説明

排水構造

【課題】手洗器の排水を便器装置の便器排水部を介して便器装置外部に排水するようにしたものにおいて、簡単な構造で手洗器排水管路の封水トラップ部内の封水が手洗器側に逆流するのを防止できる。
【解決手段】便器装置2に、便器ボウル部6と、該便器ボウル部6からの排水を便器装置2外部の排水路3に排出するための便器排水部13とを備える。手洗器1の排水を流す手洗器排水管路28の下流側端部を上記便器排水部13に連通接続し、手洗器排水管路28の途中に封水トラップ部31を形成する。手洗器排水管路28の封水トラップ部31よりも手洗器1側に、封水トラップ部31よりも内径が大きい膨大管部5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗器の排水を便器装置用の排水路を利用して排出できるようにした排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、サニタリー機器の排水構造として、手洗器の排水と便器装置における便器ボウル部からの排水とを共通の排水路を介して排出できるようにした排水構造が例えば特許文献1により知られている。
【0003】
この従来の排水構造にあっては、便器装置に設けられた便器装置外部の排水路に排水を導く便器排水部に、手洗器の排水を流す手洗器排水管路の下流側端部を連通接続したもので、手洗器の排水を手洗器排水管路、便器装置に設けた便器排水部を介して、便器装置外部の排水路に排出するようにしている。
【0004】
上記従来例においては、手洗器の排水を便器装置に備えた便器排水部に流すことで、建物側には便器装置専用の単一の排水路を形成すればよく、施工が簡略化でき、特に、リフォームにおいて、従来の便器専用の単一の排水路をそのまま利用して便器装置、手洗器の排水が行えるので、現場で、便器装置用の排水路とは異なる手洗器専用の排水路を形成する工事が必要でなく、便器装置のリフォームの際に、大掛かりな工事を行うことなく新たに手洗器を設置することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−150125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来例にあっては、手洗器の排水を流す手洗器排水管路の下流側端部を、便器ボウル部からの排水を便器装置外部の排水路に排出するための便器排水部に連通接続してあるため、以下のような問題がある。
【0007】
つまり、便器装置の便器ボウル部に溜まっている水(汚水)を一気に便器排水部に流すと、便器ボウル部から一気に流れた水が一時的に便器排水部における手洗器排水管路を連通接続部分において満水となって、手洗器排水管路に下流側端部から排水の一部が逆流し、これにより手洗器排水管路内の圧力が上昇し、手洗器排水管路の封水トラップ部内の封水を押し上げ、封水トラップ部内の封水が手洗器ボウル部内に逆流するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の従来の問題点に鑑みてなされたものであって、手洗器の排水を便器装置の便器排水部を介して便器装置外部に排水するようにしたものにおいて、簡単な構造で手洗器排水管路の封水トラップ部内の封水が手洗器側に逆流するのを防止できる排水構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成になっている。
【0010】
本発明の排水構造は、便器装置2に、便器ボウル部6と、該便器ボウル部6からの排水を便器装置2外部の排水路3に排出するための便器排水部13とを備え、手洗器1の排水を流す手洗器排水管路28の下流側端部を上記便器排水部13に連通接続し、手洗器排水管路28の途中に封水トラップ部31を形成し、手洗器排水管路28の封水トラップ部31よりも手洗器1側に、封水トラップ部31よりも内径が大きい膨大管部5を設けてあることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、便器ボウル部6に溜まっている水を一気に排水して便器排水部13に流した際に、一気に流れた水が一時的に便器排水部13における手洗器排水管路28を連通接続部分において満水となって、手洗器排水管路28に下流側端部から排水の一部が逆流し、手洗器排水管路28内の圧力が上昇し、手洗器排水管路28の封水トラップ部31内の封水を押し上げる現象が生じても、該押し上げられた封水を膨大管部5内に流入させて手洗器1に逆流するのを防止することができる。
【0012】
また、便器排水部13は、ターントラップ装置15と、ターントラップ装置15から排出された排水を受け、これを横向きの流れに変えて下流側へ流す流水方向変換部20を有し、上記ターントラップ装置15が、便器ボウル部6に接続された屈曲自在のトラップ筒18と、該トラップ筒18を屈曲することで、トラップ筒18を便器ボウル部6内に水を溜める封水状態と便器ボウル部6内の溜め水を排水する排水状態とに切り替え自在となり、前記手洗器排水管路28の下流側の端部を上記流水方向変換部20に連通接続してあることが好ましい。
【0013】
トラップ筒18を反転して便器ボウル部6に溜まった水を一気に流水方向変換部20に流して横向きの流れに変えて下流側へ流すタイプの便器装置2は、一気に流れ込んだ水が流水方向変換部20内において横向きに流れを変えるため、流水方向変換部20内が一時的に満水状態となり易い構造である。この一時的に満水状態になり易い流水方向変換部20に手洗器排水管路28の下流側の端部を連通接続すると、流水方向変換部20内において一時的に満水状態となった際の圧力上昇で封水トラップ部31内の封水が押し上げられて逆流する現象が生じ易い。しかし、本発明は、押し上げられた封水を膨大管部5内に流入させて手洗器1に逆流するのを防止できるので、ターントラップ装置15からの排水を流水方向変換部20内において横向きに流れを変える構造のものであっても、流水方向変換部20に手洗器排水管路28の下流側の端部を連通接続しても、封水の逆流のおそれがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のように構成したので、手洗器排水管路の途中に封水トラップ部を形成し、手洗器排水管路の封水トラップ部よりも手洗器側に、封水トラップ部よりも内径が大きい膨大管部を設けるという簡単な構成で、便器ボウル部に溜まっている水を一気に排水して便器排水部に流した際に、一気に流れた水が一時的に便器排水部における手洗器排水管路を連通接続部分において満水となって手洗器排水管路内の圧力が上昇しても、封水を膨大管部内に流入させることができて、手洗器に逆流するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す要部断面図である。
【図2】同上の排水構造の管路構成を示す分解斜視図である。
【図3】同上の排水構造の手洗器の手洗器排水管路に設けた膨大管部の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示される本実施形態の排水構造では、同一のトイレ室内において離れた位置に設置された手洗器1及び便器装置2の排水を共通の排水路3を介して排出されるようになっている。
【0017】
便器装置2は便器ボウル部6を有する便器形状の便器外郭体7に便座や便蓋等が設けられたものであり、洋式水洗便器として利用される。
【0018】
便器外郭体7は、前記便器ボウル部6の他、便器ボウル部6上に設けられるリム部10と、便器外郭体7の外面部を構成して便器ボウル部6の外側を覆うスカート部11を有し、便器ボウル部6の下端部には後方に向けて突出する排水筒部12が形成されている。
【0019】
便器ボウル部6内の溜め水は便器装置2に設けられた便器排水部13を介して便器装置2外部の排水路3へと排出できるようになっており、本実施形態の便器排水部13は便器外郭体7に内装されたターントラップ装置15及び排水アダプター装置16で構成されている。なお便器外郭体7に他の付属装置として便器ボウル部6内に洗浄液を供給する洗浄液吐出装置や局部洗浄装置等も内装されている。
【0020】
ターントラップ装置15は、便器ボウル部6の後方に設けられたトラップケース17と、トラップケース17内に設けられたフレキシブルなトラップ筒18と、トラップ筒18を屈曲させる駆動源としてのモータとを備えている。トラップ筒18の一端は排水筒部12の後部に接続され、他端は自由端となっている。
【0021】
トラップ筒18は前記モータを駆動することで屈曲し、これによって自由端側の端部開口19を上向きとしてトラップ構造をなす封止状態と、図1のように端部開口19を下向きとして前記トラップ構造を解除した排水状態とに切り替えられる。
【0022】
トラップ筒18は非使用時には封止状態とされ、トラップ筒18の端部開口19が排水筒部12よりも上位に配置されて便器ボウル部6内に水が溜まった状態となり、またトラップ筒18内には水が溜まって封止がなされる。用便後にはトラップ筒18が排水状態とされ、便器ボウル部6内の溜め水が排水筒部12及びトラップ筒18を介して下方の排水アダプター装置16へと排出される。
【0023】
排水アダプター装置16は前記トラップ筒18から排出された水をトラップ筒18の端部開口19から前方にずれた位置に設けられた排水路3の上流側端部に導くものであり、この排水アダプター装置16はリフォームにより既存の排水路3を利用して便器装置2を設置する場合等に用いられる。
【0024】
排水アダプター装置16は、トラップケース17下方の床21上に設置された流水方向変換部20と、便器ボウル部6下方の床21上に設置されて流水方向変換部20の前方に位置する排出管部22と、両者を接続する接続管部23とで構成されている。
【0025】
流水方向変換部20は上流端が上方に開口すると共に下流端が前方に開口して略直角に曲がった曲管からなり、前記トラップ筒18から排出された水は流水方向変換部20の底部で一旦受けられた後、前方へと向きを変えて下流側に流される。
【0026】
接続管部23は直管からなり、上流側端部である後端部が流水方向変換部20の下流側端部に接続されると共に下流側端部である前端部が排出管部22の上流側端部に接続され、前記流水方向変換部20から排出された水を排出管部22へ流す。
【0027】
排出管部22は上流端が後方に開口すると共に下流端が下方に開口して略直角に曲がった曲管からなる。排出管部22の下流側端部は床21上に突出した排水路3の上流側端部に接続され、前記流水方向変換部20から排出された水を排水路3に排出する。
【0028】
一方、手洗器1は上部に手洗器ボウル部25と手洗器ボウル部25に給水するための給水装置26とを備えている。
【0029】
手洗器ボウル部25の底部には手洗器排水口部27が設けられている。手洗器排水口部27は手洗器排水管路28を介して排水アダプター装置16の流水方向変換部20に接続されている。詳しくは手洗器排水管路28の下流側端部は流水方向変換部20の後壁部29から後方に突出する接続筒部30に連通接続されている。これにより手洗器ボウル部25内の水は手洗器排水口部27から手洗器排水口部27及び手洗器排水管路28を順に経て流水方向変換部20内に排出され、以後は便器ボウル部6からの排水と同様に接続管部23及び排出管部22を順に介して排水路3に排出される。手洗器排水管路28の上流部には略U字状に曲げられた管部からなる封水トラップ部31が設けられ、該封水トラップ部31内に溜まる封水によって封止がなされる。
【0030】
ここで、流水方向変換部20は便器装置2内の後部にあり、この流水方向変換部20に上記のように手洗器排水管路28の下流側端部を接続するので、手洗器排水管路28の下流側端部が便器装置2の後部に位置し、便器装置2の前面側から見た際に、手洗器排水管路28が目立たず、また、便器装置2の使用に当たって手洗器排水管路28が邪魔にならない。
【0031】
手洗器排水管路28の封水トラップ部31よりも手洗器1側に、封水トラップ部31よりも内径が大きい膨大管部5を設けてある。
【0032】
便器ボウル部6に溜まった水を排水するには、前述のようにターントラップ装置15に設けたモータを駆動してトラップ筒18を端部開口19が下向きとなるように回動することで、下向きとなった端部開口19から該端部開口19の直下の流水方向変換部20に排出し、上方から流下した水を流水方向変換部20で受けて横向きの流れに変え、接続管部23、排出管部22を経て、便器装置2外部の排水路3に排出する。
【0033】
この場合、モータを駆動してトラップ筒18を端部開口19が下向きとなるように回動すると、便器ボウル部6に溜まった水が、トラップ筒18を端部開口19の直下の流水方向変換部20に一気に流れ込み、この一気に流れ込んだ水が流水方向変換部20内において横向きに流れを変えるため、流水方向変換部20内が一時的に満水状態となり易い。
【0034】
このように便器ボウル部6内に溜まった水が流水方向変換部20内に一気に流れ込むと、流水方向変換部20に連通接続した手洗器排水管路28内に連通接続部分から水が流入し、手洗器排水管路28内の圧力が上昇し、手洗器排水管路28の封水トラップ部31内の封水を押し上げられ、手洗器1側に逆流することになる。
【0035】
しかしながら、本発明においては、上記のように、手洗器排水管路28の封水トラップ部31よりも手洗器1側に、封水トラップ部31よりも内径が大きい膨大管部5を設けてあるので、上方に押し上げられて逆流する封水が、膨大管部5内に流れ込み、逆流高さを低くし、手洗器ボウル部25への逆流を緩和することができる。
【0036】
このように、トラップ筒18を端部開口19から水が一気に流れ込んで一時的に満水になって圧力上昇が生じる部分である流水方向変換部20に、手洗器排水管路28の下流側端部を連通接続しても、手洗器排水管路28の封水トラップ部31の封水の手洗器1への逆流を緩和できるので、上記のように手洗器排水管路28が目立たず且つ邪魔にならないように手洗器排水管路28を便器装置2内の後部の流水方向変換部20に接続する構成としても何ら問題がない。
【0037】
なお、上記本実施形態の流水方向変換部20はターントラップ装置15からの排水の向きを前方へ変えるものであるが、前方以外の方向の横向きの流れに変えるものであってもかまわない。
【0038】
また、上記本実施形態では、排水アダプター装置16を夫々別体となる流水方向変換部20、接続管部23及び排出管部22で構成したが、該排水アダプター装置16は一体に形成された管で構成されるものであってもよい。また、本実施形態では便器排水部13をとして、ターントラップ装置15を備えたいわゆるターントラップ方式の例で説明したが、便器排水部13はこれに限定されるものではなく、便器排水部13は便器ボウル部6と排水路3とを連通させて便器ボウル部6内のため水を排水路3へと導くものであれば、他の構成、例えば、便器排水部13をサイフォン方式あるいは洗い流し方式であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 手洗器
2 便器装置
3 排水路
5 膨大管部
13 便器排水部
20 流水方向変換部
28 手洗器排水管路
31 封水トラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器装置に、便器ボウル部と、該便器ボウル部からの排水を便器装置外部の排水路に排出するための便器排水部とを備え、手洗器の排水を流す手洗器排水管路の下流側端部を上記便器排水部に連通接続し、手洗器排水管路の途中に封水トラップ部を形成し、手洗器排水管路の封水トラップ部よりも手洗器側に、封水トラップ部よりも内径が大きい膨大管部を設けてあることを特徴とする排水構造。
【請求項2】
便器排水部は、ターントラップ装置と、ターントラップ装置から排出された排水を受け、これを横向きの流れに変えて下流側へ流す流水方向変換部を有し、上記ターントラップ装置が、便器ボウル部に接続された屈曲自在のトラップ筒と、該トラップ筒を屈曲することで、トラップ筒を便器ボウル部内に水を溜める封水状態と便器ボウル部内の溜め水を排水する排水状態とに切り替え自在となり、前記手洗器排水管路の下流側の端部を上記流水方向変換部に連通接続してあることを特徴とする請求項1記載の排水構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111780(P2011−111780A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268115(P2009−268115)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】