説明

排水装置

【課題】排水装置において、排水量を制御する制御手段の製造コストを抑えることで、装置の製造コストを抑える。
【解決手段】排水装置1は、貯水槽2内から貯水槽2外へ排水するために順に連接された逆U字管3と、トラップ管4と、排水管5と、逆U字管3から分岐した空気流通管6と、空気流通管6を介して逆U字管3内の空気量を調整する調整器7とを備える。トラップ管4が水封されて逆U字管3内に空気が溜まった状態で、調整器7により逆U字管3内の空気量を調整することで、排水量を制御することができる。排水量を制御する調整器7は、逆U字管3内の空気量を調整するものであり、従来のような水流による圧力に耐え得る程の高強度さが必要な排水弁とは異なり、低強度であってもよい。従って、調整手段の製造コストを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水槽に貯留された水を排水する排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の排水装置として、貯水槽に排水パイプを連結し、その排水パイプに設けた排水弁を開閉することで排水量を制御する排水装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記の排水装置において、排水弁は開閉の際、水流による圧力を受ける。従って、貯水槽の大きさが大きく、排水量が多い場合には、水流による圧力が大きいので、排水弁はその圧力に耐え得るように高強度とする必要がある。このため、排水弁の製造コストが高くなり、装置の製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−172450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来の問題を解決するためになされたものであり、排水量を制御する制御手段の製造コストを抑えることができ、装置の製造コストの低減を図ることができるサイフォン式排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、貯水槽に貯留された水を排水する排水装置において、前記貯水槽内に下端が開口する立管の上端部を逆U字状に折曲し垂下させて成る逆U字管と、前記逆U字管の垂下させた端部に一端が連接されたU字型のトラップ管と、前記トラップ管の他端に一端が連接された排水管と、前記逆U字管から分岐した空気流通管と、前記空気流通管を介して逆U字管内の空気量を調整する調整手段と、を備え、前記貯水槽は、前記逆U字管の頂部よりも高い位置まで水を溜めることが可能な構成とされ、前記貯水槽内の水位が前記逆U字管の頂部よりも高く、該逆U字管に空気が溜まり、かつ前記トラップ管が水封されている状態で、前記貯水槽内から逆U字管、トラップ管及び排水管を通って排水される排水量を、前記調整手段により逆U字管内の空気量を調整することで任意に調整できるようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の排水装置において、前記調整手段は、前記空気流通管を大気開放するバルブと、前記空気流通管を通して前記逆U字管内に空気を送入するエアコンプレッサとを含むものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の排水装置において、前記トラップ管は、貯水槽の水位の予め決められた上限値に応じた深さを有しているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排水装置において、前記逆U字管の貯水槽内に開口した下端に逆流防止用トラップ管がさらに連接されており、前記逆U字管に空気が溜まり、かつ前記逆流防止用トラップ管が水封されている状態で、逆送水を阻止するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、逆U字管に連接したトラップ管が水封されることにより逆U字管内に空気が溜まった状態で、調整手段により逆U字管内の空気量を調整することで、排水量を制御することができる。この排水量を制御する制御手段として機能する調整手段は、逆U字管内の空気量を調整するものであり、従来のような水流による圧力に耐え得る程の高強度さが必要な排水弁とは異なり、低強度であってもよい。従って、調整手段の製造コストを抑えることができ、装置の製造コスト低減を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、バルブを開くことで、逆U字管から分岐した空気流通管を大気開放することができ、これにより、逆U字管内の空気を抜き、減らすことができる。また、エアコンプレッサにより逆U字管内に空気を送入することで、逆U字管内の空気を増やすこともできる。
【0012】
請求項3の発明によれば、貯水槽に貯留可能な水位の上限値はトラップ管の深さに応じて変わるが、トラップ管の深さが、貯水槽内の水位の予め決められた上限値に応じた深さとされるので、その上限値まで貯水槽に水を溜めることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、逆U字管に逆流防止用トラップ管を連接するだけで、逆送水を阻止できるので、逆送水の水圧に耐え得る高強度の逆流防止弁等を設ける必要はなく、従って、逆流防止手段の製造コストを抑えることができ、装置の製造コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る排水装置の断面構成図。
【図2】(a)〜(c)は貯水槽に徐々に貯水したときの上記装置内の様子を示す断面図。
【図3】上記装置による排水の様子を示す断面図。
【図4】(a)は貯水槽内の水位が貯水ラインよりも僅かに高い状態での上記装置による排水量を少なくしたときの様子を示す断面図、(b)は同排水量を多くしたときの様子を示す断面図、(c)は同装置による排水停止時の様子を示す断面図。
【図5】貯水槽内の水位が貯水ラインよりも低く、越流ラインよりも高い状態での上記装置による排水の様子を示す断面図。
【図6】貯水槽が異常増水したときの上記装置の動作を説明するための断面図。
【図7】上記装置を適用したダム排水設備の断面構成図。
【図8】上記実施形態の一変形例に係る排水装置の断面構成図。
【図9】本発明の第二の実施形態に係る排水装置の断面構成図。
【図10】下流河川の水位が上流河川よりも高くなったときの上記装置の様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各種実施形態に係る排水装置について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る排水装置の構成を示す。本実施形態の排水装置1は、貯水槽2に貯留された水を槽内から槽外へ排水する装置であり、順に連接された逆U字管3と、トラップ管4と、排水管5と、を備える。
【0016】
逆U字管3は、貯水槽2内に設けられた立管31の上端部を逆U字状に折曲し垂下させて成り、立管31の下端31aは貯水槽2内の底面近傍に開口する。トラップ管4は、U字型であり、逆U字管3の垂下させた端部31bに一端4aが連接されている。排水管5は、トラップ管4の他端4bに一端が連接された立管51を逆U字状に折曲して成る。トラップ管4及び排水管5は、貯水槽2外に配置されている。トラップ管4は貯水槽2内に配置されていてもよい。
【0017】
逆U字管3、トラップ管4及び排水管5は、略同径の円筒形状とし、水流抵抗を抑えるため滑らかに折り曲げられていることが望ましい。これらは一体に形成されていても、又は継ぎ目に水流抵抗となる段差が生じないように継ぎ合わされていてもよい。逆U字管3及び排水管5の折曲部分に位置する管外の頂部3a、5aの高さは略同じとし、管内の頂部3b、5bの高さも略同じとする。頂部3a、5aの位置関係及び頂部3b、5bの位置関係はそれぞれ上記に限定されない。貯水槽2は逆U字管3及び排水管5の頂部3a、5aよりも高い位置まで水を溜めることが可能な構成とする。
【0018】
さらに、排水装置1は、逆U字管3から分岐した空気流通管6と、空気流通管6を介して逆U字管3内の空気量を調整し、これにより排水量を調整する調整器7(調整手段)と、を備える。調整器7は、空気流通管6からそれぞれ分岐した空気送入管71及び第1並びに第2の大気開放管72、73と、空気送入管71を開閉する空気送入バルブ74と、空気送入管71に空気を送入するエアコンプレッサ75と、大気開放管72、73をそれぞれ開閉するコントロールバルブ76及び開放バルブ77と、上記の各種バルブ74、76、77の開閉制御及びエアコンプレッサ75の駆動制御を行うコントローラ78と、を備える。コントローラ78は、自動で、又はユーザの操作に基づいて各種制御を行うCPUで構成できる。
【0019】
第1及び第2の大気開放管72、73は、逆U字管3内の空気を管外へ放出するための管である。大気開放管73よりも大気開放管72の方が径が小さく、大気開放管72は逆U字管3内の空気量を少量だけ減らす場合に、大気開放管73は空気量を多量に減らす場合に開放される。エアコンプレッサ75は、空気送入管71及び空気流通管6を通して逆U字管3内に空気を送入する。空気送入バルブ74よりもエアコンプレッサ75側の空気送入管71には、空気を圧縮して溜められる空気槽79が設置されていることが望ましい。上記各種配管の材料は特に限定されず、塩化ビニル又はFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂、金属、又はコンクリート等のいずれであってもよい。
【0020】
ここに、逆U字管3の管内の頂部3bの高さ、すなわち、逆U字管3内で水がトラップ管4に流れ込み始める水位を越流ラインL1という。また、貯水槽2の予め決められた水位の上限値を貯水ラインL2という。貯水ラインL2の高さは逆U字管3及び排水管5の頂部3a、5aよりも高く設定する。また、トラップ管4の内底部4cから越流ラインL1までの高さをトラップ管4の深さD1と定義する。この深さD1は、貯水槽2の水位の予め決められた上限値、すなわち、貯水ラインL2の位置に応じて決められており、越流ラインL1と貯水ラインL2との高さの差をH1としたときのその差H1と略同じとする。
【0021】
次に、上記のように構成された排水装置1において、貯水槽2が貯水されるときの装置内の水の動きを説明する。貯水槽2内の水位を徐々に上昇させたときの様子を時系列で図2(a)〜(c)に示す。貯水に際して、各種バルブ74、76、77は閉じている。
【0022】
図2(a)は、貯水槽2内の水位が上昇して、越流ラインL1を僅かに越えた状態を示す。水は逆U字管3の立管31内に入っており、立管31内の水位は貯水槽2内の水位と略同じとなって越流ラインL1を僅かに越え、逆U字管3内の水W1はトラップ管4に流れ込んでいる。この流れ込みを越流という。その越流した水W1がトラップ管4に溜まり、その水位がトラップ管4の管径程度となっており、トラップ管4は水封されている。トラップ管4は水封され、かつ各種バルブ74、76、77は閉められているので、逆U字管3の折曲部分の管内は密閉空間となり、そこに空気A1が封じ込められて溜まっている。
【0023】
図2(b)は、貯水槽2内の水位が越流ラインL1と貯水ラインL2との間でΔhだけ、さらに上昇した状態を示す。貯水槽2内の水位上昇により、水W1は、押し上げられ、越流してトラップ管4にさらに流れ込んでいる。また、水W1は、逆U字管3に溜まった空気A1を押し、その空気A1は、トラップ管4に溜まった水W2を押している。このため、トラップ管4の逆U字管3側の立管41の水位は貯水槽2の水位に拘らず略一定となり、排水管5側の立管42の水位は上記図2(a)に示した水位よりも高くなっている。この立管42の水位上昇分は、越流ラインL1の高さと貯水槽2内の水位の差Δhと略等しい。
【0024】
図2(c)は、貯水槽2内の水位が貯水ラインL2に達した状態を示す。トラップ管4の立管42と、それに連通する排水管5の立管51の水位は上記図2(b)に示した水位よりも高い。立管42、51の水位の上昇分は、上記図2(a)に図示した水位と比べて、越流ラインL1と貯水ラインL2の高さとの差H1に略等しい。水W1の押し上がろうとする力と空気A1の空気圧は均衡しており、逆U字管3は空気A1により、トラップ管4は水W2により、貯水槽2から逆U字管3、トラップ管4及び排水管5を通して貯水槽2内の水が排出されることを阻止している。
【0025】
次に、排水装置1による排水について説明する。図3は、貯水槽2内の水位が貯水ラインL2を僅かに越えたときの排水の様子を示す。このとき、逆U字管3に空気A1が溜まり、かつトラップ管4が水封されており、トラップ管4の立管41内の水位がトラップ管4を水封可能な水位の下限値と略等しいものとする。貯水槽2内の水位が貯水ラインL2を越えると、逆U字管3の立管31内の水W1は越流ラインL1を越え、トラップ管4内に越流する。立管42、51の水位は上昇し、排水管5の頂部5bを越え、排水される。このような排水を越流排水といい、頂部5bの高さを排水ラインL4という。
【0026】
次に、コントローラ78による排水量制御を説明する。ここで、立管41内の水位をコントロールラインL3という。コントローラ78は逆U字管3内の空気A1の量を調整し、コントロールラインL3を上昇又は下降させることで、排水量を任意に調整し制御する。排水量制御は、排水開始制御及び排水停止制御を含む。なお、貯水槽2は大きく、越流排水によっては水位が殆んど低下しないものとする。
【0027】
図4(a)は、上記図3に図示した越流排水状態において、逆U字管3内から空気A1が少量だけ抜かれた様子を示す。空気A1は貯水槽2内の水による水圧を受けているので、コントロールバルブ76が開かれることで、逆U字管3から放出される。空気A1の放出量は、コントロールバルブ76を開いている時間を制御することで調整される。放出された空気量に応じてコントロールラインL3は上昇し、それに伴って、立管42、51内の水面が貯水槽2内の水位とバランスする高さまで上昇しようとする。このバランスする高さとは、立管42、51内の水面とコントロールラインL3との高低差が、貯水槽2内の水位と越流ラインL1との高低差と略等しくなる高さである。貯水槽2内の水位と越流ラインL1との高低差は、貯水槽2の水位が排水によっても殆んど低下せず、貯水ラインL2と略同じであるので、貯水ラインL2と越流ラインL1との高さの差と略等しく、H1である。そのため、立管42、51の水面は、上昇したコントロールラインL3との高低差がH1となるように上昇するが、立管42、51の深さはH1であるので、水が排水ラインL4を越えて溢れ、排水量が増加する。上記図2(c)に図示した排水停止状態で、逆U字管3内から空気A1を抜いた場合には、同様の作用により排水が開始される。
【0028】
図4(b)は、上記図4(a)と比べ、逆U字管3内から空気A1がより多く抜かれ、コントロールラインL3がより上昇した様子を示す。このコントロールラインL3の上昇に伴って、立管42、51の水面もより高く上昇しようとし、結果として水の溢れる量が多くなり、排水量が増加する。コントロールラインL3の調整範囲は、逆U字管3の管内の最高位置を上限とし、トラップ管4を水封できる水位の最低位置を下限とする。
【0029】
図4(c)は、排水停止のため逆U字管3内に空気が圧入されたときの様子を示す。空気送入バルブ74が開き、エアコンプレッサ75から空気送入管71を介して空気が逆U字管3内に送入される。送入量は、少なくとも、コントロールラインL3を上記図2(c)に示した高さまで下げる量とするが、その量以上であっても余分の空気は立管42、51を通って放出されるので構わない。コントロールラインL3の低下により立管42、51の水面の高さは下がり、排水管5の頂部5bと略同じ高さとなり、排水が停止する。
【0030】
図5は、貯水槽2内の水位が貯水ラインL2よりも低く、越流ラインL1よりも高い状態で、逆U字管3内から空気A1が抜かれたときの様子を示す。この状態においても、空気A1が抜かれると、トラップ管4内の水かさが増え(増量分を斜線で示す)、コントロールラインL3が上昇し、これに伴って立管42、51の水面が高くなる。立管42、51の水面が排水ラインL4を越えたときには水が溢れ、排水される。
【0031】
次に、貯水槽2が異常増水したときの排水装置1の動作について図6を参照して説明する。図6は、貯水槽2内の水位が貯水ラインL2よりも所定値以上高くなったときの状態を示す。このとき、コントローラ78は、例えば貯水槽2に設置された水位計等により、水位が所定値よりも高くなったことを検知し、その検知結果に基づいて開放バルブ77を開く。その結果、逆U字管3内の空気A1は、貯水槽2内の頂部3aよりも高い位置の水W3の水圧により、空気流通管6から外部へ放出される。これにより、逆U字管3内において水が越流ラインL1を越え、逆U字管3は水で満たされる。その水はトラップ管4に溜まった水と一体化する。トラップ管4及び排水管5は貯水槽2から流入した水で管内が満たされ、その水は排水管5から外部へ排出される。このとき、排水量が最大となる。
【0032】
本実施形態においては、逆U字管3に連接したトラップ管4が水封されることにより逆U字管3内に空気が溜まった状態で、調整器7により逆U字管3内の空気量を調整することで、排水量を制御することができる。この排水量を制御する制御手段として機能する調整器7は、逆U字管3内の空気量を調整するものであり、従来のような水流による圧力に耐え得る程の高強度さが必要な排水弁とは異なり、低強度であってもよい。従って、調整器7の製造コストを抑えることができ、装置の製造コスト低減を図ることができる。
【0033】
また、コントロールバルブ76を開くことで、逆U字管3から分岐した空気流通管6を大気開放することができ、これにより、逆U字管3内の空気を抜き、減らすことができる。また、エアコンプレッサ75により逆U字管3内に空気を送入することで、逆U字管3内の空気を増やすこともできる。
【0034】
また、貯水槽2に貯留可能な水位の上限値はトラップ管4の深さに応じて変わるが、トラップ管4の深さが、貯水槽2内の水位の予め決められた上限値に応じた深さとされているので、その上限値まで貯水槽2に水を溜めることができる。
【0035】
また、貯水槽2内の水位が低い状態では、貯水槽2内の水により逆U字管3内の空気A1に掛かる圧力が低いので、空気量制御を高精度に行うことができ、従って、排水量制御を高精度に行うことができる。
【0036】
また、貯水槽2の水位が低い状態で排水する際には、トラップ管4の立管41の水位が上げられるので、逆U字管3の頂部3bから立管41内に落ちる水の落差が少なくなる。従って、貯水槽2の水位が低いときから排水することにより、立管41内での水落下時に生じる泡の発生を抑えることができる。このため、空気A1が泡となって立管42内に入り込んで放出されることを防ぎ、これにより、経時に伴って逆U字管3内の空気A1が減ることを抑制することができる。その結果として、逆U字管3内の空気量制御に基づく本実施形態の排水量制御は高精度なものとなる。
【0037】
次に、本実施形態の排水装置1の適用例を説明する。排水装置1をダム排水設備に適用した例を図7に示す。図7に示されるように、排水装置1の逆U字管3、トラップ管4及び排水管5がダムの堤体80を貫通して設置され、ダム湖81内からの排水を制御する。排水装置1の適用例は上記に限定されず、排水装置1を水門の取水設備に適用し、逆U字管3を堤防に貫通して設置し、調整器7を堤防上に配置してもよい。
【0038】
次に、本実施形態の一変形例に係る排水装置について図8を参照して説明する。図8は、本変形例の排水装置1の構成を示す。排水装置1は、排水停止時にトラップ管4に溜まった水を排出するためトラップ管4の底部付近に連通された水抜き用配管43と、この配管43を開閉してトラップ管4内の水位を調整する水位調整バルブ44とが設けられている。水位調整バルブ44は排水停止時にコントローラ78により制御されて開き、配管43はトラップ管4に溜まった水を排出する。コントローラ78は、例えば、貯水槽2に設けた水位計により、排水時の水位の低下が止まったこと、すなわち、排水が停止したことを検知する。
【0039】
本変形例においては、排水停止時にトラップ管4の水抜きが行われるので、排水停止後に貯水槽の水位が再び上昇し、トラップ管4に水が流れ込んで溜まる際、その溜まる水量を減らすことができる。従って、排水管5に溜まった水が溢れて排出されることを防ぐことができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る排水装置の構成を示す。本実施形態の排水装置1は、水門に設けた取水設備に適用され、逆U字管3が堤防82に貫通して設けられ、調整器7が堤防82上に配置されており、上流側の河川(以下、上流河川という)83から下流側の河川(以下、下流河川という)84に排水する。排水装置1の構成は、上記第1の実施形態のそれと比べ、逆U字管3の下端31aに逆流防止用トラップ管9がさらに連接されている点で異なる。排水管5の排水口には、排水を下流河川84に滑り落とす樋52が連接されていることが望ましい。排水管5の排水口付近には通気口が設けられてもよい。なお、同図において、コントローラ78の図示は省略する。
【0041】
図10は、下流河川84の水位が上流河川83よりも高く、逆U字管3に空気A1が溜まり、かつ逆流防止用トラップ管9が水封されている状態を示す。この状態において、逆流防止用トラップ管9は、上流河川83から下流河川84へ排水を阻止する際のトラップ管4と同等に機能する。逆U字管3の頂部3bから下流河川84の水位までの高さをH2とし、逆U字管3の立管31内の水位から上流河川83の水位までの高低差をH3としたとき、H2≦H3であれば、高さH3分の水による圧力が高さH2分の水による圧力以上となる。このため、逆流防止用トラップ管9を水封する水W4に押された逆U字管3内の空気A1は、トラップ管4内の押し上がろうとする水W5を押さえることができる。従って、下流河川84から排水管5、トラップ管4及び逆U字管3を通して逆送水されることが阻止される。逆U字管3内の空気A1の量を減らすことで、逆送水を生じさせることも可能である。
【0042】
本実施形態においては、逆U字管3に逆流防止用トラップ管9を連接するだけで、逆送水を阻止できるので、逆送水の水圧に耐え得る高強度の逆流防止弁を設ける必要はない。従って、逆流防止手段の製造コストを抑えることができ、装置の製造コスト低減を図ることができる。本実施形態においても、第1の実施形態による効果と同等の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記の各種実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、大気開放管72、73のうちのいずれかだけが設けられていてもよい。また、調整器7は、大気開放管72、73、コントロールバルブ76及び開放バルブ77の替わりとして、エアバキュームで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 排水装置
2 貯水槽
3 逆U字管
4 トラップ管
5 排水管
6 空気流通管
7 調整器(調整手段)
75 エアコンプレッサ
76 コントロールバルブ(バルブ)
77 開放バルブ(バルブ)
9 逆流防止用トラップ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽に貯留された水を排水する排水装置において、
前記貯水槽内に下端が開口する立管の上端部を逆U字状に折曲し垂下させて成る逆U字管と、
前記逆U字管の垂下させた端部に一端が連接されたU字型のトラップ管と、
前記トラップ管の他端に一端が連接された排水管と、
前記逆U字管から分岐した空気流通管と、
前記空気流通管を介して逆U字管内の空気量を調整する調整手段と、を備え、
前記貯水槽は、前記逆U字管の頂部よりも高い位置まで水を溜めることが可能な構成とされ、
前記貯水槽内の水位が前記逆U字管の頂部よりも高く、該逆U字管に空気が溜まり、かつ前記トラップ管が水封されている状態で、前記貯水槽内から逆U字管、トラップ管及び排水管を通って排水される排水量を、前記調整手段により逆U字管内の空気量を調整することで任意に調整できるようにしたことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記空気流通管を大気開放するバルブと、前記空気流通管を通して前記逆U字管内に空気を送入するエアコンプレッサとを含むことを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記トラップ管は、貯水槽の水位の予め決められた上限値に応じた深さを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記逆U字管の貯水槽内に開口した下端に逆流防止用トラップ管がさらに連接されており、
前記逆U字管に空気が溜まり、かつ前記逆流防止用トラップ管が水封されている状態で、逆送水を阻止することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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