至ることを防ぐことができる。
【0076】
つぎに、図11A〜図11Cにより、本発明の第3実施形態による排水弁装置及びそれを備えた洗浄水タンク装置について説明する。
図11A〜図11Cは、本発明の第3実施形態による排水弁装置において、筒体が排水弁装置に取り付けられた状態から筒体を取り外した状態に設定するまでの工程を示す工程図である。なお、図11A〜図11Cにおいて、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置と同一部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0077】
本発明の第3実施形態による排水弁装置200においては、特に、図11Cの(i)に示すように、排水口ユニット60に着脱可能に取り付けられている筒体62が取り外されている構成が、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置28の構成と異なっている。
そこで、以下、図11Aの(a)〜図11Bの(f)を参照して、筒体62が排水弁装置200に取り付けられた状態から筒体62を取り外した状態に設定するまでの工程ついて説明する。
【0078】
まず、図11Aの(a)に示すように、筒体62が本実施形態の排水弁装置200に取り付けられた状態では、筒体本体90の係合溝90aが排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に係合し、制御筒76の係合溝76dが排水口ユニット60の排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78に係合した状態となっている。
【0079】
つぎに、図11Aの(b)に示すように、筒体62を本実施形態の排水弁装置200から取り外す際には、まず、筒体62を排水口ユニット60に取り付けた状態で、排水弁ユニット58の制御筒76について、排水弁ユニット58の中心軸線58aを中心に制御筒76の係合溝76dと排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78との水平方向の係止が解除される方向に回転させることにより、制御筒76の係合溝76dと排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78が解除される。
【0080】
つぎに、図11Aの(c)に示すように、図11Aの(b)で制御筒76の係合溝76dと排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78との水平方向の係止が解除された状態の排水弁ユニット58全体がその中心軸線58aの上方に向って引き上げられ、排水弁ユニット58の制御筒76の係合溝76dが排水口ユニット60の排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78から完全に切り離される。
なお、排水弁ユニット58全体を上方に引き上げる際、排水弁ユニット58の制御筒76の上方に位置する玉鎖引き上げ部材46が障害物とならないように、排水弁ユニット58を排水弁装置200から取り外す前に予め玉鎖引き上げ部材46を回転軸44から取り外す。
【0081】
つぎに、図11Bの(d)に示すように、排水弁ユニット58全体が排水口ユニット60から一旦取り外されると、筒体62のみが排水口ユニット60に取り付けられている状態となる。
【0082】
つぎに、図11Bの(e)に示すように、筒体62の筒体本体90について、排水弁ユニット58の中心軸線58aを中心に筒体本体90の係合溝90aと排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72との水平方向の係止が解除される方向に回転させることにより、筒体本体90の係合溝90aと排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72との水平方向の係止が解除される。
【0083】
つぎに、図11Bの(f)に示すように、図11Bの(e)で筒体本体90の係合溝90aと排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72との水平方向の係止が解除された状態の筒体本体90が排水弁ユニット58の中心軸線58aの上方に向って引き上げられ、筒体本体90の係合溝90aが排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72から完全に切り離される。
【0084】
つぎに、図11Cの(g)に示すように、筒体62が排水口ユニット60に対して上方から取り外された状態において、図11Aの(c)で先に一旦取り外された排水弁ユニット58が上方から再び排水口ユニット60に取り付けられ、図11Cの(h)に示すような状態となる。
このとき、図11Cの(h)に示すように、制御筒76の係合溝76dの下方から排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78が挿入されるが、制御筒76の係合溝76dと排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78は完全には係止されていない。
【0085】
つぎに、図11Cの(i)に示すように、図11Cの(h)に示す排水弁ユニット58の制御筒76について、排水弁ユニット58の中心軸線58aを中心に制御筒76の係合溝76dと排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78との水平方向の係止が行われる方向に回転させることにより、制御筒76の係合溝76dに排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78が嵌り込んで両者の係止が完了し、筒体62が取り外され状態の排水弁装置200となる。
また、再び筒体62を排水弁装置200に取り付ける際には、図11Aの(a)から図11Cの(i)への一連の工程とは逆の工程を行う。
【0086】
上述した本発明の第3実施形態による排水弁装置200によれば、筒体62が排水口ユニット60に上方から着脱可能に取り付けられているため、貯水タンク22を便器本体2に施工した後においても、筒体62を排水口ユニット60に対して上方から容易に着脱することができる。すなわち、例えば、水洗便器1の大洗浄モードと小洗浄モードのいずれかを選択して行う洗浄水タンク装置の形態には、本発明の第1実施形態による排水弁装置28のように、筒体62を排水口ユニット60に取り付けた状態で使用し、水洗便器1の大洗浄モードのみを限定して行う洗浄水タンク装置の形態には、本発明の第3実施形態による排水弁装置200のように、筒体62を排水口ユニット60から取り外した状態で使用することにより、排水弁装置を洗浄水タンク装置の洗浄形態に適した状態に容易に設定することができる。すなわち、筒体62を排水口ユニット60から着脱することができる簡易な構造により、容易に大洗浄モードに加えて小洗浄モードも可能にしたり、容易に小洗浄モードを省いて大洗浄モードのみに限定したりすることができる。この結果、排水弁装置28の筒体62以外の排水口ユニット60や排水弁ユニット58の各関連部品について、水洗便器1の洗浄の形態にかかわらず共通化することができる。
【0087】
さらに、本実施形態による排水弁装置200によれば、筒体62が排水口ユニット60に取り付けられた状態では、切替弁56により筒体本体90の開口部90cを開放して筒体内に流入する洗浄水量を大とし、排水弁ユニット58の弁体84による排水口22aの開放によって便器本体2の導水路6に供給される洗浄水量を所定の大洗浄用の洗浄水量である大洗浄モードに設定可能であり、且つ、切替弁56により筒体本体90の開口部90cを閉鎖して筒体本体90内に流入する洗浄水量を小とし、排水弁ユニット58の弁体84による排水口22aの開放によって便器本体2の導水路6に供給される洗浄水量を所定の小洗浄用の洗浄水量である小洗浄モードに設定可能とすることができる。
一方、筒体62が排水口ユニット60から取り外された状態では、排水弁ユニット58の弁体84による排水口22aの開放によって便器本体2の導水路6に供給される洗浄水量を所定の大洗浄用の洗浄水量である大洗浄モードのみに設定可能とすることができる。
【0088】
また、本実施形態による排水弁装置200によれば、排水弁ユニット58の制御筒76の貯水部76b内の洗浄水が小穴76aから流出して貯水部76b内の水位が低下すると、フロート部材52も下降し、このフロート部材52の下降と連動して排水弁ユニット58の弁体94が下降し、排水口22aを閉鎖するため、筒体62が排水口ユニット60に取り付けられている状態か否かにかかわらず、排水弁ユニット58を機能させることができる。したがって、排水弁装置28の筒体62以外の排水口ユニット60や排水弁ユニット58の各関連部品について、水洗便器1の洗浄の形態にかかわらず共通化することができる。
【0089】
さらに、本実施形態による排水弁装置200によれば、便器の大洗浄モードと小洗浄モードを選択して行う洗浄水タンクの形態における排水弁装置として使用する場合には、筒体本体90の係合溝90aを排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に上方から取り付けた状態で、制御筒76の係合溝76dを排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78に取り付けて排水弁装置を使用し、便器の大洗浄モードのみを行う形態における排水弁装置として使用する場合には、筒体本体90の係合溝90aを排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72に上方から取り外した状態で、制御筒76の係合溝76dを排水口形成部材64の制御筒取付用保持突起78に取り付けて排水弁装置を使用するため、排水弁装置を便器の洗浄の形態に適した状態に容易に設定することができる。
【0090】
また、本実施形態による排水弁装置200によれば、筒体62を排水口ユニット60から着脱する際に、筒体本体90をその中心軸線58aを中心に回転させることにより、筒体本体90の排水口側の端部に形成された係合溝90aが排水口ユニット60の排水口形成部材64の筒体取付用保持突起72から着脱されるため、貯水タンク22内の水位が上下動したとしても、この水位の上下動に伴って筒体62も上下動して筒体62が排水口ユニット60から不用意に外れてしまうことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 水洗便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 トラップ管路
8a 入口
8b 上昇路
8c 下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 洗浄水タンク装置
20 外装タンク
22 貯水タンク
22a 排水口
24 蓋体
26 給水装置
28,100,200 排水弁装置
30 給水管
32 給水バルブ
34 フロート
36 吐水口
38 リフィール管
40 オーバーフロー管
40a 弁体保持部
40b 円筒部
40c 曲がり面
42 操作レバー(操作部)
44 回転軸(操作部)
44a 回転軸の中心軸線
46 玉鎖引き上げ部材(操作部)
46a 第1玉鎖取付部
46b 第2玉鎖取付部
46c 第3玉鎖取付部
48 第1玉鎖(大洗浄用連結部材)
50 第2玉鎖(小洗浄用連結部材)
52 フロート部材
52a 第1玉鎖取付部
52b 第2玉鎖取付部
52c フロート部
52d 底部
52e オーバーフロー管取付部
52f フロート部の中央穴
54 第3玉鎖
56 切替弁
56a 第3玉鎖取付部
56b 錘
58 排水弁ユニット(排水弁)
58a 排水弁ユニットの中心軸線
60 排水口ユニット(排水部)
62 筒体
64 排水口形成部材
64a 流路面
66 シール部材
68 締結部材
70 排水口形成部材の排水口上縁部
72 筒体取付用保持突起
74 排水口形成部材の上端開口部
76 制御筒
76a 小穴
76b 貯水部
76c ガイド部
76d 係合溝
78 制御筒取付用保持突起
80 排水口形成部材のリブ
82 連通口
84 弁体
86 オーバーフロー管取付部材
86a 流入口
88 リフィール管取付部材
88a ノズル部
90 筒体本体
90a 係合溝
90b 側壁
90c 洗浄モード切替用開口部
90d 流量調節用開口部
90e 流量調節用スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄する洗浄水を貯える洗浄水タンクの排水弁装置であって、
上下動することにより、洗浄水タンクの底面に配置された排水口を開閉する排水弁と、
回転軸を備え、この回転軸の軸回りに回転操作することにより上記排水弁の開閉を操作して、上記排水口から便器に供給される洗浄水量を、便器の大洗浄を行うための大洗浄水量又は便器の小洗浄を行うための小洗浄水量のいずれかに切り替える操作部と、
この操作部と上記排水弁とを連結する連結手段と、を有し、
この連結手段は、一端が上記操作部の第1の取付位置に取り付けられて他端が上記排水弁の第1の取付位置に取り付けられ、上記操作部の回転軸を所定の回転方向に回転操作することにより上記排水弁を上昇させて上記便器の大洗浄を実行させる大洗浄用連結部材と、一端が上記操作部の第2の取付位置に取り付けられて他端が上記排水弁の第2の取付位置に取り付けられ、上記操作部の回転軸を上記所定の回転方向とは反対の方向に回転操作することにより上記排水弁を上昇させて上記便器の小洗浄を実行させる小洗浄用連結部材と、を備え、上記大洗浄用連結部材の一端が取り付けられている上記操作部の第1の取付位置は、上記操作部の回転軸の中心軸線に対して一方の側に配置され、上記小洗浄用連結部材の一端が取り付けられている上記操作部の第2の取付位置は、上記操作部の回転の中心軸線に対して他方の側に配置されていることを特徴とする排水弁装置。
【請求項2】
上記操作部の回転軸の中心軸は、上記排水弁の中心軸を通過し、上記操作部の第1の取付位置と上記操作部の第2の取付位置との間隔は、上記大洗浄用連結部材の他端が取り付けられている上記排水弁の第1の取付位置と上記小洗浄用連結部材の他端が取り付けられている上記排水弁の第2の取付位置との間隔とほぼ同一である請求項1記載の排水弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公開番号】特開2012−72587(P2012−72587A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217396(P2010−217396)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】