説明

排水接続部材、排水接続部材の固定位置決め具、排水接続部材の位置決め方法、及び便器本体の施工方法

【課題】便器本体の設置位置の変更を容易に行うことができる排水接続部材の固定位置決め具を提供する。
【解決手段】固定位置決め具である型紙20は、便器本体2の便鉢部4の下流側に連通した便器排水路5の下流端部を接続する上向きに開口した流入口11Aを有する流入部11と、この流入部11に連通しており、便器本体2を設置する床面Fに引き出された排水管40の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部13とを備えた排水接続部材10を床面Fに固定する際に利用する。排水管40の上流端部に上向きに開口した排水口41の中心を通る直線Xに対して、水平方向に隔離した平行線Y上に便器本体2の左右中心が位置するように便器本体2を設置することができる流入部11の床面Fへの固定位置を特定する第1指示部23を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水接続部材、排水接続部材の固定位置決め具、排水接続部材の位置決め方法、及び便器本体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の排水接続部材の固定位置決め具である型紙を開示している。この排水接続部材は、水洗式便器を設置した部屋の改装等のために水洗式便器を取り換える際、取り換え前の水洗式便器の便器排水路が連通していた排水管の床面に引き出されている位置に対して、新しく取り付ける水洗式便器の取り付け位置に便器本体を取り付けると便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部が便器本体の左右中心線上の前後方向にずれてしまう場合に利用するものである。
【0003】
つまり、この排水接続部材は、床面に引き出された排水管の上流端部に対して、便器排水路の下流端部が便器本体の左右中心線上で前後方向に離れて位置する場合に利用するものである。このため、この排水接続部材は、便器排水路の下流端部を接続する流入部と、排水管の上流端部を接続する流出部とが離れており、それらを連結する横方向に延びた管部を有している。
【0004】
水洗式便器を設置した部屋の改装の際、排水管の上流端部が床面に引き出されている位置は、取り換え前の水洗式便器によって異なる。このため、施工現場ごとに流入部と流出部とを連結する管部の長さを調整しなければならない。
【0005】
この型紙は、一対の型紙からなり、一方の型紙は排水接続部材の流入部を床面に固定する位置を示し、他方の型紙は一方の型紙に対してスライドして床面に引き出された排水管の上流端部に合わせることができる。また、他方の型紙は管部の切断位置を示す表示部を有している。
【0006】
このため、型紙を排水接続部材を固定する床面に載置し、他方の型紙をスライドさせて排水管の上流端部に合わせる。そして、長めの管部を挿入した流入部を一方の型紙に合わせて仮置きして、他方の型紙に表示部に表示された切断位置に合わせて、管部を切断する。このように、この型紙を利用して、管部を適切な長さに容易に切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4569431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の型紙では、床面に引き出された排水管の上流端部に上向きに開口する排水口の中心を通る直線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することを前提としている。このため、水洗式便器を設置した部屋の改装に際し、水洗式便器の側方に位置する壁面に収納キャビネット等を新設すると、水洗式便器と収納キャビネット等との間が狭くなり、水洗式便器等が使いづらいものになる。このため、排水口の中心を通る直線に対して、便器本体の左右中心が収納キャビネット等とは反対方向にずれた平行線上に位置するように便器本体を設置することが望まれる。この場合、この型紙では排水接続部材を適切な位置に固定することができない。
【0009】
また、水洗式便器を設置した部屋の改装に限らず、床面に引き出された排水管の排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することが必要な場合がある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器本体の設置位置の変更を容易に行うことができる排水接続部材、排水接続部材の固定位置決め具、排水接続部材の位置決め方法、及び便器本体の施工方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の固定位置決め具は、便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材を前記床面に固定する際に利用する固定位置決め具であって、
前記排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に前記便器本体の左右中心が位置するように前記便器本体を設置することができる前記流入部の前記床面への固定位置を特定する第1指示部を有していることを特徴とする。
【0012】
この固定位置決め具は、排水接続部材と共に便器本体を設置する床面に載置し、床面に引き出された排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線から固定位置決め具の基準線が設定した間隔を隔離するように、固定位置決め具を移動することによって、第1指示部が流入部の床面への固定位置を特定することができる。このようにして特定した固定位置に流入部を固定することによって、排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することができる。
【0013】
このように、水洗式便器を設置した部屋の改装に際し、水洗式便器の側方に位置する壁面に収納キャビネット等を新設した場合等、この固定位置決め具を利用することによって、水洗式便器を収納キャビネット等とは反対方向にずらした適切な位置に便器本体を固定することを容易に行うことができる。
【0014】
したがって、本発明の固定位置決め具は便器本体の設置位置の変更を容易に行うことができる。
【0015】
前記第1指示部は、基準線上に中心を有し、かつ、この第1指示部に合わせて前記流入部を床面への固定位置に載置した状態で前記流入口と同心円上に位置する円弧で示し得る。
【0016】
この場合、本発明の排水接続部材は、便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に設けられた排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材であって、
前記流入部は、前記流入口と同心の円弧状であって、前記排水接続部材の固定位置決め具の前記第1指示部に合わせることができる位置合わせ面を有していることを特徴とする。
【0017】
固定位置決め具の第1指示部と、排水接続部材の位置合わせ面とを合わせることによって、固定位置決め具の基準線上に排水接続部材の流入部の流入口の中心を容易に配置することができる。このため、固定位置決め具の基準線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することによって、排水管の排水口の中心を通る直線から隔離した平行線上に便器本体の左右中心を位置させることができる。
【0018】
本発明の他の固定位置決め具は、便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材を前記床面に固定する際に利用する固定位置決め具であって、
前記排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に前記便器本体の左右中心が位置するように前記便器本体を設置することができる範囲を示す第2指示部を有していることを特徴とする。
【0019】
この固定位置決め具は、排水接続部材と共に便器本体を設置する床面に載置し、第2指示部が示す範囲内に便器本体を設置することができる。このように、この固定位置決め具を利用することによって、排水管の上流端部の排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に便器本体の左右中心が位置する状態で便器本体を設置することができる許容範囲を確認することができる。
【0020】
したがって、本発明の他の固定位置決め具も便器本体の設置位置の変更を容易に行うことができる。
【0021】
前記固定位置決め具は、前記便器本体の台座部の前端部の内側面の近傍に位置し、前記台座部の前端部を床面に固定する固定部材の前記床面の固定位置を示す第3指示部を有し得る。この場合、固定位置決め具と排水接続部材とを便器本体を設置する床面に載置し、排水口の中心を通る直線に対する平行線上に便器本体の左右中心が位置するように便器接続部材の流入部の床面への固定位置を特定するとともに、便器本体の台座部の前端部を固定する固定部材の固定位置を容易に特定することができる。
【0022】
本発明の便器本体の施工方法は、前記排水接続部材の位置決め方法によって前記排水接続部材を位置決めして前記床面に固定した後、前記流入口に前記便器排水路の下流端部を接続して前記便器本体を床面に固定することを特徴とする。
【0023】
この便器本体の施工方法は、上述したように、排水接続部材を床面に固定し、排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することができる。
【0024】
したがって、本発明の便器本体の施工方法は便器本体の設置位置の変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の便器本体、排水接続部材、及び型紙を示す分解斜視図である。
【図2】実施例1の型紙を示す平面図である。
【図3】実施例1の排水接続部材を固定する床面を示す平面図である。
【図4】実施例1の排水接続部材を仮置きした状態を示す平面図である。
【図5】実施例1の排水接続部材及び型紙を床面に載置した状態を示す平面図である。
【図6】実施例1の排水接続部材の流出部の固定位置を特定した状態を示す平面図である。
【図7】実施例1の便器本体を床面に固定した状態を示す断面図である。
【図8】実施例2の型紙を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の排水接続部材、排水接続部材の固定位置決め具及び位置決め方法を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<実施例1>
実施例1の排水接続部材10及び固定位置決め具(型紙)20は、図1に示すように、水洗式便器1を床面Fに固定する際に利用するものである。水洗式便器1は便器本体2と便器本体2の上面後部に載置して固定する洗浄タンク3とを有している。便器本体2は、便鉢部4と、便鉢部4の下流側に連通した便器排水路5と、上部外周縁から下方に延びて、便鉢部4及び便器排水路5の大部分を隠蔽する台座部6とを有している。
【0028】
便器排水路5は、便鉢部4の下部から斜め上方に延びた上昇流路5Aと、上昇流路5Aの下流端に連続して下方に延びる下降流路5Bとを有している。下降流路5Bは、下流端部が垂直方向に延びており、下流端に下向きに開口した便器排出口5Cを有している。
【0029】
台座部6は、前端中央部、及び左右後端部の2か所に貫通孔6A、6Bを有している。台座部6の前端中央部の貫通孔6Aは木螺子8を挿通する。また、台座部6の左右後端部の2か所の貫通孔6Bは床面Fに螺子止めした木螺子9を挿通する。台座部6の前端中央部の貫通孔6Aを挿通した木螺子8を床面Fに固定した固定部材7にねじ込み、かつ台座部6の左右後端部の2か所の貫通孔6Bを挿通して上部に露出した木螺子9の螺子部にワッシャー9Aを挿通し、ナット9Bを締結することによって便器本体2を床面Fに固定することができる。台座部6の前端中央部の貫通孔6Aと木螺子8の頭部は化粧キャップ8Aで隠蔽することができる。また、台座部6の左右後端部の2か所の貫通孔6B、木螺子9の螺子部、ワッシャー9A、及びナット9Bは化粧キャップ9Cで隠蔽することができる。
【0030】
排水接続部材10は、流入部11、管部12、及び流出部13とを備えている。流入部11は便器排水路5の下流端部(下降流路5Bの下流端部)を接続する上向きに開口した流入口11Aを有している。流入口11Aは、円環状の上面部と、上面部の外周縁から下方に延びる円筒状の側面部とから形成されたパッキン14を外嵌している。パッキン14の円環状の上面部の中央開口部内に便器排水路5の下流端部を挿入し、便器排水路5の下流端部と流入部11とを水密状に接続することができる。
【0031】
流入部11は、図1及び図4に示すように、後端側(管部12が延びている側面の反対側)の下部に左右に延びる固定片15を有している。固定片15は、後端面の中央部に流入口11Aと同心の円弧状に突出して形成された位置合わせ面16が形成されている。つまり、流入部11は、流入口11Aと同心の円弧状の位置合わせ面16を有している。また、固定片15は、左右両端部に流入口11Aの同心円周上に延びた長孔15Aを有している。この長孔15Aは、排水接続部材10、及び便器本体2を床面Fに固定する木螺子9を挿通する。長孔15Aを挿通した木螺子9を床面にねじ込むことによって流入部11を床面Fに固定することができる。
【0032】
管部12は流入部11の側面から連続して横方向に延びている。この管部12は施工現場において先端側を切断し、長さを調整することができる。
【0033】
流出部13は適切な長さに切断した管部12の先端側(下流側)を接着剤によって接着して連結することができる。流出部13は下向きに開口した流出口13Aを有している。また、流出部13は下部外縁に外側に拡がるフランジ部17を有している。このフランジ部17は、左右の2か所に流出口13Aの同心円周上に延びて形成した長孔17Aを有している。
【0034】
床面Fに引き出された排水管40は上流端部に上向きに開口した排水口41を有している。この排水口41に床フランジ30が水密状に連結している。排水接続部材10の流出部13のフランジ部17の下面と床フランジ30の上面との間にガスケット32を挟持しつつ、床フランジ30の左右2か所から上方に突出したボルト31をフランジ部17の長孔17Aに挿通する。長孔17Aを挿通して上方に突出したボルト31にワッシャー31Aを挿通し、ナット31Bを締結することによって、排水接続部材10の流出部13が床面Fに固定されるとともに、流出部13の流出口が排水口に水密状に連通することができる。
【0035】
固定位置決め具は、図1及び図2に示すように、型紙20として形成されている。この型紙20は、外形が長方形状であり、外形に沿って長手方向に延びる長方形状の第1開口部21と、第1開口部21に連続して、型紙20の長手方向の一端側である型紙20の後端側(図2に示す下端側)に第1開口部21の横幅より小さい幅で形成された第2開口部22とを有している。第2開口部22は、型紙20の外形に沿って形成された第1開口部21の左右開口縁21Aから内側に張り出した段部21Bを介して連続しており、型紙20の外形に沿って形成された左右開口縁22Aと、左右開口縁22Aの後端に連続して内側に傾斜しながら後方に延びる左右コーナー縁22Bと、左右コーナー縁22Bの後端に連続して前方に傾斜しながら内側に延びる左右後端縁22Cと、左右後端縁22Cの内側を連結し、外側に膨らむ円弧状の第1指示部23とに囲まれて形成されている。この型紙20は左右中心線を基準線Kとしている。
【0036】
円弧状の第1指示部23は、円弧の中心C2を型紙20の基準線K上に形成し、第1指示部23と便器排水路5の流入部11の位置合わせ面16とを合わせた際、流入部11の流入口11Aの中心C1が位置する点を円弧の中心C2としている。つまり、第1指示部23は、基準線K上に中心C2を有し、かつこの第1指示部23に合わせて流入部11を床面Fへの固定位置に載置した状態で流入口11Aと同心円状に位置する円弧で示している。型紙20は第1指示部23の中心を示す矢印23Aが記載されている。
【0037】
また、型紙20は、第1開口部21より前側であって、型紙20の基準線Kを中心とした対称位置に貫通した一対の指示孔24を形成している。この指示孔24は、固定部材7を床面Fに固定するための第3指示部であり、固定部材7を床面Fに固定する木螺子7Aを床面Fにねじ込む位置を示している。
【0038】
次に、この型紙20を用いて排水接続部材10を床面Fに固定する施工手順を説明する。
【0039】
水洗式便器を設置した部屋の改装等のために水洗式便器を取り外すと、図3に示すように、床面Fに引き出された排水管40の上流端部の排水口41が上向きに開口している。水洗式便器の側方(図3において、左側)に位置する壁面(図示せず)に収納キャビネット等を新設する場合には、排水口41の中心を通る直線Xに対して、水平方向(図3において、右方向)に設定間隔を隔離した平行線Y上に便器本体2の左右中心が位置するように便器本体2を設置することになる。
【0040】
床面Fに引き出された排水管40の排水口41に床フランジ30を水密上に連結する。そして、図4に示すように、適切な長さに切断した管部12の先端側に流出部13を接着した排水接続部材10を用意し、その流出部13を床フランジ30に合わせて仮置きする。次に、図5に示すように、排水接続部材10を型紙20の第1開口部21及び第2開口部22内に配置するようにして型紙20を床面Fに載置する。この状態では、排水口41の中心を通る直線X上に型紙20の左右中心である基準線Kが位置している。
【0041】
次に、図6に示すように、排水口41の中心を通る直線Xから水平方向に設定間隔を隔離した平行線Y上に型紙20の基準線Kが位置するように型紙20を右方向に移動する。この際、排水接続部材10の流入部11の位置合わせ面16が型紙20の第1指示部23に合うように、流入部11を流出部13を中心とした円周上の右方向に移動する。これによって、流出部13の固定位置を特定することができる。また、型紙20の第1開口部21の前側に形成した第3指示部である一対の指示孔24を利用して、床面Fに固定部材7を固定する木螺子7Aのねじ込み位置を罫書きする。
【0042】
このように、位置合わせ面16と第1指示部23とが円弧状であるため、位置合わせ面16を第1指示部23に合わせ易く、排水口41の中心を通る直線Xに対して水平方向に設定間隔を隔離した平行線Y上に流入部11の流入口11Aの中心C1を容易に配置することができる。また、固定部材7の固定位置を容易に特定することができる。
【0043】
次に、図7に示すように、排水接続部材10の流入部11の固定片15の長孔15Aに木螺子9を挿入して床面Fにねじ込む。このようにして特定した位置に排水接続部材10の流入部11を固定し、流出部13のフランジ部17の長孔17Aを挿通するボルト31にナット31Bを締結して流出部13を固定することによって排水接続部材10を床面Fに固定する。そして、型紙20を床面Fから取り外し、第3指示部である指示孔24によって床面Fに罫書きされた位置に固定部材7を貫通する挿通孔を合わせて木螺子7Aをねじ込むことによって固定部材7を床面Fに固定する。
【0044】
次に、排水接続部材10の流入部11の流入口11Aに便器本体2の便器排水路5の下流端部を挿通しつつ、台座部6の左右後端部の2か所の貫通孔6Bに木螺子9を挿通して便器本体2を床面Fに載置する。そして、台座部6の左右後端部の2か所の貫通孔6Bから上方に突出した螺子部にナット9Bを締結し、台座部6の前端中央部の貫通孔6Aから木螺子8を挿通して固定部材7にねじ込むことによって、便器本体2を床面Fに固定する。このようにして、排水口41の中心を通る直線Xに対して、水平方向に隔離した平行線Y上に便器本体2の左右中心が位置するように便器本体2を設置することができる。
【0045】
このように、この型紙20を利用することによって、水洗式便器を設置した部屋の改装に際し、水洗式便器の側方に位置する壁面に収納キャビネット等を新設した場合、水洗式便器を収納キャビネット等とは反対方向にずらして適切な位置に便器本体2を固定することを容易に行うことができる。
【0046】
したがって、実施例1の型紙20は便器本体2の設置位置の変更を容易に行うことができる。
【0047】
<実施例2>
実施例2の固定位置決め具である型紙50は、図8に示すように、型紙50の内側に形成される開口部51の形状が第1実施例の型紙20と相違する。他の点は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0048】
実施例2の型紙50は、開口部51の左右開口縁51Aが便器本体2の台座部6の下端縁の内側の形状にほぼ等しく、左右外側に膨らんだ湾曲形状である。この左右開口縁51Aが排水管40の上流端部に上向きに開口した排水口41の中心を通る直線Xに対して、水平方向に隔離した平行線Y上に便器本体2の左右中心が位置するように便器本体を設置することができる範囲を示す第2指示部を形成している。
【0049】
つまり、排水接続部材10の流出部13を床フランジ30に合わせて仮置きし、その排水接続部材10をこの開口部51内に配置するように型紙20を床面Fに載置する。この状態で、型紙50を排水管の排水口41の中心を通る直線に対して平行に移動させ、排水接続部材10の流入部11の床面Fへの固定位置を特定することができる。この際、排水接続部材10が型紙50の第2指示部である左右開口縁51Aより外側に食み出さない範囲であれば、台座部6内に排水接続部材10を収納することができる。つまり、この型紙50は、排水口40の中心を通る直線Xに対して、水平方向に隔離した平行線Y上に便器本体2の左右中心が位置する状態で便器本体2を設置することができる許容範囲を確認することができる。
【0050】
したがって、実施例2の型紙50も便器本体2の設置位置の変更を容易に行うことができる。
【0051】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、排水接続部材の流入部の後端側に形成した固定片に位置合わせ面を有していたが、他の部分に位置合わせ面を形成してもよい。この場合、型紙の対応する位置に第1指示部を形成するとよい。
(2)排水接続部材が第1開口部及び第2開口部の前後方向の長さとほぼ同じであったが、管部が短いもの、さらには流入部と流出部とが直接的に接続されたものであってもこの型紙を利用することができる。つまり、水洗式便器を設置した部屋を改装する際以外でも、この型紙を利用して、床面に引き出された排水管の排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に便器本体の左右中心が位置するように便器本体を設置することができる。
(3)実施例2では、開口部の左右開口縁が第2指示部を形成していたが、第2指示部は型紙上面に線描きしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2…便器本体
4…便鉢部
5…便器排水路
10…排水接続部材
11…流入部
11A…流入口
12…管部
13…流出部
13A…流出口
16…位置合わせ面
20、50…型紙(固定位置決め具)
23…第1指示部
24…指示孔(第3指示部)
40…排水管
41…排水口
51A…左右開口縁(第2指示部)
F…床面
K…基準線
X…(排水口の中心を通る)直線
Y…平行線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材を前記床面に固定する際に利用する固定位置決め具であって、
前記排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に前記便器本体の左右中心が位置するように前記便器本体を設置することができる前記流入部の前記床面への固定位置を特定する第1指示部を有していることを特徴とする固定位置決め具。
【請求項2】
前記第1指示部は、基準線上に中心を有し、かつ、この第1指示部に合わせて前記流入部を床面への固定位置に載置した状態で前記流入口と同心円上に位置する円弧で示していることを特徴とする請求項1記載の固定位置決め具。
【請求項3】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材を前記床面に固定する際に利用する固定位置決め具であって、
前記排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線に対して、水平方向に隔離した平行線上に前記便器本体の左右中心が位置するように前記便器本体を設置することができる範囲を示す第2指示部を有していることを特徴とする固定位置決め具。
【請求項4】
前記便器本体の台座部の前端部の内側面の近傍に位置し、前記台座部の前端部を床面に固定する固定部材の前記床面の固定位置を示す第3指示部を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固定位置決め具。
【請求項5】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部と、
この流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に設けられた排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部とを備えた排水接続部材であって、
前記流入部は、前記流入口と同心の円弧状であって、請求項2記載の排水接続部材の固定位置決め具の前記第1指示部に合わせることができる位置合わせ面を有していることを特徴とする排水接続部材。
【請求項6】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部、及びこの流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部を備えた排水接続部材と、請求項1記載の固定位置決め具とを前記便器本体を設置する床面に載置し、
前記排水管の上流端部に上向きに開口した排水口の中心を通る直線から前記固定位置決め具の基準線が水平方向に設定した間隔を離れるように、前記固定位置決め具を移動し、前記第1指示部に合わせて前記流入部の前記床面への固定位置を特定することを特徴とする排水接続部材の位置決め方法。
【請求項7】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部、及びこの流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部を備えた排水接続部材と、請求項3記載の固定位置決め具とを前記便器本体を設置する床面に載置し、
前記第2指示部が示す範囲内に前記便器本体を設置することを特徴とする排水接続部材の位置決め方法。
【請求項8】
便器本体の便鉢部の下流側に連通した便器排水路の下流端部を接続する上向きに開口した流入口を有する流入部、及びこの流入部に連通しており、前記便器本体を設置する床面に引き出された排水管の上流端部を接続する下向きに開口した流出口を有する流出部を備えた排水接続部材と、請求項4記載の固定位置決め具とを前記便器本体を設置する床面に載置し、
前記第3指示部が示す前記固定部材の固定位置を特定することを特徴とする排水接続部材の位置決め方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の排水接続部材の位置決め方法によって前記排水接続部材を位置決めして前記床面に固定した後、前記流入口に前記便器排水路の下流端部を接続して前記便器本体を床面に固定することを特徴とする便器本体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72225(P2013−72225A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212542(P2011−212542)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】