説明

排泄検出装置及び吸収性物品

【課題】製造コストを大きく上昇させることなく、高pHの尿と接触した場合でも充分な起電時間を確保し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品を提供する。
【解決手段】排泄検出装置100は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極部120と、排泄物の水素イオン指数を低下させる中和剤を保持する中和剤保持部112と、着用者からの排泄があったことを排泄検出装置の外部に通知するアクティブタグ150とを備える。電極部120は、排泄物に接触可能な位置に設けられる。また、中和剤保持部112は、中和剤が排泄物と接触可能な位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品に関して、尿や便などが吸収性物品の着用者(生体)から排泄されたことを検出する排泄検出装置が知られている。排泄検出装置は、吸収性物品に搭載され、着用者から尿や便などが排泄されたことを検出すると、外部に対してその旨を報知する。
【0003】
このような排泄検出装置において、イオン化傾向が異なる材料によって構成される電極に着用者の排泄物を接触させることによって起電させる方法が知られている。つまり、ボルタの電池の原理を利用することによって、バッテリーを用いずにブザーなどの報知器を作動させる装置が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に開示されている排泄検出装置では、電極の材料として、銅や亜鉛が用いられている。また、特許文献2に開示されている排泄検出装置では、排泄物(尿)を用いた起電と、バッテリーとを併用しており、電極の材料として、金、銀、銅またはアルミニウムなどを用いることができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−277435号公報(第3頁、第4図)
【特許文献2】特開2006−296566号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の排泄検出装置には、次のような問題がある。すなわち、電極は着用者の排泄物と接触するが、排泄物のpHが高いと電極の腐食が加速する。特に、高齢者は尿路感染症などによって尿のpHが高くなっていることが多いため、このような高pHの尿に電極が接触すると、電極がすぐに腐食してしまい、充分な起電時間を確保できなくなることが懸念される。
【0007】
なお、耐腐食性の高い電極を用いることも考えられるが、衛生用品に用いること及び製造コストを考慮すると現実的でない。
【0008】
そこで、本発明は、製造コストを大きく上昇させることなく、高pHの尿と接触した場合でも充分な起電時間を確保し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。すなわち、本発明の特徴は、生体(着用者W)から排泄物(排泄物Ex、尿や便)の排泄があったことを検出する排泄検出装置(排泄検出装置100)であって、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極(電極121,電極122)を有する電源部(電源部160)と、前記排泄物の水素イオン指数を低下させる中和剤(中和剤N)を保持する中和剤保持部(中和剤保持部112)と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄があったことを前記排泄検出装置の外部に通知する通知部(無線送信部180)とを備え、前記電極は、前記排泄物に接触可能な位置に設けられ、前記中和剤保持部は、前記中和剤が前記排泄物と接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【0010】
上述した本発明の特徴において、電解質溶液(電解質溶液WT)を保持する溶液保持部(電解質溶液保持部111)を備え、前記電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能であることが好ましい。
【0011】
上述した本発明の特徴において、前記中和剤保持部は、前記排泄検出装置の使用時において、前記電極の上方に位置するように設けられることが好ましい。
【0012】
上述した本発明の特徴において、前記中和剤保持部は、前記溶液保持部と隣接することが好ましい。
【0013】
上述した本発明の特徴において、前記中和剤保持部は、前記中和剤保持部に対する所定の操作によって前記中和剤保持部から前記中和剤を滲出させ、前記排泄物に前記中和剤を接触させることが好ましい。
【0014】
上述した本発明の特徴において、前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作(例えば、押圧)によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記電極に前記電解質溶液を接触させることが好ましい。
【0015】
上述した本発明の特徴において、生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品(例えば、使い捨ておむつ10A)であって、前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、前記排泄検出装置は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、前記排泄物の水素イオン指数を低下させる中和剤を保持する中和剤保持部と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄があったことを前記排泄検出装置の外部に通知する通知部とを備え、前記電極は、前記排泄物に接触可能な位置に設けられ、前記中和剤保持部は、前記中和剤が前記排泄物と接触可能な位置に設けられることを要旨とする。
【0016】
上述した本発明の特徴において、前記吸収性物品は、前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シート(表面シート11)と、前記排泄物を吸収する吸収体と
吸収体(吸収体13)を含み、前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特徴によれば、製造コストを大きく上昇させることなく、高pHの尿と接触した場合でも充分な起電時間を確保し得る排泄検出装置、及び当該排泄検出装置を備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る排泄管理システム1の全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排泄検出装置100が埋め込まれた使い捨ておむつ10Aの平面展開図、及び排泄検出装置100の外観を模式的に示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る排泄検出装置100の機能ブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る排泄管理システム1を用いた排泄管理フローを示す図である。
【図5】図2のF5−F5線に沿った使い捨ておむつ10Aの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る排泄検出装置及び吸収性物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0020】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0021】
(1)排泄管理システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る排泄管理システム1の全体概略構成図である。図1に示すように、排泄管理システム1は、無線中継局20、排泄管理サーバ40及び排泄検出装置100によって構成される。
【0022】
使い捨ておむつ10A及び使い捨ておむつ10Bは、着用者W(生体)に装着され、着用者Wからの尿や便などの排泄物を吸収する吸収性物品である。使い捨ておむつ10A及び使い捨ておむつ10Bは、排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置100を備える。具体的には、排泄検出装置100は、オープン型(テープ型)の使い捨ておむつ10Aや、パンツ型の使い捨ておむつ10Bに搭載される。
【0023】
排泄検出装置100は、着用者Wから排泄物の排泄があったことを検出する。排泄検出装置100は、無線中継局20に対して無線信号を送信可能なアクティブ型のICタグや温度センサーなどによって構成され、使い捨ておむつ内の温度情報(環境情報)を含む無線信号を所定の周期で繰り返し送信する。なお、排泄検出装置100の詳細構成については後述する。
【0024】
無線中継局20は、排泄検出装置100から受信した無線信号を所定の通信方式に従った無線信号に変換する。本実施形態では、無線中継局20は、排泄検出装置100から受信した無線信号をPersonal Handy Phone(PHS方式)の無線信号に変換し、当該無線信号を無線基地局30に向けて送信する。無線中継局20は、一辺が数cm以下の直方体であり、名札状にしてベッドに取り付けたり、着用者Wに取り付けたりすることができる。なお、無線中継局20と排泄検出装置100と無線通信を維持するため、無線中継局20と排泄検出装置100とは、一定距離内に位置する必要がある。
【0025】
無線基地局30は、無線中継局20から無線信号を受信する。本実施形態では、無線基地局30は、PHS方式に従った無線信号を送受信する。無線基地局30は、有線通信ネットワーク(不図示)を介して排泄管理サーバ40に接続される。
【0026】
排泄管理サーバ40は、排尿や排便に関する環境情報(温度、湿度及び臭気など)の変化パターンを複数記憶している。排泄管理サーバ40は、無線中継局20及び無線基地局30を介して排泄検出装置100から繰り返し送信された温度情報に基づいて、着用者Wによる排尿または排便の有無を判定する。排泄管理サーバ40は、排尿または排便があったと判定した場合、その旨を示す電子メールを予め登録された携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60に送信する。排泄管理サーバ40が携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60に対してこのような電子メールを予め登録された宛先に送信することによって、当該電子メールを確認した着用者Wの保護者(介護者)は、使い捨ておむつの交換など、速やかに適切な措置を取り得る。
【0027】
(2)排泄検出装置の配設位置及び構造
図2(a)は、排泄検出装置100が埋め込まれた使い捨ておむつ10Aの平面展開図である。図2(b)は、排泄検出装置100の外観を模式的に示した図である。
【0028】
図2(a)に示すように、使い捨ておむつ10Aは、表面シート11、裏面シート12及び吸収体13を備える。表面シート11は、着用者W(生体)の肌と接触する。表面シート11は、尿などの液体を透過する資材によって構成される。裏面シート12は、着用者Wの衣類と接触する。裏面シート12は、液体を透過しない資材によって構成される。吸収体13は、尿や便などの排泄物を吸収する。吸収体13は、粉砕パルプなどの親水性繊維などによって構成される。使い捨ておむつ10Aは、公知の方法(例えば、特開2003−339771号公報)に従って製造できる。
【0029】
排泄検出装置100は、表面シート11と吸収体13との間に設けられる。なお、排泄検出装置100は、裏面シート12と吸収体13との間に設けてもよいが、尿と比較して粘度が高い便を排泄検出装置100の電極部120に確実に接触させるためには、排泄検出装置100を表面シート11と吸収体13との間に設けることが好ましい。また、オープン型の使い捨ておむつ10Bの場合においても、排泄検出装置100は、表面シート11と吸収体13との間に設けることが好ましい。なお、使い捨ておむつ10Bも、公知の方法(例えば、特開2005−58755号公報)に従って製造できる。
【0030】
排泄検出装置100は、溶液・中和剤保持部110、電極部120、温度センサー130及びアクティブタグ150を備える。溶液・中和剤保持部110は、電解質溶液保持部111と中和剤保持部112とを有する。電解質溶液保持部111は、電解質溶液を保持する。中和剤保持部112は、排泄物の水素イオン指数(pH)を低下させる中和剤を保持する。本実施形態では、中和剤保持部112は、電解質溶液保持部111と隣接して設けられる。具体的には、中和剤保持部112は、電解質溶液保持部111の上方に隣接して設けられる。
【0031】
電極部120は、電解質溶液保持部111の下方(吸収体13寄り)に設けられる。温度センサー130は、電解質溶液保持部111から滲出する電解質溶液及び中和剤保持部112から滲出する中和剤と接触することを回避するため、アクティブタグ150を基準として、電極121及び電極122の反対側に設けられる。電極121及び電極122は、着用者Wからの排泄物及び電解質溶液保持部111から滲出する電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。つまり、電極121及び電極122は、尿などの排泄前においては電解質溶液保持部111から滲出する電解質溶液と接触可能である。
【0032】
アクティブタグ150は、電極部120及び温度センサー130と接続され、溶液・中和剤保持部110と重ならない位置に設けられる。
【0033】
(3)排泄検出装置100の機能ブロック構成
図3は、排泄検出装置100の機能ブロック構成図である。図3に示すように、排泄検出装置100は、溶液・中和剤保持部110、電極部120、温度センサー130及びアクティブタグ150を備える。また、アクティブタグ150は、電源部160、制御部170及び無線送信部180によって構成される。
【0034】
溶液・中和剤保持部110は、上述したように、電解質溶液保持部111と中和剤保持部112とを有する。
【0035】
電解質溶液保持部111は、電解質を水などの溶媒に溶かした電解質溶液を保持する。例えば、電解質溶液保持部111は、塩化ナトリウム(NaCl)を約1wt.%〜5wt.%含む水溶液を用いることができる。すなわち、尿成分と同等のNaCl水溶液を電解質溶液として用いる。電解質溶液保持部111は、液体を蓄えておける袋状の容器であり、本実施形態では、電解質溶液保持部111は、ポリオレフィン系の熱可塑性フィルムによって構成される。
【0036】
電解質溶液保持部111は、電解質溶液保持部111に対する所定の操作、例えば、電解質溶液保持部111を表面シート11側から押圧することによって、電解質溶液保持部111から電解質溶液を滲出させる。すなわち、電解質溶液保持部111を押圧することによって熱可塑性フィルムによって構成されている袋状の電解質溶液保持部111が破られ、電解質溶液が電極部120周辺に滲出する。この結果、電極121及び電極122に電解質溶液が接触する。
【0037】
なお、電解質溶液保持部111は水などの溶媒のみを蓄え、電解質溶液保持部111の近傍に塩化ナトリウムの粉末を配置してもよい。この場合、塩化ナトリウムの粉末が電解質溶液保持部111から滲出した水に溶解し、電解質溶液が生成される。このような場合も、電解質溶液保持部111が電解質溶液を保持することに含まれる。
【0038】
中和剤保持部112は、クエン酸など、排泄物のpHを低下させる中和剤を保持する。中和剤としては、クエン酸以外に、酒石酸やコハク酸を用いてもよい。中和剤保持部112は、中和剤が排泄物と接触可能な位置に設けられる。具体的には、中和剤保持部112は、排泄検出装置100の使用時において、電極部120の上方(裏面シート12寄り)に位置するように設けられる。
【0039】
中和剤保持部112は、電解質溶液保持部111と同様に、ポリオレフィン系の熱可塑性フィルムによって構成される。また、中和剤保持部112は、中和剤保持部112に対する所定の操作、例えば、電解質溶液保持部111を表面シート11側から押圧することによって中和剤保持部112から中和剤を滲出させる。すなわち、中和剤保持部112を押圧することによって熱可塑性フィルムによって構成されている袋状の中和剤保持部112が破られ、中和剤が排泄物周辺に滲出する。この結果、排泄物に中和剤が接触する。これにより、排泄物が高pHの尿などの場合であっても、電極121及び電極122の腐食が抑制される。
【0040】
電極部120は、排泄物に接触可能な位置に設けられる。具体的には、電極部120は、溶液・中和剤保持部110の下方(吸収体13寄り)であって、吸収体13の上に設けられる。電極部120を構成する一対の電極121及び電極122は、電源部160に接続されている。電極121及び電極122は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成される。本実施形態では、電極121及び電極122として、アルミニウムと銀の組合せ(各々カーボンとの混合物)が用いられる。すなわち、このような電極部120を有する電源部160は、電解質溶液または排泄物が電極121と電極122との間に介在することによって、いわゆるボルタの電池として機能する。ボルタの電池とは、イオン化傾向が大きい金属と小さい金属とを使用した電極を電解液に浸けることによって電子を移動させて電流を発生させる電池である。
【0041】
上述したように、電極121及び電極122は、尿などの排泄前においては電解質溶液保持部111から滲出する電解質溶液と接触可能である。このため、排泄前においては電解質溶液、また、排泄後においては電解質溶液或いは排泄物によって、電極121と電極122との間に電位差が生じ、起電力が得られる。
【0042】
温度センサー130は、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を検出する。具体的には、温度センサー130は、使い捨ておむつ10Aのうち、排泄物が排泄される領域(吸収体13が設けられている領域)の温度を環境情報として検出する。温度センサー130は、電源部160によって生成された電力によって作動する。
【0043】
本実施形態では、温度センサー130は、薄膜サーミスタ(以下、サーミスタ)が用いられる。温度センサー130には、尿や便を検出するための電極と、サーミスタに電力を供給する電極とが導電性インクで印刷された合成樹脂フィルムが用いられる。温度センサー130としては、熱容量が小さく周囲の温度の影響を受けやすいサーミスタが好ましく、例えば、石塚電子株式会社製サーミスタET−103が挙げられる。
【0044】
アクティブタグ150は、電極部120及び温度センサー130が接続されたアクティブ型のICタグである。つまり、アクティブタグ150は、他の無線通信装置などに頼らずに無線信号を送信することができる。
【0045】
電源部160は、起電回路161及び蓄電回路162を有する。起電回路161には、電極121及び電極122が接続される。起電回路161は、電極121と電極122との間に生じた電位差により起電し、発生した電力を蓄電回路162に蓄える。蓄電回路162は、コンデンサなどによって構成される。
【0046】
制御部170は、電源部160によって生成された電力によって作動する。具体的には、制御部170は、温度センサー130から出力された値に基づいて、温度情報を示すデータを生成し、生成したデータを無線送信部180に出力する。
【0047】
無線送信部180は、電源部160によって生成された電力によって作動する。無線送信部180は、温度センサー130によって検出された温度情報を排泄検出装置100の外部に通知する。本実施形態において、無線送信部180は、着用者からの排泄があったことを排泄検出装置100の外部に通知する通知部を構成する。
【0048】
具体的には、無線送信部180は、当該温度情報を示すデータを含む無線信号を無線中継局20に向けて送信する。本実施形態では、無線送信部180は、当該無線信号を所定の周期(例えば、10秒)で繰り返し送信する。
【0049】
なお、排泄検出装置100は、上述したように排泄前及び排泄後において、ボルタの電池として機能するため、温度センサー130、制御部170及び無線送信部180を作動させるためのバッテリーを搭載していないバッテリーレス型である。
【0050】
(4)排泄管理システムを用いた排泄管理方法
図4は、上述した排泄管理システム1を用いた排泄管理フローを示す。具体的には、図4は、使い捨ておむつ10A(または使い捨ておむつ10B)を着用した着用者Wが排尿または排便したことを排泄検出装置100が検出し、携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60にその旨を通知する電子メールを送信するまでのフローを示す。
【0051】
図4に示すように、ステップS10において、被介護者などの対象者への使い捨ておむつ10Aの着用を補助する保護者や介護者(以下、補助者)は、使い捨ておむつ10Aを包装パッケージなどから取り出す。
【0052】
ステップS20において、補助者は、使い捨ておむつ10Aの表面シート11下方に埋め込まれた溶液・中和剤保持部110の部分を押圧する。補助者によるこの動作によって、袋状の電解質溶液保持部111及び中和剤保持部112が破られる。
【0053】
ステップS30において、電解質溶液保持部111から電解質溶液(塩化ナトリウム溶液)が電極部120周辺に滲出する。また、中和剤保持部112から中和剤が電極部120周辺に滲出する。
【0054】
ここで、図5を参照して、電解質溶液及び中和剤が電極部120周辺に滲出する状態について説明する。図5は、図2のF5−F5線に沿った使い捨ておむつ10Aの模式的な断面図である。図5に示すように、溶液・中和剤保持部110の部分が押圧されると、袋状の電解質溶液保持部111及び中和剤保持部112が破れる。この結果、電解質溶液保持部111に保持されていた電解質溶液WTが、電極121及び電極122周辺に滲出する。同様に、中和剤保持部112に保持されていた中和剤N(例えば、クエン酸)が電極121及び電極122周辺に滲出する。
【0055】
ステップS35において、補助者は、使い捨ておむつ10Aを乳幼児などの対象者に着用させる。これにより、補助者の使い捨ておむつ10Aの着用作業が完了する。
【0056】
ステップS40において、電源部160(起電回路161)は、電解質溶液が電極121と電極122との間に介在することによって起電し、電力を発生する。
【0057】
ステップS50において、電源部160が発生した電力によって排泄検出装置100が作動を開始する。
【0058】
ステップS60において、無線送信部180は、温度センサー130が取得した温度情報を定期的に排泄管理サーバ40に送信する。具体的には、無線送信部180は、上述したように無線中継局20及び無線基地局30を介して温度情報を排泄管理サーバ40に送信する。
【0059】
ステップS70において、排泄管理サーバ40は、受信した温度情報に基づいて、温度変化のパターンが予め記憶されたパターンと合致するか否かを判定する。本実施形態では、排泄管理サーバ40は、排尿に伴う温度変化のパターン、及び排便に伴う温度変化のパターンを記憶している。
【0060】
例えば、排便時と排尿時の温度変化パターンを比較すると、排尿時は、排便時よりも温度の立ち上がりが鋭く、温度変化の収束も早い。一方、排便の場合、排便時の温度の立ち上がりが遅く、温度変化の収束も遅い。排泄管理サーバ40は、このような温度変化パターンの相違に基づいて、排尿と排便とを識別する。
【0061】
受信した温度情報に基づく温度変化のパターンが排尿または排便の温度変化パターンと合致した場合(ステップS70のYES)、ステップS80において、排泄管理サーバ40は、排尿または排便があったことを示す電子メールを予め登録された宛先(携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60)に送信する。
【0062】
また、ステップS85において、電極121及び電極122周辺に滲出した中和剤(クエン酸)は、排泄物(例えば、尿)のpHを低下させ、排泄物のアルカリ性を中和する。具体的には、図5に示すように、排泄物Exが裏面シート12を透過して吸収体13に吸収されると、電極121及び電極122周辺に滲出した中和剤Nが排泄物Exと接触する。この結果、排泄物Exのアルカリ性が中和剤Nによって中和される。
【0063】
ステップ90において、着用者Wの補助者は、電子メールの受信により着用者Wの排尿や排便があったことを速やかに認識し、使い捨ておむつを交換する。なお、補助者は、使用後の使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置100によって送信される無線信号と、交換後の新しい使い捨ておむつに埋め込まれた排泄検出装置100によって送信される無線信号との混信を防ぐため、使用後の使い捨ておむつを無線中継局20から一定距離以上引き離す必要がある。
【0064】
以上説明した排泄検出装置100によれば、中和剤保持部112は、中和剤が排泄物と接触可能な位置に設けられる。具体的には、中和剤保持部112は、電極部120(電極121,電極122)の上方に設けられる。また、中和剤保持部112が押圧されることによって中和剤が電極部120周辺に滲出し、排泄物に中和剤が接触する。この結果、排泄物Exのアルカリ性が中和剤Nによって中和され得る。
【0065】
このため、尿路感染症などによって尿のpHが高くなっていることが多い高齢者向けの使い捨ておむつでも、電極部120が尿によってすぐに腐食してしまうことを防止できる。なお、電極の材料としては、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、カーボンなどの材料、及びこれらの混合材料が先行文献に開示されており、イオン化傾向差の大きな2つの異なる材料が起電力を得るには効果が高い。しかし、使い捨ておむつに用いることを考慮すると、安全性や製造コストの観点から、本実施形態のように、アルミニウムと銀の組合せが好ましい。
【0066】
しかしながら、アルミニウムは両性元素であり、酸にもアルカリにも溶解し得る。このため、以下に示すように、一般的にアルミニウムと強塩基水溶液中にて溶解反応が発生する。
【0067】
2 Al + 10 H2O + 2 OH- → 2 [Al(OH)4(H2O)2]- + 3 H2
特に、高齢者など、尿路感染症などによって尿のpHが高くなっていると、アルミニウムが溶解してしまう場合がある。上述した排泄検出装置100では、このような場合でもアルミニウムが溶解するまでの時間を引き延ばすことができる。
【0068】
すなわち、排泄検出装置100によれば、電極121,電極122には比較的安価かつ安全なアルミニウムが主に用いられるため、製造コストを大きく上昇させることもない。また、電極121,電極122を構成するアルミニウムが溶解するまでの時間が引き延ばされるため、高pHの尿と接触した場合でも充分な起電時間を確保し得る。
【0069】
本実施形態では、電極部120は、着用者Wの排泄物及び電解質溶液保持部111によって保持されていた電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。さらに、電極部120は、着用者Wの排泄前においても電解質溶液と接触可能である。このため、排尿前や排便前においても電源部160による起電が可能となる。
【0070】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、電解質溶液保持部111の上方に中和剤保持部112が設けられていたが、電解質溶液保持部111及び中和剤保持部112の位置は、入れ替えても構わない。或いは、中和剤保持部112は、電解質溶液保持部111と重ねずに、吸収体13の平面視(図2(a)参照)において、電解質溶液保持部111と隣接するように設けてもよい。また、電解質溶液保持部111は、必ずしも設けなくても構わない。
【0072】
上述した実施形態では、無線送信部180を用いて温度情報を送信するようにしたが、無線送信部180による温度情報の送信に代えて、ブザーなどの報知器を作動させるようにしても構わない。
【0073】
上述した実施形態では、電解質溶液保持部111を表面シート11側から押圧することによって、電解質溶液保持部111が破れ、電解質溶液保持部111から電解質溶液を滲出させるようにしたが、押圧と異なる操作によって電解質溶液を滲出させるようにしてもよい。例えば、電解質溶液保持部111に連結された糸状部材を引っ張ることによって電解質溶液保持部111が破れるようにしてもよい。
【0074】
また、排泄検出装置100は、おむつに限らず、生理用ナプキンなどの吸収性物品に搭載してもよい。さらに、吸収性物品は、人間用に限らず、ペットなどの動物用でも構わない。
【0075】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0076】
1…排泄管理システム、10A,10B…使い捨ておむつ、11…表面シート、12…裏面シート、13…吸収体、20…無線中継局、30…無線基地局、40…排泄管理サーバ、50…携帯電話端末、60…パーソナルコンピュータ、100…排泄検出装置、110…溶液・中和剤保持部、111…電解質溶液保持部、112…中和剤保持部、120…電極部、121,122…電極、130…温度センサー、150…アクティブタグ、160…電源部、161…起電回路、162…蓄電回路、170…制御部、180…無線送信部、Ex…排泄物、N…中和剤、W…着用者、WT…電解質溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置であって、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、
前記排泄物の水素イオン指数を低下させる中和剤を保持する中和剤保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄があったことを前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記電極は、前記排泄物に接触可能な位置に設けられ、
前記中和剤保持部は、前記中和剤が前記排泄物と接触可能な位置に設けられる排泄検出装置。
【請求項2】
電解質溶液を保持する溶液保持部を備え、
前記電極は、前記排泄物及び前記電解質溶液に接触可能な位置に設けられるとともに、前記排泄物の排泄前において前記電解質溶液と接触可能である請求項1に記載の排泄検出装置。
【請求項3】
前記中和剤保持部は、前記排泄検出装置の使用時において、前記電極の上方に位置するように設けられる請求項1または2に記載の排泄検出装置。
【請求項4】
前記中和剤保持部は、前記溶液保持部と隣接する請求項1乃至3の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項5】
前記中和剤保持部は、前記中和剤保持部に対する所定の操作によって前記中和剤保持部から前記中和剤を滲出させ、前記排泄物に前記中和剤を接触させる請求項1乃至4の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項6】
前記溶液保持部は、前記溶液保持部に対する所定の操作によって前記溶液保持部から前記電解質溶液を滲出させ、前記電極に前記電解質溶液を接触させる請求項2乃至5の何れか一項に記載の排泄検出装置。
【請求項7】
生体に装着され、前記生体からの排泄物を吸収する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置を備え、
前記排泄検出装置は、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、
前記排泄物の水素イオン指数を低下させる中和剤を保持する中和剤保持部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄があったことを前記排泄検出装置の外部に通知する通知部と
を備え、
前記電極は、前記排泄物に接触可能な位置に設けられ、
前記中和剤保持部は、前記中和剤が前記排泄物と接触可能な位置に設けられる吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、
前記生体と接触するとともに、液体を透過する表面シートと、
前記排泄物を吸収する吸収体と
を含み、
前記排泄検出装置は、前記表面シートと前記吸収体との間に設けられる請求項7に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147504(P2011−147504A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9301(P2010−9301)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】